炭素複合体を含有する物品及びその製造方法

申请号 JP2017517356 申请日 2015-09-14 公开(公告)号 JP2017537861A 公开(公告)日 2017-12-21
申请人 ベイカー ヒューズ インコーポレイテッド; ベイカー ヒューズ インコーポレイテッド; 发明人 ヅィユー・スー; レイ・ツァオ;
摘要 炭素複合体を含む物品が開示されている。該炭素複合体が、炭素ミクロ構造であって、該炭素ミクロ構造間に格子間空間を有する炭素ミクロ構造と、該格子間空間の少なくとも一部に配列された結合剤とを含有し、前記炭素ミクロ構造が前記炭素ミクロ構造内に未充填空隙を含む。あるいは、前記炭素複合体が、少なくとも2つの炭素ミクロ構造と、該少なくとも2つの炭素ミクロ構造間に配列された結合相とを含有し、該結合相が次の:SiO2;Si;B;B2O3;金属;又は該金属の 合金 の1種以上を含む結合剤を含み、及び該金属がアルムニウム;銅;チタン;ニッケル;タングステン;クロム;鉄;マンガン;ジルコニウム;ハフニウム;バナジウム;ニオビウム;モリブデン;スズ;ビスマス;アンチモン;鉛;カドミウム;又はセレンの少なくとも1種である。【選択図】図1
权利要求

炭素ミクロ構造(1)であって、該炭素ミクロ構造(1)間に格子間空間(5)を有する炭素ミクロ構造(1)と、該格子間空間(5)の少なくとも一部において配列された結合剤と、を含有する炭素複合体を含む物品であって、 前記炭素ミクロ構造(1)が前記炭素 ミクロ構造(1)内に未充填空隙(6)を含む、物品。前記炭素ミクロ構造(1)が黒鉛のミクロ構造を含み;及び前記結合剤が次の:SiO2;Si;B;B2O3;金属;又は該金属の合金の1種以上を含み、及び前記金属が次の:アルムニウム;銅;チタン;ニッケル;タングステン;クロム;鉄;マンガン;ジルコニウム;ハフニウム;バナジウム;ニオビウム;モリブデン;スズ;ビスマス;アンチモン;鉛;カドミウム;又はセレンの1種以上である、請求項1に記載の物品。少なくとも2つの炭素ミクロ構造(1)と、 該少なくとも2つ炭素ミクロ構造(1)間に配列された結合相(2)と、を含有する炭素複合体を含む物品であって、 該結合相(2)が次の:SiO2;Si;B;B2O3;金属;又は該金属の合金の1種以上を含む結合剤を含み、前記金属が次の:アルムニウム;銅;チタン;ニッケル;タングステン;クロム;鉄;マンガン;ジルコニウム;ハフニウム;バナジウム;ニオビウム;モリブデン;スズ;ビスマス;アンチモン;鉛;カドミウム;又はセレンの1種以上である、物品。前記炭素ミクロ構造(1)が黒鉛のミクロ構造を含む、請求項3に記載の物品。前記結合相(2)が結合剤層(3)と、前記少なくとも2つ炭素ミクロ構造(1)の1つを該結合剤層(3)にボンドする界面層(4)とを含み、該界面層(4)が次の:C−メタルボンド;C−Bボンド;C−Siボンド;C−O−Siボンド;C−O−メタルボンド;又は金属炭素溶液の少なくとも1種を含む、請求項3又は請求項4に記載の物品。前記物品がシール要素、放熱要素又は熱交換要素、又は摩擦低減要素である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の物品。前記シール要素がシール;シールシート;シール・アセンブリ;パックオフ・シール;パッカー;ジョイントシート;ガスケット;ブリッジ・プラグ;又はパッキングであり、前記放熱要素又は熱交換要素がヒートシンク;冷却システム;熱輻射構成部品;又は熱交換器であり、及び前記摩擦低減要素が軸受;軸受座;又は コーティングである、請求項6に記載の物品。前記シールが、静的シール;動的シール;回収可能セメンティング・パックオフ;ポリッシド・ボア・レセプタクル・パックオフ;ワイヤーライン・パックオフ;ヘッド・ガスケット、排気ガスケット、フランジ・ガスケット;バルブ・パッキング;又はポンプ・パッキングである、請求項7に記載の物品。前記物品が、シール、高圧ビーズ・フラク・スクリーンプラグを含むダウンホール要素;スクリーン・ベース・パイプ・プラグ;ボール及びシート用コーティング;圧縮パッキン部品;膨張性パッキン部品;O−リング;ボンデッド・シール;ブレット・シール;サブサーフェス・セーフティ・バルブ・シール;サブサーフェス・セーフティ・バルブ・フラッパー・シール;動的シール;V−リング;バックアップ・リング;ドリル・ビット・シール;ライナー・ポート・プラグ;大気ディスク;大気室ディスク;デブリ・バリヤー;ドリルイン・スチム・ライナー・プラグ;流入量制御装置プラグ;フラッパー;シート;ボールシート;ダイレクト・コネクト・ディスク;ドリルイン・リニア・ディスク;ガスリフト・バルブ・プラグ;流体損失制御フラッパー;電動潜ポンプ・シール;シヤーアウト・プラグ;フラッパー・バルブ;ガスリフト・バルブ;又はスリーブである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の物品。前記物品が、熱分解(thermal cracking)、熱崩壊(thermal degradation)又は熱分解(thermal decomposition)1つ以上に750°F超周囲温度において30日間以上連続して耐えられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。前記炭素複合体を整形又は機械加工することの少なくとも一方を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の物品を形成する方法。炭素複合体を含む物品を形成する方法であって、該物品を形成するために炭素及び結合剤を含有する組成物を約350℃〜約1200℃の温度及び約500psi〜約30,000psiの圧力において圧縮すること、を含み、 該結合剤が次の:SiO2;Si;B;B2O3;金属;又は該金属の合金1種以上を含み、 前記金属が、アルムニウム;銅;チタン;ニッケル;タングステン;クロム;鉄;マンガン;ジルコニウム;ハフニウム;バナジウム;ニオビウム;モリブデン;スズ;ビスマス;アンチモン;鉛;カドミウム;又はセレンの少なくとも1種である、方法。炭素複合体を含む物品を形成する方法であって、 炭素及び結合剤を含む組成物を加圧成形することによって圧縮成形体を形成することと、 前記物品を形成するために該圧縮成形体を加熱することと、を含み、 前記結合剤が次の:SiO2;Si;B;B2O3;金属;又は該金属の合金の1種以上を含み;及び 前記金属が、アルムニウム;銅;チタン;ニッケル;タングステン;クロム;鉄;マンガン;ジルコニウム;ハフニウム;バナジウム;ニオビウム;モリブデン;スズ;ビスマス;アンチモン;鉛;カドミウム;又はセレンの少なくとも1種である、方法。請求項9に記載の1つ以上の物品を使用して750°F超の周囲温度を有する地中ロケーションから炭化水素を生産する方法。請求項9に記載の前記物品の1つ以上から成る装置を坑井内に配備することを含む、坑井を切り離す又は仕上げる方法。

