熱伝導性シートおよび熱伝導性シートの製造方法

申请号 JP2016523508 申请日 2015-05-26 公开(公告)号 JPWO2015182600A1 公开(公告)日 2017-05-25
申请人 ポリマテック・ジャパン株式会社; 发明人 智功 山田; 智功 山田; 大希 工藤; 大希 工藤; 一浩 並木; 一浩 並木;
摘要 熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクス中にメッシュシートを有する熱伝導性シートについて、網目状補強材を液状組成物で被覆する工程をより効率的に行い得る構成とする。メッシュシート13を構成するフィラメントの縦横の本数の比が、横糸13bに対して縦糸13aが1.05倍〜1.56倍であるものとした。これにより熱伝導性シート11の強靱性や熱伝導性といった性能が向上する。
权利要求
  • 熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクス中にメッシュシートを有する熱伝導性シートにおいて、
    メッシュシートを構成するフィラメントの縦横の本数の比が、横糸に対して縦糸が1.05倍〜1.56倍であることを特徴とする熱伝導性シート。
  • メッシュシートの厚みが130μm以下であり、そのフィラメントの線径が90μm以下であり、メッシュシートの開口率が70%以上である請求項1記載の熱伝導性シート。
  • メッシュシートがモノフィラメントである樹脂繊維の平織り構造からなり、縦横のフィラメントの交点が固着している請求項1または請求項2記載の熱伝導性シート。
  • メッシュシートの比重が熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクスの比重よりも軽い請求項1〜請求項3何れか1項記載の熱伝導性シート。
  • メッシュシートの縦糸の長さ方向がシートの長手方向と略一致する請求項1〜請求項4何れか1項記載の熱伝導性シート。
  • 熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクス中にメッシュシートを有する熱伝導性シートの製造方法であって、
    メッシュシートを構成するフィラメントの縦横の本数の比が、横糸に対して縦糸が1.05倍〜2.00倍であり、
    硬化して熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクスとなる液状組成物をメッシュシートの縦糸の長さ方向に沿ってメッシュシート上に塗工する熱伝導性シートの製造方法。
  • 前記液状組成物を塗工する工程が、液状組成物の塗布位置に対してメッシュシートをその縦糸の長さ方向に移動させて塗布する工程である請求項6記載の熱伝導性シートの製造方法。
  • メッシュシートに液状組成物より低比重の材質を用い、液状組成物の塗布後に、液状組成物の中でメッシュシートを浮き上がらせる工程を設けた請求項6または請求項7記載の熱伝導性シートの製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、電子機器、ディスプレイ、電池、その他の機器・装置等に備わる電子部品の放熱や冷却といった熱対策に用いられる熱伝導性シートとその製造方法に関する。

    電子機器に実装されるCPU等の電子部品は発熱体であり、その冷却のためにヒートシンク等の放熱体が装着されている。 そして、発熱体と放熱体との間には、発熱体から放熱体への熱伝導を促進するため熱伝導性シートが介装されている。
    熱伝導性シートにおいて、熱の伝わり難さを示す指標である熱抵抗値を下げるには、発熱体や放熱体に対する追従性や密着性が良いことが求められる。 この観点からは柔軟な熱伝導性シートを用いることが好ましい。 ところが、熱伝導性シートの柔軟性が高くなるとその粘着性も高くなり、発熱体への取付作業が困難になることがある。
    また、熱伝導性シートの形状が薄いほど熱伝導性が向上するため、この観点からは、より薄い熱伝導性シートを用いることが好ましい。 ところが、薄すぎると取付作業時に伸びや、破れ、しわの発生等の不都合が生じるおそれがあり、その取扱い性が低下する。

    特開平7−014950号公報(特許文献1)や特開平7−266356号公報(特許文献2)には、軟らかいゴムまたはゲル状の熱伝導性シートに、ガラス製や金属製、樹脂製の織物といった網目状補強材を含有させ、取扱い性を良くした熱伝導性シートが開示されている。 こうした熱伝導性シートによれば、含有される網目状補強材によってシートの引張強度が高められることで取扱い性が良くなるのであるが、引張強度が高まることでシート厚を従来よりも薄くすることができ、より熱を伝え易くなるというメリットもある。

