【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、アンモニウム稀土類蓚酸複塩の製造方法及びそれらの稀土類酸化物を得るための利用に関係する。 【0002】それは、特に、蓚酸複塩に特定の形態及び得るべき粒子サイズを有することを可能にする方法に関係する。 【0003】稀土類酸化物は、特に、窯業及び電子工学の分野において多くの応用を見出しているが、現在、制御された粒子サイズを有する有する製品の市場において需要の増大が見られる。 【0004】 【従来の技術】稀土類酸化物を得るための従来の方法の一つは、文献、特に、NOUVEAU TRAITEDE CHIMIE MINERA LE (New Treatise on Inorganic Chemistry)、 VII巻、 (1959)、p1007 Paul PASCAL著に十分に記載されているが、水溶液の形態の稀土類塩の、蓚酸を用いた沈殿により得られた稀土類蓚酸塩の500〜900℃における焼成にある。 しかしながら、そのような製造方法は、粗い粒子サイズを有する稀土類酸化物へ導くだけである。 【0005】JP53-095911-A (Chemical Abstracts 90 ,4 0940 w) により、微細な稀土類酸化物を製造すること、 特に、微細なイットリウム酸化物を蓚酸イットリウムアンモニウムの焼成によって製造することも又周知であり、それは、イットリウム塩の水溶液から出発し、イットリウムをその水酸化物(イットリウム塩の水溶液とアンモニア溶液等の塩基性水溶液の反応により製造する) の形態で沈殿させ、次いで、その結果生じた水酸化物スラリーを蓚酸で処理し、最終的に、得られた沈殿を分離し、洗い、そして750℃の温度で焼成することにある。 上記の方法は、JP53-095911-A において与えられた記載によれば、微細な酸化イットリウムの生産へと導く。 その粒子の直径は、0.9〜4.5μmであり、その結晶は丸い端を持つ小さな板の形を有する。 【0006】しかしながら、粒子サイズ並びに粒子サイズの分布の制御は、それらがこの方法の実施条件により大いに影響を受けるので比較的困難である。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本出願の目的の一つは、特に、狭い粒子サイズ分布を有する、制御可能な平均結晶サイズの蓚酸稀土類アンモニウム複塩の製造方法を提供することによりこれらの欠点を是正することである。 【0008】蓚酸稀土類アンモニウム複塩は、アンモニウムイオン及び蓚酸イオンと結合した一つ以上の稀土類元素を含み、焼成の後に単一又は混合酸化物を生成することの出来る化合物を意味すると理解されるべきである。 【0009】稀土類という表現は、ランタニド族に属する原子番号57〜71(一切を含む)を有する元素、並びに原子番号39を有するイットリウムを意味すると理解されるべきである。 【0010】 【課題を解決するための手段】この目的のために、この発明は、蓚酸稀土類アンモニウムの製造方法を提供するが、それは下記を含む:水性媒質中で、溶液状態で蓚酸イオンを遊離することの出来る少なくとも一種の化合物を、少なくとも一種の水溶性稀土類化合物及び一種のアンモニウム塩と混合し、得られた沈殿を分離し、そして、適宜それを乾燥する。 【0011】この発明の特徴によって、このアンモニウム塩は硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム及び酢酸アンモニウムから選択する。 【0012】従って、例えば硝酸アンモニウム(この発明の好ましい化合物である)等のアンモニウム塩の利用は、上述の以前の方法におけるような稀土類水酸化物の先の沈殿を伴わずに直ちに沈殿するので、蓚酸複塩の沈殿のより良い制御を可能にする。 この直接の沈殿は、沈殿した蓚酸複塩の粒子サイズ及び広がった微結晶サイズを制御することを可能にする。 【0013】この発明の第一の好ましい実施態様にり、 このアンモニウム塩及び稀土類化合物を水性媒質中で混合して第一の溶液を形成する。 【0014】この実施態様において、溶液中で蓚酸イオンを遊離することの出来る化合物を第一の溶液に加える。 【0015】この化合物の状態又は濃度は、沈殿した蓚酸複塩の微結晶のサイズ並びにそれらの粒子サイズの分布を改変することが出来る。 