耐ゴーリング性ドリルパイプツールジョイントおよび対応するドリルパイプ

申请号 JP2015552146 申请日 2013-01-11 公开(公告)号 JP6204496B2 公开(公告)日 2017-09-27
申请人 テナリス・コネクシヨンズ・ベー・ブイ; 发明人 成川 知之; 小野 達雄; 佐倉 弘持; 福井 俊彦; 吉田 基久; 桑野 岳; 小林 信男; 佐藤 信秀;
摘要
权利要求

外面(21)に雄ネジ部分(23)を含むピン(2)と;および 内面(31)に雌ネジ部分(33)を含むボックス(3)を備えており、雌ネジ部分が雄ネジ部分に、雄ネジ接触面および雌ネジ接触面からなる接触ゾーンで、ドープまたは潤滑グリースを使用することなく、ねじ込まれ、そして締められることになるドリルパイプツールジョイント(1)であって、雄ネジ接触面の少なくとも90%が硬質金属からなる表面層であり、そして雌ネジ接触面の少なくとも90%が軟質材料からなる表面層であり、そして該両表面部分がねじ込み後に接触している表面であり、硬質金属の硬度が600Hv以上であり、軟質材料の硬度が350Hv以下であり、軟質材料に対する硬質金属の硬度比が2.8以上である上記ドリルパイプツールジョイント(1)。硬質金属が、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)またはそれらの混合物からなるリスト内で選択される金属から実質的になる請求項1に記載のドリルパイプツールジョイント。硬質金属の層がメッキ処理を介して得られる請求項1または2に記載のドリルパイプツールジョイント。硬質金属の層の厚さが5から100μmの間に構成される請求項1ないし3のいずれか1項に記載のドリルパイプツールジョイント。軟質材料が、銅(Cu)、亜鉛(Zn)またはそれらの混合物からなるリスト内で選択される金属からなる請求項1ないし4のいずれか1項に記載のドリルパイプツールジョイント。軟質材料の層が、メッキ処理を介して得られる請求項1ないし5のいずれか1項に記載のドリルパイプツールジョイント。軟質材料がリン酸塩層から実質的になる請求項1ないし3のいずれか1項に記載のドリルパイプツールジョイント。軟質材料の層の厚さが5から100μmの間に構成される請求項1ないし7のいずれか1項に記載のドリルパイプツールジョイント。パイプ本体(50)と;および 外面(21)に雄ネジ部分(23)を含むピン(2)と;および 内面(31)に雌ネジ部分(33)を含むボックス(3)を備えており、雌ネジ部分が同じ種類の別のドリルパイプの雄ネジ部分に、雄ネジ接触面および雌ネジ接触面からなる接触ゾーンで、ドープ又は潤滑グリースを使用することなく、ねじ込まれ、そして締められることになるドリルパイプ(4)であって、雄ネジ接触面の少なくとも90%が硬質金属からなる表面層であり、そして雌ネジ接触面の少なくとも90%が軟質材料からなる表面層であり、そして該両表面部分がねじ込み後に接触している表面であり、硬質金属の硬度が600Hv以上であり、軟質材料の硬度が350Hv以下であり、軟質材料に対する硬質金属の硬度比が2.8以上である上記ドリルパイプ(4)。硬質金属が、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)またはそれらの混合物からなるリスト内で選択される金属から実質的になる請求項9に記載のドリルパイプ。硬質金属の層がメッキ処理を介して得られる請求項9または10に記載のドリルパイプ。硬質金属の層の厚さが5から100μmの間に構成される請求項9ないし11のいずれか1項に記載のドリルパイプ。軟質材料が、銅(Cu)、亜鉛(Zn)またはそれらの混合物からなるリスト内で選択される金属からなる請求項9ないし12のいずれか1項に記載のドリルパイプ。軟質材料の層が、メッキ処理を介して得られる請求項9ないし13のいずれか1項に記載のドリルパイプ。軟質材料がリン酸塩層から実質的になる請求項9ないし11のいずれか1項に記載のドリルパイプ。軟質材料の層の厚さが5から100μmの間に構成される請求項9ないし15のいずれか1項に記載のドリルパイプ。ドリルパイプを組み立てる方法であって、 雄ネジ部分を含むピンと雌ねじ部分を含むボックスが、ドープまたは潤滑グリースを使用することなく、組み立てのためにねじ込まれ、そして締められる請求項9ないし16のいずれか1項に記載のドリルパイプを組み立てる方法。

