Promoting the degradation and methane gas sampling system of methane hydrate |
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申请号 | JP2007196650 | 申请日 | 2007-07-27 | 公开(公告)号 | JP4852492B2 | 公开(公告)日 | 2012-01-11 |
申请人 | 日本海洋掘削株式会社; 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構; | 发明人 | 雅洋 中村; 三郎 後藤; 浩三 石田; 壮禎 野沢; | ||||
摘要 | |||||||
权利要求 | 下記(a)〜(d)からなることを特徴とするメタンハイドレートの分解促進およびメタンガス採取システム。 (a) メタンハイドレート層と深部帯水層との間に設けられ、深部帯水層から熱媒体を汲み上げる加熱井 (b) メタンハイドレート層から海底面までメタンガスを 上昇させて回収する生産井 (c) メタンハイドレート層と深部帯水層との間に設けられ、メタンハイドレート分解境界面付近を通過する過程で熱交換を終えた熱媒体を深部帯水層に還流する還流井 (d)メタンハイドレートの分解境界面に熱媒体を供給する手段 前記生産井にメタンハイドレート層の圧力を減圧する手段を付加したことを特徴とする請求項1記載のメタンハイドレートの分解促進およびメタンガス採取システム。 前記加熱井は前記生産井の下端を深部帯水層まで延設した坑井とし、深部帯水層か ら熱媒 体を汲み上げる坑井であることを特徴とする請求項2記載のメタンハイドレートの分解促進およびメタンガス採取システム。 前記還流井は前記生産井の下端を深部帯水層まで延設した坑井とし、熱交換を終えた熱媒体を深部帯水層に還流する坑井であることを特徴とする請求項2記載のメタンハイドレートの分解促進およびメタンガス採取システム。 |
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说明书全文 | 本発明はメタンハイドレートの採取システムに関する。 最近の研究・調査結果から、日本の周辺海域には国内ガス消費量の100年分にも及ぶメタンハイドレートが賦存する可能性があると報告されている。 メタンハイドレートは深海の海底下に豊富に存在し、メタンおよび水が高い圧力と低温状態で固体化して賦存する潜在資源である。 生産性が低いため現在の技術では経済的に採取することが難しいものの、安価な生産手法の開発と生産挙動の最適化実現を前提に、将来のエネルギー源としての活路を見出すことが期待されている。 メタンハイドレートからメタンガスを採取する手段として、これまで減圧法と加熱法が提案され、また基本概念として双方を組合せた併用法も検討されている。 減圧法はメタンハイドレート層の圧力を減圧し、メタンハイドレートが分解領域になるように保ち、分解したメタンガスを採取する技術である。 (例えば特許文献1参照。)この技術は地層を減圧する手段とメタンガスを回収する手段から構成される。 減圧法は人工的な熱源を必要としないため燃料を消費しない。 (地層間の自然伝熱は活用する。)また加熱のための坑井も必要としないため、掘削費を大幅に削減することができる。 しかし、単純減圧法の技術ではメタンハイドレートの気化に必要な潜熱の供給速度が遅いこと、出砂・出水が大きいこと、生産流体の再ハイドレート化や氷結リスクが存在すること、生産挙動変化が大きく生産設備の利用効率が劣ること等、商業化を実現する上で障害となる特徴が数多く存在する。 また研究されている一般的な加熱法は海底下のメタンハイドレート層に熱水を圧入し、メタンハイドレートを分解してメタンガスを採取する方法である。 (例えば特許文献2参照。) 現時点で最も期待されているメタンガス採取方法は単純減圧法であるが、この手法には以下のような解決すべき課題が存在する。 (イ)減圧度の強化が唯一の生産促進手段であり、強力な減圧が絶対要件になる。 