【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、相互に混和しない液体が毛細管状の流路中を接触つつ流れた後、それぞれの液体に分離されて流出する機構を有する微小ケミカルデバイスに関し、更に詳しくは、物理化学や化学工学の分野における油水分離デバイスや液−液抽出用微小デバイス;合成化学、生化学などの分野における油水分離デバイスや液体−液体間の物質移動を伴う合成用微小デバイス;集積型DNA分析,微小電気泳動,微小クロマトグラフィーなどの微小分析デバイスと組み合わせることのできる試料調製用微小デバイス;質量スペクトルや液体クロマトグラフィーなどの分析試料調製用微小デバイスなどに適用可能な微小ケミカルデバイスに関する。 【0002】 【従来の技術】「マイクロチャンネル内での高速分子輸送」99−1 セパレーションズ サイエンス&テクノロジー(SST)研究会講演会、高分子学会主催、予稿集9頁(1999)には、石英に掘られた幅250μm 、深さ100μm のマイクロチャンネル内でのキシレン/水系での液−液抽出について記載されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記文献のように液体同士を直接接触させると、それらを再びミクロスケールで分離することは相当に困難であった。 【0004】本発明が解決しようとする課題は、相互に混和しない極微量の液体を直接接触させた後、再び分離することのできる微小ケミカルデバイスを提供することにあり、また、液体同士をミクロスケールで直接接触させることによって抽出速度を上げ、接触させた液体を再び分離する抽出デバイスとして使用が可能な微小ケミカルデバイスを提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、細い流路の下流端に、水との接触角が低い部分と高い部分を有する部屋を設け、かつ、接触角が低い部分と高い部分からそれぞれ流出路を形成することで、層状、塊状、あるいは分散状で流路中を流れた相互に混和しない液体を、流出端で分離することが可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。 【0006】即ち、本発明は上記課題を解決するために、(I)断面積が1×10 -12 m 2 〜1×10 -6 m 2の範囲にある毛細管状の流路を有する微小ケミカルデバイスであって、流路の下流端に該流路の断面積の2〜10 00倍の断面積を有する分液室が設けられていること、 分液室が、その内面に水との接触角が相対的に低い低接触角部分と、水との接触角が該低接触角部分より10 度以上高い高接触角部分を有すること、及び、分液室の低接触角部分と高接触角部分から、それぞれ流出路が設けられていること、を特徴とする分液機構を有する微小ケミカルデバイス(以下、「分液機構を有する微小ケミカルデバイス」を単に「デバイス」と称する。)を提供する。 【0007】また、本発明は上記課題を解決するために、(II)分液室の低接触角部分の水との接触角αと高接触角部分の水との接触角βが、(イ)α≦25°であり、かつ、35°≦β、(ロ)25°<α≦90°であり、かつ、(α+40°)≦β≦90°、(ハ)α≦9 0°であり、かつ、90°<β、の少なくとも一つの条件を満足する上記(II)に記載の微小ケミカルデバイスを提供する。 【0008】また、本発明は上記課題を解決するために、(III)流路及び分液室が、互いに密着された部材(A)と部材(B)との間に形成されたものである上記(I)又は(II)項に記載の微小ケミカルデバイスを提供する。 【0009】また、本発明は上記課題を解決するために、(IV)部材(A)及び部材(B)が有機高分子重合体からなる上記(III)項に記載の微小ケミカルデバイスを提供する。 【0010】さらに、本発明は上記課題を解決するために、(V)部材(A)及び部材(B)がそれぞれ、ポリカーボネート系重合体、塩化ビニル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリエステル系重合体、(メタ)アクリル系架橋重合体、マレイミド系架橋重合体、からなる群から選ばれた重合体からなる上記(III)項に記載の微小ケミカルデバイスを提供する。 【0011】さらにまた、本発明は上記課題を解決するために、(VI)流路の上流端に接続して複数の流入路が形成されている上記(I)〜(V)項のいずれかに記載の微小ケミカルデバイスを提供する。 【0012】 【発明の実施の形態】本発明のデバイスの基材の形状は、特に限定する必要がなく、用途目的に応じた形状を採りうる。 例えば、シート状(フィルム、リボンなどを含む。以下同じ)、板状、塗膜状、棒状、管状、その他複雑な形状の成型物などであり得るが、シート状、板状又は棒状であることが特に好ましい。 基材は、その内部に毛細管状の流路(以下、「毛細管状の流路」を単に「流路」と称する。)が形成されている。 【0013】基材は、密着した部材(A)と部材(B) から成り、互いに密着した部材(A)と部材(B)との間に流路が形成されたものであることが好ましい。 本発明で言う密着とは、気密あるいは液密に接触していることを言い、非接着の接触、接着、粘着を含む。 勿論、接着や粘着は、接着剤や粘着剤を介する接触であって良い。 基材の構造は、例えば、部材(A)と部材(B)の間の、流路以外の部分に固体状物質が充填された構造であっても良いし、また、例えば、表面に溝を有する部材(A)の溝を有する面に他の部材(B)が密着して形成された構造であっても良い。 【0014】部材(A)の形状は、上記の基材の場合と同様である。 部材(A)は、更に別の部材、例えば、支持体、と一体化された形態であってもよい。 部材(A) が塗膜状である場合には、支持体と一体化された状態で使用される。 支持体の素材、形状も任意であり、例えば、部材(A)の場合に示した素材や形状であって良い。 複数の微小ケミカルデバイスを1つの部材(A)上に形成することも可能であるし、製造後、これらを切断して複数の微小ケミカルデバイスとすることも可能である。 【0015】部材(B)の形状は、部材(A)と直接あるいは接着剤や粘着剤を介して密着させることが可能なものであれば、その形状、構造、表面状態などは任意である。 部材(B)の採りうる形状や好ましい形状については、部材(A)の場合と同様である。 部材(B)は、 表面に溝が形成されている必要は無いが、溝や溝以外の構造が形成されていても良い。 例えば、部材(B)は、 表面に溝が形成された部材(A)の鏡像体であることも好ましい。 エネルギー線硬化性化合物を接着剤として使用し、溝が形成された部材(A)上に部材(B)を接着する場合であって、部材(A)が使用するエネルギー線を透過させない場合には、部材(B)は使用するエネルギー線を透過させるものである必要がある。 【0016】本発明のケミカルデバイスの素材は任意であり、有機高分子重合体(以下、単に「重合体」と称する)、ガラス、石英などの結晶、セラミック、炭素、金属、シリコンの如き半導体、などであってよいが、成形しやすさの面から、重合体であることが好ましい。 