说明书全文

本発明は、ドリルパイプツールジョイントおよび対応するドリルパイプ、より詳細には油、天然ガス、シェールガス、地熱等の井の掘削に使用されるドリルパイプが一緒にねじ込まれる場合に、ネジ用グリースを使用せずに繰り返し組立/分解(make−up/break−out)操作を行うために至適化された表面硬度を有するドリルパイプツールジョイントおよび対応するドリルパイプに関し、これにより環境に優しく、ならびに操作効率が改善する。

油、天然ガス等の井の掘削に使用するドリルパイプは、ツールジョイントにより連結されてきた。ツールジョイントが掘削中に必要な高いトルクを伝えるために、その外径部分はパイプ本体の外径よりも大きくなるように形成されるが、その内径部分はパイプ本体の内径よりも小さくなるように形成される。このために一般にツールジョイントのピンおよびボックスを連結している間の組立トルク値は、油、天然ガス等の生産のために井で使用するケーシングまたはチュービングの組立トルク値の数倍になることが必要である。

その一方で、生産のための井で使用されるケーシングまたはチュービング用のねじ込みジョイントのピンおよびボックスの組立/分解操作の回数、往復の回数はそれほど多くない。したがって抗ゴーリング(かじり)性の評価試験について、国際標準化機構ISO13679は、ケーシングの組立/分解操作について2回、そしてチュービングの組立/分解操作について9回を性能評価の合/否判定と定めている。しかしドリルパイプは地層、井の傾斜、深さなどのような各種の井の掘削条件に応じてドリルビットの交換が必要である。さらにドリルパイプに関するISO標準規定は無いが、耐ゴーリング性は25往復以上、そしてより好ましくは50往復以上になるものと期待される。

ケーシングまたはチュービングに関して、ねじ込みジョイントのピンおよびボックスに適用される潤滑グリース(またはドープ)が抗ゴーリングのために使用され、そしてメッキのような表面処理も採用されてきた(ここで以下の特許文献1から7を参照にされたい)。しかしツールジョイントの掃除による広がりで、コーティングによる井の底への過剰な潤滑グリースの沈殿、作業場における掘削装置汚染の発生等は、環境によくない影響を有する恐れがある。したがって環境に配慮して、従来のネジ用潤滑グリースを使用しない別の表面コーティング処理、所謂「グリース無し」または「ドープ無し」、すなわち潤滑グリース(またはドープ)をねじ込みジョイントのピンおよびボックスに適用しないことが最近では実用化されるようになった。

上記技術分野に関して以下の文書が確認された。

国際公開第2003−060198号パンフレット

国際公開第2005−098300号パンフレット

国際公開第2007−026970号パンフレット

国際公開第2008−108263号パンフレット

特開2003−074763号公報

米国特許第4758025号明細書

米国特許第4468309号明細書

特許文献1は、少なくとも一つのピンおよびボックスが、20重量%〜80重量%の銅を含む銅と錫との合金でコートされた管状部材を開示する。

特許文献2は、少なくとも一つのピンおよびボックスが、結合剤、銅粉末および潤滑粉末を含んでなる固体の潤滑コーティングでその表面が仕上げられ、そして他方のピンおよびボックスが亜鉛または亜鉛合金コーティングでコートされた鋼鉄パイプ用のねじ込みジョイントを開示する。