このため、海底面の沈下・亀裂・ガス漏洩のリスクがある。 (ロ)強減圧に伴う出砂・出水リスクが高いため開発システム全体の経済的負荷が大きい。 (ハ)潜熱の供給が不足するため、生産性の急激な低下や地質および生産流路の再ハイドレート化あるいは氷結といった深刻な生産障害の恐れがある。 (ニ)強減圧条件下で過度に水を吸引することによって、水処理コストが上昇し、且つメタンハイドレート層の圧密が促進され地層の浸透率が低下する。 (ホ)生産挙動曲線の形状が悪く、メタンハイドレート開発の過半を占めるサブシーコストの膨張が不可避になる。 (ヘ)減圧法特有の生産挙動曲線では回収率の改善が困難になる。 メタンハイドレート開発の最大の課題は経済性の低さにある。 経済性に関わる最大の感度因子は生産性とみられるが、現時点で有力な生産手法とされる単純減圧法では生産性の大幅な改善が困難である。 減圧法において生産性の改善を妨げる主要な原因は潜熱供給能力の不足にある。 相平衡曲線における圧力と温度の関係から減圧法にのみ依存する手法では潜熱供給速度が遅いため、メタンハイドレート層の地層温度は低下する。 このことから生産性の急激な低下と生産流体の再ハイドレート化や流路の氷結リスクが避けられない。 一方、熱水圧入式の加熱法は大量の燃料を必要とすることと温水をメタンハイドレート層に圧入する技術的困難性やコスト高の問題がある。 本発明は上述した減圧法と加熱法の弱点を解消し、メタンハイドレート開発における経済的および技術的困難を克服しようとするものである。 即ち、減圧法の特徴である高レベルの出砂・出水を抑制し、生産性を平準化し、生産流路の再ハイドレート化や氷結を予防する等によって開発費を圧縮し、一方では熱水圧入式の加熱法の特徴である多量の燃料消費を解消することによって経済性の大幅な向上を獲得しようとするものである。 本発明では減圧法に起因する障害の多くを取り除くことができる。 また無尽蔵の地熱エネルギーを安価なコストで利用することができる。 本発明は、上記の障害や問題点を解決するためになされるもので、下記(a)〜(d)からなることを特徴とするメタンガスの採取システムである。 (a) メタンハイドレート層と深部帯水層との間に設けられ、深部帯水層から熱媒体を汲み上げる加熱井 この加熱井は海底から下方に1,000〜1,500m程度掘り下げられ、深部帯水層の地熱により温度上昇した熱媒体、例えば温水または熱水を汲み上げることによって地熱エネルギーを採取し、これをメタンハイドレート層に供給する坑井である。 (b) メタンハイドレート層から海底面までメタンガスを上昇させて回収する生産井 この生産井は地熱エネルギーの供給を受け、メタンハイドレートの分解によって生成したメタンガスを採取するものであり、坑内への砂の侵入を防止するために良質のスクリーンをメタンハイドレート層上部の位置に装備する。 (c) メタンハイドレート層と深部帯水層との間に設けられ、メタンハイドレート分解境界面付近を通過する過程で熱交換を終えた熱媒体を深部帯水層に還流する還流井 この還流井も加熱井と同様、海底から下方に1,000〜1,500m程度掘り下げられる。 その目的は分解境界面付近で熱交換を終えて冷やされた水を採取し、これを深部帯水層に還流させることにある。 ここでメタンハイドレートの分解境界面とは、メタンハイドレート層に含まれ熱媒体等によって分解されるメタンハイドレートの表面である。 (d)メタンハイドレートの分解境界面に熱媒体を供給する手段 この手段は上記温水または熱水などの熱媒体を深部帯水層から採取してその地熱エネルギーをメタンハイドレート層に供給する手段であって、例えばポンプ装置、流量調整装置等からなり、各種計測器や制御装置を備える。 以上の本発明のメタンガス採取システムにおいて、生産井に減圧法を併用すると生産性が促進される。 減圧手段はセパレータ(ガス・水・砂の分離装置)やブースタポンプ(減圧を促進するための装置)等の海底生産システムからなる。 単純減圧法との比較では、熱エネルギーの供給速度が速まるため、減圧度を緩和することができる。 前記減圧法を併用した加熱井は前記生産井の下端を深部帯水層まで延設した坑井としてもよい。 