ミシン

申请号 JP2017015702 申请日 2017-01-31 公开(公告)号 JP2018121838A 公开(公告)日 2018-08-09
申请人 蛇の目ミシン工業株式会社; 发明人 森本 周三; 真船 潤;
摘要 【課題】駆動機構の大型化を招くことなく、針先の軌跡を変化させることができるミシンを提供する。 【解決手段】針棒4は、針棒支持体によって、フレームに対して昇降自在に支持される。クランク2は、上軸1に固定され、上軸1と共に回転し、出 力 端が円運動を行う。クランクロッド3は、クランク2に対して回動自在に連結される。連結ロッド8は、クランクロッド3の中間部分に対して回動自在に連結され、針棒4に対して回動自在に連結される。連結ロッド8の長さと、連結ロッド8とクランクロッド3との連結 位置 からスライダ7までの長さが異なる。クランク2の円運動に伴い、連結ロッド8とクランクロッド3との連結位置が楕円形の軌跡を描く。 【選択図】図1
权利要求

針棒支持体によって、フレームに対して昇降自在に支持された針棒と、 前記フレームに対して平方向に支持され、モータによって回転駆動される上軸と、 前記上軸に固定され、出端が円運動を行うクランクと、 前記クランクの前記出力端に対して、入力端が回動自在に連結されたクランクロッドと、 前記クランクロッドの出力端に設けられ、前記フレームに対して昇降自在に支持されたスライダと、 前記クランクロッドにおける前記入力端と前記出力端との中間部分に対して入力端が回動自在に連結され、出力端が前記針棒に対して回動自在に連結された連結ロッドを備え、 前記連結ロッドの長さと、前記連結ロッドとクランクロッドとの連結位置からスライダまでの長さが異なることを特徴とするミシン。前記連結ロッドの長さが、前記連結ロッドとクランクロッドとの連結位置から前記スライダまでの長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載のミシン。前記連結ロッドの長さが、前記連結ロッドとクランクロッドとの連結位置から前記スライダまでの長さよりも短いことを特徴とする請求項1に記載のミシン。前記針棒がフレームに固定された前記針棒支持体によって昇降自在に支持されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のミシン。前記針棒支持体を右針落ち位置と左針落ち位置との間で移動させる振幅ロッドを有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のミシン。前記フレームに垂直方向に支軸が設けられ、前記針棒支持体が前記振幅ロッドにより前記支軸を中心として水平方向に回動することを特徴とする請求項5に記載のミシン。前記フレームに水平方向に支軸が設けられ、前記針棒支持体が前記振幅ロッドにより前記支軸を中心として垂直方向に回動することを特徴とする請求項5に記載のミシン。前記スライダを昇降自在に支持しているガイド棒が前記フレームに垂直に設けられた棒状部材であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のミシン。前記スライダを昇降自在に支持しているガイド棒が前記針棒であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のミシン。

说明书全文

本発明は、針棒の駆動機構に改良を施したミシンに関する。

ミシンでは、上糸と下糸とを交絡させて縫い目を形成する。上糸は針に挿通され、下糸はボビンに巻かれた状態で釜内部に収納されている。縫目を形成する方法(縫目形成サイクル)は、次の通りである。 (1)針が下降し被縫製物である布に貫通する。 (2)針が下死点から上昇することで、上糸に糸輪を形成する。 (3)回転している釜の突起(剣先)が糸輪を捕捉し下糸がボビンごと糸輪をくぐることで上糸と下糸が交絡する。 (4)針が上昇し布から引き抜かれ、布送り機構により布が所定量移動する。 以上(1)〜(4)の動作が繰り返されることで複数の縫い目が直線状に形成される。

