刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、及び刺繍データ作成プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

申请号 JP2014034766 申请日 2014-02-26 公开(公告)号 JP2015159827A 公开(公告)日 2015-09-07
申请人 ブラザー工業株式会社; 发明人 井平 裕己; 片野 智健; 山田 健司;
摘要 【課題】縫製対象物に形成した穴の中に刺繍模様を形成できる刺繍データを作成可能な刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、及び刺繍データ作成プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。 【解決手段】ミシンは切断データと刺繍データを取得する(S1,S2)。切断データは布地に穴を形成する為のデータである。刺繍データは刺繍模様を縫製する為のデータである。ミシンは、刺繍データに基づき、刺繍模様を包含する最小の多 角 形を算出し(S3)、切断データに対応する穴形状と多角形をRAMに展開する(S4,S6)。ミシンは多角形の各頂点に橋渡しの線分を作成し、橋渡しデータを作成する(S7)。橋渡しの線分は多角形の頂点と円の周縁部とを繋げる。ミシンは橋渡しデータに基づき、刺繍模様の周囲に橋渡しを縫製することで、刺繍模様を穴の中に配置できる。 【選択図】図5
权利要求

縫製対象物に穴を形成する為の穴データを取得する穴データ取得手段と、 前記穴の中に配置する刺繍模様であって、当該刺繍模様をミシンで縫製する為の刺繍データを取得する刺繍データ取得手段と、 前記刺繍データ取得手段によって取得された前記刺繍データに基づき、前記刺繍模様を包含する最小の多形を算出する多角形算出手段と、 前記多角形算出手段によって算出された前記多角形の複数の頂点部と、前記穴データ取得手段によって取得された前記穴データによって形成する前記穴の周縁部とを繋げる線分を作成する線分作成手段と、 前記線分作成手段によって作成された前記線分に基づき、前記刺繍模様と前記穴の周縁部との橋渡しを行う橋渡しデータを作成する橋渡しデータ作成手段と を備えたことを特徴とする刺繍データ作成装置。前記線分作成手段は、 前記多角形の隣り合う2つの辺の成す角度が、第1閾値以下の場合に、前記2つの辺の成す角度を2等分する前記線分を作成することを特徴とする請求項1に記載の刺繍データ作成装置。前記線分作成手段は、 前記多角形の隣り合う2つの辺の長さの合計値が、第2閾値以上の場合に、前記2つの辺の成す角度を2等分する前記線分を作成することを特徴とする請求項1に記載の刺繍データ作成装置。前記線分作成手段は、少なくとも3つの前記線分を作成することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の刺繍データ作成装置。前記線分作成手段によって作成された前記線分に基づき、前記刺繍模様の縫製に先立って行う下打ち縫いであって、後から縫製される前記刺繍模様に覆われる下打ち縫いのデータを作成する下打ち縫いデータ作成手段を備えることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の刺繍データ作成装置。前記線分作成手段によって作成された複数の線分の夫々について、注目線分との成す角度が180°に最も近い他の線分を特定する第1特定手段を備え、 前記下打ち縫いデータ作成手段は、 前記注目線分の前記刺繍模様側の端点と、前記第1特定手段によって特定された前記他の線分の前記刺繍模様側の端点とを繋ぐ方向に、前記下打ち縫いのデータを作成することを特徴とする請求項5に記載の刺繍データ作成装置。前記線分作成手段によって作成された複数の線分の夫々について、注目線分の延長線と前記多角形の交点に対して、前記複数の頂点の中で最も距離が短い頂点を特定する第2特定手段を備え、 前記下打ち縫いデータ作成手段は、 前記注目線分の前記刺繍模様側の端点と、前記第2特定手段によって特定された前記頂点とを繋ぐ方向に、前記下打ち縫いのデータを作成することを特徴とする請求項5に記載の刺繍データ作成装置。前記線分作成手段によって作成された複数の線分の夫々について、所定の基準線からの成す角度を算出し、夫々の角度から平均角度を算出する平均角度算出手段を備え、 前記下打ち縫いデータ作成手段は、 前記平均角度算出手段によって算出された前記平均角度を成す線分が延びる方向に、前記下打ち縫いのデータを作成することを特徴とする請求項5に記載の刺繍データ作成装置。前記穴データ取得手段は、 先端に刃を備えた切断針を装着したミシンで前記穴を形成する為の切断データか、又はユーザが手動で前記縫製対象物に前記穴を開ける為の切取線を示す縫目を形成する縫目データを、前記穴データとして取得することを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の刺繍データ作成装置。請求項1から9の何れかに記載の刺繍データ作成装置の各処理手段としてコンピュータを機能させる為の刺繍データ作成プログラム。請求項10に記載の刺繍データ作成プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

说明书全文

本発明は、刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、及び刺繍データ作成プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。

従来、縫針の代わりに切断針を装着したミシンが知られている。切断針は、先鋭状の刃を先端に備えた棒状の部材である。ミシンは、縫製時と同様の動作を行うことによって切断針を上下動させ、加工布に対して切断針を繰り返し突き刺して加工布の経糸(縦糸)及び緯糸(横糸)を切断する。同時に、ミシンは、加工布を保持した刺繍枠を移動させる。これによってミシンは、指定された形状の穴や切れ目を加工布に形成させることができる。例えば、多針ミシンの複数の針棒にカッター刃(切断針に相当)を装着して、加工布に穴開けを行った後に、穴の周縁にかがり縫いを行うことができる模様作成方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この模様作成方法では、加工布に空ける穴の形状を変えると共に、その穴の周縁をかがり縫いで仕上げることで、生地に綺麗な模様穴を施すことができる。

特開平9−217261号公報

特許文献1に記載の模様作成方法では、加工布に形成した穴の周縁を綺麗に仕上げることはできるが、その穴の中に刺繍模様を形成させることができなかった。

本発明は、縫製対象物に形成した穴の中に刺繍模様を形成できる刺繍データを作成可能な刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、及び刺繍データ作成プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することを目的とする。

本発明の第1態様に係る刺繍データ作成装置は、縫製対象物に穴を形成する為の穴データを取得する穴データ取得手段と、前記穴の中に配置する刺繍模様であって、当該刺繍模様をミシンで縫製する為の刺繍データを取得する刺繍データ取得手段と、前記刺繍データ取得手段によって取得された前記刺繍データに基づき、前記刺繍模様を包含する最小の多形を算出する多角形算出手段と、前記多角形算出手段によって算出された前記多角形の複数の頂点部と、前記穴データ取得手段によって取得された前記穴データによって形成する前記穴の周縁部とを繋げる線分を作成する線分作成手段と、前記線分作成手段によって作成された前記線分に基づき、前記刺繍模様と前記穴の周縁部との橋渡しを行う橋渡しデータを作成する橋渡しデータ作成手段とを備えたことを特徴とする。

刺繍データ作成装置は、橋渡しデータを作成する。橋渡しデータとは、加工布に形成される穴の周縁部と、その穴の中に配置される刺繍模様の角部との橋渡しを行う線分のデータである。橋渡しデータに従って縫製が実行された場合、刺繍模様の角部と穴の周縁部との間を糸で繋ぐことができる。従って、橋渡しの糸の張により、刺繍模様の角部分は折れ曲がらないので、穴の中に配置された刺繍模様の形状を良好に維持できる橋渡しデータを作成できる。さらに、刺繍模様の角部から穴の周縁部に向かって橋渡しの縫目が形成されるので、刺繍模様に縫目が被らない。従って、刺繍模様本来のデザイン性を強調できる。また、刺繍模様の角部と穴の周縁部とを糸で繋ぐだけであるので、糸の消費量を節約できる。

本発明の第2態様に係る刺繍データ作成プログラムは、第1態様に係る刺繍データ作成装置の各処理手段としてコンピュータを機能させる為のプログラムである。従って、刺繍データ作成プログラムがコンピュータに実行されることにより、第1態様に係る刺繍データ作成装置と同様の効果を奏することができる。