    特開平7−014950号公報

    特開平7−266356号公報

    網目状補強材が入った上記熱伝導性シートは、補強効果と熱伝導性に優れたものであるが、その製造には、網目状補強材の周囲をゴムやゲル状物となる前の液状組成物で被覆する工程を経る必要がある。 この被覆工程は、網目状補強材の上に液状組成物を塗布したり、液状組成物の中に網目状補強材を浸す工程となるが、網目状補強材の網目の指標となる開口率を低くすると、その開口に液状組成物が十分に入り込まず空隙が生じてシートの熱抵抗値が上がるという不都合が生じる。 そうした一方で、網目状補強材の開口率を高くすると、補強効果が不十分となりシート自体の引張強度が弱くなるといった不都合が生じる。 そのため、開口率の低い網目状補強材に液状組成物を十分に染み込ませる必要があり、その作業時間が長くかかったり、液状組成物粘度を低く調製するため熱伝導性充填材の添加量を制限したりと、制約が多かった。

    そこで本発明は、網目状補強材を液状組成物で被覆する工程を改良し、より効率的に熱伝導性シートを製造することを目的とする。 また、本発明は網目状補強材を液状組成物で被覆する工程を改良することで、より強靱性や熱伝導性といった性能が向上した熱伝導性シートを得ることを目的とする。

    即ち、次に示す発明を提供する。
    熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクス中にメッシュシートを有する熱伝導性シートについて、メッシュシートを構成するフィラメントの縦横の本数の比が、横糸に対して縦糸が1.05倍〜1.56倍であることを特徴とする熱伝導性シートである。

    高分子マトリクス中に熱伝導性充填材を含有するため、絶縁性の高分子マトリクスであっても熱伝導性を備えることができる。 また、高分子マトリクス中にメッシュシートを有するため、メッシュシートで高分子マトリクスを補強することができる。
    メッシュシートを構成するフィラメントの縦横の本数の比が、横糸に対して縦糸が1.05倍〜1.56倍であるため、縦糸どうしの間隔を狭くして、縦糸どうしの間の網目を小さくすることができる。 縦糸どうしの間隔が狭いため、縦糸どうしの間隔を広げる場合と比較して補強効果を高めることができる。 そうした一方で、横糸どうしの間隔をやや広くして、横糸どうしの間の網目を大きくすることができる。 横糸どうしの間隔が縦糸どうしの間隔よりもやや広いため、高分子マトリクスが形成される前の原料である液状組成物の網目への浸透を阻害し難い。 そのため、補強効果を損ねることなく、液状組成物の浸透を起こし易く製造が容易な熱伝導性シートとすることができる。

    メッシュシートの厚みが130μm以下であり、そのフィラメントの線径が90μm以下であり、メッシュシートの開口率が70%以上である熱伝導性シートとすることができる。
    メッシュシートの厚みが130μm以下で、そのフィラメントの線径が90μm以下としたため、厚みの薄い熱伝導性シートとすることができる。 また、メッシュシートの開口率を70%以上としたため、メッシュシート網目の間に液状組成物が浸透し易く製造が容易な熱伝導性シートとすることができる。

    メッシュシートがモノフィラメントである樹脂繊維の平織り構造からなり、縦横のフィラメントの交点が固着している熱伝導性シートとすることができる。
    メッシュシートの構造が、モノフィラメントである樹脂繊維の平織り構造からなりため、樹脂繊維の構成が単純で液状組成物が樹脂繊維の周囲を濡らしやすく、液状組成物と樹脂繊維との間に気泡が入りにくい。 また、縦横のフィラメントの交点が固着しているため、樹脂繊維が動き難く、補強効果を高いメッシュシートとすることができる。

