【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、岩盤中で機械的振動を発生するデバイス、特に、地震研究のための振動のような地殻内部または建設現場において、地震波や音波を発生するデバイスと、そのようなデバイスを用いて機械的振動を発生する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】調査研究を目的として地殻内部に地震波を発生するための色々と異なる技術が一般に知られている。 例を挙げれば、Miller等は、「地球物理」(vol. 57,No. 5,pp. 393)に、振動エネルギーを発生する方法と前記振動エネルギーを地面と連結することを開示する。 振動発生技術を別途に概観したものは、DE 23,34,996号に掲載されている。 衝撃様の励起を発生するために、爆破によって音波を発生することがDE22,02,289号から知られる。 DE19,5 0,91,22号からは、振動発生のための液圧衝撃デバイスが知られる。 振動発生の別の形態すなわちトリガーによって地震ガスを爆発させることは、DE19,5 3,924号に記載される。 これらの諸技術の一般的な不利は、調節可能性と衝撃パラメータの再現性が限られる点である。 しかしながら、特に、束の間の過程と発生された地震の振動エネルギーは曖昧にしか知られていないか、全く知られておらず、振動測定の精密な評価もまた限られる。 【0003】同時にまた、機械的な衝撃を発生させることも知られており、例えば、地上におけるハンマーショックによってせん断波が発生され(DE19,50,8 5,74号)、また、たて坑開削機における衝撃トランジューサによる大岩石中に地震波が発生され、たて坑開削機の静止中に衝撃の励起が開始される(DE19,5 0,85,74号)。 しかしながら、これらのデバイスをもってしても、例えば、トンネル構造物中における地震の試験の要件として充分である再現性を伴って地震振動或いは音波の振動を発生することは不可能である。 【0004】衝撃パルスを発生させるために、垂直方向に可動な質量を車両(例えばトラック)に搭載することも知られる。 しかしながら、これらの技術は、地上における使用にのみ適切なものであり、大きな質量と垂直な衝撃方向に加え、車両の大きさと操作の容易性に関して不利であるばかりでなく衝撃信号の再現性についても不利である。 【0005】可動質量による衝撃の発生における一般的な問題は、可動質量によって固体面に衝撃を付与した後、反動による衝撃が衝撃発生器に作用することである。 その結果は、反動による衝撃によって衝撃の励起が偽装されるので、地震測定の評価もまた偽装されることになる。 この問題に対処するために、DE32 24 624号は、このような反動に起因する衝撃を最小限度にとどめるために、質量捕捉デバイスを備える油圧制動機構を伴う可動質量付きの衝撃発生器を記述する。 しかしながら、この衝撃発生器は、複雑な構造を特徴とするので、例えば、実際に地下において使用するために応用することが困難である。 【0006】R. D. Carollによる〃A Vacuum Hammer Seismic Source for Underground Use〃という刊行物には、〃Int. J. Rock Mech. Min. Sci & Geom emech. Abstr. 〃vol. 30,No.5,1993,pp. 559,からの引用として、圧縮空気の噴出と真空吸着を交互に反復することによって、質量が垂直方向に移動されて、地中に衝撃信号を発生するデバイスが記載される。 このデバイスの不利な点は、操作が難しいことと、一方向にしか作用しないことである。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】従来技術の前記の不利益が排除または減少され、岩盤内部において調節可能な所望通りの方向において再現可能な衝撃信号を発生するのに特に適した、機械的振動を発生するための改良されたデバイスを提供することが、この発明の目的の1つである。 前記デバイスは、簡単な構造を有し、地下において操作することができ、この場合、反動によって生じる衝撃による擾乱信号が最小化されるとともに、特に、トンネル構築技術に利用が可能な機械およびデバイスと両立する。 この発明の目的はまた、そのような改良デバイスを使用することによる振動発生方法を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】これらの目的は、請求項1、請求項9記載のデバイスと方法によってそれぞれ達成される。 