RESIN COMPOSITION FOR MOLDING, AND ELECTRONIC COMPONENT DEVICE

专利类型 发明申请 法律事件
专利有效性 公开 当前状态
申请号 PCT/JP2023041786 申请日 2023-11-21
公开(公告)号 WO2024111574A1 公开(公告)日 2024-05-30
申请人 RESONAC CORP; 申请人类型 企业
发明人 TANAKA MIKA; HORIE TAKAHIRO; TAKEUCHI YUMA; SUKEGAWA YUTA; 第一发明人 TANAKA MIKA
权利人 RESONAC CORP 权利人类型 企业
当前权利人 RESONAC CORP 当前权利人类型 企业
省份 当前专利权人所在省份: 城市 当前专利权人所在城市:
具体地址 当前专利权人所在详细地址: 邮编 当前专利权人邮编:
主IPC国际分类 C08L63/00 所有IPC国际分类 C08L63/00C08G59/30C08K3/013C08L23/18C08L23/30C08L35/00H01L23/29H01L23/31
专利引用数量 12 专利被引用数量 0
专利权利要求数量 0 专利文献类型 A1
专利代理机构 专利代理人
摘要 This resin composition for molding includes: a sulfur atom-including epoxy resin; a curing agent; a release agent; an inorganic filler; and a copolymer of a C5-30 α-olefin and at least one of maleic anhydride and a maleic anhydride derivative.
权利要求
  •  硫黄原子含有型エポキシ樹脂と、硬化剤と、離型剤と、無機充填材と、炭素数5~30のα-オレフィンと無水マレイン酸及び無水マレイン酸誘導体の少なくとも一方との共重合体と、を含有する成形用樹脂組成物。
  •  前記硫黄原子含有型エポキシ樹脂が、下記一般式(B)で表される化合物を含む請求項1に記載の成形用樹脂組成物。 (一般式(B)中、R10は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。)
  •  前記離型剤が、酸化ポリエチレンを含む請求項1に記載の成形用樹脂組成物。
  •  前記酸化ポリエチレンが、直鎖型酸化ポリエチレンを含む請求項3に記載の成形用樹脂組成物。
  •  前記酸化ポリエチレンが、分枝型酸化ポリエチレンを含む請求項3に記載の成形用樹脂組成物。
  •  前記酸化ポリエチレンの重量平均分子量が、2800以上である請求項3に記載の成形用樹脂組成物。
  •  前記酸化ポリエチレンの酸価が、2mgKOH/g~50mgKOH/gである請求項3に記載の成形用樹脂組成物。
  •  前記共重合体が、下記一般式(C)で表される構造単位及び下記一般式(D)で表される構造単位を含む請求項1に記載の成形用樹脂組成物。 (一般式(C)及び一般式(D)中、R11は炭素数3~28の一価の脂肪族炭化水素基を示し、R12及びR13は各々独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。)
  •  支持部材と、前記支持部材上に配置された電子部品と、前記電子部品を封止する請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の成形用樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。
  • 说明书全文

    成形用樹脂組成物及び電子部品装置

     本開示は、成形用樹脂組成物及び電子部品装置に関する。

     従来から、トランジスタ、IC(integrated circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の電子部品装置の素子封止の分野では、生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となっており、エポキシ樹脂組成物が封止用エポキシ樹脂成形材料として広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性のバランスに優れているためである。

     電子部品装置の生産効率の向上及び良好な連続成形性のため、一般に、エポキシ樹脂組成物には、金型からの円滑な脱型を目的に離型剤が添加されている。離型剤としては、α-オレフィンと無マレイン酸との共重合体(例えば、特許文献1参照)、α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体をエステル化した化合物(例えば、特許文献2及び3参照)、酸化型ポリオレフィン(例えば、特許文献4参照)等の報告がある。また、酸化ポリオレフィン系ワックス化合物である離型剤と、α-オレフィンと無水マレイン酸又は無水マレイン酸誘導体等との共重合体と、の組み合わせにより良好な離型性及び良好なパッケージ外観を達成する方法(例えば、特許文献5参照)も報告されている。

      特許文献1: 特開平10-36486号公報


      特許文献2: 特開2001-247748号公報


      特許文献3: 特開2003-64239号公報


      特許文献4: 特開2006-182913号公報


      特許文献5: 特開2005-255978号公報

     電子部品装置の生産効率の向上及び良好な連続成形性の実現のため、エポキシ樹脂組成物についてのさらなる離型性の向上が望まれている。


     本開示は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、離型性に優れる成形用樹脂組成物、及びこれを用いた電子部品装置を提供することを課題とする。

     前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。


      <1> 硫黄原子含有型エポキシ樹脂と、硬化剤と、離型剤と、無機充填材と、炭素数5~30のα-オレフィンと無水マレイン酸及び無水マレイン酸誘導体の少なくとも一方との共重合体と、を含有する成形用樹脂組成物。


      <2> 前記硫黄原子含有型エポキシ樹脂が、下記一般式(B)で表される化合物を含む<1>に記載の成形用樹脂組成物。

    (一般式(B)中、R10は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。)


      <3> 前記離型剤が、酸化ポリエチレンを含む<1>又は<2>に記載の成形用樹脂組成物。


      <4> 前記酸化ポリエチレンが、直鎖型酸化ポリエチレンを含む<3>に記載の成形用樹脂組成物。


      <5> 前記酸化ポリエチレンが、分枝型酸化ポリエチレンを含む<3>又は<4>に記載の成形用樹脂組成物。


      <6> 前記酸化ポリエチレンの重量平均分子量が、2800以上である<3>~<5>のいずれか1項に記載の成形用樹脂組成物。


      <7> 前記酸化ポリエチレンの酸価が、2mgKOH/g~50mgKOH/gである<3>~<6>のいずれか1項に記載の成形用樹脂組成物。


      <8> 前記共重合体が、下記一般式(C)で表される構造単位及び下記一般式(D)で表される構造単位を含む<1>~<7>のいずれか1項に記載の成形用樹脂組成物。

    (一般式(C)及び一般式(D)中、R11は炭素数3~28の一価の脂肪族炭化水素基を示し、R12及びR13は各々独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。)


