【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本考案は、例えば、運動競技場、 道路、公園、ゴルフ場、畜舎、馬場等の排水用資材、寒冷地の道路凍結防止用資材としたり、屋上コンクリート部、砂漠地帯等に緑化造成を行う際の緑化造成用資材として利用できる排水・保水装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、ビルの屋上などを有効利用するために屋上コンクリート部を緑化することがある。 この場合、屋上コンクリート部面に排水用砂利や排水用砕石を敷設して平坦化させ、この排水用砂利や排水用砕石の上面に盛土を施し、この盛土に植木、芝などを植えて、緑化エリアを形成し、ビルの屋上を緑化していた。 したがって、ビルの屋上を緑化させるために、排水用砂利、排水用砕石を必要とするばかりか、排水用砂利、排水用砕石の敷設に手間が掛り、また、緑化エリアを整地する場合、ビルの屋上に敷き詰められている排水用砂利、排水用砕石を掘り起こし除去する作業に余計な労力と時間を要し、整地に相当の経費を必要とする。 【0003】そこで当考案者は先に多数の排水孔を穿設し、係合用蟻ほぞ部および係合用蟻溝部を形成する側壁と底板とにより形成される箱部と、多数の排水孔を穿設してなり、前記箱部に被蓋される上蓋と、多数の排水孔を穿設してなり、前記箱部内に配設される格子状仕切壁とを含む排水・保水装置を出願している(実願平3ー8 1167号、平成3年9月11日出願)。 【0004】この出願には、ビル屋上のコンクリート部に前記構造の排水・保水装置を連設して配置させ、排水・保水装置の上蓋の上面にスポンジシートまたは透水性ネットを敷き、このスポンジシートまたは透水性ネットの上面に盛土を施し、この盛土に芝その他の植物を植えて緑化エリアを造成する実施例が示されていて、斯かるビル屋上のコンクリート部に造成される緑化エリアに降り注いだ雨水は、盛土→スポンジシートまたは透水性ネット→排水・保水装置の上蓋に穿設される多数の排水孔→排水・保水装置の格子状仕切壁に穿設される多数の排水孔→排水・保水装置の側壁に穿設される多数の排水孔を通して、屋上コンクリート部に設けられている側溝に排水するように構成され、排水・保水装置の箱部の内底部に貯留している雨水を、排水・保水装置の上蓋の上面に敷設されているスポンジシートまたは透水性ネットに毛細管作用により浸透させて、スポンジシートまたは透水性ネットの上面の盛土に保水を促し、結果として、芝その他の植物を植えた盛土に湿潤性を保たせ、本来、植物が成育できない環境のビル屋上のコンクリート部において、植物の正常成育が可能になるようにしたものである。 【0005】ところが、屋上コンクリート部に緑化エリアを造成する場合、直接、盛土の重みが排水・保水装置に加わるから前記の排水・保水装置を耐土圧性、耐強度性に保つ必要があり、その解決手段として、多数の排水孔を穿設する格子状仕切壁を補強材として使用していた。 【0006】したがって前記の排水・保水装置は、側壁、底板、上蓋および格子状仕切壁等の構成部材を必要とするばかりか、盛土の土圧を支えるために側壁と底板により形成される箱部内へ縦横に直交して組構する格子状仕切壁を配設する手間が生じたり、格子状仕切壁を使用しないと排水・保水装置の強度性を保てず、しかも箱部内に格子状仕切壁を配設することで水はけが悪くなり、さらに、耐水・保水装置全体の構造が複雑となるばかりか、格子状仕切壁の分だけ余分に型代が嵩み経済的でない等の欠点がある。 