ここで、糸輪の形成について説明する。図9に示すように、糸輪は、針の位置に応じて大きさが変化する。(a)は針の下死点位置を示し、(b)のように、布を貫いた針が、下死点からわずかに上昇した状態(δ1)では、上糸と針との間に隙間が発生せず、釜の剣先が糸輪に入り込むことができない。(c)のように、針が下死点からある程度上昇(δ2)すると糸輪が発生し、このタイミングで釜剣先が針先と交差すると、釜の剣先が糸輪を捕捉し、上糸と下糸が交絡する。(d)は、糸輪内に釜の剣先が入り込むための針の許容最大変位量δ3を示すものであり、(e)のように針が上昇しすぎる(δ4)と、糸輪が崩れ、釜の剣先が糸輪内に進入できない。すなわち、図9において、適正な縫目を形成する場合には針位置がδ2からδ3の間に針と釜剣先が交差する必要がある。なお、図6に示すように針位置δ2及びδ3に対応する上軸度範囲を適正糸輪範囲Wと呼ぶ。

上糸を通した針は、針棒に支持されている。針棒は、モータを駆動源とする昇降機構によって、針先が針板の上方から下方の間を移動するように駆動される。従来から知られている昇降機構は、例えば図8及び図10(a)に示すような、いわゆるスライダクランク機構である。これは上軸1の回転運動を、クランク2、クランクロッド3を経由して軸4a(つまり針6)の直線運動に変換する機構であり、上軸の角度と針先軌跡を線図で表すと、図10(c)のようになる。ここで、図10の線図(c)に示しているように、従来技術における針棒の運動軌跡は、機構的な特徴により正弦曲線を描かないことが知られている。そして、上軸1の角度が90°、270°の時点で針先位置は全ストローク(S6)の中点よりも上に位置することから、針6が上死点位置からS6中点に到達する時間に比べ、針6がS6中点から下死点位置に到達する時間の方が短い。その時間の差は針6の運動速度にも影響し、針棒の運動方向が下降から上昇に反転する位相近傍と上昇から下降に反転する位相における加速度は対称的な関係となっていない。つまり、下降から上昇に反転する位相近傍の加速度の方が大きく、一般的にこの上死点、下死点付近の加速度の違いはミシンの振動を大きくしてしまう原因の一つとして知られており、その影響は特に高速運転を行う直線専用ミシンにおいて顕著となる。

一方、針が上死点位置からS6中点に到達する時間に比べ、針がS6中点から下死点位置に到達する時間の方が短いことは、ジグザグミシンにおいても影響を与える。針棒全体を左右に揺動させることで左右の針落ち位置を変化させ縫製を行うことでジグザグ縫いや模様縫いを行うジグザグミシンは、釜の位置は変化せずに針棒が揺動する。そのため、針棒の揺動により針と釜の相対的な位置関係が変化してしまい、縫製に必要な針と釜の相互の動作タイミングに影響を与えてしまうことが知られている。この縫製に必要な動作タイミングは主に針の下死点付近であるため、下死点付近の加速度が大きいということは、針棒の揺動による針と釜の相対的な位置関係の変化が動作タイミングに対して与える影響が大きくなってしまうことを意味する。

これを解消するために、例えば図10(b)に示すように、針先軌跡を正弦曲線に近づけさせる(軌跡を太らせる)ため、クランクロッド3の長さを延長することが考えられる。図10は、(a)と(b)で針棒昇降ストロークが一致するように上軸1の位置を配置した場合における針先軌跡を(c)に描いたものである。ここで例えば、(a)の機構に対し、針昇降ストロークはそのままに、針先軌跡を後述するように本発明の第一実施形態(a)と同程度にする、つまり針先軌跡(a)を針先軌跡(b)にすることを想定する。図10に示すようなスライダクランク機構においては、それぞれクランク2の長さが針昇降ストロークに、クランクロッド3の長さが針先軌跡に影響を与えることが知られている。そして、針先軌跡を(a)から(b)のように、正弦曲線に近づける(太らせる)場合は、クランクロッド3の長さをより長くしなければならない。したがって、図10(b)の場合では、クランクロッド3の長さを(a)の構造に対し、2倍程度の長さにする必要があり、ミシンの極端な大型化(h2>>h1)をまねくことになる。

加えて、全てのミシンにおいて針の運動軌跡を単に正弦曲線に近づければ良い、ということでも無い。ミシンにおいては縫目形成後に次の縫目形成位置まで布を送るための布送り機構が設けられている。前述した縫目形成サイクルのように、針が上昇し布から引き抜かれた後、針板下部に設けられた図示していない布送り機構により所定量布が送られる。布に針が貫通している時に布が送られてしまうと針折れ等の原因になるため、布送りは針が布から引き抜かれた後に開始され、次の縫目形成のために針が布に刺さる前に完了されていなくてはならない。