本発明の第3態様に係るコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、第2態様に係る刺繍データ作成プログラムを記憶する。従って、記憶媒体に記憶された刺繍データ作成プログラムがコンピュータに実行されることにより、第1態様に係る刺繍データ作成装置と同様の効果を奏することができる。

ミシン1の斜視図である。

針棒31に固定された切断針52の正面図である。

刺繍枠84を保持する刺繍枠移動機構11の平面図である。

ミシン1の電気的構成を示すブロックである。

刺繍データ生成処理のフローチャートである。

円形の穴80を示す概念図である。

刺繍模様70の概念図である。

多角形72の概念図である。

円81と多角形72を重ねて配置した図である。

橋渡しデータ作成処理のフローチャートである。

線分A1の配置を示す図である。

線分A1〜8の各配置を示す図である。

橋渡しデータ作成処理(変形例)のフローチャートである。

下打ち縫いデータ作成処理のフローチャートである。

線分B1の配置を示す図である。

線分B2の配置を示す図である。

線分B1〜B5の各配置を示す図である。

下打ち縫いデータ作成処理(第1変形例)のフローチャートである。

線分C1の配置を示す図である。

線分C1〜C5の各配置を示す図である。

下打ち縫いデータ作成処理(第2変形例)のフローチャートである。

線分A1〜A8の夫々の平基準線W1〜W8に対する角度V1〜V8を示す図である。

線分55を傾斜角度αと密度βで配置した図である。

縫製を実行した結果の一例を示す写真である。

刺繍データ生成処理(変形例)のフローチャートである。

以下、図面を参照して、実施形態について説明する。図1〜図3を参照して、実施形態の多針ミシン(以下、単にミシンという)1の構成について説明する。図1の上側、下側、左斜め下側、右斜め上側、左斜め上側、右斜め下側は、夫々、ミシン1の上側、下側、前側、後側、左側、右側である。

図1に示すように、ミシン1の本体20は、支持部2、脚柱部3、アーム部4を主に備える。支持部2は、平面視逆U字形に形成された土台部である。支持部2の上面には、前後方向に延びる左右一対のガイド溝45(図1では左側のガイド溝は図示略)がある。脚柱部3は、支持部2の後端部から上方へ延びる。アーム部4は、脚柱部3の上端部から前方に延びる。アーム部4の前端には、針棒ケース21が左右方向に移動可能に装着されている。針棒ケース21の内部には、上下方向に延びる10本の針棒31(図2参照)が左右方向に等間隔で配置されている。10本の針棒31のうち、縫製位置にある1本の針棒31が、針棒ケース21の内部に設けられた針棒駆動機構32(図4参照)によって上下方向に摺動される。

図2を参照して、縫針51及び切断針52について説明する。図2では、10本の針棒31のうち、右側の7本のみが図示されている。各針棒31の下端には、縫針51及び切断針52を択一的に装着可能である。図2は、右から5から7番目の針棒315,316,317に、縫針51(縫針511,512,513)が装着された状態を示す。ミシン1は、縫製位置にある縫針51が装着された針棒31を上下方向に摺動することによって、縫針51を上下方向に繰り返し往復移動させる。これによってミシン1は、縫製対象物39(図3参照)に縫製を行う。縫製対象物39は、例えば、加工布である。

図2は、右から1から4番目の針棒311,312,313,314に、切断針52(切断針521,522,523,524)が装着された状態を示す。切断針52は、縫製対象物39(図3参照)に切れ目を形成するための刃を下方先端に備える。切断針52の上部の柄部分は、側面に平坦な面を有する部分円柱形状である。刃の方向と、柄部分に形成された平坦な面との位置関係は、切断針521〜524で各々互いに異なる。切断針52は、柄部分の平坦な面をミシン1の後方に向けた状態で、針棒31に装着可能である。そのため、ミシン1には、複数の切断針52を、各々刃の方向が互いに異なる状態で装着することができる。刃の方向とは、切断針52が縫製対象物39に切れ目を形成する時の刃の向きである。言い換えると、刃の方向とは、縫製対象物39に形成される切れ目の向きをいう。

図1に示すアーム部4の前後方向中央部の右側には、操作部6が設けられている。操作部6は、液晶ディスプレイ(以下、LCDという)7と、タッチパネル8と、スタート/ストップスイッチ9とを備える。LCD7には、画像データに基づき、例えば、コマンド、イラスト、設定値、及びメッセージ等、各種の項目を含む画像が表示される。タッチパネル8は、LCD7の前面に設けられている。ユーザは、指又はタッチペンで、タッチパネル8に対する押圧操作を行うことができる。以下、この操作をパネル操作という。タッチパネル8は、指又はタッチペンで押圧された位置を検出し、ミシン1(詳細には、後述のCPU61)は、検出された位置に対応する項目を認識する。このようにして、ミシン1は、選択された項目を認識する。パネル操作により、ユーザは、縫製対象物39に形成する穴、切れ目形状、刺繍模様、及び実行されるコマンド等を選択できる。スタート/ストップスイッチ9は、ミシン1に縫製及び切れ目の形成を開始又は停止させる指示を入力するためのスイッチである。

図1に示すアーム部4の下方には、脚柱部3の下端部から前方へ延びる筒状のシリンダベッド10が設けられている。シリンダベッド10の先端部の内部には、釜(図示略)が設けられている。釜は、下糸(図示略)が巻回されたボビン(図示略)を収納可能である。シリンダベッド10の内部には、釜駆動機構(図示略)が設けられている。釜駆動機構(図示略)は、釜を回転駆動する。シリンダベッド10の上面には、平面視矩形の針板16が設けられている。針板16には、縫針51が挿通可能な針穴36が設けられている。

図1に示すアーム部4の上面の後部には、左右一対の糸駒台12が設けられている。糸駒台12には、針棒31の数と同じ10個の糸駒13を設置可能である。上糸15は、糸駒台12に設置された糸駒13から供給される。上糸15は、糸案内17と、糸調子器18と、天秤19等を経由して、針棒31の下端に装着された縫針51(図2参照)の針孔(図示略)に供給される。

アーム部4の下方には、刺繍枠移動機構11(図3及び図4参照)のYキャリッジ23(図1及び図3参照)が設けられている。刺繍枠移動機構11には、様々な種類の刺繍枠84(図3参照)を装着可能である。図3に示すように、刺繍枠84は、縫製対象物39を保持する。刺繍枠移動機構11は、X軸モータ132(図4参照)及びY軸モータ134(図4参照)を駆動源として、刺繍枠84を前後左右に移動させる。

図3を参照して、刺繍枠84及び刺繍枠移動機構11について説明する。刺繍枠84は、外枠83、内枠82、左右1対の連結部89を備える。刺繍枠84は、外枠83と内枠82との間で縫製対象物39を挟持する。連結部89は、平面視矩形の中央部が矩形に切り抜かれた形状の板部材である。一方の連結部89は、内枠82の右部に螺子95で固定されている。他方の連結部89は、内枠82の左部に螺子94で固定されている。

刺繍枠移動機構11は、ホルダ24、Xキャリッジ22、X軸駆動機構(図示略)、Yキャリッジ23、Y軸移動機構(図示略)を備える。ホルダ24は、刺繍枠84を着脱可能に支持する。ホルダ24は、取付部91と、右腕部92と、左腕部93とを備える。取付部91は、左右方向に長い平面視矩形の板部材である。右腕部92は、前後方向に延び、後端部が取付部91の右端に固定されている。左腕部93は、前後方向に延びる。左腕部93の後端部は、取付部91の左部において、取付部91に対する左右方向の位置を調整可能に固定される。右腕部92は、一方の連結部89と係合する。左腕部93は、他方の連結部89と係合する。

Xキャリッジ22は、左右方向に長い板部材であり、一部分がYキャリッジ23の前面から前方に突出している。Xキャリッジ22には、ホルダ24の取付部91が取り付けられる。X軸駆動機構(図示略)は、直線移動機構(図示略)を備える。直線移動機構は、タイミングプーリ(図示略)、タイミングベルト(図示略)を備え、X軸モータ132を駆動源として、Xキャリッジ22を左右方向(X方向)に移動させる。