说明书全文

関連出願の相互参照 本出願は2014年10月15日に出願された米国特許出願第14/514,510号の利益を請求するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。

発明の詳細な説明 発明は、炭素ミクロ構造を含有する炭素複合体を含む物品及びその製造方法に関する。

黒鉛が炭素の同素体でありかつ積層、平面構造を有する。各層において、炭素原子が共有結合により六形アレイ又は網目状組織で配列されている。しかしながら、異なる炭素層が弱いファン・デル・ワールスのみによって共に保持されている。

黒鉛は、それの優れた熱伝導率・電気伝導率、軽量、低摩擦、及び高い耐熱性・耐食性に起因してエレクトロニクス、原子エネルギー、溶銑処理法、コーティング、航空宇宙などをはじめとする多種多様な用途に使用されてきた。しかしながら、黒鉛は弾性ではなくかつ低強度を有し、これはそれの更なる用途を制限し得る。そこで、業界は改善された弾性及び機械的強度を有する新しい黒鉛材料に対して常に受容力を持っている。このような材料がまた改善された高温度耐食性を有するならば更なる利点になるであろう。

発明が解決しようとする手段 先行技術における上記の及び他の欠点は、一実施形態において、炭素複合体及び該炭素複合体を含む物品によって克服されている。一実施形態において、前記物品が、炭素ミクロ構造であって該炭素ミクロ構造間に格子間空間を有する炭素ミクロ構造と、該格子間空間の少なくとも一部において配列された結合剤とを含有する炭素複合体を含み、前記炭素ミクロ構造が前記炭素ミクロ構造内に未充填空隙を含む。

別の実施形態において、前記物品が、少なくとも2つの炭素ミクロ構造と、該少なくとも2つの炭素ミクロ構造間に配列された結合相と、を含有する炭素複合体を含み、該結合相が次の:SiO2;Si;B;B2O3;金属;又は該金属の合金の1種以上を含む結合剤を含み、及び前記金属がアルムニウム;銅;チタン;ニッケル;タングステン;クロム;鉄;マンガン;ジルコニウム;ハフニウム;バナジウム;ニオビウム;モリブデン;スズ;ビスマス;アンチモン;鉛;カドミウム;又はセレンの少なくとも1種である。

物品を形成する方法が前記炭素複合体を整形すること又は機械加工することの少なくとも一方を含む。

別の実施形態において、炭素複合体を含む物品を形成する方法が、該物品を形成するために炭素及び結合剤を含有する組成物を約350℃〜約1200℃の温度及び約500psi〜約30,000psiの圧力において圧縮することを含み、該結合剤が次の:SiO2;Si;B;B2O3;金属;又は該金属の合金の1種以上を含み、及び前記金属がアルムニウム;銅;チタン;ニッケル;タングステン;クロム;鉄;マンガン;ジルコニウム;ハフニウム;バナジウム;ニオビウム;モリブデン;スズ;ビスマス;アンチモン;鉛;カドミウム;又はセレンの少なくとも1種である。

更に別の実施形態において、炭素複合体を含む物品を形成する方法が、炭素及び結合剤を含む組成物を加圧成形することによって圧縮成形体を形成することと、該物品を形成するために該圧縮成形体を加熱することとを含み、該結合剤が次の:SiO2;Si;B;B2O3;金属;又は該金属の合金の1種以上を含み、前記金属がアルムニウム;銅;チタン;ニッケル;タングステン;クロム;鉄;マンガン;ジルコニウム;ハフニウム;バナジウム;ニオビウム;モリブデン;スズ;ビスマス;アンチモン;鉛;カドミウム;又はセレンの少なくとも1種である。

750°F超の周囲温度を有する地中ロケーションから炭化素を生産する方法が、前記物品の1つ以上を採用することを含む。

坑井を切り離す又は仕上げる方法が、坑井において前記物品の1つ以上を含む装置を配備することを含む。

次の説明はとにかく制限するものとして考えられるべきではない。添付図面を参照して、同様の要素は同様に参照番号が付けられる。

図1は、膨張黒鉛及び室温及び大気圧において混合されたミクロ又はナノのサイズの結合剤を含有する組成物の走査電子顕微鏡(「SEM」)画像である。

図2は、開示の一実施形態に係る高圧力及び高温条件の下で膨張黒鉛及びミクロ又はナノサイズの結合剤から形成された炭素複合体のSEM画像である。

図3は、開示の別の実施形態に係る炭素ミクロ構造のSEM画像である。

図4は、開示の一実施形態に係る炭素複合体の概略図である。

図5は、(A)天然黒鉛;(B)膨張黒鉛;(C)膨張黒鉛及びミクロ又はナノサイズの結合剤の混合物(試料は室温及び高圧力において圧縮成形される);(D)高温度及び低圧力において膨張黒鉛及びミクロ又はナノサイズの結合剤の混合物から圧縮成形された開示の一実施形態に係る炭素複合体 (「ソフト複合体」とも呼ばれている);及び(E)高圧力及び高温度条件の下で膨張黒鉛及びミクロ及びナノサイズの結合剤から形成された開示の別の実施形態に係る炭素複合体(「ハード複合体」とも呼ばれている)の応力−歪み曲線を示す。

図6は、異なる負荷における炭素複合体のループ試験結果を示す。

図7は、室温及び500°Fにおいてそれぞれ試験された炭素複合体のヒステリシス結果を示す。

図8は、500℃において5日間空気にさらされる前及びさらされた後の炭素複合体を比較している。

図9(A)は、熱衝撃後の炭素複合体の写真である。

図9(B)は熱衝撃に関する条件を例示する。

図10a−cは、200°Fにおいて20時間水道水にさらされる前(図10a)及びさらされた後(図10b)、若しくは200°Fにおいて3日間水道水にさらされた後(図10c)の炭素複合体試料を比較する。