したがって布送りの観点から見ると、針の運動軌跡を正弦曲線に近づける(太らせる)ということは、縫目形成サイクルにおける針が布を貫通している時間の割合を増やすことを意味し、結果、布送りに割り当てることができる時間が減少してしまうというデメリットを招く。この場合、特に布送りの移動ストロークを大きく縫製するミシンにおいては不利となる。したがって、布送りスロトークを大きく取りたい縫製方法やそのミシンにおいては、むしろ、従来技術よりもより縫目形成サイクルにおける針が布を貫通している時間の割合を減少させ、布送りに充てることができる時間を相対的に増加させたいという要望もある。

以上のことより、ミシンの種類や縫製方法によって、必要とされる針の運動軌跡の特性は様々であるが、従来技術においては機構的な制約により全てに対応しきれていない。

特公昭52−17784号公報

その課題を解決するため、例えば特許文献1のような針棒駆動機構が提案されている。特許文献1では、スライダクランク機構ではなく、内歯歯車と偏心カムによって上軸の回転運動を針棒の直線往復運動に変換している。内歯歯車と回転体によって針棒の軌跡は正弦曲線となり、加えてカム形状を変更させることによりさらに運動軌跡を変更することが可能な機構である。

しかし、スライダクランク機構と比較して軌跡を太らせることは可能であっても細らせることは困難であり、加えて偏心カムが新たな振動源となってしまうこと、さらには内歯歯車という特殊な部品を使用しなくてはならずミシンが高価となってしまう上に機構の大型化を招いてしまうため、前述した課題を解決したとは言い切れてはいない。

本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、ミシンの種類や縫製方法によって最適とされる針の運動軌跡を、駆動機構の大型化や大幅な設計変更を招くことなく設定させることができるミシンを提供することにある。

本発明に係るミシンは、次のような構成を有する。 (1)針棒支持体によって、フレームに対して昇降自在に支持された針棒。 (2)前記フレームに対して平方向に支持され、モータによって回転駆動される上軸。(3)前記上軸に固定され、出端が円運動を行うクランク。 (4)前記クランクの出力端に対して、入力端が回動自在に連結されたクランクロッド。(5)前記クランクロッドの出力端に設けられ、前記フレームに対して昇降自在に支持されたスライダ。 (6)前記クランクロッドにおける前記入力端と前記出力端との中間部分に対して入力端が回動自在に連結され、出力端が前記針棒に対して回動自在に連結された連結ロッド。 (7)前記連結ロッドの長さと、前記連結ロッドとクランクロッドとの連結位置からスライダまでの長さが異なる。

本発明において、次のような構成とすることが好ましい。 (1)前記連結ロッドの長さが、前記連結ロッドとクランクロッドとの連結位置から前記スライダまでの長さよりも長い。 (2)前記連結ロッドの長さが、前記連結ロッドとクランクロッドとの連結位置から前記スライダまでの長さよりも短い。 (3)前記針棒がフレームに固定された前記針棒支持体によって昇降自在に支持される。(4)前記針棒支持体を右針落ち位置と左針落ち位置との間で移動させる振幅ロッドを有する。 (5)前記フレームに垂直方向に支軸が設けられ、前記針棒支持体が前記振幅ロッドにより前記支軸を中心として水平方向に回動する。 (6)前記フレームに水平方向に支軸が設けられ、前記針棒支持体が前記振幅ロッドにより前記支軸を中心として垂直方向に回動する。 (7)前記スライダを昇降自在に支持しているガイド棒が前記フレームに垂直に設けられた棒状部材である。 (8)前記スライダを昇降自在に支持しているガイド棒が前記針棒である。

本発明によれば、従来技術に対し針先軌跡をより正弦曲線に近づけることができる。その結果、より振動を抑えたミシンやより幅広いジグザグ縫いが可能なミシンを提供することができる。また、本発明によれば、従来技術に対し、針先の軌跡を下死点に近い方が急角度の曲線を描き、上死点に近付くと緩やかな角度の曲線を描くことができる。その結果、送り歯の移動ストロークを大きくとることができるミシンを提供することが可能となる。なおかつ、それら機構を従来技術とほぼ同じ機構スペースで提供することができる。

