Partially hydrated molded body of the hydraulic composition, production method and its use that

专利类型 发明专利 法律事件
专利有效性 有效专利 当前状态
申请号 JP2003320208 申请日 2003-09-11
公开(公告)号 JP3678732B2 公开(公告)日 2005-08-03
申请人 住友大阪セメント株式会社; 申请人类型 企业
发明人 孝征 兼吉; 規行 小堺; 義位 小山; 晃弘 草津; 哲也 酒木; 第一发明人 孝征 兼吉
权利人 住友大阪セメント株式会社 权利人类型 企业
当前权利人 住友大阪セメント株式会社 当前权利人类型 企业
省份 当前专利权人所在省份: 城市 当前专利权人所在城市:
具体地址 当前专利权人所在详细地址: 邮编 当前专利权人邮编:
主IPC国际分类 E21D11/00 所有IPC国际分类 E21D11/00B28B1/00B28B1/24B28B3/02B28B3/20B28C7/04C04B7/00C04B28/00C04B28/02C04B40/02C04B40/06E04G23/02
专利引用数量 0 专利被引用数量 0
专利权利要求数量 0 专利文献类型 B2
专利代理机构 专利代理人
权利要求
  • 水硬性組成物の理論水和量より少ない水を含有させ、形状を維持できる程度に、水硬性組成物が部分的に水和硬化してなることを特徴とする、水硬性組成物の部分水和成形体。
  • 請求項1記載の水硬性組成物の部分水和成形体において、更に、高分子化合物を含有することを特徴とする水硬性組成物の部分水和成形体。
  • 請求項1または2記載の水硬性組成物の部分水和成形体を製造するにあたり、水硬性組成物と、当該水硬性組成物が完全水和反応を呈する理論量以上の量の水とを混合して成形し、自形を維持可能な段階まで水和が進行した時点で強制的に乾燥し、部分的に水和活性を残存させることを特徴とする水硬性組成物の部分水和成形体の製造方法。
  • 請求項1または2記載の水硬性組成物の部分水和成形体を製造するにあたり、水硬性組成物と、当該水硬性組成物が完全水和反応を呈する理論量より少ない量の水とを混合して、得られた混合物の水和反応を進行させて成形し、部分的に水和活性を残存させることを特徴とする水硬性組成物の部分水和成形体の製造方法。
  • 請求項3または4記載の水硬性組成物の部分水和成形体の製造方法において、上記成形は、プレス成形、押出し成形又は射出成形であることを特徴とする水硬性組成物の部分水和成形体の製造方法。
  • 請求項3〜5いずれかの項記載の水硬性組成物の部分水和成形体の製造方法において、更に高分子化合物を前記水の一部と置換して含有させることを特徴とする水硬性組成物の部分水和成形体の製造方法。
  • 請求項1または2記載の水硬性組成物の部分水和成形体に、水を添加して残存する水和活性を完結・硬化せしめることを特徴とする水硬性組成物の部分水和成形体の利用方法。
  • 請求項7記載の水硬性組成物の部分水和成形体の利用方法において、上記水硬性組成物の部分水和成形体を、上記水硬性組成物の部分水和成形体を構造物のひび割れの表面部に充填適用し、次いでひび割れ注入材を前記ひび割れ内部に充填して当該ひび割れを補修するための、ひび割れ充填材として用いることを特徴とする水硬性組成物の部分水和成形体の利用方法。
  • 说明书全文

    本発明は、硬性組成物の部分水和成形体、その製造方法およびその利用方法に関し、特に水硬性組成物が使用されている種々の用途、例えば、ひび割れ充填材、静的破砕材、各種モルタルプレミクス製品、各種コンクリートプレミクス製品、各種穴埋め材や埋め戻し材等として、簡易な形態で流通・使用することができる、水硬性組成物の部分水和成形体、その製造方法およびその利用方法に関する。

    従来、水硬性組成物は、それ自体の粉体として、または、これらに骨材、各種添加剤等をプレミクスした混合粉体として、防湿紙袋、ビニール袋等に袋詰されて流通している。
    特に、セメント系材料は、そのほとんどが20〜25kg入りの袋詰で流通されているのが現状である。

    かかる袋詰された水硬性組成物は、一般に袋を開封して攪拌容器あるいは攪拌用ミキサ等に投入され、所定量の水を添加して混練されて用いられている。
    混練されたモルタル又はコンクリートは、予め準備された型枠内に注入または流し込まれ、適度な締め固め、例えば振動式バイブレータ等により材料分離等を調整した後、放置硬化させている。

    近年、水硬性組成物の流通形態等の小型化が進んでいるが、上記流通形態の主流である袋容器は重く、運搬が困難であり、取り扱いが不便である。
    水硬性組成物は、真比重が2〜3ではあるが、嵩比重が約1前後と、実重量の倍の容積を要するため、コンパクトに袋充填しづらく、現場での運搬や取り扱いが、極めて重労働である。

    また、水硬性粉体を混練容器や装置に投入する際には、大量の粉塵が発生し、環境的にも好ましくない。
    さらに、防湿性を有する袋に水硬性組成物を含有させても、空気中の湿気や水分に対して高い反応性を有し、そのため、保存期間は、最大でも約6ヶ月程度であるのが現状である。

    かかる水硬性組成物を使用した後には、水硬性組成物を含有していた空き袋が大量に発生し、資源の無駄であるとともに廃棄物が発生してしまう。 特に、セメント等の水硬性組成物を封入していた袋は、燃焼しにくく、焼却処理が困難である。

    また、従来ではコンクリートのひび割れ補修・補強方法としては、一般的に、まずひび割れの周囲を清掃して異物を除去し、ひび割れの幅によってはカッター等の機材によりV字形にカットし、次いで樹脂系シーリング剤等によりシーリングを施して、水硬性組成物を主とするひび割れ材を注入する方法を用いている。

    しかし、この場合、コンクリートカッターやシーリング剤、注入器具や注入用ポンプ等の専用器具が必要となり、装置が大掛かりなものとなるため、専門性が必要とされる。
    また、従来の方法では、ひび割れを補修するという点では優れるが、補修した箇所が元躯体と色彩を異にすることが多く、構造物の美観という点からは満足できるものではない。

