Polycrystalline diamond having a surface depleted of catalyst material

申请号 JP2002528619 申请日 2001-06-25 公开(公告)号 JP2004509055A 公开(公告)日 2004-03-25
申请人 キャムコ、インターナショナル、(ユーケイ)、リミテッドCamco International (Uk) Limited; 发明人 ナイジェル、デニス、グリフィン; ピーター、レイモンド、ヒューズ;
摘要 衝撃強度の損失なしに、かなり改善された耐磨耗性を有する、多結晶ダイヤモンドまたはダイヤモンド様エレメントが開示されている。 これらのエレメントは高温、高圧(HTHP)プロセスで結合剤触媒物質で形成される。 PCDエレメントは、85%以上のダイヤモンド容積 密度 を有する連続ダイヤモンドマトリックスを、多数の結合ダイヤモンドまたはダイヤモンド様結晶が形成している、本体を有している。 ダイヤモンド結晶間の間隙は、触媒物質を含有した連続間隙マトリックスを形成している。 ダイヤモンドマトリックステーブルが形成されて、HTHPプロセスで触媒物質を含有した金属基体と一体的に結合される。 ダイヤモンドマトリックス本体は作業面を有し、作業面近くの本体で間隙マトリックスの一部が触媒物質を実質的に含まず、残部の間隙マトリックスが触媒物質を含有している。 典型的には、ダイヤモンドマトリックステーブルの本体の約70%以下が触媒物質を含まない。
权利要求
  • 作業面から離れた本体の第一容積部分が触媒物質を含有し、作業面に近い本体の第二容積部分が触媒物質を実質的に含まない、作業面を有する本体を含んでなるPCDエレメント。
  • 本体が、多数の部分的結合ダイヤモンド結晶および間隙マトリックスを含んでなり、第一容積部分内に位置する間隙マトリックスの一部が触媒物質を含有し、第二容積部分内に位置する間隙マトリックスの一部が触媒物質を実質的に含まない、請求項1に記載のPCDエレメント。
  • 第二容積部分が、作業面から少くとも約0.1mmの深さまで延びている、請求項1または2に記載のPCDエレメント。
  • 第二容積部分が、作業面から約0.2〜0.3mmの深さまで延びている、請求項3に記載のPCDエレメント。
  • 本体の第二容積部分が、本体の他部分よりも高いダイヤモンド密度を有している、請求項1〜4のいずれか一項に記載のPCDエレメント。
  • 本体の第二容積部分内に位置するダイヤモンド結晶の大部分が、触媒物質を実質的に含まない表面を有している、請求項1〜5のいずれか一項に記載のPCDエレメント。
  • 本体の第二容積部分に残留する触媒物質の大部分が、ダイヤモンド結晶の表面へ付着している、請求項1〜5のいずれか一項に記載のPCDエレメント。
  • 第一容積部分から離れた第二容積部分のダイヤモンド結晶が、第一容積部分に近い第二容積部分のダイヤモンド結晶ほど触媒物質をそれらの表面へ付着させていない、請求項7に記載のPCDエレメント。
  • 本体の第二容積部分内における触媒物質の量が、第一容積部分からの距離と共に次第に減少する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のPCDエレメント。
  • 本体の第二容積部分内における触媒物質の量が、第一容積部分からの距離増加と共に増す、請求項1〜9のいずれか一項に記載のPCDエレメント。
  • 第二容積部分内における触媒物質の量が、段階的に増加する、請求項10に記載のPCDエレメント。
  • フェーシングテーブルおよび切削面を有するプレフォーム切削エレメントを構成し、作業面が切削面の一部を形成してなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のPCDエレメント。
  • 切削エレメントが、固定カッタータイプロータリードリルビットの切削面に取り付けられている、請求項12に記載のPCDエレメント。
  • 切削エレメントが、ローリングカッタータイプドリルビットの本体に取り付けられている、請求項12に記載のPCDエレメント。
  • 機械加工操作で切削インサート向けに適応させた切削面を有する切削エレメントを構成し、作業面が切削面の一部を形成してなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のPCDエレメント。
  • 作業面が伸線ダイ接触表面の一部を形成している、伸線ダイを構成している、請求項1〜11のいずれか一項に記載のPCDエレメント。
  • ヒートシンクを構成している、請求項1〜11のいずれか一項に記載のPCDエレメント。
  • バルブ表面、圧子、マンドレル工具および測定装置用磨耗エレメントからなる群より選択される装置を構成している、請求項1〜11のいずれか一項に記載のPCDエレメント。
  • 本体が、比較的硬くない物質の基体へ結合された、請求項1〜18のいずれか一項に記載のPCDエレメント。
  • 比較的硬くない物質が超硬タングステンカーバイドである、請求項19に記載のPCDエレメント。
  • 触媒物質を含有する本体を処理して、第二容積部分へ触媒物質を実質的に含ませず、その一方で触媒物質を本体の第一容積部分へ残留させることからなる、PCDエレメントの製造方法。
  • 第二容積部分が、触媒物質を第二容積部分から滲出させることにより、触媒物質を実質的に含まないようにされる、請求項21に記載の方法。
  • 第二容積部分が、触媒物質が触媒効果を有しない形へそれを第二容積部分で変換させることにより、触媒物質を実質的に含まないようにされる、請求項21に記載の方法。
  • 第二容積部分が、触媒物質を反応させて、触媒効果を有しない物質を形成することにより、触媒物質を実質的に含まないようにされる、請求項21に記載の方法。
  • 第二容積部分が、放電により触媒物質を実質的に含まないようにされる、請求項21に記載の方法。
  • 第二容積部分が、ガルヴァーニ電気プロセスを用いて、触媒物質を実質的に含まないようにされる、請求項21に記載の方法。
  • 第二容積部分が、蒸発プロセスを用いて、触媒物質を実質的に含まないようにされる、請求項21に記載の方法。
  • 多数の部分的結合超硬質結晶、該超硬質結晶間の多数の間隙領域および触媒物質を有する超硬質多結晶物質のフェーシングテーブルを含んでなり、該フェーシングテーブルが切削面および本体を有し、切削面の少くとも一部に近い間隙領域が触媒物質を実質的に含まず、間隙領域の残部が触媒物質を含有している、プレフォーム切削エレメント。