図11a−cは、200°Fにおいて20時間インヒビターとともに15%HCl溶液にさらされる前(図11a)及びさらされた後(図11b)、若しくは200°Fにおいて3日間15%HCl溶液にさらされた後(図11c)の炭素複合体試料を比較する。

図12は、600°Fにおける炭素複合体のシール力緩和(sealing force relaxation)試験結果を示す。

本明細書における発明者は、高温度において黒鉛及びミクロ又はナノサイズの結合剤から形成された炭素複合体が黒鉛単独、同じ黒鉛だが異なる結合剤から形成された組成物、若しくは大気圧又は高圧力の下で室温において混合された同じ黒鉛でありかつ同じ結合剤の混合物と比較してバランスの取れた特性を改善したことを発見した。この新しい炭素複合体は、優れた弾性を有する。加えて、炭素複合体は高温度において優れた機械的強度、耐熱性、及び耐薬品性を有する。更に有利な特徴において、複合体は熱伝導率、電気伝導率、潤滑性などのような黒鉛の様々な優れた特性を保持する。

理論によって縛られることを望まないで、炭素ミクロ構造間に配列された結合相によって機械的強度の改善がもたらせることが確信されている。力が全くないか若しくは弱いファン・デル・ワールス力だけが炭素ミクロ構造間に存在する、のいずれかであり、したがって黒鉛バルク材料が弱い機械的強度を有する。高温度において、ミクロ及びナノサイズの結合剤が炭素ミクロ構造間に均等に分散されるように液化及び/又は軟化する。冷却次と同時に、結合剤は機械的インターロッキングにより炭素ナノ構造を共に結合する結合相を凝固させかつ形成する。

理論によって縛られることを更に望まずに、改善された機械的強度及び改善された弾性の両方を有する複合体に関して、炭素ミクロ構造それら自身が積層間に空間を有する層状構造体であることが確信されている。結合剤は、ミクロ構造に浸透しないで、ミクロ構造をそれらの境界において選択的に遮断するだけである。そこでミクロ構造内の非境界層が弾性をもたらしかつ炭素ミクロ構造間に配列された結合相が機械的強度をもたらす。

炭素ミクロ構造は、高度に凝縮された状態へ黒鉛を圧縮した後に形成された黒鉛の顕微鏡構造である。炭素ミクロ構造は、圧縮方向に沿って共に積み重ねられた黒鉛ベーサル平面で構成される。本明細書において使用されるとき、炭素ベーサル平面とは炭素原子の実質的に平坦な、平行シート又は層を指し、そこでは各シート又は層は単一の原子の厚みを有する。黒鉛ベーサル平面は炭素層とも呼ばれている。炭素ミクロ構造は一般的に平坦でかつ薄い。それらは異なる形状を有することができかつミクロフレーク、ミクロディスクなどとも呼ぶことができる。一実施形態において、炭素ミクロ構造は互いに実質的に平行である。

素複合体には2つのタイプの空隙がある:炭素ミクロ構造間の空隙又は格子間空間及び各個別の炭素ミクロ構造内の空隙。炭素ミクロ構造間の格子間空間は、約0.1〜約100ミクロン、具体的には約1〜約20ミクロンのサイズを有するに対して、炭素ミクロ構造内の空隙はこれより遥かに小さくかつ一般的に約20ナノメートル〜約1ミクロンの間に、具体的には約200ナノメートル〜約1ミクロンの間にある。空隙又は格子間空間の形状は特に制限されていない。本明細書において使用されるとき、空隙又は格子間空間のサイズとは空隙又は格子間空間の最も大きい寸法を指しかつ高分解能電子又は原子間力顕微鏡技術によって決定されることができる。

炭素ミクロ構造間の格子間空間は、ミクロ又はナノサイズの結合剤で充填されている。例えば、結合剤は炭素ミクロ構造間の格子間空間の約10%〜約90%を占有することができる。しかしながら、結合剤は個別の炭素ミクロ構造に浸透しない、かつ炭素ミクロ構造内の空隙は充填されていない、すなわちいかなる結合剤でも充填されない。したがって、炭素ミクロ構造内の炭素層は結合剤によって共に遮断されていない。この機構によって、炭素複合体の柔軟性は、特に、膨張炭素複合体が保存されることができる。

炭素ミクロ構造は、約1〜約200ミクロン、約1〜約150ミクロン、約1〜約100ミクロン、約1〜約50ミクロン、又は約10〜約20ミクロンの厚みを有する。炭素ミクロ構造の直径又は最も大きい寸法は、約5〜約500ミクロン又は約10〜約500ミクロンである。炭素ミクロ構造の縦横比は、約10〜約500、約20〜約400、若しくは約25〜約350とすることができる。一実施形態において、炭素ミクロ構造における炭素層間の距離は約0.3ナノメートル〜約1ミクロンである。炭素ミクロ構造は約0.5〜約3g/cm3、又は約0.1〜約2g/cm3密度を有することができる。

本明細書において使用されるとき、黒鉛は次の:天然黒鉛;合成黒鉛;膨張性黒鉛;又は膨張黒鉛の1種以上を含む。天然黒鉛は自然によって形成された黒鉛である。それは“フレーク”黒鉛、“結晶性(vein)”黒鉛、及び“非結晶性”黒鉛として分類されることができる。合成黒鉛は炭素材料から作製された製造製品である。熱分解性黒鉛は合成黒鉛の1つの形態である。膨張性黒鉛とは、天然黒鉛又は合成黒鉛の層の間に挿入された層間挿入(intercallant)材料を有する黒鉛を指す。黒鉛材料を入れ込ませるために多種多様な薬品が使用されてきた。これらの薬品としては酸、酸化剤、ハロゲン化合物などが挙げられる。例示的層間挿入材料としては、硫酸硝酸、クロム酸、ホウ酸、SO3、又はFeCl3、ZnCl2、及びSbCl5などのハロゲン化合物が挙げられる。加熱と同時に、層間挿入材料は液体又は固体状態から気相へ変換される。ガス発生は圧力を発生させ、これにより隣接の炭素層が離れる方向に押圧されて結果的に膨張黒鉛を生じる。膨張黒鉛粒子は外観が虫状になっていて、またしたがって広く虫(worm)と呼ばれている。