また前記還流井は前記生産井の下端を深部帯水層まで延設した坑井としてもよい。 これらによって坑井数が半減し、総開発費が著しく圧縮される。 本発明は熱源として無尽蔵に存在する地下の地熱を利用するため、格別の燃料等を必要とすることなく、長期安定的にメタンハイドレート層に地熱エネルギーを供給する。 十分な熱量を供給によってメタンハイドレート分解境界面の拡大と分解促進を実現することができる。 熱水圧入式の加熱法との比較では、熱水製造装置や膨大な燃料費が不要となるばかりでなく洋上のプラットフォームから各坑井までの加熱ラインも不要になる。 このためプラットフォームにおける熱水製造と坑井までの輸送に関わる多額の設備費負担から開放される。 また本発明は減圧法と加熱法の部分的に有利な機能を併用し、且つ2系統の生産制御手段を確保するようにする場合には、メタンハイドレート下面の分解境界面で効果的に熱交換を行い、広域で同時に分解を促進することが可能となる。 したがって生産挙動曲線の平準化、回収率の向上、平均日産量の改善を図ることができる。 これらはいずれも経済性を救済する効果が高い。 この場合、加熱によってメタンハイドレートの分解が促進されるため、併用する減圧法の減圧度を低減することが可能になる。 減圧度の低減によって水の地層内残存率を高めるため、水処理コストが減少する。 また地層の圧密現象も緩和され、浸透率の悪化を抑えることができる。 出砂・出水は減圧度の関数であるが、減圧度の緩和によって出砂・出水に起因する生産装置への負荷を軽減し、サブシーシステムの設計仕様を大幅に縮小することが可能となる。 このため、施設建設費の著しい削減が期待できる。 本発明では、深部帯水層から得た地熱エネルギーをメタンハイドレート層に長期間連続的に供給することによってメタンハイドレート層、坑底および生産システムを通過する生産流体の温度低下を抑え、再ハイドレート化および氷結対策費の軽減も可能になる。 水深1,000m、海底温度4℃、地温勾配を3〜4℃/100mとすれば、海底下1,000mの地温は34〜44℃と予想される。 ライザーレスによる掘削作業の深度限界は海底面下1,500m前後である。 この付近までは通常地層圧が低いためライザーレスの低圧ローテーティングBOP使用が可能と考えられる。 これ以深に掘り込む場合は安全対策上の理由から本格的なBOPとライザーが必要になるため、掘削コストは急激に上昇する。 経済的に利用できる深部帯水層の限界深度は海底面下1,500m程度である。 したがって利用すべき深部帯水層については海底面下1,000m〜1,500mの範囲で比較検討を行い、最も地熱エネルギー供給能力の高い砂層を選択する。 深度によって掘削費は変化するが、地温勾配と掘削費の深度勾配が相殺するため、この間では経済性に与える差は僅かである。 また深部帯水層の層厚は厚いほど熱媒体の流量確保が容易になり、熱量供給量も増大する。 利用できる熱媒体の水がめは基本的に大きいことが望ましい。 本発明は、このような深部帯水層の温水を加熱井に装着したポンプによって汲み上げ、メタンハイドレート層下部の分解境界面付近に供給する。 ポンプは安価な単相式ダウンホールポンプが利用できる。 メタンハイドレート層の初期浸透率は低いが、固体のメタンハイドレート構造が消滅した後は高浸透性になる。 このため、メタンハイドレート層の下部が分解条件域に達した後の砂層を熱交換流路として活用すれば熱媒体を流動させる動力は軽減される。 メタンハイドレート層の下端は本来分解境界線の条件下にある。 浸透率が絶対浸透率の水準まで改善されていなければ、減圧法により分解境界面のメタンハイドレート分解を先行する。 境界面の分解が始まり、浸透率が絶対浸透率の水準まで変化すれば熱交換流路を確立することができる。 メタンハイドレート層下部の分解境界面付近に浸透性の高い砂層が存在することは、実証実験等によって予見されており、主な不確実性は断層と流動抵抗の不均一性にある。 基礎試錐や在来型石油ガス開発に関わる基礎的知見によれば、メタンハイドレート層下部の分解境界面付近の絶対浸透率は水平方向で200md〜1dとされる。 