【0017】本発明のケミカルデバイスの素材、例えば、部材(A)や部材(B)の素材として用いられる重合体は、熱可塑性重合体であっても、熱硬化性重合体であっても良いが、成形性の良い点で熱可塑性重合体が好ましく、また、表面に溝を形成する場合に溝の形成が容易、硬化速度が高い、表面親水化が容易などの点でエネルギー線硬化性の架橋重合体が好ましい。 本発明のケミカルデバイスの素材は、ポリマーブレンドやポリマーアロイで構成されていても良いし、複合体や積層体であっても良い。 【0018】本発明のケミカルデバイスの素材として好ましく使用できる重合体としては、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン/マレイン酸共重合体、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体の如きスチレン系重合体;ポルスルホン、ポリエーテルスルホンの如きポリスルホン系重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルの如きポリ(メタ)アクリル系重合体;ポリマレイミド系重合体;ポリカーボネート系重合体;酢酸セルロース、メチルセルロースの如きセルロース系重合体;ポリウレタン系重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンの如き塩素系重合体;ナイロン、芳香族ポリアミドの如きポリアミド系重合体;芳香族ポリイミド、芳香族ポリエーテルイミドの如きポリイミド系重合体;ポリエチレン、ポリプロピレンの如きポリオレフィン系重合体;ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィドの如きポリエーテル系やポリチオエーテル系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレートの如きポリエステル系重合体、ポリ四フッ化エチレン、パーフロロアルコキシパーフロロエチレン−四フッ化エチレン共重合体(PFA)などのフッ素系重合体などが挙げられる。 また、エネルギー線硬化性の架橋重合体としては、(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化性化合物の硬化物や、マレイミド基を有するエネルギー線硬化性化合物の硬化物が好ましい。 勿論、重合体は単独重合体の他、共重合体であっても良い。 【0019】これらの中でも、耐溶剤性に優れ、使用可能な溶剤の範囲が広い上、接着性にも優れるので、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレートが好ましく、成形性や価格などから、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、 ナイロン、ポリアリレートが特に好ましい。 また、ポリ(メタ)アクリル系架橋重合体、ポリマレイミド橋架橋重合体などのエネルギー線硬化性の架橋重合体もまた好ましい。 【0020】本発明のケミカルデバイスが部材(A)と部材(B)を主要な部材として構成されている場合には、これらの素材として、上記本発明のケミカルデバイスに使用できる素材として示したものが使用できる。 部材(B)の素材は部材(A)と同じであっても良いし、 異なっていても良い。 【0021】本発明のデバイスの流路は、断面積が1× 10 -12 m 2以上であり、好ましくは1×10 -10 m 2以上であり、また1×10 -6 m 2以下であり、好ましくは1× 10 -7 m 2以下である毛細管状の流路である。 この流路に、互いに混和しない複数の液体を流すことによって、 例えば、流通中に液体間で物質交換を行わせることができる。 流路がこの寸法より小さい場合、製造や使用が困難となり、流路がこの寸法より大きい場合、本発明の効果が小さくなる傾向にあるので好ましくない。 流路の断面形状は任意であり、例えば、矩形(角が丸められた矩形を含む。以下同じ)、台形、円、楕円、スリット状などであり得る。 流路断面の最大径とそれに直角な方向の径との比は、用途、目的に応じて任意に設定できるが、 一般には1〜10が好ましく、1〜5がさらに好ましい。 これらの形状、寸法は流路全体にわたって一定である必要はない。 【0022】流路が部材(A)と部材(B)の間に形成されている場合、流路は、例えば、(イ)部材(A)と部材(B)の間の、流路以外の部分に固体状物質が充填されて形成されていても良いし、また、例えば、(ロ) 表面に溝を有する部材(A)の溝を有する面に、他の部材(B)が密着されて形成されていても良い。 上記(イ)における流路は、部材(B)を上にした時の底面が部材(A)、側面が充填された固体状物質、上面が部材(B)で構成されており、上記(ロ)における流路は、底面と側面が部材(A)、上面が部材(B)又は部材(B)に塗布された接着剤もしくは粘着剤で構成されている。 【0023】流路が部材(A)と部材(B)との間に形成されている場合には、流路の部材(A)と部材(B) の密着面に水平な方向の寸法/垂直な方向の寸法比は、 0.3〜10が好ましく、0.5〜5がさらに好ましい。 【0024】流路の流線方向の形状、例えば、流路が部材(A)と部材(B)との間に形成されている場合には、部材(A)と部材(B)との密着面に垂直な方向から見た形状は、用途目的に応じて直線、曲線、渦巻き、 ジグザグ、その他任意の形状であってよい。 【0025】流路が部材(A)と部材(B)との間の流路以外の部分に固体状物質が充填されて形成されている構造の場合、固体状物質の厚みは必ずしも均一である必要はないが、均一であることが好ましい。 【0026】流路が部材(A)と部材(B)との間の流路以外の部分に固体状物質が充填されて形成された構造の形成方法は、例えば、部材(A)と部材(B)の間にエネルギー線硬化性組成物を挟持し、部材(A)及び/又は部材(B)の外部から、流路となる部分を除いてエネルギー線を照射し、未硬化のエネルギー線硬化性組成物を除去する方法、流路となるべき部分を切り抜いた密着性のシート状部材を部材(A)と部材(B)間に挟んで互いに密着する方法、流路となるべき部分に保護物質、例えば、四フッ化エチレン製の棒状物を置き、 重合性物質や溶融樹脂を充填・固化した後、保護物質を除去する方法、などを採ることができる。 本法は工程数は少ないが、流路径がが小さくなると未硬化のエネルギー線硬化性組成物や保護物質の除去が困難となるため、 比較的寸法の大きな流路を形成する方法として好適である。 【0027】流路が、表面に溝を有する部材(A)の溝を有する面に他の部材(B)が密着されて形成される場合、部材(A)に設けられた溝は、その周辺部より低い、いわゆる溝として形成されていても良いし、部材(A)表面に立つ壁の間として形成されていても良い。 部材(A)の表面に溝を設ける方法は任意であり、例えば、射出成型、溶剤キャスト法、溶融レプリカ法、切削、エッチング、フォトリソグラフィー(エネルギー線リソグラフィーを含む)、エッチング法、蒸着法、気相重合法、溝となるべき部分を切り抜いたシート状部材と板状部材との密着などの方法を利用できる。 