Antisoiling agent for paper machine, and antisoiling method using the same

申请号 JP2002005297 申请日 2002-01-11 公开(公告)号 JP2003213587A 公开(公告)日 2003-07-30
申请人 Mentekku:Kk; 株式会社メンテック; 发明人 SEKIYA KUNIO; SEKIYA HIROSHI;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide an antisoiling agent for paper machine, consisting mainly of a positively found silicone oil which has high fixability onto paper machine rolls and the like and affords the rolls or the like with releasing/water-repelling tendency just after applied, and further, to provide a 2nd antifouling agent for paper machine consisting mainly of a silicone oil and causing less transfer of foreign matter from wet paper compared to the case with using an antifouling agent consisting mainly of a dimethylpolysiloxane-based oil. SOLUTION: This antisoiling agent for feeding/applying to a paper machine consists mainly of a side chain-type or side chain both end-type modified silicone oil. Another version of the antifouling agent consists mainly of a side chain-type modified silicone oil where the side chains are substituted with amino or epoxy groups. The 2nd antifouling agent has better effects. COPYRIGHT: (C)2003,JPO
权利要求
  • 【特許請求の範囲】 【請求項1】 抄紙機に対して供給付与される抄紙機用汚染防止剤であって、該抄紙機用汚染防止剤は、側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルを主成分とすることを特徴とする抄紙機用汚染防止剤。 【請求項2】 抄紙機に対して供給付与される抄紙機用汚染防止剤であって、該抄紙機用汚染防止剤は、側鎖型変性シリコーンオイルを主成分とすることを特徴とする抄紙機用汚染防止剤。 【請求項3】 前記側鎖型変性シリコーンオイルは、反応性であることを特徴とする請求項2記載の抄紙機用汚染防止剤。 【請求項4】 前記側鎖型変性シリコーンオイルは、側鎖がアミノ基又はエポキシ基で置換された変性シリコーンオイルであることを特徴とする請求項2記載の抄紙機用汚染防止剤。 【請求項5】 前記側鎖型変性シリコーンオイルは、2
    5℃における粘度が800cSt以下であることを特徴とする請求項2記載の抄紙機用汚染防止剤。 【請求項6】 抄紙機の運転により湿紙が供給されている状態のプレスロールの表面に対して直接且つ連続的に抄紙機用汚染防止剤を付与するプレスロールの汚染防止方法であって、該抄紙機用汚染防止剤は、側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルを主成分とすることを特徴とするプレスロールの汚染防止方法。 【請求項7】 抄紙機の運転により湿紙が供給されている状態のドライヤロールの表面に対して直接且つ連続的に抄紙機用汚染防止剤を付与するドライヤロールの汚染防止方法であって、該抄紙機用汚染防止剤は、側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルを主成分とすることを特徴とするドライヤロールの汚染防止方法。 【請求項8】 抄紙機の運転により湿紙が供給されている状態のカンバスの表面に対して直接且つ連続的に抄紙機用汚染防止剤を付与するカンバスの汚染防止方法であって、該抄紙機用汚染防止剤は、側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルを主成分とすることを特徴とするカンバスの汚染防止方法。 【請求項9】 抄紙機の運転により湿紙が供給されている状態のカンバスの表面に抄紙機用汚染防止剤を付与するためカンバスロールの表面に連続的に該抄紙機用汚染防止剤を付与するカンバスの汚染防止方法であって、該抄紙機用汚染防止剤は、側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルを主成分とすることを特徴とするカンバスの汚染防止方法。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、抄紙機用汚染防止剤及びそれを用いた抄紙機の汚染防止方法に関し、更に詳しくは、側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルを主成分とする抄紙機用汚染防止剤及びそれを用いた抄紙機の汚染防止方法に関する。 【0002】 【従来の技術】抄紙機において、原料から先ずシート状の湿紙が形成され、脱された後、乾燥されて紙製品となる。 図1に、抄紙機の例として、ヤンキードライヤを備えた抄紙機の全体構造を概略的に示す。 【0003】通常、抄紙機のプレスパートBにおいては、湿紙W(図中の点線)を一対のプレスロールB2、
    B4、B6の間にフェルトB1、B3、B5に重ねた状態で挟み込み、ロール間のニップ圧により紙の水分をフェルトに移行させて脱水する。 また、ドライヤパートC
    においては、プレスパートBで脱水された湿紙WをドライヤロールC1〜C6のそれぞれとカンバスC7又はC
    8との間に挟み、カンバスで圧を掛けつつ順次ドライヤロールの熱で乾燥させていく。 このように、湿紙は、
    プレスロールやドライヤロール、カンバス等(以下ロール等と略する場合がある)に強く圧接されながら抄紙機内を移動する。 【0004】ところで、湿紙には種々の異物(汚染物質)、例えば、パルプ原料自体に含まれるガムピッチやタール分のほか、古紙原料に含まれていたホットメルトインク、微細繊維、塗料、紙の強度や白色度を補助するための各種添加薬剤等の含有物が含まれている。 こうした異物は粘着性を有するものが多く、ロール等に何ら措置を講ずることなく抄紙を行うと、上記のように湿紙がロール等に圧接された際に、ロール等の表面に異物が転移し付着して該表面を汚染する。 【0005】そして、こうした汚染は、ロールへの湿紙の過付着や焼き付き、断紙等の原因ともなり、またロール等の清掃が頻繁に必要となり、また、紙製品の生産効率を著しく害する。 また、こうした異物の付着のため、
    紙自体の表面に凹凸や毛羽立ち等が生じ、紙力が低下し、或いはカンバスの目が詰まって湿紙の乾燥不良を生じさせるなど、製品の品質自体に直接的又は間接的に悪影響を及ぼす。 【0006】従って、従来からこうした異物によるロール等の汚染を防止するための汚染防止剤や汚染防止方法の開発が進められてきた。 種々の方法が提案された中で、現在広く採用されている方法は、ロールやカンバスの表面にワックスやシリコーンオイルを含む汚染防止剤を塗布する方法である。 中でも、シリコーンオイルを塗布する方法は、ロール等の表面にシリコーンオイル独特の離型性及び撥水性を有する皮膜を形成させ、その皮膜の離型・撥水機能により、湿紙から異物が転移するのを防ごうという考え方に基づく。 【0007】シリコーンオイルは、シロキサン結合の繰り返し(−Si−O−) nを主鎖とし、側鎖にアルキル基やアリール基等の有機基やその他の有機官能基をもつ鎖状の有機ポリシロキサン系のオイルである。 そして、
    側鎖や末端基が他の種々の有機官能基に置換されることにより、種々の種類のものがある。 【0008】その中で、上記の目的に使用されるシリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン系オイル(通称「ジメチル」)が採用されることが圧倒的に多い。 それは、主に、このジメチルポリシロキサン系オイル(表1参照)が、側鎖に最も単純なアルキル基であるメチル基を有する構造をしているため、シリコーンオイルの中でも最もポピュラーで基本的なオイルであり、種々のシリコーンオイルの中でも、最も安価で入手し易いためである(例えば、特開平7−292382号公報では経済的であるとの理由で、ジメチルポリシロキサン系オイルが採用されている)。 【0009】 【表1】