      <9> 支持部材と、前記支持部材上に配置された電子部品と、前記電子部品を封止する<1>~<8>のいずれか1項に記載の成形用樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。

     本開示によれば、離型性に優れる成形用樹脂組成物、及びこれを用いた電子部品装置を提供することができる。

    実施例1~実施例5及び比較例1~比較例3についてのせん断離型強度の推移を示す図である。

    実施例6及び比較例4についてのせん断離型強度の推移を示す図である。

     以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。

     本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。


     本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。


     本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。


     本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。


     本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。

    <成形用樹脂組成物>


     本開示の成形用樹脂組成物は、硫黄原子含有型エポキシ樹脂と、硬化剤と、離型剤と、無機充填材と、炭素数5~30のα-オレフィンと無水マレイン酸及び無水マレイン酸誘導体の少なくとも一方との共重合体(以下、特定共重合体と称することがある。)と、を含有する。


     本開示の成形用樹脂組成物は、離型性に優れる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。


     特定共重合体は、炭素数5~30のα-オレフィン由来の疎水性構造単位と無水マレイン酸及び無水マレイン酸誘導体の少なくとも一方由来の親水性構造単位とを分子内に有する。そのため、特定共重合体を用いることで、離型剤をエポキシ樹脂中に良好に分散することができ、成形用樹脂組成物を硬化して硬化物とした場合に、硬化物中に離型剤が均一に分散しやすい。


     また、硫黄原子含有型エポキシ樹脂を用いることで、硬化物の表面に離型剤がにじみ出しやすくなる。


     硬化物中に均一に分散した離型剤は、硬化物の表面から均一ににじみ出しやすい。そのため、硬化物が金型から脱離しやすくなる。さらに、硬化物の表面からにじみ出した離型剤が金型の表面に付着した状態で電子部品の封止を繰り返すことで、金型の表面に付着する離型剤の量が増加するため、硬化物が金型からさらに脱離しやすくなる。


     以上のことから、本開示の成形用樹脂組成物は、離型性に優れると推察される。

     以下、成形用樹脂組成物を構成する各成分について説明する。本開示の成形用樹脂組成物は、エポキシ樹脂として硫黄原子含有型エポキシ樹脂と、硬化剤と、離型剤と、無機充填材と、特定共重合体と、を含有し、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。

    (エポキシ樹脂)


     本開示の成形用樹脂組成物は、エポキシ樹脂として硫黄原子含有型エポキシ樹脂を含む。本開示の成形用樹脂組成物は、硫黄原子含有型エポキシ樹脂以外のその他のエポキシ樹脂を含んでもよい。


     本開示の成形用樹脂組成物がその他のエポキシ樹脂を含む場合、エポキシ樹脂に占める硫黄原子含有型エポキシ樹脂の割合は、5質量%~50質量%が好ましく、10質量%~40質量%がより好ましく、18質量%~30質量%がさらに好ましい。


     成形用樹脂組成物の全体に占めるエポキシ樹脂の質量割合は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から0.5質量%~30質量%であることが好ましく、2質量%~20質量%であることがより好ましく、3.5質量%~13質量%であることがさらに好ましい。

     硫黄原子含有型エポキシ樹脂は、分子中に硫黄原子を含むものであればその構造に特に限定はない。硫黄原子含有型エポキシ樹脂は、例えば、ジフェニルスルフィド構造を有するエポキシ化合物を含んでもよく、下記一般式(B)で表される化合物を含んでもよい。

     一般式(B)中、R10は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。


     R10で表される炭素数1~18の1価の有機基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基などが挙げられる。


     一般式(B)で表される化合物の中でも、R10のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3及び3’位がtert-ブチル基であり、6及び6’位がメチル基であり、それ以外のR10が水素原子であるYSLV-120TE(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。

     その他のエポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を有するものであればその種類は特に制限されない。

     その他のエポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはアクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。その他のエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

     その他のエポキシ樹脂は、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の少なくともいずれか1つを含むことが好ましく、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂又はビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。

     エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。


     エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。

     エポキシ樹脂が固体である場合、エポキシ樹脂の軟化点又は融点は特に制限されない。エポキシ樹脂の軟化点又は融点は、成形性と耐リフロー性の観点からは40℃~180℃であることが好ましく、成形用樹脂組成物の調製の際の取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。


     エポキシ樹脂の融点又は軟化点は、示差走査熱量測定(DSC)又はJIS K 7234:1986に準じた方法(環球法)で測定される値とする。

    (硬化剤)


     本開示の成形用樹脂組成物は、硬化剤を含む。


     硬化剤としては、成形性及び信頼性の観点からフェノール硬化剤が好ましい。硬化剤としては、硬化物の誘電率及び誘電正接を低く抑える観点から活性エステル化合物が好ましい。硬化剤としては、フェノール硬化剤及び活性エステル化合物以外のその他の硬化剤を用いてもよい。その他の硬化剤としては、酸無水物硬化剤、アミン硬化剤等が挙げられる。


     成形用樹脂組成物は、硬化剤を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。


     成形用樹脂組成物が硬化剤を2種以上含む場合、2種類以上のフェノール硬化剤を用いてもよいし、2種類以上の活性エステル化合物を用いてもよいし、フェノール硬化剤と活性エステル化合物とを併用してもよい。

    -活性エステル化合物-


     ここで、活性エステル化合物とは、エポキシ基と反応するエステル基を1分子中に1個以上有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有する化合物をいう。

     硬化剤として活性エステル化合物を用いると、硬化剤としてフェノール硬化剤を単独で用いた場合に比べ、硬化物の誘電率及び誘電正接を低く抑えることができる。その理由は以下のように推測される。


     エポキシ樹脂とフェノール硬化剤との反応においては、2級水酸基が発生する。これに対して、エポキシ樹脂と活性エステル化合物との反応においては、2級水酸基のかわりにエステル基が生じる。エステル基は、2級水酸基に比べて極性が低い故、硬化剤として活性エステル化合物を含む成形用樹脂組成物は、硬化剤として2級水酸基を発生させる硬化剤のみを含む成形用樹脂組成物に比べて、硬化物の誘電率及び誘電正接を低く抑えることができると推察される。


