分量観察装置、水分量観察方法及び栽培装置

申请号 JP2016036404 申请日 2016-02-26 公开(公告)号 JP5982731B1 公开(公告)日 2016-08-31
申请人 パナソニックIPマネジメント株式会社; 发明人 藤山 毅; 寺島 祐二;
摘要 【課題】 植物 に含まれる 水 分量の推移を定量的かつ時系列に提示し、植物に対する水ストレスの付与の程度に関して初期時からの水分量の推移を正確に捉える。 【解決手段】閾値設定/水分指数検出処理部27aは、反射強度比の総和であるΣLn(I 905 /I 1550 )を、葉1枚の水分指数として算出する。制御部11は、測定期間の開始時から終了時までの植物の葉に含まれる水分量の時系列の推移を表すグラフをモニタ50のUI画面60に表示する。制御部11は、測定期間の開始時に算出した反射 位置 毎の水分量が閾値Shを超えた反射位置の集合を、葉PT3として固定的に決定して設定する。植物の葉には、第1の投射 光源 及び第2の投射光源から見て、植物の葉の背面を覆う白色背景板が配置される。 【選択図】図28
权利要求

植物に含まれる分量を観察する水分量観察装置であって、 水分に吸収され難い特性を有する第1波長の近赤外レーザ参照光を前記植物に向けて順次走査しながら照射する第1光源と、 水分に吸収され易い特性を有する第2波長の近赤外レーザ測定光を前記植物に向けて順次走査しながら照射する第2光源と、 前記植物に含まれる水分の有無を示す非可視光画像を出する出力部と、 一定の測定期間において、前記近赤外レーザ参照光の反射光と前記近赤外レーザ測定光の反射光とを基に、前記非可視光画像を構成する画素領域毎に、画素領域に含まれる水分量を繰り返し算出する水分量算出部と、 前記水分量算出部により算出された、前記測定期間の開始時から終了時までの前記画素領域に含まれる水分量の時系列の推移を表示部に表示する制御部と、を備え、 前記制御部は、前記非可視光画像を構成する全ての画素領域のうち、前記測定期間の開始時に前記水分量算出部により算出された水分量が閾値を超えた画素領域の集合を、前記植物の観察対象部位として固定的に決定する、 水分量観察装置。請求項1に記載の水分量観察装置であって、 前記植物には、前記第1光源及び前記第2光源から見て、前記植物の背面を覆う背景物が配置される、 水分量観察装置。請求項2に記載の水分量観察装置であって、 前記水分量算出部は、前記植物の対象部位として固定的に決定された前記画素領域の集合内において、前記画素領域毎に水分量を算出し、 前記出力部は、前記水分量算出部によって前記画素領域毎に算出された水分量に応じて、前記非可視光画像を段階的かつ識別可能に表示する、 水分量観察装置。請求項1に記載の水分量観察装置と、 前記測定期間のうち一部の期間において前記水分量算出部により算出された前記水分量の時系列の推移に基づいて、所定量の水分を前記植物に灌水する栽培制御部と、を備える、 栽培装置。植物に含まれる水分量を観察する水分量観察装置における水分量観察方法であって、 第1光源が、水分に吸収され難い特性を有する第1波長の近赤外レーザ参照光を前記植物に向けて順次走査しながら照射し、 第2光源が、水分に吸収され易い特性を有する第2波長の近赤外レーザ測定光を前記植物に向けて順次走査しながら照射し、 前記植物に含まれる水分の有無を示す非可視光画像を出力し、 一定の測定期間において、前記近赤外レーザ参照光の反射光と前記近赤外レーザ測定光の反射光とを基に、前記非可視光画像を構成する画素領域毎に、画素領域に含まれる水分量を繰り返し算出し、 前記測定期間の開始時から終了時までに算出された前記画素領域に含まれる水分量の時系列の推移を表示部に表示することを特徴とし、 さらに、前記植物の観察対象部位は、前記非可視光画像を構成する全ての画素領域のうち、前記測定期間の開始時に算出された水分量が閾値を超えた画素領域の集合として固定的に決定される、 水分量観察方法。

说明书全文

本発明は、植物に含まれる分量を観察する水分量観察装置、水分量観察方法、及び栽培装置に関する。

従来、正常な植物では細胞の内外に電位差が存在し、起電が発生することが知られている。このような起電力が発生することのメカニズムは、例えば高等植物の軸性器官の電気生理学的モデルに基づいて説明が可能である。特に、根と土壌との間の起電力を利用して、植物の根の状態(例えば水ストレス)を非破壊的に調べる方法が各種提案されている。

上記方法を利用して植物における水ストレスを測定する先行技術として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1では、植物に第1の非分極性電極が接続され、植物が植生されている土壌に第2の非分極性電極が接続され、これら2つの非分極性電極間に電位差計が設けられ、この電位差計によって両非分極性電極間の起電力が測定されたことによって植物が受けている水ストレスが測定可能となる。

特開2001−272373号公報

しかしながら、特許文献1を含む従来技術には、植物に含まれる水分量の状態を有意義に測定するための指標として、例えば植物の葉の育成過程における水ストレスの推移を定量的かつ時系列に提示するという着想は無かった。この場合、植物の葉における水ストレスの付与量の時系列の推移を正確に評価する上では、測定対象となる植物の葉の初期時の形状特定が基準となり、この特定された形状を基準として葉の水分量を観察することが重要である。植物(例えばトマト等の野菜)を栽培する農家では、トマトの価値(つまり、単価)を向上するために、例えばトマトの糖度を向上させることが考えられるが、この糖度を増すためには、どのようなタイミングでどの程度の灌水を行えば良いのかは、農夫の過去の経験や勘等、人為的な取り決めに起因するところが大きかった。

一般的に、トマト等の果実の糖度を上げることは、品質の向上に繋がって単価も上昇するが、その反面、育成が容易ではないこともあるために歩留まりが下がって生産量が減少するという側面が強い。つまり、果実の高機能化と歩留まりとは、トレードオフの関係にある。このため、今後、歩留まりを向上させて生産性を高めることが期待されている。

また、特許文献1に記載のように、植物や土壌に電極を接続して測定する場合、測定時間によっては植物の根等を痛めてしまうことも懸念される。

本発明は、上述した従来の状況に鑑みてなされたものであり、植物に含まれる水分量の推移を定量的かつ時系列に提示し、植物に対する水ストレスの付与の程度に関して初期時からの水分量の推移を正確に捉えることができる水分量観察装置、水分量観察方法及び栽培装置を提供することを目的とする。

本発明は、植物に含まれる水分量を観察する水分量観察装置であって、水分に吸収され難い特性を有する第1波長の近赤外レーザ参照光を前記植物に向けて順次走査しながら照射する第1光源、水分に吸収され易い特性を有する第2波長の近赤外レーザ測定光を前記植物に向けて順次走査しながら照射する第2光源と、前記植物に含まれる水分の有無を示す非可視光画像を出力する出力部と、一定の測定期間において、前記近赤外レーザ参照光の反射光と前記近赤外レーザ測定光の反射光とを基に、前記非可視光画像を構成する画素領域毎に、画素領域に含まれる水分量を繰り返し算出する水分量算出部と、前記水分量算出部により算出された、前記測定期間の開始時から終了時までの前記画素領域に含まれる水分量の時系列の推移を表示部に表示する制御部と、を備え、前記制御部は、前記非可視光画像を構成する全ての画素領域のうち、前記測定期間の開始時に前記水分量算出部により算出された水分量が閾値を超えた画素領域の集合を、前記植物の観察対象部位として固定的に決定する、水分量観察装置を提供する。

また、本発明は、水分量観察装置と、測定期間のうち一部の期間において前記水分量算出部により算出された前記水分量の時系列の推移に基づいて、所定量の水分を前記植物に灌水する栽培制御部と、を備える、栽培装置を提供する。

また、本発明は、植物に含まれる水分量を観察する水分量観察装置における水分量観察方法であって、第1光源が、水分に吸収され難い特性を有する第1波長の近赤外レーザ参照光を前記植物に向けて順次走査しながら照射し、第2光源が、水分に吸収され易い特性を有する第2波長の近赤外レーザ測定光を前記植物に向けて順次走査しながら照射し、前記植物に含まれる水分の有無を示す非可視光画像を出力し、一定の測定期間において、前記近赤外レーザ参照光の反射光と前記近赤外レーザ測定光の反射光とを基に、前記非可視光画像を構成する画素領域毎に、画素領域に含まれる水分量を繰り返し算出し、前記測定期間の開始時から終了時までに算出された前記画素領域に含まれる水分量の時系列の推移を表示部に表示することを特徴とし、さらに、前記植物の観察対象部位は、前記非可視光画像を構成する全ての画素領域のうち、前記測定期間の開始時に算出された水分量が閾値を超えた画素領域の集合として固定的に決定される、水分量観察方法を提供する。

本発明によれば、植物に含まれる水分量の推移を定量的かつ時系列に提示し、植物に対する水ストレスの付与の初期時からの水分量の推移を正確に捉えることができる。

第1の実施形態における植物検出カメラの使用状況の一例を示す概念説明図

植物検出カメラの内部構成の一例を詳細に示すブロック図

植物検出カメラの画像判定部の内部構成の一例を詳細に示す図

植物検出カメラの制御部における初期設定動作の一例を説明するフローチャート

非可視光センサにおける水分の検出の原理説明図

水(H

2O)に対する近赤外光の分光特性の一例を示すグラフ

非可視光センサにおける植物の葉に含まれる水分の検出に関する詳細な動作手順の一例を説明するフローチャート

ステップS18−5における水分指数の算出手順の一例を説明するフローチャート

比較例の測定方法の一例を説明する図

(A)屋外において葉に向かって近赤外光を照射した際、近赤外光の波長に対する反射光の強度の一例を示すグラフ、(B)屋内及び屋外において白色背景板bdが設置された葉に向かって近赤外光を照射した際、近赤外光の波長に対する反射光の強度の一例を示すグラフ

白色背景板への葉の取り付け方の一例の説明図

第1回目の水ポテンシャル制御実験における標準化画素平均水分指数の時間変化の一例を示すグラフ

第2回目の水ポテンシャル制御実験における標準化画素平均水分指数の時間変化の一例を示すグラフ

灌水量と灌水タイミングの一例を説明するグラフ

第1の実施形態における最適灌水量探索手順の一例を説明するフローチャート

水ポテンシャル制御に関するユーザインタフェース(UI)画面の一例を示す図

UI画面にポップアップ表示された探索灌水量入力画面の一例を示す図

第1の実施形態の水ストレス制御(栽培制御)手順の一例を説明するフローチャート

(A)〜(D)水ストレスプロファイルの一例を模式的に示す図

第1の実施形態の変形例1における最適灌水量探索手順の一例を説明するフローチャート

(A)第2の実施形態の植物検出カメラによって撮像される、測定対象の葉の含水率を表す画像を示し、かつ位置ズレ前の葉の画像の一例を示す図、(B)第2の実施形態の植物検出カメラによって撮像される、測定対象の葉の含水率を表す画像を示し、かつ位置ズレ後の葉の画像の一例を示す図

位置ズレが起きた場合の水ポテンシャル制御実験における標準化画素平均水分指数の時間変化の一例を示すグラフ

位置ズレ補正前後の標準化画素平均水分指数の一例を時系列に示すテーブル

第2の実施形態における位置ズレ補正手順の一例を説明するフローチャート

(A)第2の実施形態の変形例1における位置ズレを検出するために用いられる白色背景板を示す図であり、かつ白色背景板の正面図、(B)第2の実施形態の変形例1における位置ズレを検出するために用いられる白色背景板を示す図を示し、かつ(A)に示す白色背景板の側面図

第2の実施形態の変形例2における白色背景板と植物検出カメラとの機械的な配置の一例を説明する図

反射強度比に対応する階調色を示すテーブル

葉が占有している画素空間を含むフレーム画像の一部における反射強度比を示すテーブル

測定対象となる葉の初期占有輪郭(外郭)の決定する動作手順の一例を説明するフローチャート

(A)トマトの茎葉を撮像したフレーム画像、(B)(A)の可視光画像に対し、撮影距離3m、閾値を0.05に設定した場合に求められた葉の占有空間を示す図、(C)(A)の可視光画像に対し、撮影距離1m、閾値を0.3に設定した場合に求められた葉の占有空間を示す図

閾値設定手順を示すフローチャート

全画素における反射強度比の度数分布を示すグラフ

以下、適宜図面を参照しながら、本発明に係る水分量観察装置、栽培装置及び水分量観察方法を具体的に開示した各実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。