    【0010】さて、こうしたジメチルポリシロキサン系オイルがシリコーンオイル特有の離型・撥水性を呈するのは、固体表面に塗布し焼き付け等の処理を行うと、図2に模式的に示すように、ジメチルポリシロキサン系オイルの鎖状分子が固体表面Sに対して主鎖のO原子を対向させ、疎水性で反応性に乏しいメチル基を外側に向けた状態の皮膜を形成するからであるとされる。 【0011】こうした状態になると、ジメチルポリシロキサン系オイルは固体表面に強固に固着して容易に剥離せず、皮膜が離型・撥水機能を安定して発揮するのである。 抄紙機のロール等の表面にシリコーンオイルを塗布するのは、塗布すればロール等の表面にこうした皮膜が形成され、湿紙からロール等に異物が転移するのを防止できる効果を期待したものであった。 【0012】しかし、実際に、ジメチルポリシロキサン系オイルを抄紙機のロール等に付与しても、上記のシリコーンオイル特有の離型・撥水性から期待される汚染防止効果は、必ずしも十分には発揮されない。 例えば、湿紙が供給されている状態のロール等にジメチルポリシロキサン系オイルを含む汚染防止剤を付与しても、上記の状態になる前にジメチルポリシロキサン系オイルが湿紙に転移してしまい、ロール等の表面には湿紙から転移した異物由来の汚れ粕が相当量付着する。 【0013】そして、それを放置すれば、先述したロール等の汚染による問題が生じてしまう。 即ち、ジメチルポリシロキサン系オイルを抄紙機のプレスロール等に使用しても、シリコーンオイル特有の離型・撥水性が効果的に発揮されず、逆に、湿紙からロール等への異物の転移を許してしまっているのである。 【0014】一方、オイルの付与量を増やしていくと、


    今度は、例えば、オイルの紙製品への混入量が多くなって紙製品のインクの乗りを悪くさせたり、カンバスの目を詰まらせて湿紙の乾燥不良が発生する等、種々の不具合が生じる。 また、プレスロールに湿紙が供給されている状態のまま、ジメチルポリシロキサン系オイルの付与を中止すれば、即座にロール等の表面は離型・撥水性を失ってしまう。 【0015】これらの現象は、ジメチルポリシロキサン系オイルを塗布しても、ロール等の表面に離型・撥水性の皮膜は、少なくとも有効には形成されていないことを示す。 寧ろ、ジメチルポリシロキサン系オイルのロール等の表面に対する定着性(付着した後容易に剥離しない性質)が必ずしも良くなく、皮膜を形成する以前に、オイル自身がロール等から湿紙に容易に転移してしまうことを示している。 【0016】抄紙機の汚染防止のために、シリコーンオイルが使用されるようになって久しい。 そして、先述したように、シリコーンオイルの中には、ジメチルポリシロキサン系オイルの他にも、その側鎖や末端基が他の種々の有機官能基に置換された構造を有する種々の変性シリコーンオイルがある。 【0017】しかし、上記の問題を抱えながらも、安価であるという理由のみからジメチルポリシロキサン系オイルが抄紙機の汚染防止剤として採用され続けている。


    そして、シリコーンオイルの作用メカニズムまで考察した上で、上記の問題点を克服し得るような最適なオイルを種々のシリコーンオイルから積極的に見出して活用するような技術は、今のところ提供されていない。 【0018】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる実情を背景に、上記の問題点を克服するためになされたものである。 即ち、本発明の目的は、抄紙機のロール等に対する定着性が高く、付与した直後からロール等に離型・


    撥水性を与えることができるシリコーンオイルを積極的に見出し、それを主成分とする抄紙機用汚染防止剤を提供することである。 【0019】そして、ジメチルポリシロキサン系オイルを主成分とする汚染防止剤を用いた場合よりも、湿紙からの異物の転移がより少ないシリコーンオイルを主成分とする抄紙機用汚染防止剤を提供することである。 また、こうした抄紙機用汚染防止剤を使用したプレスロール、ドライヤロール、及びカンバスの汚染防止方法を提供することである。 【0020】 【課題を解決するための手段】かくして、本発明者は、