特許文献3は、Sn−Bi合金メッキまたはSn−Bi−Cu合金メッキがピンおよびボックスの少なくとも一つに形成された鋼鉄パイプ用のねじ込みジョイントを開示する。

特許文献4は、少なくとも一つのピンおよびボックスが、Cu−Zn合金またはCu−Zn−M1合金(M1はSn,BiおよびInの中から選択される少なくとも一つである)の第一メッキ層、そしてSn−M2合金(M2はBi、In、Ni、ZnおよびCuの中から選択される少なくとも一つの元素である)の第二メッキ層で被覆された鋼鉄パイプ用のネジジョイントを開示する。

特許文献5は、第一から第n番目のCu−Sn合金メッキ層を含んでなる第一メッキ層がボックスに形成されている油井パイプ用のジョイントを開示する。

特許文献6は、ピンおよびボックスの少なくとも一つにCuまたはZuの無電解金属転換(electroless metal conversion)コーティングのような軟質金属コーティングを施し、その上に潤滑剤をコーティングすることを含んでなるゴーリングの防止法を開示する。

特許文献7は、ピンおよびボックスの少なくとも一つにイオンメッキを施すことにより金、銀、鉛、錫、インジウム、パラジウムまたは銅のような低いせん断応を有する物質のフィルムを沈着させることを含む耐ゴーリング性のための方法を開示する。

1から7の特許文献は固体潤滑剤の例を開示しているが、ドリルパイプツールジョイントの反復的な組立/分解操作を潤滑グリースの使用なしで25回以上達成する技術は見い出せなかった。

しかし現状では、ドリルパイプツールジョイント用のネジ用潤滑グリースを使用しない代替可能な表面コーティング処理は存在しない。

さらに耐ゴーリング性を改善し、かつドリルパイプツールジョイントの反復的組立/分解操作の回数を上げる必要性が常に存在する。

したがって本発明の目的は、ゴーリングを回避するために潤滑グリースを使用せずに25回以上の反復的な組立/分解操作にかけることができるドリルパイプツールジョイントおよび対応するドリルパイプを提供することであり、これは環境に優しく、しかも潤滑剤を使用しない。

上記の技術的課題は、外面に雄ネジ部分を含むピン;および内面に雌ネジ部分を含むボックスを備えており、雌ネジ部分が雄ネジ部分に、雄ネジ接触面および雌ネジ接触面から なる接触ゾーンでねじ込まれ、そして締められることになるドリルパイプツールジョイントのおかげで解決され、ここで少なくとも雄ネジ接触面の一部分または雌ネジ接触面の一部分が硬質金属からなる表面層であり、そして少なくとも雌ネジ接触面の一部分または雄ネジ接触面の一部分がそれぞれ軟質材料からなる表面層であり、そしてここが該両表面部分がねじ込み後に接触している表面である。

また本発明は: パイプ本体;および 外面に雄ネジ部分を含むピン;および 内面に雌ネジ部分を含むボックスを備えており、雌ネジ部分が同じ種類の別のドリルパイプの雄ネジ部分に、雄ネジ接触面および雌ネジ接触面からなる接触ゾーンでねじ込まれ、そして締められることになるドリルパイプを対象とし、ここで少なくとも雄ネジ接触面の一部分または雌ネジ接触面の一部分が硬質金属からなる表面層であり、そして少なくとも雌ネジ接触面の一部分または雄ネジ接触面の一部分が、それぞれ軟質材料からなる表面層であり、そしてここが該両表面部分がねじ込み後に接触している表面である。