     また、硬化物中の極性基は硬化物の吸水性を高めるところ、硬化剤として活性エステル化合物を用いることによって硬化物の極性基濃度を抑えることができ、硬化物の吸水性を抑制することができる。そして、硬化物の吸水性を抑制すること、つまりは極性分子であるHOの含有量を抑制することにより、硬化物の誘電率及び誘電正接をさらに低く抑えることができると推察される。

     活性エステル化合物は、エポキシ基と反応するエステル基を分子中に1個以上有する化合物であればその種類は特に制限されない。活性エステル化合物としては、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N-ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ化合物のエステル化物等が挙げられる。

     活性エステル化合物としては、例えば、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸の少なくとも1種と脂肪族ヒドロキシ化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の少なくとも1種とから得られるエステル化合物が挙げられる。脂肪族化合物を重縮合の成分とするエステル化合物は、脂肪族鎖を有することによりエポキシ樹脂との相溶性に優れる傾向にある。芳香族化合物を重縮合の成分とするエステル化合物は、芳香環を有することにより耐熱性に優れる傾向にある。

     活性エステル化合物の具体例としては、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが挙げられる。中でも、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルプロパン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン酸等の芳香環の水素原子の2~4個をカルボキシ基で置換した芳香族カルボン酸成分と、前記した芳香環の水素原子の1個を水酸基で置換した1価フェノールと、前記した芳香環の水素原子の2~4個を水酸基で置換した多価フェノールと、の混合物を原材料として、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが好ましい。すなわち、上記芳香族カルボン酸成分由来の構造単位と上記1価フェノール由来の構造単位と上記多価フェノール由来の構造単位とを有する芳香族エステルが好ましい。

     活性エステル化合物の具体例としては、特開2012-246367号公報に記載されている、脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール化合物が結節された分子構造を有するフェノール樹脂と、芳香族ジカルボン酸又はそのハライドと、芳香族モノヒドロキシ化合物と、を反応させて得られる構造を有する活性エステル樹脂が挙げられる。当該活性エステル樹脂としては、下記の構造式(1)で表される化合物が好ましい。

     構造式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは非置換のベンゼン環、非置換のナフタレン環、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゼン環若しくはナフタレン環、又はビフェニル基であり、Yはベンゼン環、ナフタレン環、又は炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゼン環若しくはナフタレン環であり、kは0又は1であり、nは繰り返し数の平均を表し0~5である。

     構造式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(1-1)~(1-10)が挙げられる。構造式中のt-Buは、tert-ブチル基である。

     活性エステル化合物の別の具体例としては、特開2014-114352号公報に記載されている、下記の構造式(2)で表される化合物及び下記の構造式(3)で表される化合物が挙げられる。

     構造式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Zは非置換のベンゾイル基、非置換のナフトイル基、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゾイル基又はナフトイル基、及び炭素数2~6のアシル基からなる群から選ばれるエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であり、Zのうち少なくとも1個はエステル形成構造部位(z1)である。

     構造式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Zは非置換のベンゾイル基、非置換のナフトイル基、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゾイル基又はナフトイル基、及び炭素数2~6のアシル基からなる群から選ばれるエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であり、Zのうち少なくとも1個はエステル形成構造部位(z1)である。

     構造式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(2-1)~(2-6)が挙げられる。

     構造式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(3-1)~(3-6)が挙げられる。

     活性エステル化合物としては、市販品を用いてもよい。活性エステル化合物の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」(DIC株式会社製);芳香族構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」、「EXB-8」、「EXB-9425」(DIC株式会社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル株式会社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル株式会社製);等が挙げられる。

     活性エステル化合物のエステル当量(分子量/エステル基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、150g/eq~400g/eqが好ましく、170g/eq~300g/eqがより好ましく、200g/eq~250g/eqがさらに好ましい。


     活性エステル化合物のエステル当量は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。

    -フェノール硬化剤-


     フェノール硬化剤として具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等と、から合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンと、から共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

     フェノール硬化剤の水酸基当量は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、フェノール硬化剤の水酸基当量は70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。


     フェノール硬化剤の水酸基当量は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。

     エポキシ樹脂と硬化剤との当量比、すなわちエポキシ樹脂中の官能基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中の官能基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える観点からは、0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性と耐リフロー性の観点からは、0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。

     硬化剤として活性エステル化合物とフェノール硬化剤とが併用される場合、活性エステル化合物に含まれるエステル基と、フェノール硬化剤に含まれるフェノール水酸基とのモル比率(エステル基/フェノール水酸基)は、9/1~1/9であることが好ましく、8/2~2/8であることがより好ましく、3/7~7/3であることがさらに好ましい。

     硬化剤として活性エステル化合物とフェノール硬化剤とが併用される場合、活性エステル化合物及びフェノール硬化剤の合計量に占める活性エステル化合物の質量割合は、成形用樹脂組成物を硬化した後の曲げ強度に優れる観点及び硬化物の誘電正接を低く抑える観点から、40質量%~90質量%であることが好ましく、50質量%~80質量%であることがより好ましく、55質量%~70質量%であることがさらに好ましい。

     硬化剤として活性エステル化合物とフェノール硬化剤とが併用される場合、活性エステル化合物及びフェノール硬化剤の合計量に占めるフェノール硬化剤の質量割合は、成形用樹脂組成物を硬化した後の曲げ強度に優れる観点及び硬化物の誘電正接を低く抑える観点から、10質量%~60質量%であることが好ましく、20質量%~50質量%であることがより好ましく、30質量%~45質量%であることがさらに好ましい。

     硬化剤の軟化点又は融点は、特に制限されない。硬化剤の軟化点又は融点は、成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、成形用樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。


     硬化剤の融点又は軟化点は、エポキシ樹脂の融点又は軟化点と同様にして測定される値とする。

    (無機充填材)


     本開示の成形用樹脂組成物は、無機充填材を含有する。無機充填材の種類は、特に制限されない。具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、ガラス、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、タルク、クレー、マイカ、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、酸亜鉛などが挙げられる。