【0016】蓚酸イオンを遊離することの出来る化合物は、結晶化した又は溶液状態の蓚酸、結晶化した又は溶液状態のアルカリ金属蓚酸塩、又は類似物から選択するのが有利である。 【0017】従って、蓚酸イオンを遊離し得る化合物の固体形態での添加は、小さいサイズ(例えば、1〜4μ mのオーダー)の微結晶の沈殿を得ることを可能にするが、他方、水溶液の形態のこの化合物(それにより第二の溶液を形成している)の添加は、大きい微結晶を得ることを可能にする。 【0018】この発明の第二の実施態様において、アンモニウム塩及び稀土類化合物を含む第一の溶液を、蓚酸イオンを遊離することの出来る化合物を含む第二の溶液に加える。 【0019】しかしながら、この実施態様において、稀土類化合物及びアンモニウム塩は、溶液の形態又は結晶の形態で加えることが出来る。 これらの化合物は、固体混合物の又は共通溶液の何れかの形態において、又は別々の形態において加えることが出来るが、それらは、それから、好ましくは、同時に第二の溶液に加えるべきである。 【0020】この発明に適した稀土類化合物として、例えば、硝酸塩、塩化物及び硫酸塩、又は稀土類塩の混合物を挙げることが出来るが、硝酸塩がこの発明の好ましい化合物である。 【0021】これらの化合物の内で、硝酸イットリウム、硝酸ユーロピウム、硝酸ランタン、硝酸ネオジム、 硝酸ジスプロシウム、硝酸セリウム、硝酸ガドリニウム、硝酸テルビウム、又はそれらの混合物が好ましい。 【0022】特に、稀土類鉱物の処理から直接又は間接に生じる稀土類塩を含む水溶液を用いることは可能である。 【0023】この発明の方法は、セリウム稀土類に完全に適合しているが、それはイットリウム稀土類に一層適している。 【0024】“セリウム稀土類”は、ランタンから始まり、原子番号に従ってネオジムまで至る軽い稀土類元素を意味し、“イットリウム稀土類”は、原子番号に従って、サマリウムから始まりルテシウムに終わる重い稀土類元素(イットリウムを含む)を表すということは理解される。 【0025】稀土類化合物の濃度は重要ではない。 【0026】この方法の他の好ましい特徴により、沈殿の完了時におけるC 2 O 4 = /RE及びNH 4 + /REモル比は、2より、好ましくは、2.5より小さくない。 【0027】しかしながら、溶液中の(C 2 O 4 ) =及びNH 4 +イオンの濃度は重要でなく、広い範囲内で変化し得る。 【0028】好ましい実施態様により、蓚酸塩濃度並びに異なる溶液中の稀土類及びアンモニウムイオンの濃度及び第一及び第二の溶液の体積(並びに、添加した結晶化生成物の質量)は、最終反応媒質において、蓚酸イオンの稀土類((C 2 O 4 ) = /RE)に対する2より、 都合よくは、2.5より小さくないモル比を得るように、そしてアンモニウムの稀土類(NH 4 + /RE)に対する比が2より、好ましくは、2.5より小さくならないように決定する。 【0029】この方法の実施条件は、蓚酸複塩を得ることについて全く臨界的でない。 それにもかかわらず、異なる溶液の混合比又は結晶化生成物の溶液への導入比、 温度、及び混合物の攪拌の制御は、沈殿した蓚酸複塩の形態を改変し、制御することを可能にする。 【0030】更に、温度は、蓚酸複塩の溶解度係数が温度の上昇に伴って増加するので、沈殿収量に影響を持つ。 【0031】この発明の選択的特徴により、沈殿は、3 0〜90℃、好ましくは、35〜70℃の温度において行なう。 【0032】この発明の他の選択的特徴により、沈殿の分離は、沈殿の完了後、約5分〜2時間で行なう。 この期間の間、反応媒質は、攪拌を続けても又は続けなくても良い。 【0033】このステップは、結晶の転移を可能にし、 一般に、沈殿の熟成のステップと呼ばれる。 【0034】得られた沈殿は、上ずみ液から、例えば、 濾過、遠心分離、デカンテーション等の任意の固体/液体分離法により分離する。 それは又、例えば、可溶性の塩を除去するために、1回以上の洗浄にかけることが出来る。 【0035】蓚酸稀土類アンモニウム複塩は、結合しなかった水を蒸発させるために、例えば、50〜100℃ での熱処理によるか又は減圧下での乾燥により乾燥を受けることが出来る。 【0036】この発明の方法は、均質な粒子サイズを有する蓚酸稀土類アンモニウム複塩、並びに結晶の非常に狭い粒子サイズ分布を得ることを可能にする。 