【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、フィブリル性物品、特に金属マトリックス複合材料の製造に使用されるセラミックプレフォームの製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】等軸(equiaxed)および/またはフィブリル性のセラミック粒子または金属粒子から、 多様な用途に用いる粒子性ボディーを下記の方法で製造することは周知である:(1)これらの粒子と全有機系の一時結合剤(たとえば、ろう)との混合物を成形して未処理素材となし;(2)この未処理素材を加熱して一時結合剤を除去し;最後に(3)一時結合剤を含有しないこの素材を、焼結その他の方法で粒子を互いに結合させて自立物品にするのに十分な程度に(すなわち時間および温度)加熱する。 このような技術は、Al、Mgなどのマトリックス金属全体に分散した充填材粒子を含む“金属マトリックス複合材料”(すなわちMMC)の製造に用いるプレフォームの製造に利用されている。 これらにおいて充填材粒子は、MMCの機械的特性(たとえば強度、靭性、減摩性、摩擦性、耐摩耗性など)のうちの1またはそれ以上をマトリックス金属単独の特性より改良する作用をする。 MMCの製造に用いる一般的なフィブリルは少なくとも10〜20のアスペクト比(長さを直径で割った値)をもつが、3程度の低いものや、約200という高いものであってもよい。 フィブリルの長さは約10μ(これより短いものでもよいが)から約5 00μに及んでもよく、それらの直径は一般に約10μ 未満である。 充填材フィブリルは一般にMMCの約5〜 約45容量%を構成し、残りはマトリックス材料である。 より具体的には、充填材粒子から自立性の網状多孔質プレフォームを製造し、次いでこのプレフォームに、 周知の吸上げ法または加圧充填(たとえば絞り鋳造、s queeze casting)法によりマトリックス金属を浸透させる方法でMMCを製造することが知られている。 プレフォーム自体は、充填材粒子と全有機結合剤の混合物を目的のサイズおよび形状に成形し、有機結合剤を除去し、次いで粒子を互いに結合させることにより製造される。 MMCプレフォームを製造するためのこのような方法の具体例のひとつは下記を含む:(1)混合物の約55〜約95容量%を構成する不安定(fug itive)結合剤/ベヒクル(たとえば、ろう、ポリスチレン、ポリエチレンなど)全体に充填材粒子を混合し;(2)この結合剤−粒子混合物を加圧下に型に注入し;(3)不安定結合剤を燃焼除去/揮発させ;最後に(4)粒子を互いに結合させて自立構造体にする。 このような方法のひとつは、米国特許第5,335,712 号(コルベットら)に開示されている。 粒子の最終結合は下記により達成される:(1)焼結;(2)まず粒子にコロイドシリカまたはアルミナの被覆を施し、これが加熱に際して粒子間高温接着剤のように作用する;あるいは(3)場合により粒子を酸化してそれらを互いに保持させる。 この最後の方法に関しては、SiC粒子を空気中で600℃より高温に加熱することによりその場でその表面にSiO 2を形成させることができ、これが粒子を互いに結合させる作用をする。 【0003】以上に挙げた方法がもつ問題のひとつは、 大量の結合剤を溶融および揮発させるには常温より高い注入温度を必要とすることである。 他の問題は、こうして製造した物品は、結合剤を除去するために加熱すると、結合剤が揮発前に一般に軟化するため、ゆがみ(たとえばスランプ)を生じやすいことである。 結合剤は熱可塑性であり、揮発および/または熱分解の前に溶融するので、これが起きることが多い。 最後に、大量の有機結合剤の燃焼除去に伴う時間、経費および環境上の問題は、この方法の商業的魅力を低下させる。 【0004】粒子用の水性ベヒクルが提唱された。 その1形態では、ベヒクルはメチルセルロース−H 2 Oゲルからなり、粒子、メチルセルロースおよび水の混合物を型キャビティに注入し、この型キャビティ内で混合物を約80℃に加熱してメチルセルロースをゲル化させる。 次いでこのゲル結合粒子を型から取り出し、加熱して水およびメチルセルロースを除去する。 