泥層の絶対浸透率は数μd〜0.7mdである。 メタンハイドレート層は砂泥互層が予想され、水は上層へ流れ難い。 設定した圧力の範囲で熱媒体を循環させることが難しければ、固体のメタンハイドレート構造が完全に消滅し、境界面付近の透水性が確保されてからホンプを起動する。 そのためポンプにはデファレンシャルプレッシャースイッチを装着するとよい。 水深1,000mの場合を例にとると、減圧法を用いれば海底面下300m付近のメタンハイドレート濃集層の温度は14℃前後で、減圧しなくても凡そ16℃で分解領域に入る。 熱交換を終えた熱媒体は還流井に装着したポンプによって深部砂層に還流させる。 これによりメタンハイドレート層に水のアキュムレーションを生じることが回避され、潜在的なトラブル因子である地層の圧力上昇は回避される。 加熱井と還流井の構造は後述のように単純化する。 坑内に配管は設けない。 挿入する装置類は、回収および修理がワイヤーラインを用いた一回の昇降作業(ワントリップ)で可能な構造とする。 これによって高価な掘削リグの代わりにワークボートでの改修作業を実現する。 メタンハイドレート層は分解によりフリーのメタンガスと水を生成する。 最初はイマルジョンが大勢を占めるが地質の不均質性、マイクロフラクチャー、小断層等の介在によって時間経過と共に重力支配が促進される。 水や砂を産出すると生産コストを著しく上昇させので、これを避けるために減圧法の減圧度を抑制し、地層内および坑底におけるガスと水の重力分離を促進させることが効果的である。 強減圧の条件下でガスのみを選択的に生産することは困難であるが、減圧度を弱めることによって、生産流体のガス水比は明らかに改善される。 このため、出砂・出水量の大幅な抑制を期待することができる。 出砂・出水量の削減はサブシーコストを中心とする開発コストの圧縮に非常に効果がある。 また分解境界面へ直接深部の地熱エネルギーを供給することによって分解境界面の拡大が早められ、生産性が時間的に平準化され、回収率の改善が可能となる。 更に生産流体の温度が上昇するのでメタンハイドレート層や流路のハイドレート化あるいは氷結リスクが軽減される。 一方、メタンハイドレートの分解によってメタンハイドレート層の層圧が幾分高まると予想される。 熱水を圧入する加熱法では圧入水がメタンハイドレート層内に蓄積されるため地層圧を更に著しく上昇させてしまう。 このためシール層の損傷リスクが増大する。 また減圧効果を阻害する。 その上、生産水の量が増大し、経済性を圧迫することになる。 本発明のシステムは熱媒体の地層内循環を図り、メタンハイドレート下部の砂層を熱交換流路として利用するためシール層を損なうリスクを最小化できる。 分解ガスの流動には様々な条件が影響を与えるが、生産流体のガス水比や水砂比を低減することは経済性の改善に直結する。 それを目的に生産ガス用のスクリーンはメタンハイドレート層の上部に配置し、熱媒体の循環ポートは下部に配置する。 生産コストの改善を実現する上で、ガスと水の分離が不十分な中間層(イマルジョン)の生産は好ましくない。 このため、メタンガスのインレットと熱媒体の循環ポートの位置は可能な範囲で上下に離し、更に減圧度の抑制を図る。 加熱と減圧の併用によるメタンハイドレート分解率の改善によって、生産井の平均日産量の増大と回収率の向上を実現することができる。 また生産性の平準化と出砂・出水量の軽減は生産システムの設計仕様の簡略化を可能にし、施設建設費を圧縮する上で極めて効果的である。 本発明はこれらの相乗効果により経済性の大幅な改善を期待することができる。 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。 図1は本発明のメタンハイドレート開発におけるメタンガス生産システムの概念図を示している。 メタンハイドレート層の頂部500の下方にメタンハイドレート層100、メタンハイドレート不飽和層200、深部帯水層300が存在する。 