有利なことには、炭素複合体は膨張黒鉛ミクロ構造で構成されている。黒鉛の他の形態と比較して、膨張黒鉛は高い柔軟性及び高い圧縮回復(compression recovery)、及びより大きな異方性を有する。高圧力及び高温度条件の下で膨張黒鉛及びミクロ又はナノサイズの結合剤から形成される複合体は、したがって望ましい機械的強度に加えて優れた弾性を有することができる。

炭素複合体において、炭素ミクロ構造は結合相によって共に保持される。該結合相は機械的インターロッキングにより炭素ミクロ構造を結合する結合剤を含む。オプションにより、界面層は結合剤と炭素ミクロ構造との間に形成される。該界面層は化学結合、固溶体、又若しくはそれらの組み合わせから構成されることができる。存在しているとき、化学結合、固溶体、若しくはそれらの組み合わせは炭素ミクロ構造のインターロッキングを強化し得る。炭素ミクロ構造が、機械的インターロッキング及び化学結合の両方によって共に保持され得ることが正しく評価されている。例えば、化学結合、固溶体、若しくはそれらの組み合わせは幾つかの炭素ミクロ構造と結合剤との間に、あるいは特定の炭素ミクロ構造に関しては炭素ミクロ構造の表面上の炭素の一部分と結合剤との間のみに形成され得る。化学結合、固溶体、又はそれらの組み合わせを形成しない炭素ミクロ構造又は炭素ミクロ構造の部分に関しては、炭素ミクロ構造は機械的インターロッキングによって境界をつけることができる。結合相の厚みは約0.1〜約100ミクロン又は約1〜約20ミクロンである。結合相は炭素ミクロ構造を共に結合する連続又は不連続網目構造を形成することができる。

例示的結合剤は、非金属、金属、合金、若しくは前述したものの少なくとも1種で構成される結合体を含む。非金属は次の:SiO2;Si;B;又はB2O3の1種以上である。金属はアルムニウム;銅;チタン;ニッケル;タングステン;クロム;鉄;マンガン;ジルコニウム;ハフニウム;バナジウム;ニオビウム;モリブデン;スズ;ビスマス;アンチモン;鉛;カドミウム;又はセレンの少なくとも1種とすることができる。合金は、次の:アルムニウム合金;銅合金;チタン合金;ニッケル合金;タングステン合金;クロム合金;鉄合金;マンガン合金;ジルコニウム合金;ハフニウム合金;バナジウム合金;ニオビウム合金;モリブデン合金;スズ合金;ビスマス合金;アンチモン合金;鉛合金;カドミウム合金;又はセレン合金の1種以上を含む。一実施形態において、結合剤は、次の:銅;ニッケル;クロム;鉄;チタン;銅の合金;ニッケルの合金;クロムの合金;鉄の合金;又はチタンの合金の1種以上で構成される。例示的合金としては、鋼、インコネル*などのニッケル−クロム基合金、及びモネル合金などのニッケル−銅基合金が挙げられる。ニッケル−クロム基合金は約40〜75%のNi、約10〜35%のCrを含有することができる。ニッケル−クロム基合金はまた約1〜約15%の鉄を含有することができる。少量のMo、Nb、Co、Mn、Cu、Al、Ti、Si、C、S、P、B、若しくは前述したものの少なくとも1種で構成される結合体はニッケル−クロム基合金にも含まれることができる。ニッケル−銅基合金は基本的にはニッケル(最大約67%)及び銅から構成される。ニッケル−銅基合金はまた少量の鉄、マンガン、炭素、及びシリコンを含有することができる。これらの材料は、粒子、繊維、及びワイヤなどの異なる形状にすることができる。材料の結合体を使用することができる。

炭素複合体を作製するために使用される結合剤は、ミクロ又はナノサイズである。一実施形態において、結合剤は約0.05〜約10ミクロン、具体的には、約0.5〜約5ミクロン、より具体的には約0.1〜約3ミクロンの平均粒径を有する。理論によって縛られることを望まずに、結合剤がこれらの範囲内のサイズを有する場合には、それが炭素ミクロ構造間に均一に分散することが確信されている。

界面層が存在する場合、結合相は結合剤及び少なくとも2つの炭素ミクロ構造の1つを結合剤層に結合する界面層で構成される結合剤層を含む。一実施形態において、結合相は結合剤層、炭素ミクロ構造の一方を結合剤層にボンドする第1の界面層、及び少なくとも2つのミクロ構造の他方を結合剤層にボンドする第2の界面層で構成される。第1の界面層及び第2の界面層は同じ又は異なる組成物を有することができる。

界面層は次の:C−メタルボンド;C−Bボンド;C−Siボンド;C−O−Siボンド;C−O−メタルボンド;又は金属炭素溶液の1種以上で構成される。ボンドは炭素ミクロ構造の表面上の炭素及び結合剤から形成される。

一実施形態において、界面層は結合剤の炭化物を含む。該炭化物は次の:アルムニウムの炭化物;チタンの炭化物;ニッケルの炭化物;タングステンの炭化物;クロムの炭化物;鉄の炭化物;マンガンの炭化物;ジルコニウムの炭化物;ハフニウムの炭化物;バナジウムの炭化物;ニオビウムの炭化物;又はモリブデンの炭化物の1種以上を含む。これらの炭化物は、対応する金属又は金属合金結合剤を炭素ミクロ構造の炭素原子と反応させることによって形成される。該結合相はまたSiO2又はSiを炭素ミクロ構造の炭素と反応させることによって形成されるSiC、若しくはB又はB2O3を炭素ミクロ構造の炭素と反応させることによって形成されるB4Cによって形成される。結合剤材料の結合体が使用される場合、界面層はこれらの炭化物の結合体で構成されることができる。該炭化物は塩に似た炭化物などのアルムニウム塩化物、SiC、B4Cなどの共有結合炭化物、4族、5族、及び6族遷移金属の格子間炭化物、若しくは中間遷移金属炭化物、例えばCr、Mn、Fe、Co、及びNiの炭化物とすることができる。

別の実施形態において、界面層は黒鉛などの炭素及び結合剤の固溶体から成る。炭素はある特定の金属基内で又はある特定の温度範囲において溶解度を有し、これは炭素ミクロ構造上への金属相の加湿及び結合の両方を促進することができる。熱処理により、金属内の炭素の高い溶解度は低温度において維持されることができる。これらの金属は、Co;Fe;La;Mn;Ni;又はCuの1種以上を含む。結合剤層はまた固溶体及び炭化物の結合体から成ることができる。