この発明の有利な具体例と応用例が従属請求項から把握される。 【0009】この発明は、案内ハウジング内で移動される衝撃質量によって機械的振動を発生するためにデバイス中に移動質量を備える従来の衝撃発生から出発して、 案内ハウジングを、振動の発生の対象とするしかるべき大鉱物塊に対して、予め決められた力の作用下に、空力式緊張デバイスによって固定するという発想に基づく。 この緊張デバイスは、従来技術の数点の問題に解決を提供する。 第1に、戻り衝撃すなわち反動衝撃の結果としての望ましくない信号波形が防止される。 空力式緊張デバイスは、反動衝撃を吸収する。 更には、緊張デバイスによって案内ハウジングを物体に対して正確にアライメントすることが、衝撃発生前に調節される。 衝撃の方向付けは所望の通りに選択される。 最後に、機械的振動を発生するためのこの発明のデバイスは、緊張デバイスを備えるが故に、反動衝撃を減少するための捕捉デバイスを備える従来のデバイスと比較して、比較的簡単な構造を有する。 【0010】この発明の別の重要な特徴によれば、衝撃質量は駆動用デバイスによって移動され、このデバイスによって、衝撃発生のエネルギーが再現可能な態様で調節される。 この目的で、使用に応じて付勢される位置測定センサーが設けられ、このセンサーによって、衝撃質量のストロークの長さが、後退位置と衝撃位置の間で調節されることが可能である。 衝撃質量を前進させるために、駆動ユニットは、空力式シリンダー(空気圧式シリンダー)を備える。 ストロークの長さに加えて、衝撃質量の後退位置を調節することによって、圧力シリンダー内の圧力が調節され、したがってまた、機械的衝撃のエネルギーが鉱物塊に伝達される。 【0011】発明の一つの主題は、この発明のデバイスを用いて機械的振動を発生する方法であり、この場合、 このデバイスは先ず、一定の位置に置かれ、該当する鉱物塊に対してアライメントされ、テンション付与デバイスによって固定される。 これに伴って、衝撃質量の一定の後退位置への移動が行われる。 衝撃質量は、圧力シリンダー内に所望の作用圧力が形成されるまでこの後退位置に固定される。 衝撃質量を後退位置から解放した後、 衝撃質量は衝撃位置に前進移動され、この位置において、支持体に衝撃を与え、衝撃すなわち力が衝撃質量から鉱物塊に伝達される。 【0012】この発明のデバイスは、特に、硬い地下構造または建設現場(特に、橋、ダム等の大規模建設現場)における衝撃状の振動の発生に好適である。 この発明のデバイスは、好ましくは地殻の大深度岩盤内において研究と利用の目的、特に山脈内にトンネルを建設する目的で地震振動を発生するための振動発生器を形成する。 【0013】この発明は、次の利点を有する。 この発明の振動発生にあっては、システムから承継される、できる限り大きいエネルギーと衝撃パルスが、できる限り小さなエリアを介して地中に導入される必要と、引っ掛かり能力と衝撃信号の再現性のために地面の材料が変化を受けることを避けたいという願望との間の矛盾が最高の態様で解決される。 その大きさについて、このデバイスは、手動操作のみならず、地下作業に適切である。 【0014】この発明のデバイスは、地上における建設技術のみならず、トンネル建設のための地下の開発という観点において広汎な利用分野を有する。 従来技術との比較において、信号発生の再現性は、衝撃ストロークおよび/または衝撃エネルギーを調節することによって有意に増加する。 【0015】 【発明の実施の形態】この発明の別の利点と細部を添付図面を参照しつつ説明する。 【0016】この発明は、地震研究のための振動励起器または振動発生器の好ましい具体例に関して以下に説明されるが、一般的には、地震学および/または建設現場において機械的振動を発生させるためのその他の諸デバイスを設計するために類似の態様で利用することができる。 以下の説明においては、発明の構成に不可欠の要件だけについて説明を行う。 空力式シリンダーおよびしかるべき高圧、低圧の管については当技術分野において周知であるから、説明中には詳細には述べない。 【0017】図1、図2は、この発明の振動発生器の外観を示しており、この発生器は、操作中の岩盤に直面する前側に、(図1、2に示す)衝撃トランジューサエリア12を有し、それと反対の側には、大型のデバイスへの取り付け体(図3)または地下の異種の取り付け体のための固定エリア13を有する。 衝撃トランジューサエリア12には、衝撃質量30を案内し、衝撃質量30に駆動デバイス40を取り付けるために、案内管によって案内ハウジング20が形成される。 この案内管は、2つの構成部分からなる。 