複数の上記ドリルパイプが、組立てられた後に複数の上記ドリルパイプツールジョイントを構成することになる。

したがって上記ドリルパイプツールジョイントおよびドリルパイプは、一つの一般的発明概念を形成するように連結された発明の一群に関する。

本発明のドリルパイプツールジョイントまたはドリルパイプは、全ての可能な態様に従い組み合わせることができる以下の特徴を含む: −それぞれ硬質金属および軟質材料からなる表面層が、接触ゾーン表面の少なくとも90%を占める; −雄ネジ接触面または雌ネジ接触面が、硬質金属からなる表面層であり、そして雌ネジ接触面または雄ネジ接触面がそれぞれ軟質材料からなる表面層である; −硬質金属の硬度が600Hv以上、例えば800Hv以上である; −軟質材料の硬度が350Hv以下、例えば150Hv以下である; −軟質材料に対する硬質金属の硬度比が2.8以上、例えば5以上である; −硬質金属が、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)またはそれらの混合物からなるリスト内で選択される金属から実質的になり;一態様によれば、硬質金属の上記層がメッキ処理を介して得られ;一態様によれば硬質金属の層が硬質クロムメッキで作成され;別の一態様によれば硬質金属の層が非電気(non electric)ニッケルメッキで作成される; −硬質金属の層の厚さが5から100μmの間、例えば10μm以上、例えば50μm以下に構成される; −軟質材料が、銅(Cu)、亜鉛(Zn)またはそれらの混合物からなるリスト内で選択される金属からなり;一態様によれば軟質材料の該層がメッキ処理を介して得られ;一態様によれば軟質材料の層が電解(electrolytic)銅または電解亜鉛で作成される; −軟質材料がリン酸塩層から実質的になる; −軟質材料の層の厚さが5から100μmの間、例えば10μm以上、例えば50μm以下に構成される; −ドープまたは潤滑グリースを欠くドリルパイプツールジョイント; −雄ネジ部分を含むピン、および雌ねじ部分を含むボックスが、組立のためにねじ込まれ、そして締められる時にドープまたは潤滑グリースを欠いている。

本発明に従い、層の硬度はビッカース硬度(Hv)として定められる。

本発明に従い、「硬質」および「軟質」という用語は相対的用語と理解されなければならない。すなわち軟質材料からなる表面層は、硬質材料からなる表面層よりも低い硬度を有する。

また本発明は、上記ドリルパイプを組立てる方法に関し、ここで雄ネジ部分を含むピンおよび雌ねじ部分を含むボックスは、組立のためにねじ込まれ、そして締められる時にドープまたは潤滑グリースを欠いている。

本発明に従い、ゴーリングを抑制するためにいかなる潤滑グリースも使用せずに25回以上の反復的な組立/分解操作にかけることができるドリルパイプツールジョイントおよび対応するドリルパイプを提供することが可能であり、これは環境に優しく、しかも潤滑剤を使用しない。

本発明による態様におけるドリルパイプツールジョイントおよびそのドリルパイプツールジョイントを含むドリルパイプの全体構造を示す図解である。

本発明による態様におけるドリルパイプを示す長手方向の断面図である。

軟質材料に対する硬質金属の硬度比と、本発明による態様におけるドリルパイプツールジョイントの組立/分解操作の回数との間の関係を示すグラフである。

本発明による態様におけるドリルパイプツールジョイントについて組立/分解試験後のピンの表面状態を示す写真である。

本発明による態様におけるドリルパイプツールジョイントについて組立/分解試験後のボックスの表面状態を示す写真である。

ドリルパイプツールジョイントについて組立/分解試験後にゴーリングが生じたピンの表面状態を示す写真である。

ドリルパイプツールジョイントについて組立/分解試験後にゴーリングが生じたボックスの表面状態を示す写真である。

ドリルパイプツールジョイントの構造 図1は本発明による態様におけるドリルパイプツールジョイントおよびそのドリルパイプツールジョイントを含むドリルパイプの全体構造を示す図解である。さらに図2は本発明による態様におけるドリルパイプを示す長手方向の断面図である。掘削用のドリルパイプツールジョイントは、API(アメリカ石油協会)の標準により定められ、そして図1および2に示す形のように異なる細目で幾つかの形に形成される。

本発明による一態様におけるドリルパイプツールジョイント1は、外面21に雄ネジ部分23を含むピン2、内面31に雌ネジ部分33を含むボックス3を備えている。雌ネジ部分33が雄ネジ部分23に、雄ネジ接触面および雌ネジ接触面からなる接触ゾーンでねじ込まれ、そして締められることになる。少なくとも雄ネジ接触面の一部分または雌ネジ接触面の一部分が硬質金属からなる表面層であり、そして少なくとも雌ネジ接触面の一部分または雄ネジ接触面の一部分がそれぞれ軟質材料からなる表面層であり、そしてここが該両表面部分がねじ込み後に接触している表面である。