【0007】 【考案が解決しようとする課題】そこで、この考案は上記の不都合を解消すべく改良されたもので、例えば、ビルの屋上コンクリート部などに緑化エリアを造成する場合や、運動競技場、道路等の排水目的、寒冷地の道路凍結防止目的等に有効利用でき、しかも使用時には従来のように、側壁と底板により形成される箱部の内部に盛土の土圧を支えるための格子状仕切壁を配設する必要がなくなり、また格子状仕切壁を使用しなくても耐土圧、耐強度を保つことができると共に、前記の使用目的に供する場合、造成用資材、排水・保水用資材、凍結防止用資材として有利であり、しかも施工に手間が掛らず、工事コストを低減を可能にでき得る排水・保水装置の提供を目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】この考案は上記問題点を解決するためになされたもので、板面に複数の排水孔を穿設すると共に複数本の下向柱体を突設し、板面のコーナー部に下向凹部を形成する上蓋と、四方枠組の枠板に複数の排水孔を穿設し、枠板面の下辺に切欠排水孔を設け、枠板面に係合用蟻ほぞ部および係合用蟻溝部を形成し、枠板のコーナー部の内角部に三角形状補強材を形成する枠体と、板面のコーナー部に上向柱体を立設する底板とからなり、前記、枠体に上蓋を被蓋した状態のとき或いは前記枠体と上蓋が一体構造のものである場合、上蓋に突設される複数本の下向柱体の各先端が底板の上面に当接し、底板のコーナー部に立設される上向柱体が枠板のコーナー部の内角部に設けた三角形状補強材の貫通状縦穴に挿嵌して、上蓋のコーナー部に形成される下向凹部に整合するように形成されてなることを問題解決の手段とする。 【0009】また、この考案は、板面に複数の排水孔を穿設すると共に複数本の下向柱体を突設する上蓋と、四方枠組の枠板に複数の排水孔を穿設し、枠板面の下辺に切欠排水孔を設け、枠板面に係合用蟻ほぞ部および係合用蟻溝部を形成する枠体と、板面に複数の凹部を形成する底板とからなり、前記、枠体に上蓋を被蓋した状態のとき或いは前記枠体と上蓋が一体構造のものである場合、上蓋に突設される複数本の下向柱体の各先端が、底板の凹部に整合するように形成されてなることを問題解決の手段とする。 【0010】 【作用】本考案に係る排水・保水装置は上記冒頭記載のように、例えば、運動競技場、道路、公園、ゴルフ場、 畜舎、馬場等の排水用資材または屋上コンクリート部、 砂漠地帯等に緑化造成を行う際の緑化造成用資材或いは寒冷地の道路凍結防止用資材として利用できるものであり、本考案の排水・保水装置を用いて、本考案の作用を例えば、ビル屋上のコンクリート面のように硬い場所に緑化エリアを造成する場合にかぎって説明する。 図6 は、ビル屋上のコンクリート面に本考案の排水・保水装置を緑化造成用資材として実施適用した場合を例示しており、前記、上蓋と枠体とを一体構造にした排水・保水装置を使用する。 ビル屋上のコンクリート面に緑化エリアを造成する場合は、先ず本考案排水・保水装置をコンクリート面に配置させる。 この場合、コンクリート面が硬いから、排水・保水装置の底板は不要となり、前記上蓋に突設されている複数本の下向柱体の各先端は、ビルの屋上のコンクリート面に直接、当接することになる。 【0011】次に、ビルの屋上のコンクリート面に配置されている前記上蓋の上面にスポンジシートまたは透水性ネットを敷き、このスポンジシートまたは透水性ネットの上面に盛土を施し、この盛土に、例えば芝などの植物(図示しない)を植付けすることで、ビルの屋上コンクリート面に緑化エリアが造成できる。 そして斯かる緑化エリアに降り注いだ雨水は、盛土→スポンジシートまたは透水性ネット→本考案の排水・保水装置の上蓋に穿設される複数の排水孔→本考案の排水・保水装置の枠体に穿設される複数の排水孔および枠板面の下辺に設けた切欠排水孔を通して屋上コンクリート部に設けられている側溝に排水されることになる。 なお前記枠体の内角部に、三角形状補強体を設けたので、従来のように、枠体のコーナーの内角部に泥土等が堆積することがなく、しかも前記補強材によって、枠体形状を保形し、補強材の斜面に排水が沿接することで水切りが良好となる。 