(第1の実施形態) 本実施形態の水分量観察装置の一例として、図1に示す植物検出カメラ1を例示して説明する。また、本実施形態の栽培装置は、図1に示す植物検出カメラ1と、肥料(例えば液肥、つまり液体肥料)を供給したり所定量の水分を植物に灌水したりする栽培制御部の一例としての肥料水供給装置WFと、ユーザインタフェース(User Interface)画面60(図16参照)等を表示するモニタ50とを含む構成である。また、本発明は、植物検出カメラ1が行う各処理を実行する水分量観察方法として表現することも可能である。本実施形態の植物検出カメラ1は、植物の水分の有無の分布状態を検出できる。以下、植物の対象部位として葉を例示して説明するが、植物の対象部位は葉に限定されず、実、茎、花、根等の他の部位でも構わない。

ここで、本実施形態の植物検出カメラ1の観察対象は植物とし、より具体的な例を挙げるとすると果菜類を例示して説明する。例えばトマト等の果菜類の生育においては、トマトの果実の糖度を増すためには、根及び葉の水分や肥料が光合成において適量に消化された結果、十分に水分や肥料が供給された状態ではなく、水分や肥料がある程度不足状態になることが必要であることが知られている。例えば葉に十分な水分が供給されていれば、葉は健全な状態として平坦な形状となる。一方、葉への水分が相当に不足していると、葉の形状が反る。一方、土壌への肥料が相当に不足していると、葉が黄色くなる等の症状が発生する。

以下の本実施形態では、植物検出カメラ1は、植物(例えば葉)に波長の異なる複数種類のレーザ光を照射し、葉の照射位置(言い換えると、レーザ光が照射される葉の反射位置、又は、葉を撮像した時に得られる可視光撮像画像を構成する個々の画素を示す領域)において反射したそれぞれの拡散反射光の強度比を基に、葉の水分を検出する例を説明する。

(植物検出カメラの概要) 図1は、第1の実施形態における植物検出カメラ1の使用状況の一例を示す概念説明図である。植物検出カメラ1は、例えばトマト等の果菜類が植生されているビニールハウス内の定点に設置される。具体的には、植物検出カメラ1は、例えば地面から鉛直上方向に立伸している円柱状の支柱MT1を挟むように取り付けられた取付冶具ZGに固定された基台BS上に設置されている。植物検出カメラ1は、支柱MT1に取り付けられた電源スイッチPWSから電源が供給されて動作し、観察対象の植物PTに向けて波長の異なる複数種類のレーザ光である参照光LS1,測定光LS2を照射範囲RNGにわたって照射する。

植物PTは、例えばトマト等の果菜類の植物であり、土台BB上に設置された養土ポットSLPに充填された養土SLから根を生やしており、幹PT1、茎PT2、葉PT3、果実PT4、花PT5をそれぞれ有する。土台BB上には、肥料水供給装置WFが設置されている。肥料水供給装置WFは、LAN(Local Area Network)ケーブルLCB2を介して接続された無線通信システムRFSYからの指示により、例えばケーブルWLを介して水を養土ポットSLPに供給する。これにより、養土SLに水が供給されることになるので、植物PTの根が水分を吸収し、植物PT内の各部(つまり、幹PT1、茎PT2、葉PT3、果実PT4、花PT5)に水分が供給される。

また、植物検出カメラ1は、参照光LS1,測定光LS2が照射された植物PTの照射位置において反射した拡散反射光RV1,RV2を受光し、更に、環境光RV0も受光する。後述するように、植物検出カメラ1は、通常のカメラ機能を有し、環境光RV0の入光によって既定の画内の画像(つまり、図1に示すビニールハウス内の植物PTの可視光画像)を撮像可能である。植物検出カメラ1は、拡散反射光RV1,RV2を基にした各種の検出結果(後述参照)や画像データを含む出力データをデータロガーDLに出力する。

データロガーDLは、植物検出カメラ1からの出力データを、LANケーブルLCB1及び無線通信システムRFSYを介して、ビニールハウスとは地理的に離れた位置にある事務所内制御室の管理PC(Personal Computer、不図示)に送信する。無線通信システムRFSYは、特に通信仕様は限定されないが、ビニールハウス内のデータロガーDLと事務所内制御室内の管理PCとの間の通信を制御し、更に、養土ポットSLPへの水や肥料の供給に関する管理PCからの指示を肥料水供給装置WFに送信する。

事務所内制御室内の管理PCにはモニタ50が接続され、管理PCは、データロガーDLから送信された植物検出カメラ1の出力データをモニタ50に表示する。図1では、モニタ50は、例えば観察対象の植物PTの全体と、植物PT全体の水分の有無に関する分布状態とを表示している。また、モニタ50は、植物PTの全体のうち特定の指定箇所(つまり、管理PCを使用する観察者のズーム操作によって指定された指定箇所ZM)の拡大分布状態とその指定箇所に対応する画像データとを生成して対比可能に表示している。また、表示部の一例としてのモニタ50は、後述する葉中水分モニタリング画面Gm1(図16参照)を含むUI画面60を表示する。

植物検出カメラ1は、可視光カメラVSCと、非可視光センサNVSSとを含む構成である。取得部の一例としての可視光カメラVSCは、例えば既存の監視カメラと同様に、所定の波長(例えば0.4〜0.7μm)を有する可視光に対する環境光RV0を用いて、ビニールハウス内の植物PTを撮像する。以下、可視光カメラVSCにより撮像された植物の画像データを、「可視光カメラ画像データ」という。

非可視光センサNVSSは、可視光カメラVSCと同一の植物PTに対し、複数種類の波長(後述参照)を有する非可視光(例えば赤外光)である参照光LS1,測定光LS2を投射する。非可視光センサNVSSは、参照光LS1,測定光LS2が照射された植物PTの照射位置(言い換えると、参照光LS1,測定光LS2が照射される葉の撮像画像を構成する個々の画素を示す領域又はレーザ光が反射される反射位置)において反射した拡散反射光RV1,RV2の強度比を用いて、観察対象である植物PTの照射位置における水分の有無を検出する。

また、植物検出カメラ1は、可視光カメラVSCが撮像した可視光カメラ画像データに、非可視光センサNVSSの水分の検出結果に相当する出力画像データ(以下、「検出結果画像データ」という)又は検出結果画像データに関する情報を合成した表示データを生成して出力する。表示データは、検出結果画像データと可視光カメラ画像データとが合成された画像データに限定されず、例えば検出結果画像データと可視光カメラ画像データとが対比可能に生成された画像データでもよい。植物検出カメラ1からの表示データの出力先は、例えばネットワーク(不図示)を介して植物検出カメラ1に接続された外部接続機器であり、データロガーDL又は通信端末MTである(図2参照)。このネットワークは、有線ネットワーク(例えばイントラネット、インターネット)でも良いし、無線ネットワーク(例えば無線LAN)でもよい。

(植物検出カメラの各部の説明) 図2は、植物検出カメラ1の内部構成の一例を詳細に示すブロック図である。図2に示す植物検出カメラ1は、非可視光センサNVSSと、可視光カメラVSCとを含む構成である。非可視光センサNVSSは、制御部11と、投射部PJと、画像判定部JGとを含む構成である。投射部PJは、第1投射光源13と、第2投射光源15と、投射光源走査用光学部17とを有する。画像判定部JGは、撮像光学部21と、受光部23と、信号加工部25と、検出処理部27と、表示処理部29とを有する。可視光カメラVSCは、撮像光学部31と、受光部33と、撮像信号処理部35と、表示制御部37とを有する。通信端末MTは、ユーザ(例えばトマト等の果菜類の植物PTの生育の観察者。以下同様。)により携帯される。

植物検出カメラ1の各部の説明では、制御部11、非可視光センサNVSS、可視光カメラVSCの順に説明する。

制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)を用いて構成され、可視光カメラVSCや非可視光センサNVSSの各部の動作制御を全体的に統括するための信号処理、他の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理及びデータの記憶処理を行う。また、制御部11は、後述するタイミング制御部11aを含む(図3参照)。

制御部11は、非可視光センサNVSSの検出対象となる植物PTの検出閾値Mを後述する検出処理部27に設定する。制御部11の動作の詳細については、図4を参照して後述する。

タイミング制御部11aは、投射部PJにおける第1投射光源13及び第2投射光源15の投射タイミングを制御する。具体的には、タイミング制御部11aは、第1投射光源13及び第2投射光源15に投射光を投射させる場合に、光源走査用タイミング信号TRを第1投射光源13及び第2投射光源15のそれぞれに出力する。

また、タイミング制御部11aは、所定の投射周期の開始時に、光源発光信号RFを第1投射光源13又は第2投射光源15に交互に出力する。具体的には、タイミング制御部11aは、奇数番目の投射周期の開始時に光源発光信号RFを第1投射光源13に出力し、一方で、偶数番目の投射周期の開始時に光源発光信号RFを第2投射光源15に出力する。

次に、非可視光センサNVSSの各部について説明する。

第1光源の一例としての第1投射光源13は、制御部11のタイミング制御部11aから光源走査用タイミング信号TRを受けると、奇数番目の投射周期(既定値)毎に、タイミング制御部11aからの光源発光信号RFに応じて、所定の波長(例えば905nm)を有する非可視光のレーザ光である参照光LS1(例えば近赤外光)を、投射光源走査用光学部17を介して、植物PTに投射する。

なお、植物PTにおける水分の検出の有無は、所定の検出閾値Mと比較することで判断される。この検出閾値Mは、予め決められた値でもよく、任意に設定された値でもよく、更に、水分が無い状態で取得された拡散反射光の強度を基にした値(例えば水が無い状態で取得された拡散反射光の強度の値に所定のマージンが加算された値)でもよい。即ち、水分の検出の有無は、水分が無い状態で取得された検出結果画像データと、その後取得された検出結果画像データとを比較することで、判断されてもよい。このように、水分が無い状態における拡散反射光の強度を取得しておくことで、水分の有無の検出閾値Mとして、植物検出カメラ1の設置された環境に適する閾値を設定することができる。

第2光源の一例としての第2投射光源15は、制御部11のタイミング制御部11aから光源走査用タイミング信号TRを受けると、偶数番目の投射周期(既定値)毎に、タイミング制御部11aからの光源発光信号RFに応じて、所定の波長(例えば1550nm)を有する非可視光のレーザ光である測定光LS2(例えば赤外光)を、投射光源走査用光学部17を介して、植物PTに投射する。本実施形態では、第2投射光源15から投射される測定光LS2は、植物PTにおける水分の検出の有無の判定に用いられる。測定光LS2の波長1550nmは、水分に吸収され易い特性を有する波長である(図6参照)。

更に、植物検出カメラ1は、植物PTの照射位置における水分を検出するための参照データとして参照光LS1の拡散反射光RV1を用い、測定光LS2が照射された植物PTの照射位置における拡散反射光RV2と参照光LS1の拡散反射光RV1とを基に、参照光LS1及び測定光LS2が照射された植物PTの照射位置における水分の有無を検出する。従って、植物検出カメラ1は、植物PTにおける水分の検出に異なる2種類の波長の参照光LS1,測定光LS2及びそれらの拡散反射光RV1,RV2を用いることで、植物PTの水分を高精度に検出できる。

投射光源走査用光学部17は、非可視光センサNVSSにおける検出エリアに存在する植物PTに対し、第1投射光源13から投射される参照光LS1又は第2投射光源15から投射される測定光LS2を2次元的に走査する。これにより、植物検出カメラ1は、測定光LS2が植物PTの照射位置において反射した拡散反射光RV2と上述した拡散反射光RV1とを基に、参照光LS1及び測定光LS2が照射される植物PTの照射位置における水分の有無を検出できる。

次に、画像判定部JGの内部構成について、図2及び図3を参照して詳細に説明する。図3は、植物検出カメラ1の画像判定部JGの内部構成の一例を詳細に示す図である。

撮像光学部21は、例えば単一の又は複数のレンズを用いて構成され、植物検出カメラ1の外部から入射する光(例えば拡散反射光RV1又は拡散反射光RV2)を集光し、拡散反射光RV1又は拡散反射光RV2を受光部23の所定の撮像面(不図示)に結像させる。

受光部23は、参照光LS1及び測定光LS2の両方の波長に対する分光感度のピークを有するイメージセンサである。受光部23は、撮像面に結像した拡散反射光RV1又は拡散反射光RV2の光学像を電気信号に変換する。受光部23の出力は、電気信号(電流信号)として信号加工部25に入力される。なお、撮像光学部21及び受光部23は、非可視光センサNVSSにおける撮像部としての機能を有する。