    さらに例えば、止水材においては、水硬性組成物をゴム製容器等中で迅速に水と練り合わし、所定の漏水箇所に、かかる混練材料を手で押し付けて擦り込むことによって止水効果を得ているが、当該方法は作業効率が極めて悪いものである。

    また、静的破砕材においては、水硬性組成物を水と混錬して、予め穿孔した岩石、コンクリートの孔内に流し込み、水和に伴う強大な膨張によって、破砕効果を得ているものである。
    一般に、水中での破砕に関しては、静的破砕剤と水とを練り混ぜ合わせたぺーストは比重が2以上となり水より重いので、水中の穿孔内に該ペーストを注ぎ込むと、比重差により水との置換が起こり、穿孔内に該ペーストを充填することができるという手法を利用している。

    しかし、該ペーストの比重が2以上であっても、水中で液状のものを孔内に流し込むという作業は、極めて困難な作業である。
    また、水中での作業は、水の流れ・潮流によって、ぺーストの拡散が生じてしまう上、該ペーストは強アルカリ性を示し、周囲の生態系に与える影響を考慮すると、環境的にも好ましくない。

    別の方法としては、静的破砕剤を小袋に充填し、これを直接穿孔内に押し込む方法も実施されている。 かかる方法は、静的破砕剤の水和膨張に必要な水を、充填された布袋を通じて供給するものである。
    かかる方法は、静的破砕剤が拡散することを防止できるが、水中の孔内に袋を密実に詰めこむ作業は極めて困難で不効率であり、また必ずしも孔内の形状に沿って袋が密に充填されないため、孔内に不必要な空隙が生じてしまっている。

    さらに、ホールインアンカーは、コンクリートの施工時の型枠保持等、コンクリート工事には日常的に多くの用途で用いられている汎用工具であるが、これは施工完了時に撤去されることが多く、撤去後は、通常径6〜20mm、深さ100mm程度の孔が痕跡として多数、コンクリート表面等に残存する。

    このまま痕跡を放置すると、美観を損ねてしまうので、これを後埋めしているが、例えば橋梁工事等では、その痕跡数も多く、後埋め作業には手間が非常にかかってしまっている。
    また、かかる後埋めには、セメント、砂、適量の水や、補修用プレミクスモルタル材料を、手作業で埋めて後埋め実施を行なっているのが現状である。

    かかる問題に鑑み、水硬性組成物粉体を成形固化させる方法として、特許第2514668号には、セメント、スラグ、石膏のうち少なくとも一種からなる水硬性組成物5〜95重量部、生石灰または苦土石灰またはその混合物5〜95重量部、更に上記水硬性組成物に対して、崩壊助剤0.5〜1.5重量%を混合し、加圧して、ブリケットに成形する成形体が開示されている。

    しかし、かかる成形体は、水硬性組成物を含有してなるものの、成形体は原料粉体を単に加圧して押し固めて製造するものであり、脆く、流通形態としても、使用形態としても、上記問題を解決するには充分ではない。

    特許第2514668号

    本発明の目的は、上記問題を解決し、流通・使用時の水硬性組成物粉体の粉塵の発生を確実に防止するとともに、長期保存を可能とし、使用形態を簡便化することができる、水硬性組成物の部分水和成形体を提供することである。

    また、本発明の他の目的は、上記部分水和成形体を効率良く、簡便にかつ経済的に成形することができる、水硬性組成物の部分水和成形体の製造方法を提供することである。

    さらに、本発明の他の目的は、上記部分水和成形体を種々の用途に簡便にかつ有効に利用することができる、水硬性組成物の部分水和成形体の利用方法を提供するものである。

    本発明者らは、水硬性組成物が理論水量に満たない水量でも自形を維持する程度に固化させることができ、さらに、水和活性を当該部分水和成形体内に残存させ、後に所望するタイミングで水を供給することで、残存する水和活性を利用して完全水和硬化体とすることができることを見出し、本発明に到達した。

    即ち、一般に、水硬性組成物の水和体は、型に流し込んで硬化させて成形体を得ているため、成形体と水和反応とは不可分であり、水和反応が無ければ成形体が得られないと考えられていた。
    これに対し、本発明は、水和反応を“形状の維持に必要な部分”と“強度や耐久性等の物理性能的価値”の2つの部分に分離し、自形の形状維持に必要な水和反応を利用して成形体を形成し、当該成形体中に残存する水和活性を自由なタイミングで利用するために“後から水を供給”し、これにより、従来の水和物硬化体と同等な性能を得ることができるという知見に基づくものである。

    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体は、形状を維持できる程度に、水硬性組成物が部分的に水和硬化してなることを特徴とする。
    具体的に一例を挙げると、水硬性組成物と水とを、重量比で99:1〜50:50重量部の割合で混合し、この時の添加した水の重量比が、水硬性組成物の理論水和量を上回る場合、即ち水硬性組成物100重量部に対する水比が約27〜28重量部を上回る場合においては、進行中の水和反応の途中で、加熱あるいは減圧等により、理論水和量以下、即ち水比が28重量部以下の含水率になるように、水を強制的に蒸発除去させて、形状を維持させるとともに、未水和部分を残存させてなるものである。
    また、本発明の水硬性組成物の部分水和成形体は、好適には、更に、高分子化合物を含有することを特徴とする。

    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体の製造方法は、本発明の水硬性組成物と、当該水硬性組成物が完全水和反応を呈する理論量以上の量の水とを混合して成形し、自形を維持可能な段階まで水和が進行した時点で強制的に乾燥し、部分的に水和活性を残存させることを特徴とする。

    また、他の本発明の水硬性組成物の部分水和成形体の製造方法は、本発明の水硬性組成物の部分水和成形体を製造するにあたり、水硬性組成物と、当該水硬性組成物が完全水和反応を呈する理論量より少ない量の水とを混合して、得られた混合物の水和反応を進行させて成形し、部分的に水和活性を残存させることを特徴とする。