第1実施形態のミシンの駆動機構を骨格的に示す斜視図である。

第1実施形態におけるクランク、クランクロッド、連結ロッド及び針の動作を示す図で、(a)は連結ロッドが長い場合、(b)は連結ロッドが短い場合、(c)は針先軌跡を示す図である。

図2(a)のクランクロッドと連結ロッドの動作を別々に記載した図で、(a)はクランクロッドの動作、(b)は連結ロッド及び針棒と針の動作、(c)はクランクロッドに設けたスライダと針先軌跡を示す図である。

第1実施形態において、連結ロッドの長さを短くした場合において、(a)は針先軌跡、(b)は送り歯の軌跡を示す図である。

第2実施形態のミシンの駆動機構を骨格的に示す斜視図である。

第2実施形態おいて、連結ロッドの長さを長くした場合における針先軌跡を、上軸角度180°付近において拡大した図である。

第3実施形態のミシンの駆動機構を骨格的に示す斜視図である。

従来技術のミシンの駆動機構を骨格的に示す斜視図である。

下死点位置からの針上昇量と糸輪の関係を示す図である。

従来技術における針先軌跡及び、従来技術において針先軌跡を太らせる構成例を示す図である。

本発明の実施形態について説明する。本実施形態において、縦方向または前後方向とは布の送り方向(図中Y方向)、横方向または左右方向とは布の送り方向と直交する方向(図中X方向)、垂直方向または上下方向とは布に対して針が進入する方向(図中Z方向)を言う。また、図8に示す従来技術と同一の部材については、同一の符号を付し、説明は省略する。

[1.第1実施形態] (1)概要説明 図1は、本実施形態のミシンの駆動機構を示す斜視図である。本実施形態のミシンは、図示しないフレームに支持された針板を備え、その針板上に載せた布を縦方向(図中Y方向)に移動させることで、縫製作業を行う。針板の上方には、針板表面と平行に、且つ横方向に伸びる上軸1が設けられる。上軸1は、その入力側の端部に固定されたプーリー11及びベルト12を介して、モータ10によって、図中矢印方向に回転する。上軸1の出力側の端部には、クランク2が固定される。

クランク2の出力端には、上軸1と平行に伸びる軸2a及び軸穴3aを介して、クランクロッド3の入力端が回動自在に連結される。クランクロッド3の出力端には、その出力端を上下方向にガイドするスライダ7が連結される。スライダ7には、水平方向に伸びる軸穴7aが設けられ、この軸穴7aにクランクロッド3出力端に固定された軸3bが回動自在に挿入される。スライダ7には、垂直方向に伸びるガイド穴7bが設けられ、このガイド穴7b内に垂直方向に伸びるガイド棒7cがスライド自在に挿入される。ガイド棒7cは、図示しないミシンのフレーム部分に固定され、クランクロッド3の移動時に、スライダ7はクランクロッド3の出力端と共にガイド棒7cに沿って昇降する。

クランクロッド3の中間部には連結ロッド8の入力端が連結される。すなわち、クランクロッド3の中間部には水平方向に伸びる軸3cが固定され、この軸3cに連結ロッド8の入力端(図1では下端)に設けられた軸穴8aが回動自在に嵌め込まれる。連結ロッド8の出力端(図1では上端)には軸穴8bが設けられ、この軸穴8b内に針棒4に水平方向に固定された軸4aが回動自在に挿入される。

針6の下方には、剣先9aを有する釜9が設けられる。釜9は、垂直方向に伸びる軸9bを中心として、水平方向に回転する。釜9の駆動源としては、モータ10によって回転する上軸1の回転力をプーリー13及びベルト14を介して下軸15に伝達し、この下軸15の出力端に設けたウォームギア機構16を使用する。

(2)クランクロッド3と連結ロッド8の関係 図2は、第1実施形態において、(a)従来技術の針先軌跡に対して軌跡を太らせる場合の構成モデル図、(b)従来技術の針先軌跡に対して軌跡を細らせる場合の構成モデル図を示し、それら構成により描かれる軌跡を(c)に従来技術の針先軌跡と共に示したものである。ただし、針6を固定し軸4aの動きを針6に伝えるための針棒4は図の都合上省略している。