    このような課題背景に対して鋭意研究を重ねた結果、少なくとも側鎖に有機官能基を有する側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルを用いることによりプレスロール等に即座に定着させることができること、更に粘度の小さいものを使用すれば散布ノズルの噴射口の詰まり等の問題が生じないことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。 【0021】即ち、本発明は、(1)、抄紙機に対して供給付与される抄紙機用汚染防止剤であって、該抄紙機用汚染防止剤は、側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルを主成分とする抄紙機用汚染防止剤に存する。 【0022】そして、(2)、抄紙機に対して供給付与される抄紙機用汚染防止剤であって、該抄紙機用汚染防止剤は、側鎖型変性シリコーンオイルを主成分とする抄紙機用汚染防止剤に存する。 【0023】そしてまた、(3)、前記側鎖型変性シリコーンオイルは、反応性である抄紙機用汚染防止剤に存する。 【0024】そしてまた、(4)、前記側鎖型変性シリコーンオイルは、側鎖がアミノ基又はエポキシ基で置換された変性シリコーンオイルである抄紙機用汚染防止剤に存する。 【0025】そしてまた、(5)、前記側鎖型変性シリコーンオイルは、25℃における粘度が800cSt以下である抄紙機用汚染防止剤に存する。 【0026】そしてまた、(6)、抄紙機の運転により湿紙が供給されている状態のプレスロールの表面に対して直接且つ連続的に抄紙機用汚染防止剤を付与するプレスロールの汚染防止方法であって、該抄紙機用汚染防止剤は、側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルを主成分とするプレスロールの汚染防止方法に存する。 【0027】そしてまた、(7)、抄紙機の運転により湿紙が供給されている状態のドライヤロールの表面に対して直接且つ連続的に抄紙機用汚染防止剤を付与するドライヤロールの汚染防止方法であって、該抄紙機用汚染防止剤は、側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルを主成分とするドライヤロールの汚染防止方法に存する。 【0028】そしてまた、(8)、抄紙機の運転により湿紙が供給されている状態のカンバスの表面に対して直接且つ連続的に抄紙機用汚染防止剤を付与するカンバスの汚染防止方法であって、該抄紙機用汚染防止剤は、側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルを主成分とするカンバスの汚染防止方法に存する。 【0029】そしてまた、(9)、抄紙機の運転により湿紙が供給されている状態のカンバスの表面に抄紙機用汚染防止剤を付与するためカンバスロールの表面に連続的に該抄紙機用汚染防止剤を付与するカンバスの汚染防止方法であって、該抄紙機用汚染防止剤は、側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルを主成分とするカンバスの汚染防止方法に存する。 【0030】本発明はこの目的に沿ったものであれば、


    上記1〜5の中から選ばれた2つ以上、及び6〜9の中から選ばれた2つ以上を組み合わせた構成も当然採用可能である。 【0031】 【発明の実施の形態】以下、表や図面に基づいて、本発明の抄紙機用汚染防止剤及びそれを使用した抄紙機の汚染防止方法について述べる。 最初に、抄紙機用汚染防止剤について述べる。 【0032】本発明の抄紙機用汚染防止剤の特徴は、種々のシリコーンオイルの中でも変性シリコーンオイルに着目し、更にその中でも側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイル(以下まとめて側鎖置換型と言う場合がある)を選択的に採用する点にある。 つまり、抄紙機用汚染防止剤は、この側鎖置換型変性シリコーンオイルを主成分とし、それに水と乳化剤等とを加えたものである。 【0033】因みに、乳化剤は、採用される側鎖置換型変性シリコーンオイルに応じて適宜選択される。 具体的には、例えば、ノニオン系のエーテルやエステル等、アニオン系の有機酸塩等、カチオン系、及び両性の乳化剤の中から単独で又は組み合わせて使用される。 また、これらの他に、固体潤滑剤、金属石鹸、ワックス、鉱物油等の油類等を必要に応じ適宜添加することも当然可能である。 【0034】次に、本発明の抄紙機用汚染防止剤において採用される側鎖置換型変性シリコーンオイルについて述べる。 先ず、表2にシリコーンオイルの大略分類を示す。 【0035】 【表2】 【0036】シリコーンオイルは、先述したジメチルポリシロキサン系オイル(表1参照)が属する無変性シリコーンオイル(いわゆるストレートシリコーンオイル)


    と、その一部のメチル基が有機官能基で置換された構造を有する変性シリコーンオイルとに大別される。 更に、


    変性シリコーンオイルは、その有機官能基で置換された部位が側鎖か末端かによって、主に次の4種類に分類される。 【0037】即ち、側鎖が置換された分子構造を有する側鎖型(表3参照)、両末端のメチル基が置換された両末端型(表4参照)、片方の末端のメチル基が置換された片末端型(表5参照)、両末端と側鎖が置換された側鎖両末端型(表6参照)、の4種類である(表中のA、


    A´は有機官能基、Rはアルキル基)。 【0038】 【表3】 【0039】 【表4】 【0040】 【表5】 【0041】 【表6】 【0042】ここで、表3及び表6中のnは、例えばn


    =100の場合、ジメチルポリシロキサン系オイルの1


    00個の側鎖のメチル基がランダムに有機官能基Aに置換された構造であることを意味するのであって、鎖状分子の1部分で、有機官能基Aが結合したSi原子がO原子を挟んで100個連続して並んだ構造であるという意味ではない。 【0043】本発明の抄紙機用汚染防止剤において、側鎖置換型(即ち側鎖型又は側鎖両末端型)変性シリコーンオイルを選択的に採用する理由は、それらのロール等の表面に対する定着性が高いからである。 ここで、シリコーンオイルがロール等に付与され定着するまでの過程について定性的に考察する。 【0044】先ず、無変性シリコーンオイルであるジメチルポリシロキサン系オイルがロールの表面に付与された場合について述べる。 ジメチルポリシロキサン系オイルは、常態(室温)では、Si原子に結合している2つのメチル基が、Si−O結合を回動軸として熱運動により比較的大きな振幅で回動しているとされる。 【0045】また、それと同時に、この鎖状分子は、熱運動により、主鎖のシロキサン結合自体が波打つように振動運動を繰り返していると考えられる。 一方、分子を構成する原子の電気陰性度等から考えると、主鎖のO原子がSi原子の電子を引き付けるため、O原子はやや負の電気を帯びているが、他に強い極性を有する部分はない。 【0046】このようなジメチルポリシロキサン系オイルがロール等に付与されると、熱運動の中で偶然にロール等の表面に対向した主鎖のO原子が、該表面に静電的に引き付けられることがある。 しかし、鎖状分子の熱運動により、O原子はロール等の表面から容易に引き離されてしまう。 【0047】このように、ジメチルポリシロキサン系オイルは、ロール等の表面と強く引き付け合う力に欠け、


    ロール等の表面に付着しても定着せず、ロール等の表面から湿紙に容易に転移してしまうのである。 因みに、皮膜を形成するには、通常、ジメチルポリシロキサン系オイルを塗布しただけでは形成されず、先述したように、