すなわち雄ネジ部分23および雌ネジ部分33の1つのねじ込まれる表面(21または31)は硬質金属からなる表面層を含み、一方それらの他方のねじ込まれる表面(31または21)は、硬質金属からなる表面層よりも硬度が低い軟質材料からなる表面層を含む。

より正確には、雄ネジ部分23および雌ネジ部分33の1つのねじ込まれる表面(21または31)は、そのねじ込まれる表面の周り全体に最上面として第一硬度を有する層または構造を有し、一方それらの他方のねじ込まれる表面(31または21)は、そのねじ込まれる表面の周り全体に最上面として第二硬度を有する層または構造を有し、ここで第二硬度の硬度は第一硬度より低い。

本発明の別の態様におけるドリルパイプ4は、パイプ本体50、外面21に雄ネジ部分23を含むピン2、および内面31に雌ネジ部分33を含むボックス3を備えている。雌ネジ部分が同じ種類の別のドリルパイプの雄ネジ部分に、雄ネジ接触面および雌ネジ接触面からなる接触ゾーンでねじ込まれ、そして締められることになる。少なくとも雄ネジ接触面の一部分または雌ネジ接触面の一部分が硬質金属からなる表面層であり、そして少なくとも雌ネジ接触面の一部分または雄ネジ接触面の一部分がそれぞれ軟質材料からなる表面層であり、そして該両表面部分がねじ込み後に接触している表面である。

ドリルパイプ4は掘削に際し、複数のドリルパイプ4をドリルパイプツールジョイント1で締めて(「組立」と言う)連結することにより使用される。ここでドリルパイプツールジョイント1は、ドリルパイプ4のピン2の外面21に提供される雄ネジ部分23、および他方のドリルパイプ4のボックス3の内面31に提供される雌ネジ部分33を含む。ドリルパイプ4のピン2の外面21に提供される雄ネジ部分23、および他のドリルパイプ4のボックス3の内面31に提供される雌ネジ部分33は一緒にねじ込まれ、そして締められる。さらにドリルパイプ4は、必要に応じて緩められる(「分解する」と言う)。したがってドリルパイプ4はドリルパイプツールジョイント1で反復的な組立/分解操作にかけられる。

ピン2の外面21に形成される雄ネジ部分23は、第一硬度を有する硬質金属からなる表面層(すなわち硬い表面に処理した表面)、または軟質材料からなる表面層により提供される第二硬度を有する軟質材料からなる表面層(すなわち軟らかな表面に処理した表面)を含み、ここで第二硬度は第一硬度よりも硬度が低い。

硬質金属の例として、クロムメッキ、硬質クロムメッキ、ニッケルメッキ、非電気ニッケルメッキ等が列挙される。

また上記の硬質金属表面処理よりも低い硬度の軟質材料からなる表面層の例として、銅メッキ、電解銅メッキ、亜鉛メッキ、電解亜鉛メッキ等が列挙される。さらに軟質材料からなる表面層は、メッキに限定されず、リン酸マンガン処理およびリン酸亜鉛処理のようなリン酸塩処理を使用してもよく、すなわちリン酸塩層を形成することができる。

本発明の態様に従い、硬質金属の硬度は600Hv以上、例えば800Hv以上である。

本発明の態様に従い、軟質材料の硬度は350Hv以下、例えば150Hv以下である。

本発明の態様に従い、硬質金属の層の厚さは5から100μmの間、例えば10μm以上、例えば50μm以下に構成される。

本発明の態様に従い、軟質材料の層の厚さは5から100μmの間、例えば10μm以上、例えば50μm以下に構成される。

他方で、ボックス3の内面31に形成される雌ネジ部分33は、雄ネジ部分23の表面処理した表面とは異なって表面処理された表面処理した表面を有する。より正確には雌ネジ部分33は、その最も外面に第二硬度を有する層または構造(金属構造を含む)を有する。雄ネジ部分23が第一硬度を有する表面処理した表面を有する場合、雌ネジ部分33は、第一硬度よりも低い硬度である第二硬度を有する表面処理した表面(すなわ軟質表面処理した表面)を有する。あるいは雄ネジ部分23が第二硬度を有する表面処理した表面を有する場合、雌ネジ部分33は、第一硬度を有する表面処理した表面を有する。