    好適には、上記水硬性組成物の部分水和成形体の製造方法において、当該成形は、プレス成形、押し出し成形又は射出成形であることを特徴とする。
    更に好適には、上記水硬性組成物の部分水和成形体の製造方法において、更に高分子化合物を前記水の一部と置換して含有させることを特徴とする。

    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体の利用方法は、本発明の水硬性組成物の部分水和成形体に、水を添加して残存する水和活性を完結・硬化せしめ、ひび割れ補修材等の種々の用途に利用することを特徴とする。

    好適には、上記水硬性組成物の部分水和成形体の利用方法において、上記水硬性組成物の部分水和成形体を構造物のひび割れの表面部に充填適用し、次いでひび割れ注入材を前記ひび割れ内部に充填して当該ひび割れを補修するための、ひび割れ充填材として用いることを特徴とする。

    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体は、成形体としての形状が維持できるとともに、使用時には容易に崩壊することができ、その作業効率を向上させることができる。 また、水硬性組成物を所望する形状に、容易にかつ成形固化することができるため、種々の用途に利用することができ、かつその流通状態においても、使用する作業環境においても、粉塵を発生せず、環境を極めて良好に保持することができる。
    さらに、本発明の水硬性組成物の部分水和成形体は、風化を防止して長期保存を可能とすることができる。

    また、本発明の水硬性組成物の部分水和成形体の製造方法は、上記部分水和成形体を効率良く、簡便にかつ経済的に成形することを可能にする。

    さらに、本発明の水硬性組成物の部分水和成形体の利用方法は、使用する際に水分を補給することにより、水硬性組成物の硬化を達成することができ、広範な利用用途が開けるとともに、その取り扱いを簡易にすることができる。

    更にまた本発明の水硬性組成物の部分水和成形体は、特別な道具や技術を要さずとも、何人でも簡単にかつ確実にひび割れ等の充填・補修を行なうことができ、コンクリート等内への水分の進入を防止し、内部の鉄筋の発錆を防止することができるため、コンクリート等の劣化・破損防止を可能とすることができる。

    本発明を次の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体は、形状を維持できる程度に、水硬性組成物が部分的に水和硬化してなるものであり、水硬性組成物を水で部分的に水和硬化させ、未水和部分を含有するものである。
    かかる本発明の水和活性を維持しながら自形を保持する部分水和成形体は、後述するように、使用時、すなわち”後から水を加える”ことによって、従来の水和硬化体とほぼ同等の性能まで水和反応を完結させて硬化させることにより、種々の用途に利用できるものである。

    ここで、本件明細書中における「部分水和成形体」とは、JIS R 5202の「セメントの強熱減量」に規定される強熱減量値(イグニッションロス)が25重量%以下、好適には15重量%以下のものを表し、後述する実施例に述べる利用方法に供することが可能な状態に成形されているものを意味するものとする。
    本発明の成形体は、例えばイグニッションロスが15重量%である場合には、その理論水量は通常28重量%であるから、残部の13重量%が水和活性を保持したまま成形体内に含有保持されており、部分水和成形体となるものである。

    本発明の部分水和成形体で用いられる水硬性組成物は、粉体原料としては水硬性粉体のみからなることができる。
    ここで、水硬性粉体とは、水によって硬化する粉体を意味し、好ましくは普通ポルトランドセメント、ジェットセメント、アルミナセメント、超速硬セメント、珪酸カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムフルオロアルミネート、カルシウムサルフォアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、リン酸カルシウム、スラグ、半水又は無水石膏及び自硬性を有する生石灰の粉体からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体が使用される。

    前記水硬性粉体の粒径等は特に制限されないが、成形時の可使時間ならびに得られる成形体の強度の点から、平均粒径10〜40μm程度のものが好ましく、また、成形体の高強度を確保する点から、ブレーン比表面積が2500cm /g以上であることが好ましい。

    また、本発明に用いる水硬性組成物は、上記水硬性粉体のほかに、非水硬性粉体を含有してなることもできる。
    当該非水硬性粉体は、単体では水と接触しても硬化することがない粉体を意味するが、アルカリ性若しくは酸性状態、あるいは高圧蒸気雰囲気においてその成分が溶出し、他の既溶出成分と反応して生成物を形成する粉体も含む意である。

    非水硬性粉体としては、水酸化カルシウム粉末、二水石膏粉末、炭酸カルシウム粉末、スラグ粉末、フライアッシュ粉末、珪石粉末、粘土粉末及びシリカヒューム粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体を好適に用いることができる。
    これらの非水硬性粉体は、ポゾラン反応もしくはマイクロフィラー効果により、強度を増進する機能を有する。

    これらの非水硬性粉体の平均粒径は、好ましくは水硬性組成物粉体の平均粒径より一桁以上小さく、より好ましくは2桁以上小さいものが、水硬性粉体の間隙を充填し、成形体が緻密となる点から好ましいが、細かさの下限は特に限定されず、本発明の効果を害することがなければ特に制限されることはないが、通常水硬性粉体の平均粒径の1/500程度であることが成形性の点から好ましい。
    このような粒径の非水硬性粉体を用いることによって、成形体の形状維持性を更に向上させることができる。

    本発明の部分水和成形体を製造するにあたり、例えば前記水硬性組成物と水とは重量比で99:1〜50:50重量部の割合、好ましくは80:20〜95:5重量部の割合で混合する。
    この時の添加した水の重量比が、水硬性組成物の理論水和量を上回る場合、即ち水硬性組成物100重量部に対する水比が約27〜28重量部を上回る場合においては、水和反応の途中で理論水和量よりも少ない量に、即ち水比が28重量部より少ない量の含水率となるように、水を強制的に蒸発除去させて成形するものである。

    ここで、水硬性組成物の理論水和量とは、例えば、通常の普通ポルトランドセメントの場合には、普通ポルトランドセメントの理論的水量、即ち普通ポルトランドセメントの鉱物組成が全て水和反応によって水和物になるのに必要とされる水量は、普通ポルトランドセメント100重量部に対し27〜28重量部であり、具体的には、100gの普通ポルトランドセメントと28gの水とを混合して良好に硬化させた場合、時間の経過と共に水和が完全に進行して完全水和硬化体が得られるが、この完全水和硬化体を得ることができる程度の水量を表すものである。