  • 多数の部分的結合ダイヤモンド結晶、触媒物質、間隙マトリックスおよび作業面保有本体を含んでなり、作業面に近い本体の間隙マトリックスが触媒物質を実質的に含まず、残部の間隙マトリックスが触媒物質を含有している、エレメント。
  • 触媒物質、間隙マトリックスおよび作業面保有本体を含んでなり、作業面に近い本体の間隙マトリックスが触媒物質を実質的に含まず、残部の間隙マトリックスが触媒物質を含有している、PCDエレメント。
  • 多数の超硬質結晶、触媒物質および作業面保有本体を含んでなり、作業面から少くとも0.1mmの深度内で本体における結晶の大部分が、触媒物質を実質的に含まない表面を有し、残部の結晶が触媒物質と接触している、PCDエレメント。
  • 多数の部分的結合ダイヤモンド結晶、触媒物質および作業面保有本体を含んでなり、作業面に近い本体の容積部分が本体の他部分よりも実質的に高いダイヤモンド密度を有し、その容積部分が触媒物質を実質的に含まない、エレメント。
  • 作業面保有本体を含んでなり、作業面に近い本体の容積部分が本体の他部分よりも実質的に高いダイヤモンド密度を有し、その容積部分が触媒物質を実質的に含まない、PCDエレメント。
  • 作業面保有本体を含んでなり、作業面に近いダイヤモンド密度が本体の他部分よりも実質的に高く、触媒物質を実質的に含まない、PCDエレメント。
  • 说明书全文

    【0001】
    【発明の背景】
    1. 発明の分野
    本発明は、工学処理超硬質表面が必要とされる磨耗、切削、延伸および他の用途向けの超硬質多結晶物質エレメントに関する。 本発明は、大いに改善された耐磨耗性を有する多結晶ダイヤモンドおよび多結晶ダイヤモンド様(包括的にPCDと称される)エレメント、およびそれらの製造方法に特に関する。
    【0002】
    2. 関連技術の説明
    多結晶ダイヤモンドおよび多結晶ダイヤモンド様エレメントは、この明細書の目的に沿い、PCDエレメントとして知られている。 PCDエレメントは、隣接原子間の原子間距離が格別に短い炭素ベース物質から形成されている。 多結晶ダイヤモンド様物質の1タイプは、US特許5,776,615で記載された炭窒化物(CN)として知られている。 それよりもよく用いられる別な形のPCDが、以下で更に詳細に記載されている。 一般的に、PCDエレメントは、高温および高圧下で処理された物質のマトリックスから、結合間超硬質炭素ベース結晶の多結晶マトリックスへと形成されている。 PCDエレメントの共通した特徴はそれらの形成に際する触媒物質の使用であり、その残留物が使用時にエレメントの最大有用操作温度にしばしば制限を加えてしまうのである。
    【0003】
    周知製造形のPCDエレメントは、多結晶ダイヤモンドのフェーシングテーブル(facing table)がタングステンカーバイドのようなそれより硬質でない物質の基体へ一体的に結合された、二層または多層PCDエレメントである。 PCDエレメントは円形または部分円形タブレットの形でも、あるいは中空ダイ、ヒートシンク、摩擦ベアリング、バルブ表面、圧子、マンドレル工具などのような用途に適した他の形状へ成形してもよい。 このタイプのPCDエレメントは、硬質の耐磨耗および耐蝕性物質が要求されるほぼあらゆる用途で用いうる。 PCDエレメントの基体は、多くの場合に超硬(cemented)タングステンカーバイドからなる、キャリアへロウ付けされることがある。 これは、例えば固定カッターまたはローリングカッターアースボーリングビットで、ドリルビットのソケットへ入れたとき、または機械加工用の工作機械でポストへ固定されたときに、切削エレメントとして用いられるPCDの一般的形態である。 これらのPCDエレメントは典型的にはPDCと称されている。
    【0004】
    別な形のPCDエレメントは、多結晶ダイヤモンドのテーブルが機械的手段または結合プロセスで工具または磨耗表面へ固定された、一体型基体でない不可分PCDエレメントである。 ダイヤモンド粒子がエレメント全体に存在している点で、これらのPCDエレメントは前記のものと異なる。 これらのPCDエレメントは適所へ機械的に取り付けても、それらは基体を有するもっと大きなPCDエレメント内に埋め込んでも、あるいはそれらはロウ付けまたは溶接プロセスで結合された金属層で仕上げてもよい。 開示全体について参考のためここに組み込まれる、例えばUS特許4,481,016および4,525,179で示されているように、複数のこれらPCDエレメントが単一PCDから作製されうる。
    【0005】
    PCDエレメントは、高圧、高温プレスで適切な結合剤触媒物質と共にダイヤモンド粉末を焼結することにより、ほとんどの場合で形成される。 この多結晶ダイヤモンドを形成する1つの具体的な方法が、例えばUS特許3,141,746で開示されており、それらが開示するすべてについて参考のためここに組み込まれる。 PCDエレメントを製造する1つの一般的プロセスでは、コバルトを配合したプレフォームタングステンカーバイド基体の表面へダイヤモンド粉末が適用される。 次いで、そのアセンブリーがプレスで非常に高い温度および圧に付される。 このプロセスに際して、コバルトは基体からダイヤモンド層へ移行し、結合剤触媒物質として作用して、ダイヤモンド粒子をダイヤモンド間結合で互いに結合させ、しかもダイヤモンド層を基体へ結合させる。
    【0006】
    完成したPCDエレメントは、前記のような結合剤触媒物質を多くの間隙に含有して互いに結合されたダイヤモンド結晶のマトリックスを少くとも1つ有している。 ダイヤモンド結晶はダイヤモンドの第一連続マトリックスを形成し、間隙は結合剤触媒物質を含有した間隙の第二連続マトリックスを形成している。 加えて、ダイヤモンド間の成長で結合剤触媒物質の一部を封入した領域が比較的少数で必ず存在している。 これらの'アイランド(island)'は結合剤触媒物質の連続間隙マトリックスの一部ではない。
    【0007】
    1つの一般形において、ダイヤモンドエレメントは85〜95容積%、結合剤触媒物質が残り5〜15%を占める。 このようなエレメントは、約400℃の温度で始まる、間隙コバルト結合剤触媒物質とダイヤモンドマトリックスとの熱膨張差による熱分解をうけることがある。 膨張が大きすぎると、ダイヤモンド間結合が壊れて、クラックおよびチップが生じうる。
    【0008】
    多結晶ダイヤモンドでも、ダイヤモンドマトリックスのダイヤモンド結晶へ付着した間隙領域における結合剤触媒物質の存在は、別な形の熱分解を招く。 結合剤触媒物質の存在のために、ダイヤモンドは温度が上昇すると黒鉛化されるため、典型的には操作温度を約750℃以下に限定する。
    【0009】