部材(A) は、複数の素材で構成されていてもよく、例えば、溝の底と側面が異なる素材で形成されていても良い。 部材(A)には、溝以外の構造部分、例えば、貯液槽、反応槽、分析機構などとなる構造を設けることができる。 【0028】部材(A)が表面に溝を有するものである場合の、部材(A)と部材(B)の密着方法は、部材(A)表面の溝が流路として形成される方法であれば、 任意であり、溶剤型接着剤の使用、無溶剤型接着剤の使用、溶融型接着剤の使用、部材(A)及び/又は部材(B)表面への溶剤塗布による接着、熱や超音波による融着、などを使用しうるが、無溶剤型の接着剤の使用が好ましく、無溶剤型接着剤としてエネルギー線硬化性樹脂を用い、エネルギー線照射により硬化させて接着する方法が、微小なデバイスの精密な接着が可能であり、生産性も高いことから、好ましい。 また、溝に保護材を充填した状態で接着し、その後、保護材を除去する方法を採ることも可能である。 部材(B)は接着剤の硬化物そのものであってもよい。 【0029】部材(A)と部材(B)の非接着の接触方法は、例えば、クランプ、ネジ、リベットなどにより固定された状態であり得る。 【0030】本発明の微小ケミカルデバイスの、流路内面の水との接触角は任意であるが、低いほど、互いに混和しない2液が層状になって流れやすく、液−液接触効率が高くなるため好ましい。 流路内面の水との接触角は、好ましくは25°以下、さらに好ましくは15°以下、最も好ましくは5°以下である。 流路内面は、相対的に水との接触角が低い低接触角部分と、水との接触角が流路の低接触角部分の水との接触角より10°以上高い高接触角部分を有し、かつ、流路の低接触角部分と流路の高接触角部分がそれぞれ流路の上流端から下流端にわたって途切れずに連続していることも、互いに混和しない2液が層状になって安定して流れやすいため好ましい。 流路の高接触角部分の水との接触角は、好ましくは35°以上であり、さらに好ましくは45°以上、さらに好ましくは70°以上、最も好ましくは90°以上である。 しかしながら、本発明のデバイスにおいては、互いに混和しない2液が必ずしも流路中を層状になって流れる必要はなく、塊状や分散状態で流れても、分液室において分離することが可能である。 【0031】本発明のデバイスは、流路の下流端に該流路の断面積の2〜1000倍、好ましくは3〜100 倍、さらに好ましくは4〜30倍の断面積を有する分液室が設けられている。 分液室の断面積とは、液体の流線方向に垂直な断面の面積を言う。 分液室の断面形状は、 寸法の縦/横比が2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることが最も好ましい。 縦/横比の上限は特に設ける必要はないが製造の容易さから100以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。 分液室の液体の流線方向の長さは任意である。 【0032】分液室は、その内面に水との接触角が相対的に低い低接触角部分と、水との接触角が該低接触角部分より10度以上高い高接触角部分を有する。 低接触角部分と高接触角部分の水との接触角の差がこれ未満であると、相互に混和しない液体の分液が困難となりがちである。 また、低接触角部分の水との接触角が低いほど、 高接触角部分の水との接触角が比較的低くても上記の不都合が生じにくく、高接触角部分の水との接触角が高いほど、低接触角部分の水との接触角が比較的高くても上記の不都合が生じにくい。 【0033】低接触角部分の水との接触角をα、高接触角部分の水との接触角をβとした場合に、以下の(イ) 〜(ハ)のいずれかの条件を満足する組み合わせが好ましい。 【0034】(イ)α≦25°であり、かつ35°≦β であることが好ましく、α≦10°であり、かつ35° ≦βでであることがさらに好ましく、αとβの差が大きいほど好ましい。 【0035】(ロ)25°<α≦90°であり、かつ(α+40°)≦β≦90°であることが好ましく、α とβの差が大きいほど好ましい。 あるいは、 【0036】(ハ)α≦90°であり、かつ90°<β であることが好ましく、αとβの差が大きいほど好ましい。 【0037】また、上記の(イ)と(ハ)を同時に満足すること、即ち、(ニ)α≦25°であり、かつ90° <βであることがより好ましく、α≦10°であり、かつ90°<βであることが最も好ましい。 【0038】高接触角部分は、また、使用する疎水性液体との接触角が90°以下であることが好ましい。 【0039】分液室の内面には、低接触角部分、高接触角部分以外の第3の部分があっても良い。 なお、本発明で言う水との接触角とは、液滴法により測定した静止角を言う。 測定に先立って、試料を温度24±1℃、湿度65±5%の雰囲気に1時間以上静置し、温度24±1 ℃、湿度65±5%で測定する。 測定は、置液後3分の安定化時間の後に行なう。 試料の乾燥条件などによって接触角が変化する場合には、最も低い値を採用する。 【0040】分液室の液体の流線に垂直な方向の断面において、高接触角部分と低接触角部分が流路表面に占める部分の数は、それぞれ単数であっても複数であっても良いが、それぞれ単数であることが好ましい。 分液室の液体の流線に垂直な方向の断面において、高接触角部分と低接触角部分が流路表面に占める場所及び割合は任意であるが、流路との接続部分においては、該断面を低接触角部分と高接触角部分に分割したとき、該分割されたそれぞれの溝状の部分の深さ/幅の比が、好ましくは1 以下、さらに好ましくは0.7以下、最も好ましくは0.5以下となることが好ましい。 該深さ/幅比の下限は特に設ける必要はないが、1/100以上であることが好ましく、1/30以上であることが好ましい。 このように分液室を作製することによって、塊状や分散状態で分液室に流入した2液を分離することが容易となる。 【0041】また、流出路との接続部分における、分液室の液体の流線に垂直な方向の断面において、高接触角部分と低接触角部分が流路表面に占める場所及び割合は、該断面を低接触角部分と高接触角部分に分割したとき、該分割されたそれぞれの溝状の部分の深さ/幅の比が、好ましくは1以上、さらに好ましくは1.5以上、 最も好ましくは2以上となる形状であることが好ましい。 該深さ/幅比の上限は特に設ける必要はないが、1 00以下であることが好ましく、30以下であることが好ましい。 このように分液室を作製することによって、 分離された2液を独立に流出路から流出させることが容易となる。 【0042】分液室の液体の流線に垂直な方向の断面において、高接触角部分と低接触角部分が流路表面に占める場所及び割合の、流路との接続部分から流出路との接続部分に至る流線方向の中間の状態は任意であり、連続的に移行してもよいし、階段状あるいは1段で不連続に移行しても良い。 しかしながら、不連続に移行する場合であっても、高接触角部分と低接触角部分はそれぞれ途切れずに連続していることが好ましい。 