    一方、例えば、普通ポルトランドセメント100重量部に対して水を約10重量部添加混合して得られた混合物を混練するような場合には、水和反応を完結せしめるには水が不足の混合物、即ち本来理論水量として水硬性組成物100重量部対28重量部の水を要するのに対し10重量部しか添加されていない混合物は、丁度湿潤した粉状体の状態である。
    これを例えばプレス成形等によって所望の形状に成形せしめ、部分的な水和反応により、自形を保持させ、本発明の部分水和成形体を得るもこともできる。

    更に好適には、添加される水の液滴径は、水硬性組成物の粉体径よりも同等以下であることが、得られる水硬性組成物と水との混合湿潤粉体に、いわゆる'練りだま'を形成せず、均一な混合物が得られるので好ましい。

    さらに当該部分水和成形体を各種用途に使用する際に水と接触させて水和反応を進めた場合、例えばひび割れ補修においては水の色の痕跡を残さず、元躯体とほぼ同一の色彩が得られ、良好な美観を保持できる。 また、静的破砕材として使用した場合においては適切な膨張が得られ、破砕効率が良好となる。

    更に、本発明の部分水和成形体において、必要に応じ、水溶性高分子化合物等の高分子化合物を、混合・分散させて含有することができ、好適には、水硬性組成物と混練する水の一部を当該高分子化合物に置換して含有させることができる。
    特に、本発明の部分水和成形体を製造する際に、流し込み成形や押し出し成形を用いる場合には、流動性を確保するため、当該水の一部を水溶性高分子に置換して用いることができる。
    かかる高分子化合物は、本発明の部分水和成形体において、前記水に成形性の向上、最終利用局面での性能向上、一例としては付着強度の増進等に寄与する機能を有する。

    このような水溶性高分子としては、ポリエチレングリコール、ポリメチレングリコール等に代表されるポリアルキレングリコール類、ポバール等のポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース等のセルロース類またはセルロースエーテル類、VEMA(ベマ)等のメチルビニルエーテルと無水マレイン酸共重合体、デンプン類、アルコックス等のエチレンオキサイドを開環重合して得るポリ(エチレンオキサイド)等を挙げることができ、例えばこれらの高分子化合物そのもの、またはポリマーエマルジョンとして混和利用することができる。

    次いで、本発明の水硬性組成物の部分水和成形体を製造する方法を詳細に説明する。
    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体は、水と水硬性組成物とを、上記混合比で混練混合し、次いで成形し、成形後に自形を維持するレベルまで水和を進行させた段階で、脱型・強制乾燥することによって製造される。

    具体的には、成形方法としては、射出成形法、押出成形法、加圧成形法、流し込み成形等の成形方法を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、公知の成形方法を用いることができる。

    本発明の部分水和成形体を調製するには、まず、上記水硬性組成物と水とを上記配合割合で混合して調製するが、その混合方法については、均一に混合できれば、任意の公知の方法を用いて混合することが可能である。

    特に、水硬性粉体と非水硬性粉体とを含む水硬性組成物を用いる場合には、強力な剪断力を加えることができる混合方法を採用することが好ましく、例えば、プロシェア型ミキサ等を用いて混練する。 この様な剪断力の高い混合機を用いて混合することによって、混合に要する時間を短縮することができる。

    また、水の添加方法としては、上記したように、水硬性組成物と、当該水硬性組成物が完全水和反応を呈する理論量より少ない量の水とを混合して湿潤粉体を得、当該粉体の水和反応を進行させて、自形の維持が可能な成形体とすることにより、部分的に水和活性を残存させる。 自形の維持が可能な段階に水和反応が進行すれば、必要に応じて、水和反応の途中の段階で、強制乾燥することもできる。
    この場合、当該水硬性組成物を均一に添加する方法であれば任意の方法が利用できるが、前記水硬性組成物に前記量の水を添加して得られた湿潤粉体を安定して製造するためには、いわゆる練りダマが発生しないように留意する必要がある。

    練りだまの生成を防止するためには、上記したように、添加する水の液滴径を水硬性組成物粉体の粒子径以下とすることが望ましい。
    このための水の添加方法としては、例えば好適には市販のドライフォグ・ノズルと称される、粉体粒子と同等以下の液滴径の噴霧が可能となる専用のスプレーノズルが有効に使用できる。

    具体的には、水硬性組成物の粉体をミキサ内に投入し、当該ミキサを回転あるいは混合動作させながら連続的にドライフォグを噴霧供給する方法が好適に用いられる。
    このように行なうことにより、練りダマが全く無い、完全に均一な水硬性組成物と水との混合物、即ち水硬性組成物の湿粉体を得ることができ、これを成形することにより、全体に均一な部分水和成形体を得ることができる。

    前記水和過程における強制乾燥は、加熱や加圧等の手段により行うことができる。 従来の水硬性組成物の完全水和硬化体製造においては、当該強制乾燥は、ひび割れ発生等の有害な状態を招くこととなるが、例えば直径10mm前後の極小さな断面形状の成形体であれば、有害なひび割れを起こさず、目的とする部分水和成形体を得ることができる。
    このような強制乾燥工程を伴う部分水和成形体の製造方法は、流し込み成形以外に押し出し成形等にも利用することができる。
    さらに、水の一部をアルコールや低分子量のポリエチレングリコール等の水溶性高分子化合物に置換した、水と高分子化合物との混合液を用いる場合であっても、上記と同様の工程にて製造することが可能である。

    上記方法に代えて、水硬性組成物と、当該水硬性組成物が完全に水和できるに十分な、理論量以上の量の水とを混合し、自形を維持可能な段階まで水和が進行した時点で強制的に乾燥し、部分的に水和活性を残存させることにより、本発明の水硬性組成物の部分水和成形体を製造することもできる。