メチルセルロースはゲル状態ではかなり脆弱であり、成形ダイからの突出し、およびその後のダイ外での乾燥に耐えられないことが多い。 米国特許第2,893,102号(マックスウェルら)には、下記により等軸粒子から多孔質ボディーを製造する凍結鋳造法が開示されている:(1)粘稠な、湿潤した非流動性の粒子スリップを調製し;(2) 振動−および真空補助によるハンドプレッシャーでスリップを型キャビティに注入し;(3)成形品をキャビティ内で凍結させ;(4)凍結した成形品をキャビティから取り出し;(5)成形品を凍結乾燥させ;そして(6)粒子を互いに焼結させる。 このスリップは少量のスリップ剤を含有するにすぎず(たとえば粒子20g当たり3.5milの水)、ある程度の未処理強度を水の除去後に備えるために、少量(たとえば粒子の2重量%)の結合剤(たとえばデンプンまたはゼラチン)を含有してもよい。 米国特許第5,047,181号(オチョネロら)による他の凍結鋳造法の変法では、主として等軸の粒子から下記により多孔質ボディーを製造する: (1)低粘度の注型適性、水性の粒子スリップを調製し;(2)低圧(すなわち200psi未満)でスリップを型キャビティに注入し;(3)成形品をキャビティ内で凍結させ;(4)成形品をキャビティから取り出し;(5)成形品を凍結乾燥させ;そして(6)粒子を互いに焼結させる。 注型適性スリップ(すなわち剪断速度100sec −1における粘度10ポアズ未満)は少なくとも35容量%のセラミックスまたは金属の粒子、 ならびに分散剤および凍結保護剤(cryoprote ctant)(これは分散剤、未処理強度増強剤および/または粘度調節剤、たとえばメチルセルロースもしくはエチルセルロースであってもよい)を含有する。 【0005】以上の凍結鋳造法では、フィブリルが全体に実質的に均一に分布したフィブリル性ボディーを製造することはできない。 これに関して、マックスウェルの本質的に“乾式”(すなわち含水率の低い)法を採用すると繊維が撚り合わさるため、そこに述べられたハンドプレッシャー下で型キャビティに注入させ、または全体に均一に分布するのが妨げられる。 他方、オチョネロの低粘度法では、均質な成形適性混合物を得ることはできない。 スリップ剤(すなわちH 2 O)が著しく流動性であるので、十分に混合したとしても、繊維束原料は個々の繊維に分離せず、実質的に均質な成形適性混合物が得られるように配合物全体に均一に分布させることができないからである。 したがって、フィブリルをプレフォーム成形に適した水性ベヒクルに均一に懸濁させる技術がこれまで開発されていないため、主として繊維性材料からなる複合材料プレフォームは現在まで水性成形法では商業的に製造されていない。 代わりに、水性ベヒクルを用いて製造された市販の繊維性プレフォームは、大部分が真空成形法で製造されたものである。 この方法では、 フィブリルを水に懸濁させ、真空により多孔質マンドレル上に圧伸成形して大きな繊維性材料マットを形成する。 次いでマットを乾燥させ、常法により機械加工して、複雑な形状のプレフォームを製造する。 この方法では最終プレフォームに必要な量より多いフィブリルがマットの製造に際し堆積するので、高容量の製造には望ましくなく、機械加工はプレフォームの造形には経費のかかる方法であり、フィブリル密度もプレフォーム全体として不都合なほど不均一である。 【0006】 発明の概要本発明は、フィブリルがボディー全体に実質的に均一に分布した多孔質フィブリル性ボディー(たとえばMMC プレフォーム)の製造に特に適した射出成形法であり、 その際、高粘度の非ニュートン水性ベヒクルに懸濁したフィブリルの実質的に均質な混合物の高圧射出成形によりボディーを成形し、凍結させ、次いで凍結乾燥させる。 本発明方法は、成形前および成形中にはベヒクル増粘剤として作用し、成形品の乾燥後および永久結合前には粒子の一時結合剤として作用するヒドロソルベント(hydrosorbent)材料を比較的少量含有する非ニュートン水性ベヒクルを用いる。 このベヒクルは乾燥後、粒子を互いに結合させて自立物品にする前に、 ボディーを有意にゆがませることなく速やかに除去できる。 より詳細には本発明は、互いに結合した多数の金属、カーボンまたはセラミックスのフィブリルから多孔質のフィブリル性自立ボディーを製造する方法であって、 a. 