【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は紙の原料となるセルロース系繊維と、果実等の繊維分とを配合してなる易生分解性複合物と、これを用いて抄造した紙、板紙及びこれらの紙を加工成形した食器類、包装容器、並びに易生分解性複合物をモールド成型加工して得られる各種容器に関するものである。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来の紙、板紙は美粧性を付与する為に、印刷、或は染料等を使う例がほとんどだが、リンゴや、ニンジン等の搾汁滓を抄紙工程で使用する事により、その果実、野菜に含まれる色や、滓により形成される模様により、自動的に美粧性が付与される為、印刷や、染料等を使用しないですみ、環境、及び経済性に優れた製品が得られる。 【0003】また、各種の包装容器に用いられる紙、板紙は木材パルプや古紙を利用したものが大部分で、埋め立て処分した場合、比較的生分解が遅く、更に紙の硬さ強度を得る為に石油系樹脂を添加する事もあり、こうする事で一層生分解され難くなる。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記の難分解性で焼却時に高発熱量を発生し、環境破壊の一因ともなっているプラスチック系資材に代え、易生分解性を有し、木材パルプと同様に焼却処分が可能で、しかも通常の木材パルプ製品に比べて強度の大きい易生分解性複合物とこれを用いたそれ自体で美粧性を有する紙、紙製品を開発したものである。 【0005】即ち、本発明の易生分解性複合物は、セルロース系繊維と、果実類や野菜類の1種もしくは2種以上の繊維分とを配合してなるもので、この場合セルロース系繊維として木材パルプや古紙を用い、果実類や野菜類としてリンゴ、柑橘、ニンジン、トマト、キャベツ、 セロリ等を用いるが、特に、繊維分としては商業生産されている果実類や野菜類のジュースの生産工場から排出される搾汁滓を用いるのが有効である。 【0006】また本発明の他のものは、上記易生分解性複合物を用いて製造される単層紙、又は段ボール紙等の多層の板紙、並びに該易生分解性複合物を用いてモールド成型することにより得られる成型加工容器である。 さらに本発明の他のものはこれら紙もしくは板紙を成形加工することにより得られる食器類、紙器及び段ボールケース等の包装容器等の紙製品である。 そして、この際、 易生分解性複合物中の果実類や野菜類の繊維配合割合としては50重量%以下が良好である。 なお板紙の場合は少なくとも表層を該易生分解性複合物からなる紙とするのが有効である。 【0007】さらに本発明の紙もしくは板紙の製造方法は、該易生分解性複合物を用いて通常の抄造を行うものである。 【0008】 【発明の実施の形態】先ず本発明の易生分解性複合物を得る代表的な手順を説明する。 セルロース系繊維として木材パルプ、又は古紙を用い、果実類や野菜類の繊維として、皮や種子を取り除いたジュース搾汁滓を用いる。 この木材パルプ、又は古紙にジュース搾汁滓と水を加えて混合し、懸濁液状(スラリー状)の混合物を得る。 この混合物が、易生分解性複合物であって紙、板紙、及び成型加工容器の原料となる。 【0009】次に、易生分解性の紙、板紙を得るには、 図1に示すように、木材パルプ及び/又は古紙と果実や野菜の皮、種子を取り除いたジュース滓とを原料とし、 従来の抄紙機を用いて単層の紙、或いは多層の板紙を製造する。 そして板紙の場合は全層、或いは一部の特定の層を上記ジュース搾汁滓を混合した易生分解性混合物からなる紙層とし、他の層は通常のパルプ等からなる紙層とすることができる。 さらに、この様にして製造された紙、板紙等を加工原紙としてこのまま、または表面に印刷で模様付けをした後成形加工することにより、食器類、紙器箱、及び段ボールケース等の各種の包装容器等の紙製品を得る。 【0010】これら易生分解性複合物からなる紙は、通常のパルプからなる紙に比べて強度が大きく、またジュース搾汁滓の液分のもつ自然な色と繊維分により形成される模様とにより紙面には自ずと美粧性のある意匠が形成される。 従って多層の板紙においては、内部に易生分解性複合物の紙層を設けた場合は外観上は通常のパルプからなる板紙であってもその強度の高いものが得られる。 また易生分解性複合物を表層に使った場合は、印刷工程を行なわずに美粧性をもった板紙が得られる。 なおいずれの場合にもさらに印刷を施すことができる。 【0011】次にモールド成型加工容器を得るには、図2に示すように、精選した木材パルプ、又は古紙の懸濁液に、皮、種子を取り除いたジュース搾汁滓を混合したスラリー状の易生分解性複合物を得る。 濃度調製後、このスラリー状複合物を減圧状態のモールド成型機により適宜の型に成型し、成型品を金型より取り外してドライヤーで乾燥後、ホットプレスに掛け、最終成型容器とする。 