    塗布した後、焼き付け等の処理が必要である。 【0048】以上の点は、先述した4種類の変性シリコーンオイルの中の両末端型変性シリコーンオイル(表4


    参照)や片末端型変性シリコーンオイル(表5参照)においても、同様に成り立つと考えられる。 つまり、巨大鎖状分子中の末端のメチル基が有機官能基で置換されたところで、その巨大分子が配向を変えて末端の有機官能基をロール等の表面に対向させるまでに時間が掛かり、


    その間に容易に湿紙に転移してしまうため、無変性シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン系オイル)の場合と比較してロール等の表面への定着性が大幅に改善されるとは考え難い。 【0049】それに対し、側鎖置換型変性シリコーンオイルでは、先述したSi−O結合を軸としたSi原子周りの回動運動により、側鎖の有機官能基が容易にロール等の表面と対向し得る。 図3に、例としてアミノ変性の側鎖置換型シリコーンオイルを付与した場合を示す。 即ち、側鎖置換型変性シリコーンオイルの鎖状分子は、プレスロール等に付与された当初から、迅速に、表面に対する投錨効果を発揮する状態となると考えられる。 【0050】また、側鎖置換型変性シリコーンオイルは、上記のように、多数の側鎖を介して該表面に引き付けられているため、一旦ロール等の表面に付着すると、


    該表面から容易に離脱しない。 従って、側鎖置換型変性シリコーンオイルは、ロール等に付与された当初から側鎖を介して迅速に効率良くロール等の表面に付着し且つ容易に離脱しない性質、即ち定着性がより優れたものとなると考えられる。 【0051】このようなオイルの定着性は、後述する剥離実験等で確認されるが、簡単な実験によっても確かめられる。 即ち、アクリル板にジメチルポリシロキサン系オイルを塗布してティッシュで拭くと、跡が殆ど残らない程度に容易に拭き取られるが、例えば、側鎖型アミノ変性シリコーンオイルを塗布してティッシュで拭いた場合、強く拭いてもなかなか拭き取れず、板上にオイルの膜が残るのである。 【0052】このように、抄紙機用汚染防止剤に採用されるシリコーンオイルとしては、4種類の変性シリコーンオイルの中でも、側鎖に有機官能基を有する側鎖型変性シリコーンオイル又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルが有効であることが理解されよう。 【0053】一方、変性シリコーンオイルは、上記のような有機官能基で置換された部位による分類とは別に、


    反応性の観点から分類されることもある。 即ち、変性シリコーンオイルは、有機官能基の極性等により他の分子との反応性が異なり、他の分子と反応し易い「反応性」


    と反応し難い「非反応性」の2つのタイプに大別される。 【0054】上記のように、表面に対する投錨効果を発揮して巨大鎖状分子をロール等に効率良く付着させる側鎖の有機官能基の役割を考えると、有機官能基は極性が強い方が好ましく、従って、側鎖置換型変性シリコーンオイルは反応性であることがより好ましいと考えられる。 反応性の側鎖型変性シリコーンオイルには、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メルカプロ変性等の変性タイプがあり、また側鎖両末端型変性シリコーンオイルには、側鎖がアミノ基で置換され両末端がアルコキシ基で置換された構造を有するアミノ・アルコキシ変性等がある。 【0055】中でも、側鎖型変性シリコーンオイルにおいては、側鎖がアミノ基で置換されたアミノ変性(表7


    参照)又はエポキシ基で置換されたエポキシ変性(表8


    参照)の変性シリコーンオイルがロール等への付着性がよく、また扱い易さや経済性等の観点から好ましく使用される(表中のR、R´はアルキル基)。 因みに、非反応性の側鎖型変性シリコーンオイルには、ポリエーテル変性やアルキル変性等がある。 【0056】 【表7】 【0057】 【表8】 【0058】更に、同じ有機官能基による変性タイプ(例えばアミノ変性)の変性シリコーンオイルの中でも、粘度〔25℃、単位はcSt(センチストークス)〕や官能基当量(単位はg/mol)等が異なる多数のオイルがある。 後述するように、変性シリコーンオイルの抄紙機用汚染防止剤としての適否は、主に粘度に依存し、官能基当量の大小は殆ど影響がないことが分かった。 そして、カンバスの目詰まり防止等の観点から、


    変性シリコーンオイルは、25℃における粘度が800


    cSt以下であれば、より好ましい。 【0059】次に、本発明の抄紙機用汚染防止剤を使用した抄紙機の汚染防止方法について述べる。 本発明の抄紙機用汚染防止剤は、抄紙機のプレスロール等に直接的又は間接的に付与されることにより湿紙からの異物の転移を防止する。 【0060】〔プレスロールの汚染防止方法〕プレスロールの汚染防止方法は、抄紙機の運転により湿紙が供給されている状態のプレスロールの表面に対して直接且つ連続的に本発明の抄紙機用汚染防止剤を付与することにより行われる。 【0061】図4は、図1に示した抄紙機のプレスパートBの一部をより具体的に示した図である。 抄紙機の運転により、湿紙Wは、フェルトB1に重ねられた状態で一対のプレスロールB2、B2aに供給され、それらに挟まれて脱水される。 その後、プレスロールB2の回転に合わせてその表面に接したまま移動し、フェルトB7


    に重ねられた状態で一対のプレスロールB2、B2bに供給され、それらに挟まれて更に脱水される。 【0062】そして、湿紙WはプレスロールB2を離れ、今度はフェルトB3と重ねられた状態で一対のプレスロールB4、B4aに供給され、挟み込まれて更に脱水される。 本発明では、このように湿紙が供給され回転しているプレスロールB2やプレスロールB4の表面に、散布ノズルSより直接且つ連続的に抄紙機用汚染防止剤を付与する。 【0063】具体的には、例えば、図5に示すようにロールの全幅をカバーするシャワーにより抄紙機用汚染防止剤を散布したり、図示しない1つ又は数個の散布ノズルSを左右に移動させながら散布するのである。 言うまでもなく、散布ノズルの個数や散布方法は、抄紙機の性能や抄紙条件等に合わせて、適宜決定される。 また、散布ノズルSやシャワーの前後に、表面の異物を掻き取るためのドクターを配設することも当然可能である。 【0064】このように散布されると、抄紙機用汚染防止剤に含まれる側鎖型又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルが、先述した過程を経て迅速にプレスロールの表面に定着する。 そのため、ロールの表面が即座に離型性及び撥水性を帯び、付与開始当初から、湿紙からの異物の転移を防止することができるのである。 【0065】〔ドライヤロールの汚染防止方法〕図6