     無機充填材の中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカ等のシリカが好ましく、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。さらなる誘電正接の低下の観点からは、窒化ホウ素が好ましい。無機充填材は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機充填材の形態としては粉未、粉末を球形化したビーズ、繊維等が挙げられる。

     無機充填材の平均粒子径は、特に制限されない。例えば、体積平均粒子径が0.2μm~50μmであることが好ましく、0.5μm~30μmであることがより好ましい。


     体積平均粒子径が0.2μm以上であると、成形用樹脂組成物の粘度の上昇がより抑制される傾向がある。体積平均粒子径が50μm以下であると、狭い隙間への充填性がより向上する傾向にある。無機充填材の体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により、体積平均粒子径(D50)として測定された値をいう。

     成形用樹脂組成物又はその硬化物中の無機充填材の体積平均粒子径は、公知の方法によって測定することができる。一例として、有機溶剤、硝酸、王水等を用いて、成形用樹脂組成物又は硬化物から無機充填材を抽出し、超音波分散機等で充分に分散して分散液を調製する。この分散液を用いて、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定される体積基準の粒度分布から、無機充填材の体積平均粒子径を測定することができる。あるいは、硬化物を透明なエポキシ樹脂等に埋め込み、研磨して得られる断面を走査型電子顕微鏡にて観察して得られる体積基準の粒度分布から、無機充填材の体積平均粒子径を測定することができる。さらには、FIB装置(集束イオンビームSEM)等を用いて、硬化物の二次元の断面観察を連続的に行い、三次元構造解析を行なうことで測定することもできる。

     成形用樹脂組成物の流動性の観点からは、無機充填材の粒子形状は形よりも球状が好ましく、また無機充填材の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。

     成形用樹脂組成物に含まれる無機充填材全体の含有率は、成形用樹脂組成物の硬化物の流動性及び強度を制御する観点から、成形用樹脂組成物全体に対し、50体積%を超えていることが好ましく、55体積%を超えていることがより好ましく、55体積%を超えて90体積%以下であることがさらに好ましく、60体積%~85質量%であることが特に好ましい。

     成形用樹脂組成物における無機充填材の含有率(体積%)は、下記の方法により求めることができる。


     成形用樹脂組成物の硬化物の薄片試料を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮像する。SEM画像において任意の面積Sを特定し、面積Sに含まれる無機充填材の総面積Aを求める。無機充填材の総面積Aを面積Sで除算した値を百分率(%)に換算し、この値を成形用樹脂組成物に占める無機充填材の含有率(体積%)とする。


     面積Sは、無機充填材の大きさに対して十分大きい面積とする。例えば、無機充填材が100個以上含まれる大きさとする。面積Sは、複数個の切断面の合計でもよい。


     無機充填材は、成形用樹脂組成物の硬化時の重方向において存在割合に偏りが生じることがある。その場合、SEMにて撮像する際、硬化物の重力方向全体を撮像し、硬化物の重力方向全体が含まれる面積Sを特定する。

    (離型剤)


     本開示の成形用樹脂組成物は、成形時における金型との良好な離型性を得る観点から、離型剤を含む。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

     離型剤としては、離型性と流動性とパッケージ汚れの観点から、ポリオレフィン系ワックスを含むことが好ましく、その中でも酸化ポリエチレンを含むことがより好ましい。酸化ポリエチレンは、直鎖型酸化ポリエチレンであってもよく、分枝型酸化ポリエチレンであってもよい。直鎖型酸化ポリエチレンと分枝型酸化ポリエチレンとを併用してもよい。


     ここで、直鎖型酸化ポリエチレンとは、側鎖アルキル鎖の炭素数が主鎖アルキル鎖の炭素数の10%以下程度の酸化ポリエチレンをいい、一般的には、針入度が2以下の酸化ポリエチレンが直鎖型酸化ポリエチレンに分類される。直鎖型酸化ポリエチレンは、同分子量、同酸価の分枝型酸化ポリエチレンと比較して、アルキル鎖の効率が高く、ベース樹脂から滲み出し易く、離型性が高い傾向がある。この傾向は、無機充填材の配合量が多いほど、また、直鎖型酸化ポリエチレンの重量平均分子量が大きいほど顕著である。

     酸化ポリエチレンの重量平均分子量は、離型性の観点から2800以上であることが好ましく、接着性及び金型・パッケージ汚れ防止の観点からは30000以下であることが好ましく、2800~30000がより好ましく、2900~20000がさらに好ましく、3000~15000が特に好ましい。ここで、重量平均分子量は、高温GPCで測定した値をいう。測定方法は、以下のとおりである。


     測定器:Waters社製高温GPC


     カラム:ポリマーラボラトリーズ社製商品名 PLgel 10μm MIXED‐B(7.5mm×300mm)×2本


     流量:1.0ml/分(試料濃度:0.3w/vol%)


     注入量:100μl

     酸化ポリオレフィンの酸価は、パッケージ汚れと金型離型性とのバランスの点から、2mgKOH/g~50mgKOH/gであることが好ましく、10mgKOH/g~40mgKOH/gであることがより好ましく、15mgKOH/g~30mgKOH/gであることがさらに好ましい。酸価が5mgKOH/g以上であれば、パッケージ汚れがより抑制されやすい傾向にあり、50mgKOH/g以下であれば、金型離型性がより向上する傾向にある。


     本開示において、酸化ポリオレフィンの酸価は、JIS K 5902:1969に準じた方法で測定される値とする。

     離型剤の含有量は、硫黄原子含有型エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部~30質量部が好ましく、5質量部~25質量部がより好ましく、7質量部~20質量部がさらに好ましい。離型剤の量が硫黄原子含有型エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。30質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。


     離型剤の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましい。離型剤の量がエポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。10質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。

     離型剤が酸化ポリエチレンを含む場合、酸化ポリエチレンの含有量は、硫黄原子含有型エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部~30質量部が好ましく、5質量部~25質量部がより好ましく、7質量部~20質量部がさらに好ましい。酸化ポリエチレンの量が硫黄原子含有型エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。30質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。


     酸化ポリエチレンの含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましい。酸化ポリエチレンの量がエポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。10質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。

    (特定共重合体)