それは、それぞれ、衝撃質量30 が移動可能である内側管21と駆動デバイス40の部分がその端部に装着される外側管22とで形成される。 この内側、外側管21、22は、積極的に拘束し合うように互いに挿入され、軸線方向には互いに対して可動である。 【0018】衝撃質量30は、内側管21内において、 衝撃位置Aと後退位置B(図2参照)の間を移動することができる。 衝撃質量30は、案内ローラー31によって内側管21内部において調心される。 衝撃質量30の各端部には、その断面形状においてaだけ離間した2つのグループをなして配置されるように4つの案内ローラー31が備わることが好ましい。 しかしながら、案内ローラー31の数を減らすことも実現可能である。 衝撃質量30の後端32には、ピストン34を備えるピストンロッド33が設けられる。 このピストンロッド33は、 ピストン34が圧力シリンダー42へ突出して、その内部において移動することができるような長さである。 図2においては、ピストンロッド33は、図面を簡単にするために図示を省略してある。 衝撃質量30の前端には、衝撃部材35が設けられる。 【0019】内側管21の前端には、支持体50を装着する端部プレート23が設けられる。 支持体50は、軸11の方向には端部プレート23に消極的に接続され、 それ以外のすべての方向には、(摩擦によって)積極的に拘束し合うように設けられる。 【0020】例えば、振動発生器10には、下記のようなディメンジョンが設定される。 衝撃質量の重量は約5 kgである。 間隔a(図2参照)は、約13cmである。 ピストン34の直径は約8cmである。 圧力シリンダー42 は、25cmの作動ストロークを備える40cmの合計ストロークを有するように設計される。 【0021】内側管21と外側管22はそれぞれに、横方向の突起24、25を備えており、これらの間には、 外側管22の周辺に沿ってテンション付与シリンダー6 1が均一な分布をなすように固定される。 ただ1つのテンション付与シリンダー61を設けるだけでも充分であるが、何本かのテンション付与シリンダー、少なくとも3本のシリンダーを設けることが好ましい。 加圧シリンダーとしても参照されるテンション付与シリンダー61 を付勢することによって、内側管と外側管21、22 は、互いに対しテレスコープ状に移動することができる。 作動位置において、振動発生器10は作動対象面に固定され、支持体50が所望の態様で岩盤の上に設置された後、支持体50が弾性的に緩衝され、各テンション付与シリンダーは、一定の張力で岩盤(例えば、図4の岩盤70)と向き合って接するまで圧縮空気が充填される。 【0022】衝撃質量30のための駆動デバイス40 は、外側管22の後端に設けられる。 この駆動デバイス40は、固定ユニット41と圧力シリンダー42とからなる。 この発明の好ましい具体例によれば、固定ユニット41は、フランジ接続部43によって外側管に別体に嵌合される圧力シリンダー42に固定される。 更に、圧力シリンダー42用の外側保護管すなわち固定管44が設けられる。 【0023】固定ユニット41は、空力的に作動されるクランプデバイスである。 固定ユニット41は、ピストンロッド33にバネ力で接するクランプジョーを備えており、作動圧力で固定ユニットに負荷をかけるとき、前記のジョーは空力的に互いに分離されるので、ピストンロッド33は軸方向に自由に移動することができる。 したがって、固定ユニット41は、2つの状態の間で切り換えられる。 外気との通気状態では、固定位置が実現され、この場合は、(図示されない)クランプジョーがピストンロッド33を固定する。 圧力付与の状態では、レリース状態が実現され、この場合は、衝撃質量30を伴うピストンロッドは、圧力シリンダー42内の高圧または低圧の状態に応じて、衝撃位置Aから後退位置Bへと移動される。 位置Bから位置Aへの移動も同様である。 【0024】参照番号45は、無接点位置センサーを表し、圧力シリンダー42内部におけるピストン34の前記センサーの軸方向位置に対する移動量を測定するために設計される。 この位置センサー45は、好ましくは、 ピストン34内に挿入されたリング状磁石と協働するソレノイドスイッチである。 したがって、固定ユニット4 1は、ピストンで直接的に切り換えられる。 固定ユニット45は、ピストンセンサー45の信号に基づいて切り換えられる。 位置センサー45は、軸方向に滑動可能に設けられるので、衝撃質量30の異なる後退位置Bを調節することができる。 圧力シリンダー42の前端、すなわち、案内ハウジングの側における調節の場合は、衝撃質量30の小さな作動ストローク、したがって、最小の衝撃エネルギーが得られる結果となる。 