炭素複合体は、複合体の合計重量を基準にして約20〜約95重量%、約20〜約80重量%、又は約50〜約80重量%の炭素を含む。結合剤は複合体の合計重量を基準にして、約5重量%〜約75重量%又は約20重量%〜約50重量%の量において存在する炭素複合体において、結合剤に対する炭素の重量比は約1:4〜約20:1、又は約1:4〜約4:1、又は約1:1〜約4:1である。

図1は、室温及び大気圧において混合された膨張黒鉛及びミクロ又はナノサイズの結合剤を含有する組成物のSEM画像である。図1に示されるように、結合剤(白色領域)が芋虫状の膨張黒鉛の幾つかの表面上に析出されているだけである。

図2は、高圧力及び高温度条件の下で膨張黒鉛及びミクロ又はナノサイズの結合剤から形成された炭素複合体のSEM画像である。図2に示されるように、結合相(明るい領域)が膨張黒鉛ミクロ構造(暗い領域)との間に均等に分布されている。

炭素黒鉛ミクロ構造のSEM画像が図3に示されている。炭素複合体の一実施形態が図4に例示されている。図4に示されるように、複合体は、炭素ミクロ構造1及び炭素ミクロ構造を遮断する結合相2で構成されている。結合相2は結合剤層3と、結合剤層3と炭素ミクロ構造1との間に配列されたオプションの界面層4とで構成される。炭素複合体は炭素ミクロ構造1間に格子間空間5を含有する。炭素ミクロ構造内に、未充填空隙6がある。

炭素複合体はオプションにより充填剤を含むことができる。例示的充填剤は、次の:炭素繊維;カーボンブラック;雲母;粘土;ガラス繊維;セラミック繊維;又はセラミック中空構造体の1種以上を含む。セラミック材料としてはSiC、Si3N4、SiO2、BNなどが挙げられる。充填剤は約0.5〜約10重量%又は約1〜約8%の量で存在することができる。

複合体は、バー、ブロック、シート、チューブ、円筒形ビレット、トロイド、粉末、ペレット、又は製造の有用な物品を形成するために機械加工され、形成され、あるいは使用され得る他の形態を含む、任意の所望の形状を有することができる。これらの形態のサイズ又は寸法は特に制限されない。例示的には、シートは約10μm〜約10cmの厚み及び約10mm〜約2mの幅を有する。粉末は約10μm〜約1cmの平均サイズを有する粒子で構成される。ペレットは約1cm〜約5cmの平均サイズを有する粒子で構成される。

炭素複合体を形成する1つの方法は、冷間加圧成形することによって圧粉体を提供するために炭素及びミクロ又はナノサイズの結合剤で構成される結合体を圧縮すること、及び該圧粉体を圧縮及び加熱することであり、これによって炭素複合体を形成する。別の実施形態において、結合体は圧縮成形体を形成するために室温において加圧成形されることができ、また次いで炭素複合体を形成するために該圧縮成形体は大気圧において加熱される。これらのプロセスは2工程プロセスと呼ぶことができる。あるいは、炭素及びミクロ又はナノサイズの結合剤で構成される結合体は、炭素複合体を形成するために直接に圧縮及び加熱されることができる。このプロセスは1工程プロセスと呼ぶことができる。

結合体において、黒鉛などの炭素は該結合体の合計重量を基準にして、約20重量%〜約95重量%、約20重量%〜約80重量%、若しくは約50重量%〜約80重量%の量で存在する。結合剤は該結合体の合計重量を基準にして、約5重量%〜約75重量%又は約20重量%〜約50重量%の量で存在する。結合体内の黒鉛はチップ、粉末、血小板、フレークなどの形態で存在することができる。一実施形態において、黒鉛は約50ミクロン〜約5,000ミクロン、好ましくは約100〜約300ミクロンの直径を有するフレークの形態で存在する。黒鉛フレークは約1〜約5ミクロンの厚みを有することができる。結合体の密度は約0.01〜約0.05g/cm3、約0.01〜約0.04g/cm3、約0.01〜約0.03g/cm3又は約0.026g/cm3である。結合体は当該技術において知られている任意の適切な方法を介して黒鉛とミクロ又はナノサイズの結合剤とを混合することによって形成されることができる。適切な方法の例としては、ボールミキシング、音響ミキシング、リボン・ブレンディング、縦型スクリューミキシング、及びV−ブレンディングが挙げられる。

2工程プロセスについて言及すると、冷間加圧成形は黒鉛及びミクロサイズ又はナノサイズの結合剤で構成される結合体が、結合剤が黒鉛ミクロ構造と十分に結合しない限り室温において又は高温度において圧縮されることを意味する。一実施形態において、ミクロ構造の約80重量%超、約85重量%超、約90重量%超、約95重量%超、若しくは約99重量%超が圧粉体において結合されない。圧粉体を形成する圧力は約500psi〜約10ksiとすることができる及び温度は約20℃〜約200℃とすることができる。この段階における縮小率、すなわち結合体の容積に対する圧粉末の容積が、約40%〜約80%である。圧粉体の密度は約0.1〜約5g/cm3、約0.5〜約3g/cm3、若しくは約0.5〜約2g/cm3である。

圧粉体は、炭素複合体を形成するために約350℃〜約1200℃、具体的には約800℃〜約1200℃の温度において加熱されることができる。一実施形態において、温度は結合剤の融点の約±20℃〜約±100℃、又は結合剤の融点の約±20℃〜約±50℃である。別の実施形態において、該温度は結合剤の融点を超えている、例えば、結合剤の融点よりも約20℃〜約100℃より高い又は約20℃〜約50℃より高い。温度がより高いとき、結合剤は粘性がより少なくなりかつより良く流動する、また結合剤が炭素ミクロ構造間の空隙において均等に分布されるためには要求される圧力がより少なくてよい。しかしながら、もし温度が余りにも高すぎると、それは計器に悪影響を及ぼし得る。