    コバルトが最も一般的に結合剤触媒物質として用いられるが、コバルト、ニッケル、鉄およびそれらの合金を含めたVIII族元素であればいずれも用いてよい。
    【0010】
    熱分解を減少させるために、いわゆる“熱安定性”多結晶ダイヤモンド部品が、開示全体について参考のためここに組み込まれるUS特許4,224,380で開示されているように、切削および/または耐磨耗性エレメント用のプレフォームPCDエレメントとして製造された。 1タイプの熱安定性PCDエレメントでは、従来の多結晶ダイヤモンド中におけるコバルトまたは他の結合剤触媒物質が、成形後に、連続間隙マトリックスから滲出してくる。 これはダイヤモンドの耐熱性を約1200℃に上げるが、滲出プロセスは超硬カーバイド基体も取り去る。 加えて、一体型基体または他の結合可能な表面がないため、操作用にこのような物質を取り付けることは極めて難しい。
    【0011】
    この'熱安定性'PCDエレメントの加工法は、典型的には80%程度またはそれ以下の比較的低いダイヤモンド密度を生じる。 この低いダイヤモンド密度では完全な滲出プロセスを行えるが、得られる最終部品は典型的には衝撃強度が比較的弱い。
    【0012】
    別な形の熱安定性多結晶ダイヤモンドでは、ケイ素が触媒物質として用いられている。 ケイ素触媒物質で多結晶ダイヤモンドを製造するための方法は上記の場合と全く同様であるが、但し合成温度および圧力でほとんどのケイ素は反応して、有効な触媒物質ではない炭化ケイ素を形成する。 耐熱性はやや改善されるが、間隙マトリックスの間隙で通常均一に分布する一部の残留ケイ素のために、熱分解がなお生じる。 しかも、結合可能な表面がないため、このタイプのPCDエレメントでは取付け問題がある。
    【0013】
    更に最近になり、ダイヤモンド粉末を焼結させるときに、Mg、Ca、SrおよびBaの粉末カーボネートのようなカーボネートが結合剤触媒物質として用いられた、別のタイプのPCDが利用しうるようになった。 このタイプのPCDは、典型的には、従来タイプのPCDエレメントよりも大きな耐磨耗性および硬度を有している。 しかしながら、従来の熱安定性多結晶ダイヤモンドの場合よりもかなり高い圧力が焼結に要されることから、その物質は商業規模で生産することが難しい。 この1つの結果は、この方法で生産される多結晶ダイヤモンドの本体が従来の多結晶ダイヤモンドエレメントよりも小さいことである。 しかも、間隙に残留した結合剤触媒物質のために、熱分解がなお生じうる。 更に、一体型基体または他の結合可能な表面がないため、この物質を作業面へ取り付けることが難しい。
    【0014】
    熱安定性PCDを取付システムと組み合わせて、それらの改善された温度安定性を利用する努力は、低い衝撃強度のせいで、望んだほどにはうまくいかなかった。 例えば、多数のPCDエレメントを取り付ける様々な手法が、US特許4,726,718、5,199,832、5,025,684、5,238,074、6,009,963で示されており、それらが開示するすべてついて参考のためここに組み込まれる。 これら手法のうち多くは商業的に成功したが、非熱安定性PCDで達成しうる靭性のレベルを維持しながら、高い耐磨耗および/または摩擦性を組み合わせる上で、その手法は特に成功したとはいえなかった。
    【0015】
    表面用のダイヤモンドまたはダイヤモンド様コーティングの他のタイプは、US特許4,976,324、5,213,248、5,337,844、5,379,853、5,496,638、5,523,121、5,624,068で開示されており、それらが開示するすべてについて参考のためここに組み込まれる。 同様のコーティングは、高度に荷重される工具表面について、GB特許公開2,268,768、PCT公開96/34,131およびEPC公開500,253、787,820、860,515でも開示されている。 これらの公開文献では、耐磨耗および/または摩擦性のために表面へ適用されたダイヤモンドおよび/またはダイヤモンド様コーティングが示されている。
    【0016】
    上記用途の多くにおいて、物理的蒸着(PVD)および/または化学的蒸着(CVD)プロセスがダイヤモンドまたはダイヤモンド様コーティングを施すために用いられている。 PVDおよびCVDダイヤモンドコーティングプロセスは周知であり、すべて参考のためここに組み込まれる、例えばUS特許5,439,492、4,707,384、4,645,977、4,504,519、4,486,286で記載されている。
    【0017】
    表面をダイヤモンドまたはダイヤモンド様コーティングで被覆するPVDおよび/またはCVDプロセスは、例えば、ダイヤモンドまたは他の超硬質結晶のエピタキシャル向き結晶の密充填物を表面に形成するために用いられる。 これらの物質は密に詰め込まれているため、それらは非常に高いダイヤモンド密度を有しているが、隣接結晶間に有意量のダイヤモンド間結合はなく、それらを全体的にかなり弱いものにして、高剪断荷重が加えられたときに破損しやすい。 その結果として、これらのコーティングが非常に高いダイヤモンド密度を有していながら、切削エレメント、ベアリング装置、磨耗エレメントおよびダイのような高荷重用途で用いられたときに、それらが機械的に弱くなりがちで、非常に乏しい衝撃靭性および耐摩擦性を呈する。
    【0018】
    開示全体について参考のためここに組み込まれるUS特許5,264,283、5,496,638、5,624,068で記載されているように、タングステンカーバイド基体へ適用してから、高圧、高温環境で処理することにより、これらダイヤモンドまたはダイヤモンド様コーティングの靭性および耐磨耗性を改善する試みが行われた。 このタイプの処理はダイヤモンド層の耐磨耗性を改善しうるが、高密度ダイヤモンド層と基体との間における急激な変遷が、非常に低い歪でダイヤモンド層を界面で大規模破損しやすくさせる。 これは使用時に非常に乏しい靭性および耐衝撃性へとつながる。
    【0019】
    コバルトまたは他のVIII族金属結合剤触媒物質で作製されたPCDエレメントがベアリング物質として対峙して用いられたときに、摩擦係数が使用時に増加しやすいことがわかった。 欧州特許明細書617,207で記載されているように、PCDベアリングエレメントの表面から使用時に蓄積しがちなコバルトに富むトリボフィルム(tribofilm)の(塩酸拭取りの適用による)除去は、この問題を軽減する傾向のあることがわかった。 一見したところ、操作に際して、表面でPCDから一部のコバルトがベアリングの荷重面に移動し、2つのPCDエレメントがベアリングとして対峙して作用し合うときに摩擦を増加させるようである。 酸拭取り策では表面下かなりの深さまでコバルトを有効に除去することができないため、このコバルト源がベアリングエレメントの仕上げプロセスの残留副産物となることもありうると、今では考えられている。
