【発明の詳細な説明】 【０００１】 【産業上の利用分野】本発明は，カードシリンダと，搬送空気流中をカードシリンダから飛び去る繊維用の連続的に動かされる通気性捕集面と，カードシリンダとは反対の側で捕集面に続く吸引箱と，カードシリンダと捕集面との間にある吸引通路とを有する，繊維ウエブの製造装置に関する。 【０００２】 【従来の技術】原料ウエブから繊維ウエブを製造するため，カードシリンダにより原料ウエブを個別繊維に開繊し，個別繊維により形成される被覆繊維を，カードシリンダに対して接線をなす搬送空気流により速心力の作用で吹き飛ばし，繊維ウエブを形成するためカードシリンダの下に設けられて連続的に動かされかつ搬送空気流を通される捕集面上に個別繊維を堆積させることは公知である（米国特許第３６４１６２８号明細書）。 この装置の欠点は，特に単位時間当り繊維流量が大きい場合，個別繊維を必要な均一さで捕集面へもたらすことが不可能なことである。 なぜならば，カードシリンダの開繊範囲と捕集面の繊維衝突範囲との間にあける繊維の飛行長さが，必然的にカードシリンダの直径に関係するので，特に動作幅が大きいと，この大きい動作幅が大きい直径のカードシリンダを必要とするため，従つて繊維の大きい飛行距離を必要とするので，繊維が塊になる危険を考慮せねばならない。 【０００３】カードシリンダからの繊維の均一な剥離を保証し，剥離された繊維を障害なく捕集面へもたらすため，カードシリシダと捕集面との間において，カードシリンダに対してほぼ半径方向に向く複数の吸引通路をカードシリンダの回転方向に前後して設け，カードシリシダにより個別繊維に開繊される原料ウエブを複数の繊維部分流で順次捕集面へもたらすことも，既に提案されている。 これらの個々の繊維部分流の繊維量は少ないため，これらの繊維部分流内で塊を形成する傾向は著しく少ない。 しかしカードシリンダから繊維を複数の繊維部分流で層状に剥離するには，多額の費用を伴う。 【０００４】 【発明が解決しようとする課題】従つて本発明の根底にある課題は，カードシリンダからの繊維の有利な剥離条件が保証されるのみならす，繊維の塊形成も回避することができるように，最初にあげた種類の繊維ウエブ製造装置を構成することである。 【０００５】 【課題を解決するための手段】この課題を解決するため本発明によれば，吸引通路が捕集面に直接対向する周範囲でカードシリンダに続き，この範囲において，カードシリンダの回転方向に関して到来側及び退出側の通路壁がカードシリンダへ続く範囲で，カードシリンダ回転方向に抗して到来側通路壁に続くシリンダカバー及びカードシリンダ回転方向に退出側通路壁に続くシリンダカバーとカードシリンダとの間に生ずる吸引通路用給気通路が，カードシリンダの動作幅にわたつて延びている。 【０００６】 【発明の効果】捕集面とこの捕集面に直接対向するカードシリンダの周範囲との間に吸引通路が設けられているので，この吸引通路の長さ従つて空気搬送区間の長さを，カードシリンダの直径に関係なくそのつどの要求に応じて選ぶことができる。 それにより大きい直径のカードシリンダでも，繊維の平均飛行軌道長を塊形成のおそれのない寸法に限定することができる。 方向性がなく繊維配列がランダムな繊維ウエブを製造するための条件は，カードシリンダから捕集面への飛行中繊維に対して，繊維のランダムな配列を妨げる方向力が搬送空気流を介して及ぼされず，従つて捕集面の方へ搬送空気流の加速が防止されることである。 この要求は，捕集面に直接対向する周範囲においてカードシリンダに続く吸引通路によつて有利にかなえられる。 なぜならば，カードシリンダの動作幅にわたつて延びる側方給気通路によつて，吸引箱を介してのみ捕集面へ吸引される充分な搬送空気流が与えられる時，この吸引通路における流れの状態を構造により規定できるからである。 この点で特に退出側通路壁の範囲にある給気通路を経て吸引される部分空気流が重要であり，この部分空気流がカードシリンダから繊維を塊なしに剥離するのを助長すると共に，吸引通路の方へ繊維を偏向させる。 この目的のため給気通路が，退出側通路壁の範囲で，カードシリンダとその回転方向において退出側通路壁に続くシリンダカバーとの間に形成されるので，この給気通路内の空気流はカードシリンダの回転方向とは逆に流れ，それにより，場合によつてはカードシリンダにより半径方向吸引通路の範囲から運び出される繊維の確実な剥離が行われ，これらの繊維はカードシリンダの回転方向とは逆向きの搬送空気流により吸引通路へ戻される。 【０００７】到来側通路壁の範囲にある給気通路もシリンダカバーとカードシリンダとの間で吸引を行うので，