該フィブリル約5〜約45容量%、ならびにそれらの粒子用の非ニュートンベヒクル約95〜約55容量% を含む、実質的に均質なペースト状混合物を調製し、該ベヒクルは、水、および該ベヒクルを粘度約20〜約1 000ポアズに増粘するのに十分な、かつ水がヒドロソルベントから分離することなく少なくとも約60J/c m 3の混合剪断エネルギーに耐えうる混合物を調製するのに十分な量の有機ヒドロソルベントを含み; b. ペースト状混合物を少なくとも約2000psiの圧力下でダイの成形キャビティに注入し、これにより混合物を目的とするボディーの形状に成形し; c. 注入した混合物を成形キャビティ内で凍結させて、 ボディーの自立性凍結前駆体となし; d. 凍結前駆体をキャビティから突き出し; e. 凍結前駆体がまだ凍結している状態で、前駆体を凍結乾燥させるのに十分な、かつフィブリルを有機ヒドロソルベントにより互いに一時的に結合させるのに十分な真空を、それに十分な時間施し;そして f. 有機ヒドロソルベントを除去するのに十分な、かつ粒子を互いに永久的に結合させるのに十分な程度に、前駆体を加熱する工程を含む方法である。 【0007】凍結している状態で前駆体を型から突き出し、前駆体を凍結乾燥させるため、ダイからの突き出しが容易であり、かつ凍結乾燥中にヒドロソルベントから水が除去されるのに伴うボディーの形状保持性が卓越している。 さらに、凍結によりベヒクルが型キャビティ内で膨張し、これにより、他の場合には射出成形部品に一般に起きるひけ(sink mark)や収縮ボイドが避けられる。 最後に、凍結乾燥した前駆体が多孔質であるため、粒子用ベヒクル(たとえば、ろう)をすべて加熱により除去しなければならない場合に一般に要求される低速加熱サイクルを必要とせずに、少量の残留ヒドロソルベントを比較的速やかに加熱除去できる。 混合物中には、フィブリルのほか、存在するフィブリル体積分率とほぼ等量以下の、ある種の実質的に等軸の粒子が含有されてもよい。 ただし粒子の全濃度(すなわちフィブリル+等軸粒子)は約60容量%を越えない。 【0008】 好ましい態様の記述本発明は、以下の詳細な記述を考慮すると、より良く理解されるであろう。 【0009】本発明は、多数のフィブリルを不安定結合剤と共に成形し、この結合剤で粒子を一時的に結合させて自立性未処理ボディーを形成し、不安定結合剤を燃焼除去し、最後に焼結その他の方法でフィブリルを互いに永久的に結合させることにより製造される、実質的にいかなる製品の製造にも利用できる。 したがって本発明は、金属、カーボンおよびセラミックスいずれの加工にも利用できる。 本発明は(1)カーボン/黒鉛、(2) セラミックス(たとえば、特にSiC、Si 3 N 4 、K 2 Ti 6 O 13 、Al 2 O 3 、カオウール(Kaowool) [すなわち47%Al 2 O 3・53% SiO 2 ]、サフィル(Saffil)[すなわち96%Al 2 O 3・4% SiO 2 ]、Al 18 B 4 O 33 、Mg 2 B 2 O 5 )、および(3)金属(たとえば、特にホウ素繊維、銅繊維、鉄繊維、タングステン繊維)のようなフィブリルに有用である。 “フィブリル”とは、約1〜約500μの長さ、約10μ未満の直径、3以上約200以下のアスペクト比(長さを直径で割った値)をもつ長い粒子を意味する。 【0010】フィブリル性粒子から製造した成形したままの未処理ボディーは、一般に約5〜約45容量%のフィブリルを含むであろう。 焼成後にはボディーは約7〜 約50容量%のフィブリルを含むであろう。 成形される個々のボディーに応じて、ある種の等軸粒子をフィブリルと混合してもよい。 たとえば約5容量%のニッケル粒子をカオウールフィブリルに添加してMMCプレフォームを製造してもよく、その際ニッケル粒子はMMCの耐摩耗性を増大させる作用をする。 フィブリル性粒子から製造された製品の例には、特にエアバッグフィルター、 セラミックMMCプレフォーム、耐火炉ボードおよび金属プレフォームが含まれる。 【0011】本発明は、金属マトリックス複合材料(M MC)の製造に際して溶融金属を浸透させる予定の多孔質、自立性のフィブリル性プレフォームの製造に特に有効である。 