    【0020】
    コバルトはPCDの表面のみから除去されるため、熱分解がこれらのベアリングエレメントで生じる温度では有効な変化はない。 したがって、結合剤触媒物質の有害な影響が残存して、触媒物質の存在によるダイヤモンド層の熱分解がなお生じるのである。
    【0021】
    【発明の簡単な要旨】
    本発明は、衝撃強度の損失なしに、かなり改善された耐熱分解性を有する、超硬質多結晶ダイヤモンドまたはダイヤモンド様エレメントを提供する。 これらのエレメントは、この明細書の目的に関してPCDエレメントと総称されるものであり、高温、高圧プロセスで結合剤触媒物質と共に形成される。 PCDエレメントは、少くとも1つの連続ダイヤモンドマトリックスを形成してなる多数の部分的結合ダイヤモンドまたはダイヤモンド様結晶、および触媒物質を含有した少くとも1つの連続間隙マトリックスを形成するダイヤモンド結晶間の間隙を有している。 エレメントは作業面および本体を有しており、そこでは作業面近くの本体で間隙マトリックスの一部が触媒物質を実質的に含まず、残部の間隙マトリックスが触媒物質を含有している。
    【0022】
    PCDエレメントの本体における作業面の一部は、超硬質結晶間の間隙が触媒物質を実質的に含まないように後処理してもよい。 触媒物質を実質的に含まない作業面は、作業面の他部分で起きる熱分解に付されることはなく、改善された耐熱分解性をもたらす。 切削エレメントでは、処理される作業面は本体のフェーシングテーブルの一部でも、本体の周辺表面の一部でも、またはこれらすべての表面の一部でもよい。
    【0023】
    別な態様において、触媒物質はコバルトまたは他の鉄族金属であり、触媒物質を枯渇させる方法は、酸エッチングプロセスでPCDエレメントの表面近くの間隙からそれを滲出させることである。 表面から触媒物質を除去する方法は、放電、または他の電気もしくはガルヴァーニ電気プロセスでも、または蒸発でもよいと考えられている。
    【0024】
    別な態様では、触媒物質がPCDエレメントの作業面から、それがもはや触媒物質として作用しないように、それを化学的に他の物質と混合することにより除去される。 この方法では、物質がダイヤモンド結晶間の間隙に残留しうるが、その物質はもはや触媒物質として作用せず、触媒物質を有効に除去または枯渇させる。
    【0025】
    更に別の態様において、触媒物質は、もはや触媒物質として作用しない物質へそれを変換させることにより除去される。 これは結晶構造変化、機械'作業'、熱処理または他の処理法により行える。 この方法は非金属または非反応性触媒物質にも適用しうる。 その場合にも、物質は超硬質物質結晶間の間隙に残留しうるが、その物質はもはや触媒物質として作用せず、触媒物質を有効に除去または枯渇させる。
    【0026】
    多数の部分的結合ダイヤモンド結晶、触媒物質、間隙マトリックスおよび作業面保有本体を含んでなるエレメントが開示されている。 作業面に近い本体の間隙マトリックスは触媒物質を実質的に含まず、残部の間隙マトリックスは触媒物質を含有している。
    【0027】
    同様に、触媒物質、間隙マトリックスおよび作業面保有本体を有するPCDエレメントが開示されている。 作業面に近い本体の間隙マトリックスは触媒物質を実質的に含まず、残部の間隙マトリックスは触媒物質を含有している。
    【0028】
    多数の超硬質結晶、触媒物質および作業面保有本体を有するPCDエレメントも開示されている。 このエレメントでは、本体で作業面から少くとも0.1mmの深度内における大部分の結晶は、触媒物質を実質的に含まない表面を有し、残部の結晶は触媒物質と接触している。
    【0029】
    更に、作業面保有本体を有するPCDエレメントが開示されている。 作業面から離れた本体の第一容積部分は触媒物質を含有し、作業面に近い本体の第二容積部分は触媒物質を実質的に含まない。
    【0030】
    多数の部分的結合ダイヤモンド結晶、触媒物質および作業面保有本体を有するエレメントも開示されている。 作業面に近い本体の容積部分は本体の他部分よりも実質的に高いダイヤモンド密度を有し、その容積部分は触媒物質を実質的に含まない。
    【0031】
    作業面保有本体を有するPCDエレメントも開示されている。 作業面に近い本体の容積部分は本体の他部分よりも実質的に高いダイヤモンド密度を有し、その容積部分は触媒物質を実質的に含まない。
    【0032】
    加えて、プレフォーム切削エレメントが開示されている。 そのエレメントは、多数の部分的結合超硬質結晶、その超硬質結晶間の多数の間隙領域および触媒物質をもつ、超硬質多結晶物質のフェーシングテーブルを有している。 フェーシングテーブルは切削面および本体を有している。 少くとも一部の切削面における間隙領域は触媒物質を実質的に含まず、間隙領域の残部は触媒物質を含有している。
    【0033】
    本発明のPCDエレメントは、工学処理ダイヤモンド表面が必要とされる磨耗、切削、延伸および他の用途に用いられる。 具体的な用途は、固定カッタータイプおよびローリングカッタータイプ双方のロータリードリルビットで切削エレメントとして、中空ダイ、ヒートシンク、摩擦ベアリング、バルブ表面、圧子、マンドレル工具などとしてである。 本発明のPCDエレメントは、機械研磨木材製品、鉄および非鉄物質、更には石およびアスファルトなどのような非常に硬いまたは研磨工学処理の物質へ用いてもよい。
    【0034】
    【発明の具体的な説明および好ましい態様】
    本発明の多結晶ダイヤモンドまたはダイヤモンド様物質(PCD)エレメント2が図1Aで示されている。 PCDエレメント2は、多数の部分的結合超硬質ダイヤモンドまたはダイヤモンド様結晶60(図7および9で示されている)、触媒物質64、および結晶60間の間隙62により形成される間隙マトリックス68を有している。 エレメント2は1以上の作業面4およびダイヤモンド結晶60も有し、間隙62はPCDエレメント2の本体8の容積部分を形成している。
    【0035】
    作業面4は、操作に際して作業対象と接触しうるPCD本体8のどの部分でもよい。 この明細書では、作業面4について記載されているとき、それは作業面として暴露および/または使用されうる本体8のどの部分にもあてはまると理解される。 更に、いかなる作業面4のどの部分もそれ自体が作業面4である。