    メッシュシートの比重が熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクスの比重よりも軽い熱伝導性シートとすることができる。
    メッシュシートの比重を熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクスの比重よりも軽くしたため、高分子マトリクスとなる前の液状組成物でメッシュシートを沈めたときに、液状組成物の中にメッシュシートを浮かび上がらせることができる。 そのため、完全に浮かび上がる前に液状組成物を固化すれば、高分子マトリクスの内部にメッシュシートが含有された熱伝導性シートを容易に製造することができる。

    メッシュシートの縦糸の長さ方向がシートの長手方向と略一致する熱伝導性シートとすることができる。
    メッシュシートの縦糸の長さ方向がシートの長手方向と略一致するため、熱伝導性シートの長手方向への引っ張りに対して短い間隔で存在する縦糸が抗するため、シートの長手方向に対する引張強度の高い熱伝導性シートとすることができる。

    そしてまた、熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクス中にメッシュシートを有する熱伝導性シートの製造方法であって、メッシュシートを構成するフィラメントの縦横の本数の比が、横糸に対して縦糸が1.05倍〜2.00倍であり、硬化して熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクスとなる液状組成物をメッシュシートの縦糸の長さ方向に沿ってメッシュシート上に塗工する熱伝導性シートの製造方法を提供する。

    熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクス中にメッシュシートを有する熱伝導性シートの製造方法であって、メッシュシートを構成するフィラメントの縦横の本数の比が、横糸に対して縦糸が1.05倍〜2.00倍であり、硬化して熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクスとなる液状組成物をメッシュシートの縦糸の長さ方向に沿ってメッシュシート上に塗工するため、その塗工過程で、液状組成物をメッシュシートの長方形の網目に容易に含浸させることができる。 そのため、メッシュシートと液状組成物との間に気泡が入り難く、品質の安定した熱伝導性シートを製造することができる。

    前記液状組成物を塗工する工程が、液状組成物の塗布位置に対してメッシュシートをその縦糸の長さ方向に移動させて塗布する工程である熱伝導性シートの製造方法を提供する。
    液状組成物を塗工する工程について、液状組成物の塗布位置に対してメッシュシートをその縦糸の長さ方向に移動させて塗布するため、メッシュシート等の原反を送り出し、巻き取る工程で液状組成物の塗布位置を固定することができる。 そのため、生産性の高い製造方法である。

    メッシュシートに液状組成物より低比重の材質を用い、液状組成物の塗布後に、液状組成物の中でメッシュシートを浮き上がらせる工程を設けた熱伝導性シートの製造方法とすることができる。
    メッシュシートに液状組成物より低比重の材質を用い、液状組成物の塗布後に、液状組成物の中でメッシュシートを浮き上がらせる工程を設けたため、メッシュシートの上から液状組成物を塗布すれば、その液状組成物の中でメッシュシートが浮き上がり、その浮き上がった状態で液状組成物を固化することにより、内部にメッシュシートを含有する熱伝導性シートを簡単に製造することができる。

    本発明の熱伝導性シートによれば、熱伝導性や取扱い性に優れている。
    また、本発明の熱伝導性シートの製造方法によれば、熱伝導性や取扱い性に優れた熱伝導性シートを効率的に製造することができる。

    一の実施形態の熱伝導性シートを示す平面図である。

    図1のSA−SA線模式断面図である。

    メッシュシートの部分拡大平面図である。

    液状組成物の塗工工程を示す説明図である。

    本発明について以下に示す実施形態に基づきさらに詳細に説明する。
    図1には、熱伝導性シート11の平面図を示す。 また図2には、その模式断面図を示す。 熱伝導性シート11は、熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクス12中にメッシュシート13を含有するものである。 メッシュシート13に形成された格子状の網目(貫通孔)に高分子マトリクス12が挿通しており、高分子マトリクス12中には熱を伝達し易いように熱伝導性充填材が分散されて含まれるため、シートの厚み方向に熱伝導性を有している。 したがって、ICやCPUなどの発熱体とヒートシンクやヒートパイプなどの放熱体との間にこのこの熱伝導性シート11を挟むようにして用いることで、発熱体から放熱体への熱伝達を速やかに進めることができる。