【0043】分液室の流線方向の長さは任意であるが、 液体の滞留時間を1秒以上とすることが好ましく、10 秒以上とすることがさらに好ましい。 【0044】分液室内面の低接触角部分及び/又は高接触角部分は、部材(A)、部材(B)、充填された固体状物質などの、分液室の壁面を構成する素材として、しかるべき接触角を示す素材を使用することにより形成されていても良いし、分液室内面の表面処理によって形成されていても良い。 表面処理は、分液室を形成する素材に施した後、分液室を形成しても良いし、分液室形成後に施しても良い。 親水化あるいは疎水化のための表面処理は、目的部位のみを処理することもできるし、目的部位を保護した状態で全体を処理した後、保護を外すこともできる。 処理方法により好適な方法を採用できる。 【0045】表面処理による分液室内表面の親水化方法は任意であり、例えば、プラズマ処理、プラズマ重合、 コロナ放電処理、表面の化学修飾、表面への親水性化合物のグラフト重合、親水性ポリマーのコーティング、などが挙げられる。 【0046】プラズマ処理やプラズマ重合としては、酸素;アセトン、有機酸の如き分子中に酸素原子を有する化合物;アミンの如き分子中に窒素原子を有する化合物の存在下での処理が好適である。 また、常圧プラズマ処理も可能である。 【0047】表面の化学修飾の方法としては、例えば、 ハロゲン化とその置換反応やエポキシ基の導入とそれへの付加反応などによる水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等の導入;濃硫酸、発煙硫酸、過硫酸塩との接触によるスルホン化;濃硝酸、発煙硝酸などとの接触によるニトロ化、及びその置換や還元による水酸基やアミノ基の導入;アジド等を用いた光化学反応、などが挙げられる。 【0048】親水性の重合性化合物のグラフト重合の方法としては、例えば、基材のコロナ処理、プラズマ処理、放射線処理などの後、親水性の付加重合性化合物と接触させる方法や、光重合を利用した方法、などが挙げられる。 【0049】これらの中でも、親水性の重合性化合物のグラフト重合は、親水性ポリマーからなる層が、基材を構成する疎水性重合体に親水性重合体の層が共有結合しているため、親水性層が剥離したり、親水性層の構成成分が溶出したりする危険性がないので、好ましい。 また、親水性の重合性化合物としては、炭素−炭素不飽和二重結合を有する重合性化合物を用いることが、重合速度が高くなるので、好ましい。 【0050】親水性ポリマーのコーティングは、可溶性ポリマーの溶液を印刷などにより任意のパターンで基板上に塗布する方法である。 使用できる可溶性ポリマーとしては、例えば、ポリヒドロキシメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、スルホン化セルロース、スルホン化ポリスルホン、などが挙げられる。 【0051】コーティング法のように、親水性ポリマーが基材に化学結合していない場合には、親水性ポリマーが使用中に溶出する可能性があるため、これを防止するために、親水性ポリマーとして架橋ポリマーを用いることが好ましい。 親水性の架橋ポリマーからなる層は、コーティング後に架橋させる方法、あるいは、親水性の架橋重合性化合物のコーティングと架橋重合により容易に形成することができる。 親水性ポリマーのコーティングは、親水化の程度が高いものが得られるので、好ましい。 親水性ポリマーのコーティングを、親水性の重合性化合物のオンサイト重合で行う場合、親水性の重合性化合物として、炭素−炭素不飽和二重結合を有する重合性化合物を用いることが、重合速度が高くなるので、好ましい。 【0052】表面処理による疎水化方法は、任意であり、例えば、フッ素処理、プラズマ処理、プラズマ重合、表面の化学修飾、表面への疎水性化合物のグラフト重合、疎水性ポリマーのコーティング、などが挙げられる。 【0053】プラズマ処理やプラズマ重合は、例えば、 四フッ化炭素の如きフッ化物、テトラクロロエタンの如き塩化物、メタンやベンゼンの如き炭化水素の存在下で、プラズマ処理やプラズマ重合を行なうことにより、 疎水化することができる。 【0054】表面の化学修飾としては、例えば、フッ素化、塩素化、ブロム化、などのハロゲン化、及びこれらの置換反応によるアルキル化;アジド化合物などを用いた光化学反応、などが挙げられる。 【0055】疎水性ポリマーのコーティングは、溶剤可溶性ポリマーの溶液を塗布する方法である。 【0056】表面への疎水性化合物のグラフト重合としては、例えば、部材をコロナ処理、プラズマ処理、放射線処理などの表面処理をした後、疎水性の付加重合性化合物と接触させる方法;光重合を利用した表面グラフト法、などが挙げられる。 【0057】互いに混和しない液体は、本デバイスの流路中を層状で、分散状態で、あるいは塊状で流れ、分液室に入る。 本発明のデバイスは、互いに混和しない液体が流路中を塊状になって流れる場合であっても、分液室にて分離し、それぞれの流出路から各単独で流出させることができる。 【0058】分液室の形成方法は任意であり、例えば、 流路と同様の方法で流路と同時に形成することができる。 即ち、基材が部材(A)と部材(B)間に形成されている場合には、分液室もまた、部材(A)と部材(B)間の流路と同一平面内の形成されていても良い。 【0059】分液室の低接触角部分と高接触角部分から、それぞれ分液室からの流出路が設けられている。 各流出路は、分液室の中の互いに離れた位置に設けることが、分液を完全にする上で好ましい。 流出路内面の水との接触角は任意であるが、低接触角部分に接続された流出路の水との接触角は90°以下であることが好ましく、高接触角部分に接続された流出路の水との接触角は90°以上であり、かつ、該流出路から流出させる液体との接触角が90°以下であることが好ましい。 流出路は、デバイス外に開口していても良いし、デバイス内の他の構造部分に接続していても良い。 【0060】流出路の形状や構造は任意であり、流路や分液室と同様にして形成することもできるし、異なる構造や方法で形成することもできる。 例えば、基材が部材(A)と部材(B)間に形成されている場合には、流出路もまた部材(A)と部材(B)間に形成されていても良いし、部材(A)及び/又は部材(B)を貫通する孔として形成されていても良い。 流出路にはチューブを接続することが好ましい。 チューブの長さの調節により背圧を調節し、互いに混和しない液体の粘度や流量が異なる場合であっても、安定した分液を可能にする。 【0061】本発明のデバイスは、例えば、液−液抽出の用途に使用する場合には、流路の上流端に接続して、 複数の流入路を形成することができる。 流入路の寸法、 形状、内面の水との接触角は任意である。 【0062】本発明のデバイスには、流路、流入路、流出路の他に、これら以外の構造、例えば、貯液槽、反応槽、膜分離機構、流量調節機構、デバイス外へ接続口、 その他の流入路、分岐したその他の流出路などが形成されていても良い。 【0063】本発明のデバイスの使用に当たっては、例えば、流路に親水性液体(通常は水溶液)及び該親水性液体と混和しない疎水性液体を独立した流入路から導入することができる。 