上記のように形成された雄ネジ部分23および雌ネジ部分33を有するドリルパイプ4は、ドリルパイプツールジョイント1で一緒に締められる。換言すると、ドリルパイプ4は雄ネジ部分23を雌ネジ部分33にねじ込むことにより締められる。

雄ネジ部分23は、上記のように軟質材料からなる表面層または硬質金属からなる表面層を有し、そして雌ネジ部分33は上記のように硬質金属からなる表面層または軟質材料からなる表面層を有する。より正確には、雄ネジ部分23が硬質金属からなる表面層を有する場合、雌ネジ部分33は軟質材料からなる表面層を有する。あるいは雄ネジ部分23が軟質材料からなる表面層を有する場合、雌ネジ部分33は硬質金属からなる表面層を有する。

ドリルパイプツールジョイント1において、雄ネジ接触面または雌ネジ接触面が硬質金属からなる表面層であり、そして雌ネジ接触面または雄ネジ接触面がそれぞれ軟質材料からなる表面層である。

本発明の範囲内の他の態様では、接触ゾーン表面の一部のみを占める硬質金属および/または軟質材料からなる表面層を持つ接触ゾーン表面を有することができ、一態様によれば、硬質金属および軟質材料からなる表面層はそれぞれ、接触ゾーン表面の少なくとも90%を占める。

このように形成されたドリルパイプツールジョイント1では、たとえ雌ネジ部分33と雄ネジ部分23との間で組立/分解操作が繰り返し行われても、所謂「ゴーリング」の発生が抑制される。ゆえにゴーリングが生じるまでの組立/分解操作の回数を上げることができる。

ここで「ゴーリング」とは金属間の接触により生じる傷害状態を表す。「焼き付き(溶着)からゴーリングまで進む」とは、接触面が焼き付き、そして最初の焼き付きでは動かないが、次に回転または動かされることにより焼き付いた面が剥がれ、そして損傷を受ける状態を表す。このゴーリングは接触面の圧が高い場合、または擦れる金属間の親和性が高い場合に起こるようである。

本態様では、雄ネジ部分23および雌ネジ部分33が互いにそれぞれ硬度が異なる硬質金属からなる表面層および軟質材料からなる表面層を有するので、互いに接触することになる表面間の親和性が低い。さらに後に述べるように、軟質材料に対する硬質金属の硬度比を2.8以上に設定することが好ましい。一態様によれば、該軟質材料に対する硬質金属の硬度比は5以上である。この構造により、ゴーリングの発生を抑え、これによりゴーリングが生じるまでの組立/分解操作の回数を上げることが可能である。ドリルパイプツールジョイント1の組立/分解操作の回数は、生産用の井のケーシングおよびチュービングについて、従来のねじ込み型ツールジョイントの回数と厳密に比較されることが求められるので、組立/分解操作の回数は好ましくは25回以上、より好ましくは50回以上であることに注目すべきである。

組立/分解試験 ドリルパイプツールジョイント1の組立/分解操作における抗ゴーリング性評価を行うために、5−1/2FHの寸法のドリルパイプを使用することにより組立/分解試験を行った。5−1/2FHのドリルパイプは、7インチ(177.8mm)の外径と3.75インチ(95.25mm)の内径を有する。材料の等級はTJ130(AISI改良4135、降伏強さ130−150ksi、引張強さ、最小140ksi)である。表面処理領域は、外部ショルダーのからネジ山を通って内部ショルダーまたは内部ベベルまでである。ドリルパイプの反復する組立/分解操作後、雄ネジ部分23または雌ネジ部分33の表面にゴーリングが生じるまでの組立/分解操作の回数を評価した。この評価は、好ましくは25回以上、より好ましくは50回以上である。