    【0036】
    製造に際して、高温および高圧の条件下で、結晶60間の結合がちょうど形成されているときに、結晶60間の間隙62が触媒物質64で満たされる。 製造の別なステップで、触媒物質64の一部は間隙62の一部から選択的に枯渇される。 その結果として、作業面4から離れたPCDエレメント2の本体8の第一容積部分が触媒物質64を含有し、作業面4に近い本体8の第二容積部分が触媒物質64を実質的に含まない。 触媒物質64を実質的に含まない間隙62は、数字66で示されている。
    【0037】
    このように、作業面4の少くとも一部に近い本体8の間隙マトリックス68は触媒物質64を実質的に含まず、残部の間隙マトリックス68は触媒物質64を含有している。 PCDエレメント2は比較的硬くない物質、通常超硬タングステンカーバイドの基体6へ結合させてもよいが、基体6の使用は不要である。
    【0038】
    作業面4近くの本体は触媒物質64を実質的に含まないため、結合剤触媒物質64の有害な影響は実質的に減少して、触媒物質64の存在による作業面4の熱分解は有効に減少する。 その結果は、伝統的PDCエレメントの靭性、製造の便宜および結合能力を維持しながら、いわゆる熱安定性PCDエレメントの場合に近い向上した熱的性質を有する、新規なPCDエレメント2である。 これは切削用途で高い耐磨耗性、ヒートシンク用途で高い伝熱能、ベアリング用途で高い荷重能、バルブ用途で低い表面歪みにつながり、中空ダイ、圧子、マンドレル工具および磨耗エレメントを含めた多くの他の用途で利点を有している。 新規PCDエレメント2の具体的用途の詳細は、後の明細書で更に詳しく記載されている。
    【0039】
    図6の従来PCDエレメントの顕微鏡写真、および図8の従来のPCDエレメントの微細構造図において、各結晶60の劈開面を表わす平行線で示されるようなダイヤモンドまたはダイヤモンド様結晶60のランダム結晶方向があることは周知である。 みられるように、隣接結晶60はそれらの間で間隙スペース62と一緒に結合している。 劈開面は隣接結晶60で異なる方向に向いているため、ダイヤモンド割れに利用しうる直線路は通常ない。 この構造のおかげで、高い衝撃荷重が一般的な極限荷重環境でもPCD物質をうまく働かせられる。
    【0040】
    高温、高圧プレスで結晶60を結合させるプロセスにおいて、結晶60間の間隙スペース62は結合剤触媒物質64で満たされるようになる。 プレスに存在する比較的低い圧力および温度で隣接ダイヤモンド結晶60間に結合を形成させているのは、この触媒物質64である。
    【0041】
    従来のPCDエレメントは、結合剤触媒物質64、典型的にはコバルトまたは他のVIII族元素を含有する多くの間隙62で互いに結合された、結晶60の少くとも1つの連続マトリックスを有している。 結晶60はダイヤモンドの第一連続マトリックスを形成し、間隙62は、結合剤触媒物質を含有した、間隙マトリックス68として知られる間隙62の第二連続マトリックスを形成している。 加えて、ダイヤモンド間の成長で結合剤触媒物質の一部を封入した領域が比較的少数で必ず存在している。 これらの'アイランド'は結合剤触媒物質64の連続間隙マトリックス68の一部ではない。
    【0042】
    図7および9では、本発明のPCDエレメント2の断面図が示されている。 PCDエレメント2は前記された従来のPCDエレメントと同様の手法で形成される。 好ましい態様において、予備掃除操作後または製造プロセスでその後のいずれかの時点で、PCDエレメント2の作業面4、70、72は、隣接本体から結合剤触媒物質の一部を除去するように処理される。 その結果として、作業面に近いダイヤモンド結晶60間の間隙62は、数字66で示される触媒物質64を実質的に含まない。 触媒物質64を含まない作業面4、70、72の一部はPCDの他部分で起きる熱分解に付されることはなく、改善された熱的特徴をもたらす。
    【0043】
    間隙62から触媒物質64を除去または枯渇させる多くの方法がある。 一方法において、触媒物質64はコバルトまたは他の鉄族物質であり、触媒物質64を除去する方法は、約0.2mm以上の深さまで酸エッチングプロセスでPCDエレメント2の作業面4、70、72近くの間隙62からそれを滲出させることである。 表面近くから触媒物質64を除去する方法は、放電、または他の電気もしくはガルヴァーニ電気プロセス、または蒸発によることも可能である。
    【0044】
    間隙62から触媒物質64を枯渇させる別な方法では、触媒物質64がもはや触媒物質として作用しないように、合金のように、それを化学的に他の物質と混合することにより枯渇させる。 この方法では、物質がダイヤモンド結晶60間の間隙に残留しうるが、その物質はもはや触媒物質64として作用せず、それを有効に除去する。
    【0045】
    間隙62から触媒物質64を枯渇させる更に別の方法において、触媒物質64は、もはや触媒物質として作用しない物質へそれを変換させることにより除去される。 これは結晶構造変化、相変化、機械'作業'、熱処理または他の処理法により行える。 この方法は非金属または非反応性触媒物質にもあてはまる。 その場合にも、物質はダイヤモンド結晶間の間隙62に残留しうるが、その物質はもはや触媒物質64として作用せず、触媒物質を有効に除去する。
    【0046】
    作業面4、70、72近くの触媒物質64が無効になると、本発明のPCDエレメント2は従来のPCDエレメントで生じることが知られたタイプの熱分解をもはやうけない。 前記のように、触媒物質64により生じることが知られた2様式の熱分解がある。 第一様式の熱分解は約400℃の低い温度で始まり、間隙62の触媒物質64と結晶60との熱膨張差によるものである。 膨張が大きすぎると、ダイヤモンド間結合が壊れて、クラックおよびチップが生じうる。
    【0047】
    第二様式の熱分解は約750℃の温度で始まる。 この様式は、結晶60と接触している結合剤触媒物質64の触媒能力により生じ、温度が750℃に近づくと結晶60を黒鉛化させる。 結晶60が黒鉛化すると、それらは膨大な容積増加をうけて、本体4からクラッキングおよび結合弱化を招く。 ダイヤモンド結晶60の表面で触媒物質64の厚さが数ミクロンでも、この様式の熱分解を生じうる。
    【0048】
    したがって、最大効果のためには、触媒物質64がダイヤモンド結晶60間の間隙62およびダイヤモンド結晶60の表面の双方から除去されねばならないことは、当業者に明らかであろう。 触媒物質64がダイヤモンド結晶60間の表面および間隙62の双方から除去されるならば、その領域におけるダイヤモンド結晶60の熱分解の開始は1200℃に近づくであろう。
