【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、コンベヤベルトの移動方向に対して10゜〜70゜の傾斜角度を付けた綾織りのステープルファイバを含み、隣接糸の撚り目を同じ方向にした裏打ち織物を備えたコンベヤベルトに関する。 【0002】 【従来の技術】コンベヤベルトを使用する場合、動作状態によっては走行騒音が問題になる。 これを解消するため、コンベヤベルトの移動方向に対して10゜〜70゜の傾斜角度を付けた綾織りのステープルファイバを裏打ち織物のよこ糸に使用することが、日本特許公報第51 76/95号(JP−B2−7−5176)からすでに公知であり、本発明の包括的部分はそれに基づいている。 この手段によって、コンベヤベルトの摺動騒音を軽減することができたが、これらの裏打ち織物では、隆起部分を形成しているよこ糸が大きい騒音を発生する可能性がある。 それによって、各よこ糸でエッジのショック状の作用が発生し、これが騒音の発生と共にコンベヤベルトの振動を発生する。 【0003】引用のドイツ特許第GM6902532号には、コンベヤベルトの織物インサートとして山形斜紋織の一般的な織物を用いることが記載されている。 これにより、織物密度が高くなり、織物コアの強度が増す。 さらに、従来の織物インサートに比べて可撓性が高くなり、撚りセルロース・ステープルファイバを使用することによって構造強度が高くなる。 また、撚りセルロース・ステープルファイバは織物インサートの結束を向上させる。 【0004】ドイツ特許第8900626.7U1号から、走行を滑らかにするためにコンベヤベルトの裏打ちを立ち毛メリヤス生地として形成することが公知になっている。 さらに、そのコンベヤベルトには、切り込んでいない二重立ち毛メリヤス生地として形成された織物層が設けられている。 二重立ち毛メリヤス生地は上布と下布とを備えて、ループパイルがよこ糸に結びつけられている。 このため、コンベヤベルトに発生する張力は、上布と下布とによって支持される。 【0005】ドイツ特許出願第4339709A1号は、ステープルファイバを含み、コンベヤベルトに、またはフィルタ媒体として使用される多層形不織布の強度を向上させようとしている。 フォゲルスベルグの「通信ケーブル用の新規なVerseilverfahre n」(ジーメンス・ツァイツスクリフト50(197 6)第10号)は、S、Z及びSZ撚りの撚糸の撚り目を詳説している。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、ステープルファイバを含む裏打ち織物を有して、ほとんど走行騒音を生じないで走行して、ベルトの強い張力や良好な方向安定特性にもかかわらずエッジを越える時でもほとんど走行騒音を発生しないようにしたコンベヤベルトを設計するという問題に注意を向けている。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、移動方向に対して10゜〜70゜の傾斜角度を付けた綾織りのステープルファイバを含み、隣接糸の撚り目を同じ方向にした裏打ち織物を備えたコンベヤベルトであって、裏打ち織物では、ステープルファイバがたて糸として与えられており、その隣接糸は、それぞれの糸において撚り目がその長手方向において同じ方向になっているが、交互にS 撚り及びZ撚りになっている。 また、本発明は、張力を支持する部材も準備されており、その部材は織物として設けられるか、ステープルファイバによって被覆された糸にしたことを特徴とする。 本発明のさらなる実施態様は、従属請求項から理解されるであろう。 【0008】この解決手段によれば、裏打ち織物のステープルファイバがたて糸として使用されて、S撚り及びZ撚りが交互して隣接しており、また裏打ち織物はコンベヤベルトの移動方向に対して傾斜角度が10゜〜70 ゜、好ましくは30゜の綾織りを有しており、さらに、 コンベヤベルトでは張力支持部材が設けられているので、たて糸にステープルファイバを用いることが可能になり、従ってコンベヤベルトがエッジを越える時、ベルトの全幅にわたって斜めに延在しているステープルファイバによってベルトが畝状にならずにエッジを越えることができるようになる。 ステープルファイバを容易に摺動フィットさせることができる利点に加えて、とりわけ糸の撚り目の方向が交互していることから、あらゆる状態において振動がほとんどなく低騒音の完全に均一なコンベヤベルトの移動が得られる。 【0009】また、コンベヤベルトには、裏打ち織物に加えて、張力を支持する部材が準備されている。 たて糸に設けられたステープルファイバは低引っ張り強度しか備えていないので、これらの部材が引っ張り強度を高める。 一方では、張力を支持する部材は織物で形成される。 しかし、他方では、ステープルファイバは張力を支持する1本または幾本かの糸のシェルを形成するだけでもよい。 