このようなMMCプレフォームは、好ましくは約5〜約45容量%の慣用される充填材フィブリル、 所望により若干の等軸粒子を含有し、残りはマトリックス金属で充填される隙間ボイド空間からなる。 フィブリルは剛性、強度および非反応性の点でセラミック材料を含むことが好ましいであろう。 しかし、ある種の用途にはカーボン/黒鉛、および金属フィブリルも使用できる。 【0012】本発明方法によれば、有機ヒドロソルベントおよび水を含むベヒクルにフィブリルを混合して、ペースト状コンシステンシーにする。 “ヒドロソルベント”とは、増粘した、またはペースト状のヒドロゾルまたはヒドロゲルの調製に際して、それ自身の重量の少なくとも3倍の水を吸収する材料を意味する。 “ペースト状”とは、剪断速度100sec −1 (毛管レオメーターにより測定)で測定した粘度約500〜約100,0 00ポアズ、好ましくは約1000〜約100,000 ポアズをもつ、注入不適性素材を意味する。 このような粘度を得るために、かつフィブリルを確実にベヒクル全体に均一に混合するためには、ベヒクル自身は少なくとも約20ポアズの粘度(すなわち、ハーケ“ロトビスコ(Rotovisco、商標)”粘度計、モデルRV− 100で剪断速度100sec −1において測定)をもたなければならない。 約20ポアズ未満では、製造業者から供給されたままのフィブリル束は、分離してベヒクル全体に均一に分散することがなく、放置すると配合物からフィブリルが沈降するであろう。 フィブリルがベヒクル全体に均一に分布しない場合、フィブリルは最終製品(たとえばMMC)全体に均一に分布しないであろう。 約1000ポアズより高いと、ベヒクルは妥当な圧力で射出成形するには粘稠すぎる配合物を与える。 粘度は好ましくは約50〜約100ポアズであろう。 このようなベヒクル粘度を達成するのに必要なヒドロソルベントの量は、そのヒドロソルベントの性質によって異なるであろう。 たとえば要求される20ポアズ水準を達成するには、メチルセルロースは少なくとも約5重量%が必要であり、これに対しPAN−デンプン(後記に述べる)は約1重量%を必要とするにすぎない。 混合は任意の種類の市販の高剪断ミキサー、たとえばロール圧縮機、遊星形ミキサー、S字形ミキサー、二軸押出機などで行うことができる。 【0013】フィブリル用ベヒクルを形成するには実質的にいかなる有機ヒドロソルベントも有効であると思われるが、ベヒクルの含水率を最大限にし、かつヒドロソルベント含量を最小限にするためには、ヒドロソルベント1g当たり少なくともH 2 O約25gの含水率をもつヒドロソルベントが好ましい。 このような高含水率/低ヒドロソルベント含量のベヒクルは、ボディー内に残留して最終的にボディーから燃焼除去する必要のある有機結合剤が少量にすぎないことを保証する。 残りのベヒクル(すなわち水)は凍結乾燥により除去されているからである。 ヒドロソルベント自体はより多量の水を吸収する能力をもつが、好ましくはフィブリル用ベヒクルはヒドロソルベント1部につき約20〜約50重量部の水を含むであろう。 この目的に適した有機ヒドロソルベントのうちの若干は、コーンスターチ、ガーゴム、キサンタンガム、穀粉、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、ある種の加水分解デンプン−グラフトコポリマー、およびその混合物が、水で水和してヒドロゾルを形成したものである。 特に好ましいヒドロソルベントは、米国特許第3,935,099号(ウェーバーら、 1976年1月27日発行、参考として本明細書に含まれるものとする)に記載の加水分解デンプン−ポリアクリロニトリルグラフトコポリマーである。 この材料は、 グラフト重合前にゲル化したデンプンを含有する、一般に乾燥した水溶性の、けん化デンプン−ポリアクリロニトリルグラフトコポリマー(以下、PAN−デンプン) であり、商品名サンウェット(Sanwet、登録商標)でヘキスト−セラニーズ社が販売している。 たとえばサンウェットIM−4000は乾燥材料1g当たりH 2 O約570gの吸水率をもち、かつ分離エネルギーが高く、すなわちそれが吸収した水から分離することなく二軸スクリュー押出機中でのフィブリルとの混合に耐えうる。 