更にもっと後方へと調節すれば、作動ストロークと衝撃質量30のエネルギーは増大する。 【0025】振動発生器10は、下記の作動過程にしたがって作動される。 先ず最初に、衝撃ヘッドすなわち案内ハウジング20が、岩盤の中の所望の位置にしたがって手動で調節されるように、大きなデバイス、つまり固定デバイスすなわち別体のホルダーの重心のエリアに固定される。 この調節は、手動で行う代わりに、自動的に行うことも可能である。 これに付随して、テンション付与シリンダー61が高圧空気で充填されるので、内側管21が外側管22から岩盤に向かって移動される。 付与のし方によっては、予め決めたテンションの大きさ(例えば1500N)が、保持体50が岩と向き合って接するように調節される。 これに伴って、衝撃質量30が、 位置センサー45が所望の位置に調節された後、オプションによって、やはり接触位置にある衝撃位置Aから後退位置Bに後退される。 ピストン34が位置センサー4 5の位置に到達するや否や、固定ユニット41が大気に連通し、クランプジョーがピストンロッド33をグリップする。 【0026】更に、圧力シリンダー42は圧縮空気で充填される。 位置センサーの位置が、所望の衝撃エネルギーとなるように、最高圧力が調節される。 最高圧力は、 例えば、約0.8MPaである。 圧力シリンダー内が必要な圧力に到達するや否や、固定ユニット41内の空力シリンダー41が大気圧と連通され、クランプジョーの解放が付勢される。 これに付随して、ピストンおよびピストンと一緒に衝撃質量30が衝撃位置Aに向かって高速で加速される。 衝撃質量30は、位置Aにおいて、衝撃部材35と支持体50を介して、そのエネルギーを励起の対象である地面に伝達する。 その結果地中に発生するであろう反動による衝撃が、支持体50を介して反対方向に伝達され、内側管21とテンション付与シリンダー61内部において前記反動による衝撃が吸収される。 【0027】図3においては、トンネル掘削機(HC M)100が図示されており、機械的振動を発生するこの発明のデバイスと一緒に有利に使用される。 トンネル掘削機100は、岩盤70に掘削を施して前進する。 トンネル掘削機の支持部分110は岩盤70に対し、横方向支持部材120によって支持される。 実際の掘削作用はカッターヘッド130において起こる。 地震試験のタイプ、例えば、横方向の研究または前方向の研究かに応じて、そして、HCM100の構造に応じて、少なくとも1つの振動発生器をカッターヘッド130の後方の(鎧装)面に直接設けるか、或いは、支持部材120の1つに設けるかが、独自の工夫で示唆される。 【0028】この発明の振動発生器10の手動による操作が図4に示される。 振動発生器10は、例えば、岩盤70を貫通して延出する山中の中空部に設置される。 駆動デバイス40を備える案内管22は、それが、別体の三角柱18に対して、長手方向位置(ΔL)およびその高さ位置(ΔH)について調節できるだけでなく、(Δ φ度)だけ回動することができるようにシステムの重心エリアに固定される。 これに付随して、固定エリア13 が2段階に亘って、手動調節が可能な位置に適合される。 第1のステップにおいては、必要な長さに連続的に調節することができる孔配列体によっておよその調節とロックを行い、ロックボルト15の鎖錠が実行される。 次に、取り付け部16がネジ山と調節ナット17によって固定される。 これに伴って、振動発生器10へのテンションの付与とトリガーが上に説明した態様で惹起される。 【図面の簡単な説明】 【図1】この発明の振動発生器の案内ハウジングの断面図。 【図2】図1の発生器の衝撃ヘッドの拡大断面図。 【図3】この発明の振動発生器と共用するように設計されたトンネル掘削の概略図。 【図4】地下用途の別体の移動性ホルダーに装着したこの発明の振動発生器の概略的俯瞰図。 【符号の説明】 10…振動発生器,13…固定エリア,20…案内ハウジング,21…内側管,22…外側管,30…衝撃質量,34…ピストン,40…駆動デバイス,42…圧力シリンダー,45…位置センサー,50…支持体,61 …テンション付与シリンダー,70…岩盤,100…トンネル掘削機。 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 リューディガー・ギーゼ ドイツ連邦共和国、デー−14715 シュメ ッツドルフ、ラテノーバー・シュトラーセ 2 (72)発明者 ペータ・オットー ドイツ連邦共和国、デー−14471 ポツダ ム、マイバッハシュトラーセ 3ベー (72)発明者 クリスティアン・ゼルケ ドイツ連邦共和国、デー−14626 ダルゴ ウ、ミッテルシュトラーセ 14 |