【0037】得られる結晶は、例えば、約1〜4μmのサイズであり、小さい板の形を有する。 【0038】これらの蓚酸稀土類アンモニウム複塩の利用の一つは、これらの蓚酸塩の熱分解により得られる稀土類酸化物の生産である。 【0039】複塩の分解により得られる稀土類酸化物の形態及び粒子サイズは、一般に、先駆物質として利用される前記の蓚酸複塩のそれに類似している。 しかしながら、蓚酸複塩の熱処理の条件によって、この酸化物の粒子サイズは、蓚酸塩のそれと僅かに異なり得る。 【0040】この熱処理又は焼成は、一般に、600〜 1200℃、都合良くは、800〜1000℃の温度において行なう。 【0041】焼成時間は、従来法において、一定重量の検査により決定する。 一つの指針として、焼成時間は、 約30分〜6時間で変化し得る。 【0042】この発明を、以下の幾つかの実施例により説明するが、専ら、指針としてである。 【0043】 【実施例】 実施例1硝酸イットリウムを1.36モル/lの濃度で含む溶液を2M硝酸アンモニウム溶液と混合してNH 4 + /Y比= 5を得る。 この溶液を45℃に加熱する。 結晶化した蓚酸85gを加え、(C 2 O 4 ) = /Y比=2.5とする。 この沈殿を、次いで、濾過により回収し、水で洗う。 洗った沈殿を100℃で乾燥し、次いで、X線分析にかけてその蓚酸イットリウムアンモニウム複塩の構造を確認する。 この塩を900℃1時間の焼成により酸化物に変換する。 CILAS 粒度計により行なわれた粒子サイズ分析は、この酸化物が平均粒子直径2.55μmを有し、粒子サイズの分散因子σ/mは0.53であることを示している。 この因子σ/mは下記の式により計算される。 σ/m=(φ 84 −φ 16 )/2φ 50 (式中、φ 84 :粒子の84%がφ 84を越えない直径を有する直径を表す。 φ 16 :粒子の16%がφ 16を越えない直径を有する直径を表す。) φ 50 :平均粒子直径を表す。 【0044】 実施例2実施例1と類似の方法において、硝酸イットリウム及び硝酸アンモニウムを含む溶液(NH 4 + /Y=3.90) を調製する。 この溶液に、45℃にした後に、C 2 O 4 = /Y比=2を得るように、蓚酸の1M溶液を加える。 反応媒質を、次いで、30分間攪拌する。 濾過し、水で洗った後、沈殿を100℃で乾燥し、次いで、900℃で焼成してイットリウム酸化物に変換する。 この酸化物の粒子サイズ分析は、それが、13.6μmに等しい平均直径φ 50及び0.51に等しいσ/mを有することを示している。 この酸化物の結晶を一つの図に示す(倍率6 000倍)。 【0045】 実施例3結晶化した蓚酸0.675モルを含む溶液を45℃に加熱する。 この溶液に、硝酸アンモニウム及び硝酸イットリウムを含む第二の溶液を加えて反応媒質において下記の比を得る。 C 2 O 4 = /Y =2.5 NH 4 + /Y =4.96 この混合物を1時間攪拌し、次いで、沈殿を濾過し、水で洗う。 100℃で乾燥した後、この蓚酸複塩を1時間900℃で焼成する。 粒子サイズ分析は、それが、4. 06μmに等しいφ 50及びσ/m=0.48を有することを示している。 【0046】 実施例4 60℃に加熱した蓚酸の溶液に、反応媒質において下記の比を得るように、硝酸イットリウムの溶液及び硝酸アンモニウムの溶液を同時に加える。 C 2 O 4 = /Y =2.5 NH 4 + /Y =5.15 この混合物を1時間攪拌する。 沈殿を、次いで、濾過し、水で洗い、その後、前述の実施例におけるように、 乾燥して焼成する。 こうして得た酸化物は、3μmに等しい平均粒子直径及び0.6に等しいσ/mを有する。 【0047】 実施例5実施例1を再現するが、硝酸イットリウム及び硝酸アンモニウムの溶液代わりに、塩化イットリウム及び塩化アンモニウムの溶液を用いる。 反応媒質中の分子種の比は、 C 2 O 4 = /Y =2.54 NH 4 + /Y =3.26 である。 前述の実施例において記載した方法により回収した沈殿の焼成により得られたイットリウム酸化物は、 3.5μmに等しい平均粒子直径及びσ/m=0.56 を有している。 【図面の簡単な説明】 【図1】図1は、イットリウム酸化物の結晶構造の写真 である (倍率6000倍)。 |