温度は所定の温度スケジュール又は温度上昇率に従って与えることができる。加熱手段は特に限定されていない。例示的加熱方法としては、直流(DC)加熱誘導加熱、マイクロ波加熱、及び放電プラズマ焼結(SPS)が挙げられる。一実施形態において、該加熱はDC加熱を介して行われる。例えば、黒鉛及びミクロ又はナノサイズの結合剤で構成される結合体には電流が供給されることができ、該電流は結合体の中を流れて極めて迅速に熱を発生する。オプションにより、加熱はまた不活性雰囲気の下で、例えばアルゴン又は窒素の下で行われることができる。一実施形態において、圧粉体は空気の存在の下で加熱される。

加熱は約500psi〜約30,000psi又は約1000psi〜約5000psiの圧力において行われることができる。該圧力は超大気圧又は大気圧未満とすることができる。理論によって縛られることを望まずに、超大気圧が結合体に加えられると、ミクロ又はナノサイズの結合剤が浸透により炭素ミクロ構造間の空隙内に押し込まれることが確信されている。大気圧未満が結合体に加えられると、ミクロ又はナノサイズの結合剤はまた表面張力によって炭素ミクロ構造間の空隙内に押し込まれる。

一実施形態において、炭素複合体を形成するための望ましい圧力は一度にすべてを加えるのではない。圧粉体が装填された後、組成物内の大きな孔を閉鎖するために室温において又は低温度において低い圧力が組成物に初めに加えられる。そうでないと、溶融された結合剤はダイの表面へ流動し得る。いったん温度が所定の最大温度に到達すると、炭素複合体を作製するのに要求される望ましい圧力を加えることができる。温度及び圧力を所定の最大温度及び所定の最大圧力において約5分〜約120分間保持することができる。一実施形態において、該所定の最大温度は結合剤の融点の約±20℃〜約±100℃であり、あるいは結合剤の融点の約±20℃〜約±50℃である。

この段階における縮小率、すなわち圧粉体の容積に対する炭素複合体の容積は、約10%〜約70%又は約20〜約40%である。炭素複合体の密度は、圧縮の程度を制御することによって変えることができる。炭素複合体は、約0.5〜約10g/cm3、約1〜約8g/cm3、約1〜約6g/cm3、約2〜約5g/cm3、約3〜約5g/cm3、若しくは約2〜約4g/cm3の密度を有する。

あるいは、2工程プロセスについてまた言及すると、結合体はまず圧縮成形体を形成するために室温及び約500psi〜30,000psiの圧力において加圧成形される;圧縮成形体は炭素複合体を作製するために約350℃〜約1200℃、具体的には約800℃〜約1200℃の温度において更に加熱されることができる。一実施形態において、温度は結合剤の融点の約±20℃〜約±100℃である、又は結合剤の融点の約±20℃〜約±50℃である。別の実施形態において、温度は結合剤の融点より約20℃〜約100℃より高く又は約20℃〜約50℃より高くすることができる。加熱は不活性雰囲気の存在下又は不在下で大気圧において行われることができる。

別の実施形態において、炭素複合体は圧粉体を作製しないで直接に黒鉛及び結合剤で構成される結合体から作製されることができる。加圧成形すること及び加熱することは同時に実施されることができる。適切な圧力及び温度は2工程プロセスの第2の工程に関して本明細書において論述されることと同じにすることができる。

熱間加圧成形プロセスは、温度と圧力を同時に加えるプロセスである。熱間加圧成形プロセスは、炭素複合体を作製するために1工程及び2工程プロセスの両方において使用されることができる。

炭素複合体は1工程又は2工程プロセスによって成形型において作製されることができる。得られる炭素複合体は、バー、ブロック、チューブ、円筒形ビレット、若しくはトロイドを形成するために更に機械加工又は整形されることができる。機械加工としては、例えば、フライス盤、鋸、旋盤、くり抜き機、放電加工機などを使用して切断、鋸引き、融除、フライス削り、表面仕上げ、旋削、穴あけなどが挙げられる。あるいは、炭素複合体は所望の形状を有する成形型を選ぶことによって有用な形状に直接に成形されることができる。

織物(ウェブ)、用紙、帯(ストリップ)、テープ、箔(フォイル)、敷物(マット)などのシート材料はまた熱間圧延を介して作製されることができる。一実施形態において、熱間圧延によって作製される炭素複合体シートは、結合剤が効果的に炭素ミクロ構造を共にボンドすることを可能にするために更に加熱されることができる。

炭素複合体ペレットは押出し成形することによって作製されることができる。例えば、黒鉛及びミクロ又はナノサイズの結合剤の結合体は、まず容器内に装填されることができる。次いで、結合体はピストンを通じて押出機内に押し込まれる。押出し温度は約350℃〜約1200℃又は約800℃〜約1200℃とすることができる。一実施形態において、該温度は結合剤の融点の約±20℃〜約±100℃、又は結合剤の融点の約±20℃〜約±50℃である。別の実施形態において、押出し温度は結合剤の融点よりも高い、例えば、結合剤の融点よりも約20℃〜約50℃より高い。一実施形態において、ワイヤは押出し成形から得られ、ペレットを形成するように切断されることができる。別の実施形態において、ペレットは押出機から直接に得られる。オプションにより、後処理プロセスはペレットに対して施すことができる。例えば、もし炭素ミクロ構造が押出し成形中にボンドされなかったか若しくは適切にボンドされなかった場合に結合剤が炭素ミクロ構造を共にボンドすることができるように、ペレットは結合剤の融解温度以上に炉内で加熱されることができる。

炭素複合体粉末は、剪断力(切断力)により、例えば固体片に、炭素複合体をフライス削りすることによって作製されることができる。炭素複合体が衝突を受けてはならないことに留意する。さもなければ、炭素ミクロ構造内の空隙が破壊される恐れがあり、これによって炭素複合体が弾性を失う。

炭素複合体は多種多様な用途に使用するために複数の有利な特性を有している。特に有利な特徴において、炭素複合体を形成することによって、黒鉛などの炭素の機械的強度とエラストマー特性の両方が改善される。

炭素複合体によって達成された弾性エネルギーの改善を例示するために、次の試料に関して応力−歪み曲線が図5に示されている:(A)天然黒鉛、(B)膨張黒鉛、(C)室温及び大気圧において形成された膨張黒鉛とミクロ又はナノサイズの結合剤の混合物、(D)高温度及び低圧力において形成された膨張黒鉛とミクロ又はナノサイズの結合剤の混合物(「ソフト炭素複合体」);及び(E)高圧力及び高温度条件の下で膨張黒鉛及びミクロ及びナノサイズの結合剤から形成された炭素複合体(「ハード炭素複合体」)。天然黒鉛に関しては、試料は高圧力において鋼製ダイの中で天然黒鉛を圧縮することによって作製された。膨張黒鉛試料(B)はまた同様にして作製された。