Yキャリッジ23は、左右方向に長い箱状部材である。Yキャリッジ23は、Xキャリッジ22を左右方向に移動可能に支持する。Y軸移動機構(図示略)は、左右一対の移動体(図示略)と、直線移動機構(図示略)とを備える。移動体は、Yキャリッジ23の左右両端の下部に連結され、ガイド溝45(図1参照)を上下方向に貫通している。直線移動機構は、タイミングプーリ(図示略)と、タイミングベルト(図示略)とを備え、Y軸モータ134を駆動源として、移動体をガイド溝45に沿って前後方向(Y方向)に移動させる。移動体に連結されたYキャリッジ23と、Yキャリッジ23に支持されたXキャリッジ22とは、移動体の移動に伴って前後方向(Y方向)に移動する。縫製対象物39を保持する刺繍枠84がXキャリッジ22に装着された状態では、縫製対象物39は、針棒31(図2参照)と、針板16(図1参照)との間に配置される。

図4を参照して、ミシン1の電気的構成について説明する。図4に示すように、ミシン1は、縫針駆動部120、縫製対象駆動部130、操作部6、制御部60を備える。

縫針駆動部120は、駆動回路121、主軸モータ122、駆動回路123、針棒ケース用モータ35を備える。駆動回路121は、制御部60からの制御信号に従って主軸モータ122を駆動する。主軸モータ122は、主軸(図示略)を回転駆動することで、針棒駆動機構32を駆動させ、縫製位置にある針棒31を上下動させる。針棒31は、切断針52と縫針51とを択一的に装着可能である。駆動回路123は、制御部60からの制御信号に従って針棒ケース用モータ35を駆動する。針棒ケース用モータ35は、図示しない移動機構を駆動させ、針棒ケース21(図1参照)を左右方向に移動させる。

縫製対象駆動部130は、駆動回路131、X軸モータ132、駆動回路133、Y軸モータ134を備える。駆動回路131は、制御部60からの制御信号に従ってX軸モータ132を駆動する。X軸モータ132は、刺繍枠移動機構11を駆動させて刺繍枠84(図3参照)を左右方向に移動させる。駆動回路133は、制御部60からの制御信号に従ってY軸モータ134を駆動する。Y軸モータ134は、刺繍枠移動機構11を駆動させて刺繍枠84を前後方向に移動させる。

操作部6は、駆動回路135、LCD7、タッチパネル8、スタート/ストップスイッチ9を備える。駆動回路135は、制御部60からの制御信号に従ってLCD7を駆動する。

制御部60は、CPU61、ROM62、RAM63、フラッシュROM64、入出力インターフェイス(I/O)66を備え、これらは信号線65によって相互に接続されている。I/O66には、縫針駆動部120、縫製対象駆動部130、及び操作部6が各々接続されている。

CPU61は、ミシン1の主制御を司り、ROM62のプログラム記憶エリア(図示略)に記憶された各種プログラムに従って、縫製に関わる各種演算及び処理を実行する。ROM62は、図示しないが、プログラム記憶エリアを含む複数の記憶エリアを備える。プログラム記憶エリアには、後述する刺繍データ生成プログラムを含む、ミシン1を動作させるための各種プログラムが記憶されている。刺繍データ生成プログラムは、後述する刺繍データ生成処理(図5参照)を実行するためのプログラムである。刺繍データ生成プログラムは、フラッシュROM64に記憶してもよい。RAM63には、CPU61が演算処理した演算結果等のデータを収容する記憶エリアが必要に応じて設けられる。

フラッシュROM64には、針棒番号と、針棒番号で示される針棒31に装着された切断針52の刃の方向又は針棒31に装着された縫針51に供給される糸の色との対応が記憶されている。針棒番号は、例えば、10本の針棒31の各々を識別するために各針棒31に割り振られた番号であり、右側から順に1から10までが割り振られている。尚、フラッシュROM64には、更にミシン1が各種処理を実行するための各種パラメータが記憶されている。

次に、縫製対象物39に形成する穴と切断データの関係について説明する。図4に示すROM62又はフラッシュROM64は、縫製対象物39(図3参照)に形成する穴の切断データを、穴の種類に応じて夫々記憶する。穴の種類は、例えば、円、楕円、多角形等の他、不規則な形状のものも含む。ユーザはパネル操作により、LCD7に表示される複数の穴の候補の中から、所望の穴を選択できる。

切断データは、ミシン1の切断針52を用いて、縫製対象物39に切れ目を形成してパネル操作で選択した形状の穴を形成する動作を、ミシン1に実行させる為に必要な制御データである。本実施形態の切断データは、後述する刺繍座標系100(図3参照)における切断針52の針落ち点の座標データと、針落ち点に突き刺す切断針の針棒番号と順番に関する切断針データと、穴の形状を示す形状データと、穴のマスクデータと、穴の中心点の座標データとを含む。マスクデータとは、穴形状を包含する最小矩形を示すデータである。中心点はマスクデータである矩形形状の対角線の交点に設定されている。切断データは本発明の穴データの一例である。

例えば、ユーザがパネル操作により特定の穴形状を選択した場合、ミシン1は、選択された穴に対応する切断データに基づき、刺繍枠84を移動させる。これにより、切断針52に対する縫製対象物39の保持位置が変化する。更に、切断針52を装着した針棒31を上下方向に移動させる。これにより、切断針52は上下方向に往復移動して縫製対象物39に繰り返し突き刺さり、縫製対象物39を切断する。これにより、パネル操作で選択された形状の穴が縫製対象物39に形成される。

次に、刺繍模様と刺繍データの関係について説明する。ユーザは、穴が形成された縫製対象物39の上に水溶性シートを貼付する。ミシン1は、該水溶性シートの上から穴の中に刺繍模様を縫製する。尚、刺繍模様を縫製するシートは水溶性シートに限らず、特定の溶剤に溶けるシートであれば他の材質のシートでもよい。ユーザはパネル操作により、LCD7に表示される複数の刺繍模様の候補の中から、穴の中に配置する刺繍模様を選択できる。図4に示すROM62又はフラッシュROM64は、刺繍模様の刺繍データを記憶する。刺繍データは、刺繍座標系100(図3参照)における縫針51の針落ち点の座標データと、刺繍模様の縫目の種類と設定値を示す縫目データと、糸の色を表す糸色データと、刺繍座標系100における刺繍模様の輪郭を示す輪郭データと、刺繍模様のマスクデータと、刺繍模様の中心点の座標データとを含む。刺繍模様の縫目とは、例えば、サテン縫い、タタミ縫い等である。設定値は、例えば縫目の角度と糸密度である。マスクデータとは、刺繍模様を包含する最小矩形を示すデータである。中心点はマスクデータである矩形形状の対角線の交点に設定されている。ユーザはミシン1の模様編集機能を利用して所望の刺繍模様を編集し、刺繍模様を形成させるための刺繍データを生成させることも可能である。

図3を参照し、刺繍座標系100について説明する。刺繍座標系100は、Xキャリッジ22を移動させるX軸モータ132及びY軸モータ134の座標系である。Xキャリッジ22には、縫製対象物39を保持する刺繍枠84が装着される。従って、刺繍座標系100の座標データは、刺繍枠84に保持された縫製対象物39に対する穴と刺繍模様の位置を表す。

刺繍座標系100は、ミシン1の左から右に向かう方向がXプラス方向であり、ミシン1の前から後に向かう方向がYプラス方向である。本実施形態では、刺繍枠84の初期位置は、刺繍座標系100の原点(X,Y,Z)=(0,0,0)である。刺繍枠84の初期位置は、刺繍枠84に対応する縫製可能領域86の中心点が、針落ち点と一致する位置である。針落ち点とは、針穴36(図1参照)の鉛直上方に配置された縫針51又は切断針52(図2参照)が、針棒31を縫製対象物39の上から下方向に移動させた際に、縫針51又は切断針52が縫製対象物39に刺さる点である。本実施形態の刺繍枠移動機構11は、刺繍枠84をZ方向(ミシン1の上下方向)には移動させないので、縫製対象物39の厚みが無視できる範囲であれば、縫製対象物39の上面のZ座標は0とする。