この場合、ステープルファイバは特に表面に位置して、騒音を抑える上記効果を生じる。 【0010】本発明の好適な実施態様によれば、裏打ち織物が綾織りである。 この場合、裏打ち織物の表面に位置するステープルファイバが、綾織りの傾斜角度によって縁部でも均一にフィットするのに加えて、互いに対して傾斜配置されていることからコンベヤベルトの最適方向安定性が得られる。 裏打ち織物が杉綾織りである場合も同様な利点が得られる。 また、その場合には、互いに対して傾斜配置された斜文によって、コンベヤベルトの方向安定性が促進される。 【0011】特に、裏打ち織物がK2/1の山形斜文織りである場合に最適状態が生じる。 この場合、コンベヤベルトの移動方向に対して特に好適な30゜の傾斜角度が生じる。 発明の範囲において、さらに、裏打ち織物が単繊条よこ糸を含むことも考えられる。 単繊条よこ糸によってコンベヤベルトの幅方向の剛直性が高まるため、 コンベヤベルトの平坦性が良好になる。 図面に本発明の実施形態が示されており、それを以下に詳細に説明する。 【0012】 【発明の実施の形態】図面において、コンベヤベルト1 は、図6に示されているように、裏打ち織物2を有しており、これは接着剤となる中間層3を介して、張力を支持する部材4に接着されている。 本例では、部材4は織物として形成されている。 張力を支持する織物の上側には、図示されていない物品を載せて搬送する機能層5が設けられている。 【0013】図1から、裏打ち織物2においてステープルファイバ6がたて糸として設けられていることがわかるであろう。 さらに、裏打ち織物2は単繊条よこ糸7を有している。 裏打ち織物2が山形斜文織りであるから、 表面においてステープルファイバ6がコンベヤベルト1 の移動方向に角度を付けて設けられている。 さらに、ステープルファイバ6は単繊条よこ糸7よりも相当に直径が大きい。 そのため、裏打ち織物2はジャークを伴わないでエッジを越えることができる。 結局、コンベヤベルト1の走行騒音の相当な低下はジャークのない摺動から得られる。 Nm34/2以上の糸強さを備えたたて糸は、畝のないソフトなフィッティングという所望の効果を達成するのに十分なかさ高性を与えることがわかった。 単繊条7は山形斜文織りで覆われている。 【0014】さらに、山形斜文織りで裏打ち織物2を形成することによって、そのように設計されたコンベヤベルト1の方向安定性を確実なものにすることができる。 好適な実施形態では、たて糸は、3.3dtexの番手のポリエステル・フィラメントからなる60mmステープル長さのリングスパン・ステープルファイバ6である。 糸は1メートル当たり300撚りで、S撚り及びZ 撚りの糸が交互している。 よこ糸7は、0.3mmのポリエステル・モノフィラメントからなる。 織りは、綾K 2/1の山形斜文織りで、2cm幅で交互している。 図2から、K2/1の山形斜文織りの基本構造がわかるであろう。 図3から、単繊条よこ糸7がたて糸を形成しているステープルファイバの周囲をどのように通っているかがわかる。 【0015】図4は、K2/1の杉綾織りの基本構造を示している。 また、図5のたて糸断面から、よこ糸7及びステープルファイバ6の配置が明らかである。 原理的には、例えば綾2/1、綾3/1、綾2/2の3種類の伝統的な綾織りも使用できる。 しかし、伝統的な綾織りでは、移動方向の角度に直線的に延在して、ステープルファイバ6で形成された支持領域が生じるため、状況によってはこれらの領域がコンベヤベルトの斜行を引き起こすであろう。 前述したように、山形斜文織りによって回避される。 原理的には、綾勾配の傾斜角度は、ステープルファイバ6が高密度に設けられるほど急になる。 調整が開いているほど、綾勾配がなだらかになる。 杉綾織りにより、裏当て形織物2がエッジを越える時にステープルファイバ6が連続的に通過し、この通過によって、 エッジでの横方向ジャークが回避され、このためにこれまで達成されなかった低騒音レベルのコンベヤベルト1 が得られる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 綾織りの裏打ち織物の拡大した平面図である。 【図2】 綾2/1の綾織りを構成している、裏打ち織物の基本織りパターンを示している。 【図3】 綾2/1の綾織りの織り断面を示している。 【図4】 綾2/1の杉綾織りの裏打ち織物を示している。 【図5】 綾2/1の杉綾織りの織り断面を示している。 【図6】 本発明によるコンベヤベルトの断面図である。 【符号の説明】 1 コンベヤベルト 2 裏打ち織物 4 張力支持部材 6 ステープルファイバ ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ブルクハルト・ケーニヒ ドイツ連邦共和国 デー31535 ノイシュ タット・イム ブルッヒェ・6 |