    具体的には、例えば水硬性組成物100重量部に水を10重量部前後添加して得られた湿潤粉の状態の混合物は、従来の流し込み成形等には適さない。
    従って、流し込み成形が可能となる程度、即ち水硬性組成物100重量部に対し、50重量部程度まで水を添加混合し、これを所望の形状となるような型枠内に流し込み成形し、その水和反応が自形を維持するに充分な段階、例えば好適には普通ポルトランドセメントの場合であれば20℃で材齢8時間程度の時点で敢えて脱型し、さらに強制的に乾燥させてその後の水和反応に要する水を除去する。 こうすることで、本発明の目的とする部分水和成形体を得ることが可能となる。

    成形方法として加圧成形を用いる場合には、得られた水硬性組成物と水との混合物、即ち水硬性組成物の湿潤粉体を、附型用冶具、例えば押出し成形機の材料搬送スクリューやダイス部分、またはプレス機の金型等に投入し、例えば約5000kg/cm 以下の成形圧力によって押出して附型・密実化する。

    さらに好適には、得られた部分水和成形体の表面に、パラフィンワックスや有機塗料等の極薄いコーティング処理を施すことも可能である。 このようなコーティングを設けることにより、残存した水和活性が当該部分水和成形体の保管期間中に空気中の湿気によって損失されることを防止することが可能となる。

    このようにして得られた部分水和成形体は、成形体としての形状を維持すると共に、使用時には適度な崩壊性を有するため、止水材、ひび割れ充填材、静的破砕材、各種モルタルプレミクス製品、各種コンクリートプレミクス製品、各種穴埋め材や埋め戻し材として使用することができ、その作業効率を向上させることができる。
    かかる本発明の部分水和成形体は、嵩比重で約0.5〜1.7の値を有するものであることが、形状維持性及び作業効率の点から、更に好適である。

    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体は、水が理論的に不足した状態で形状が付与されており、短時間での脱型を実現する。
    従って、本発明の水硬性組成物の部分水和成形体を硬化させるためには、当該部分水和成形体を、止水材、ひび割れ充填材、静的破砕材、各種モルタルプレミクス製品、各種コンクリートプレミクス製品、各種穴埋め材や埋め戻し材等として利用した後に、水分の供給を行って硬化させる必要がある。

    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体をひび割れ充填材として利用する例を、以下に説明する。
    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体を、所望する形状、例えば、チョーク状の成形体に製造する。
    かかるチョーク状成形体は、これをコンクリートやタイル、あるいは塗装された壁面等に発生したひび割れに沿って擦りつけることにより、容易に崩壊し、ひび割れに効果的に充填される。
    充填後は、例えばスプレーやスポンジ等で充填箇所に水を供給すると、充填された材料は部分水和物、即ち水和活性をまだ残存しているため迅速に水和反応が開始し、ひび割れ内で硬化し、これによりひび割れの充填が完了する。

    また、所望する形状、例えばチョーク状に成形した本発明の部分水和成形体の先端部を、5〜30秒程度水に浸漬すると、水に浸漬した先端部のみが柔軟なペースト状となるため、当該ペースト状態のものをひび割れに擦り込んでも良い。

    いずれの方法によっても、水和反応が短時間で完了し、特に水硬性組成物として超速硬系セメントを用いた場合には、数分以内に水和反応が完了し、これによって短時間でかつ手軽なひび割れ補修が可能となり、何人でもひび割れの補修が容易にできるようになる。
    また、本発明の部分水和成形体は、バインダを含有しないため、補修の際に、周囲にはみ出した、または付着した粉末は、例えば、刷毛やブラシ等で容易に取り払うことができ、例えばひび割れ材として使用した後の美観に極めて優れるものである。
    このように、得られた補修箇所は、防水性に優れ、補修後の色差が元躯体とほぼ同一となり、美観の維持が極めて有効に保持できる。

    また、好適には、ひび割れを完全に封止するために、本発明のひび割れ充填材と、従来のひび割れ注入材とを併用して用いることも可能である。
    具体的には、例えば、本発明のひび割れ充填材を対象となるひび割れに対して擦り込むが、この時、後に充填する従来のひび割れ注入材の充填口として、表面部を5〜10mm程度、本発明のひび割れ充填材を擦り込まずに残して空けておく。
    次いで、ひび割れからはみ出した本発明のひび割れ充填材部分をハケやブラシ等で除去し、充填された本発明のひび割れ充填材に水を含んだスポンジ等を押しつけることによって水を提供し、部分水和体を完全水和体とする。

    ここで、本発明のひび割れ充填材には、例えば超速硬系セメン等を用いているため、硬化は速やかに完了し、この時点でひび割れ部の美観の維持と一部を残して封鎖は完了する。
    上記したように、残しておいた充填口より、従来のひび割れ注入材(例えば、製品名:超微粒子セメント系ひび割れ注入材リフレフィルボンド,住友大阪セメント株式会社製)を混練りしたものを、例えばアクリル製注射器にて、ひび割れ内部に注入する。

    本方法は、ひび割れが内部に深く切り込んでいる場合に、深部に従来のひび割れ注入材をひび割れ内部に密実に充填して、ひび割れを確実に補修し、一方本発明のひび割れ充填材を表面部に用いることにより、表面部の美観を保持し、また従来のひび割れ注入材が浸出しないようにするための封止材料としての機能を発現させることを可能とするものである。

    このようにひび割れを封鎖することによって、ひび割れからコンクリート躯体への水の浸透を防止し、内部鉄筋の錆や腐食を防止できることとなり、その結果、コンクリート躯体の耐久性が向上する。

    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体を静的破砕材として利用する例を、以下に説明する。
    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体を所望する形状、例えば中空円筒状に成形する。
    破砕被対象となる岩石やコンクリートに、当該中空円筒状部分水和成形体と同径の大きさで穿孔し、当該孔内に本発明の中空円筒状部分水和成形体を差し込み、充填された中空円筒状部分水和成形体の中空内径部に所定量の水を注ぐと、即座に水和膨張反応が開始され、その膨張力によって岩石やコンクリートに引っ張り応力を生ぜしめ、破砕することができるものである。
    従って、特に水中破砕には極めて有効に用いられる。
    ここで水中破砕とは、例えば港湾の海中コンクリート構造物の増改築等において、既存の水中コンクリート構造物を破砕する場合等を示す。