    高分子マトリクス12は、液状またはゲル状のゴムまたは高分子基材が硬化したものであり、硬化前の液状組成物は、主剤と硬化剤のような混合系からなるものとすることができる。 したがってこの液状組成物は、例えば、未架橋ゴムと架橋剤を含むものであったり、架橋剤を含む未架橋ゴムと架橋促進剤を含むものであったりすることができる。 また、その硬化反応は常温硬化であっても熱硬化であっても良い。 高分子マトリクス12がシリコーンゴムであれば、シリコーンゴム主剤と硬化剤であってビニル基含有シリコーン生ゴムと過酸化物などが例示できる。 また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーやポリアミド系熱可塑性エラストマーであれば、ジオールとジカルボン酸とすることができ、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーであれば、ジイソシアネートとジオールとすることができる。

    主剤と硬化剤は、混合前の少なくとも2成分の一方を主剤とし他方を硬化剤と呼んで区別するものであって、どちらを主剤と定義しても硬化剤と定義しても良いものとする。 従って、例えば、混合割合の少ない方、粘度の低い方を主剤とすることもできる。 更に、高分子基材は、こうした主剤と硬化剤のうち、硬化剤を含まない主剤だけであっても良い。 このように高分子マトリクス形成前の液状組成物を構成する成分は、高分子基材といっても、一般的な樹脂や高分子と称される程度の高分子量であることを必ずしも要しない。

    高分子マトリクス12の中に含ませる熱伝導性充填材には、例えば、金属や炭素、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化物、炭素繊維などからなる微細粉が挙げられる。 金属としては、銅、アルミニウムなどが挙げられ、炭素としてはピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、樹脂繊維を炭化処理した繊維、樹脂繊維を黒鉛化処理した繊維や、グラファイト粉末などが挙げられる。 熱伝導性シートに耐電圧性が求められる場合には、金属や炭素以外の熱伝導性充填材を用いることが好ましい。

    金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、石英などが挙げられ、金属窒化物としては、窒化ホウ素、及び窒化アルミニウムなどが挙げられる。 また、金属炭化物としては、炭化ケイ素などが挙げられ、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
    こうした熱伝導性充填材は、高分子マトリクス12中で一定方向に配向させることもでき、配向させた方向に熱伝導性が高まる点で好ましい。

    熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクス12の硬度は、日本工業規格であるJIS K 6253のタイプEの硬度計によって測定される値(以下「E硬度」という。)で5〜95、好ましくは55〜90である。 E硬度が95を超える場合、発熱体や放熱体の形状への追従性が十分に得られず、発熱体や放熱体と高分子マトリクス12との密着性が低下して熱伝導性シート11の熱伝導性が低下するおそれがある。 E硬度が90以下の場合には、発熱体や放熱体の形状に沿って高分子マトリクス12が良好に追従するため、発熱体や放熱体と熱伝導性シート11との密着性を十分に確保することができる。 更に、90以下のE硬度を有する高分子マトリクス12によって熱伝導性シート11の柔軟性が確保される。 そのため、例えば熱伝導性シート11が取り付けられた発熱体に加わる衝撃を熱伝導性シート11が吸収することにより、発熱体を好適に保護することができる。 しかし、E硬度が5より低くなると柔らかすぎて安定的に発熱体と放熱体との間に挟むことが困難にある。 そして、5〜95の中でも55〜90とすることが好ましいのは、熱伝導性シート表面の粘着性を適度に抑えることができることに加え、強度や取扱い性を高めることができるからである。

    高分子マトリクス12となる液状組成物には、熱伝導性充填材の他にも、熱伝導性シート11の生産性、耐候性、耐熱性など種々の性質を高める目的で種々の添加材を含んだものを用いることができる。 そうした添加材を例示すれば、可塑剤、補強材、着色剤、耐熱向上剤、カップリング剤、難燃剤、粘着剤、触媒、硬化遅延剤、劣化防止剤など、種々の機能性向上剤が挙げられる。