信号加工部25は、I/V変換回路25aと、増幅回路25bと、コンパレータ/ピークホールド処理部25cとを有する。I/V変換回路25aは、受光部23の出力信号(アナログ信号)である電流信号を電圧信号に変換する。増幅回路25bは、I/V変換回路25aの出力信号(アナログ信号)である電圧信号のレベルを、コンパレータ/ピークホールド処理部25cにおいて処理可能なレベルまで増幅する。

コンパレータ/ピークホールド処理部25cは、増幅回路25bの出力信号(アナログ信号)と所定の閾値との比較結果に応じて、増幅回路25bの出力信号を2値化して閾値設定/水分指数検出処理部27aに出力する。また、コンパレータ/ピークホールド処理部25cは、ADC(Analog Digital Converter)を含み、増幅回路25bの出力信号(アナログ信号)のAD(Analog Digital)変換結果のピークを検出して保持し、更に、ピークの情報を閾値設定/水分指数検出処理部27aに出力する。

検出処理部27は、閾値設定/水分指数検出処理部27aと、メモリ27bと、検出結果フィルタ処理部27cとを有する。閾値保持部の一例としての閾値設定/水分指数検出処理部27aは、予め度数分布データを作成して登録する。度数分布データは、1フレーム画像の全画素における反射強度比(水分指数)の度数分布を示す。閾値算出部の一例としての閾値設定/水分指数検出処理部27aは、後述するように、この度数分布データを用いて、葉の形状を識別するための反射強度比の閾値Shを算出して設定する。

また、水分検出部の一例としての閾値設定/水分指数検出処理部27aは、参照光LS1の拡散反射光RV1におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(つまり、ピークの情報)と、測定光LS2の拡散反射光RV2におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(つまり、ピークの情報)とを基に、植物PTの参照光LS1及び測定光LS2の照射位置における水分の有無を検出する。

具体的には、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、例えば参照光LS1の拡散反射光RV1におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(つまり、ピークの情報)をメモリ27bに一時的に保存し、次に、測定光LS2の拡散反射光RV2におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(つまり、ピークの情報)が得られるまで待機する。閾値設定/水分指数検出処理部27aは、測定光LS2の拡散反射光RV2におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(つまり、ピークの情報)が得られた後、メモリ27bを参照して、画角内に含まれる植物PTの同一ラインにおける参照光LS1の拡散反射光RV1におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(つまり、ピークの情報)と、測定光LS2の拡散反射光RV2におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(つまり、ピークの情報)との比を算出する。

例えば水分が存在する照射位置では、測定光LS2の一部が吸収され易いので、拡散反射光RV2の強度(つまり、振幅)が減衰する。従って、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、画角内に含まれる植物PTのライン毎の算出結果(例えば拡散反射光RV1と拡散反射光RV2の各強度の差分(振幅の差分ΔV)の算出結果、又は拡散反射光RV1と拡散反射光RV2の強度比)を基に、参照光LS1及び測定光LS2の照射位置における水分の有無を検出することができる。

なお、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、参照光LS1の拡散反射光RV1の振幅VAと、測定光LS2の拡散反射光RV2の振幅VBとの振幅差分(VA−VB)と振幅VAとの比RTと所定の検出閾値Mとの大小の比較に応じて、植物PTの参照光LS1及び測定光LS2の照射位置における水分の有無を検出しても良い(図5参照)。

更に、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、拡散反射光RV1と拡散反射光RV2の強度比、つまり反射強度比(測定値ともいう)Ln(I905/I1550)を算出し、この反射強度比Ln(I905/I1550)の総和又はこの総和を葉と見なされる画素領域の集合(後述参照、例えば図8又は図29参照)を構成する画素数で除した平均値から、葉に含まれる水分量に相当する水分指数を得る。画素領域は、上述したように、植物検出カメラ1の観察対象として葉PT3を可視光で撮像した時に得られる可視光撮像画像又は非可視光(例えば参照光LS1,測定光LS2)が照射された結果として表示処理部29により得られる非可視光画像を構成する1つ1つの画素を示す領域である。水分指数の詳細については後述する。反射強度比Ln(I905/I1550)は、可視光カメラVSCで撮像されるフレーム画像における全画素において、例えば所定の画素数(4×4画素)毎に算出され、所定の画素数毎に反射強度比W1〜Wkとして表現されてもよいし、4×4画素毎に算出されなくても、1(=1×1)画素毎に算出されてもよい。

メモリ27bは、例えばRAM(Random Access Memory)を用いて構成され、参照光LS1の拡散反射光RV1におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(つまり、ピークの情報)を一時的に保存する。

検出結果フィルタ処理部27cは、閾値設定/水分指数検出処理部27aの出力を基に、植物検出カメラ1からの水分の検出結果に関する情報をフィルタリングして抽出する。検出結果フィルタ処理部27cは、抽出結果に関する情報を表示処理部29に出力する。例えば検出結果フィルタ処理部27cは、植物PTの参照光LS1及び測定光LS2の照射位置における水分の検出結果に関する情報を表示処理部29に出力する。

表示処理部29は、検出結果フィルタ処理部27cの出力を用いて、照射位置における水分に関する情報の一例として、植物検出カメラ1からの距離毎の照射位置における水分の位置を示す非可視光画像データ(検出結果画像データ)を生成する。出力部の一例としての表示処理部29は、植物検出カメラ1から照射位置までの距離の情報を含む検出結果画像データを可視光カメラVSCの表示制御部37に出力する。なお、非可視光画像データには、植物検出カメラ1から照射位置までの距離の情報が含まれなくても構わない。

次に、可視光カメラVSCの各部について説明する。撮像光学部31は、例えばレンズを用いて構成され、植物検出カメラ1の画角内からの環境光RV0を集光し、環境光RV0を受光部33の所定の撮像面に結像させる。

受光部33は、可視光の波長(例えば0.4μm〜0.7μm)に対する分光感度のピークを有するイメージセンサである。受光部33は、撮像面に結像した光学像を電気信号に変換する。受光部33の出力は、電気信号として撮像信号処理部35に入力される。なお、撮像光学部31及び受光部33は、可視光カメラVSCにおける撮像部としての機能を有する。

撮像信号処理部35は、受光部33の出力である電気信号を用いて、人が認識可能なRGB(Red Green Blue)又はYUV(輝度・色差)等により規定される可視光画像データを生成する。これにより、可視光カメラVSCにより撮像された可視光画像データが形成される。撮像信号処理部35は、可視光画像データを表示制御部37に出力する。

表示制御部37は、撮像信号処理部35から出力された可視光画像データと、表示処理部29から出力された検出結果画像データとを用いて、水分が可視光画像データのいずれかの位置で検出された場合に、水分に関する情報の一例として、可視光画像データと検出結果画像データとを合成した表示データ、又は可視光画像データと検出結果画像データとを対比可能に表した表示データを生成する。表示制御部37(出力部)は、表示データを、例えばネットワークを介して接続されたデータロガーDL又は通信端末MTに送信して表示を促す。

データロガーDLは、表示制御部37から出力された表示データを通信端末MT又は1つ以上の外部接続機器(不図示)に送信し、通信端末MT又は1つ以上の外部接続機器(例えば図1に示す事務所内制御室内のモニタ50)の表示画面における表示データの表示を促す。

通信端末MTは、例えばユーザ個人が用いる携帯用の通信用端末であり、ネットワーク(不図示)を介して、表示制御部37から送信された表示データを受信し、通信端末MTの表示画面(不図示)に表示データを表示させる。

(非可視光センサの制御部における初期動作の一例の説明) 次に、本実施形態の植物検出カメラ1の非可視光センサNVSSの制御部11における初期動作の一例について、図4を参照して説明する。図4は、植物検出カメラ1の制御部11における初期設定動作の一例を説明するフローチャートである。

制御部11が、閾値設定/水分指数検出処理部27aに対し、葉の形状を識別するための反射強度比の閾値Shの設定を指示すると、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、閾値Shを算出して設定する(S1)。この閾値Shを設定する処理の詳細については後述する。なお、閾値Shが固定値である場合、ステップS1の処理は省略可能である。

また、制御部11は、非可視光センサNVSSの検出処理部27における水分の検出閾値Mを閾値設定/水分指数検出処理部27aに設定する(S2)。検出閾値Mは、検出対象となる特定の物質に応じて適宜設けられることが好ましい。

ステップS2の処理後、制御部11は、撮像処理を開始させるための制御信号を可視光カメラVSCの各部に出力し(S3−1)、更に、第1投射光源13又は第2投射光源15に参照光LS1又は測定光LS2の投射を開始させるための光源走査用タイミング信号TRを非可視光センサNVSSの第1投射光源13及び第2投射光源15に出力する(S3−2)。なお、ステップS3−1の動作とステップS3−2の動作との実行タイミングはどちらが先でもよく、同時でもよい。

図5は、非可視光センサNVSSにおける水分の検出の原理説明図である。閾値設定/水分指数検出処理部27aは、例えばRT>Mであれば水分を検出したと判定し、RT≦Mであれば水分を検出しないと判定してもよい。このように、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、振幅差分(VA−VB)と振幅VAとの比RTと検出閾値Mとの比較結果に応じて、水分の有無を検出することで、ノイズ(例えば外乱光)の影響を排除でき、水分の有無を高精度に検出することができる。

図6は、水(H2O)に対する近赤外光の分光特性の一例を示すグラフである。図6の横軸は波長(nm)であり、図6の縦軸は透過率(%)を示す。図6に示すように、波長905nmの参照光LS1は、水(H2O)の透過率がほぼ100%に近いため、水分に吸収され難い特性を有することがわかる。同様に、波長1550nmの測定光LS2は、水(H2O)の透過率が10%に近いため、水分に吸収され易い特性を有することがわかる。そこで、本実施形態では、第1投射光源13から投射される参照光LS1の波長を905nm、第2投射光源15から投射される測定s光LS2の波長を1550nmとしている。

葉が萎れることで近赤外光の投影範囲が減少する場合、また、葉が反れたり巻いたりすることで葉の厚みが増す場合でも、本実施形態では、葉の非可視光画像を構成する全ての画素領域(つまり、1つ1つの画素)における反射強度比の総和を画素数で除した平均値(以下、「画素平均水分指数」と称する)と、葉の非可視光画像を構成する全ての画素における反射強度比の画素毎の総和(以下、「水分指数総和」と称する)とを、水分量の指標とする。また、水ストレス未付与時(つまり初期の)の画素平均水分指数の値及び水分指数総和の値を各々1.0としてノーマライズして示したものが、それぞれ標準化画素平均水分指数(又は単に「水分指数」と称する)及び標準化水分指数総和である。このように、初期値を1.0として相対値にて表現することで角度、葉の厚みが異なる葉同士の「画素平均水分指数」や「水分指数総和」の時間的な変化を容易に相対比較することができる。これらの画素平均水分指数や水分指数総和は、葉の非可視光画像を構成する1つ1つの画素毎に算出された反射強度比を用いて算出される。従って、画素平均水分指数は、「(1/葉の非可視光画像を構成する画素数)×ΣLn(I905/I1550)」で表され、水分指数総和は「ΣLn(I905/I1550)」で表され、いずれも水ポテンシャル(言い換えると、植物への水ストレスの付与量)と強い相関を有する。なお、葉の非可視光画像を構成する全ての画素領域は、例えば測定期間の初期時に、後述する画素値(つまり、参照光LS1や測定光LS2が照射される位置に対応する画素における反射強度比の値)が閾値Shを超えた領域の集合である。なお、閾値Shは、予め設定された値でもよいし、後述する図31に示す方法に従って算出されても構わない。

また、上述した画素平均水分指数や水分指数総和は、葉の非可視光画像を構成する全ての画素領域(つまり、1つ1つの画素)における反射強度比を用いて定義したが、これに限らず、葉の可視光撮像画像と非可視光画像とがサイズとして対応するように照らし合わせ、可視光画像の緑色(G)に相当する画素における反射強度比を用いて定義してもよい。より具体的には、画素平均水分指数は、葉の可視光撮像画像の緑色(G)に相当する全ての画素における反射強度比の総和を画素数で除した平均値としてもよい。同様に、水分指数総和は、葉の可視光撮像画像の緑色(G)に相当する全ての画素における反射強度比の総和としてもよい。

(非可視光センサの水分やうねりの検出に関する詳細な動作の説明) 次に、植物検出カメラ1の非可視光センサNVSSにおける水分の検出に関する詳細な動作手順について、図7を参照して説明する。図7は、非可視光センサNVSSにおける植物PTの葉PT3に含まれる水分の検出に関する詳細な動作手順の一例を説明するフローチャートである。図7に示すフローチャートの説明の前提として、タイミング制御部11aは、光源走査用タイミング信号TRを第1投射光源13及び第2投射光源15に出力しており、植物検出カメラ1から参照光LS1及び測定光LS2が植物PTの葉PT3に向けて照射されるとする。