     本開示の成形用樹脂組成物は、特定共重合体を含む。


     特定共重合体に用いられる炭素数5~30のα-オレフィンとしては、特に制限はない。炭素数5~30のα-オレフィンの具体例としては、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-トリコセン、1-テトラコセン、1-ペンタコセン、1-ヘキサコセン、1-ヘプタコセン等の直鎖型α-オレフィン、3-メチル-1-ブテン、3,4-ジメチル-ペンテン、3-メチル-1-ノネン、3,4-ジメチル-オクテン、3-エチル-1-ドデセン、4-メチル-5-エチル-1-オクタデセン、3,4,5-トリエチル-1-1-エイコセン等の分枝型α-オレフィンなどが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも炭素数10~25の直鎖型α-オレフィンが好ましく、1-エイコセン、1-ドコセン、1-トリコセン等の炭素数15~25の直鎖型α-オレフィンがより好ましい。


     特定共重合体に用いられる無水マレイン酸誘導体としては、メチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物等が挙げられる。

     特定共重合体は、下記一般式(C)で表される構造単位及び下記一般式(D)で表される構造単位を含むことが好ましい。

     一般式(C)及び一般式(D)中、R11は炭素数3~28の一価の脂肪族炭化水素基を示し、R12及びR13は各々独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。


     一般式(C)中、R11で表される炭素数3~28の一価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、上記炭素数5~30のα-オレフィンからエテニル基(-CH=CH)の部分を除いた一価の残基が挙げられる。R11としては、炭素数13~23の直鎖型炭化水素基が好ましく、n-オクタデシル基、n-エイコシル基、n-ヘンエイコシル基等の炭素数18~21の直鎖型炭化水素基がより好ましい。


     一般式(D)中、R12又はR13で示されるアルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基が挙げられ、メチル基が好ましい。


     一般式(D)中、R12又はR13で示されるアリール基としては、フェニル基が好ましい。


     一般式(D)中、R12又はR13は、水素原子が好ましい。

     一般式(C)で表される構造単位と一般式(D)で表される構造単位との共重合比は特に制限はないが、一般式(C)で表される構造単位をXモル、一般式(D)で表される構造単位をYモルとした場合、X/Yは1/2~10/1が好ましく、2/3~5/1がより好ましく、3/4~2/1がさらに好ましく、ほぼ等モル程度の1/1前後が特に好ましい。

     一般式(C)で表される構造単位と一般式(D)で表される構造単位とが結合する場合、下記一般式(E)及び下記一般式(F)のいずれの状態であってもよい。なお、下記一般式(E)及び下記一般式(F)において、R11~R13の具体例及び好ましい例は、一般式(C)及び一般式(D)の場合と同様である。

     特定共重合体は、ランダム、ブロック、及びグラフト共重合体等のいずれの構造でもよい。


     特定共重合体が一般式(C)で表される構造単位及び一般式(D)で表される構造単位を含む場合、一般式(C)で表される構造単位及び一般式(D)で表される構造単位以外のその他の構造単位を含んでもよいし、含まなくてもよい。特定共重合体の全構造単位に占めるその他の構造単位の割合は、0モル%~50モル%が好ましく、0モル%~35モル%がより好ましく、0モル%~20モル%がさらに好ましい。

     特定共重合体は、特定共重合体に含まれる無水マレイン酸及び無水マレイン酸誘導体の少なくとも一方由来の構造単位の少なくとも一部が加水分解されて、カルボキシ基を有していてもよい。

     特定共重合体の製造方法としては、特に制限はなく、原材料を反応させる等の一般的な共重合方法を用いることができる。反応には、α-オレフィンと無水マレイン酸が溶解可能な有機溶剤等を用いてもよい。有機溶剤としては特に制限はないが、トルエンが好ましく、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、アミン系溶剤等も使用できる。反応温度は、使用する有機溶剤の種類によっても異なるが、反応性、生産性等の観点から、50℃~200℃とすることが好ましく、80℃~120℃がより好ましい。反応時間は、特定共重合体が得られれば特に制限はないが、生産性の観点から1時間~30時間とするのが好ましく、より好ましくは2時間~15時間、さらに好ましくは4時間~10時間である。反応終了後、必要に応じて、加熱減圧下等で未反応成分、有機溶剤等を除去することができる。その条件は、温度を100℃~220℃、より好ましくは120℃~180℃、圧力を13.3×10Pa以下、より好ましくは8×10Pa以下、時間を0.5時間~10時間とすることが好ましい。また、反応には、必要に応じてアミン系触媒、酸触媒等の反応触媒を加えてもよい。反応系のpHは、1~10程度とするのが好ましい。

     特定共重合体は、市販品を用いてもよい。市販品としては、1-エイコセン、1-ドコセン及び1-トリコセンを原料として用いたニッサンエレクトールWPB-1(日油株式会社製商品名)が入手可能である。

     特定共重合体の重量平均分子量は、金型・パッケージ汚れ防止及び成形性の観点から、5000~100000が好ましく、10000~70000がより好ましく、15000~50000がさらに好ましい。重量平均分子量が5000以上であれば、金型・パッケージ汚れ防止効果が十分となる傾向があり、100000以下であれば、特定共重合体の軟化点が上昇しすぎることがなく、混練性等の悪化を抑制できる傾向がある。


     ここで、特定共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出する。GPCの条件は、以下に示すとおりである。


    -GPC条件-


     ポンプ:日立 L-6000型(株式会社日立製作所製)


     カラム:以下の計3本


     Gelpack GL-R420


     Gelpack GL-R430


     Gelpack GL-R440


      (以上、昭和電工マテリアルズ・テクノサービス株式会社製、商品名)


     溶離液:テトラヒドロフラン


     測定温度:25℃


     流量:2.05mL/分


     検出器:日立 L-3300型RI(株式会社日立製作所製)

     特定共重合体の含有量は、硫黄原子含有型エポキシ樹脂100質量部に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.5質量部~5質量部がより好ましく、1質量部~4質量部がさらに好ましい。特定共重合体の量が硫黄原子含有型エポキシ樹脂100質量部に対して10質量部以下であると、離型性が充分に得られる傾向にある。0.5質量部以上であると、接着性及び金型・パッケージ汚れの改善効果が十分となる傾向がある。