後者に関して、混合物中にフィブリルを均一に分布させるためには、等軸粒子を均一に分布させるために必要なものより強い混合が一般に必要であることが認められていた。 ある種のヒドロソルベントは、このような強い混合に長期間は耐えられず、物理的破壊や吸収した水からの分離が起きる。 水からヒドロソルベントが分離すると、使用に適さないほど繊維含量が不均一になるので、好ましくない。 フィブリルに有用なヒドロソルベントは、トルク流動度測定試験により測定して少なくとも約60J/cm 3の混合剪断エネルギーに耐えうるフィブリル−ヒドロソルベント−水混合物を調製できなければならない。 この試験では、ヒドロソルベント−水−繊維混合物を、相分離がみられるまでブラベンダートルクレオメーター内で混合する。 次いで、相分離が起きるまで記録したトルク−時間のデータを用いて、混合物に付与されて混合物を破壊した(すなわちヒドロソルベントから吸収されていた水を分離させた)剪断エネルギーを計算する。 破壊/分離せずに少なくとも約60J/cm 3の剪断エネルギー入力に耐え得た混合物は卓越した混合および成形特性をもつことが認められた。 【0014】混合物に付与された単位容量当たりの剪断エネルギーは、下記の方程式から計算される: 剪断エネルギー(J/cm 3 )=(A/TV)・(D)・ (g)・(1/1000) 式中: A=トルク−時間曲線下の面積、トルクはm−g、時間は分で測定 V=混合物の容量、cm 3 T=全混合時間、分 g=比重による加速度(9.806m/sec 2 ) D=下記の方程式により計算した変位角: D (radian) =S×T×2π 式中: S=ミキサーの回転数/分 【0015】好ましいPAN−デンプンヒドロソルベントは、高吸水性であるほか、水から分離せずに600J /cm 3もの混合剪断エネルギーに耐えうるフィブリル−ヒドロソルベント−H 2 O混合物を調製できることが証明された。 PAN−デンプンは、水に添加すると水に懸濁した多数の小さなゲル粒子からなるヒドロゾル(ミクロゲルと呼ばれることがある)を形成する。 【0016】粒子用ベヒクルは、少なくとも20ポアズの粘度水準を達成するのに十分な量のヒドロソルベントを含む。 ベヒクルは、好ましくは約1.0〜約30重量%のPAN−デンプンを含み、残りは水であり、最も好ましくは約2〜約5重量%のPAN−デンプンを含む。 その用途に実際に必要なヒドロソルベントの量は、使用するヒドロソルベントの種類、要求される未処理ボディーの強度の程度、および成形に望まれる比粘度、ならびに成形されるフィブリルの物理的特性により支配されるであろう。 理想的には、ベヒクル中に存在するヒドロソルベントは可能な限り少量である。 ある種のヒドロソルベント(たとえばPAN−デンプン)については、対応するヒドロゾルを形成するには室温の水を添加するだけで十分である。 しかしコーンスターチおよび穀粉(たとえば小麦粉)の場合は、ヒドロゾルを調製するために混合物を加熱(すなわち一般に沸騰するまで)しなければならないであろう。 【0017】水、ヒドロソルベントおよびフィブリルすべてを一度に混合してもよい。 好ましくは水とヒドロソルベントを混合してゲルを形成し、次いでこのゲルにフィブリルを混入する。 しかし界面活性剤を用いる場合、 ヒドロソルベントを添加する前に、まずフィブリルと界面活性剤を含有する水とを混合して、フィブリルを水中で均一に湿潤させることが好ましい。 次いでこのフィブリル−水配合物にヒドロソルベントを添加する。 【0018】界面活性剤は、フィブリルの湿潤およびフィブリル束の分離を若干促進するために、ヒドロソルベント−水予備配合物の添加前にフィブリル−水予備配合物に添加することができる。 この目的に適した界面活性剤には、ケイ酸ナトリウム、オレイン酸、ステアリン酸、商品名テルジトール(TERGITOL、登録商標)で市販されているアルコールアルコキシラート/第二級アルコールエトキシラート、商品名ダーバン(DA RVAN、登録商標)で市販されているアンモニウム多価電解質、および商品名トリトン−X(TRITON− X、登録商標)で市販されている改質ポリアルコキシラートが含まれる。 カオウールフィブリルおよびPAN− デンプンと共に用いるにはテルジトールが好ましい。 