図1の向かって右の坑井10は生産井20と加熱井30とを上下に統合した坑井であり、メタンハイドレート層100の下方に存在するメタンハイドレート不飽和層200を貫通し、下方の深部帯水層300から熱媒体を汲み上げる。 生産井20と加熱井30を上下に統合することによって掘削費の膨張を防いでいる。 この坑井10は必要な部分の地層間隙にセメント注入部11を形成し、安定化を図っている。 生産井20は上部にガスインレットスクリーン12を、中間にパッカー13を設置している。 ガスインレットスクリーン12はメタンハイドレート層100の上部に配置し、ドローダウンを確保してメタンハイドレート層100内の分解ガスを取り込み、坑井10内を上昇させて海上で回収する。 パッカー13は生産ガスと熱媒体の流路を隔離する。 加熱井30は深部帯水層300から熱媒体を汲み上げ、メタンハイドレート層100の分解境界面105に連続的に供給する。 このため加熱井30内に汲み上げ用ポンプ31等を備えている。 メタンハイドレート層内の未分解領域(固相)101は、加熱により坑井の周辺部102、103から順次分解が進み、メタンガスと水の分解相となる。 ここで重力によって徐々に水や砂が分離減少しメタンガスが主体となった生産流体は生産井の上部に設けられたガスインレットスクリーンを通ってガスの回収ラインに導入される。 地層内の熱媒体の流動は地層圧、地層勾配、温度、ドローダウン、重力、浸透率等に支配されるが、メタンハイドレート層の下部の透水層104中を矢印34で示すように流れ、未分解領域(固相)101の下方にあるメタンハイドレート分解境界面105を直接加熱する。 図1の向かって左側に示す坑井10は上部に生産井20、その下部に還流井40を備えている。 生産井20の構造や機能は上述と同様である。 還流井40は、メタンハイドレート層100の下端から深部帯水層300に到達するように設けられ、メタンハイドレート分解境界面105付近を通過する過程で熱交換を終えた熱媒体を深部帯水層300に還流させる。 ポンプ41の作動によって、例えば還流井40の下端付近の地層圧は3MPa程度上昇する。 このため深部帯水層300に圧力勾配が生じ、水は矢印33の方向に流動する。 冷やされた熱媒体は深部帯水層300を流動中に十分な地熱エネルギーを吸収し、再び元の地温近くまで温度が上昇する。 深部帯水層300の流体圧力はほぼ固有の地層圧条件下にある。 その後、ドローダウンの発生によって熱媒体は熱エネルギーを蓄えながら加熱井30のサンプ35内に流入する。 サンプ35に貯められた熱媒体は上述のポンプ31によって汲み上げられメタンハイドレート分解境界面105付近のポート36から吐出する。 メタンハイドレート層下部の分解境界面105付近に吐出した熱媒体は高い絶対浸透率の砂層104を流路とし、ポンプ31の昇圧力を主な動力源として矢印34で示すように流動する。 ポンプ31、41の昇圧力は条件に応じて異なるが例えば3MPa程度と予想される。 メタンハイドレート層100の下部の砂層104を流れる途中で熱媒体とメタンハイドレート層の間で熱交換が行なわれ、熱エネルギーを放出した熱媒体は還流井40のポンプ41に吸引される。 したがってポンプ31、41間には6MPa程度のドローダウンを確保することができる。 ポンプ31、41によって形成されるドローダウンを主要な動力として熱媒体の深部帯水層300とメタンハイドレート層100の間の循環が長期的に継続される。 本発明の上記実施例のメタンガス回収システムでは熱媒体を地中で循環させる循環ループを基本とするため、メタンハイドレート層100と深部帯水層300との間の圧力差は拡大しない。 熱水圧入式の加熱法のような強制的な温水圧入を行わないため、地層水のアキュムレーションが回避できる。 このため地層の圧力上昇を引き起こすリスクが小さく、シールが損なわれる危険性は軽減される。 これによって安全性が向上すると同時に海底面の沈下やコンパクション対策費の軽減が可能になる。 本発明のメタンガス回収システムは概念的に減圧と加熱の併用が可能である。 これによって従来の単独減圧法に比べて減圧度の軽減が可能となるため、出砂・出水リスクが減少する。 