    【0049】
    しかしながら、この二重分解様式は望ましくない影響をおよぼす。 例えば、多くの用途において、作業面の磨耗率を巧みに工作することが望まれる。 本発明において、これは、最大耐磨耗性を要する部分では、触媒物質が間隙62およびダイヤモンド結晶60の表面の双方から枯渇されるように、処理プロセスを変えることにより行える。 高い耐磨耗性がそれほど望まれない部分、例えば自己研磨工具(self sharpening tool)では、主に間隙62から触媒物質64を枯渇させるが、ダイヤモンド結晶60の全部でなければ一部を触媒物質と接触させたままにしておけるように、それらの部分が処理される。
    【0050】
    間隙62からよりもダイヤモンド結晶60の表面から触媒物質64を除去するする方が難しいことも明らかであろう。 この理由から、熱分解を減少させる上で有効な、触媒物質が枯渇される手法に応じて、作業面4から触媒物質64を枯渇させる深さは、触媒物質64を枯渇させるために用いられる方法次第で変わることがある。
    【0051】
    一部の用途では、400℃以上だが750℃以下への熱的限界の改善で十分であり、そのため比較的激しくない触媒物質64枯渇プロセスでも許容される。 結果的に、特定の用途に必要な触媒物質64枯渇レベルに達する上で適用しうる触媒物質64枯渇法に多くの組合せがあることは明らかであろう。
    【0052】
    この明細書では、'実質的に含まない'という用語が、間隙62、間隙マトリックス68または本体8の容積部分で触媒物質64に関して用いられているとき、隣接ダイヤモンド結晶60の表面の、全部ではなく多くで、なお触媒物質64のコーティングを有してよいことが理解されるべきである。 同様に、'実質的に含まない'という用語がダイヤモンド結晶60の表面で触媒物質64に関して用いられているとき、隣接間隙62には触媒物質64がなお存在してもよい。
    【0053】
    触媒物質64が除去または枯渇されると、熱分解の2つの主要メカニズムはもはや存在しない。 しかしながら、触媒物質64が存在する結晶60の分解温度以下に、熱現象により生じた熱を結合結晶60から取り去れるほど十分な深さで、触媒物質64が除去されねばならないことがわかった。
    【0054】
    一連の実験室試験で、切削エレメント10として成形されたPCDエレメント2に熱が加えられた。 この試験はこれら切削エレメント用の標準磨耗試験として考案されているため、様々な深さまで触媒物質64を除去して切削エレメント10の合理的比較を行った。 これらの試験では、枯渇プロセスが間隙62およびダイヤモンド結晶60の表面の双方から触媒物質64を除去することを保証するような注意が払われた。 既知時間にわたりPCD切削エレメント10の切削端へ加熱が繰返し行われるように、試験が考案された。
    【0055】
    試験が終了すると、磨耗指数が計算された。 磨耗指数が高いほど、耐磨耗性は良くなる。 試験の本質から、高い磨耗指数は切削エレメント10の作業面70、72で高い耐熱分解性を示すと思われる。
    【0056】
    図10のグラフで曲線Aでみられるように、触媒物質64の枯渇深さが0.1mmに近づいたとき、切削エレメント10の磨耗指数結果に劇的な増加がある。 したがって、切削エレメント10で一般的な加熱のタイプでは、触媒物質64が間隙62およびダイヤモンド結晶60の表面の双方から除去されるとき、0.1mmの深さが作業面4、70、72からの臨界枯渇深さである。
    【0057】
    他の試験では、触媒物質64を除去するより経済的なプロセスで作製された切削エレメント10の場合、磨耗対枯渇深さは図10の曲線'B'で示されたものに近いと考えられている。 これらのカッターで用いられる触媒物質64の枯渇プロセスは、ダイヤモンド結晶60の表面から触媒物質64を除去する上で、曲線'A'のプロセスほど有効でなかった。 したがって、触媒物質64のほとんどが約0.2mmの深さまで間隙62から除去されて、ようやく磨耗率が曲線'A'の場合まで改善された。
    【0058】
    図10の曲線'C'で示されたような磨耗率に関連した熱分解で、それが有益なPCDエレメント2へと工学処理しうる、と考えられている。 例えば、接触の中心から離れた湾曲切削エレメント10の端部を中心点よりも早く磨耗させることが望ましいこともある。 これは、切削エレメントを平坦な表面とするよりも、湾曲形状を維持しやすいであろう。
    【0059】
    ダイヤモンドは極めて良い熱伝導体であるため、改善された耐熱分解性が磨耗率を改善している。 作業面4、70、72の摩擦現象が突然の極度な加熱を生じるならば、結合したダイヤモンド結晶はその箇所からすべての方向に熱を放散させる。 こうして、おそらく1000℃/mm以上の極めて高い温度勾配をその物質に形成するようになる。 この急激な勾配は作業面4、70、72を950℃に到達させうるが、作業面に近い間隙62およびダイヤモンド結晶62の表面が熱源からちょうど0.2mmの深さまで触媒物質64を実質的に含まないならば、さほどの熱分解を起さないであろう。
    【0060】
    温度勾配が結晶60サイズおよび結晶間結合の程度に応じて変わることは明らかであろう。 しかしながら、アースボーリングビット用の切削エレメント10の実地試験では、作業面4、70、72から約0.2〜約0.3mmの距離Dまで間隙62から実質的にすべての触媒物質64を除去すると、耐磨耗性に劇的な改善をもたらし、貫入率で40%の増加および耐磨耗性で40%の改善がみられた。 耐磨耗性の改善は、触媒物質64起因の熱分解によるダイヤモンド結晶60の摩砕が劇的に減ったことを示している。 貫入率の増加は、耐磨耗性増加のために'鋭さ'を長く留めうるカッターの能力のおかげであると考えられる。
    【0061】
    上記のような触媒物質64の枯渇または除去から効果を生じるPCDエレメントとして、他の可能な構築物がある。 図11A、11Bおよび11Cで示されているように、本発明の別な態様はコンパウンドPCDエレメント102である。 PCDエレメント102はVIII族結合剤触媒物質含有の本体108を有し、第二プレフォームPCDエレメント110をその内部へ埋め込んでいる。 埋込みPCDエレメント110は図11Aで示されているように封入PCDエレメント120の作業面104と同一平面にしても、またはそれは図11Bで示されているように封入PCDエレメント120内へ全体で埋め込んでもよい。 この埋込みPCDエレメント110は結合剤触媒物質としてMg、Ca、SrおよびBaの粉末カーボネートを用いるプロセスで作製され、参考のためここに組み込まれる、一般譲渡された同時係属US特許出願09/390,074で記載されているようなコンパウンドPCDエレメントへ成形される。