本実施形態では、クランク2とクランクロッド3の長さ、及び針6のストローク、すなわち、上死点と下死点の距離は従来技術と等しいものとする。そして、連結ロッド8の長さ、及びクランクロッド3に対する連結ロッド8の連結点である軸3cの位置を一定にした状態で、連結ロッド8の長さを変えることにより、針棒4との連結点である軸4aの位置を決定する。後述するように、連結ロッド8の長さは針先軌跡に影響を与えるため、図2(c)の点線で示した従来技術の針先軌跡に対し、太らせた軌跡、もしくは細らせた軌跡を持つ針棒運動機構を提供することが可能となる。

(2−1)軌跡が従来技術と等しい場合…図2(c)の点線部分 図2(c)に点線で記載した軌跡は、図8に示したクランク2とクランクロッド3の2部材から成る従来技術の針先軌跡と等しい。すなわち、本実施形態を表す図2の構成でいえば、スライダ7を図示しない針棒4と連結させスライダ7の動きを針6に伝えたと仮定すれば、従来技術と同様の針先軌跡を得ることができる。

しかし、図2に示すように、図示しない針棒4は、連結ロッド8の出力端である軸4aによって駆動される。この場合、連結ロッド8の入力端は、クランクロッド3の中間部分に設けた軸3cに連結されており、しかも、クランクロッド3の入力端は垂直に移動するスライダ7に連結されている。そのため、円運動をする軸2aに連結された連結ロッド8は、スライダ7に近い部分ほど垂直に近い上下運動を行い、クランクロッド3に近い部分ほど真円に近い円運動を行う。従って、クランクロッド3の中間部分に設けられた軸3c及びそれに連結された連結ロッド8の入力端である軸3cは、図2(a)に示すような縦長の楕円形の軌跡を描く。

この場合、上軸1の回転角度を基準として、真円形を描く軸2aの上死点から下死点までのストロークと、楕円形を描く軸3cの上死点から下死点までのストロークは一致している。具体的には、クランク2の長さをLa、クランクロッド3の長さをLb、クランクロッド3の出力端からの軸3cまでの長さをLcとすると、楕円の形状は、長径が2×Laである。

ここで仮に、連結ロッド8の長さLdをクランクロッド3の出力端からの軸3cまでの長さLcと等しくすると、クランクロッド3の先端に位置するスライダ7、すなわち、クランクロッド3の出力端の軌跡は、図2(c)の点線に示すように、前述した従来技術における針先軌跡と同一となる。その理由は、Lc=Ldであると、軸3cが楕円形の軌道を移動する間、軸4aとスライダ7とは、両者の間隔は変化しても、軸3cを頂点とする2等辺三角形状を保つため、軸4aとスライダ7は軸3cを挟んで同じタイミングで昇降する。

スライダ7の軌跡は、連結ロッド8を持たない従来技術の針棒4のそれと等しいことから、「連結ロッド8の長さLd=スライダ7からの軸3cまでの長さLc」の場合、針先軌跡は従来技術と同じ軌跡を描くことになる。

(2−2)軌跡を太らせる場合…図2(a)、図3 本実施形態において、図2(a)の針先軌跡を太らせる場合について、図3を用いて説明する。図3(a)はクランク2とクランクロッド3の動作を、図3(b)は連結ロッド8と針棒4及び針6の動作を、図3(c)は針先軌跡を示す。図3において、S7は、スライダ7の上死点から下死点までのストローク、S4は軸4aの上死点から下死点までのストロークである。両者のストローク量は同じであり、比較しやすいよう両者のストロークが重なるような位置関係で(a)と(b)が描かれている。