ROM62又はフラッシュROM64に記憶されている切断データの座標データは、穴の初期配置を規定する。本実施形態の穴の初期配置は、穴の中心点と刺繍座標系100の原点(縫製可能領域86の中心点)とが一致する位置である。切断データの座標データは、縫製対象物39に対する穴の配置が変更された場合に適宜補正される。

ROM62又はフラッシュROM64に記憶されている刺繍データの座標データは、刺繍模様の初期配置を規定する。本実施形態の刺繍模様の初期配置は、刺繍模様の中心点が刺繍座標系100の原点(縫製可能領域86の中心点)と一致する。刺繍データの座標データは、縫製対象物39に対する刺繍模様の配置が変更された場合に適宜補正される。

図5〜図24を参照して、CPU61が実行する刺繍データ生成処理について説明する。図5に示す本処理は、縫製対象物39に形成する穴の中に、刺繍模様、橋渡し、及び下打ち縫いを施すことができる刺繍データを生成する為に実行される。橋渡しとは、刺繍模様の外縁部と穴の周縁部との間を走り縫い(ランステッチ)で繋ぐ縫目を意味する。下打ち縫いとは、刺繍模様の縫製に先立って縫製される縫目であって、後から縫製される刺繍模様に覆われる縫目を意味する。本処理を開始する指示は、例えば、ユーザのパネル操作によって入力される。開始指示が入力されると、CPU61はROM62(図4参照)から刺繍データ生成プログラムを読み出し、本処理を実行する。

先ず、ユーザのパネル操作により、縫製対象物39に形成される穴が選択される。本実施例では、図6に示す円形の穴80が選択された場合を想定する。図6では、左右方向25及び上下方向26は、夫々、刺繍座標系100のX方向及びY方向に対応する。

CPU61は、選択された穴80に対応する切断データをフラッシュROM64から取得する(S1)。取得した切断データは、RAM63に記憶する。穴80の選択が完了すると、続いてユーザのパネル操作により、刺繍模様が選択される。本実施例では、図7に示す刺繍模様70が選択された場合を想定する。刺繍模様70は、所定の糸で縫製される例えばタタミ縫いの模様(図7では表面の模様は黒塗りで省略)である。刺繍模様70の輪郭形状は、長方形の左辺に正三角形の一辺を接続し、その左辺と対向する長方形の右辺を略円弧状に右方に膨出させた輪郭形状である。図7では、左右方向27及び上下方向28は、夫々、刺繍座標系100のX方向及びY方向に対応する。CPU61は、パネル操作で選択された刺繍模様70に対応する刺繍データを、フラッシュROM64から取得する(S2)。取得した刺繍データはRAM63に記憶する。

次いで、CPU61は、RAM63に記憶した刺繍データに含まれる輪郭データについて、最小凸多角形算出処理を実行する(S3)。最小凸多角形算出処理は、輪郭データが示す刺繍模様70の輪郭71(図7参照)を包含する最小の凸多角形を算出する処理である。最小凸多角形の算出方法については限定しない。本実施形態は、例えば「凸包」によって、輪郭71を包含する最小凸多角形を求めることができる。凸包とは、図形上の点の中で最も外側にある点を直線で結んで出来るものである。

凸包を利用して最小凸多角形を求めるアルゴリズムは種々あるが、例えば、Graham法がある。Graham法では、図形に含まれる点で、最も下方にある点に注目する。そして、注目した点より他の点を偏角順にソートし、順番に符号付き三角形を用いて演算していく方式である。この他にも、種々のアルゴリズムを適用できる。例えば、Melkmanのアルゴリズム、又はSklanskyのアルゴリズム等を用いることもできる(例えば、特願2006−511065号公報第18頁第6行目〜第43行目参照)。

図8に示すように、CPU61は凸包に基づき、図7に示す輪郭71を包含する最小凸多角形72(以下、単に多角形72と呼ぶ)を求め、多角形72の輪郭データ(以下単に多角形72と呼ぶ)をRAM63に展開する(S4)。多角形72の中心点G1は、刺繍座標系100の原点に一致させる。図8では、左右方向29及び上下方向30は、夫々、刺繍座標系100のX方向及びY方向に対応する。本実施形態では、多角形72の中心点G1は、刺繍模様70の中心点と同じ位置とする。刺繍模様70の中心点は、RAM63に記憶された刺繍データに含まれる刺繍模様70の中心点の座標データを参照する。

次いで、CPU61は、多角形72の各頂点のうち、最も左側に位置する頂点をP0とし、P0から右回りにその他の各頂点に対し、P1、P2・・・と頂点番号を順に割り振る。頂点番号の割り振り方法は、これ以外の方法でもよい。例えば、最初の頂点P0から左回りにその他の各頂点に対し、P1、P2・・・と順に割り振ってもよい。本実施形態では、多角形72の19個の頂点に対し、頂点番号P0〜P18が夫々割り振られる。CPU61は、P0〜P18の各頂点の座標位置をRAM63に記憶する(S5)。

次いで、図9に示すように、CPU61は、RAM63に記憶した切断データに含まれる穴80の形状データである円データ81(以下、単に円81と呼ぶ)を読み出し、RAM63に展開する(S6)。円81の中心点G2は、刺繍座標系100の原点に一致させる。多角形72の中心点G1と、円81の中心点G2とが互いに一致する。それ故、円81の中央に、多角形72が配置される。

次いで、CPU61は、橋渡しデータ作成処理を実行する(S7)。橋渡しデータ作成処理は、多角形72の各頂点と円81の周縁部とを繋ぐ橋渡しの位置を決定し、橋渡しデータを作成する為の処理である。

図10〜図12を参照して、橋渡しデータ作成処理について具体的に説明する。先ず、図10に示すように、CPU61は、変数i、j、kを0(ゼロ)に設定する(S11)。変数iは、多角形72の頂点番号を示す為の変数である。変数jは、橋渡しの線分を作成しない頂点を計数する為の変数である。変数kは、多角形72について作成した橋渡しの線分の数を計数する為の変数である。変数i、j、kは、例えばRAM63に記憶する。

次いで、CPU61は変数iがNより小さいか否か判断する(S12)。Nは多角形の頂点番号のうち最大の番号の数である。本実施形態のNは18である。変数i=0で18より小さいので(S12:YES)、CPU61は、頂点P0の角度θ0を求める(S13)。図11に示すように、角度θ0は、頂点P0を構成する辺L1とL2とが成す角度である。辺L1は頂点P0とP18を結ぶ線分である。辺L2は頂点P0とP1を結ぶ線分である。

次いで、CPU61は、角度θ0が閾値以下か否か判断する(S14)。角度θiの閾値は、例えば150°である。角度θ0は60°で閾値以下であるので(S14:YES)、頂点P0は、先端の尖った比較的目立った凸部である。それ故、図7に示す刺繍模様70の頂点P0に相当する凸部は、穴の周縁部に対し橋渡しで繋げるのが好ましい。そこで、図11に示すように、CPU61は、頂点P0の角度θ0を2等分する仮想直線F1上で、線分A1を作成する(S15)。線分A1は、頂点P0と、仮想直線F1と円81との交点Q1とを結ぶ線分である。さらに、CPU61は、線分A1の橋渡しデータを作成する(S16)。橋渡しデータは、線分A1の2つの端点(頂点P0、交点Q1)を繋げる走り縫いのデータである。線分A1の橋渡しデータはRAM63に記憶する。CPU61は、変数jを0に初期化し、変数iに1加算し、変数kに1加算する(S17)。変数j=0、変数i=1、変数k=1となる。CPU61はS12に戻る。