あるいは、流路に分散溶液を導入することができる。 また、あるいは、流路に反応や温度変化により相分離する均一混合溶液を導入することができる。 流路内を、層状、塊状あるいは分散状態で流れた親水性液体及び疎水性液体は、分液室に入り2液に分離され、親水性液体は分液室の低接触角部分に接続された流出路に入り、疎水性液体は分液室の高接触角部分に接続された流出路に入り、2液は分離されて流出する。 2液を完全に分離するためには、流出路の接続口付近の親水性/疎水性のバランスを調節すること、及び流量比や粘度に応じて流出路径や流出路長を調節することにより目的を達することができる。 相互に混和しない複数の液体は3液であっても良い。 【0064】 【実施例】以下、実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。 なお、以下の実施例において、「部」 は「重量部」を表わす。 【0065】<エネルギー線硬化性組成物の調製>実施例で使用するエネルギー線硬化性組成物の調製方法を示した。 【0066】[エネルギー線硬化性組成物[e1]の調製]1分子中に平均3個のアクリル基を有するウレタンアクリレートオリゴマー(大日本インキ化学工業(株)製の「ユニディックV−4263」)40部、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=8)アクリレート(東亜合成化学社製の「M−114」)60部、紫外線重合開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製の「イルガキュアー184」)5 部及び重合遅延剤2,4−ジフェニル−4−メチル−1 −ペンテン(関東化学社製)0.1部を混合してエネルギー線硬化性組成物[e1]を調製した。 この組成物[e1]の硬化物の水との接触角を表1に示した。 【0067】[エネルギー線硬化性組成物[e2]の調製]ウレタンアクリレートオリゴマー(「ユニディックV−4263」)40部、ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬社製の「R−684」)60部、紫外線重合開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュアー184」)5部及び重合遅延剤2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学社製)0.1部を混合してエネルギー線硬化性組成物[e2]を調製した。 この組成物[e2]の硬化物の水との接触角を表1に示した。 【0068】[エネルギー線硬化性組成物[e3]の調製]ウレタンアクリレートオリゴマー(「ユニディックV−4263」)100部、紫外線重合開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュアー184」)5部及び重合遅延剤2,4−ジフェニル− 4−メチル−1−ペンテン(関東化学社製)0.1部を混合してエネルギー線硬化性組成物[e3]を調製した。 この組成物[e3]の硬化物の水との接触角を表1 に示した。 【0069】[エネルギー線硬化性組成物[e4]の調製]ウレタンアクリレートオリゴマー(「ユニディックV−4263」)65部、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート(第一工業製薬化学社製の「N−177E」)35部、紫外線重合開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュアー184」)5部及び重合遅延剤2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学社製) 0.1部を混合してエネルギー線硬化性組成物[e4] を調製した。 この組成物[e4]の硬化物の水との接触角を表1に示した。 【0070】[エネルギー線硬化性組成物[e5]の調製]ウレタンアクリレートオリゴマー(「ユニディックV−4263」)70部、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート(「N−177 E」)30部、紫外線重合開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュアー184」) 5部及び重合遅延剤2,4−ジフェニル−4−メチル− 1−ペンテン(関東化学社製)0.1部を混合してエネルギー線硬化性組成[e5]を調製した。 この組成物[e5]の硬化物の水との接触角を表1に示した。 【0071】[エネルギー線硬化性組成物[e6]の調製]ポリテトラメチレングリコール(平均分子量25 0)マレイミドカプリエート(特開平11−12440 3号の合成例13に記載の方法によって合成した。 )7 0部及びノニルフェノキシポリエチレングリコール(n =17)アクリレート(「N−177E」)30部を混合してエネルギー線硬化性組成物[e6]を製した。 この組成物[e6]の硬化物の水との接触角を表1に示した。 【0072】[実施例1] 〔部材(A)の作製〕透明硬質ポリ塩化ビニル(積水成型社製)[p1]製の10cm×10cm×2mmの板の中心部5cm×2.5cmの範囲(1)を含む範囲にエネルギー線硬化性組成物[e1]を127μm のバーコーターを用いて塗布し、フォトマスクにて照射しない部分を被った後、ポリ塩化ビニル板(1)の図1に示したエネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層1(2)となる部分のみをウシオ電機製のマルチライト200型露光装置用光源ユニットにて窒素雰囲気中で50mW/cm 2の紫外線を20秒間照射した。 紫外線照射後、水流にて未硬化物を洗浄除去することにより、後の製造工程により分液室低接触角部(6)の底となる、図1に示した形状の厚み102μm のエネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層1(2)を形成した。 【0073】次いで、エネルギー線硬化性組成物[e 1]硬化物層1(2)の未形成部(2')にエネルギー線硬化性組成物[e2]を127μm のバーコーターを用いて塗布し、図1の(2)部分をフォトマスクで被った後、窒素雰囲気中で上記と同じ紫外線を照射した。 紫外線照射後、水流にてエネルギー線硬化性組成物[e 1]硬化物層1(2)の表面に付着していた未硬化物を洗浄除去することにより、ポリ塩化ビニル板(1)の(2')部分に厚み102μm のエネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層1(2')を形成した。 【0074】硬化物層1上に、エネルギー線硬化性組成物[e1]を127μm のバーコーターを用いて塗布し、図2に示した形状の、流路(4)、流入路(5)、 分液室低接触角部(6)、分液室高接触角部(6')、 流出路(7)となる部分及び図2の紙面内上半分部分(3')をフォトマスクで被った後、窒素雰囲気中で上記と同じ紫外線を30秒間照射した。 