メタンハイドレート未分解領域101はメタンハイドレートの分解によって縮小するが減圧による分解境界面の進行は未分解領域101の中央付近で進みにくい。 分解面の進行が先行する部分は未分解領域101の上方と下方の周囲の領域102、103付近となるが、上端部の領域102は潜熱の供給量が小さいため分解速度は遅い。 本発明のメタンガス回収システムは、減圧法においてメタンハイドレート分解促進に必要な潜熱供給能力が不足する下部境界面105付近の砂層104に深部の地熱温水を人工的に循環し、地層間の高い温度差を利用して直接熱交換を行おうとするものである。 図1の向かって右側の生産井20は左側の生産井20に比べ、減圧度を幾分弱めることによってガス水比を低下させることが可能である。 またその坑井は地熱循環水の上流側に位置するため熱エネルギーの供給量がより大きい。 減圧度と熱交換の効果の大きさが相殺されるため、左右の坑井の生産性は近似すると解釈される。 本発明のメタンガス回収システムでは熱媒体を地層内循環させることによって地熱エネルギーを直接的にメタンハイドレートの分解境界面に供給しようとするものであり、その成否は多分に熱媒体の流量とその流動性に依存する。 このためメタンハイドレートの分解に必要な熱媒体の循環量が確保できるか否かについて可能な範囲で検証を行なった。 地質条件を均一と看做し、ダルシー則を適用した。 円柱を用いた集油(集水)能力の計算式は以下を用いた。 計算式:Q=2xPI()xkxhx100xΔP/1.03323/μ/LN(r e /r w ) 一方、特定した日産量を確保するために必要な熱量および流量の計算を行なった。 その結果、坑井の生産性を4万m 3 /d、分解境界面付近における熱交換前と交換後の温度差を20℃、熱効率100%、加熱法への分解依存度を20%としたときに必要な熱媒体量は約254 m 3 /day/wellと計算された。 仮にシステム全体の熱効率を30%と看做した場合、必要な熱媒体量は約846 m 3 /day/wellとなる。 上述した計算および他の計算結果から生産性を維持するために必要な地熱エネルギーを循環することは十分に可能と解釈された。 仮に坑井の生産性が4万m 3 /day以下であれば必要熱量は更に減少し、余力は増大する。 加熱井に設置するポンプは透水性の良い深部帯水層が存在する限り、熱媒体量を確保するための障害はない。 熱源として複数の深部砂層を用いることも容易である。 また最新のダウンホールポンプは熱媒体を地層内循環するために必要な昇圧力と吐出力を有し、いずれも100%前後の余力があると解釈された。 図2は深部地熱を利用した本発明のメタンガス回収システムのメカニズムと地層・流体温度条件の例を模式的に示したグラフである。 現段階では実証を行うことができないため、このグラフは基礎的知見を基に作成したものである。 縦軸にメタンハイドレート層100、メタンハイドレート不飽和層200、深部帯水層300の深度をとり、横軸に温度をとって、地温勾配線610、および本発明のメタンガス分解・回収システムの熱サイクル線図(601〜608)を模式的に示したものである。 水深を1,000mとすると海底から深部帯水層300までの区間では地温勾配線610が予想される。 このため深部帯水層300付近では43℃程度の地温が期待される。 (点601)深部帯水層から熱媒体がポンプによって汲み上げられ、メタンハイドレート層下部の分解境界面付近の砂層110に吐き出されるプロセスは線602で示され、その終点603における熱媒体の温度は40℃程度となる。 点603はメタンハイドレートの分解フロント付近に到達したときの熱媒体温度を示しており、線604で示すように分解境界面付近を通過している間に温度が20℃程度まで低下し、熱媒体温度差20℃(40℃→20℃)程度の熱エネルギーを放出し、終点605に至る。 この20℃に降温した熱媒体は還流井に設置したポンプ等によって、線606のプロセスを経て深部帯水層に還流する。 温度差20℃は絶対要件ではなく、計算上は30%の熱効率であっても分解に必要な熱量を満たす。 次いでこの熱媒体は深部帯水層300を流動中に線608で示すように地熱を吸収し、再び地熱温度43℃(点601)程度まで回復する。 