    通常、静的破砕製品は、水を予め混合して流動性に優れたペースト状とされている。
    かかるペーストの比重は約2.3程度で水より重いため、水中構造物に穿孔された孔内にも比重差によって充填することができるとされているが、潮流のある場所では事実上困難である。
    この点に鑑み、粉末状の静的破砕剤製品を布袋に装填し、これを棒で突きながら孔内に挿入する手法も用いられているが、水中でのこの作業は効率が悪く、必ずしも有効な水中破砕工法ではない。

    これに対し、本発明においては、本発明の水硬性組成物の部分水和成形体からなる静的破砕材を、部分水和の状態で予め例えば棒状に成形とし、孔内への挿入はかかる棒状成形体を差し込むだけであるから、極めて簡便なものとすることができる。
    かかる充填された部分水和成形体の内部に徐々に水が浸透してくると、破砕剤の反応が開始され、膨張が起こるために、コンクリート躯体等に引っ張り応力が発生し、破砕をすることが可能となる。
    さらに、必要に応じて、成形体の中心部長さ方向に約1〜2mm程度の小さな水通し孔を形成することにより、効率的に水和反応を行なうこともできる。

    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体をホールインアンカー埋め戻し材として利用する例を、以下に説明する。
    コンクリートや岩盤用のホールインアンカーを引き抜き撤去することは、土木・建築分野の如何を問わず良くある事例である。

    アンカー痕をそのまま放置すると、コンクリートに穴があいたままになるので、埋め戻しを行なう必要があるが、アンカー痕は通常径17mm、深さ120mm程度の小さな孔で、例えば、一つの橋梁の上部工事(橋脚に橋桁を掛ける工事)では数千個のアンカー痕埋め戻し作業が発生することもある。
    従来は、少量ずつ練り混ぜたモルタルを一つ一つ手作業で、細い棒やサジを使いながら埋める方法であったが、かかる手法は、効率が極めて悪い。

    本発明によれば、アンカー痕とほぼ同一寸法の本発明の部分水和セメント成形体を、例えば予め径17mm、長さ120mm程度に成形し、これを孔内にハンマーでたたき込み、さらに所定量の水を、例えば成形体重量の約30重量%程度の量の水を供給すれば、水和が起こり、埋め戻し作業を完了することができる。
    または、本発明の部分水和成形体を予め数分から数時間水に浸漬し、吸水して柔軟になった時点で、上記と同様にハンマー等で孔内に叩き込む手法でも良く、この場合にはこれにより埋め戻し作業を完了することができる。

    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体をモルタルプレミクス製品として利用する例を、以下に説明する。
    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体は、自形を維持するために当初成形時に添加する水量ならびに加圧成形の際の成形圧力を調整することにより、直ちに水が浸透するような、いわば”疎な”成形体とすることができる。 この疎な成形体は自己の内部に水が速やかに浸透可能なだけの空隙を持つと共に、所定量の水を含むミキサ内に、当該部分水和成形体を直接投入することにより、粉体を投入する場合と全く同様に混練りが可能となり、フレッシュモルタル(未だ固まらないモルタル)を得ることができる。

    本発明の部分水和成形体は、速やかに水と混合され、均一なフレッシュモルタルを製造でき、得られたモルタルは従来品と同程度の強度発現性を有する。
    モルタルプレミクス用の部分水和成形体としては、硬化後の強度発現等の性能を鑑みると、自形維持に必要な当初添加する水量が少ないほど良いが、水硬性組成物に対して、水量が3重量%未満となると、成形性および形状維持性が困難となるため、特に水量は3〜10重量%程度が好適である。

    本発明の水硬性組成物の部分水和成形体は、上記した用途だけでなく、前述した本発明の効果を発揮できるものであれば、種々の分野での利用が可能である。

    本発明を次の実施例、比較例及び試験例により説明する。
    <ひびわれ充填材>
    実施例1
    水硬性組成物として超速硬系セメントを原料とする止水材(商品名;ライオンシスイ101、住友大阪セメント株式会社製)10kgを傾胴型コンクリートミキサに入れ、ミキサの投入口を防塵のためビニルシートで覆った。 ビニルシートの中央部に直径5cm程度の小穴をあけ、ここからドライフォグノズル(商品名;アキミストDタイプ、株式会社いけうち製)をミキサ内に挿入後、1分間0.05リットルの噴霧量にて32分間、合計1.6リットルの水を噴霧添加した。 なお、前記ドライフォグノズルから供給されるスプレー霧の液滴径は、噴霧対象となっている当該止水材の粉末粒子径とほぼ同等以下の10μm程度である。

    これにより当該止水材(粉末):水が100:16重量部の比率となる混合物が得られ、かかる混合物は、いわゆる”練りダマ”が全く観察されない、完全に均一な粉体湿潤混合物であった。
    これは、液滴が粉末粒子以下であるので、練りダマが物理的に生成することがないからである。

    かかる湿潤混合物を、押し出し成形機に投入し、直径17mm、長さ90mmの細長い円柱状、丁度チョークと同様の形状に成形し、本発明のひびわれ充填材としての水硬性組成物の部分水和成形体を製造した。
    得られた部分水和成形体のJIS R 5202の「セメントの強熱減量」に規定される強熱減量値(イグニッションロス)は、18重量%であった。

    比較例1〜3
    市販のエポキシ系ひび割れ補修材(商品名;可とう性エポキシ樹脂E600、コニシ株式会社製)を比較例1として、市販の弾性シーリング材系ひび割れ補修材(商品名;ビューシール6909、コニシ株式会社製)を比較例2として、また市販の超微粒子セメント系ひび割れ補修材(商品名;リフレフィルボンド、住友大阪セメント株式会社製)を比較例3として、ひび割れ充填材として用いた。