次いで、現在、変数i=1であるので(S12:YES)、CPU61は頂点P1の角度θ1を求める(S13)。図12に示すように、角度θ1は、辺L2と辺L3とが成す角度である。辺L2は頂点P0とP1を結ぶ線分である。辺L3は頂点P1とP2を結ぶ線分である。角度θ1は142.92°で閾値以下であるので(S14:YES)、頂点P1も比較的目立った凸部である。よって、CPU61は、頂点P1の角度θ1を2等分する仮想直線F2上で、線分A2を作成する(S15)。線分A2は、頂点P1と、仮想直線F2と円81との交点Q2とを結ぶ線分である。さらに、CPU61は、線分A2の橋渡しデータを作成する(S16)。橋渡しデータは、線分A2の2つの端点(頂点P1、交点Q2)を繋げる走り縫いのデータである。線分A2の橋渡しデータはRAM63に記憶する。CPU61は、変数jを0に初期化し、変数iに1加算し、変数kに1加算する(S17)。変数j=0、変数i=2、変数k=2となる。CPU61はS12に戻り、頂点P2以降について順次処理を繰り返す。

図12に示すように、頂点P2においても、角度θ2(図12では図示略)は閾値以下であるので(S14:YES)、頂点P2も比較的目立った凸部である。よって、CPU61は、頂点P2の角度θ2を2等分する仮想直線(図示略)上で、線分A3を作成する(S15)。線分A3は、頂点P2と、仮想直線と円81との交点Q3とを結ぶ線分である。角度θ2は、頂点P2を構成する2辺が成す角度である。さらに、CPU61は、線分A3の橋渡しデータを作成する(S16)。CPU61は、変数jを0に初期化し、変数iに1加算し、変数kに1加算する(S17)。変数j=0、変数i=3、変数k=3となる。CPU61はS12に戻る。

次に、頂点P3において、角度θ3は閾値より大きいので(S14:NO)、頂点P3は比較的目立たない凸部である。よって、CPU61は橋渡しデータを作成することなく、変数jは閾値以上か否か判断する(S18)。変数jの閾値は、例えば3である。現在、変数jは0であるので(S18:NO)、CPU61は変数jに1加算し、変数iに1加算する(S19)。変数j=1、変数i=4となる。変数kは3のままである。CPU61はS12に戻る。

次に、頂点P4においても、角度θ4は閾値より大きいので(S14:NO)、頂点P4も比較的目立たない凸部である。よって、CPU61は橋渡しデータを作成することなく、変数jは閾値以上か否か判断する(S18)。変数jは1であるので(S18:NO)、CPU61は変数jに1加算し、変数iに1加算する(S19)。変数j=2、変数i=5となる。変数k=3のままである。CPU61はS12に戻る。

次に、頂点P5においても、角度θ5は閾値より大きいので(S14:NO)、頂点P5も比較的目立たない凸部である。よって、CPU61は橋渡しデータを作成することなく、変数jは閾値以上か否か判断する(S18)。変数jは2であるので(S18:NO)、CPU61は変数jに1加算し、変数iに1加算する(S19)。変数j=3、変数i=6となる。変数kは3のままである。CPU61はS12に戻る。

次に、頂点P6においても、角度θ6は閾値より大きいので(S14:NO)、頂点P6も比較的目立たない凸部である。ここで、変数j=3であるので(S18:YES)、橋渡しを配置しない頂点が3つ連続する。仮に、橋渡しを配置しない頂点が多く連続すると、その部分において刺繍模様70の形状を保持できない可能性がある。そこで、CPU61は、頂点P6の角度θ6を2等分する仮想直線(図示略)上で、線分A4を作成する(S15)。線分A4は、頂点P6と、仮想直線と円81との交点Q4とを結ぶ線分である。更に、CPU61は、線分A4の橋渡しデータを作成する(S16)。線分A4の橋渡しデータはRAM63に記憶する。CPU61は、変数jを0に初期化し、変数iに1加算し、変数kに1加算する(S17)。変数j=0、変数i=7、変数k=4となる。CPU61はS12に戻る。

そして、図12に示すように、CPU61は、残りの頂点P7〜P18について、上記処理を繰り返す(S12〜S19)。その結果、CPU61は、頂点P10、頂点P14、P17、P18において、線分A5、線分A6、線分A7、線分A8の各橋渡しデータを作成する。尚、詳述しないが、線分A5〜A8は、頂点P10、頂点P14、頂点P17、頂点P18の夫々において、頂点Piの角度θiを2等分する仮想直線上で、頂点Piと、仮想直線と円81の交点Qiとを結ぶ線分である。

最後の頂点P18の処理を完了した時点で、変数j=0、変数i=18、変数k=8となる。多角形72の周囲には、8本の線分A1〜A8が蜘蛛の巣状に配置される。これら線分A1〜A8に対応する8つの橋渡しデータはRAM63に記憶される。

次いで、CPU61はS12に戻り、変数iはNより小さいか否か判断する。変数iは18であるので(S12:NO)、続いて、CPU61は変数kが3より小さいか否か判断する(S20)。縫製対象物39に形成される穴の中に刺繍模様をバランス良く保持するには、橋渡しは少なくとも3本以上あるのが好ましい。本実施形態の例では、変数kは8であるので(S20:NO)、十分な数の橋渡しデータが既に作成されている。よって、CPU61は橋渡しデータ作成処理を終了し、図5の刺繍データ生成処理のS8に処理を進める。

尚、本実施形態とは異なり、多角形の形状によっては、橋渡しの線分を3本以上作成できない場合がある。そこで、変数kが3より小さい場合(S20:YES)、CPU61は、まず、変数kが0であるか否かを判断する(S21)。変数kが0の場合(S21:YES)、CPU61は、頂点P0と、頂点P(N/3)と、頂点P(2×N/3)に対し、橋渡しデータを上記方法と同様に作成する(S22)。変数kが0でない場合(S21:NO)、CPU61は、変数kが1であるか否かを判断する(S23)。変数kが1の場合(S23:YES)、橋渡しデータが既に作成されている頂点PiからN/3進んだ頂点P(i+N/3)と、この頂点P(i+N/3)から更にN/3進んだ頂点P(i+2×N/3)に対し、橋渡しデータを上記方法と同様に作成する(S24)。変数kが1でない場合(S23:NO)は、即ち変数kが2であるので、2つの橋渡しデータのなす優角を二等分する方向の線分に近い頂点P(i)に対し、橋渡しデータを上記方法と同様に作成する(S25)。

そして、CPU61は、S22、S24、S25の何れかの処理によって橋渡しデータを作成した後、CPU61は橋渡しデータ作成処理を終了し、図5の刺繍データ生成処理のS8に処理を進める。

以上のように、本実施形態は、橋渡しデータを作成することができる。よって、ミシン1は、本処理で作成された橋渡しデータに従って縫製を実行した場合、刺繍模様70の周囲に少なくとも3本の橋渡しを作成できる。刺繍模様70は縫製対象物39に形成された穴の中で、少なくとも3本以上の橋渡しで支持されることができる。従って、刺繍模様70は折れ曲がることなく形状を保持できる。

図11〜図13を参照して、橋渡しデータ作成処理の変形例について説明する。図10に示す橋渡しデータ作成処理では、CPU61は、多角形72の頂点Piの角度θiが150°以下の場合に、頂点Piについて橋渡しデータを作成する。本変形例では、CPU61は、多角形72の頂点Piを構成する2辺の合計値が閾値以上の場合に、頂点Piについて橋渡しデータを作成する。図13に示す橋渡しデータ作成処理は、図10に示す橋渡しデータ作成処理のS13とS14の各処理を実行する代わりに、S113とS114の各処理を実行し、それ以外は全て同じ処理である。よって、S113とS114の各処理を中心に説明する。

先ず、図13に示すように、CPU61は、変数i、j、kを0に設定した後で(S11)、変数iがNより小さいか否か判断する(S12)。本実施形態のNは18である。最初はi=0であるので(S12:YES)、CPU61は、頂点P0を構成する辺L1と辺L2の長さの合計値を求める(S113)。図11に示すように、辺L1の長さは、頂点P0とP18を結ぶ線分長である。辺L2の長さは、頂点P0とP1を結ぶ線分長である。頂点P0、P1、P18の夫々の座標値は、RAM63に記憶されている(図5のS5参照)。CPU61は、RAM63から頂点P0、P1、P18の各座標値を読み出し、これら3点の座標値から、辺L1の長さと辺L2の長さを夫々算出する。