    熱伝導性充填材等も含んだ液状組成物の粘度は、25℃で7000〜120000cPであることが好ましく、15000〜65000cPであることがより好ましい。 7000cPより低粘度であると、熱伝導性充填材が液状組成物中で安定的に分散せず、熱伝導性充填材が均一に含有された高分子マトリクス12が得られにくいからであり、120000cPより高粘度であると、メッシュシート13の開口に液状組成物が染み込まず、気泡が入り易くなるからである。 また、15000〜65000cPの範囲であれば、メッシュシート13の開口に十分に染み込む程の粘度であると同時に熱伝導性充填材を適度に高充填できる程の粘度であるからである。

    メッシュシート13は、メッシュを構成するフィラメント(線材)を平織、綾織、朱子織、からみ織、模紗織、畳織等によって織ってシート状に形成したもの、またはフィラメントを織らずに重ねてシート状に形成したもの、さらにフィラメントを編んでシート状に形成したものなどを含む網目状物である。
    網目の形状は限定せず、網目はメッシュシート13の表側から裏側に至るものであれば良いが、網目となる貫通孔がメッシュシート13の面直方向に沿って形成されたものが好ましく、その点で畳織よりは平織が好ましい。

    また、メッシュを構成するフィラメントはメッシュシート13の面直方向での重なりが少ない方が好ましく、この点で模紗織よりは平織が好ましい。
    さらに、網目は規則的に形成される方が均一な熱伝導性能を与えることから好ましく、この点で不織布や編み物よりも織物が好ましい。
    そして、フィラメントの交点付近に熱伝導性充填材を含有した高分子マトリクスが入り込みにくい隙間を小さくできる点で、縦糸(経糸)13aと横糸(緯糸)13bの2方向のモノフィラメント(単繊維)であるフィラメントのみからなり、フィラメント同士が重なる交点が、1本の経糸と1本の緯糸のみからなる図3で示すメッシュシート13が最も好ましい。

    但し、メッシュシート13を構成するフィラメントの縦横の本数の比は異なるものとしており、より具体的には、横糸に対して縦糸が1.05倍〜1.56倍である。 横糸に対して縦糸を1.05倍以上としたため、縦糸どうしの間隔に比べて横糸どうしの間隔を広くすることができる。 したがって、縦糸の長さ方向に液状組成物を塗布すれば、メッシュシート13の上に液状組成物を塗布していく流れ作業の中で、メッシュシート13の開口(縦糸と横糸が交叉してできる網目)中に液状組成物を染み込ませるのに適当な時間の余裕を持たせることができる。 したがって、この開口に十分に液状組成物を染み込ませることができ、気泡の入り込みを少なくすることができる。

    これに対して、縦横の本数の比が同じである一般的なメッシュシートを用いると、開口に液状組成物が入りこむまでの十分な時間を取ることができず、気泡が入り易く、熱抵抗値の高い熱伝導性シートが生じるおそれがある。
    なお、単位としての「メッシュ」とは25.4mm(1インチ)内の線の数または網目数を指す。 密度(本/インチ)100であれば、100メッシュである。 また、目開きや、開口率(空間率)は次の式で定義される。
    目開き(mm)=(25.4/メッシュ数)−線径(mm)
    開口率(%)=((目開きmm)/(目開きmm+線径mm)) ×100

    メッシュシート13を構成するフィラメントの材質には、ガラスや、鉄、銅、黄銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。
    メッシュシート13の交点を熱融着する場合や圧着する場合は、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。 また、メッシュシート13が樹脂製の場合には、コロナ処理やUV改質等の表面処理を施したフィラメントからなるメッシュシート13とすることもできる。 そしてまた、熱伝導性シートに耐電圧性が求められる場合には、金属以外のメッシュシートを用いることが好ましい。