軌跡を太らせる場合、軸3cに連結する連結ロッド8の長さLdを、クランクロッド3の出力端であるスライド7からの軸3cまでの長さLcをよりも大きくする。すなわち、図2(a)のように、Ld>Lcとする。すると、図3(a)のように上軸1の回転によりクランクロッド3が角度α回動した場合に、スライダ7は上死点からS7α下降し、針6(=軸4a)は上死点からS6α下降する。スライダ7の下降量S7αと針6(=軸4a)の下降量S6αを比較すると、S6α>S7αであるから、針先軌跡は、スライダ7の軌跡よりも下側、すなわち、スライダ7よりも太った軌跡を描く。上軸1が90°回動するまでの間は、軸4aの下降量S4aとスライダ7の下降量S7の差が増加し、上軸1の回動角が90°を越えると、角度当たりのスライダ7の移動量が大きくなることから、軸4aの下降量S4aとスライダ7の下降量S7の差が減少し、上軸1が180°回動した下死点では、両者の軌跡は一致する。

上軸1が180°を越えて270°まで回動する間は、角度当たりのスライダ7の移動量が大きいことから、同じ回動角では、下死点からスライダ7までの上昇量が、下死点から針6(=軸4a)までの上昇量よりも大きくなる。その結果、針先軌跡はスライダ7の軌跡よりも下側、すなわち、スライダ7よりも太った軌跡を描く。上軸1の回動角が270°を越えると、角度当たりのスライダ7の移動量が小さくなることから、針6(=軸4a)の上昇量とスライダ7の上昇量の差が減少し、上軸1が360°回動した上死点では、両者の軌跡は一致する。

このような構成を有する本実施形態では、上軸1からクランクロッド3の下死点までの距離を変更することなく、針先軌跡を太らせることができる。その結果、クランクロッド3の長尺化による機構の大型化を招くことなく、針先軌跡を正弦曲線に近づけることが可能となり、針の上死点付近の加速度と下死点付近の加速度の不均衡を解消することができる。従って縫目形成が確実でありなおかつ高速運転を行っても発生振動が少ないミシンを提供することができる。

(2−3)軌跡を細らせる場合…図2(b)、図4 針先軌跡を細らせる場合は、図2(b)及び図4(c)に示すように、軸3cに連結する連結ロッド8の長さLdを、クランクロッド3の出力端であるスライド7からの軸3cまでの長さLcをよりも小さくする。すなわち、Lc

一方、このとき送り歯の動作可能範囲は、前述したように針先が布から抜け出て針板上面よりも上に位置する範囲である。したがって図4に示すように、従来技術の送り歯の布送り可能範囲はθFtr(1)+θFtr(2)であるのに対して、本実施形態の送り歯の布送り可能範囲はθFin(1)+θFin(2)となり、針先の上死点から下死点までのストロークと、上軸1の角速度は同一のままで、送り歯の動作可能範囲を広くすることができる。その結果、布の移動量を大きくしたり、布の移動時間を長くすることで、その間に種々の作業を行い得るミシンを提供することができる。

[2.第2実施形態] 第2実施形態を図5及び図6に従って説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同一の部材については、同一の符号を付し、説明は省略する。第2実施形態は、ジグザグミシンに本発明を適用したもので、特に、図2(a)及び図3に示したように、連結ロッド8の長さLdをクランクロッド3の出力端であるスライド7からの軸3cまでの長さLcをよりも大きくして(Ld>Lc)、針先の下死点近傍の軌跡を太らせたものである。

図5に示すように、ミシンのフレームに設けられた軸受20,21に、針棒4と平行に伸びる上下の支軸22,23が回動可能に支持される。支軸22,23には針棒支持体24が支軸22,23を中心として回動自在に支持される。針棒支持体24は、前後方向に伸びる上アーム24aと下アーム24b、及び針棒4と平行に伸びる縦アーム24cの3部材を枠状に連結して構成される。上アーム24aの中間部分に支軸22の下端が固定され、下アーム24bの中間部分に支軸23の上端が固定される。

上アーム24aと下アーム24bにおける縦アーム24cとは反対側の端部にはそれぞれ昇降ガイド5が設けられる。この昇降ガイド5は、第1実施形態と同様に、針棒4が垂直方向に移動する際の案内部材となるものであり、しかも、針棒支持体24が回動する際に、上アーム24aと下アーム24bが針棒4に対して回動することを許容する。

縦アーム24cの上端には軸25が設けられ、この軸25に振幅ロッド26の出力端が回動自在に連結される。振幅ロッド26の入力端は、揺動用のモータ28によって回転する揺動リンク27の先端に連結される。