【0012】本発明の易生分解性複合物中の果実類や野菜類の繊維の配合割合は50重量%以下とするのが良い。 この配合割合が50重量%を越えると製品とした時に寸法変化が大きすぎたり、成型加工中に割れが入る事がある。 なお、該繊維分の配合割合が増加する程得らえる紙やモールド成型品等の製品の硬さが増加し、強度も向上する。 これは該繊維分がセルロース繊維同士のバインダーの役割を果たしているからと考えられる。 【0013】 【実施例】以下本発明を実施例によりさらに説明する。 【0014】(実施例1)JIS P 8209パルプ試験用手すき紙調製方法に準じて以下のように手すき紙を作った。 即ち容量 3.4リットルの標準離解機に広葉樹パルプに種子等の異物を除去したリンゴジュース滓を乾燥重量で表1に示す割合で配合し、水を加えてよく混合離解する。 その後濃度0.15%に希釈し、手すき装置を使用して坪量150 g/m 2を目標に手すきをした後プレス脱水後乾燥して目的の手すき紙を得る。 そして得られた手すき紙をJIS P 8126に準じて圧縮強さ試験を行い、その結果を表1に示した。 またこれら手すき紙の生分解性を調べるため、それぞれの手すき紙を土中に埋め10日毎に観察して形状が崩れるまでの日数を求めて結果を表1に併記した。 なお比較のため従来の広葉樹パルプ 100%の手すき紙を上記と同様に作り、圧縮強さと生分解性について同様に調べてその結果を表1に示した。 【0015】 【表1】 【0016】表1より本発明によればほぼ同一の坪量であっても強度が大きい板紙が得られ、さらに生分解性にも優れていることが明らかである。 しかもジュース滓の配合割合が大きい程強度及び生分解性共に向上することが判る。 【0017】(実施例2)広葉樹パルプと異物を除去した野菜(ニンジン)ジュース滓を乾燥重量当り50部と50 部の割合になるように計量する。 これらを原料離解タンクに入れ水を加えて濃度 0.5%のスラリー状の混合物を得る。 これをモールダー槽に移し、モールダーを内部より減圧しながらモールダー上にトレイ状の容器を成形する。 次にモールダー上の成形品に対して内部より加圧して該モールダーから成形品を離脱させる。 これを乾燥機に入れ水分約35%まで乾燥した後ホットプレスで加圧乾燥して紙製の成形容器である紙製トレイを得た。 この紙製トレイは従来のパルプ 100%の場合と同じ工程で製造できるので製造コストは従来と同等であるが強度が大きいので従来の紙製トレイに比べて硬く腰のあるトレイであった。 【0018】(実施例3)広葉樹パルプとリンゴジュース滓を使用し、実施例2と同様にして濃度 2.5%のスラリー状の混合物を得る。 次に最終紙製品に耐水性を付与するためこの混合物にロジンサイズ剤を 0.5%添加して攪拌後硫酸バンドを 3.0%添加しさらに攪拌する。 その後濃度調整タンクに移し、以後実施例2と同様の操作を行って耐水性のある紙製トレイを得た。 このトレイもパルプ 100%の耐水性トレイに比べて強度が大きく硬いので使用勝手に優れている。 【0019】(実施例4)漂白した針葉樹パルプを使用し、従来の抄紙機で多層板紙を製造する際、表層の紙層を該針葉樹パルプと皮、種子を取り除いたリンゴジュース搾汁滓とを混合した易生分解性混合物からなる紙で製造した。 この時、搾汁滓に含まれる液分の自然な色とリンゴ繊維により形成される模様により、又その配合割合に応じ色と模様を変化させる事ができる為、印刷という工程を経ずに美粧性をもった紙を製造する事ができた。 この時、さらに用途により紙に耐油性、耐水性を附与する目的で耐油剤、サイズ剤を添加する。 そして製造した紙を材料として、皿、ボール、カップ等の食器類、紙器、及び段ボールケースを成形加工した。 この結果リンゴ繊維により自動的に独特の色と模様が形成されて特色ある包装容器を得た。 【0020】 【発明の効果】本発明の複合物は、果実や野菜の廃棄物であるジュース搾汁滓や、市場での商品価値の劣った果実や野菜も使用できるので、資源の有効利用が図れる利点を有する。 又、該複合物から得られる紙製品は、パルプ 100%の紙製品と比べてコスト的に有利で、さらに強度が大きいので農工業や流通の上で利用価値が大きい。 さらに廃棄する際にも生分解性が良好である為、環境保護の面でも顕著な効果がある。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の紙、板紙及びこれらを加工原紙として得られる紙製品の製造工程を示すフローシートである。 【図2】本発明のモールド成型加工容器の製造工程を示すフローシートである。 フロントページの続き (51)Int.Cl. 6識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 1/02 LAF |