図5に示されるように、天然黒鉛(A)は非常に低い弾性エネルギー(応力−歪み曲線下の面積)を有しかつ非常に脆い。膨張黒鉛(B)の弾性エネルギー及び室温及び高圧力において圧縮成形された膨張黒鉛とミクロ又はナノサイズの結合剤の混合物(C)の弾性エネルギーは天然黒鉛(A)のそれより高い。逆に、開示のハード及びソフト炭素複合体(E及びD)の両方は、天然黒鉛単独(A)、膨張黒鉛単独(B)、及び室温及び高圧力において圧縮成形された膨張黒鉛と結合剤の混合物(C)と比較して弾性エネルギーの著しい増加によって示される大幅に向上した弾性を示す。一実施形態において、開示の炭素複合体は約4%超、約6%超、又は約4%と約40%の間の弾性伸びを有する。

炭素複合体の弾性は図6と図7に更に例示される。図6は、異なる負荷における炭素複合体のループ試験結果を示す。図7は、室温及び500°Fにおいてそれぞれ試験された炭素複合体ヒステリシス結果を示す。図7に示されるように、炭素複合体の弾性は500°Fにおいて維持されている。

向上した機械的強度及び弾性に加えて、炭素複合体はまた高温度において優れた熱安定性を有することができる。図8は500℃において5日間空気にさらされる前及びさらされた後の炭素複合体を比較する。図9(A)は8時間熱衝撃を受けた後の炭素複合体試料の写真である。熱衝撃の条件は図9(B)に示されている。図8及び9(A)に示されるように、500℃において5日間空気にさらされた後の又は熱衝撃を受けた後の炭素複合体試料に対してはなんの変化もない。炭素複合体は、約−65°Fから約1200°Fまで、具体的には約1100°Fまで、より具体的には約1000°Fの動作温度の範囲で高い耐熱性を有することができる。

炭素複合体はまた、高温において優れた耐薬品性を有することができる。一実施形態において、複合体は水、オイル、かん水(ブライン)、及び酸類に対して化学的耐性を有しており、「良」から「優」までの耐性格付けがなされている。一実施形態において、炭素複合体は塩基性及び酸性条件を含む、湿潤条件の下で、高温度及び高圧力において、例えば、約68°F〜約1200°F、又は約68°F〜約1000°F、又は約68°F〜約750°Fにおいて連続して使用されことができる。こうして、炭素複合体は長時間にわたり200°Fまで昇温、かつ昇圧(大気圧より大きい)時でさえも化学薬品(例えば、水、かん水(ブライン)、炭化水素類、HClなどの酸類、溶媒トルエンなどの、その他)にさらされる際に膨潤及び特性の劣化に耐える。炭素複合体の耐薬品性が図10a〜10cと図11a〜11cに例示されている。図10a〜10cは、200°Fにおいて20時間水道水にさらされる前及びさらされた後、又は200°Fにおいて3日間水道水にさらされた後の炭素複合体試料を比較している。図10に示されるように、試料に対してなんの変化もない。図11a〜11cは、200°Fにおいて20時間インヒビターとの15%HCl溶液にさらされる前及びさらされた後、又は200°Fにおいて3日間15%HCl溶液にさらされた後の炭素複合体試料を比較している。再び、炭素複合体試料に対してなんの変化もない。

炭素複合体は、ショアAスケール約50からショアDスケール約75までの硬さを有して半硬質乃至極硬質である。

更に有利な特徴として、炭素複合体は高温度において安定したシール力を有する。一定の圧縮歪み下での構成部品の応力緩和(stress decay)は、圧縮応力緩和(compression stress relaxation)として知られている。シール力緩和試験としても知られている圧縮応力緩和試験は、2枚のプレート間の圧縮下でシール又はO—リングによって加えられるシール力を測定する。それは試料時間、温度及び環境の関数としてシール力減衰を測定することによって材料の耐用寿命の予測のために決定的な情報を提供する。図12は、炭素複合体試料600°Fのシール力緩和試験結果を示す。図12に示されるように、炭素複合体のシール力は高温度において安定している。一実施形態において、15%歪み及び600°Fにおける複合体の試料のシール力は、少なくとも20分間緩和無しで約5800psiに維持される。

炭素複合体は、エレクトロニクス、原子エネルギー、溶銑処理法、コーティング、航空宇宙、自動車、油・ガス、及び海洋用途を含むがこれらに限定されない広範な用途に対応して物品を調製するためには有用である。炭素複合体は物品の全部又は一部を形成するために使用されてよい。それに応じて、炭素複合体を含む物品が提供される。物品としては、シール要素、放熱要素又は熱交換要素、若しくは減摩要素が挙げられる。

例示的なシール要素としては、例えば、静的シール又は動的シールなどのシール;シール座;回収可能セメンティング・パックオフ、ポリッシド・ボア・レセプタクル・パックオフ、ワイヤーライン・パックオフなどのパックオフ・シール;パッカー;ジョイントシート;ガスケット;ブリッジ・プラグ;ポンプ・パッキング、バルブ・パッキングなどのパッキング、などが挙げられる。シール要素の異なる種別の間には一部共通するところがあり得る。静的シールとは2つの安定して、且つ動かない構成部品間のシールを指し且つC−リング、E−リング、O−リング、U−リング、T−リング、L−リング、形リング、角リング、xセクションド・リング、などが挙げられる。動的シールは特に制限されていないで且つ比較的に動きやすい部材間の任意のシールが挙げられる。ガスケットは2つ以上の合わせ面間の空間を充填する機械的シールを指す。例示的ガスケットは圧力及び熱を受ける高性能ガスケット、例えば、自動車用ヘッド・ガスケット及び排気ガスケット及び精油用フランジ・ガスケットを含む。シール要素は優れた弾性特性を有する。こうして、シール要素はシールされる対象の表面における隙間及び欠陥を埋めて液密又は気密シールを提供することができる。シール要素は高い耐熱性及び耐久性を更に有することができ且つ広い温度範囲において使用されることができる。