図7において、制御部11は、奇数番目の投射周期における光源発光信号RFがタイミング制御部11aから出力されたか否かを判別する(S12)。奇数番目の投射周期における光源発光信号RFがタイミング制御部11aから出力された場合には(S12、YES)、第1投射光源13は、タイミング制御部11aからの光源発光信号RFに応じて、参照光LS1を投射する(S13)。投射光源走査用光学部17は、植物検出カメラ1の画角内に含まれる植物PTのX方向のライン上に参照光LS1を1次元的に走査する(S15)。参照光LS1が照射されたX方向のライン上のそれぞれの照射位置において、参照光LS1が拡散反射したことで生じた拡散反射光RV1が撮像光学部21を介して受光部23により受光される(S16)。

信号加工部25では、拡散反射光RV1の受光部23における出力(電気信号)が電圧信号に変換され、この電圧信号のレベルがコンパレータ/ピークホールド処理部25cにおいて処理可能なレベルまで増幅される(S17)。コンパレータ/ピークホールド処理部25cは、増幅回路25bの出力信号と所定の閾値との比較結果に応じて、増幅回路25bの出力信号を2値化して閾値設定/水分指数検出処理部27aに出力する。コンパレータ/ピークホールド処理部25cは、増幅回路25bの出力信号のピークの情報を閾値設定/水分指数検出処理部27aに出力する。

閾値設定/水分指数検出処理部27aは、参照光LS1の拡散反射光RV1に対するコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(つまり、ピークの情報)をメモリ27bに一時的に保存する(S18−2)。また、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、メモリ27bに保存された前回のフレーム(投射周期)における参照光LS1又は測定光LS2に対する拡散反射光RV1又は拡散反射光RV2における同一ラインに関するコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力をメモリ27bから読み出す(S18−3)。

閾値設定/水分指数検出処理部27aは、同一ラインにおける参照光LS1の拡散反射光RV1におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(つまり、ピークの情報)と、測定光LS2の拡散反射光RV2におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(つまり、ピークの情報)と、所定の検出閾値Mとを基に、同ライン上における水分の有無を検出する(S18−4)。

閾値設定/水分指数検出処理部27aは、反射強度比の総和ΣLn(I905/I1550)である水分指数を算出する(S18−5)。この水分指数の算出の詳細については後述する。

表示処理部29は、検出結果フィルタ処理部27cの出力を用いて、水分の検出位置を示す検出結果画像データを生成する。表示制御部37は、表示処理部29で生成された検出結果画像データ、及び可視光カメラVSCで撮像された可視光画像の可視光カメラ画像データを出力する(S19)。ステップS15、S16、S17、S18−2〜S18−5、S19の各動作は、1回のフレーム(投射周期)の検出エリア内のライン毎に実行される。

つまり、1つのX方向のラインに対するステップS15、S16、S17、S18−2〜S18−5、S19の各動作が終了すると、次のX方向のラインに対するステップS15、S16、S17、S18−2〜S18−5、S19の各動作が行われ(S20、NO)、以降、1フレーム分のステップS15、S16、S17、S18−2〜S18−5、S19の各動作が終了するまで、ステップS15、S16、S17、S18−2〜S18−5、S19の各動作が繰り返される。

一方、1フレームの全てのラインに対してステップS15、S16、S17、S18−2〜S18−5、S19の各動作の実行が終了した場合には(S20、YES)、投射光の走査が継続する場合には(S21、YES)、非可視光センサNVSSの動作はステップS12に戻る。一方、参照光LS1及び測定光LS2の走査が継続しない場合には(S21、NO)、非可視光センサNVSSの動作は終了する。

図8は、ステップS18−5における水分指数の算出手順の一例を説明するフローチャートである。閾値設定/水分指数検出処理部27aは、フレーム画像から全画素における反射強度比Ln(I905/I1550)を算出する(S31)。ここで、各画素の反射強度比Ln(I905/I1550)の測定値を反射強度比W1〜Wkで表す。例えば近赤外光の画像が76,800(=320×240)画素から構成される場合、Wkの添え字kは1〜76,800を表す変数である。

閾値設定/水分指数検出処理部27aは、画素毎(つまり、画素毎の反射強度比Wk)が葉PT3を識別するための閾値Shより大きいか否かを判別する(S32)。閾値Shの初期値は、経験値として閾値設定/水分指数検出処理部27aにあらかじめ登録されている。経験値は、水分量観察装置の仕様(照射レーザ光の強度、受光素子の感度等)、測定対象の葉の含水率(90%前後)、葉の厚み(例えば200μm)、屋内/屋外等によって決定される。特に、屋外の場合、太陽光の当たり方や葉群としての茂り具合によって変化し、その都度変更される。

例えば経験値として、撮影距離1mの場合、屋内撮影時の閾値Shは約0.3に設定される。屋外撮影時の閾値Shは、約0.9に設定される。また、撮影距離3mの場合、屋内撮影時の閾値Shは約0.05に設定される。これらの閾値Shを初期値として設定し、実際の葉の形状と照らし合わせて、最適であるか否かを判断し、最適でない場合、閾値Shを変更することが好ましい。また、後述するように、閾値Shの算出処理を行い、算出された閾値Shを初期値として登録しておくことも可能である。

ステップS32で、反射強度比Wkが閾値Sh未満である場合、この画素は、葉以外の背景を表す画素(言い換えると、葉と見なされる可視光画像領域を構成する画素ではない画素)であるとして、表示処理部29は、この画素を単色で表示するための単色表示データを生成する(S36)。

一方、ステップS32で反射強度比Wkが閾値Sh以上(閾値以上)である場合、表示処理部29は、この画素を、反射強度比Ln(I905/I1550)に対応する階調色で表示する(S33)。ここでは、反射強度比Ln(I905/I1550)に対応する階調色をn階調で表示可能である。nは任意の正数である。図27は、反射強度比に対応する階調色を示すテーブルである。このテーブルTbには、反射強度比Ln(I905/I1550)及び強度比換算値(905nmの反射光/1550nmの反射光)が階調色毎に区分けされている。

具体的に、反射強度比Ln(I905/I1550)が0.3未満である場合、つまり、葉の閾値Sh以下である場合、その画素は、例えば白色(単色)で表示される。一方、反射強度比Ln(I905/I1550)が0.3以上0.4未満である場合、その画素は例えば深緑色で表示される。同様に、0.4以上0.5未満である場合、その画素は緑色で表示される。0.5以上0.55未満である場合、その画素は黄色で表示される。0.55以上0.6未満である場合、その画素はオレンジ色で表示される。0.6以上0.75未満である場合、その画素は赤色で表示される。0.75以上である場合、その画素は紫色で表示される。このように、葉に属する画素の色は、6諧調のいずれかに設定される。

なお、実際の葉の形状と照らし合わせて、葉が占有している画素空間が適切でない場合、ユーザが閾値Shを所定刻み(例えば0.01)毎にアップ又はダウンするように設定してもよい。或いは、ユーザが後述する閾値Shを自動設定する処理を起動させて適切な閾値Shを設定してもよい。

閾値設定/水分指数検出処理部27aは、葉が占有している画素空間として任意のエリアを特定する(S34)。図28は、葉が占有している画素空間を含むフレーム画像の一部における反射強度比を示すテーブルである。このテーブルでは、フレーム画像の一部として、21画素×9画素分の反射強度比Ln(I905/I1550)が示されている。背景が黒色(ドット表示)である画素は葉の画素に相当する。前述したように、葉の画素は、反射強度比Ln(I905/I1550)が閾値Sh(ここでは、0.3)を超える画素である。また、葉の画素を囲むように、矩形(A×B)のエリアAREが特定される。このエリアAREは、葉の大きさを判断する値として用いられる。なお、葉の大きさは、閾値Shを超える画素数で表してもよい。

閾値設定/水分指数検出処理部27a(水分量算出部)は、エリアARE内で、測定値(反射強度比Ln(I905/I1550))が閾値Shよりも大きい、反射強度比Ln(I905/I1550)の総和である水分指数総和ΣLn(I905/I1550)を計算する(S35)。この水分指数総和ΣLn(I905/I1550)が得られることで、葉全体に含まれる水分量が分かる。

更に、ステップS35では、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、エリアARE内で、測定値(反射強度比Ln(I905/I1550))が閾値Shよりも大きい画素の数を計算し、この計算された画素の数で反射強度比の総和ΣLn(I905/I1550)を除して平均値(画素平均水分指数と称する)を算出することができる。この平均値は、閾値Shによって葉の外形(外郭)が決定された葉の面積で反射強度比の総和が除された値であり、スポットの一定面積でスポット内の反射強度比の総和が除された値とは異なる。この後、水分指数の算出動作が終了する。

このように、本実施形態では、フレーム画像における画素毎の反射強度比を求め、画素毎の反射強度比の総和から、水分指数を正確に算出できる。従って、葉、即ち植物の健全度を正確に判断することができる。

ここでは、前述したように、葉の閾値Shは、初期値として次のような値に設定されている。屋内に植物検出カメラ1を設置し、屋内で葉PT3を撮像する場合、経験的に撮影距離が1mである場合、閾値Shは約0.3に設定される。撮影距離が3mである場合、閾値Shは約0.05に設定される。一方、屋外で撮像する場合、太陽光の条件が変動するので、経験的に閾値Shは約0.9に設定される。図30は、葉の占有範囲を示す図である。図30(A)は、トマトの茎葉を撮像したフレーム画像である。葉間距離は約1cmである。図30(B)は、図30(A)の可視光画像に対し、撮影距離3m、閾値Shを0.05に設定した場合に求められた葉の占有空間を示す。この場合、葉が一部重なっており、閾値Sh(=0.05)は不適切に設定された値であることが分かる。図30(C)は、図30(A)の可視光画像に対し、撮影距離1m、閾値Shを0.3に設定した場合に求められた葉の占有空間を示す。この場合、葉の外形は他の葉と重なり合うことなく、また、葉の占有空間は可視光画像の葉の外形と大まかに同じである。この場合、閾値Sh(=0.3)は正しく設定された値であることが分かる。

また、葉の閾値Shは、次のような処理を行い、図8に示す水分指数の算出処理を実行する前に登録されてもよい。図31は、閾値設定手順を示すフローチャートである。

閾値設定/水分指数検出処理部27aは、可視光カメラVSCで撮像されたフレーム画像(例えば図30(A)参照)に対し、葉の色と判断される緑色(G)の画素が占有する出現割合(G画素数/全画素数)を求める(S81)。

閾値設定/水分指数検出処理部27aは、水分指数の度数分布データを元に、出現割合に対応する水分指数を求める(S82)。図32は、全画素における反射強度比の度数分布を示すグラフである。度数分布データは、閾値設定/水分指数検出処理部27aに登録されている。この度数分布データを用いると、例えば葉の色と判断される緑色(G)の画素が占有する出現割合が52%である場合、水分指数は約0.3である。

閾値設定/水分指数検出処理部27aは、ステップS82で求められた水分指数を閾値Shに設定する(S83)。この後、閾値設定/水分指数検出処理部27aは本処理を終了する。

このように、可視光カメラVSCで撮像された可視光画像を利用することで、葉の緑色(特定色)の占有画素数と、同じ画素数になるように測定値であるLn(I905/I1550)の累積度数に対応する閾値Shを求めることで、つまり、葉に含まれていると判断される画素毎の水分量の閾値を変更することによって、葉の外形を正しく決定することができる。従って、葉の外形が正しく判断されることで、画素単位の平均値を正確に算出できる。これに対し、スポットの一定面積や可視光画像の外形を用いる場合、葉の外形が正しく捉えられないと、画素単位の平均値に大きな誤差が生じてしまう。

ここで、葉中の水分量を測定する他の方法について、比較例を示す。図9は、比較例の測定方法の一例を説明する図である。ビニル袋fkで密封包装された大葉の葉PT3を取り出し、ホワイトボードwbに葉PT3が動かないように固定する。葉PT3ががっしりと固定されたホワイトボードwbを重量計gmに載せ、その重さを計る。このとき、ホワイトボードwbの重さは、あらかじめ測定され、0点調整されているので、重量計gmのメータには、葉の重さが表示される。葉の蒸散による重量の変化を、時間の経過とともに測定する。全ての測定を完了した後、葉を完全に枯らし、その重量を求める。測定時の葉の重量から枯渇時の葉の重量を差し引くことで、測定時における葉の平均含水量を求める。葉の平均含水率は、時間の経過とともに徐々に下がっていく。