紫外線照射後、水流にて未硬化物を洗浄除去することにより、エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層2(3)を形成した。 【0075】さらに、該ポリ塩化ビニル板(1)のエネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層2(3)が形成されていない部分に、エネルギー線硬化性組成物[e 2]を127μm のバーコーターを用いて塗布し、図2 に示した形状の、流路(4)、流入路(5')、分液室低接触角部(6)、分液室高接触角部(6')、流出路(7')となる部分及び図2の紙面内下半分部分(3) をフォトマスクで被った後、窒素雰囲気中で上記と同じ紫外線を30秒間照射した。 紫外線照射後、水流にてエネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層2(3)の表面に付着した未硬化物を洗浄除去することにより、エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層2(3')を形成した。 【0076】以上の工程を経た部材には、エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層2(3)及びエネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層2(3')の欠損部として幅240μm 、深さ102μm 、長さ3cmの溝状の流路(4)、それぞれ幅120μm 、深さ102μm の流入路(5、5')、3mm×3mmの分液室(6)、及びそれぞれ幅120μm 、深さ102μm の流出路(7、 7')が形成されている。 その後、流入路(5、5') 及び流出路(7、7')の端部に直径0.5mmのキリ穴を穿ってデバイス外からの流入口(8、8')及びデバイス外への流出口(9、9')を形成して、部材(A) [A1]を得た。 【0077】〔部材(B)の接着〕ポリプロピレン二軸延伸フィルム(二村化学社製の「FOR」、厚さ30μ m)(図示せず)のコロナ処理面に、127μm のバーコーターを用いてエネルギー線硬化性組成物[e3]を塗布し、次いで、窒素雰囲気中で、上記と同じ紫外線を1秒間照射して、塗膜を流動性は喪失したものの不完全硬化の状態とした。 この塗膜面を部材(A)[A1]の溝が形成された面に貼り合わせ、ポリプロピレン二軸延伸フィルム側から上記と同じ紫外線をさらに60秒間照射して塗膜を完全硬化させることによって、エネルギー線硬化性組成物[e3]硬化物(10)で構成された厚さ103μm のシート状の部材(B)[B1]を形成すると同時に部材(A)[A1]の表面に接着し、それらの間に高さ102μm 、幅240μm 、長さ3cmの毛細管状の流路(4)、幅120μm 、深さ102μm の毛細管状の流入路(5、5')、3mm×3mm×102μm の分液室(6、6')、幅120μm 、深さ102μm の毛細管状の流出路(7、7')を形成した。 その後、 ポリプロピレン二軸延伸フィルムを剥離し、図2に示した5cm×2.5cmの範囲を切り出して、微小ケミカルデバイス[D1]を得た。 【0078】〔各部の水との接触角〕用いた素材の水との接触角を表1に示した。 微小ケミカルデバイス[D 1]の分液室(6、6')は、流路との接続口付近における部材(A)側の面及び図2の紙面内上側の側面の水との接触角が22°の低接触角部分(6)であり、分液室(6、6')内の部材(A)側の面の残りの部分、及び部材(B)側の面が水との接触角が68°の高接触角部分(6')、分液室の図2の紙面内下側側面が91° の高接触角部分であった。 また、分液室(6)の流出路(7')との接続口付近における部材(A)側の面は、 水との接触角が91°の高接触角部分となっていた。 また、流路(4)は、部材(A)側の面及び一方の側面の水との接触角が22°、他方の側面が91°、部材(B)側の面が68°であった。 流出路(7)は、部材(A)側の面及び両側面の水との接触角が22°、部材(B)側の面が水との接触角が68°であり、流出路(7')は、部材(A)側の面及び両側面の水との接触角が91°、部材(B)側の面は68°であった。 【0079】〔液−液接触試験〕微小ケミカルデバイス[D1]を、部材(A)が上側になるように設置し、マイクロシリンジにて、流入口(7)から水を注入し、流出口(9)から流出を開始した後、マイクロシリンジにて、流入口(7')からn−ヘキサンを注入し、両者とも流量を0.01mm 3 /秒とすると、2液は流路(4) を層状で流れ、分液室(6)を経て、水は流出路(7) に入って流出口(9)から流出し、n−ヘキサンは流出路(7')に入って流出口(9')から流出した。 【0080】また、水の流量を0.5倍、n−ヘキサンの流量を1,5倍にしたところ、水とn−ヘキサンはそれぞれが凝集して塊状となって流路(4)中を流れたが、水は分液室の低接触角部分(6)に付着し、n−ヘキサンは分液室の高接触角部分(6')に付着して分離され、それぞれが独立に流出路(7)及び流出路(7')から流出した。 さらにこのとき、衝撃的な流量変化や加速度を伴うデバイスの姿勢変化があっても独立に流出する状態に変化はなかった。 【0081】<比較例1>本比較例では、分液室の低接触角部分の水との接触角と高接触角部分の水との接触角の差が10°未満である例を示した。 【0082】〔微小ケミカルデバイスの作製〕実施例1 において、エネルギー線硬化性組成物[e2]及びエネルギー線硬化性組成物[e3]に代えて、エネルギー線硬化性組成物[e4]を使用した以外は、実施例1と同様にして、微小ケミカルデバイス[CD1]を作製した。 【0083】〔各部の水との接触角〕即ち、微小ケミカルデバイス[CD1]の分液室(6、6')は、流路との接続口付近における部材(A)側の面及び図2の紙面内上側の側面の水との接触角が22°の低接触角部分(6)であり、分液室(6、6')内の部材(A)側の面の残りの部分、及び部材(B)側の面が水との接触角が68°の高接触角部分(6')、分液室の図2の紙面内下側側面が30°であった。 また、分液室(6)の流出路(7')との接続口付近における部材(A)側の面は、水との接触角が30°となっていた。 また、流路(4)は、部材(A)側の面及び一方の側面の水との接触角が22°、他方の側面が30°、部材(B)側の面が68°であった。 流出路(7)は、部材(A)側の面及び両側面の水との接触角が22°、部材(B)側の面が水との接触角が68°であり、流出路(7')は、部材(A)側の面及び両側面の水との接触角が30°、部材(B)側の面は68°であった。 【0084】〔液−液接触試験〕微小ケミカルデバイス[CD1]について実施例1と同様の試験を行ったところ、体積流量比1:1では水とn−ヘキサンは層状に流れ、微妙な調節を行うと流出路から独立に流出させることは可能ではあったが、相当に困難であり、僅かな流量変化やデバイスの姿勢変化により分液室で分離されず、 流出路(7)、流出路(7')の双方又は一方から、水とn−ヘキサンの両者が流出した。 