     特定共重合体の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましい。特定共重合体の量がエポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。10質量部以下であると、接着性及び金型・パッケージ汚れの改善効果が十分となる傾向がある。

    (硬化促進剤)


     本開示の成形用樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、エポキシ樹脂の種類、成形用樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。

     硬化促進剤としては、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;エチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の三級ホスフィンなどの、有機ホスフィン;前記有機ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物に、無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン、アントラキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物とを反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート等のテトラ置換ホスホニウムのテトラフェニルボレート塩、テトラ置換ホスホニウムとフェノール化合物との塩などの、テトラ置換ホスホニウム化合物;テトラアルキルホスホニウムと芳香族カルボン酸無水物の部分加水分解物との塩;ホスホベタイン化合物;ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物;などが挙げられる。


     硬化促進剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

     硬化促進剤は、これらの中でも、有機ホスフィンを含む硬化促進剤であることが好ましい。有機ホスフィンを含む硬化促進剤としては、前記有機ホスフィン、前記有機ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物、前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物にπ結合をもつ化合物を付加して成る分子内分極を有する化合物などが挙げられる。


     これらの中でも、特に好適な硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンとキノン化合物との付加物、トリブチルホスフィンとキノン化合物との付加物、トリ-p-トリルホスフィンとキノン化合物との付加物等が挙げられる。

     成形用樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の量がエポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量がエポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な成形品が得られる傾向にある。

    (応力緩和剤)


     本開示の成形用樹脂組成物は、応力緩和剤を含んでもよい。応力緩和剤を含むことにより、パッケージの反り変形及びパッケージクラックの発生をより低減させることができる。応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の応力緩和剤(可とう剤)が挙げられる。具体的には、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、インデン-スチレン-クマロン共重合体等、トリフェニルホスフィンオキシド、リン酸エステル等の有機リン化合物、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル-スチレン-ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル-シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル共重合体等のコア-シェル構造を有するゴム粒子などが挙げられる。応力緩和剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。


     シリコーン系応力緩和剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したもの等が挙げられ、エポキシ基を有するシリコーン化合物、ポリエーテル系シリコーン化合物等のシリコーン化合物がより好ましい。

     誘電正接の観点から、応力緩和剤は、インデン-スチレン-クマロン共重合体及びトリフェニルホスフィンオキサイドの少なくとも一方を含むことが好ましい。

     成形用樹脂組成物が応力緩和剤を含む場合、その量は、例えば、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対し、1質量部~35質量部であることが好ましく、2質量部~34質量部であることがより好ましい。


     応力緩和剤がインデン-スチレン-クマロン共重合体及びトリフェニルホスフィンオキサイドの少なくとも一方を含む場合、その量は、例えば、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対し、1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。


     シリコーン系応力緩和剤の含有量は、例えば、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対し、2質量部以下であってもよく、1質量部以下であってもよい。成形用樹脂組成物は、シリコーン系応力緩和剤を含んでいなくてもよい。シリコーン系応力緩和剤の含有量の下限値は特に限定されず、0質量部であってもよく、0.1質量部であってもよい。

     シリコーン系応力緩和剤の含有率は、誘電正接の観点から、成形用樹脂組成物全体に対し、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、0.5質量%以下であることが極めて好ましい。シリコーン系応力緩和剤の含有率の下限値は特に限定されず、0質量%であってもよく、0.1質量%であってもよい。

    [各種添加剤]


     本開示の成形用樹脂組成物は、上述の成分に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、難燃剤、着色剤等の各種添加剤を含んでもよい。本開示の成形用樹脂組成物は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含んでもよい。

    (カップリング剤)


     本開示の成形用樹脂組成物は、カップリング剤を含んでもよい。エポキシ樹脂及び硬化剤と無機充填材との接着性を高める観点からは、成形用樹脂組成物はカップリング剤を含むことが好ましい。カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、ジシラザン等のシラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート系化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。

     成形用樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~5質量部であることが好ましく、0.1質量部~2.5質量部であることがより好ましい。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上であると、接着性がより向上する傾向にある。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して5質量部以下であると、パッケージの成形性がより向上する傾向にある。

    (イオン交換体)


     本開示の成形用樹脂組成物は、イオン交換体を含んでもよい。成形用樹脂組成物は、封止される電子部品を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、イオン交換体を含むことが好ましい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。

      Mg(1-X)Al(OH)(COX/2・mHO ……(A)


      (0<X≦0.5、mは正の数)

     成形用樹脂組成物がイオン交換体を含む場合、その含有量は、ハロゲンイオン等のイオンを捕捉するのに充分な量であれば特に制限はない。例えば、イオン交換体の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~10質量部であることがより好ましい。

    (難燃剤)


     本開示の成形用樹脂組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

     成形用樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その量は、所望の難燃効果を得るのに充分な量であれば特に制限されない。例えば、難燃剤の量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。

    (着色剤)


     本開示の成形用樹脂組成物は、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は、目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

    (成形用樹脂組成物の調製方法)


     成形用樹脂組成物の調製方法は、特に制限されない。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を攪拌及び混合し、予め70℃~140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。

     本開示の成形用樹脂組成物は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)において固体であることが好ましい。成形用樹脂組成物が固体である場合の形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。成形用樹脂組成物がタブレット状である場合の寸法及び質量は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量となるようにすることが取り扱い性の観点から好ましい。

    (成形用樹脂組成物の特性)


     本開示の成形用樹脂組成物の硬化物の5GHzでの比誘電率としては、例えば3.3~4.0が挙げられる。前記硬化物の5GHzでの比誘電率は、アンテナ等の電子部品の小型化の観点から3.3~3.8であることが好ましく、3.3~3.6であることがより好ましく、3.3~3.5であることがさらに好ましい。


     上記比誘電率の測定は、誘電率測定装置(例えば、空洞共振器)を用いて、温度25±3℃下で行う。


     硬化物の5GHzでの比誘電率を3.3~3.5とするには、硬化剤として活性エステル化合物を用いることが好ましい。

     本開示の成形用樹脂組成物の硬化物の5GHzでの誘電正接としては、例えば0.08以下が挙げられる。前記硬化物の5GHzでの誘電正接は、伝送損失低減の観点から0.04以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましく、0.01以下であることがさらに好ましい。前記硬化物の5GHzでの誘電正接の下限値は、特に限定されず、例えば0.001が挙げられる。