この場合テルジトールが好ましいのは、その非イオン組成がPAN−デンプンの吸収性を大幅には妨害しないからである。 界面活性剤の濃度は混合物の約0.1〜約2. 5重量%であり、カオウールと共に用いるテルジトールについては約0.5重量%が好ましい。 【0019】焼成後に粒子が互いに永久的に結合するのを促進するために、フィブリル−ヒドロソルベント混合物に永久結合剤をも添加してもよい。 セラミックボディーには、セラミック粒子の約1〜約20重量%のコロイドシリカまたはアルミナなどの結合剤が特に有効である。 【0020】自立フィブリル性ボディーを製造するために、前記のペースト状混合物に真空を付与して、混合中に連行された空気を除去し、次いで高圧下に適切な型のキャビティに注入することができる。 フィブリルを負荷した粘稠な配合物を型キャビティ内へ移動させ、キャビティ全体に均一に分布させるために、高い注入圧が必要である。 配合物が薄すぎる(すなわち水分が多い)場合、フィブリルが均一に分布せず、高い注入圧により、 衝突する型部品間で配合物が飛び散るであろう。 好ましくは配合物を約4500〜6000psiの圧力で注入するが、約2000psi程度の低い圧力や約10,0 00psi以上の高い圧力も採用できる。 ペースト状混合物を型/ダイに注入し、直ちにそこで凍結させる。 このためには、型/ダイを混合物中のベヒクルの凝固点より少なくとも約5℃低い温度にまで予備冷却しておくことが好ましい。 最も好ましくは、型/ダイはその凝固点より少なくとも約15℃低い温度にまで予備冷却される。 混合物は、混合物が確実に凍結するのに十分な期間、型キャビティ内に滞留する。 凍結が進行するのに伴って混合物が若干膨張するであろう。 したがって、型を設計する際に、混合物が膨張するのに伴って若干の混合物が型/ダイキャビティ(特に成形ボディーの比較的薄いセクション)から滲出しうる設備を施す。 【0021】混合物が凍結固化した後、それがまだ凍結している状態で型/ダイから突き出す。 凍結したベヒクルはボディーの形状を保持する作用をする。 まだ凍結している状態で、“乾固する”時点までボディーを凍結乾燥させるのに十分な真空を、それに十分な期間施す。 これに関して、その後、成形ボディーを周囲の圧力および相対湿度のオーブン内で80℃に加熱したとき、成形ボディーから認めうるほどの量の水が失われないように、 十分な水を除去する。 これより軽度の乾燥(したがってより高い水分保持率)も可能であるが、(1)有機ヒドロソルベントを除去するためのその後の加熱に際して、 ボディーが若干の沈下/スランプを起すか、あるいは(2)有機ヒドロソルベントを除去するための加熱に際して、水の蒸発によりボディーに亀裂および/または破断が生じる、という危険性が若干ある。 凍結乾燥により、脱水中にボディーがスランプその他の形状変化を起さないことが保証される。 凍結乾燥時間は、ボディーのサイズ、粒子の濃度および種類、有機ヒドロソルベントの濃度および種類、採用する温度、ならびに採用する真空強度の関数である。 一般に、凍結乾燥は約250ミリトルの真空で約2〜約24時間を要するであろう。 温度が高いほど短い乾燥時間が可能であり、たとえば水の三重点圧力未満の真空を維持する限り、40℃以上の温度を採用できる。 【0022】凍結乾燥後、ボディーを加熱して、凍結乾燥後に残留して一時的にフィブリルを互いに保持させているヒドロソルベントを燃焼除去する。 ヒドロソルベントの燃焼除去に要する温度はヒドロソルベントの組成に依存し、一般に約400〜約550℃であろう。 たとえばPAN−デンプンを燃焼除去するには約500℃の温度で十分である。 一時結合剤が比較的少量であり(すなわちボディーの約4容量%)、MMCプレフォームのような高多孔質ボディーである(すなわち多孔度90%) 場合、有機ヒドロソルベントを燃焼除去するために空気中で約1000℃/時という高い加熱速度を採用できる。 これらの結合剤は溶融せずに熱分解するので、この工程でそれらが軟化してプレフォームをゆがませることはない。 フィブリルを互いに焼結その他の様式で(たとえばコロイドシリカまたはアルミナを用いた場合)結合させるために、より高い温度でさらに加熱する。 