このような構成を有する第2実施形態においては、揺動用のモータ28によって揺動リンク27が左右方向(図中X方向)に移動すると、針棒支持体24が支軸22,23を中心として回動する。針棒支持体24が回動すると、上アーム24aと下アーム24bの出力端に支持された針棒4が左右方向(図中X方向)に移動する。その結果、上軸1の回転により針棒4が昇降する場合、針棒支持体24によって揺動させられた針棒4の位置に応じて、針落ち位置が左右に異なる。

図6は、下死点付近を拡大した第2実施形態における針先軌跡(針先の下死点近傍の軌跡を太らせた軌跡)と、釜及び針と釜9の剣先9aが交差する針釜交差角度の関係を示す概要図である。図5の通り、第2実施形態のミシンでは、釜9の位置は固定とし、針6を左右に移動させることで、右針落ち位置と左針落ち位置を異ならせている。図6では、針が中央位置にある場合(中央針落ち)及び針が左位置にある場合(左針落ち)の針と釜の相対的な位置関係について示している。

図9で説明したように、糸輪内に剣先が確実に進入するためには、針と釜が交差するタイミング、すなわち針釜交差角度における針変位量が、δ2以上δ3以内の範囲に収まっている必要がある。ここで従来技術の針先軌跡を用いてジグザグ機構により針落ち位置が変わった場合の針変位量への影響を説明する。針6が中央位置に位置しているとした場合、針釜交差角度における針変位量をδ5とする。ここで揺動用のモータ28及び振幅ロッド26の動作により針6が左針落ち位置に移動したとする。すると、釜位置は変わらず、針位置だけが変化したことにより、針先軌跡も釜に対して平行移動する形となる。したがって、その状態で針釜交差角度を迎えると、相対位置が変化したことにより変位量も変化し、δ6となる。δ6>δ5であり、これ以上針変位量が大きくなると許容最大針変位量を(δ3)を超えてしまう。

一方、図示していないが、中央針落ちに対し、針を右に異動させる(右針落ち)場合、同様の原因により針変位量は減少してしまう。したがって、針の揺動幅(ジグザグ振幅量)は必要最小針変位量(δ2)以上、許容最大針変位量を(δ3)以下、すなわち適正糸輪範囲Wに応じた幅となる。

第2実施形態は従来技術に比較して下死点付近における針先軌跡の傾斜が緩やかであり、上軸角度変化量に対する針変位量の変化量が少ない。したがって、必要最小針変位量(δ2)以上、許容最大針変位量を(δ3)以下を満たす上軸角度範囲、すわなち適正糸輪範囲が従来技術より拡大されることになる。よって、ジグザグ振幅量が制限される適正糸輪範囲Wが、本実施形態においては拡大(W2)されるため、従来技術と比較し、より幅広いジグザグ縫いが可能なジグザグミシンを提供することができる。

[3.第3実施形態] 本発明の第3実施形態を図7により説明する。第3実施形態は、第2実施形態と同様に、ジグザクミシンに本発明を適用したものである。第2実施形態との相違は、針棒4を揺動枠によって左右に回動させる代わりに、針棒支持体24を構成する縦フレーム24cの上端に設けた軸受30を、ミシンのフレームに水平に固定した支軸31に回動自在に支持させることで、針6の先端を振り子状に移動させる点である。

針棒支持体24の上アーム24aの先端には針棒4の上部を案内する昇降ガイド5が設けられ、下アーム24bの先端にはブッシュ32が設けられ、このブッシュ32の内側が針棒4の下部を案内する昇降ガイド5になっている。ブッシュ32の外周には、案内リンク33の一端に設けられた軸受34が回動自在に嵌め込まれる。案内リンク33の他端には軸受35が設けられ、この軸受35がミシンのフレームに固定された支軸36に回動自在に嵌め込まれている。縦フレーム24cの中間部分には軸25が固定され、この軸25に振幅ロッド26の出力端に設けた軸受26aが回動自在に連結されている。