    【0062】
    この態様では、埋込みプレフォームPCDエレメント110が高圧で成形されるため、ダイヤモンド密度は封入PCDエレメント120の場合より高くなることもある。 この構築では、埋込みPCDエレメント110が高い活性化温度の触媒物質を有しているため、例えば、封入PCDエレメント120の作業面のみで触媒物質を枯渇させることが有利かもしれない。 更に、埋込みPCDエレメント110は、封入エレメント120の改善された耐磨耗性と共に、埋込みPCDエレメント110の高い耐衝撃性を活用するために、封入PCDエレメント120内に置いてもよい。
    【0063】
    図9、11A、11Bおよび11Cで示されているように、エレメント102は、多数の部分的結合ダイヤモンド結晶60、触媒物質64、および作業面104保有本体108を有している。 作業面104に近い本体の容積部分112は本体108の他の箇所114よりも実質的に高いダイヤモンド密度を有し、容積部分112は触媒物質64を実質的に含まない。
    【0064】
    最善の耐衝撃性および改善された耐磨耗性の双方が実現されるように、数個の埋込みPCDエレメント110を図11Cで示されたようにコンパウンドエレメント100に配置してもよい。
    【0065】
    封入PDCエレメント120の触媒物質にかぎらず、埋込みPCDエレメント110で触媒物質を枯渇させることも望まれる。 この組合せで、市販向けのダイヤモンドエレメントに利用しうる、できるだけ最大の耐磨耗性と共に、できるだけ最大の衝撃強度を有するエレメントを提供しうるであろう。
    【0066】
    図12Aおよび12Bに、本発明のPCDエレメント202の別な態様が示されている。 この態様では、PCDエレメント202が従来のように最初に形成される。 表面が作製された後、PCDエレメント202の部分210で将来の作業面204上にダイヤモンド260のエピタキシャル向き結晶の密充填物を置くために、CVDまたはPVDプロセスが用いられる。 次いで、そのアセンブリーが高圧高温プロセスに付され、それにより積載ダイヤモンド結晶260が互いにおよび親PCDのダイヤモンド結晶とダイヤモンド間結合を形成する。 このダイヤモンド間結合は、親PCDエレメント202の表面から浸出する触媒物質64の存在のおかげで可能である。
    【0067】
    掃除後、作業面204の一部はCVDまたはPVD積載層から触媒物質64を枯渇させるために処理される。 最終製品は、PCDエレメント202の他表面280の場合よりもダイヤモンド密度がかなり高い容積部分214として作業面204の一部を有した、PCDエレメントである。 こうして高ダイヤモンド密度のこの領域214は触媒物質64を枯渇させている。 PCDエレメント202の他表面280の一部も、結合剤触媒物質を枯渇させてよい。
    【0068】
    一般的に、図11A、11B、11C、12Aおよび12Bで示されたエレメント102、202は、作業面104、204保有の本体108、208を有したPCDエレメント102、202として特徴づけられる。 作業面104、204近くのダイヤモンド密度は本体108、208の他の箇所よりも実質的に高く、触媒物質64を実質的に含まない。
    【0069】
    本発明のPCDエレメント2で1つの特に有用な用途は、図1B、4および5で示されているように、切削エレメント10、50、52としてである。 PCD切削エレメント10、50、52の作業面は、トップ作業面70および/または周辺作業面72でもよい。 図1BのPCD切削エレメント10は、固定カッタータイプロータリードリルビット12、または他タイプのダウンホール(downhole)工具でゲージ防御で典型的に用いられるものである。 図5で示されたPCD切削エレメント50は、ドーム39として成形されている。 このタイプのPCD切削エレメント50は、詳細に記載されているように、ローリングカッタードリルビット38またはロータリードリルビット12、38双方のタイプの本体に、ソケットへの挿入用の延長ベース51を有している。
    【0070】
    図4のPCD切削エレメント52は、機械加工プロセス向けに適応されている。 図4で切削エレメント52の形態は長方形であるが、このエレメントが従来の工具で工作することが難しい高度研磨製品を工作するために適した三形、四角形または他の多くの形状でもよいことは、当業者に明らかであろう。
    【0071】
    PCD切削エレメント10は、(図2で示されているような)固定カッターロータリードリルビット12のプレフォーム切削エレメント10でもよい。 ドリルビットのビット本体14は、ドリルビットの回転の中心縦軸18から通常外側に伸びる複数のブレード16で形成されている。 各ブレードの先端面20に沿い並んで離して置かれているのは、多数の本発明のPCD切削エレメント10である。
    【0072】
    典型的には、PCD切削エレメント10は、超硬タングステンカーバイドのような比較的硬くない物質の基体32へ高圧高温プレスで結合された、ダイヤモンドまたはダイヤモンド様(PCD)物質の薄いフロントフェーシングテーブル30を有する円形テーブルの形で、本体を有している。 切削エレメント10は、プレフォームされてから、典型的には超硬タングステンカーバイドからも成形される通常円柱形のキャリア34上に結合させても、またはブレードへ直接付着させてもよい。 PCD切削エレメント10は作業面70および72を有している。
    【0073】
    円柱形キャリア34は、ブレード16で対応形状のソケットまたはくぼみ内に入れられる。 キャリア34はソケットへ通常ロウ付けまたは収縮嵌めされる。 操作で、固定カッタードリルビット12が回転され、重量が加えられる。 こうして掘削される地中へ切削エレメント10を押込んで、切削および/または掘削作業を行う。
    【0074】
    PCD切削エレメント10は、ゲージ領域36でビット12を過度な磨耗から防御することはもちろん、ゲージリーミング(gauge reaming)作用を施すために、ビット12のゲージ領域36へ適用してもよい。 できるだけ接近させてこれらの切削エレメント10を配置するために、直ちにゲージ領域36へ取り付られる、示された長方形のような形状にエレメントを切削することが望ましい。
    【0075】