地熱は場所によって差がある。 深部帯水層の300の厚さが薄い場合、あるいは熱エネルギーを増量したい場合にはやや深めの深部帯水層を利用することが好ましい。 図2では模式的に熱媒体の一次元の流動を示しているが、実際には放射状に流動するなど2次元の流動になる。 したがって熱交換の時間的変化は幾分複雑になる。 曲線620は単純減圧法によって生産を継続したとき地温変化を定性的に示したものである。 潜熱供給速度が遅いため、分解に伴って地層温度は低下する。 曲線630は本発明のメタンガス回収システムによる生産中の地層流体の温度を予察したものであるが、分解に伴う潜熱以上の地熱エネルギーをメタンハイドレート層に吸収させれば地温を幾分上昇させることができる。 生産性を左右する分解境界面付近の流体温度はポンプレートによって制御可能である。 図3は南海沖で予想される深度と地層温度の関係を示すグラフである。 未だ調査が十分とは言えず、場所によってはこれらの数値は若干異なるが、広域での地温勾配は3℃〜4℃/100mと推測される。 深度と圧力の関係はほぼ直線状の関係にあるとみられ、深度1,350m付近まで正常圧の地層条件下にあることを示している。 南海沖ではロケーションによって差はあるものの、水深1,000m付近では、1,100mまで泥層、その下にメタンハイドレート含有砂泥互層が存在し、メタンハイドレート濃集帯の下端は1,350m付近になると予想され、メタンハイドレート濃集層下端の地層温度は約14℃程度とみられる。 またメタンハイドレート平衡曲線からメタンハイドレート濃集層下端の分解境界面温度は16℃程度と見られる。 したがってメタンハイドレート濃集層下端における地層温度と境界面温度の差は約2℃程度と推定される。 このため燃料を用いることなく40℃程度の温水を供給し、分解境界面付近で効率的に熱交換を行なうことができれば極めて安価な併用法が成立すると解釈される。 図3から40℃以上の温水は水深1,000mのとき、海底下1,000m以深の帯水層から比較的容易に確保できると解釈される。 (海底温度4℃、地温勾配4℃/100mの場合、海底下1,000mの帯水層の温度は計算上約44℃になる。) 図4は図1で示した加熱井30の頂部からメタンハイドレート層分解境界面付近を通って還流井40の下底部に至る熱媒体の移動経路を模式的に平面図で示したものである。 図4ではこれらの坑井を平面的に均等に配置し、メタンガスを回収するメタンハイドレート層の平面積を便宜的に正方形で示している。 熱媒体の平面的な流動方向は坑井位置、温度勾配、異方性、地層傾斜、地層の物理的圧力勾配、重力、浸透率等に左右されるが、メタンハイドレート分解境界面付近の砂層に地熱エネルギーを伝達可能であればよい。 これらの坑井をどのように配置しても、矢印で示すように熱媒体は地層面に沿ってほぼ放射状に流動すると考えられる。 図5は単純減圧法で予想されるメタンハイドレート層の深度・圧力・温度と相平衡曲線の関係を示すグラフである。 縦軸には深度を対数目盛で示し、横軸に温度をとってメタンハイドレートの相平衡曲線702を描いてある。 曲線702の左下側の斜線を施した領域はメタンハイドレートの固相域である。 曲線702より右上側の領域はメタンガス領域であり、0℃より低温側の領域ではメタンガスと水と氷の混合領域、0℃より高温側の領域はメタンガスと水の混合領域である。 尚、縦軸には深度に加え、圧力の目盛を付してある。 例えば深度1,000mにおけるメタンハイドレート層の温度は14℃前後であり、3MPa程度まで減圧すると点710の状態となり、気体で回収することができるはずである。 しかしながら潜熱の供給速度が遅いため、良好な生産性を維持することができず温度降下を伴って点711に至る。 このため気化が妨げられ、生産性は著しく低下する。 単純減圧法では初期の生産性が良好であるものの時間の経過と共に潜熱供給量が低下する。 生産開始当初はメタンハイドレート上部およびメタンハイドレート層と互層をなす泥層からも潜熱が供給されるものの、これらには再生産性がないため生産を継続する間に潜熱不足が顕在化する。 