     上記誘電正接の測定は、誘電率測定装置(例えば、空洞共振器)を用いて、温度25±3℃下で行う。


     硬化物の5GHzでの誘電正接を0.01以下とするには、硬化剤として活性エステル化合物を用いることが好ましい。

    (成形用樹脂組成物の用途)


     本開示の成形用樹脂組成物は、例えば、後述する電子部品装置、その中でも特に高周波デバイスの製造に適用することができる。本開示の成形用樹脂組成物は、高周波デバイスにおける電子部品の封止に用いてもよい。本開示の成形用樹脂組成物を高周波デバイスにおける電子部品の封止に用いる場合、硬化剤として活性エステル化合物を用いることが好ましい。


     特に、近年、第5世代移動通信システム(5G)の普及に伴い、電子部品装置に使用される半導体パッケージ(PKG)の高機能化及び小型化が進んでいる。そして、PKGの小型化及び高機能化に伴い、アンテナ機能を有するPKGであるアンテナ・イン・パッケージ(AiP、Antenna in Package)の開発も進められている。AiPでは、情報の多様化に伴うチャンネル数の増加等に対応するため、通信に使用される電波が高周波化されるようになっており、封止材料において、低い誘電正接及び低い誘電率が求められている。


     本開示の成形用樹脂組成物は、前記の通り、硬化剤として活性エステル化合物を用いることで、誘電正接及び誘電率が低い硬化物が得られる。そのため、高周波デバイスにおいて、支持部材上に配置されたアンテナを成形用樹脂組成物で封止したアンテナ・イン・パッケージ(AiP)用途に特に好適である。


     アンテナ・イン・パッケージ等のアンテナを含む電子部品装置では、電力供給用のアンプをアンテナと反対側に設けた場合に電力供給による発熱が発生する。放熱性向上の観点から、電子部品装置の製造に用いられる成形用樹脂組成物は、無機充填材としてアルミナ粒子を含むことが好ましい。

    <電子部品装置>


     本開示の電子部品装置は、支持部材と、前記支持部材上に配置された電子部品と、前記電子部品を封止する前述の成形用樹脂組成物の硬化物と、を備える。


     電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、電子部品(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子、アンテナなど)を搭載して得られた電子部品領域を成形用樹脂組成物で封止したもの(例えば高周波デバイス)が挙げられる。

     上記支持部材の種類は特に制限されず、電子部品装置の製造に一般的に用いられる支持部材を使用できる。


     上記電子部品は、アンテナを含んでもよく、アンテナ及びアンテナ以外の素子を含んでもよい。上記アンテナは、アンテナの役割を果たすものであれば限定されるものではなく、アンテナ素子であってもよく、配線であってもよい。

     また、本開示の電子部品装置では、必要に応じて、支持部材上における上記電子部品が配置された面と反対側の面に、他の電子部品が配置されていてもよい。他の電子部品は、前述の成形用樹脂組成物により封止されていてもよく、他の樹脂組成物により封止されていてもよく、封止されていなくてもよい。

    (電子部品装置の製造方法)


     本開示の電子部品装置の製造方法は、電子部品を支持部材上に配置する工程と、前記電子部品を前述の成形用樹脂組成物で封止する工程と、を含む。


     上記各工程を実施する方法は特に制限されず、一般的な手法により行うことができる。


    また、電子部品装置の製造に使用する支持部材及び電子部品の種類は特に制限されず、電子部品装置の製造に一般的に用いられる支持部材及び電子部品を使用できる。

     前述の成形用樹脂組成物を用いて電子部品を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。これらの中では、低圧トランスファ成形法が一般的である。

     以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。

    <成形用樹脂組成物の調製>


     下記に示す成分を表1~表2に示す配合割合(質量部)で混合し、実施例と比較例の成形用樹脂組成物を調製した。この成形用樹脂組成物は、常温常圧下において固体であった。


     また、成形用樹脂組成物全体に対する無機充填材の含有率(表中の「フィラ量(体積%)」)も併せて表1~表2に示す。

    ・エポキシ樹脂1:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(エポキシ当量:167g/eq)


    ・エポキシ樹脂2:一般式(B)で表され、R10のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3及び3’位がtert-ブチル基であり、6及び6’位がメチル基であり、それ以外のR10が水素原子である化合物(エポキシ当量245g/eq)


    ・エポキシ樹脂3:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量:193g/eq)


    ・エポキシ樹脂4:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量277g/eq)


    ・エポキシ樹脂5:ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量:196g/eq)


    ・エポキシ樹脂6:o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200g/eq)


    ・硬化剤1:トリフェニルメタン型フェノール樹脂(水酸基当量:106g/eq)


    ・硬化剤2:メラミン変性フェノール樹脂(水酸基当量:120g/eq)


    ・硬化剤3:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(水酸基当量:200g/eq)


    ・硬化剤4:活性エステル化合物、DIC株式会社、品名「EXB-8」


    ・硬化促進剤:トリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加物


    ・カップリング剤1:ジフェニルジメトキシシラン


    ・カップリング剤2:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン


    ・カップリング剤3:メチルトリメトキシシラン


    ・カップリング剤4:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン


    ・離型剤1:ヘキストワックス(クラリアントケミカルズ株式会社、商品名「HW-E」)


    ・離型剤2:直鎖型酸化ポリエチレン、重量平均分子量8800、酸価30mgKOH/g


    ・離型剤3:分枝型酸化ポリエチレン、重量平均分子量3100、酸価25mgKOH/g


    ・離型剤4:直鎖型酸化ポリエチレン、重量平均分子量11000、酸価30mgKOH/g


    ・離型剤5:酸化ポリエチレン、重量平均分子量7500、酸価28mgKOH/g


    ・特定共重合体:一般式(C)で表される構造単位及び一般式(D)で表される構造単位を含み、一般式(C)で表される構造単位及び一般式(D)で表される構造単位のモル比X/Yが1/1であり、一般式(C)におけるR11がn-オクタデシル基、n-エイコシル基又はn-ヘンエイコシル基であり、一般式(D)におけるR12及びR13が水素原子である、1-エイコセン、1-ドコセン及び1-トリコセンを原料として用いた共重合体(重量平均分子量:20400)