一方、本実施形態では、葉の水分量を測定する際、測定対象の葉の背面(裏側)を覆うように、背景物が配置される。背景物の材質としては、水分を含まず、農薬・散水・CO2噴霧で変形しないもの、例えばプラスチック、コート紙、アルミ箔(板)等のシート、板、或いはブロックが挙げられる。また、背景物の大きさは、測定対象の葉を覆うような大きな面を有し、測定対象の葉の投影面積の2倍以内であり、他の葉の光合成を妨げない大きさであることが望ましい。また、背景物の厚みは、自己支持性でカールしない厚さ50μm〜1mmであり、特に50〜200μmであることが好ましい。また、背景物の重量は、葉の茎で支持される場、葉が萎れない程度の重さであることが好ましい。また、背景物の色は、可視光及び近赤外光の反射率が高い白色や銀色であることが好ましい。

本実施形態では、背景物として、白色背景板が用いられる場合を示す。なお、白色背景板は、白色プラスチック板、アルミ板、標準白色板、白色紙等が挙げられる。

図10(A)は、屋外において葉に向かって近赤外光を照射した際、近赤外光の波長に対する反射光の強度の一例を示すグラフである。縦軸は非可視光センサNVSSで検知される近赤外光の強度を示し、横軸は近赤外領域の波長を示す。非可視光センサNVSSで検知される近赤外光の強度には、太陽光による光の強度の他、周辺の葉で散乱された光の強度が含まれる。つまり、検知される近赤外光の強度には、太陽光が周辺の葉で多重散乱されたことによるバックグランドの上昇分が含まれる。また、周辺の葉によって1550nmの波長を有する近赤外光が吸収されることで、非可視光センサNVSSで検知される光の強度は小さくなる。従って、反射強度比Ln(I905/I1550)の値は大きくなる。このため、屋外で葉の水分量を測定する場合、反射強度比Ln(I905/I1550)と比較される閾値Shの値を大きく設定する必要がある。

図10(B)は、屋内及び屋外において白色背景板bdが設置された葉に向かって近赤外光を照射した際、近赤外光の波長に対する反射光の強度の一例を示すグラフである。縦軸は非可視光センサNVSSで検知される近赤外光の強度を示し、横軸は近赤外領域の波長を示す。白色背景板bdが測定対象の葉PT3tの背面(裏側)を覆うように配置されたことで、周辺の葉PT3oからの多重散乱が起きなくなる。従って、1550nmの波長を有する近赤外光の強度が低下することは起きない。また、屋内の場合、バックグランドの上昇も生じない。なお、屋外で測定する場合、閾値Shは約0.5に設定される。また、屋内で測定する場合、閾値Shは約0.3に設定される。

測定対象の葉PT3tの背面に白色背景板bdを配置する場合、葉を固定することなく配置してもよいし、白色背景板bdに葉PT3tを取り付けて固定してもよい。ここでは、白色背景板bdに葉PT3tを取り付ける場合を示す。なお、本実施形態を含む各実施形態では、植物検出カメラ1の第1投射光源13及び第2投射光源15から見て、測定対象となる少なくとも1枚の葉の背面には、白色背景板bdがそれぞれ配置されている。

図11は、白色背景板bdへの葉PT3tの取り付け方の一例の説明図である。白色背景板bdは、縦長の長方形を有する白色プラスチック板である。白色背景板bdの中央部には、矩形状にくり抜かれた開口部bd1が形成されている。また、白色背景板bdの上部には、円形の孔部bd2が形成されている。孔部bd2には、上端面にまで達するスリットbd21が形成されている。また、白色背景板bdに形成された開口部bd1の下側及び両側には、それぞれ3本のスリットbd3,bd4,bd5が形成されている。

葉PT3tを白色背景板bdに取り付ける場合、葉PT3tの先端を3本のスリットbd3の1本に挿し込み、スリットbd21を中心に左右の白色背景板bdを前後方向にずらして空隙を作り、その内側に葉の茎PT2を通して、孔部bd2に茎PT2を固定する。

次に、本実施形態の植物検出カメラ1を用いて植物PTの葉に含まれる水分量の観察として、当該葉に含まれる水ポテンシャルの制御実験を行い、その結果得られた水ストレスによる葉中の糖度について考察する。

図12は、第1回目の水ポテンシャル制御実験における標準化画素平均水分指数Dwの時間変化の一例を示すグラフである。このグラフの縦軸は、標準化画素平均水分指数を表す。標準化画素平均水分指数は、測定対象の葉に含まれる水分量の指標としての水ポテンシャルを表し、植物の葉を撮像した画像における1画素当たりに含まれる葉中の平均の水分量に相当する。グラフの横軸は、日を単位とする経過時間を表す。ターゲットの水分量の範囲の一例としての目標範囲Bdは、例えばトマトの果実の糖度を増すために適すると判断される目標となる水分量の範囲を表しており、ここでは、標準化画素平均水分指数Dwに対応する値として値0.8〜0.9の範囲に設定されている。この目標範囲Bdは、植物の種類、さらには同じ植物であってもその観察場所(葉、茎等)によっても異なる。また、図12や後述の図13において、標準化画素平均水分指数Dwが目標範囲Bdを下回る場合には、植物は水ストレスを感じていることになる。

図12に示す第1回目の水ポテンシャル制御実験は、ほぼ適量な灌水量の灌水が灌水タイミングの際に行われた場合の標準化画素平均水分指数の時系列の推移の一例が示されている。図12では、植物サンプルsm1である葉が萎凋している状態を起点としており、通常灌水を行って回復した後に、水ポテンシャル制御実験が開始している。通常灌水では、一日のうち朝と夕の2回、定期的に灌水が行われた。一方、水ポテンシャル制御実験では、標準化画素平均水分指数Dwの値を元に適切と判断されたタイミングで灌水が行われるのみで、定期的な灌水は行われていない。以下、図12に示す実験結果について説明する。なお、モニタ50には、図12に示す標準化画素平均水分指数Dwの経時的な推移が表示される。

葉の標準化画素平均水分指数Dwが値0.60に近い萎凋の状態から始まり、通常灌水が開始される(0日目)。通常灌水の開始後、翌日には、葉の標準化画素平均水分指数Dwが値1.0付近になるまで回復した。そして、一週間程、葉の標準化画素平均水分指数Dwが値1.0付近を保つように定期的に通常灌水が行われた(1〜8日目)。その後の3日間、絶水した(9,10,11日目)。絶水の結果、葉の標準化画素平均水分指数Dwは、徐々に下がり、値0.7付近になるまで下降した(12日目)。

この時点で矢印r11に示すように、一定量の灌水が行われると、葉中の標準化画素平均水分指数Dwは、上昇し、そのピークが目標範囲Bwに一旦含まれるが、その後、未灌水に基づいて下降し、目標範囲Bwから外れる。再び矢印r12に示すタイミングで同じ一定量の灌水が行われると、葉中の標準化画素平均水分指数Dwは、再び上昇し、そのピークが目標範囲Bwに入った後、未灌水に基づいて下降する。このとき、標準化画素平均水分指数Dwは目標範囲Bwを下回るが、その外れ量は前回より小さい。再び矢印r13に示すタイミングで同じ一定量の灌水が行われると、標準化画素平均水分指数Dwのピークが目標範囲Bwの上限値を超えた後に下降するが、今度は標準化画素平均水分指数Dwが目標範囲Bwを下回らない。さらに、矢印r14に示すタイミングで同じ一定量の灌水が行われると、標準化画素平均水分指数Dwのピークが目標範囲Bwの上限値を超えた後に下降するが、標準化画素平均水分指数Dwはほぼ目標範囲Bwに留まる(12日目〜16日目)。

その後の2日間(17,18日目)の絶水があっても、矢印r15,r16,r17,r18に示すように、同様の灌水が行われたことで、葉中の標準化画素平均水分指数Dwはほぼ目標範囲Bwに収まるように制御された。

図13は、第2回目の水ポテンシャル制御実験における標準化画素平均水分指数Dwの時間変化の一例を示すグラフである。このグラフの縦軸は、図12と同様、標準化画素平均水分指数Dwを表す。グラフの横軸は、分を単位とする経過時間を表す。第2回目の水ポテンシャル制御実験では、第1回目の植物サンプルsm1とは異なる、同種の2つの植物サンプルsm2,sm3(例えばトマト)が用いられた。植物サンプルsm2(比較例)に対しては、朝・夕2回の通常灌水が定期的に行われる。一方、植物サンプルsm3(本実施形態に対応する実施例)に対しては、水ストレスを与えながらの灌水が行われる。つまり、植物サンプルsm3に対しては、図12に示す水ポテンシャル制御期間(12日目〜22日目)と同様に、灌水が行われるタイミング以外は灌水されない。

第2回目の水ポテンシャル制御実験では、図13に示すように、水ポテンシャル降下期間TW1、最適灌水量探索期間TW2、水ストレス制御期間TW3及び含水率回復期間TW4の4つの期間に分けて、葉中の標準化画素平均水分指数Dwの観測が行われた。標準化画素平均水分指数Dwの目標範囲Bwは、図12に示す目標範囲Bwとは異なり、値0.70〜0.80の範囲に設定された。これは、第2回目の水ポテンシャル制御実験で使用された植物サンプルが異なることに起因したものである。

比較例及び実施例の葉中の含水率の初期値は、それぞれ90.5%,91.2%とほぼ同じである。また、これらの標準化画素平均水分指数Dwは、値1.30近辺でほぼ同じである。また、比較例及び実施例のそれぞれの糖度を表すBrix値は、いずれも値2.3%と同じである。

水ポテンシャルの制御実験の期間中、比較例の植物サンプルsm2に対しては、通常灌水が継続して行われた。

一方、実施例の植物サンプルsm3に対し、水ポテンシャル降下期間TW1(0〜11520分頃の期間)では、実施例の植物サンプルsm3に対しては、全く灌水がされなかった。この結果、初期値の設定時以降、比較例の葉中の標準化画素平均水分指数Dwは値1.0付近にあってほぼ一定であるのに対し、実施例の葉中の標準化画素平均水分指数Dwは、徐々に下がり、水ポテンシャル降下期間TW1の終わりには、目標範囲Bwの下限値である値0.70を下回るようになっていた。

最適灌水量探索期間TW2(11520〜20160分頃の期間)では、最初に、実施例の葉中の標準化画素平均水分指数Dwが目標範囲の下限値0.70を下回ったことで、図中矢印r1に示す時点(タイミング)で、灌水量K1の灌水が行われた。この結果、実施例の葉中の標準化画素平均水分指数Dwが急激に上昇し、目標範囲Bwの上限値を超えて、値1.00に近接するまでになった。この時点で灌水量K1が多過ぎたと判断される。その後、絶水期間が始まり、実施例の葉中の標準化画素平均水分指数Dwが再び目標範囲の下限値を下回り、値0.60に至った。絶水期間が終了すると、矢印r2に示す時点で灌水量K2の灌水が行われた。これにより、標準化画素平均水分指数Dwが上昇し、目標範囲Bwを少し超えるようになった。モニタ50に表示されるこれらの結果を元にすることで、最適な灌水量は、灌水量K1,K2より少ない量であるとの判断が可能となる。

水ストレス制御期間TW3(20160〜25920分頃の期間)では、実施例の葉中の標準化画素平均水分指数Dwが再び下がり出し、目標範囲Bwの下限値を下回ると、矢印r3に示す時点で灌水量K1,K2より少ない灌水量K3で灌水が行われた。また、標準化画素平均水分指数Dwが目標範囲Bwの下限値を下回り、矢印r4に示す時点では、灌水量K3と同様、灌水量K4で灌水を行われた。このように、間欠的に灌水量K3,K4の灌水が行われたことで、植物サンプルsm3に水ストレスを与えながらも、標準化画素平均水分指数Dwは、ほぼ目標範囲Bw内となるように推移する。その後、実施例の植物サンプルsm3の葉に対して一定の絶水期間に突入したために葉が萎凋度合いが大きくなり、標準化画素平均水分指数Dwが低下してしまい、植物サンプルsm3の標準化画素平均水分指数Dwは値0.4まで下がってしまった。

絶水期間が終了し、含水率回復期間TW4(25920〜34560分頃の期間)では、植物サンプルsm3の葉の萎凋の度合いが大きかったので、矢印r5,r6に示す時点でそれぞれ灌水量K3,K4より多い灌水量K5,K6で灌水が行われた。