    は、図1に示した抄紙機のドライヤパートCを拡大して示した図である。 ドライヤパートCにおいては、湿紙W


    は、ドライヤロールC1等とカンバスC7等との間に供給され、カンバスによる圧力でドライヤロールに押し付けられながら加熱されたドライヤロールの熱を吸収する。 そして、数個又は数十個のドライヤロールとの圧接が繰り返されるうち、徐々に乾燥されていくのである。 【0066】従って、プレスロールの場合と同様に、湿紙が供給されている状態のドライヤロールの表面に対して直接且つ連続的に左右に移動する散布ノズルSから抄紙機用汚染防止剤を散布することにより、変性シリコーンオイルを付与することができる。 また、ドライヤパートの一群のドライヤロールのうち、最上流のドライヤロールにオイルを付与すれば、このドライヤロールから湿紙に転移した一部のオイルが更に下流のロールの表面に転移するため、一群のドライヤロールを効率よく汚染防止することも可能である。 【0067】〔カンバスの汚染防止方法〕カンバスは、


    上記のように加熱されたドライヤロールに湿紙を押し付ける。 またそれと同時に、ドライヤロールの熱で湿紙から蒸発した水蒸気を、織目の空隙(いわゆるカンバスの目)を通して外界に散逸させ、湿紙を乾燥させる役割をする。 【0068】このように、カンバスも上記のドライヤロール等と同様に湿紙に直接触れるため、湿紙から異物が転移し易い。 そのため、カンバスに汚染防止剤を付与することで、湿紙から異物が転移してカンバスの目を詰まらせて乾燥効率が悪化し、湿紙の乾燥不良による不具合が生じるのを防止する。 【0069】さて、カンバスに対する抄紙機用汚染防止剤の付与方法は、主に2つの方法がある。 第1の方法は、カンバスに直接付与する方法である。 即ち、図6に示すように、カンバスC7(以下カンバスC8に関しても同様)が湿紙WとともにドライヤロールC1に接触する直前の位置で、カンバスの全幅をカバーするシャワーS1よりカンバスの表面に抄紙機用汚染防止剤を散布するのである。 【0070】第2の方法は、カンバスを案内しカンバスに張力を与えるカンバスロール、特にカンバスの外面に接するアウトロールC9又はC10、またはその両者に付与し、ロールの表面からカンバスの表面にオイルを転移させる方法である(図7参照)。 【0071】湿紙からカンバスに転移した微細繊維等の異物がアウトロールに運ばれ、ロールの表面に付着して蓄積することがある。 この方法は、こうしたアウトロールへの異物の蓄積を同時に抑えられる利点がある。 【0072】以下、実施例について述べる。 本発明は、


    これらの実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。 【0073】 【実施例】各種シリコーンオイルを対象に、種々の実験を行ったので、実例を挙げて示す。 ここで、以下のエマルジョン(本発明の抄紙機用汚染防止剤を含む)は、 シリコーンオイル(サンプル) 10重量% 乳化剤〔エマルゲン109P(花王株式会社製、 ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ノニオン系)〕2重量%

    水 88重量%計 100重量% にて作成した。 【0074】〔剥離実験1〕 ロール等の表面に見立てたアクリル板に各種のシリコーンオイルより作成したエマルジョンを塗布し、異物を含む湿紙に見立てた粘着テープを貼り付けては引き剥がす操作を繰り返し行い、変性及び無変性の各種シリコーンオイル(表2参照)の定着性を評価する。 【0075】実験装置の主要部分を、図8に示す。 アクリル板2の表面に、上記のエマルジョン1を、5cm×


    100cmにスプレーで均一に3回塗布する(約10


    g)。 その上からポリエステル粘着テープ3(ニチバン株式会社製No.553、幅5cm)を貼付し、ゴムローラで加圧密着させる(5kg/cm

    2 、エマルジョンの膜厚は約60μm)。 【0076】そして、可動台車5を図中右方向(矢印方向)に線路4上を走行させ、この粘着テープ3を剥離速度3m/s、剥離度30度にて剥離した時の剥離力(単位はg/cm)を計測器6で計測する。 次に、エマルジョンを塗布し直さずに新しい粘着テープを同じ場所に貼付し、ガムローラで加圧密着させてから剥離する同様の実験を繰り返し行い、その度に剥離力を計測する。 【0077】先ず、表9に示すシリコーンオイルを用いてエマルジョン1を作成し、上記剥離実験を行った結果を図9に示す。 図9は、ブランクに対する剥離実験の計測値20回分の平均値を100とした場合の各サンプルの計測値の換算値をプロットしたものである。 【0078】 【表9】 【0079】〔計測結果〕実験により、剥離に対する挙動は、シリコーンオイルの種類により大きく3つのタイプに分かれることが分かる。 第1のタイプは、剥離を重ねるうちに迅速にブランクにおける計測値に近づいていく無変性、両末端型変性及び片末端型変性のシリコーンオイル群。 【0080】第2のタイプは、初期には剥離力が増加するものの、数回目の剥離で増加を止めて剥離力がほぼ一定となり、20回剥離を繰り返してもブランクにおける計測値にまで増加しない側鎖型変性(反応性)及び側鎖両末端型変性のシリコーンオイル群。 第3のタイプは、


    第1及び第2のシリコーンオイル群の中間の挙動を示す側鎖型変性(非反応性)のシリコーンオイル群、の3タイプである。 【0081】〔評価〕全体的に見て、どのサンプルにおいても、最初は剥離に要する力は小さく、数回の剥離で剥離力が上昇する。 これは、最初の数回の剥離でエマルジョン中に残存していた水分やシリコーンオイル等が粘着テープにより除去されていく過程を示していると考えられる。 【0082】第1のタイプ(無変性、両末端型変性、及び片末端型変性)のシリコーンオイルでは、4、5回目以降ブランクの剥離力とほぼ同じ計測値を示すことから、粘着テープにより容易に剥離されてしまうことが分かる。 従って、このタイプのシリコーンオイルは定着性が良くないと考えられる。 【0083】第2のタイプ〔側鎖型(反応性)及び側鎖両末端型〕の変性シリコーンオイルでは、剥離力がブランクの計測値より小さい値で横ばいになっていることから、付与された変性シリコーンオイルの一部がアクリル板に付着して剥離されず、一定の離型性・撥水性を示すことが分かる。 すなわち、反応性の側鎖型及び側鎖両末端型変性シリコーンオイルは、定着性に優れていると結論付けられる。 【0084】第3の側鎖型(非反応性)の変性シリコーンオイルは、側鎖型等のオイルほどではないにしても、