    比較例4
    水硬性組成物として超速硬系セメントを原料とする止水材(商品名;ライオンシスイ101、住友大阪セメント株式会社製)と水溶性高分子(商品名;PEO−1、住友精化株式会社製)とを、当該止水材(粉末):水溶性高分子(粉末)が9:1の重量部比率となるように計量して粗く混合し、さらに85℃で15分間混合して均一な流動混合物を得た。
    かかる混合物を、押し出し成形機に投入し、スクリューおよび押し出しダイスの温度を80℃に維持しながら、溶融流動状態にして押し出し、冷却して、直径17mm、長さ90mmの細長い円柱状、丁度チョークと同様の形状に成形し、本発明のひびわれ充填材としての水硬性組成物の未水和成形体を製造した。

    試験例1−1
    1)防水・鉄筋の錆び防止効果(被試験体の準備)
    全長15m、高さ45cm、厚さ10cmの一般戸建て住宅コンクリート布基礎をモデルとした模擬試験体を、過剰な膨張材を混入したコンクリートによって打設し、さらに底面を鉄筋で拘束することによって故意にひび割れを発生させた。
    ひび割れ幅0.3〜1.0mmのひび割れがほぼ30cm間隔で計38箇所発生した。 これらのひび割れはその殆どが、高さ方向、厚み方向共に貫通ひび割れとなっていた。
    かかる貫通ひび割れが生じたものを被試験体として用いた。

    (防水=鉄筋の錆防止効果確認試験)
    被試験体中に発生した38箇所のひび割れの内、8箇所を無処理とし、5箇所を比較例1のひび割れ補修材、他の5箇所を比較例2のひび割れ補修材、残り5箇所を比較例3のひび割れ補修材を用いて、それぞれのマニュアル記載通りに、ひび割れを充填・補修した。

    一方、上記実施例1で得られたチョーク状のひび割れ補修材を、残りのひび割れ15ヶ所に沿って擦り込んで、ひび割れを充填・補修した。

    補修後24時間経過した時点より、補修した面の方向から濃度15重量%の塩水を連続的に48時間スプレー噴霧した。
    噴霧停止7日後、被試験体を解体し、内部の鉄筋の錆状況を確認した。
    その結果を表1に示す。

    上記表1より、本発明による補修材およびその補修方法によれば、補修方法が著しく簡便化できるとともに、市販の超微粒子セメント系ひび割れ補修材と同等の鉄筋の錆び防止効果を提供できることがわかる。

    (2)美観の維持効果(測定方法)
    上記被試験体のひび割れ補修を実施するにあたり、同一時刻、同一位置より、各ひび割れ補修材を用いた前後の状態をデジタルカメラで撮影し、そのデータをパソコンに伝送し、ADOBE SYSTEMS株式会社製の画像レタッチソフトADOBE PHOTOSHOPを用いて、各ピクセルのRGB値を測定、即ちひび割れ部の色の違い(色差)を測定した。

    (色差測定結果)
    上記測定結果を、表2に示す。

    表2より、補修後の色差が、補修前の基準基材である被試験体コンクリートとほぼ同一となることは明らかであり、優れた美観維持性能、即ち、ひび割れを目立たなくするという効果を有することがわかる。
    また、人間の視覚により判断できるRGB値の色差の範囲は10前後であるため、本発明のひび割れ充填材を用いて補修を実施した場合には、補修後には、人間の視覚によるひび割れは殆ど認識できなくなる。

    試験例1−2
    比較例4の未水和水硬性組成物のチョーク状成形体と、実施例1で得られたチョーク状部分水和成形体の、ひび割れに対する充填深さを測定した。
    試験対象となるひび割れは、コンクリートのひび割れで、そのひび割れ幅は、ひび割れゲージで測定して、0.1、0.3、0.5、0.9、1.3mmのものである。 これらの各ひび割れに関して、各チョーク状成形体をゴシゴシと5回こすりつけて“削りながら”5回摺り込んで充填された平均深さで表した。
    ここで、充填された深さとは、摺り込んだ後にスプレーないしは濡らした布によって充填された粉体に水を供給し、硬化させた後、この補修完了部分を破壊して充填断面が観察できるようにし、充填、即ち補修された深さをノギスで測定、その平均値を示したものである。
    その結果を表3に示す。

    表3より、本発明の部分水和成形体によるチョーク状成形体の方が、充填深さが大きく、補修効果に優れることがわかる。

    試験例1−3
    比較例4の未水和水硬性組成物のチョーク状成形体と、実施例1で得られたチョーク状部分水和成形体の、ひび割れ補修時間の効率を評価した。
    試験対象となるひび割れは、コンクリートのひび割れで、そのひび割れ幅は、ひび割れゲージで測定して、0.1〜0.3mmの細いひび割れ幅のものと、0.5〜1.2mmの太いひび割れ幅のもので、かつ長さ15cmのひび割れ10本を補修するのに要した時間及びひび割れ一本あたりに要した時間で表す。
    ここで補修時間とは、美観の回復と防水性能的に満足できると判断した状態まで作業を行うのに要した時間を10本分合計したものである。
    但し、この時間は水分の提供ならびに各水硬性組成物が硬化するに要する時間は含まれない。
    その結果を表4に示す。

    表4より、本発明の部分水和成形によるチョーク状成形体を用いた場合は、極めて“適度にチョークが崩れながらひび割れに充填される”ために、圧倒的に作業効率が向上しているのがわかる。 本発明のひび割れ補修材は、比較例4の物と比較して、ひび割れ幅0.1〜0.3mm程度の比較的細いひび割れの補修においては3.5倍、ひび割れ幅0.5〜1.2mmの太めのひび割れの補修においては2.6倍まで、作業効率が向上していることがわかる。

    <静的破砕材>
    実施例2
    上記実施例1の止水材を静的破砕材粉末(商品名;SマイトVB、住友大阪セメント株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、均一な混合物を得た。
    かかる混合物を、実施例1と同様に押出し成形機に投入し、押出し成形により、径40mm×長さ500mmの円筒状に押出し成形して、本発明の静的破砕材としての水硬性組成物の部分水和成形体を製造した。
    得られた部分水和成形体のJIS R 5202の「セメントの強熱減量」に規定される強熱減量値(イグニッションロス)は、17重量%であった。

