【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、縫製作業の自動化機械に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、縫製作業はミシンを固定し、布地を往復するミシン針に連続して当てるように平面上で移動させるものから発展し、工業用として、布地を平面上に固定し、ミシンを移動する縫製専用ミシンが開発されてきた。 しかし、ふくらみのある洋服などに要求される多種多様の縫製作業には十分対応できなかった。 それで、布地を人体模型などに仮固定し、3次元空間で任意に位置決め動作ができ、かつ、ミシン針の姿勢を自由にとれるようにした産業用ロボットにミシンを取り付け、 人体模型などの周囲に自由に移動させて縫製する縫製作業ロボットが開発されてきた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところが、縫製作業のなかで縫い目ピッチを極小時間で動作・停止(この間にミシン針が上下する)を繰り返す、いわゆる寸動動作を行う必要があるが、従来の汎用ロボットでは機械的剛性が不足して振動が大きくなり、使用できないことがあった。 【0004】また、ミシン針と布地の間で滑り摩擦を起こし、ミシン針の温度が上がりミシン針が破損するという問題があった。 また、ロボットの機械的剛性を高めるために、機構構成部品の形状が拡大し、それに伴う質量の増加、ひいては駆動モータの容量アップが必要となり、ロボット全体の形状、質量が大きくなるという問題があった。 本発明は、ロボット自身の機械的剛性を高めることなく、保持されたミシンが寸動動作をできるようにすることを目的とするものである。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、縫製作業を行うミシンを手首部に固定して3次元空間で任意に位置決めし、かつ自由に姿勢制御する縫製作業ロボットにおいて、前記縫製作業ロボットの手首部と前記ミシンとの間に前記ミシンを単振動運動させる単振動装置を設けたものである。 【0006】また、前記単振動装置の円振動数ωを前記ミシンに設けたミシン針の上下移動の円振動数と一致させ、前記ミシンの縫い目ピッチをPとした時に、前記単振動装置の片振幅Aを、A=P/2πとし、前記単振動装置の単振動周期をTとした時、前記縫製作業ロボットの速度V Rを、V R =P/Tとして動作させるものである。 【0007】また、前記単振動装置に、前記ミシンの振動方向と反対方向に単振動する前記ミシンと同一の質量を備えたカウンタウエイトを設けたものである。 【0008】 【作用】縫製作業ロボットを一定速度V R (=P/T) で動作させ、その移動方向に片振幅A(=P/2π) で、かつミシン針の上下運動と一致した円振動数ωなる単振動装置をミシンと縫製ロボットの間に設けることにより、ミシン針部は布地に対して寸動動作をする。 ミシンが寸動動作をする時は、カウンタウエイトにより振動エネルギがバランスされ、振動が防止される。 【0009】 【実施例】本発明を図に示す実施例について説明する。 図1は本発明の実施例を示す斜視図で、3次元空間で任意に位置決めができ、かつ自由に姿勢制御できる多関節形の縫製作業ロボット1のアーム11の先端に手首部1 2が設けられ、手首部12の先端には単振動装置2の固定プレート21が固定されている。 固定プレート21に設けられたレール22上には単振動で互いに反対方向に往復振動し得る摺動部3、4が摺動し得るように設けられ、摺動部3にはミシン5が固定されている。 【0010】図2は単振動装置2の側断面図、図3は図2に示す−断面に沿う平面図で、固定プレート21 にはレール22と固定支持部23とが設けられ、レール22と固定支持部23に軸受24、25を介してクランクシャフト6が支持されている。 クランクシャフト6には、軸受24と25の間に互いに反対方向に偏心する偏心部61、62が設けられている。 【0011】偏心部61、62には軸受63、64が嵌合されている。 レール22上に摺動し得るように設けられた摺動部3、4には、摺動方向に直角の方向に偏心部61、62の偏心量eの2倍の長さだけ長い長円形の嵌合穴31、41が設けられ、それぞれ軸受63、64が摺動し得るように嵌合されている。 【0012】クランクシャフト6に固定されたプーリ6 5を介して、クランクシャフト6が駆動モータ66によって回転された時に、摺動部3、4は偏心部61、62 によって軸受63、64を介してレール22の長さ方向の互いに反対方向に移動する。 偏心部61、62のレール22に対し直角方向の動きは、長円の嵌合穴31、4 1がレール22に対して直角方向に2eだけ長いので、 嵌合穴31、41の両端に動くことによって吸収され、 レール22に対し直角方向には移動しないようにしてある。 【0013】摺動部3にはミシン針部51を設けたミシン5が固定され、摺動部4にはミシン5と同一の質量のカウンタウエイト7が固定されている。 したがって、単振動装置2の中のミシン5の単振動運動エネルギーはカウンタウエイト7によって相殺され、振動が防止される。 【0014】ここで、縫製作業ロボット1と単振動装置2に設けられたミシン5の移動距離および移動速度の関係を説明する。 