    少なくとも一部はアクリル板の表面から剥離されず一定の離型性・撥水性を維持する(即ち定着性が比較的よい)ことが分かった。 上記の実験結果から、本発明の抄紙機用汚染防止剤には、側鎖型変性シリコーンオイル(非反応性を含む)及び側鎖両末端型変性シリコーンオイルが適していると考えられる。 【0085】従って、以下の実験は、両末端型及び片末端型のシリコーンオイルについては行わない(無変性シリコーンオイルについては対象実験という形で行う)。


    また、非反応性側鎖型変性シリコーンオイル(図9中の△及び□)は、明記しないものの、以下の実験においても、反応性側鎖型変性シリコーンオイルと同様の挙動を示すことが確認された。 従って、煩雑さを避けるため、


    以下、反応性及び非反応性と区別せず、まとめて側鎖型変性シリコーンオイルと表現する。 【0086】〔剥離実験2〕 シリコーンオイルの粘度及び官能基当量が、定着性とどのような関係にあるかを調べるため、上記と同様の剥離実験を、種々の粘度や官能基当量を有する側鎖型及び側鎖両末端型変性シリコーンオイルについて行った。 実験は、表10中のサンプルB、E及びIより作成したエマルジョンを用い、それぞれ剥離力を計測した。 【0087】 【表10】 【0088】〔計測結果〕図10は、上記のサンプルB、E及びIの他、〔剥離実験その1〕において計測したサンプルA、H、及びJより作成したエマルジョン、及びブランクの剥離力の換算値をプロットして作成したグラフである(上記実験と同様にブランクに対する20回の計測値の平均値を100とした)。 【0089】〔評価〕図10のグラフは、側鎖型及び側鎖両末端型変性シリコーンオイルの粘度が高くなるほど、剥離に要する力がより小さくなることから、粘度が高いほどアクリル板への定着性が良いことを示している。 また、定着性は、官能基当量の大小には依存しないことも示している。 【0090】実際、図示しないが、サンプルB及びEの中間の粘度を有するサンプルD(粘度1200cSt)


    より作成したエマルジョンを用いた実験では、計測値は、各回ともほぼサンプルB及びEの計測値の間に収まった。 因みに、図示しないが、無変性シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン系オイル)では、種々の粘度のもの(例えばKF96H−10万、粘度は10万cS


    t、信越化学工業株式会社製)を用いて実験してもこのような傾向は見られず、粘度を高くしても定着性は向上しない。 【0091】〔プレスロールへの付与実験〕 以下の実験は、表10に示したサンプルA〜Jより作成したエマルジョンを、実際の抄紙機に付与して行った。


    また、使用した抄紙機は、段ボール用中芯原紙の抄造用のものであり、次の抄紙条件で実験した。 【0092】〔抄紙条件〕 抄紙機:ウルトラフォーマー(株式会社小林製作所製) 抄造銘柄:普通芯坪量:160g/m

    2抄速:350m/分紙幅:4m 【0093】この実験では、抄紙機のプレスロールに表10のサンプルA〜Jより作成したエマルジョンを散布し、散布開始から4時間後のプレスロールの表面からドクターで掻き落とされた汚れ粕の発生量を比較する。 実際には、この濃度では濃すぎるため、エマルジョンを水で500倍に希釈し、全幅シャワー方式で希釈液を5リットル/分の割合で散布した(エマルジョンベースでは10cm

    3 /分)。 また、実験を終える度にプレスロールを洗浄し、その表面からシリコーンオイル等を除去した。 【0094】〔実験結果〕サンプルA〜Iの側鎖型及び側鎖両末端型変性シリコーンオイルを使用した場合、汚れ粕発生量はいずれのサンプルにおいても大差なく、1


    0〜20g程度であった。 一方、サンプルJの無変性シリコーンオイルでは、同じ時間後の汚れ粕発生量は平均171g(3回の実験の平均)であった。 また、汚れ粕は、A〜Jのいずれのサンプルにおいても主に湿紙由来のガムピッチ及び微細繊維であった。 【0095】〔追加実験〕サンプルJ(無変性シリコーンオイル)において、汚れ粕発生量が大きかったことから、エマルジョンの濃度を上げて追加実験を行った。 使用した希釈液は、エマルジョンを水で250倍に希釈したものと、125倍に希釈したものを用意し、希釈液をそれぞれ5リットル/分の割合で散布した(エマルジョンベースでは、250倍希釈のものは20cm

    3 /分、


    125倍希釈のものは40cm

    3 /分)。 【0096】結果は、250倍希釈の場合、汚れ粕発生量が平均157g(3回の実験の平均)であった。 また、125倍希釈の場合、汚れ粕発生量は149gであったが、製造された中芯原紙に対するコルゲータでの糊の付着が悪化する傾向が見られたため、1回で追加実験を中止した。 【0097】〔評価〕この実験は、散布開始当初における側鎖型及び側鎖両末端型変性シリコーンオイルと無変性シリコーンオイルとの定着性の差を明確に示している。 上記の剥離実験の結果と合わせて考察すると、側鎖型及び側鎖両末端型変性シリコーンオイルにおいては、