表1は組立/分解試験の結果を示す。雄ネジ部分23および雌ネジ部分33の表面に提供される表面処理の組み合わせは以下の通りである:ピンは銅メッキ、クロムメッキまたはニッケルメッキで覆われ、そしてボックスには銅メッキ、亜鉛メッキ、リン酸マンガン処理が施されるか、または表面処理しない(すなわち表面処理せずに加工されるので、これは「表面処理」の項目で「なし」と示す)。ゴーリングが生じるまでの組立/分解操作の回数を、これらの各サンプルについて評価する。メッキの厚さに関しては、工業目的で利用できる10μm以上で30μm未満の範囲を選択した。

表1の結果から、ピン2およびボックス3に互いに異なる硬質金属からなる表面層および軟質材料からなる表面層が施される場合、組立/分解操作はゴーリングを生じずに25回以上行うことができるので、耐ゴーリング性が良好であると判明した(実施例1から9で)。特にクロムメッキまたはニッケルメッキがピン2に適用され、一方、銅メッキまたは亜鉛メッキがボックス3に適用される場合、組立/分解操作は、ゴーリングを生じずに50回以上行うことができる(実施例1から6で)。硬質金属からなる表面層と軟質材料からなる表面層との組み合わせ、より正確にはクロムメッキまたはニッケルメッキと銅メッキまたは亜鉛メッキとの組み合わせには互換性があるので、それらをボックス3とピン2のいずれかの側に適用することができる。表1では、「Crメッキ」が硬質Crメッキであり、「Niメッキ」が無電解Ni−Pメッキであり、「Cuメッキ」は電解Cuメッキであり、そして「Znメッキ」は電解Znメッキである。

硬度測定 上記の組立/分解試験の結果から、耐ゴーリング性はピン2およびボックス3に互いに異なる硬度の硬質表面処理および軟質表面処理が施された場合、優れていることが分かった。次に硬質表面処理および軟質表面処理のそれぞれの硬度をパラメーターとして実験した。

表2はピン2およびボックス3のそれぞれに施された表面処理の表面硬度の測定結果を示し、ここで表面処理の種類に従いNo.1から6のそれぞれの硬度を、ビッカース硬度(Hv)により表す。このビッカース硬度試験法は、ISO6507−1およびISO6507−4に従い行った。測定は複数回行い、そしてそれらの平均値を硬度(平均Hv)として示す。さらにメッキ処理の場合、メッキ材料自体の硬度を各表面処理の硬度として測定値の代わりに使用することができる。上記のように、表面処理の種類は、表1の実施例1から9および比較例1から8の表面処理の種類に対応する。

軟質材料に対する硬質金属の硬度比と組立/分解操作の回数との間の関係をこれから考察する。

図3は、表1および2の結果から軟質材料に対する硬質金属の硬度比と組立/分解操作の回数との間の関係を示すグラフである。図3によれば、軟質材料に対する硬質金属の硬度比が2.8以上である場合、組立/分解操作の回数はゴーリングを生じずに25回以上まで上がる。結果は軟質材料に対する硬質金属の硬度比が5以上である場合、6以上の実施例のようにさらに上がる。

図4Aは、本発明による態様においてドリルパイプツールジョイントに関する組立/分解試験後のピンの表面状態を示す写真であり、そして図4Bは、本発明による態様においてドリルパイプツールジョイントに関する組立/分解試験後のボックスの表面状態を示す写真である。図5Aは、ドリルパイプツールジョイントに関する組立/分解試験後にゴーリングが生じたピンの表面状態を示す写真であり、そして図5Bは、ドリルパイプツールジョイントに関する組立/分解試験後にゴーリングが生じたボックスの表面状態を示す写真である。