メタンハイドレート層の下部からの潜熱供給は生産を終えるまで維持されるが伝達速度が遅いため地層温度が低下し、分解境界面の温度圧力条件が相平衡曲線の境界線に近接する。 これによって生産性の急減は不可避となる。 このため、生産挙動の形状が悪化し、施設の利用効率低下と建設費上昇の原因になる。 図6は本発明のメタンガス回収システムを用いる場合の相平衡曲線に基づく挙動を示すグラフであり、図5と同様に目盛を設定している。 本発明ではポンプを利用して深部の地熱エネルギーを採取し直接メタンハイドレートの分解境界面に供給することによって、7MPa程度までの減圧で生産を維持することができる。 十分な潜熱を連続的に供給することができるため温度低下が起こらず、急激な生産性の低下を予防することができる。 安定的な生産レベルの維持は地熱エネルギーの供給速度を調節することによって行なうことができ、減圧度を緩和することによってピーク生産量を抑制することができる。 即ち2系統の生産性調節手段を確保することによって生産性の平準化を確立する。 このため生産施設の設計を著しく低減することが可能になると同時に出砂・出水量の削減を実現する。 図7は坑底圧一定の減圧法で予想される日産量の経年変化801と深部地熱を利用した本生産システムによって期待される日産量の経年変化811を比較したものである。 縦軸は坑井の日産量、横軸は生産年数を示している。 坑底圧一定の単純減圧法では線801のように生産初期には日産量が急増するが、坑底圧一定で強減圧を続行しても急速に日産量が減少することとなる。 本発明のシステムでは減圧度を抑制することによって生産ピークのレベルを低く抑え、また熱量を制御しながら連続的に供給することによって長期間の安定的な高原状(プラトー)生産を維持することができる。 即ち、減圧度の抑制と地熱エネルギーの供給量を制御することによって減圧法による生産挙動曲線を線811のように矯正することができる。 この例では減圧法の生産挙動曲線に依存する装置の設計仕様線802は、本システムを採用することによって線812のように変化する。 この結果、サブシーシステムの設計仕様が削減され、一方で平均生産性は増加する。 生産挙動曲線801、811を入力した経済性モデルによる自動計算結果では回収率も明らかに向上する。 このことは生産施設の建設費を大幅に圧縮し、一方でガス販売収入を増やすことを意味しており、著しい経済効果が期待できる。 図8は減圧法で予想されるメタンハイドレート層の層厚と生産性の関係、および生産性の改善余地を示すグラフである。 縦軸にメタンハイドレートの層厚をとり、横軸に坑井の生産性を示した。 曲線832は減圧法の生産性予測値を示している。 減圧法では潜熱の供給不足が始まる厚さを超えると、層厚が厚くなっても生産性に寄与せず、未分解の領域割合のみが拡大する。 即ち厚いメタンハイドレートに恵まれてもその利点を生産性改善に十分役立てることができない。 一方、深部地熱を利用した本発明のメタンガス回収システムを用いると潜熱の供給が促進されるため、未分解の領域の拡大を防止し、メタンハイドレート層の厚さが厚くなればその利点を直接生産性の向上に役立てることができる。 線833は地熱エネルギーを供給する本システムが期待する上限値を示している。 線833と線832に挟まれた領域は、潜熱の供給量によって変化する期待領域を示すが、現段階では定量的な検証ができない。 また線831は海洋における平均的な在来型ガス生産性の生産性を示している。 在来型ガス開発では一般的に層厚が厚いほど生産性が向上し、その結果経済性も良化する。 本生産システムは基本的にメタンハイドレートの分解速度促進を目的に開発したものであり、同時に資源層の層厚の恩恵を在来型ガス開発と同様に獲得しようとするものである。 10 坑井 11 セメント注入部 12 ガスインレットスクリーン 13 パッカー 20 生産井 30 加熱井 31,41 ポンプ 33,34 矢印 35 サンプ 36 ポート 40 還流井 42 配管 100 メタンハイドレート層 101 未分解領域(固相) |