要求される温度および処理時間は、フィブリルの組成、ならびに永久結合剤の存否およびその組成に応じて異なるであろう。 永久結合が起きた後、当技術分野で周知のように、ボディーを緻密化するために加熱を続けることができる。 【0023】本発明は、セラミックフィブリルからMM Cプレフォームを作成するのに特に有用である。 MMC プレフォームは、好ましくは下記により作成される:1 重量部の加水分解デンプン−ポリアクリロニトリルグラフトコポリマー(商品名サンウェット(登録商標)でヘキスト−セラニーズ社から購入)を25重量部の水と混合してベヒクルを調製し、これに(i)約21容量%のカオウールおよび(ii)カオウールの重量の約3〜約10%のコロイドシリカを添加する。 この材料を、約1 00〜約200rpmで作動する二軸スクリュー押出機内において室温で約8分間、約500〜約10,000 ポアズのコンシステンシーになるまで、互いにブレンドする。 得られたペースト状混合物を射出成形機に移し、 予冷した(すなわち−5〜−40℃)のダイに、プレフォームのデザインに応じて約2000〜約10,000 psi(好ましくは4500〜6000psi)の注入圧で注入する。 注入した配合物を、凍結硬化するまでダイキャビティ内に保持する。 凍結するまでの時間はプレフォームのサイズにより異なるであろう。 凍結後、この凍結したプレフォームをまだ凍結している状態でダイから突き出し、プレフォームが乾固するまで凍結乾燥させるのに十分な期間(たとえば約2〜約24時間)、30 0ミリトルの真空を施す。 次いでこの未処理プレフォームを空気中で約800〜約1300℃においてベーキングし、蒸発、熱分解および酸化分解の組合わせにより有機ヒドロソルベント(および他の有機物質)を分解し、 カオウールフィブリルをコロイドシリカにより互いに結合させる。 未処理プレフォームがきわめて多孔質であるので、1000℃/時という高い加熱速度が有効に利用された。 もちろんこれより低い速度も有効である。 たとえば200〜600℃/時の加熱速度でもプレフォームが効果的に製造された。 上記方法の別法には、(1)P AN−デンプンの代わりに30〜40重量%の穀粉(たとえば小麦粉)を使用し、混合物を煮沸により増粘させるか、または(2)PAN−デンプンの代わりに10〜 30重量%のコーンスターチを使用し、混合物を煮沸により増粘させる方法が含まれる。 【0024】 【実施例】 実施例1 リング状のMMCプレフォーム11個を、4重量%のP AN−デンプン、8容量%のカオウール、カオウールの3重量%の量のコロイドシリカ、および残部の水からなるペースト状混合物から作成した。 これらの成分を二重遊星形コニカルミキサー内で100rpmにおいて90 分間混合した。 カオウール添加前に、まずPAN−デンプンを水に15分間吸収させた。 分散を補助しかつ容量を低下させるために、カオウールをほぼ3等分して混合の最初の15分間かけて添加した。 コロイドシリカを混合の最後の10分間に添加した。 このペースト状混合物をグルコ(Gluco)空気圧射出成形機(ピストン式)に移し、注入圧2000psiで、−25℃に予冷したリングダイに注入した。 材料をダイ内で4分間冷却し、この時点で固形リングをダイから突き出した。 チャンバーを温度20℃で50ミリトルの真空下に維持した凍結乾燥機にこの凍結リングを装入し、そこに18時間保持した。 次いでリングを15℃/分の速度で1000 ℃の温度にまで加熱し、この温度に120分間保持した。 表1に、このプロセスの種々の段階で試験した11 個のリングの平均重量および寸法を示す。 変化率%の計算は、各部品の変化率%を計算し(凍結時特性を除数として使用)、次いでこれら個々の変化率%の平均をとることにより行った。 【0025】 【表1】 【0026】実施例2 カオウールの10重量%のコロイドシリカを含有するカオウール8容量%を含むペースト状供給材料から、25 個のリング状MMCプレフォームを成形した。 残り92 容量%はPAN−デンプン4重量%、および水の0.5 重量%の濃度のテルジトールTMN−10界面活性剤を含有する水からなっていた。 この配合物を二軸スクリュー押出機で配合したが、まずバットミキサーにより65 rpmで45分間予備混合した。 