次いで、CPU61は、辺L1と辺L2の長さの合計値が閾値以上か否か判断する(S114)。合計値の閾値は刺繍模様の形状に応じてユーザが自由に設定できる。頂点Piを構成する2辺の長さの合計値が長ければ長いほど、頂点Piは比較的目立った凸部となる。その反対に、2辺の長さの合計値が短ければ短いほど、頂点Piは比較的目立たない凸部となる。図11に示すように、辺L1と辺L2の長さの合計値は閾値以上であるので(S114:YES)、CPU61は、頂点P0の角度θ0を2等分する仮想直線F1上で、線分A1を作成する(S15)。さらに、CPU61は、線分A1の橋渡しデータを作成する(S16)。線分A1の橋渡しデータはRAM63に記憶する。CPU61は、変数jを0に初期化し、変数iに1加算し、変数kに1加算する(S17)。変数=0、変数i=1、変数k=1となる。CPU61はS12に戻る。

他方、仮に2辺の長さの合計値が閾値未満であった場合(S114:NO)、CPU61は、橋渡しデータを作成することなく、処理をS18に進める。これ以降の処理は、図10に示す橋渡しデータ作成処理と同じである。このように、本変形例においても、図10に示す橋渡しデータ作成処理と同様に、多角形72の周囲に3つ以上の橋渡しの線分を適切に配置できる。

CPU61は、図5の刺繍データ生成処理に戻り、下打ち縫いデータ作成処理を実行する(S8)。下打ち縫いデータ作成処理は、多角形72の形状線の内側において、下打ち縫いの位置と方向を決定し、下打ち縫いデータを作成する為の処理である。下打ち縫いは、本実施形態ではサテン縫いとしているが、走り縫い等の他の縫目であってもよい。下打ち縫いデータは、縫針51の針落ち点の座標データである。

図14〜図17を参照して、下打ち縫いデータ作成処理について説明する。図14に示すように、先ず、CPU61は8つの選択フラグをRAM63に設定し、0に初期化する(S30)。8つの選択フラグは、橋渡しの線分A1〜A8の夫々に対応し、注目線分として選択済みか未選択かを夫々記憶する。未選択の場合は選択フラグに0、選択済みの場合は選択フラグに1が記憶される。

次いで、CPU61は、頂点P0〜P18のうち、未選択の橋渡しの線分があるか否か判断する(S31)。8つの選択フラグの中で0が記憶されている選択フラグがある場合(S31:YES)、CPU61は、選択フラグが0である橋渡しの線分の中から何れか一つを選択する(S32)。最初は全ての選択フラグが0である。よって、図15に示すように、CPU61は、例えば、最も頂点番号が小さい頂点P0の橋渡しの線分A1を最初に選択する。

続いて、CPU61は、選択した線分A1に対して角度が180°に最も近い橋渡しの線分を選択する(S33)。具体的に例えば、CPU61は、線分A1に対して角度が180°±γ°の所定範囲内に橋渡しの線分が有るか否か判断する。所定範囲内に橋渡しの線分が有る場合、その所定範囲内にある線分を選択する(S33)。仮に、所定範囲内に橋渡しの線分が無い場合、CPU61は所定範囲を、線分A1に対して180°の位置を基準にγを所定角度ずつ大きくすればよい。拡大した所定範囲内に橋渡しの線分が位置した場合、CPU61は拡大した所定範囲内にある橋渡しの線分を選択すればよい。これによって、CPU61は、選択した線分A1に対して角度が180°に最も近い橋渡しの線分A5を選択する(S33)。

次いで、CPU61は、頂点P0と頂点P10とを繋げるように線分B1を作成し、下打ち縫いのデータを作成する(S34)。頂点P0は、線分A1の多角形72の形状線上の端点である。頂点P10は、線分A5の多角形72の形状線上の端点である。下打ち縫いデータは、線分B1のこれら2つの端点(頂点P0、頂点P10)の座標データである。作成した線分B1の下打ち縫いデータはRAM63に記憶する。CPU61は、RAM63において、選択した橋渡しの線分A1と線分A5の夫々に対応する各選択フラグに1を記憶する(S35)。CPU61はS31に戻る。

この時点で、8つの選択フラグにおいて、線分A1と線分A5に対応する2つの選択フラグは1で、それら以外は全て0である。選択されていない橋渡しの線分があるので(S31:YES)、図16に示すように、CPU61は、未選択の線分A2〜A4、及び線分A6〜A8の中から最も番号が小さい線分A2を選択する(S32)。尚、未選択の線分の中から一の線分を選択する順番は自由に変更可能である。

次いで、CPU61は、上述の方法で、選択した線分A2に対して角度が180°に最も近い橋渡しの線分A7を選択する(S33)。CPU61は、頂点P1と頂点P17とを繋げるように線分B2を作成し、下打ち縫いのデータを作成する(S34)。頂点P1は、線分A2の多角形72の形状線上の端点である。頂点P17は、線分A7の多角形72の形状線上の端点である。下打ち縫いデータは、線分B2の2つの端点(頂点P1、頂点P17)の座標データである。作成した線分B2の下打ち縫いデータはRAM63に記憶する。CPU61は、RAM63において、選択した橋渡しの線分A2と線分A7の夫々に対応する各選択フラグに1を記憶する(S35)。CPU61はS31に戻る。

次いで、CPU61はS31に戻る。全ての橋渡しの線分A1〜A8が選択されるまで(S31:YES)、CPU61は、上記S32〜S35の処理を順次実行する。線分A1〜A8の各選択フラグの全てに1が記憶された場合(S31:NO)、図17に示すように、多角形72の内側において、下打ち縫いの線分B1〜B5が作成された状態となる。線分B3は、頂点P2と頂点P17とを繋げる線分である。線分B4は、頂点P6と頂点P18とを繋げる線分である。線分B5は、頂点P1と頂点P14とを繋げる線分である。よって、CPU61は下打ち縫いデータ作成処理を終了し、図5の刺繍データ生成処理のS9に処理を進める。

このように、本実施形態の下打ち縫いデータ作成処理では、橋渡しの注目線分に対して角度が180°に最も近い橋渡しの線分の端点と、注目線分の端点とを繋ぐ方向に下打ち縫いの線分で繋ぐ。これにより、2本の橋渡しの線分と1本の下打ち縫いの線分とを可能な限り直線状にできる。そして、ミシン1により、このような下打ち縫いデータ作成処理で作成された下打ち縫いデータに従って下打ち縫いが実行された場合、下打ち縫いと橋渡しとが略直線状に繋がる。この場合、刺繍模様70の縫い縮みによって、橋渡しの縫目が引っ張られる。よって、橋渡しが弛まないので、穴に対して刺繍模様70の位置を固定できる。更に、刺繍模様70周囲の美観も向上する。

図18〜図20を参照して、下打ち縫いデータ作成処理の第1変形例について説明する。図14に示す下打ち縫いデータ作成処理では、CPU61は、S33の処理において、選択した線分に対して角度が180°に最も近い橋渡しの線分を選択する。第1変形例では、CPU61は、選択した線分の延長線と多角形72とが交わる交点に対し、最も距離が短い橋渡しの線分を選択する。図18に示す下打ち縫いデータ作成処理は、図14に示す下打ち縫いデータ作成処理のS33の処理を実行する代わりに、S133の処理を実行するだけで、それ以外は全て同じ処理である。よって、S133の処理を中心に説明する。

図18に示すように、先ず、CPU61は、RAM63に設定した8つの選択フラグを全て0に初期化する(S30)。更に、CPU61は、未選択である橋渡しの線分の中から何れか一つを選択する(S31,S32)。図19に示すように、CPU61は、例えば、最も頂点番号が小さい頂点P0の橋渡しの線分A1を最初に選択する。続いて、CPU61は、選択した線分の延長線と多角形72とが交わる交点に対し、最も距離が短い橋渡しの線分を選択する。(S133)。

例えば、図19に示すように、CPU61は、線分A1の仮想延長線F3と多角形72の形状線との交点H1の座標位置を求める。交点H1の座標位置はRAM63に記憶する。CPU61は、交点H1の座標位置と、橋渡しの線分A2〜A8の夫々に対応する頂点P1、P2、P6、P10、P14、P17、P18の各座標位置との距離を夫々算出する。交点H1との間で最も距離が短い頂点は、頂点P10である。よって、CPU61は線分A5を選択する(S133)。