    これらの材質の中でも比重が0.90〜1.40となる樹脂製のメッシュシート13とすることが好ましい。 液状組成物の比重が1.60〜5.00であるため、上記比重であれば液状組成物中でメッシュシート13を浮き上がらせることができるからである。

    メッシュシート13の大きさは、高分子マトリクス12の熱伝導性能の維持、および取扱い性の観点から、その厚さは10μm〜500μm程度、開口の大きさは200μm〜1200μm、開口率は40%〜90%、線径は20μm〜300μm程度のものを用いることが好ましい。
    厚さ200μm程度の薄い熱伝導性シート11を得るためには、厚さ130μm以下、フィラメントの線径が90μm以下であり、メッシュの交点は融着して厚みを減らしたものがさらに好ましい。 また、開口率を70%以上とすることで、メッシュの開口を液状組成物が貫通しやすくなるためさらに好ましい。
    開口率を高めるためにはメッシュの密度が100メッシュ未満(100本未満/インチ)であることが好ましい。

    熱伝導性シート11の厚さは、メッシュシート13の厚さと同等以上となり0.1mm〜5mm程度が好ましい。 5mmを超えると熱伝導性能が低下(熱抵抗が高まる)するおそれがあり、また、0.1mm未満であると、メッシュシート13を用いても取扱い難いものとなるためである。

    熱伝導性シート11の製造方法の一例を説明する。
    硬化して高分子マトリクス12となる原料として、主剤と硬化剤に熱伝導性充填材、必要により種々の添加剤を入れ攪拌機で混合して調製した液状組成物を用意する。
    次に、図4で示すように、フィルムシート1上にメッシュシート13を乗せた原反をロールコーター2に通すことで、メッシュシート13の縦糸の長さ方向に沿って液状組成物14を塗布する。 この塗工工程で液状組成物14がメッシュシート13の開口(貫通孔)に入り込むとともに、比重の高い液状組成物14の中で比重の低いメッシュシート13が浮き上がる。
    液状組成物14の塗布には、グラビアコート、ロールコート、ナイフコート、コンマコート、リップコート、ダイコート、ディッピングなどを用いても良いし、あるいはまた、金型内にメッシュシート13を配置して液状組成物14を注入し一体成形する方法を用いても良い。

    そして、液状組成物14の表面まで完全にメッシュシート13が浮き上がる前に、紫外線の照射や加熱等の適当な硬化手段を施して液状組成物を硬化させ、高分子マトリクス12中にメッシュシート13を含有した大面積状の熱伝導性シートを得る。 この液状組成物の塗工において、原反の進行方向にメッシュシートの網目が広がっているため、その網目内に無理なく液状組成物を浸透させることができる。
    得られた熱伝導性シートは、適用する発熱体と放熱体の大きさに適応した大きさに裁断して所望の大きさの熱伝導性シート11を得る。

    巻物状の熱伝導性シートの裁断は、熱伝導性シート11の長手方向と縦糸の長さ方向が略同方向となるように行うことが好ましい。 熱伝導性シート11は、その取付け作業の際に、熱伝導性シート11の長手方向に引っ張られ易いため、この長手方向に対する引張強度が高い熱伝導性シート11とすることができるからである。
    また、大面積状の熱伝導性シートの裁断は、メッシュシートの縦糸、横糸のそれぞれの長さ方向に対して交叉する方向に裁断することも好ましい態様の一である。 裁断方向に対して縦糸、横糸の双方に交叉するため、どの向きに対しても引張強度が高い熱伝導性シート11とすることができるからである。

    なお、熱伝導性シート11の上記製造工程において、液状組成物14を塗布した側の表面には、液状組成物14の硬化後に保護フィルムを積層する工程を設ければ、熱伝導性シートをフィルムシート2と保護フィルムとで挟んで保護することができるため好ましい。 但し、液状組成物14の硬化前に保護フィルムを積層する工程は避けることが好ましい。 液状組成物14を保護フィルムで覆った後、硬化させると、液状組成物14と保護フィルムとの界面には、熱伝導性充填材の密度が少なくなるスキン層が形成されるため、熱伝導性が悪くなり、また易燃性になるおそれがあるからである。