第3実施形態においても、針棒4とクランクロッド3とは連結ロッド8を介して連結される。ただし、針棒4の振り子運動を吸収するため、連結ロッド8と針棒4の軸4aとの連結部分の構成が第2実施形態と異なる。すなわち、連結ロッド8の出力側は二又に分岐しており、二又部分の先端に一対の軸受8cが設けられる。これらの軸受8cには案内軸8dが回動自在に支持され、この案内軸8dに設けられた軸穴8bに針棒の軸4aがスライド自在に挿入される。

このような構成を有する第3実施形態においては、振幅ロッド26の往復動により縦フレーム24cが左右に移動すると、針棒支持体24は支軸31を中心とした振り子運動を行い、その際、針棒支持体24の下部は案内リンク33に案内されて円弧運動を行う。その結果、針棒支持体24に支持された針棒4も左右に回動し、針棒4先端の針6が右針落ち位置と左針落ち位置において昇降する。

このような構成を有する第3実施形態においても、連結ロッド8を使用して針棒4を昇降させることにより、針6の軌跡を太らせることが可能となる。その結果、左右の針落ち位置における針6の変位量の変化量を少なくすることができ、従来技術と比較し、より幅広いジグザグ縫いが可能なジグザグミシンを提供することができる。

[4.他の実施形態] 以上のように本発明の実施形態を説明したが、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば、下記のような他の実施形態も包含する。

(1)本発明におけるクランク2の長さLa、クランクロッド3の長さLb、クランクロッド3の出力端から軸3cまでの長さLc、及び連結ロッド8の長さLdは、図示の寸法関係に限定されるものではない。各部材の寸法比率を適宜変更することで、2部材によって針を昇降させる従来技術に比較して、針先の軌跡を太らせたり、細らせることが可能になる。

(2)針先の駆動機構を大型化することなく、軌跡の変動量を大きくするには、クランクロッド3の出力端から軸3cまでの長さLcに対して、クランクロッド3の長さLbを1/2〜1/4とすることが望ましい。1/2より大きいと軸3cの軌跡が真円に近くなり、連結ロッド8の長さLdが大きくなって機構の大型化を招き、1/4より小さいと軸31の軌跡が直線状となり、2部材によって針を昇降させる従来技術と有意差がなくなる。

(3)クランクロッド3の出力端から軸3cまでの長さLcと連結ロッド8の長さLdは、軌跡を太らせる場合と細らせる場合に応じて適宜変更することができる。その場合、LcとLdに適度な寸法差を設けることが必要であり、LcとLdの寸法差が少ないと、従来技術の針の軌跡に対して有意差が生じない。連結ロッド8の長さLdを軸3cが描く楕円形の短径の1/2よりも短くすると、軸3cが楕円軌道を描くことができなくなる。一方、連結ロッド8の長さLdを長くすると機構の大型化を招くことから、連結ロッド8の上死点がクランク2の上死点を越えないことが望ましい。

(4)図示の実施形態では、上軸1と釜9を同期させるために、同一のモータより駆動力を得たが、両者を別のモータによって駆動しても良い。第2実施形態及び第3実施形態のジグザクミシンにおいて、針を左右の針落ち位置に移動させる場合も、単一のモータで駆動しても、複数のモータで駆動しても良い。

(5)図示の実施形態では、スライダ7を昇降自在に支持しているガイド棒7cがフレームに垂直に設けられた棒状部材であるとしているが、特に限定するものではない。例えば、針棒4にスライダ7のガイド軸7bをスライド自在に挿入することで、ガイド軸7cの機能を針棒4に持たせることができ、その場合ガイド軸7cを不要とすることも可能である。 (6)実施形態は全て釜が水平方向に回転するいわゆる水平全回転釜方式に基づいて説明しているが、特に限定するものではない。その他の方式、例えば垂直半回転方式や垂直全回転方式を採用するミシンにおいても本発明は適用可能である。

1…上軸 2…クランク 3…クランクロッド 3a…軸穴 3c…軸 4…針棒 4a…軸 5…昇降ガイド 6…針 7…スライダ 8…連結ロッド 9…釜 9a…剣先 10…モータ 11,13…プーリー 12,14…ベルト 15…下軸 16…ウォームギア機構 24…針棒支持体 26…振幅ロッド 28…モータ

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