次いで、CPU61は、頂点P0と頂点P10とを繋げるように線分C1を作成し、下打ち縫いのデータを作成する(S34)。作成した線分C1の下打ち縫いデータはRAM63に記憶する。CPU61は、RAM63において、選択した橋渡しの線分A1と線分A5の夫々に対応する各選択フラグに1を記憶する(S35)。CPU61はS31に戻る。

そして、CPU61は、全ての橋渡しの線分A1〜A8が選択されるまで(S31:YES)、上記S32、S133、S34、S35の処理を順次実行する。線分A1〜A8の各選択フラグの全てに1が記憶され、全ての線分A1〜A8が選択された場合(S31:NO)、図20に示すように、多角形72の内側において、下打ち縫いの線分C1〜C5が作成された状態となる。図20に示す下打ち縫いの線分C1〜C5の配置は、図17に示す下打ち縫いの線分B1〜B5の配置と一致する。CPU61は下打ち縫いデータ作成処理を終了し、図5の刺繍データ生成処理のS9に処理を進める。

このように、下打ち縫いデータ作成処理の第1変形例では、橋渡しの注目線分の仮想延長線と多角形72の形状線との交点に対して最も距離が短い頂点と、注目線分の端点とを線分で繋ぐ。これにより、2本の橋渡しの線分と1本の下打ち縫いの線分とを可能な限り略直線状にできる。そして、ミシン1により、このような第1変形例で作成された下打ち縫いデータに従って下打ち縫いが実行された場合、下打ち縫いと橋渡しとは略直線状に互いに繋がる。従って、上記と同様に、橋渡しが弛まないので、穴に対して刺繍模様70の位置を固定できる。更に、刺繍模様70周囲の美観も向上する。

図21〜図23を参照して、下打ち縫いデータ作成処理の第2変形例について説明する。第2変形例では、CPU61は、橋渡しの線分A1〜A8の夫々について、後述する水平基準線との成す角度を算出し、それらの平均値で下打ち縫いの縫い角度αを決定する。下打ち縫いの角度は、図3に示す刺繍座標系100における角度である。

図21に示すように、CPU61は、橋渡しの線分A1〜A8の夫々について、水平基準線W1〜W8との成す角度V1〜V8を夫々求める(S41)。水平基準線W1〜W8は、橋渡しの線分A1〜A8の夫々の最下点が座標(0,0)になるように設定したときのy=0である基準線である。尚、橋渡しが水平基準線に対して水平(180°)である場合、角度は0°とする。図22に示すように、角度V1は、頂点P0における橋渡しの線分A1の水平基準線W1との成す角度である。角度V2は、頂点P1における橋渡しの線分A2の水平基準線W2との成す角度である。角度V3は、頂点P2における橋渡しの線分A2の水平基準線W3との成す角度である。角度V4は、頂点P6における橋渡しの線分A4の水平基準線W4との成す角度である。角度V5は、頂点P10における橋渡しの線分A5の水平基準線W5との成す角度である。角度V6は、頂点P14における橋渡しの線分A6の水平基準線W6との成す角度である。角度V7は、頂点P17における橋渡しの線分A7の水平基準線W7との成す角度である。角度V8は、頂点P18における橋渡しの線分A8の水平基準線W8との成す角度である。尚、角度V5から角度V8については、図示の都合で、交点Q5から交点Q8上に示している。

角度V1は、0°である。角度V2は、108.54°である。角度V3は、76.03°である。角度V4は、30.93°である。角度V5は、175.23°である。角度V6は、140.31°である。角度V7は、102.63°である。角度V8は、71.57°である。算出した角度V1〜V8はRAM63に記憶する。

次いで、CPU61は、角度V1〜V8の合計値を算出し(S42)、その合計値から平均値を算出する(S43)。角度V1〜V8の合計値は、705.24である。橋渡しの線分A1〜A8の数は計8本である。705.24を8で割ると、平均値≒88°となる。そこで、図23に示すように、CPU61は、下打ち縫いの線55を、縫い角度α=88°、密度を固定値βで多角形72内に複数本作成し、複数本の線分55の下打ち縫いデータを作成する(S44)。作成した下打ち縫いデータはRAM63に記憶する。尚、固定値βはROM62又はフラッシュROM64に予め記憶する。固定値βはユーザが自由に設定変更可能である。CPU61は下打ち縫いデータ作成処理を終了し、図5の刺繍データ生成処理のS9に処理を進める。

このように、ミシン1により、下打ち縫いデータ作成処理の第2変形例で作成された下打ち縫いデータに従って下打ち縫いが実行された場合、下打ち縫いの角度は、複数の橋渡しの夫々の水平基準線との成す角度の平均値となる。これによってミシン1は、下打ち縫いと複数の橋渡しとをバランス良く互いに繋げることができる。よって、そのような下打ち縫いの上に縫製される刺繍模様70は形状を良好に保持できる。

CPU61は、図5の刺繍データ生成処理に戻り、ミシン1により、下打ち縫いデータ作成処理(S8)で作成された下打ち縫いデータに基づいて下打ち縫い(例えば、サテン縫い等)が縫製され、その後、刺繍データに基づいて刺繍模様70が下打ち縫いの上に縫製され、最後に、橋渡しデータ作成処理(S7)で作成された橋渡しデータに基づいて複数の橋渡しが縫製されるように、刺繍データを作成する(S9)。こうして、CPU61は刺繍データ生成処理を終了する。

以上のように、本実施形態であるミシン1は、橋渡しデータを作成できる。橋渡しデータは、縫製対象物39に形成された穴の周縁部と、穴の中に配置する刺繍模様70の角部とを繋ぐ線分のデータである。ミシン1のCPU61は、切断データと刺繍データを取得する。切断データは、縫製対象物39に穴を形成する為の制御データである。刺繍データは、刺繍模様70をミシン1で縫製する為の制御データである。CPU61は、取得した刺繍データに基づき、刺繍模様70の輪郭71を包含する最小の多角形72を算出する。CPU61は、多角形72と、切断データに含まれる穴80の形状データである円81とを、RAM63に重ねて展開する。CPU61は、多角形72の頂点P0〜P18のうち少なくとも3つの頂点について、橋渡しの線分を夫々作成する。橋渡しの線分は、多角形の頂点と円81の周縁部とを繋げる線分である。CPU61は、線分A1〜A8に基づき、橋渡しデータを作成する。ミシン1は作成された橋渡しデータに基づき、刺繍模様70の周囲に橋渡しを縫製する。橋渡しの糸の張力により、刺繍模様70の角部は折れ曲がらない。従って、刺繍模様70は形状を保持できる。橋渡しは、刺繍模様70の角部から穴の周縁部に向かって縫われる。従って、ミシン1は、刺繍模様70本来のデザイン性を際立たせることができる。

図24は、図5に示す刺繍データ生成処理で作成した刺繍データに基づき、ミシン1で生地38に対し、切断と縫製を実行した結果の一例を示す写真である。生地38に形成された円形の穴40の中央に、コウモリ形状の刺繍模様75が配置され、その刺繍模様75の11個の角部と、穴40の周縁部との間に11本の橋渡し76が形成されている。尚、刺繍模様75と橋渡し76は、生地38の切断針52で穴40を切断した後、水溶性シートが貼付され、その水溶性シートの上から穴40の中に縫製されている。刺繍模様75と橋渡し76は、縫製後、水溶性シートを溶剤で溶かすことによって、穴40の中央に刺繍模様75が11本の橋渡し76によって保持される。橋渡し76は走り縫いの縫目で形成される。このように、刺繍模様75の11個の角部は、11本の橋渡し76の糸の張力により折れ曲がらない。よって、刺繍模様75は自身のコウモリ形状を、穴40の中で折れ曲がることなく綺麗に保持できる。また、穴40の中において、刺繍模様75の周囲には、11本の橋渡し76以外は存在しない。よって、ミシン1は、穴40の中において、刺繍模様75のデザイン性を際立たせることができる。尚、図24に示す穴40の周縁部には、従来技術のように、かがり縫いを施してある。