    実験例1 : 高分子マトリクスとなる液状組成物として、熱伝導性充填材である酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウムと、硬化触媒とを液状シリコーンゴムに配合した粘度60000cPの混合物を用いた。 また、メッシュシートには、縦糸78メッシュ、横糸50メッシュの密度で、線径86μm、厚み130μmであるポリエステル単繊維からなる平織の交点融着メッシュを用いた。

    剥離シートであるPETフィルム上にメッシュシートを置き、その上にコーターを用いて厚み230μmとなるように、メッシュシートの縦糸の長さ方向に沿って上記液状組成物を塗工した。 そして、遠赤外線加熱炉で液状組成物を加熱硬化させて、熱伝導性シートを得た。
    この熱伝導性シートは、メッシュシートの上下に高分子マトリクスが広がり、開口には高分子マトリクスが貫通したものとなった。 熱伝導性シートの裏面を観察したが、高分子マトリクス内に気泡の混入は見当たらなかった。 耐電圧(絶縁破壊電圧)も5.0kVをクリアし、十分であった。

    実験例2 : 高分子マトリクスとなる液状組成物として、熱伝導性充填材である酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウムと、硬化触媒とを液状シリコーンゴムに配合した粘度60000cpの混合物を用いた。 また、メッシュシートには、縦糸60メッシュ、横糸40メッシュの密度で、線径72μm、厚み100μmであるポリエステル単繊維からなる平織の交点融着メッシュを用いた。 そして、厚みが200μmとなるように液状組成物を塗工した以外は実験例1と同様にして熱伝導性シートを得た。
    この熱伝導性シートは、メッシュシートの上下に高分子マトリクスが広がり、開口には高分子マトリクスが貫通したものとなった。 熱伝導性シートの裏面を観察したが、高分子マトリクス内に気泡の混入は見当たらなかった。 耐電圧も十分であった。

    実験例3 : メッシュシートに、縦糸50メッシュ、横糸35メッシュの密度で、線径89μm、厚み130μmであるポリエステル単繊維からなる平織の交点融着メッシュを用いた以外は実験例1と同様にして熱伝導性シートを得た。
    この熱伝導性シートは、メッシュシートの上下に高分子マトリクスが広がり、開口には高分子マトリクスが貫通したものとなった。 熱伝導性シートの裏面を観察したが、高分子マトリクス内に気泡の混入は見当たらなかった。 耐電圧も十分であった。

    実験例4 : メッシュシートには、縦糸40メッシュ、横糸38メッシュの密度で、線径89μm、厚み130μmであるポリエステル単繊維からなる平織の交点融着メッシュを用いた。 液状組成物の組成、塗工方法は実験例1と同じとした。
    この熱伝導性シートは、メッシュシートの上下に高分子マトリクスが広がり、開口には高分子マトリクスが貫通したものとなった。 また高分子マトリクス内に気泡の混入は生じなかった。

    実験例5 : メッシュシートには、縦糸54メッシュ、横糸30メッシュの密度で、線径89μm、厚み130μmであるポリエステル単繊維からなる平織の交点融着メッシュを用いた。 液状組成物の組成、塗工方法は実験例1と同じとした。
    この熱伝導性シートは、メッシュシートの上下に高分子マトリクスが広がり、開口には高分子マトリクスが貫通したものとなった。 熱伝導性シートの裏面を観察したが、高分子マトリクス内に気泡の混入は見当たらなかった。 耐電圧も十分であった。 しかしながら、熱伝導性シートの引張強度は、シートの横方向で10MPaと弱いものとなってしまった。