表1に示す組立/分解試験では、ピン2のクロムメッキ表面およびボックス3の銅メッキ表面で、50回以上の反復組立/分解操作後でも図4Aおよび4Bに示すようにゴーリングは生じなかった。

対照的に表1に示す組立/分解試験において、ピン2の従来から使用されている銅メッキ表面(10〜20μmのメッキ厚)およびボックス3のより硬質な銅メッキ表面(20〜30μmのメッキ厚)で、約10回の組立/分解操作を反復した後に図5Aおよび5Bに示すようなゴーリングが生じた。

本発明の態様の利点をさらに例示する。

本発明の態様のドリルパイプツールジョイントおよび対応するドリルパイプによれば、以下の利点を達成することができる。 (1)本態様では、雄ネジ部分23および雌ネジ部分33が、それぞれ互いに異なる硬度の硬質金属からなる表面層および軟質材料からなる表面層を有する。雄ネジ部分23および雌ネジ部分33は、異なる硬度を有する表面処理された表面、例えばそれぞれクロムメッキおよび銅メッキの組み合わせを有し、互いに接触しているねじ込み面間の親和性は低い。すなわち雄ネジ部分23および雌ネジ部分33の間で組立/分解操作が繰り返し行われても、所謂「ゴーリング」の発生を抑制することができる。したがってゴーリングが生じるまでの組立/分解操作の回数を上げることができる。 (2)図3に示す軟質材料に対する硬質金属の硬度比と組立/分解操作の回数との間の関係から、軟質材料に対する硬質金属の硬度比が2.8以上である場合、ゴーリングを生じずに組立/分解操作の回数が上がり、特にドリルパイプツールジョイントについて実施可能な範囲として25回以上の組立/分解操作が可能であることが確認される。ピン2にクロムメッキまたはニッケルメッキが適用され、一方、ボックス3に銅メッキが適用される場合、ゴーリングが生じるまでに50回以上の組立/分解操作を達成することができる。(3)ピン2およびボックス3にクロムメッキおよび銅メッキの組み合わせのような異なる硬度の表面処理の組み合わせを適用することにより、従来から使用されている潤滑グリース(またはドープ)は、もはやピン2およびボックス3に適用する必要がない。したがって環境に優しいドリルパイプツールジョイントおよびそれを含むドリルパイプを達成することが可能である。 (4)2.8以上の軟質材料に対する硬質金属の硬度比を有する表面処理した表面の組み合わせを、反復する組立/分解操作にかけられるピン2およびボックス3のねじ込み面に適用することにより、いかなるゴーリングも生じずに組立/分解操作の回数が上がるという重要な利点を達成することが可能である。図3のグラフから、2.8の軟質材料に対する硬質金属の硬度比の前後で、ゴーリングを生じずに組立/分解操作の回数が有意に変化するので、2.8の軟質材料に対する硬質金属の硬度比が臨界を有すると理解される。図3に示すように軟質材料に対する硬質金属の硬度比が5以上である場合、6以上の実施例のように結果はさらに上がる。

本発明を具体的な態様に関して記載してきたが、これらの態様は単なる例であり、そして請求の範囲による本発明を限定するものではない。これらの新規態様および修飾は他の様々な様式で強化することができ、そして様々な省略、交換、代替等は、本発明の要旨を越えずに作成できる。この態様に記載する全ての組み合わせおよび特徴は、本発明の課題を解決する手段として必ずしも必須ではない。さらにこれらの態様および修飾は本発明の範囲および要旨に含まれ、そして本発明の範囲は特許請求の範囲およびそれらの均等物で説明される。

本発明のドリルパイプツールジョイントおよび対応するドリルパイプは、ドリルパイプの組立/分解操作を25回以上行う場合に、ネジ用グリースを使用せずに使用することができ、これにより環境に優しく、ならびに操作効率が改善する。

1 ドリルパイプツールジョイント 2 ピン 3 ボックス 4 ドリルパイプ 21 ピンの外面 23 雄ネジ部分 31 ボックスの内面 33 雌ネジ部分 50 パイプ本体

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