ミシン5に設けられたミシン針部51の移動距離X Mは、次の(1)式で表される。 X M =V R t+Asinωt …(1) ただし、V Rは縫製作業ロボット1の移動速度 Aは単振動装置2の片振幅 ωはミシン針の上下移動の円振動数と一致した単振動装置2の円振動数 ここで、nピッチまでの縫い目の距離X Mnは、(1)式より、 X Mn =V R t n +Asinωt n 、 また、n+1ピッチまでの縫い目の距離X Mn+1は、 X Mn+1 =V R t n+1 +Asinωt n+1で表される。 【0015】したがって、縫い目の1ピッチ間隔Pは、 P=X Mn+1 −X Mn =V R (t n+1 −t n )+A(sinωt n+1 −sinωt n ) ここで、1ピッチ(1周期)の長さが等しいものとすると、 sinωt n+1 =sinωt nとなり、また1ピッチをT(=t n+1 −t n ) とすれば、 P=V R T となる。 したがって、 V R =P/T …(2) となる。 また、1振動の周期Tは、T=1/f=2π/ ω(fは振動数)…(3) であるから、ミシン針の上下移動の円振動数ωと、縫い目ピッチPにより、縫製作業ロボットの移動速度V Rが決定される。 【0016】一方、ミシン針の移動速度V Mは、(1) 式より、次の(4)式で表される。 V M =V R +Aωcosωt …(4) ここで、ミシン針が布地を下降、上昇する時、ミシンと布地は相対的に停止する。 すなわち、ミシン針部51の移動速度が布地に対して0になり、かつ負の速度にはならないという条件が必要である。 このことから、(4) 式より、 V R =Aω となり、A=V R /ω=V R T/2π=P/2π…(5) となる。 すなわり縫い目ピッチPが決まれば単振動装置2の片振幅Aが決定される。 【0017】縫い始めの条件として、t=0でV M =0 とすれば、ミシン針部51の速度V Mは、(2)、 (3)式より、次の(6)式で表される。 V M =P/T−(P/T)cos(2π/T)t …(6) また、ミシン針部51の移動距離X Mは、 X M =Pt/T−(P/2π)sin(2π/T)t …(7) となる。 図4はミシン針部51の速度V Mと移動距離X Mの時間的変化を示したものである。 【0018】以上のように、縫製作業ロボット1を一定速度V R (=P/T)で動作させ、その移動方向に片振幅A(=P/2π)で、かつミシン針の上下運動と一致した円振動数ωなる単振動装置をミシンと縫製ロボット1の間に設けることにより、ミシン針部は布地に対して(6)、(7)式で示される速度と移動距離を持った寸動動作をすることになる。 【0019】 【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、次に述べるような効果がある。 (1)剛性の極度に高いロボットを使用せず、現状のロボットに簡単な単振動装置を付加するだけでミシンと布地の間では滑り摩擦を起こさない寸動動作が可能となるため、故障が少なくコストの低減が図られる。 (2)寸動動作する部分がロボット全体ではなく、単振動装置の一部を含むミシンのみとなり、カウンタウエイトによりバランスを取っているので、単振動のための必要パワーが小さくて済み、結果としてランニングコストが減少する。 (3)単振動装置の振幅AはピッチPの1/2π(約1 /6)倍となるため、単振動装置の駆動モータは小さくてよく、単振動装置が小形になると共に、前記(2)に述べた効果が更に向上する。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施例を示す斜視図である。 【図2】本発明の実施例を示す側断面図である。 【図3】図2に示す−断面に沿う平断面図である。 【図3】ミシン針部の速度V Mと移動距離X Mの関係を示す説明図である。 【符号の説明】 1 縫製ロボット 12 手首部 2 単振動装置 21 固定プレート 22 レール 23 固定支持部 24、25 軸受 3、4 摺動部 31、41 嵌合穴 5 ミシン 51 ミシン針部 6 クランクシャフト 61、62 偏心部 63、64 軸受 65 プーリ 66 駆動モータ 7 カウンタウエイト ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】 【提出日】平成5年9月8日 【手続補正2】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】図面の簡単な説明 【補正方法】変更 【補正内容】 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施例を示す斜視図である。 【図2】本発明の実施例を示す側断面図である。 【図3】図2に示す−断面に沿う平断面図である。 【図4】ミシン針部の速度V Mと移動距離X Mの関係を示す説明図である。 【符号の説明】 1 縫製ロボット 12 手首部 2 単振動装置 21 固定プレート 22 レール 23 固定支持部 24、25 軸受 3、4 摺動部 31、41 嵌合穴 5 ミシン 51 ミシン針部 6 クランクシャフト 61、62 偏心部 63、64 軸受 65 プーリ 66 駆動モータ 7 カウンタウエイト |