【0085】また、体積流量比が0.5:1.5では、 2液はそれぞれ凝集し、塊状となって流路を流れ、分液室で分離されずに流出路(7)、流出路(7')の双方又は一方から、水とn−ヘキサンの両者が流出した。 【0086】即ち、分液室の低接触角部分の水との接触角と高接触角部分の水との接触角の差が8°では、互いに混和しない2液は分離が不十分となることがわかる。 【0087】<実施例2>本実施例では、分液室の低接触角部分の水との接触角と高接触角部分の水との接触角の差が10°を若干上回る例を示した。 【0088】〔微小ケミカルデバイスの作製〕実施例1 において、エネルギー線硬化性組成物[e2]及びエネルギー線硬化性組成物[e3]に代えて、エネルギー線硬化性組成物[e5]を使用した以外は、実施例1と同様にして、微小ケミカルデバイス[D2]を作製した。 【0089】〔各部の水との接触角〕微小ケミカルデバイス[D2]は、分液室(6、6')の流路(4)との接続口付近における部材(A)側の面及び一方の側面の水との接触角が22°、部材(A)側の面の流出路(7')との接続口付近の部分、及び部材(B)側の面と他方の側面が36°であった。 流路(4)は、部材(A)側の面及び一方の側面の水との接触角が22°、 他方の側面及び部材(B)側の面が36°であった。 流出路(7)は、両側面の水との接触角が22°、部材(A)側の面及び部材(B)側の面が36°であり、流出路(7')は、内面全部が36°であった。 【0090】〔液−液接触試験〕微小ケミカルデバイス[D2]について実施例1と同様の試験を行ったところ、水とn−ヘキサンの体積流量比が1:1の時は実施例1と同様に、水とn−ヘキサンは流路(4)中を層状に流れ、分液室(6、6')にて分離され、流出路(7)と流出路(7')に分離されて入り、流出口(9)と流出口(9')からそれぞれ流出した。 しかし、n−ヘキサンの流量を一定とし、水の流量を1.5 倍にしたところ、流出口(8')から、n−ヘキサンと同時に水が流出した。 【0091】また、体積流量比が0.5:1.5では、 2液はそれぞれ凝集し、塊状となって流路を流れたが、 分液室で分離され、流出路(7)、流出路(7')からそれぞれ独立に流出させることが可能であった。 しかしながら、衝撃的な流量変化や加速度を伴うデバイスの姿勢変化により分液室で分離されず、流出路(7)、流出路(7')の双方又は一方から、水とn−ヘキサンの両者が流出しがちであった。 【0092】即ち、分液室の低接触角部分の水との接触角と高接触角部分の水との接触角の差が14°あると、 互いに混和しない2液を分離して流出させることが可能であることがわかる。 【0093】[実施例3] 〔部材(A)の作製〕ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製の「ユーピロンS−200 0」)[p2]製の10cm×10cm×2mmの板(図示せず)の中心部5cm×2.5cmの範囲(11)を含む範囲に、エネルギー線硬化性組成物[e1]を127μm のバーコーターを用いて塗布した後、フォトマスクを通して、図3に示した3mm×1.5mmの範囲(12)に、ウシオ電機製のマルチライト200型露光装置用光源ユニットを用いて窒素雰囲気中で50mW/cm 2の紫外線を2 0秒間照射して、図3に示した3mm×1.5mmの範囲(12)に、厚み102μm のエネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層1(12)を形成した。 紫外線照射後、未硬化部を流水にて洗浄除去した。 【0094】次いで、ポリカーボネート板(11)の残りの部分に、エネルギー線硬化性組成物[e2]を12 7μm のバーコーターを用いて塗布した後、エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層1(12)以外の部分に同じ紫外線を20秒間照射してエネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層1(12')を形成した。 【0095】次いで、これらの層の上にエネルギー線硬化性組成物[e2]を127μm のバーコーターを用いて塗布した後、フォトマスクを通して、図2に示した流路(14)及び分液室(15、15')となるべき部分をフォトマスクで被って窒素雰囲気中で同じ紫外線を照射した。 紫外線照射後、水流及びアセトンにて未硬化物を洗浄除去することにより、図2に示した形状の、流路(14)となるべき幅210μm 、深さ102μm の溝、及び分液室(15、15')となるべき幅3mm、長さ3mm、深さ102μm の凹部を有する、厚み102μ m のエネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層2(1 3)を形成し、部材(A)[A3]とした。 このとき、 図1のエネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層1 (12)は、分液室(15、15')となるべきの凹部の、図4における紙面内下側の底面に形成されていた。 【0096】〔部材(B)の接着〕紫外線照射パターンが部材(A)の場合の鏡像体であること、かつ、エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層3(19')形成のための紫外線照射時間が2秒であること以外は、部材(A)の作製の前半と同様にして、図5に示したポリカーボネート板(18)に、図3の鏡像体である形状のエネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物の層3(19) 及びエネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層3(1 9')となるべき流動性を喪失した半硬化物の層が形成された部材(B)前駆体を得た。 【0097】次いで、部材(B)に形成された半硬化物の層を部材(A)[A3]の溝が形成された面に、パターンが重なるように貼り合わせた後、上記と同じ紫外線をさらに30秒間照射して塗膜を完全硬化させることにより、エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層3 (19)、エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層3(19')及びポリカーボネート板(18)からなる部材(B)[B3]を形成すると同時に、部材(A) [A3]の表面に接着し、それらの間に幅210μm 、 高さ102μm 、長さ3cmの毛細管状の流路(14)、 及び、幅3mm、長さ3mm、深さ102μm の分液室(1 5、15')を形成した。 