含水率回復期間TW4の終盤、比較例及び実施例における、植物サンプルsm2,sm3の葉の含水率が、初期値とほぼ同様の値(90.7%,89.0%)になった時点で、それぞれの糖度を表すBrix値を測定した結果、比較例ではBrix値が値2.8%であるのに対し、実施例ではBrix値が値3.3%であった。つまり、比較例のBrix値は、水ポテンシャル制御の前後で、Brix値が値2.3%から2.8%に上昇して0.5%増えたが、実施例のBrix値は、値2.3%から3.3%に上昇して1%と大きく増えた。

このように、水ストレスを与えることなく定期的な灌水量の灌水が行われた比較例の植物サンプルsm2と比べ、実施例の植物サンプルsm3では、未灌水に基づく水ストレスを与えながら標準化画素平均水分指数Dwが目標範囲の下限付近に至ったタイミングで灌水が行われたことで、葉中の糖度の増加量が多くなり、水ストレスによる葉中の糖度の上昇が見られた。このように、水ストレスを与えることで、葉の品質が高くなることが図13の水ポテンシャル制御実験により分かった。

ここで、葉中の糖度の測定は、次のような手順(T1)〜(T5)で行われた。

(T1)トマト等の葉を温度105℃で2時間乾燥させる。この重量変化から含水率が算出可能となる。 (T2)乾燥した葉を乳鉢に入れ、粉末になるように葉をすり潰して粉砕する。 (T3)葉に含まれる含水量(乾燥させる前)の4倍の量を持つ、60℃のお湯が入った容器に、粉砕した葉の粉末を入れ、室温で2時間撹拌する。 (T4)葉の粉末が入った容器を放置し、15時間超えるまで、葉の粉末を自然沈降させる。 (T5)上澄み液を抽出し、糖度計でそのBrix値を計測する。ただし、このBrix値は、葉中の水分量の4倍のお湯を使って得られた仮のBrix値であるので、数式(1)に従い、真のBrix値が得られる。なお、数式(1)による真のBrix値の算出は、糖度計で得られたBrix値が入力された時点で、制御部11により行われてもよい。

真のBrix値(%) =[仮のBrix値×水分量×4倍/(1−仮のBrix値)] ÷ [水分量+(仮のBrix値×水分量×4倍)/(1−仮のBrix値)]× 100 …… (1)

上記水ポテンシャルの制御実験を基に、次のような灌水量と灌水タイミングが考察される。図14は、灌水量と灌水タイミングの一例について説明するグラフである。このグラフの縦軸は、標準化水分指数(つまり、標準化画素平均水分指数Dw)を表す。横軸は経過時間を表す。グラフ中、測定点は、四角形で表される。目標範囲Bwは値0.8〜0.9に設定される。

葉中の標準化画素平均水分指数Dwの初期値は値1.0である。標準化画素平均水分指数Dwが初期値から時間の経過とともに漸減し、目標範囲Bwの下限値付近に達すると、次の灌水が行われる。標準化画素平均水分指数Dwが低下する傾き(降下速度)が「−a」であると、標準化画素平均水分指数Dwが目標範囲Bwの下限値を横切る、矢印raで示すタイミングが灌水ポイントtpとなる。

灌水ポイントtpにおける灌水量Kpは、例えば数式(2)を用いて求められる。

次回の葉中の水分量 = 今回の葉中の水分量 + 根からの吸水量 − 葉からの蒸散量…… (2)

ここで、根からの吸水量は、灌水量、液肥の浸透圧(電気伝導度)、根の本数(表面積)等で求まる。葉からの蒸散量は、葉数、葉面積、飽差(つまり、飽和水蒸気圧と相対湿度との差分)等で求まる。一般的に葉の光合成が活発で蒸散が盛んに行われるのは、晴れた日であってかつ飽差が3〜7g/m3の間(つまり、相対湿度が75%RH前後となる期間)と言われている。故に、晴れた日の朝や昼は蒸散が盛んなために葉中水分量は減少傾向にあるが、一方、夕方(日没)になると葉の蒸散量が減少すると、葉中水分量が上昇する。また、夜間には、葉は光合成を行わないため、葉中水分量の変化は小さい。また、雨の日は相対湿度が高くて気孔を開いても蒸散が行われないため、葉中水分量の変化は小さく、夏場などの気温が高い日は、植物はこれ以上体内の水分を失わないように気孔を閉じるため、蒸散が行われず葉中水分量の変化は小さくなる。

灌水が行われると、標準化画素平均水分指数Dwは上昇し、目標範囲Bwの上限値に達した後、再び下降する動作を繰り返す。矢印rbに示すタイミングでは、矢印raで示すタイミングと同様の灌水が行われる。その後、矢印rcに示すタイミングでは、目標範囲Bwの下限値を下回り、標準化画素平均水分指数Dwが値0.7に達するタイミング、つまり、水ストレスが大きくなった状態で灌水が行われる。これにより、植物に水ストレスを与えることができる。

図15は、第1の実施形態における最適灌水量探索手順の一例を説明するフローチャートである。この最適灌水量探索動作は、図13に示す最適灌水量探索期間TW2において実行される処理であり、例えば図16に示すUI画面60で、灌水量探索モードボタン71が押下されると、実行される。

最適灌水量探索動作では、まず、制御部11は、UI画面60に対するユーザ(例えばトマトの育成者である農夫)の操作により、初期値、目標範囲Bwの上限値及び下限値を設定する(S41)。制御部11は、目標範囲Bwの下限値までの予測降下時刻、及び探索灌水予定時刻を表示する(S42)。なお、この探索灌水予定時刻は、予測降下時刻と同じ、または近傍の時刻に設定される。

制御部11は、図17に示す探索灌水量入力画面61を表示する(S43)。制御部11は、探索灌水量の入力が完了したか否かを判別し(S44)、入力が完了していない場合、ステップS43で探索灌水量入力画面61の表示を続ける。

また、探索灌水量の入力が完了すると、制御部11は、標準化画素平均水分指数Dwを測定し、UI画面60に表示された、葉中水分モニタリング画面Gm1内のグラフにこの測定点を追加する(S45)。制御部11は、探索灌水予定時刻になったか否かを判別する(S46)。探索灌水予定時刻になっていない場合、制御部11は、ステップS45の処理に戻る。

探索灌水予定時刻になると、制御部11は、探索灌水量の水分の滴下を制御する(S47)。この探索灌水量は、図13の灌水量K1,K2に相当する。また、この探索灌水量の水分の滴下は、肥料水供給装置WFによって自動で行われてもよいし、人による手作業で行われてもよい。制御部11は、指定時刻まで待機した後に水分指数を算出する(S48)。この指定時刻は、標準化画素平均水分指数Dwが目標範囲Bwの上限値に達するように指定される時刻であり、予測降下時刻と探索灌水予定時刻を基に設定される。

制御部11は、標準化画素平均水分指数Dwと目標範囲Bwの上限値とを比較する(S49)。標準化画素平均水分指数Dwが目標範囲Bwの上限値を超えた場合、制御部11は、ステップS42に戻り、再度、予測降下時刻及び探索灌水予定時刻をUI画面60に表示する。また、標準化画素平均水分指数Dwが目標範囲Bwの上限値を超えていない場合、制御部11は、ステップS43に戻り、探索灌水量入力画面61を表示する。

また、標準化画素平均水分指数Dwが目標範囲Bwの上限値に等しくなった場合、制御部11は、探索灌水量を最適水分量として栽培制御のプロセスに移行するように表示する(S50)。この表示は、例えばメッセージ等でポップアップ表示される。この後、制御部11は、本動作を終了する。

図16は、水ポテンシャル制御に関するユーザインタフェース(UI)画面60の一例を示す図である。このUI画面60は、葉中水分モニタリング画面Gm1を含む。UI画面60の上部に配置された葉中水分モニタリング画面Gm1には、標準化画素平均水分指数Dwの時系列の変化を表すグラフが表示される。このグラフは、前述した図12のグラフと同様である。

UI画面60の下部の左側には、設定領域63が表示される。この設定領域63には、初期設定ボタン64及びズレ閾値設定ボタン66が配置される。また、目標範囲Bwの上限値を設定するための入力ボックス67、及び目標範囲Bwの下限値を入力するための入力ボックス68が配置される。入力ボックス67,68への数値の入力には、タッチパネル、テンキー、携帯端末等を用いることが可能である。

また、UI画面60の下部の右側には、灌水量探索モードボタン71及び水ストレス制御(栽培制御)モードボタン73が配置される。灌水量探索モードボタン71が押下されると、前述した図15に示す最適灌水量探索動作が開始する。水ストレス制御(栽培制御)モードボタン73が押下されると、後述する図18に示す栽培制御動作が開始する。また、UI画面60には、探索灌水量の設定値を表示する表示ボックス72、及び、栽培灌水量の設定値を表示する表示ボックス74が配置される。

図17は、UI画面60にポップアップ表示された探索灌水量入力画面61の一例を示す図である。探索灌水量入力画面61では、ミリリットル(ml)の単位で探索灌水量が入力・設定される。探索灌水量の入力には、タッチパネル、テンキー、携帯端末等を用いることが可能である。

図18は、第1の実施形態の水ストレス制御(栽培制御)手順の一例を説明するフローチャートである。この栽培制御動作は、図13に示す水ストレス制御期間TW3において実行される処理であり、例えば図16に示すUI画面60で、水ストレス制御(栽培制御)モードボタン73が押下されると、実行される。

水ストレス制御動作では、制御部11は、まず、栽培(制御)灌水量入力画面(図示せず)を表示する(S61)。この栽培灌水量入力画面は、探索灌水量入力画面と同様、UI画面60上でポップアップ表示される。

制御部11は、栽培灌水量入力画面において、栽培灌水量の入力が完了したか否かを判別する(S62)。栽培灌水量は、最適灌水量探索期間TW2(つまり、図15に示すフローチャート)の探索処理において求められた適切な灌水量を示す。栽培灌水量の入力が完了していない場合、制御部11は、ステップS61に戻り、栽培灌水量入力画面の表示を継続する。

一方、栽培灌水量の入力が完了すると、制御部11は、栽培灌水量の水分を滴下する(S63)。制御部11は、目標範囲Bwの下限値までの予測降下時刻及び栽培灌水予定時刻を表示する(S64)。なお、この栽培灌水予定時刻は、予測降下時刻と同じ、または近傍の時刻に設定される。

制御部11は、栽培灌水量を変更するか否かを判別する(S65)。栽培灌水量を変更しない場合、制御部11は、ステップS68の処理に進む。一方、栽培灌水量を変更する場合、制御部11は、再度、栽培灌水量入力画面を表示する(S66)。制御部11は、栽培灌水量入力画面において、栽培灌水量の入力が完了したか否かを判別する(S67)。栽培灌水量の入力が完了していない場合、制御部11は、ステップS66に戻り、栽培灌水量入力画面の表示を継続する。

一方、栽培灌水量の入力が完了すると、制御部11は、栽培灌水予定時刻になったか否かを判別する(S68)。栽培灌水予定時刻になっていない場合、制御部11は、ステップS64の処理に戻る。栽培灌水予定時刻になると、制御部11は、栽培灌水量の水分を滴下する(S69)。制御部11は、栽培制御を終了するか否かを判別する(S30)。栽培制御を終了しない場合、制御部11は、ステップS64の処理に戻る。一方、栽培制御を終了する場合、制御部11は本動作を終了する。

次に、植物に水ストレスを与えるための水ストレスプロファイルについて説明する。図19(A)〜(D)は、水ストレスプロファイルの一例を模式的に示す図である。図19(A)に示す水ストレスプロファイルpf1では、目標範囲Bw(ターゲットの水分量の範囲)の上限値と下限値との間で水分指数(つまり、標準化画素平均水分指数Dw。以下同様。)が変動するように、灌水が行われる。つまり、目標範囲Bwの下限値のタイミングで、目標範囲Bwの上限値に達するような灌水量の灌水を行う。この場合、水ストレスは小さい。

図19(B)に示す水ストレスプロファイルpf2では、目標範囲Bwの下限値で灌水が行われ、標準化画素平均水分指数Dwのピークが目標範囲Bwの中程で収まり、標準化画素平均水分指数Dwの変動が少なくするようにする。この場合、水ストレスはかなり小さい。

図19(C)に示す水ストレスプロファイルpf3では、標準化画素平均水分指数Dwを萎縮点まで下降させた後、多量の灌水量で灌水が行われ、標準化画素平均水分指数Dwが値1を超えるまで上昇させた後、再び萎縮点まで下降させ、同様に灌水が行われる。この場合、標準化画素平均水分指数Dwが値1を超える領域では水ストレスが無く、萎凋点の付近では水ストレスが大きい。この水ストレスプロファイルpf3は、例えば他段にある植物の開花や結実時期で水分指数が変化したり、天候で変化する場合に用いられる。