    オイルがプレスロールの表面に定着し、一定の離型性・


    撥水性を示したため、湿紙からの異物の転移を効果的に阻止したと考えられる。 【0098】無変性シリコーンオイルでは、側鎖型変性シリコーンオイル等ほど有効に湿紙からのガムピッチ等の転移を阻止していないことが分かる。 また、追加実験においては、付与量を増やせばある程度湿紙からの異物の転移を小さくすることはできるが、側鎖型変性シリコーンオイルのレベルにまでは至らない。 更に、プレスロールの表面からオイルが湿紙に転移していることを示している。 【0099】従って、上記剥離実験の結果も考慮すると、無変性シリコーンオイルは、プレスロールに付与しても、該表面から容易に湿紙に転移してしまうため、該表面に離型・撥水性を有する安定したオイル層を形成するとは言えず、湿紙からのガムピッチ等の転移を必ずしも有効に阻止し得ないのである。 【0100】〔ドライヤロールへの付与実験〕 次に、抄紙機のドライヤロールに対して、上記の付与実験と同様に、表10のサンプルA〜Jより作成したエマルジョンを散布し、ドライヤロールの表面からドクターで掻き落とされた汚れ粕の発生量を比較する。 この実験では、エマルジョンをそのままの濃度で使用し、ドライヤロールの表面に対し1つの散布ノズルを左右に移動させながら10cm

    3 /分の割合で散布した。 【0101】〔実験結果〕サンプルA〜Iの側鎖型及び側鎖両末端型変性シリコーンオイルを使用した場合、散布開始後4時間の汚れ粕発生量は、いずれのサンプルにおいても10g程度であった。 一方、サンプルJの無変性シリコーンオイルでは、同じ時間後の汚れ粕発生量は104g(3回の実験の平均)であった。 また、汚れ粕は、A〜Jのいずれのサンプルにおいても、プレスロールの場合と同様に、主に湿紙由来のガムピッチ及び微細繊維であった。 【0102】〔評価〕この実験結果も、の実験と同様に、散布開始当初における側鎖型及び側鎖両末端型変性シリコーンオイルと無変性シリコーンオイルとの定着性の差を明確に示していると考えられる。 【0103】〔カンバスへの付与実験〕 この実験では、抄紙機のドライヤパートのカンバスに対し、表10のサンプルA〜Jより作成したエマルジョンを希釈して直接散布し、カンバスへの異物の転移の状態を比較する。 エマルジョンは、60℃の温水で150倍に希釈され、100mmピッチでノズルを40個並べたシャワーで、カンバスに対し計1.5リットル/分(エマルジョンベースで10cm

    3 /分)の割合で実質10


    日間散布した。 【0104】〔実験結果〕 a、散布ノズルの噴射口の詰まり上記の実験中、サンプルI(側鎖両末端型)を用いた場合、散布開始から実質5日目から、40個のノズル中1


    2個のノズルからの散布量に減少が観察され、その部分のカンバスに汚れが付着し始めた。 その後、実質7日目には8つのノズルが完全に閉塞したため、実験を中断した。 【0105】また、サンプルHにおいても、実質7日目から40個中10個のノズルで散布量が減少し、その部分のカンバスに汚れが付着し始め、実質9日目に5つのノズルが閉塞したため、実験を中断した。 サンプルI及びHにおいて、実験を中断後、スプレー装置を開けたところ、サンプルIでは40個中30前後、またサンプルHでは40個中25個前後のノズルの噴射口の内側にガム状のサンプルオイルの堆積が観察された。 このため、


    サンプルH及びIに関しては、この時点で実験を打ち切った。 【0106】因みに、サンプルA〜G及びJについては、実質10日間の実験中、ノズルからの散布量の減少は観察されなかった。 しかし、実験後、スプレー装置を開けたところ、サンプルEを用いた場合に、噴射口の内側に若干のオイルの塊が確認されたノズルが10個程度あった。 【0107】b、アウトロールへのオイルの積層サンプルH及びIに関して、実験を打ち切った時点で、


    アウトロールの表面を目視により確認したところ、どちらの場合も、アウトロールの表面にシリコーンオイル由来のガム状物質の積層(厚さ約0.2〜0.5mm)が観察された。 因みに、サンプルA〜Gに関しては実質1


    0日間の実験後、こうした積層は確認されず、サンプルJに関しては、後述するように湿紙由来の異物の堆積が観察された。 【0108】〔a及びbの評価〕サンプルHやIはともに側鎖両末端型変性シリコーンオイルであり、両末端にアルコキシ基(C

    n

    2n+1 O−)を有する(側鎖はアミノ基)。 一般に、末端にアルコキシ基を有する変性シリコーンオイルは、加熱等されてアルコキシ基が加水分解されて水酸基(−OH)に変わると、急激に反応性が高くなるとされる。 【0109】こののカンバスへの付与実験においては、サンプルを60℃の温水で希釈したためにそうした反応が生じた可能性もあり、側鎖両末端型変性シリコーンオイルを散布する場合は、あまりエマルジョンを加熱しない方がよいと考えられる。 因みに、アウトロール()やドライヤロール()に対する付与実験(これらの実験ではエマルジョンを加熱しない)において、実質10日間、サンプルH及びIより作成したエマルジョンやそれらの希釈液を散布する確認実験を行ったが、散布ノズルの詰まりは観察されなかった。 【0110】c、スティッキング現象の発生の実験中、サンプルD、E及びGにおいて、実質8日前後から湿紙がカンバスに引っ張られるいわゆるスティッキング現象が観察されることがあった。 サンプルA、


    B、C、F及びJにおいては、こうした現象は観察されなかった。 【0111】〔評価〕サンプルD、E及びGを散布したカンバスの表面には、後述するように、サンプルA、


    B、C及びFを散布した場合と同様に、僅かに微細繊維やガムピッチ等の異物が観察されるだけで、特に多量の転移が観察されるわけではない。 従って、これらの現象は湿紙から転移した異物によるものとは考えづらい。 【0112】先述した剥離実験では、粘度が高いほどアクリル板への定着性が良かったことから、粘度が高いサンプルD(1200cSt)、E(3500cSt)、