また、屋上コンクリート部の側溝を適宜手段によって閉止しておくと、屋上コンクリート面を底にして、枠体の下部に雨水が貯留することになり、この雨水は、毛細管作用により、前記上蓋の上面に敷設されているスポンジシートまたは透水性ネットに浸透して、このスポンジシートまたは透水性ネットの上面の盛土に保水を促し、結果として、芝その他の植物を植えた盛土に湿潤性を保たせることができる。 【0012】従って、本来、植物の成育困難な環境のビル屋上のコンクリート面に植物の正常成育が可能となり、ビルの屋上を緑化する。 すなわち、ビルの屋上等に緑化エリアを造成する場合は、屋上のコンクリート部面に直接砂利や砕石を敷く必要がなくなる。 また、従来例のように格子状仕切壁を不要にして緑化エリアを造成できる。 さらに、ビル屋上のコンクリート面のように硬い場所に緑化エリアを造成する場合は、コンクリート面が直接、排水・保水装置の底板となるから、この場合、本考案の排水・保水装置を構成している底板の使用を省略することができる。 しかし、軟弱な地質のような運動競技場(グランド)等に本考案の排水・保水装置を実施適用する場合は、グランド面に凹凸を生じるから、本考案の排水・保水装置の底板を敷設する必要がある。 この場合、グランド土の上面に本考案の底板を敷き、この底板の上面に上蓋と枠体とを一体構造とした排水・保水装置を配置させ、この排水・保水装置の上蓋の上面に透水性ネットを敷設し、この透水性ネットの上面に適量の土またはバンブー・パウダーあるいはウッドチップを敷き詰めてグランド面を形成する。 そして、斯かるグランド面に降り注いだ雨水は、上蓋の上面に敷き詰めた土またはバンブー・パウダーあるいはウッドチップからなる積層→上蓋に穿設した複数の排水孔→枠体に穿設した複数の排水孔および枠板面の下辺に設けた切欠排水孔を通して、グランドの側溝に排水され、結果として従来、軟弱なグランド面に溜まる雨水を最適に排水し、グランド面の水はけを良くすることができる。 【0013】なお、前記のように、本考案排水・保水装置をビル屋上コンクリート面に配置させ、コンクリート面に緑化造成する実施例の場合は、上蓋に突設されている複数本の下向柱体の各先端が底板の上面に当接し、この底板のコーナー部に突設されている上向柱体の各先端が枠板のコーナー部の内角部に設けた三角形状補強材の貫通状縦孔に挿嵌して、上蓋のコーナー部に設けられている下向凹部に整合する状態となる。 また前記のように、本考案排水・保水装置をグランド面に配置させ、グランド面を排水する実施例の場合は、上蓋に突設されている複数本の下向柱体の各先端が底板の設けた複数の凹部に整合状態となる。 【0014】 【実施例】図1、図2および図3は、本考案の第一実施例に係る排水・保水装置の構造を示し、板面1に複数の排水孔2を穿設し、板面1に複数本の下向柱体2aを突設し、板面1のコーナー部に下向凹部3を形成してなる上蓋4と、複数の排水孔5と切欠排水孔6を穿設し、係合用蟻ほぞ部7および係合用蟻溝部8を形成し、さらにコーナーの内角部に貫通状縦孔を貫設する三角形状補強材9aを有する枠体9と、板面10のコーナー部に上向柱体11を立設してなる底板12とより構成される。 図中9bは、前記三角形状補強材9aの貫通状縦孔を示す。 図4および図5は、本考案の第二実施例に係る排水・保水装置の構造を示し、板面13に複数の排水孔14 を穿設し、板面13に複数本の下向柱体15を突設してなる上蓋16と、複数の排水孔17と切欠排水孔18を穿設し、係合用蟻ほぞ部19および係合用蟻溝部20を形成する枠体21と、板面22に複数の凹部23を形成してなる底板24とより構成される。 【0015】なお、上記の各実施例において、枠体9, 21に設けた係合用蟻ほぞ部7,19と、別の同様構造からなる排水・保水装置の枠体(図示しない)に設けた係合用蟻溝部との相対係合および枠体9,21に設けた係合用蟻溝部8,20と、別の同様構造からなる排水・ 保水装置の枠体(図示しない)に設けた係合用蟻ほぞ部との相対係合によって本考案の排水・保水装置の縦横方向の連設を可能にする。 