本開示の炭素複合体は、高い熱伝導率及び異方性を有し且つ放熱要素又は熱交換要素の製造に使用されることができる。放熱要素は典型的にはコンピュータ、CPU、及びパワートランジスタなどの電子デバイス又は部品から発生される熱を急速に放出するために使用される。熱交換要素は熱を片方の媒体から他方の媒体へ伝達させ且つ空間加熱、冷蔵、空調電力プラント、化学プラント、石油化学プラント、石油精製所、天然ガス処理、下水処理、などにおいて使用される。例示的な放熱又は熱交換要素としてはヒートシンク、冷却システム、熱輻射部品、及び熱交換器。一実施形態において放熱要素はラップトップ・コンピュータ用のヒートシンクであり、これは重さを節減しながらコンピュータをクールな状態に保つ。

本開示の炭素複合体は高い強度、高い硬度、及び優れた自己潤滑特性を有する。こうして炭素複合体を含む物品は軸受、軸受座、コーティングなどの摩擦低減要素となることができる。

該物品はダウンホール要素となることができる。例示的な物品としては、シール、高圧力ビーズ・フラク・スクリーン・プラグ、スクリーン・ベース・パイプ・プラグ、ボール及びシート用コーティング、圧縮パッキング要素、膨張性パッキング要素、O−リング、ボンデッド・シール、ブレット・シール、サブサーフェス・セーフティ・バルブ・シール、サブサーフェス・セーフティバルブ・フラッパー・シール、ダイナミック・シール、V−リング、バックアップ・リング、ドリル・ビット・シール、ライナー・ポート・プラグ、大気ディスク、大気室ディスク、デブリ・バリヤー、ドリルイン・スチム・ライナー・プラグ、流入量制御装置プラグ、フラッパー、シート、ボールシート、ダイレクト・コネクト・ディスク、ドリルイン・リニア・ディスク、ガスリフト・バルブ・プラグ、流体損失制御フラッパー、電動潜水ポンプ・シール、シヤーアウト・プラグ、フラッパー・バルブ、ガスリフト・バルブ、及びスリーブが挙げられる。

炭素複合体は、約−65°Fから最大約1200°Fまでの動作温度の範囲で高い耐熱性を有する。それに、パッカーなどのダウンホール物品は750°F超又は1000°°F超の周囲温度を有する地中ロケーションから炭化水素を発生するのに使用されることができる。一実施形態において、本開示の物品は、熱分解(thermal cracking)、熱崩壊又は熱分解(thermal decomposition)の1つ以上に対して750°F超の周囲温度において30日間連続的に耐えられる。本明細書において使用されるとき、「連続的に耐えられる(continuously resistive)」とは、炭素複合体又は炭素複合体含有する物品の約10重量%未満、約5重量%未満、約2重量%未満、又は約1重量%未満が熱分解(thermally cracked)、熱崩壊(thermally degraded)、及び/又は熱分解(thermally decomposed)されることを意味する。

ダウンホール物品はまた、坑井を切り離す又は仕上げるために使用されることができる。該方法は、坑井内にダウンホール物品の1つ以上を備える装置を配備することを含む。例えば、該物品はプロダクション・チューブの1つ以上を取り囲む位置において試錐孔内のアニュラスを充填するのに適したタイプとすることができる。本明細書において使用されるとき、用語「プロダクション・チューブラ(production tubulars)」は、例えば、プロダクション・チュービング、プロダクション・ケーシング、中間ケーシング、及びそこを通って炭化水素が海面まで流れるデバイスなどではあるが、それらに制限されない、坑井を仕上げるに当たって使用される任意の種類のチューブラを含む旨、定義される。かかる物品の具体例は、非制限実施形態において、対象になっていない生産ゾーン又は水ゾーンなどを封鎖するために使用される環状アイソレータを含む。

物品は所望の形状を有する成形型を選ぶことによって炭素複合体に関して本明細書に記載された同じ条件下で1工程又は2工程プロセスにより黒鉛などの炭素及び結合剤を含有する組成物から直接に作製されることができる。あるいは、物品は整形又は機械加工若しくはそれらの組み合わせによって炭素複合体から形成される。整形は成型、押出成形、鋳造、及び積層を含む。機械加工としては、例えば、フライス盤、鋸、旋盤、くり抜き機、放電加工機などを使用して、切断、鋸引き、融除、フライス削り、表面仕上げ、旋削、穴あけなどが挙げられる。物品を作製するために使用される炭素複合体の形態は、特に限定されてなく例えば粉末、ペレット、シート、バー、ブロック、チューブ、円筒形ビレット、トロイドなどが挙げられる。

本明細書において開示されているすべての範囲は終点を含んでいる、かつ終点は独立して互いに結合可能である。接尾辞“(s)”は、本明細書において使用されるとき、その接尾辞が修飾する用語の単数及び複数の両方を含むことが意図され、これによってその用語の少なくとも1つを含む(例えば、colorant(s)は少なくとも1種のcolorants着色剤を含む)。“Or”は“及び/又は”を意味する。“Optional(オプションの)”又は“Optionally(オプションにより)”はその後に続いて記載される事象又は状況が起こる可能性もあれば起こらない可能性もあること、及びその記載がその事象が起こる場合及び起こらない場合を含むことを意味する。本明細書において使用されるとき、“combination(結合体)”はブレンド、混合物、合金、反応生成物などを含んでいる。“A combination thereof(それらの組み合わせ)”は“掲げられた項目のうちの1つ以上及びオプションにより掲げられていない同様の項目から成る組み合わせ”を意味する。すべての参照文献は参照により本明細書に組み込まれている。

本発明について記載する文脈において(特に次の請求項の文脈において)用語“a”及び“an”並びに“the”及び同様の指示物(リファラント)の使用は、本明細書において特段の指示がない限り若しくは文脈によって明らかに食い違わない限り、単数及び複数の両方をカバーするように理解されるものとする。また、本明細書において用語 “first(第1の)”、“second(第2の)”などはいかなる順番、数量、又は重要性を表すものではなく、むしろ一方の要素を他方から区別するために使用されることが更に注目されるべきである。数量と関連して使用される修飾語“about(約)”は、明記された値を含みかつ文脈によって要求される意味を持つ(例えば、特定の数量の測定に関連付けられた誤差の程度を含む)。

典型的な実施形態が例示の目的で記述されてきたが、前述した説明は本明細書における範囲に対する制限であると見なされるべきでない。それに応じて、様々な修正、 改変、及び代替物が本明細書における趣旨及び範囲を逸脱しないで当該技術における当業者によって行われることが可能である。

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