図19(D)に示す水ストレスプロファイルpf4では、標準化画素平均水分指数Dwを萎縮点まで下降させた後、目標範囲Bwの上限値に達するような灌水量で灌水が行われ、標準化画素平均水分指数Dwが目標範囲Bwの上限値に達した後、再び目標範囲Bwの下限値に至ると、目標範囲Bwの上限値に達するような灌水量で灌水が行われる。このような動作が交互に繰り返される。この場合、標準化画素平均水分指数Dwが萎凋点の付近になると、水ストレスが大きいが、目標範囲Bwの下限値の付近になると、水ストレスが小さくなる。なお、これらの水ストレスプロファイルは一例であり、他の水ストレスプロファイルを適用することも可能である。

以上により、第1の実施形態の植物検出カメラ1では、植物検出カメラ1の第1投射光源13は、光学走査により、水分に吸収され難い特性を有する第1波長(905nm)の近赤外光(参照光)を植物PTの葉PT3に向けて照射する。植物検出カメラ1の第2投射光源15は、光学走査により、水分に吸収され易い特性を有する第2波長(1550nm)の近赤外光(測定光)を植物PTの葉PT3に向けて照射する。閾値設定/水分指数検出処理部27aは、葉PT3の全照射位置において反射した905nmの反射光と葉PT3の全照射位置において反射した1550nmの反射光とを元に、反射強度比の総和ΣLn(I905/I1550)である葉1枚の水分指数総和と画素平均水分指数とを算出する。制御部11は、測定期間の開始時から終了時までの植物PTの葉PT3に含まれる水分量の時系列の推移を表すグラフをモニタ50のUI画面60に表示する。植物PTの葉PT3には、第1投射光源13及び第2投射光源15から見て、植物PTの葉PT3の背面を覆う白色背景板bd(背景物)が配置される。

このように、植物検出カメラ1によれば、モニタ50のUI画面60に植物PTの葉PT3に含まれる水分量の時系列の推移を表すグラフを表示することで、植物に含まれる水分量の推移を定量的かつ時系列に提示することができる。また、モニタ50のUI画面60に表示された葉PT3に含まれる標準化画素平均水分指数Dwの時系列の推移によると、植物検出カメラ1は、ユーザに対し、葉PT3への灌水のタイミングや灌水量を教示することも可能となる。ユーザは、モニタ50のUI画面60に表示されたグラフから適切な灌水タイミングで適切な灌水量の灌水を行うことができる。従って、トマト等の植物の高機能化を図る際、最適な栽培制御を行うことが可能となり、歩留まりが向上し、生産性を高めることができる。

また、植物検出カメラ1によれば、植物の標準化画素平均水分指数Dw(水分量)の目標範囲Bwと、水分量の初期値と、ストレス(例えば水ストレス)の付与の一例としての未灌水により降下している水分量の変化とが表示されるので、ユーザは、植物の水分量を時系列に把握することができる。

また、植物検出カメラ1によれば、植物の標準化画素平均水分指数Dw(水分量)が目標範囲Bwに入るような最適な灌水量を探索することが可能である。

また、植物検出カメラ1によれば、ストレス(例えば水ストレス)の付与の一例としての未灌水による水分量の下降と、灌水による水分量の上昇との両方が表示されるので、標準化画素平均水分指数Dwが目標範囲Bwに入るような最適な灌水量がより一層探索し易くなる。

また、植物検出カメラ1によれば、植物の水分量の目標範囲Bwと、植物の水分量を目標範囲に保持するための灌水による水分量の変化とが表示されるので、植物の水分量が目標範囲に入るような灌水量の灌水を行い易くなる。

また、植物検出カメラ1によれば、通常灌水で灌水を行った植物に含まれる水分量と、水ストレスを与えながらの灌水を行った植物に含まれる水分量とを対比的に比較可能となるので、ユーザは灌水量及び灌水タイミングの適否を効率的かつ高精度に判断できる。

(第1の実施形態の変形例1) 図20は、第1の実施形態の変形例1における最適灌水量探索手順の一例を説明するフローチャートである。図15と同一のステップ処理については、同一のステップ番号を付すことでその説明を省略する。制御部11は、ステップS48で指定時刻まで待機した後に水分指数を算出した後、探索灌水量と、水分指数が目標範囲Bw(範囲内)に保持するように標準化画素平均水分指数Dwの上昇分を表示する(S49A)。これらの表示を基に、ユーザは、最適な水分量を推測することができる。この後、制御部11は本動作を終了する。

(第2の実施形態) 第2の実施形態では、葉中の標準化画素平均水分指数Dwを連続して測定中に、何かの影響で葉の位置ズレが生じた場合を示す。葉中の標準化画素平均水分指数Dwを時系列に測定中、例えば強風や衝突により測定対象の葉が貼り付けられた白色背景板が傾き、葉の位置ズレが生じた場合、レーザ光の照射による反射強度比によって測定される葉中の標準化画素平均水分指数Dwが急激に変化することになる。

測定対象の葉の位置ズレが生じた場合、葉中の標準化画素平均水分指数Dwを時系列に記録しているデータが一気に変動し、その連続性が失われるため、従来では、それまで時系列に測定された標準化画素平均水分指数Dwのデータを破棄し、始めから測定をやり直していた。この結果、測定データの取得効率が著しく低下した。

第2の実施形態では、葉の位置ズレが生じた場合でも、それまで時系列に測定されたデータを破棄することなく有効に活かすことで、葉中の標準化画素平均水分指数Dwのデータを効率良く取得でき、測定時間の増大を抑制するようにする。

図21(A)は、第2の実施形態の植物検出カメラ1によって撮像される、測定対象の葉の含水率を表す画像を示し、かつ位置ズレ前の葉の画像の一例を示す図である。図21(B)は、第2の実施形態の植物検出カメラ1によって撮像される、測定対象の葉の含水率を表す画像を示し、かつ位置ズレ後の葉の画像の一例を示す図である。図中、ドットの数が多くて濃い領域は、含水量の多い領域である。最も濃い(含水量の最も多い)領域sc1は、葉の内側に存在する。次に濃い領域(含水量がやや多い)領域sc2は、領域sc1の周囲に存在する。薄い領域(含水量の少ない)領域sc3は、葉の外側に存在する。また、位置ズレ前と比べ、位置ズレ後では、含水量の多い領域sc1の面積が増えている。

図22は、位置ズレが起きた場合の水ポテンシャル制御実験における標準化画素平均水分指数Dwの時間変化の一例を示すグラフである。このグラフの縦軸は、第1の実施形態と同様、標準化画素平均水分指数を表す。標準化画素平均水分指数は、水ポテンシャルを表し、植物の葉を撮像した画像における1画素当たりに含まれる水分量に相当する値を示す。グラフの横軸は、分を単位とする経過時間を表す。

葉の位置ズレがあった時(図中、タイミングtc参照)、標準化画素平均水分指数Dwは、一気に変化する。葉の位置ズレが無かった場合の葉中の標準化画素平均水分指数Dwは、グラフgh1に示すように変化する。一方、葉の位置ズレがあった場合の葉中の標準化画素平均水分指数Dwは、グラフgh2に示すように変化する。

第2の実施形態では、葉の位置ズレがあった場合でも、次のような考察に基づく補正を行うことで、葉の位置ズレ前の標準化画素平均水分指数Dwのデータを有効に活用し、葉の位置ズレ後の標準化画素平均水分指数Dwのデータと連続性を保つようにして、時系列の標準化画素平均水分指数Dwのデータを取得する。

以下の考察では、葉の位置ズレとして、葉が傾く場合を想定する。この場合、葉がパン方向あるいはチルト方向に傾いて角度が変わることは、カメラから見た場合に葉の厚みが変わることに相当する。

葉に含まれる水分量である葉中の含水率(言い換えると、水ポテンシャル)は、標準化画素平均水分指数Dwと比例する。また、標準化画素平均水分指数Dwは、前述したように、反射強度比Ln(I905/I1550)の総和と葉の非可視光画像を構成する画素数又は葉の可視光撮像画像を構成する画素数のうち緑色(G)を占める画素数とから得られる。

反射強度比Ln(I905/I1550)は、既知のLambert・Beerの法則に基づく、数式(3)に示すように、葉の厚みtとほぼ比例する(相関がある)ことが分かっている。数式(3)において、α:水の吸収係数、t:葉の厚み、C:水の濃度、β:散乱損失項である。

Ln(I905/I1550) = α・t・C + β ……(3)

総括すると、葉中の含水率(水ポテンシャル)は、葉の厚みtを勾配(傾き)として持つ、標準化画素平均水分指数Dwの一次関数で表される。つまり、葉中の含水率の傾きは、葉の厚みtによって変化する。

前述したように、位置ズレが起きて葉の角度が変化することは、葉の厚みtによる傾きの変化に相当することから、葉の角度の変化(葉の厚みtによる傾きの変化)に対応する係数Q(補正係数)を、位置ズレ後の標準化画素平均水分指数Dwのデータに乗算することで、位置ズレ前の標準化画素平均水分指数Dwのデータを得ることができる。

これにより、位置ズレの前後で時系列に得られた標準化画素平均水分指数Dwのデータは連続性を保つことができる。ただし、位置ズレ直前と位置ズレ直後の含水率の取得は、僅かな時間内で行われることから、これらの間で実質的な含水率は変化無しとする。

具体的に、位置ズレ前後の標準化画素平均水分指数Dwの補正例を示す。図23は、位置ズレ補正前後の標準化画素平均水分指数の一例を時系列に示すテーブルである。このテーブルでは、図22に示すグラフにおいて、経過時間が16250分(時刻17:10)で位置ズレが起きた場合、補正前の標準化画素平均水分指数Dwと補正後の標準化画素平均水分指数Dwとが示されている。ここでは、葉の角度の変化に対応する係数Qは、係数算出部の一例としての制御部11により算出され、具体的には、値0.7303(=0.6416/0.8785)である。

図24は、第2の実施形態における位置ズレ補正手順の一例を説明するフローチャートである。第2の実施形態の植物検出カメラ1は第1の実施形態とほぼ同一の構成を有する。第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を用いることで、その説明を省略する。

制御部11は、現時刻の標準化画素平均水分指数Dw1を取得し、UI画面60に表示する(S91)。制御部11は、指定された経過時間後(例えば30分後)の標準化画素平均水分指数Dw2を取得して表示する(S92)。指定された経過時間とは、測定間隔に相当する。

制御部11は、標準化画素平均水分指数Dw1と標準化画素平均水分指数Dw2の差分が閾値thを超えるか否かを判別する(S93)。この閾値thは、葉の位置ズレが起き、標準化画素平均水分指数Dwが変化すると想定される値の判定に用いられる。

ここで、閾値thはあらかじめ設定される。閾値thを設定する際、制御部11は、ズレ判定閾値入力画面(図示せず)を表示する。ユーザは、このズレ判定閾値入力画面に対し、位置ズレが起きたと判定するための閾値thを入力する。入力が済むと、制御部11は、この入力値を表示し、閾値thの設定を受け付ける。

標準化画素平均水分指数Dw1と標準化画素平均水分指数Dw2の差分が閾値thを超えない場合、つまり、葉の位置ズレが起きていないと想定される場合、制御部11はステップS95の処理に進む。一方、標準化画素平均水分指数Dw1と標準化画素平均水分指数Dw2の差分が閾値thを超えた場合、制御部11は、位置ズレが起きたと判断し、標準化画素平均水分指数Dw2及びその後の標準化画素平均水分指数Dwの値を、ズレ量を補正してUI画面60に表示する(S94)。

この後、制御部11は、最適灌水量の探索制御を終了するか、または、栽培制御を終了するか、それとも終了しないかを判別する(S95)。最適灌水量の探索制御を終了しない、かつ、栽培制御を終了しない場合、制御部11は、ステップS91の処理に戻る。一方、最適灌水量の探索制御を終了するか、または、栽培制御を終了する場合、制御部11は、本動作を終了する。

このように、第2の実施形態の植物検出カメラ1では、検出部の一例としての制御部11は、植物の位置ずれを検出する。制御部11は、植物の位置ずれが検出された場合に、位置ずれ前後における水分指数を基に、位置ずれ後の水分指数に乗算される係数Q(補正係数)を算出する。制御部11は、係数Qを位置ずれ後の水分指数に乗算することで位置ズレ量を補正し、位置ズレ前の水分指数と位置ズレ後の水分指数とが連続性を保つように補正された結果をモニタ50のUI画面60に表示させる。