    実験例6 : 液状組成物の塗工をメッシュシートの横糸の長さ方向に沿って行う以外は実験例1と同様にして熱伝導性シートを得た。
    この熱伝導性シートは、メッシュシートの上下に高分子マトリクスが広がり、開口には高分子マトリクスが貫通したものとなった。 熱伝導性シートの裏面を観察したところ、気泡の混入が一部に見られた。 また、耐電圧は3.0kVをクリアできず耐電圧の要求特性を満たしていなかった。

    実験例7 : メッシュシートには、縦糸および横糸が30メッシュの密度で、線径70μm、厚み100μmであるポリエステル単繊維からなる平織の交点融着メッシュを用いた。 そして、厚みが200μmとなるように液状組成物を塗工した以外は実験例1と同様にして熱伝導性シートを得た。
    得られた熱伝導性シートは、引張強度がシートの縦方向、横方向の何れも低く取扱い性が悪かった。

    実験例8 : メッシュシートには、縦糸および横糸が50メッシュの密度で、線径50μm、厚み77μmであるポリエステル単繊維からなる平織の交点融着メッシュを用いた。 そして、厚みが180μmとなるように液状組成物を塗工した以外は実験例1と同様にして熱伝導性シートを得た。
    得られた熱伝導性シートは、引張強度がシートの縦方向、横方向の何れも10MPaと低く取扱い性が悪かった。

    実験例9 : メッシュシートには、縦糸および横糸が100メッシュの密度で、線径48μm、厚み80μmであるポリエステル単繊維からなる平織の交点融着メッシュを用いた。 そして、厚みが180μmとなるように液状組成物を塗工した以外は実験例1と同様にして熱伝導性シートを得た。
    得られた熱伝導性シートは、引張強度は高くなったものの、開口率が小さいためか液状組成物の染みこみが悪く、シート内にピンホールが発生した。 また耐電圧が劣るものとなった。
    熱伝導性シート内に気泡があると、局所的に薄い部分が発生するため、耐電圧性が弱くなるものと考えられる。 またメッシュ本数が多いため、難燃性「V−0」を得ることができなかった。

    上記実験例1〜実験例9について、その条件、試験結果を次の表1にまとめた。

    表1において「メッシュ」は、1インチあたりの(縦糸の数)/(横糸の数)を記載した。
    「開口率」は、値の大きい、横糸どうしの間のメッシュシートの開口率を記載した。
    「引張強度」は、各実験例の熱伝導性シートをメッシュシートの縦糸方向または横糸方向に沿って、引張試験用の試験片の形状にカットし、JIS K6251に準拠して引張試験を行い測定した。

    「難燃性」は、米国アンダー・ライターズ・ラボラトリーズ・インク(Under Writers Laboratories Inc)によって制定された燃焼試験(UL94)によって評価した。
    各実験例の熱伝導性シートを試験片(長さ127mm×幅12.7mm)の大きさにカットし、試験片の長手方向が鉛直方向となるように固定用クランプに保持した状態で、バーナーの炎に10秒間接炎した後、炎から離して各試験片の燃焼時間を記録した。 さらに、二度目の接炎後における火種の保持時間(グローイング時間)と、試験片の下方に配置されている脱脂綿を発火させる滴下物の有無とを記録した。 以上の操作を各試験片について、5回1組として行った。 そして、次の表2に示す判定基準に基づいて、“V−0”又は“V−1”についての合否を判定した。 なお、この難燃性の判定基準は、“V−0”の方が“V−1”よりも難燃性が高いことを示す。

    「耐電圧」は、JIS C2110に基づき、直径2.5mmの円柱状の電極間に試験片を挟み、耐電圧試験器(TOS8650、菊水電子工業株式会社製)を用い、所定の電圧(3kV、4kV、5kV)を180秒間加えた際に熱伝導性シートの破壊による通電があったか否かを観察した。 通電が無かった場合を“クリア”、通電があった場合を“×”とした。

    1 フィルムシート 2 ロールコーター(コーティングロール)
    11 熱伝導性シート 12 高分子マトリクス 13 メッシュシート 13a 縦糸 13b 横糸 14 液状組成物

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