    ・着色剤:カーボンブラック


    ・添加剤1:エポキシ当量2900g/eq、粘度2850mm/s(25℃)のシリコーンオイル


    ・添加剤2:トリフェニルホスフィンオキシド


    ・添加剤3:エポキシ当量1660g/eq、軟化点80℃のポリシロキサン


    ・無機充填材1:シリカ粒子(体積平均粒子径:0.6μm)


    ・無機充填材2:水酸化マグネシウム粒子(体積平均粒子径:1.5μm)


    ・無機充填材3:シリカ粒子(体積平均粒子径:27μm)


    ・無機充填材4:シリカ粒子(体積平均粒子径:16μm)


    ・無機充填材5:シリカ粒子(体積平均粒子径:11μm)


    ・無機充填材6:シリカ粒子(体積平均粒子径:2.3μm)


    ・無機充填材7:シリカ粒子(体積平均粒子径:30μm)


    ・無機充填材8:シリカ粒子(比表面積190m/g~230m/gのナノシリカ粒子)


    ・無機充填材9:シリカ粒子(体積平均粒子径:17μm)


    ・無機充填材10:シリカ粒子(体積平均粒子径:1.5μm)


    ・無機充填材11:シリカ粒子(体積平均粒子径:16μm)


    ・無機充填材12:シリカ粒子(体積平均粒子径:31μm)


    ・無機充填材13:シリカ粒子(体積平均粒径4.0μm)


    ・無機充填材14:シリカ粒子(体積平均粒径0.5μm)

     なお、上記各無機充填材の体積平均粒径は、以下の測定により得られた値である。


     具体的には、まず、分散媒(水)に、無機充填材を0.01質量%~0.1質量%の範囲で添加し、バス式の超音波洗浄機で5分間分散した。


     得られた分散液5mlをセルに注入し、25℃で、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所、LA920)にて粒度分布を測定した。


     得られた粒度分布における積算値50%(体積基準)での粒径を体積平均粒径とした。


     無機充填材8の比表面積は、JIS Z 8830:2013に準じて窒素吸着能から測定された値とした。

    (スパイラルフロー(SF)の評価)


     EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、成形用樹脂組成物をトランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒間の条件で成形して流動距離(inch)を求めた。結果を表3~表4に示す。

    (ゲルタイム(GT)の測定)


     試料として成形用樹脂組成物0.5gを175℃に熱した熱板上に乗せ、治具を用いて20回転/分~25回転/分の回転速度で、試料を直径が2.0cm~2.5cmの円状に均一に広げた。


     試料を熱板に乗せてから、試料の粘性がなくなり、ゲル状態となって熱板から剥がれるようになるまでの時間を計測し、これをゲルタイム(sec)とした。結果を表3~表4に示す。

    (熱時硬度の評価)


     熱硬化性樹脂組成物の熱時硬度の評価を以下のようにして行った。


     熱硬化性樹脂組成物を、トランスファ成形機により、金型温度175℃~180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で熱時硬度測定用の試験片(直径50mm×厚さ3mmの円板)を成形した。成形後直ちにショアD型硬度計を用いて試験片の熱時硬度(ショアD)を測定した。結果を表3~表4に示す。

    (曲げ強さ評価)


     実施例6及び比較例4の成形用樹脂組成物を、トランスファ成形機を用い、成形温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で成形し、板状の成型物(縦127mm、横12.7mm、厚さ4mm)を得た。これを試験片1とした。次いで、試験片1を175℃で5時間後硬化を行い、板状の硬化物(縦127mm、横12.7mm、厚さ4mm)を得た。これを試験片2とした。


     試験片1及び2について、オートグラフ(株式会社島津製作所製、曲げ試験機AG-500)により曲げ強さ(MPa)を測定した。結果を表4に示す。

    (比誘電率及び誘電正接の測定)


     実施例6及び比較例4の成形用樹脂組成物をトランスファ成形機に仕込み、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で成形し、後硬化を175℃で6時間行い、90mm×0.6mm×0.8mmの直方体形状の試験片を作製した。


     この試験片の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を、周波数5GHzにて、空洞共振器(株式会社関東電子応用開発)及びネットワーク・アナライザー(キーサイトテクノロジー社、品名「PNA E8364B」)を用いて、温度25±3℃の環境下で測定した。結果を表4に示す。

    (離型性の評価)


     表面に硬質クロムメッキが施されたフェロ板(35mm×50mm×0.5mm)上に、成形用樹脂組成物を円板状に圧縮成形して、円板面積3.14cmの硬化物を作製した。成形用樹脂組成物の成形は、成形温度175℃、成形時間90秒、成形圧力10MPaで行った。


     次いで、表面吸着機を用いて硬化物を固定しておき、当該硬化物とフェロ板との界面に対して水平にフェロ板を引き抜くことによって、硬化物をフェロ板から剥離させた。フェロ板から硬化物を剥離するのに要するせん断離型力(せん断離型強度)をプッシュプルゲージ(株式会社イマダ製、最大目盛500(N))を用いて読み取った。


     せん断離型力の測定が完了したフェロ板における硬化物を剥離した部位に、成形用樹脂組成物を再度円板状に圧縮成形し、次いでせん断離型力を測定することを、合計で10回繰り返した。測定結果を表3~表4に示す。また、各測定時におけるせん断離型強度の推移を図1及び図2に示す。なお、図2において、実線が実施例6の結果を示し、点線が比較例4の結果を示す。

     表3の評価結果から明らかなように、フェノール硬化剤を用いた実施例1~5は、比較例1~3に比較して、せん断離型強度の低下の程度が急であり、離型性に優れることがわかる。


     表4の評価結果から明らかなように、活性エステル化合物を硬化剤として用いた実施例6は、比較例4に比較して、せん断離型強度の低下の程度が急であり、離型性に優れることがわかる。

     2022年11月22日に出願された日本国特許出願2022-186879号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。


     本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。

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