    G(1500cSt)では、オイルのカンバスの表面への過定着が生じており、カンバスに過定着したオイルが湿紙を引っ張ったものと考えられる。 従って、カンバスに付与する抄紙機用汚染防止剤に採用される側鎖型変性シリコーンとしては、サンプルA、B、C及びF、即ち粘度が800cSt以下の側鎖型変性シリコーンがより好ましい。 【0113】d、カンバスへの異物の転移等サンプルA〜G及びJのエマルジョンの希釈液を上記条件でカンバスに直接付与し、実質10日間の実験後、カンバスの表面への異物の転移の状態を目視により比較した。 また、カンバスの通気度も通気度測定装置により計測した。 更に、アウトロールへのオイルや異物の付着を目視により観察した。 【0114】サンプルA〜Gの側鎖型変性シリコーンオイルにおいては、カンバスの表面に、僅かに微細繊維やガムピッチ等の異物の転移が見られたが、通気度は付与開始前と殆ど変わらなかった。 また、アウトロールを観察すると、すべてのサンプルにおいて、アウトロールの表面が光沢を帯びた状態になっていたが、サンプルH及びIで観察されたようなシリコーンオイル由来のガム状物質の積層は観察されなかった。 【0115】サンプルJの無変性シリコーンオイルにおいては、微細繊維やカムピッチ等の異物の転移が見られ、通気度は付与開始前と比較して約20%減少していた。 また、アウトロールの全面に、オイルや微細繊維、


    ガムピッチ等が混ざり合ったものの堆積が、直径10m


    m程度、30〜50mm間隔で観察された。 【0116】〔評価〕側鎖型変性シリコーンオイルでは、カンバスの表面への異物の転移は少なく、少なくとも実質10日間ではカンバスの目詰まりも殆ど生じていない。 それに対し、無変性シリコーンオイルでは、実質10日間の付与で、既にカンバスの目詰まりが生じ始め、また、アウトロールへのオイルや異物の堆積が始まっていることが分かる。 【0117】従って、側鎖型変性シリコーンオイルを抄紙機用汚染防止剤に採用した場合、無変性シリコーンオイルと比較して、少なくとも、カンバスの清掃作業の回数が減らせる分、生産効率を向上させることができると考えられる。 【0118】〔実験のまとめ〕以上の評価を総合すると、少なくともエマルジョンやその希釈液(抄紙機用汚染防止剤)を加熱せずに付与できる場合(即ちプレスロールやドライヤロールへの付与の場合)、今回の実験に使用した側鎖型又は側鎖両末端型変性シリコーンオイルは、ロールへの定着性及び湿紙からの異物の転移阻止能力という、少なくとも2つの観点において、ジメチルポリシロキサン系オイル(無変性シリコーンオイル)より良好な結果を示した。 【0119】また、エマルジョンやその希釈液を加熱する必要がある場合(カンバスへの付与)においては、少なくとも両末端にアルコキシ基を有する側鎖両末端型変性シリコーンオイルは、アルコキシ基が加水分解されて急激に反応性が高くなり、散布ノズルを詰まらせたり、


    アウトロールの表面にガム状皮膜を形成してしまう可能性がある。 また、粘度が800cStより大きな側鎖型変性シリコーンオイルは、カンバスへの過定着を起こし、スティッキング現象が生じる場合がある。 【0120】しかし、少なくとも粘度が800cSt以下の側鎖型変性シリコーンオイルでは、ロールへの定着性及び湿紙からの異物の転移阻止能力の両方の点で、ジメチルポリシロキサン系オイル(無変性シリコーンオイル)より良好な結果を示すことが分かった。 【0121】また、散布ノズルにおけるエマルジョンの加熱温度や、カンバスへの付与量を適宜調節すること等により、上記の問題点を解消することができるならば、


    側鎖両末端型変性シリコーンオイルや粘度が800cS


    t以上の側鎖型変性シリコーンオイルにおいても、ジメチルポリシロキサン系オイルより有効なシリコーンオイルとして抄紙機用汚染防止剤に使用可能なことは言うまでもない。 【0122】以上、本発明を説明してきたが、本発明は実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、他の種々の変形例が可能であることは言うまでもない。 例えば、ガム状物質を形成するものでなければ、2種類以上の側鎖型変性シリコーンオイルや側鎖両末端型変性シリコーンを混合して用いることも可能であるし、無変性シリコーンオイルと混合して使用することも当然可能である。 【0123】また、散布方法は、上記実施例に採用した方法に限定されるべきではなく、使用される抄紙機の抄紙条件等に合わせて適宜選択される。 更に、側鎖型変性シリコーンオイルや側鎖両末端型変性シリコーンを他の方法、例えば、ロールの回転中にその一部を液槽内を通過するようにして付与する等の方法も当然採用可能である。 【0124】 【発明の効果】本発明によれば、プレスロール等に対する定着性が高いシリコーンオイルを主成分とする抄紙機用汚染防止剤を使用することにより、付与開始当初からロール等の表面にシリコーンオイルを効率良く定着させ、その表面に離型性・撥水性を呈させることが可能となる。 【0125】そのため、特に、運転開始当初の湿紙からのロール等への異物の転移を解消でき、それに起因する弊害を軽減することができる。 また、こうした抄紙機用汚染防止剤を使用する本発明の汚染防止方法により、プレスロールやドライヤロール、カンバスの異物による汚染が効果的に防止できる。

    【図面の簡単な説明】 【図1】図1は、抄紙機の全体構造を示す概略図である。 【図2】図2は、ジメチルポリシロキサン系オイルがメチル基が外向きに並べて皮膜を形成した状態を示す模式図である。 【図3】図3は、ロール等に側鎖置換型アミノ変性シリコーンオイルを付与した状態を示す模式図である。 【図4】図4は、図1に示した抄紙機のプレスパートの一部を具体的に示した図である。 【図5】図5は、シャワー方式によりプレスロールに抄紙機用汚染防止剤を付与する状態を示す図である。 【図6】図6は、図1に示した抄紙機のドライヤパートを拡大して示した図である。 【図7】図7は、アウトロールに抄紙機用汚染防止剤を散布する状態を示す図である。 【図8】図8は、剥離実験装置の主要部分を概略的に示した図である。 【図9】図9は、〔剥離実験その1〕の計測結果を示すグラフである。 【図10】図10は、〔剥離実験その2〕の計測結果を示すグラフである。 【符号の説明】 A…ワイヤパートB…プレスパートB1、B3、B5、B7…フェルトB2、B4、B6…プレスロールC…ドライヤパートC1、C2、C3、C4、C5、C6…ドライヤロールC7、C8…カンバスC9、C10…アウトロールD…ヤンキードライヤパートE…リールパートM…ロール等の表面S、S1、S2…散布ノズル又はシャワーW…湿紙

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