    第二の態様において、本発明の(図5で示されたような)切削エレメント50は図3で示されたローリングカッタータイプドリルビット38に存在している。 ローリングカッタードリルビット38は、典型的には、ビット本体46の脚部44においてベアリングスピンドルで組み合わされた1個以上の平頭ローリングコーンカッター40、41、42を有している。 切削エレメント50はローリングカッター40、41、42で数列に配置された1以上の複数の切削インサートとして取り付けても、またはPCD切削エレメント50はビット38の脚部44に沿い配置してもよい。 PCD切削エレメント50は、比較的硬くない基体37へ結合されたダイヤモンドまたはダイヤモンド様物質のフェーシングテーブル35の形で、本体を有している。 本発明のこの態様におけるフェーシングテーブル35はドーム状表面39の形をとり、作業面70および72を有している。 したがって、当業者に周知のように、加工中に生じる応力を更に均等に分散させるために、フェーシングテーブル35と基体37との間にはいくつかの変遷層が多くの場合に存在する。
    【0076】
    操作に際して、ローリングカッタードリルビット38が回転して、重量が加えられる。 こうして、数列のローリングコーンカッター40、41、42で切削インサート50を地中に押込み、ビット36が回転すると、ローリングカッター40、41、42が回って、掘削作業を行う。
    【0077】
    別な態様では、本発明のPCD切削エレメント52は、機械加工操作の切削インサート向けに、三角形、長方形または他の形状の物質の形をとる。 この態様では、切削エレメント52は、作業面70および72を有する、比較的硬くない基体56へ結合されたダイヤモンドまたはダイヤモンド様物質のフェーシングテーブル54の形で、本体を有している。 典型的には、切削エレメント52は複数の小さな部分に切削され、それが工作機械のツールホルダーに取り付けられたインサート58へ設置される。 切削エレメント52は、ロウ付け、接着剤、溶接または締付けにより、インサートへ設置される。 高温高圧製造プロセスでインサートの形状で切削エレメント52の成形を仕上げることも可能である。
    【0078】
    図13〜18で示されているように、本発明のPCDエレメント2、102、202は、本発明のPCDエレメント302を利用した図13の伸線ダイ300として例えば示された、中空ダイのような他の用途に用いてもよい。 本発明のPCDエレメント312を有するヒートシンク310として、電気絶縁性と共にPCDエレメント2、102、202の優れた伝熱能力を利用することも望ましい。
    【0079】
    他の用途として、図15で示されたPCDベアリングエレメント322を有する摩擦ベアリング320と、図16Aおよび16Bで示されたように本発明のPCDエレメント342を有する表面342をもつバルブ340、344の嵌合部品がある。 加えて、けがき、硬度テスタ−、粗面化などのための圧子360は、図17Aで示されているように、本発明のPCDエレメント362を有してもよい。 パンチ370は、図17Bで示されているように、ダイ372、374の一方または双方を本発明のPCD物質から作製しうる。 図18で示されている、マンドレル工具382および測定装置380用の他のタイプの磨耗エレメントも、本発明のPCDエレメントから作製してよい。 多結晶ダイヤモンドのほぼすべての用途で、本発明の触媒物質枯渇PCDエレメントから得るところがある、と理解される。
    【0080】
    本発明はそこに添付された図面と特に関連して記載されてきたが、ここで記載または示唆されたもの以外の他のおよび別な修正が本発明の範囲および精神内で行えるものと理解される。
    【図面の簡単な説明】
    【図1A】
    本発明の代表的PCDエレメントである。
    【図1B】
    切削エレメントとして示された本発明の代表的PCDである。
    【図2】
    本発明のPCDエレメントを用いた固定カッターロータリードリルビットの側面図である。
    【図3】
    本発明のPCDエレメントを用いたローリングカッターロータリードリルビットの斜視図である。
    【図4】
    本発明のPCDエレメントを利用した工作機械で用いられるインサートの斜視図である。
    【図5】
    ローリングカッタードリルビットおよび固定カッタードリルビットの双方で使用に適したドーム形状PCDエレメントの斜視図である。
    【図6】
    間隙領域で結合剤触媒物質を示した、従来のPCDエレメントの表面の顕微鏡写真である。
    【図7】
    間隙領域に触媒物質のある第一部分と、間隙領域に触媒物質のない第二部分とを示した、本発明のPCDエレメントの顕微鏡写真である。
    【図8】
    図8は、間隙領域および個別結晶の結晶方向と一緒に、結合ダイヤモンド結晶を示した、従来のPCDエレメントの微細構造図である。
    【図9】
    PCDエレメント表面からの触媒物質フリー領域の深さを示した、図7で示されたような本発明のPCDエレメントの微細構造図である。
    【図10】
    本発明のPCDエレメントのいくつかの態様の相対磨耗指数のグラフである。
    【図11A】
    本発明のPCDエレメントの封入PCD態様の正面図である。
    【図11B】
    本発明のPCDエレメントの別な封入PCD態様の断面図である。
    【図11C】
    本発明のPCDエレメントの更に別な封入PCD態様の断面図である。
    【図12A】
    本発明のPCDエレメントの別な態様におけるCVD/PVD適用表面の斜視図である。
    【図12B】
    図12Aで示された本発明のPCDエレメントの態様の結晶構造の拡大斜視図である。
    【図13】
    本発明のPCDエレメントを有する伸線ダイの断面図である。
    【図14】
    本発明のPCDエレメントを有するヒートシンクの斜視図である。
    【図15】
    本発明のPCDエレメントを有するベアリングの斜視図である。
    【図16A】
    本発明のPCDエレメントを有する嵌合部品の正面図である。
    【図16B】
    本発明のPCDエレメントを有する嵌合部品の正面図である。
    【図17A】
    本発明のPCDエレメントを有する圧子の側面図である。
    【図17B】
    本発明のPCDエレメントを有するパンチの部分断面図である。
    【図18】
    本発明のPCDエレメントを有する測定装置の斜視図である。

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