【0016】上記の上蓋4,16、枠体9,21および底板12,24は、プラスチック製、鉄製、アルミ製、 木製等、いずれかにより製作される。 図6は、本考案の第一実施例に関連する排水・保水装置を緑化エリアの造成に適用した場合の使用断面図を示しており、同図において、符号25は、ビル屋上のコンクリート面、26は本考案排水・保水装置の上蓋4の上面に敷設されるスポンジシートまたは透水性ネット、27は、このスポンジシートまたは透水性ネットの上面に堆積させる盛土、2 8は屋上コンクリート部に設けた側溝を示す。 【0017】 【考案の効果】本考案は前記した如く、板面に複数の排水孔を穿設すると共に、複数本の下向柱体を突設し、板面のコーナー部に下向凹部を形成する上蓋と、四方枠組の枠体に複数の排水孔を穿設し、枠板面の下辺に切欠排水孔を設け、枠板面に係合用蟻ほぞ部および係合用蟻溝部を形成し枠板のコーナー部の内角部に三角形状補強材を形成する枠体と、板面のコーナー部に上向柱体を立設する底板より成る排水・保水装置であり、また前記排水・保水装置の上蓋を、板面に複数の排水孔を穿設すると共に、複数本の下向柱体を突設する上蓋に形成することを可能にするものであり、さらに板面に複数の凹部を形成する底板を含む排水・保水装置であり、前記、枠体を上蓋に被蓋した状態のとき、或いは前記枠体と上蓋が一体構造のものである場合、上蓋に突設される複数本の下向柱体の各先端が、底板面に当接し、この底板のコーナー部に立設される上向柱体の各先端が枠板のコーナー部の内角部に設けた三角形状補強材の貫通状縦孔に挿嵌して上蓋のコーナー部に形成される下向凹部に整合するように形成されてなるものであるから、上記従来の排水・ 保水装置が必要としていた格子状仕切壁を不要にして排水・保水装置を形成することができる。 また、従来、側壁と底板により形成される箱部内へ格子状仕切壁を配設することで、盛土の土圧を支えていたが、この考案では、上蓋に突設した下向柱体と底板に設けた凹部との整合、および上蓋に突設した下向柱体と底板との相互当接、および上蓋に設けた下向凹部と底板のコーナー部に立設した上向柱体との整合によって、耐土圧と強度を保つことができる。 しかも、枠体自体はコーナー部に設けた三角形状補強材によって保形効果を促すと共に、この補強材の貫通状縦孔は上蓋と底板との整合をはかるガイドとなる。 さらに、従来の格子状仕切壁を用いる必要がないから排水性・保水性が一段と向上する。 さらに緑化エリアの造成、運動競技場、道路等の排水処理に際して砂利、砕石等を必要としないから、使用現場の施工に手間が掛らず、施工後、相当年月が経過して、本装置内部にヘドロ等の堆積の懸念があった場合、上蓋の上面に敷き詰めた土またはバンブー・パウダーあるいはウッドチップを一時除去して本装置を水洗し、再度、上蓋の上面に土またはバンブー・パウダーあるいはウッドチップを敷設することで、本装置の再使用が可能となり、従来、 考慮していた砂利等の排除の手間が掛らず、経済的であり、さらに従来の格子状仕切壁が不要となるから、廉価に提供できると共に現場での使い分けが可能となり、しかも本考案排水・保水装置を寒冷地の例えば道路材として使用した場合、地中から水の上がりを遮断するから、 寒冷地の道路凍結防止にもなる等、実用面で顕著な効果を発揮する考案である。 【図面の簡単な説明】 【図1】図1は本考案の第一実施例の分解斜視図である。 【図2】図2は図1の全体斜視図である。 【図3】図3は枠体の斜視図である。 【図4】図4は本考案の第二実施例の分解斜視図である。 【図5】図5は図4の全体斜視図である。 【図6】第6図は本考案の第一実施例に関連する排水・ 保水装置を緑化エリアの造成に適用した場合の使用断面図である。 【符号の説明】 2 下向柱体 3 下向凹部 4 上蓋 9 枠体 9a 三角形状補強材 11 上向柱体 12 底板 21 枠体 23 凹部 24 底板 |