水および界面活性剤をまず添加し、次いでカオウールを添加した。 PAN−デンプンを混合の最後の15分間に添加した。 この予備混合物を二軸スクリュー押出機により200rpmで6回処理し、この混合物にコロイドシリカを装入混練し、混合物をさらに2回、二軸スクリュー押出機に導通した。 【0027】このペースト状混合物をファン・ドーン(Van Dorn)80トン往復スクリュー射出成形機でリングに射出成形した。 フレキシブルスクリューおよび手動で材料を装填するホースシステムにより、射出成形機のスロートに供給した。 混合物を室温で最大圧力発生7000psiにおいて、−15℃に保持したダイ中へ注入した。 この圧力を90秒間維持し、部品をダイ内でさらに70秒間凍結させた後、突き出した。 表2に示したように、装填時間と充填圧力の組合わせ5種類を採用した。 【0028】成形したリング12個を−35℃に冷却した棚に乗せることにより一度に凍結乾燥させた。 真空が250ミリトルに達した時点で、棚を4時間かけて50 ℃の温度にまで次第に高め、さらに15時間、50℃に保持した。 50℃で6時間後に真空を可能な限り高め、 9時間後に10ミリトルに到達させた。 この時点までに凍結乾燥が完了した。 【0029】次いで、90分かけて炉の温度を1100 ℃にまで次第に高め、この温度を2時間維持することにより、これらのプレフォームを焼成した。 表2に、種々の成形条件についてのプレフォームの重量および寸法の平均値および変動を示す。 【0030】 【表2】 *充填圧力は部品が満たされた後にキャビティに維持された圧力である。 キャビティの充填に用いた注入圧はすべての条件につき最大7000psiであった**報告した測定値はすべて、記録した数個の測定値の平均である 【0031】実施例3 実施例2に述べた配合物からICエンジン接続ロッドの形のプレフォームを製造した。 ただし30容量%(v/ o)のカオウールを使用し、回転中のカルーセル(ca rrousel)上において3000psiで、冷却した数個のダイのうちの1個にペースト状混合物を送入した。 ダイにそのゲート逆止め弁から充填するのに要する1〜3秒間のみ、混合物を加圧した。 注入シリンダーを引き戻し、充填した型を回転させてずらし、次の型を充填するためにラインに乗せた。 その間に、充填済みダイは部品の凍結により内圧が上昇して、圧力がゲートにあるリリーフバルブの抑制力を越えた。 こうして内圧は一定に維持され、配合物はゲートが凍結するまでリリーフバルブから漏れ出た。 これは、凍結に際して部品の膨張によりダイが破損するのを防止するために必要である。 部品が凍結するのに伴って、十分に凍結するまで(合計時間3〜4分)カルーセルの周りを回転し、凍結した時点で突出しステーションの方へ回転移動した。 次いでダイを再び固定し、注入シリンダーにより再充填するために適所に回転移動させた。 次いで突き出された部品を実施例2と同様にして凍結乾燥させ、焼成した。 【0032】本発明による配合物は、標準的な射出成形用粉末組成物と比較して3つの特異な特色をもつ。 第1 に、冷却に際してそれらが膨張するため、注入システムはサイクルの充填部分で収縮を補償するための圧力を付与する必要がない。 むしろダイスプルー上の圧力負荷(かつ必要に応じて調節式)リリーフバルブを設け、凍結が起きるのに伴って部品自体が目的の内圧を維持することにより、この圧力を維持することができる。 第2 に、これらの混合物は室温ですでに塑性であるので、往復スクリューも不必要である。 第3に、低粘度のヒドロソルベント−フィブリル配合物に必要な成形圧力が、標準的な高圧射出成形と比較して適度である(すなわち2 000psi程度)。 ただしこれよりはるかに高い圧力も採用でき、高粘度配合物には実際に必要である。 フロントページの続き (72)発明者 ブラッドリー・ウェント・キベル アメリカ合衆国ミシガン州48220,ファー ンデイル,ウエスト・ルイストン 380 (72)発明者 リチャード・マイケル・シュレック アメリカ合衆国ミシガン州48304,ブルー ムフィールド・ヒルズ,ノースオーバー・ ドライブ 1231 (72)発明者 ジューン−サン・シアク アメリカ合衆国ミシガン州48098,トロイ, パークヴュー・コート 6340 |