    比較例5
    市販の静的破砕材(商品名;SマイトB型,暑中用、住友大阪セメント株式会社製)を比較のために使用した。

    試験例2
    (膨張圧力(破砕力)試験)
    破砕被対象体としては、水中のコンクリート被試験体(水温20〜25℃、屋外、圧縮強度27.3N/mm )を使用した。 当該コンクリート試験体には、径40mm×長さ500mmの円筒状の孔が穿孔されている。
    次いで、実施例2で得られた静的破砕材を、上記コンクリート被試験体の孔内に充填した。 充填は、極めて簡単にかつ密実に実施することができた。

    一方比較例5の静的破砕材の粉末に対しては、水を混練水比が27重量%となるように混合してペーストを調製し、当該ペーストを、上記コンクリート被試験体の孔内に充填した。
    これら静的破砕材の破砕はその水和膨張により得られるが、その注水より24時間後の測定結果を表5に示す。

    膨張圧は以下の手順により測定した。
    1)NKK(日本鋼管株式会社)製シームレス鋼管SCH40−20A鋼管(外径53mm,内径50mm)を長さ40cmに切断する。
    2)この鋼管中に実施例2または比較例5による静的破砕材を装填したが、その方法は各々以下のようである。
    即ち、実施例2にあっては、上記実施例1と同様にして得られた均一な混合物を押出し成形によって外径49.9mm内径2mmの中空円筒状に成形し、これを該鋼管内部に挿入・装填し、さらに2mmの内径穴内に水和反応させるべく水を注入した。
    比較例5にあっては、前記コンクリート破砕試験に用いたペーストを注入充填した。

    3)次に該鋼管の外径の円周方向に添って株式会社東京測器研究所製リード線付き一般用ひずみゲージFLA−6−11を当該ひずみゲージのマニュアル通りに装着した。
    4)以上の1)から3)の作業手順により、該鋼管内部の静的破砕材はいずれも水和反応により著しい体積膨張を起こし、この膨張力が該鋼管の外径表面に引っ張り伸びひずみとなって現れた。 この引っ張り伸びひずみを前記3)で装着したひずみゲージにより測定し、鋼管の弾性係数と乗算すれば膨張圧を算定することができる。

    表5より、本発明の静的破砕材による破砕は、破砕方法が著しく簡便化できるとともに、従来品とほぼ同等の破砕ができることがわかる。

    <ホールインアンカー埋め戻し材>
    実施例3
    水硬性組成物として、普通ポルトランドセメント(PC、住友大阪セメント株式会社 栃木工場製)を用いた。
    当該水硬性組成物と自形を維持するに要する当初添加の水との混合比を、重量比で80:20重量部とし、得られた混合物を、押出し成形機に投入して、直径17mmの円筒状に押し出し、120mmの所定の長さに切断した。 この部分水和成形体を7時間湿度54%,23℃にて放置養生し、自形を維持するに充分な状態とした。

    次いで、この棒状成形体を250℃に保持された乾燥機内に5時間保管し、この時点で水和反応に消費されていない水分、即ち自由水を強制的に蒸発・除去した。 これにより、材齢7時間程度の水和反応状態で水和硬化を強制的に停止し、部分水和成形体を得、ホールインアンカー埋め戻し材を製造した。
    得られた部分水和成形体のJIS R 5202の「セメントの強熱減量」に規定される強熱減量値(イグニッションロス)は、22重量%であった。

    比較例6
    普通ポルトランドセメント(PC、住友大阪セメント株式会社 栃木工場製)と砂と水とを1:4:0.3重量部比率にて均一に練り混ぜてフレッシュモルタルとし、これを容量3リットルの左官用小型手押しポンプにてホールインアンカー痕に押し込み、さらに表面を金コテによって平坦に仕上げた。

    試験例3
    (アンカー痕の埋め戻し作業の効率)
    ホールインアンカーが埋め込まれていたコンクリートから、多数のアンカーを引抜いた。
    多数のアンカーを引抜いた後の1つの孔の大きさは、直径17mm、深さ120mmの円筒状の形状を有していた。
    かかる形状を有する多数のアンカー痕を有するコンクリートのアンカー痕に、上記実施例3で得られたホールインアンカー埋め戻し材を当該アンカー痕にハンマーでたたきこみ、当該充填されたホールインアンカー埋め戻し材に前記ホールインアンカー埋め戻し材の30重量%の量の水を供給することで、硬化させ、アンカー痕の埋め戻し作業を完了した。

    一方、比較例6のモルタル埋め戻し材を、上記アンカー痕1つずつに、手作業で埋め戻しを実施した。
    その際の両者の作業効率を表6に示す。

    上記表6より、本発明の埋め戻し材は、従来と比較して、作業効率が約7.4倍向上していることがわかる。

    <モルタルプレミクス製品>
    実施例4〜6
    水硬性組成物として超速硬系セメントを原料とする止水材(商品名;ライオンシスイ101、住友大阪セメント株式会社製)を用いて、実施例1と同様の方法で、表7の配合割合で水を混合して、部分水和成形体を製造した。
    得られた各部分水和成形体のJIS R 5202の「セメントの強熱減量」に規定される強熱減量値(イグニッションロス)は、それぞれ6重量%、17重量%、22重量%であった。

    比較例7
    超速硬系セメントを原料とする止水材(商品名;ライオンシスイ101、住友大阪セメント株式会社製)そのものを、比較のために用いた。

    試験例4
    上記実施例4〜6及び比較例7の材料を、表8に示す量の混練水を混合して、ミキサ内に投入し、均一に混練して、フレッシュモルタルを調製し、径50mm×100mmの試験体を得て、表8に示す所定の材齢まで空気中で養成をおこない、各試験体の圧縮強度を測定した。
    その結果を、表8に示す。
    ただし、圧縮強度は、JIS A 1108に準拠した方法で測定した。

    形状を維持性が良好で、使用時には容易に崩壊することができるとともに、環境性にも優れており、特別な道具や技術を要さずとも、例えば、何人も容易に、コンクリーひび割れ充填材としてひび割れ等の充填・補修に適用することができる。 更には他に、静的破砕材、各種モルタルプレミクス製品、各種コンクリートプレミクス製品、各種穴埋め材や埋め戻し材等としても利用することができる。

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