また、上記実施形態では、多角形72の頂点P0〜P18に橋渡しの線分を作成するか否かの判断について、頂点を構成する2辺の成す角度が、閾値(例えば150°)以下であれば、橋渡しの線分を作成する。多角形72の隣り合う2つの辺の成す角度が小さければ小さいほど、その2つの辺で形成される頂点は突出した部分になる。よって、その頂点を2等分する線分を作成することで、ミシン1は、刺繍模様70のうち少なくとも突出した角部を穴の周りの周縁部に繋げることができる。これにより、ミシン1は、縫製対象物39の中で刺繍模様70の角部分が折れ曲がるのを防止できる。また、ミシン1は、2辺の成す角度を2等分する線分を作成するので、ミシン1は、刺繍模様70の角部をバランス良く安定した状態で、穴の周りの周縁部に対し橋渡しすることができる。

尚、上記実施形態では、多角形72の頂点P0〜P18に橋渡しを作成するか否かの判断について、多角形72の隣り合う2つの辺の合計値が、閾値以上の場合に、橋渡しの線分を作成するようにしてもよい。多角形72の隣り合う2つの辺の長さの合計値が大きければ大きいほど、その2つの辺で形成される角部は、より突出した部分となる。ミシン1は、2つの辺の長さの合計値が閾値以上の場合に、それら2つの辺の成す角度を2等分する線分を作成する。これによって、ミシン1は、刺繍模様70のうち少なくとも突出した角部を穴の周縁部に繋げることができる。従って、ミシン1は、刺繍模様70のうち折れ曲がり易い角部分を穴の周縁部に対し橋渡しすることができる。

また、上記実施形態は、刺繍模様70を包含する最小凸多角形について、橋渡しの線分を少なくとも3つ作成できる。よって、上記実施形態で作成された刺繍データに従って縫製が実行された場合、縫製対象物39に形成された穴の中に、刺繍模様70を安定した状態で保持できる。

本発明は、上記実施形態及び各種変形例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態は、縫製対象物39に形成する穴80を、ミシン1の切断針52(図2参照)で切断できる。それ故、CPU61は、図5に示す刺繍データ生成処理の中で、縫製対象物39に形成する穴80の形状データを、穴80の切断データから読み出している。これに対し、ミシン1が周知のアップリケ作成機能を備える場合、例えば、切断データの代わりに、アップリケピースの輪郭に沿って走り縫いを実行する為の走り縫いデータを利用してもよい。走り縫いデータは、布地でアップリケピースを作成する際に、ミシン1が布地にアップリケピースの切り取り線を、走り縫いで縫製する際に使用する縫針51の針落ち点のデータである。

図25を参照して、刺繍データ作成処理の変形例について説明する。尚、本変形例の処理は、図5に示す刺繍データ生成処理のS1の処理を実行する代わりに、S61〜S63の処理を実行するのみで、それ以外は全て同じ処理である。よって、最初のS61〜S63の処理を中心に説明する。本処理を開始する指示は、上記実施形態と同様に、例えば、ユーザのパネル操作によって入力される。開始指示が入力されると、CPU61はROM62(図4参照)から刺繍データ生成プログラムを読み出し、本処理を実行する。

先ず、ユーザのパネル操作により、縫製対象物39に形成される穴形状が選択される。続いて、ユーザのパネル操作により、縫製対象物39に形成する穴の切断方法について、第1モード及び第2モードのうち何れか一つが選択される。第1モードは、ミシン1の切断針52で穴を切断するモードである。第2モードは、アップリケ作成機能を利用して、縫製対象物39に形成する穴の輪郭に沿って縫目を作成し、ユーザ自身で縫目に沿って鋏等で切断して穴を形成するモードである。

CPU61は、ユーザのパネル操作に基づき、第1モードが選択されたか否か判断する(S61)。第1モードが選択された場合(S61:YES)、CPU61は、パネル操作で選択された穴80(図6参照)に対応する切断データをフラッシュROM64から取得する(S62)。第2モードが選択された場合(S61:NO)、CPU61は、パネル操作で選択された穴80に対応する走り縫いデータをフラッシュROM64から取得する(S62)。CPU61は、取得した切断データ又は走り縫いデータをRAM63に記憶する。CPU61は、RAM63に記憶した走り縫いデータに基づき、穴80の形状を特定できる。その後、CPU61は、図5に示す刺繍データ生成処理と同じS2以降の処理を実行し、上記実施形態と同様の刺繍データを生成できる。

本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、10本の針棒を備えるミシン1を例示したが、複数(例えば、6本)の針棒を備える多針ミシンであってもよい。

本発明は、上記実施形態及び各種変形例の他に、更に種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、複数本の針棒を備える多針ミシン1を例示したが、アップリケ機能を備えるミシンであれば、1本の針棒を備えるミシンであってもよい。

また、上記実施形態のミシン1は、作成した橋渡しデータに基づき、刺繍模様70と穴の周縁部との間を走り縫いで橋渡しを縫製するが、橋渡しの縫目はこれ以外でもよい。

また、上記実施形態において、下打ち縫いデータ作成処理を省略してもよい。水溶性シートに刺繍模様70を縫製する前に、下打ち縫いを縫製しなくてもよい。また、上記実施形態では、下打ち縫いはサテン縫いで行っているが、それ以外の種類の縫目であってもよく、例えば走り縫いであってもよい。

また、上記実施形態において、縫製対象物39に形成する穴形状はパネル操作で選択できるが、例えば、刺繍模様の形状に合わせて穴形状を自動的に作成するようにしてもよい。

また、上記実施形態において、下打ち縫いの他に、又は下打ち縫いに加えて、刺繍模様70の周囲に沿って縫うことによって、刺繍模様の形状が崩れないように補強してもよい。

また、上記実施形態では、刺繍模様の角部から穴の周縁部に向かって橋渡しが縫われるようになっているが、刺繍模様において角部以外の辺から穴の周縁部に向かって縫われてるようにしてもよい。

また、上記実施形態において、CPU61は、ROM62又はフラッシュROM64に記憶する穴の切断データ及び刺繍模様70の刺繍データに基づき、橋渡しデータを作成する。例えば、橋渡しデータは、外部機器によって作成されてもよい。外部機器として、例えば周知のPC(Personal computer)を使用してもよい。ミシン1は、外部機器において作成された橋渡しデータを取得してもよい。例えばPCは、作成した橋渡しデータをメモリーカードに記憶してもよい。ミシン1は、図示しないカードスロットを備え、橋渡しデータが記憶されたメモリーカードがカードスロットに挿入された場合に、メモリーカードに記憶された橋渡しデータを読み出すことによって取得してもよい。ミシン1は、取得した橋渡しデータに基づき、刺繍枠移動機構11及び針棒駆動機構32を駆動することによって、水溶性シート上において刺繍模様70の周囲に複数の橋渡しを形成してもよい。この場合において、外部機器が本発明の「刺繍データ作成装置」に相当する。

以上説明において、ミシン1は本発明の刺繍データ作成装置の一例である。S1の処理を実行するCPU61は本発明の穴データ取得手段の一例である。S2の処理を実行するCPU61は本発明の刺繍データ取得手段の一例である。S4の処理を実行するCPU61は本発明の多角形算出手段の一例である。S15の処理を実行するCPU61は本発明の線分作成手段の一例である。S16の処理を実行するCPU61は本発明の橋渡しデータ作成手段の一例である。S8の処理を実行するCPU61は本発明の下打ち縫いデータ作成手段の一例である。S33の処理を実行するCPU61は本発明の第1特定手段の一例である。S133の処理を実行するCPU61は本発明の第2特定手段の一例である。S41〜S43の処理を実行するCPU61は本発明の平均角度算出手段の一例である。

1 多針ミシン 39 縫製対象物 51 縫針 52 切断針 61 CPU 64 フラッシュROM 70 刺繍模様 72 多角形 75 刺繍模様 80 穴 81 円データ A1〜A8 橋渡しの線分 B1〜B5 下打ち縫いの線分 P1〜P18 頂点

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