これにより、葉の位置ズレが生じた場合でも、時系列に測定された葉中の標準化画素平均水分指数Dwの連続性を保つことができる。従って、それまでの測定した葉中の標準化画素平均水分指数Dwデータを無駄にすることなく、有意義かつ有効に活用することができる。これにより、葉中の標準化画素平均水分指数Dwの時系列のデータを効率良く取得できるとともに、たとえ途中で位置ずれが起きてしまった場合でも、標準化画素平均水分指数Dwの測定時間の増大を抑制することができる。

(第2の実施形態の変形例1) 上記第2の実施形態では、葉の位置ズレを標準化画素平均水分指数Dwの差分が閾値thを超えたか否かによって判断していたが、葉の位置ズレを物理的に検出する場合を示す。

図25(A)は、第2の実施形態の変形例1における位置ズレを検出するために用いられる白色背景板bdを示す図であり、かつ白色背景板bdの正面図である。図25(B)は、第2の実施形態の変形例1における位置ズレを検出するために用いられる白色背景板bdを示す図であり、図25(A)に示す白色背景板bdの側面図である。

白色背景板bdの周縁部には、額縁のような形状を有する、黒塗りの四角形の枠体bd11が設けられている。また、白色背景板bdの表(おもて)面の四隅には、それぞれ米印のマークmk1〜mk4が描かれている。また、白色背景板bdの表面の中央には、葉PT3が貼り付けられている。

植物検出カメラ1で白色背景板bdに貼り付けられた葉PT3を撮像する際、ファインダの枠に黒塗りの枠体bd11を合わせることで、白色背景板bdと植物検出カメラ1のファインダとの平行度を出す。この状態で白色背景板bdを撮像することで、マークmk1〜mk4間の各距離を、予め登録された基準距離と比較する。この基準距離は、植物検出カメラ1に対し、白色背景板bdが平行になるようにセットされた場合に撮像されたマークmk1〜mk4間の距離である。マークmk1〜mk4間の各距離が基準距離と比べて短い場合、白色背景板bdが傾いて位置ズレを起こしていると判断される。

例えばマークmk1とマークmk4間の距離が基準距離と比べて短い程、チルト角が大きいことが分かる。マークmk1とマークmk2間の距離が基準距離と比べて短い程、パン角が大きいことが分かる。

このように、物理的に葉の位置ズレを検出し、かつ、位置ズレ量を計測することができる。更には、計測された位置ズレ量に対応する係数Qを登録しておくことで、位置ズレ後の標準化画素平均水分指数Dwのデータに乗算する処理を行う際、補正前後の標準化画素平均水分指数Dwのデータを用いなくても済む。従って、処理の負荷を軽減できる。

(第2の実施形態の変形例2) 図26は、第2の実施形態の変形例2における白色背景板bddと植物検出カメラ1との機械的な配置の一例を説明する図である。白色背景板bddは、ベース101に立てられた棒材102の上に取り付けられ、立て札として設置される。植物検出カメラ1は三脚151に固定されている。また、白色背景板bddは、ワイヤや棒材等の連結部材mpで植物検出カメラ1と機械的に繋がって固定されている。白色背景板bddに位置ズレが起きた場合、その変化はそのまま植物検出カメラ1に伝わる。例えば大きな位置ズレが起きた場合、植物検出カメラ1で撮像される画像に大きな変化が生じる。

植物検出カメラ1は、時系列に撮像した画像の相関度が閾値以下となった場合、つまり、前回のフレーム画像と今回のフレーム画像との類似度が著しく低下した場合、白色背景板bdに位置ズレが起きたと判断してもよい。これにより、比較的に簡単に白色背景板bdの位置ズレを検出することができる。

また、位置ズレの検出は、上記の方法に限らない。例えば植物検出カメラ1は、衝撃を感知する加速度センサを搭載してもよい。白色背景板bddに位置ズレが起きると、白色背景板bddの変化は、連結部材mpを介して植物検出カメラ1に伝わる。植物検出カメラ1に搭載された加速度センサによってその衝撃が感知された場合、白色背景板bddに位置ズレが起きたことを検出してもよい。

以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

なお、上述した第1の実施形態では、図8や図28を参照して説明したように、植物検出カメラ1は、観察対象(測定対象)の葉の参照光LS1,測定光LS2の反射位置(つまり、葉の可視光撮像画像を構成する画素に相当する位置)毎の反射強度比Ln(I905/I1550)を算出し、この算出値が閾値Sh(例えば0.3)を超えた画素の集合を、葉PT3の画素に相当する領域として決定した。しかし、この決定方法では、水ストレスの付与に伴って、葉PT3と見なされる画素の領域が経時的に変化するので、初期時との正確な比較が難しくなり、一度特定した葉PT3の形状を基準とした水分量の経時的な評価ができないことがあり得る。

そこで、図8に示す方法ではなく、図29に示す方法により、植物の葉PT3に水ストレスを付与する測定開始時(初期時)に葉PT3と見なされる領域を一度かつ固定的に決定し、以降の水ストレスの付与量(言い換えると、水分指数)の時系列的な変化をその領域内で評価してもよい。図29は、測定対象となる葉の初期占有輪郭(外郭)の決定する動作手順の一例を説明するフローチャートである。図29に示す処理は、例えば図8に示す処理と同じタイミングで、図8に示す処理と置き換わって実行される。

図29において、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、パラメータiを1に初期設定し(S101)、i番目のフレーム内画素Miにおける反射強度比Wi(つまり、画素MiにおけるLn(I905/I1550))を算出して取得する(S102)。パラメータiは、フレーム内の画素数を示し、1〜Nである。Nは葉の1フレーム画像を構成する画素数を示す。閾値設定/水分指数検出処理部27aは、ステップS102において算出した反射強度比Wiが葉と見なされるための閾値Shを超えているか否かを判断する(S103)。閾値Shは図8を参照して説明しているので省略する。

ステップS103において、反射強度比Wiが閾値Sh未満である場合、この画素は、葉以外の背景を表す画素であるとして、表示処理部29は、閾値設定/水分指数検出処理部27aの出力を用いて、この画素を単色で表示するための単色表示データを生成する(S104)。この生成された単色表示データは、表示制御部37を介して、モニタ50に表示される。

一方、ステップS103において、反射強度比Wiが閾値Sh以上である場合、表示処理部29は、閾値設定/水分指数検出処理部27aの出力を用いて、この画素を、反射強度比Wi(つまり、Ln(I905/I1550))に対応する階調色で表示する(S105)。ここでは、反射強度比Ln(I905/I1550))に対応する階調色をn階調で表示可能である(図27参照)。nは任意の整数である。階調色については、図27を参照して上述したので、説明は省略する。

パラメータiがフレーム内の画素数Nに達していない場合には(S106、NO)、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、パラメータiをインクリメントし(S107)、ステップS102の処理に従って、次のフレーム内画素における反射強度比Wi(つまり、画素MiにおけるLn(I905/I1550))を算出して取得する(S102)。つまり、パラメータiがフレーム内の画素数Nに達するまで、ステップS102〜ステップS106までの処理が繰り返される。

一方、パラメータiがフレーム内の画素数Nに達した場合には(S106、YES)、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、反射強度比Wi(つまり、Ln(I905/I1550))が閾値Sh以上となるフレーム内画素Miの集合を、測定開始時(つまり、測定初期時)における葉の初期占有輪郭(つまり、観察対象部位の範囲を示す外郭)として固定的に決定して設定する(S108)。

これにより、ユーザは、水ストレスを付与してからの時系列的な葉の水分量の推移が水ストレスの未付与時(つまり、初期の)葉と見なされる領域を基準として高精度に比較することができる。植物検出カメラ1は、葉の水分量の適切な推移を時系列に得ることができる。また、植物検出カメラ1は、測定開始以降、初期占有輪郭を基準として、その初期占有輪郭を構成する画素の集合に限って、その集合を構成する画素毎の水分指数を追尾的に算出するので、葉の水ストレスの付与に対する水分指数が大きく変化することを精度良くデータとしてモニタ50にプロットしてユーザ等に示すことができる。また、表示制御部37は、植物の葉、実、茎及び花のうちいずれか1つの非可視光画像を出力する。これにより、ユーザは、出力された非可視光画像によって植物の形状が正しいか否かを正確に確認することができる。また、ユーザは、表示制御部37から出力された可視光画像と上述した非可視光画像とを比べることで、植物の形状が正しいか否かをより正確に確認することができる。

また、植物PTの葉PT3には、第1投射光源13及び第2投射光源15から見て、植物PTの葉PT3の背面を覆う白色背景板bd(背景物)が配置される。これにより、植物検出カメラ1は、植物の観察の対象部位となる葉PT3の周囲に多数の葉が生い茂った葉群の中にあっても、周辺の葉からの散乱光(例えば太陽光等の外光の散乱)による影響を排除できるので、葉PT3の水分量を正確に測定できる。

また、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、植物の対象部位として固定的に決定された反射位置の集合内(言い換えると、葉の非可視光画像を構成する各画素の集合内)を基準として、反射位置(照射位置)毎(つまり、非可視光画像を構成する画素毎)に水分量を算出する。表示制御部37は、非可視光画像を、照射位置毎に算出された水分量に応じて、段階的に識別可能に表示する。これにより、ユーザは、一度決定された植物の葉と見なされた領域を基準として、植物全体の水分量の他、植物に含まれる水分量の分布を時系列に追跡して視認することができる。

なお、上述した本実施形態の栽培装置は、植物(例えばトマトの葉)へのストレス(例えば水ストレス)を付与するために、植物への灌水を中断する等の未灌水の処理を行う旨を説明した。しかしながら、本実施形態の栽培装置において、植物へのストレス(例えば水ストレス)を付与する方法は、未灌水に限定されない。例えば本実施形態の栽培装置は、植物へのストレス(例えば水ストレス)を付与するために、未灌水ではなく、植物に供給される液肥(つまり、液体肥料)の電気伝導度を所定値以上に大きくなるように変えても構わない。つまり、栽培装置は液肥の電気伝導度が所定値以上に大きくなるように変えることにより、結果的に未灌水と同等の水ストレスが植物に付与されることになる。これは、液肥の電気伝導度が所定値以上に大きくなるように変わることにより、根が浸透圧の関係で水を吸えなくなること(言い換えると、塩ストレスの付与)が起きてしまい、結果として未灌水と同様に、植物に水ストレスが付与されることになるためである。なお、所定値は、育成者の経験により得られる既知の値であり、塩ストレスが植物に付与される時の液肥の電気伝導度の下限値である。

本発明は、植物に含まれる水分量の推移を定量的かつ時系列に提示し、植物に対する水ストレスの付与の程度に関して初期時からの水分量の推移を正確に捉える水分量観察装置、水分量観察方法及び栽培装置として有用である。

1 植物検出カメラ 11 制御部 11a タイミング制御部 13 第1投射光源 15 第2投射光源 17 投射光源走査用光学部 21、31 撮像光学部 23、33 受光部 25 信号加工部 25a I/V変換回路 25b 増幅回路 25c コンパレータ/ピークホールド処理部 27 検出処理部 27a 閾値設定/水分指数検出処理部 27b メモリ 27c 検出結果フィルタ処理部 29 表示処理部 35 撮像信号処理部 37 表示制御部 50 モニタ 60 UI(ユーザインタフェース)画面 61 探索灌水量入力画面 63 設定領域 64 初期設定ボタン 66 ズレ閾値設定ボタン 67,68 入力ボックス 71 灌水量探索モードボタン 72,74 表示ボックス 73 水ストレス制御(栽培制御)モードボタン 101 ベース 102 棒材 151 三脚 ARE エリア BB 土台 bd,bdd 白色背景板 bd1 開口部 bd2 孔部 bd3,bd4,bd5,bd21 スリット bd11 枠体 Bw 目標範囲 gh1,gh2 グラフ Gm1 葉中水分モニタリング画面 JG 画像判定部 PT3,PT3t,PT3o 葉 LS1 参照光 LS2 測定光 mk1,mk2,mk3,mk4 マーク mp 連結部材 MT 通信端末 NVSS 非可視光センサ pf1,pf2,pf3,pf4 水ストレスプロファイル PJ 投射部 TR 光源走査用タイミング信号 RF 光源発光信号 RV0 環境光 RV1、RV2 拡散反射光 r1〜r5,r11〜r18,ra,rb,rc 矢印 sc1,sc2,sc3 領域 sm1,sm2,sm3 植物サンプル TW1 水ポテンシャル降下期間 TW2 最適灌水量探索期間 TW3 水ストレス制御期間 TW4 含水率回復期間 VSC 可視光カメラ WF 肥料水供給装置

QQ群二维码
意见反馈