この給気通路の範囲で繊維の剥離が早期に行われ，従つて全体として特に有利な剥離条件が与えられて，カードシリンダの歯の歯面を強く傾斜させるのを可能にし，それによりカードシリンダのカード作用を著しく改善することができる。 【０００８】 【実施態様】カードシリンダの回転方向とは逆向きに吸引通路へ流入する給気が，カードシリンダの回転方向に流入する給気と混合して，吸引通路内の繊維搬送に不利な影響を及ぼさないようにするため，本発明の別の構成では，吸引通路が，給気通路から姶まつて到来側通路壁及び退出側通路壁の範囲でまずノズル状に細くなり，それから捕集面の方へデイフユーザ状に広がつている。 それによりまず吸引通路のノズル状に細くなる範囲において両方の給気流の混合が助長されるので，繊維搬送のために均一な搬送空気流が次の通路部分に通され，デイフユーザ状広がりのためこの通路部分は渦のない繊維搬送を保証するのみならす，流れ状態を鎮静化する。 この鎮静化は，それにより繊維へのすべての方向づけ作用が可能な限り回避されるので，ランダム配列の繊維雄積にとつて著しく重要である。 このような方向づけ作用は，搬送空気流の加速が行われる時常に予想される。 【０００９】 【実施例】図面には本発明の実施例が示されている。 図示した繊維ウエブ製造装置は，大体において歯群を持つカードシリンダ１と，連続的に動かされる通気性捕集面２と，捕集面２とこの捕集面２に直接対向するカードシリンダ１の周範囲との間に延びる吸引通路３とから成つている。 カードシリンダ１とは反対の側で捕集面２に吸引箱４が続いており，捕集面２を通して吸引通路３から搬送空気を吸い出す。 【００１０】原料ウエブは，通常のように搬送ベルト５
を介して，樋状テーブル６と供給ローラ７とから成るカードシリンダ１用樋状供給口８へ供給され，原料ウエブが個別繊維に開繊される。 カードシリンダ１の回転方向において樋状供給口８に続くウオーカ・ストリツパ対９
を介して，被覆繊維の付加的な均一化が行われ，これらの繊維は続いて吸引通路３へ送られる。 【００１１】吸引通路３を通る吸引流用の搬送空気は，
到来側通路壁３ａ及び退出側通路壁３ｂの所にあつてカードシリンダ１とシリンダカバー１２及び１３との間に形成される給気通路１０及び１１を通つて吸引される。
給気通路１０及び１１を通る空気流は，繊維に及ぼされる遠心力と共同作用して，個別繊維をカードシリンダ１
から剥離し，更に繊維を捕集面２へ搬送する。 捕集面２
上へ繊維を均一に堆積するための条件は，まずカードシリンダ１からの障害のない繊維剥離と，吸引通路３内における障害のない繊維搬送である。 個別化された繊維のカードシリンダ１からの遠心力による剥離は，吸引通路３へ達する前に，特に給気通路１０を通る給気流によつて，助長される。 【００１２】退出側通路壁３ｂの範囲で，給気通路１１
を通つて供給される空気流は，カードシリンダ１の外周に沿つてカードシリンダ１の回転方向とは逆に吸引通路３へ流れるので，この逆向きの空気流により，場合によつてはカードシリンダ１により吸引通路３の範囲から運び出される残留繊維もカードシリンダ１から剥離されて，再び吸引通路３へ戻される。 給気通路１１を通つて吸引されるこの給気流は，更に吸引通路３の方向への繊維の偏向を助長する。 【００１３】給気通路１０及び１１を通る給気流から構成される搬送空気流中を捕集面２へ搬送される繊雄が，
方向性なしに均一なランダム配列で捕集面２上に堆積されるようにするため，特に図２からわかるように，吸引通路３はまず両方の給気流の混合範囲でノズル状に細くなり，このノズル状縮小部に続いて再び捕集面２の方へデイフユーザ状に広がつており，図２においてノズル状に細くなる通路部分は１４で示され，デイフユーザ状に広がる通路部分は１５で示されている。 この通路構成により，互いに逆向きの給気流から形成される共通な搬送空気流が捕集面２を通つて吸い出される前に，これら両方の給気流の有利な混合が行われる。 この共通な搬送空気流は吸引通路３のデイフユーザ状広がりのため鎮静化され，それにより捕集面２上に堆積される繊維のランダム配列が助長される。 【００１４】繊維の均一な堆積が実際に保証されるようにするため，捕集面２を通して搬送空気流が適当に吸い出されるようにせねばならない。 この目的のため，吸引箱４を捕集面２の移動方向に順次に続いて互いに分離した個々の吸引部分４ａに区分し，これらの吸引部分の少なくとも群毎に異なる負圧を印加することによつて，吸引空気流の流れ分布が調節される。 個々の吸引部分４ａ
の範囲における異なる吸引出力のため，捕集面２を通る吸引区域の範囲において，吸引通路３の搬送空気流に対して吸引流の異なる影響が及ぼされるので，適当な流れ分布では，捕集面２の範囲においても充分な層流が得られる。 【図面の簡単な説明】 【図１】本発明による繊維ウエブ製造装置の概略縦断面図である。 【図２】吸引通路の範囲における図１の装置の拡大図である。 【符号の説明】 １ カードシリンダ ２ 捕集面 ３ 吸引通路 ３ａ，３ｂ 通路壁 ４ 吸引箱 １０，１１ 給気通路 １２，１３ シリンダカバー |