【0098】次いで、流路(14)の端部、分液室の低接触角部分(15)の端部及び分液室の高接触角部分(15')の端部において、部材(A)、部材(B) に、直径0.5mmのキリ孔を穿ち、部材(A)[A3] を貫通する流入路(16)、流出路(17)及び部材(B)[B3]を貫通する流入路(16')、流出路(17')を形成した後、図2に示した5cm×2.5cm の範囲を切り出して微小ケミカルデバイス[D3]を作製した。 【0099】〔各部の水との接触角〕用いた素材の水との接触角を表1に示した。 微小ケミカルデバイス[D 3]における分液室(15、15')の内面は、部材(A)面及び部材(B)面の図6における紙面内下半分の部分が水との接触角が22°の低接触角部分(1 5)、部材(A)面及び部材(B)面の図6における紙面内上半分の部分が水との接触角が91°の高接触角部分(15')及び全側面が91°の高接触角部分であった。 また、流路(14)の内面は、水との接触角が91 °であり、分液室の低接触角部(15)との接続部における流出路(16)の内面の水との接触角は22°、高接触角部(15')との接続部における流出路(16) の内面の水との接触角は91°であった。 【0100】〔液−液接触試験〕微小ケミカルデバイス[D3]を、流入路(16、16')と流出路(17、 17')がデバイスの側面となる向きに設置し、流入路(16、16')にそれぞれマイクロシリンジを接続して、流入路(16)から水、流入路(16')からn− ヘキサンをそれぞれ流量0.01mm 3 /秒で注入すると、水とn−ヘキサンはそれぞれ塊状となって流れたが、分液室の低接触角部分(15)に水、分液室の高接触角部分(15')にn−ヘキサンが集まり、流出路(17)から水、流出路(17')からn−ヘキサンが流出した。 また、n−ヘキサンの流量を一定とし、水の流量を0.5〜2倍に変化させても水とn−ヘキサンは分離されて流出した。 【0101】[実施例4] 〔親水性層形成材料の調製〕ポリエチレングリコールモノ−4−ノニルフェニルエーテル(n'=10)(東京化成工業社製の「PMNE10」)5部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(大八化学工業社製の「MR200」)5部及び水90部からなる溶液を調製し、親水性層形成材料とした。 【0102】〔部材(A)の作製〕ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製の「ユーピロンS−2000」)[p2]製の10cm×10cm×2 mmの板(図示せず)の中心部5cm×2.5cmの範囲(1 1)を含む範囲に、エネルギー線硬化性組成物[e1] を127μm のバーコーターを用いて塗布した後、フォトマスクを通して、図3に示した3mm×1.5mmの範囲(12)に、ウシオ電機製のマルチライト200型露光装置用光源ユニットを用いて窒素雰囲気中で50mW/cm 2の紫外線を3秒間照射して、完全に硬化していない半硬化状態の塗膜を得た。 紫外線照射後、水流にて非照射部の未硬化物を除去した。 未硬化物を除去後、該半硬化塗膜を親水性層形成材料中に投入し、上記と同じ紫外線を40秒間照射して塗膜を完全に硬化させると同時に、 表面に実質的に無視できる厚みに親水性化合物がグラフト重合で結合した、厚み102μm のエネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層1(12)を形成した。 この塗膜の水との接触角は5°であった。 【0103】さらに、ポリカーボネート板(11)の残りの部分に、エネルギー線硬化性組成物[e2]を12 7μm のバーコーターを用いて塗布した後、エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層1(12)以外の部分に、同じ紫外線を20秒間照射して、エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層1(12')を形成した。 【0104】次いで、これらの層の上に、エネルギー線硬化性組成物[e2]を127μmのバーコーターを用いて塗布した後、フォトマスクを通して、図4に示した流路(14)及び分液室(15、15')となるべき部分をフォトマスクで被って窒素雰囲気中で上記と同じ紫外線を照射した。 紫外線照射後、水流及びアセトンにて未硬化物を洗浄除去することにより、図4に示した形状の流路(14)となるべき幅210μm 、深さ102μ m の溝及び分液室(15、15')となるべき幅3mm、 長さ3mm、深さ102μm の凹部を有する、厚み102 μm のエネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層2 (13)を形成し、部材(A)[A4]とした。 このとき、図1のエネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層1(12)は、分液室の低接触角部分(15)となるべきの凹部の底の、図4における紙面内下半分を占める位置に形成されていた。 【0105】〔部材(B)の接着〕紫外線照射パターンが部材(A)の場合の鏡像体で、かつ、エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物の層3(19')となるべき部分への紫外線照射時間が3秒であること以外は、部材(A)[A4]作製の前半と同様にして、図5に示した図3の鏡像体である形状のポリカーボネート板(18) に、エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層3(1 9)及びエネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層3 (19')となるべき流動性を喪失した半硬化物の層が形成された部材(B)前駆体を得た。 【0106】次いで、部材(B)に形成された半硬化物の層を部材(A)[A4]の溝が形成された面に、パターンが重なるように貼り合わせ、上記と同じ紫外線をさらに30秒間照射して塗膜を完全硬化させることにより、エネルギー線硬化性組成物[e1]の硬化物層3 (20)、エネルギー線硬化性組成物[e2]の硬化物層3(19')及びポリカーボネート板(18)からなる部材(B)[B4]を形成すると同時に、部材(A) [A4]の表面に接着し、それらの間に幅210μm 、 高さ102μm の毛細管状の流路(14)、及び、幅3 mm、長さ3mm、深さ102μm の分液室(15、1 5')を形成した。 【0107】次いで、流路(14)の上流端、分液室の低接触角部(15)端部及び分液室の高接触角部(1 5')端部に、直径0.5mmのキリ孔を穿ち、部材(A)[A3]を貫通した流入路(16)及び流出路(17)及び部材(B)[B3]を貫通した流入路(1 6')及び流出路(17')を形成した後、図2に示した5cm×2.5cmの範囲を切り出して微小ケミカルデバイス[D3]を作製した。 【0108】〔各部の水との接触角〕用いた素材の水との接触角を表1に示した。 微小ケミカルデバイス[D 3]は、分液室(15、15')の内面が、部材(A) 面及び部材(B)面の図2における紙面内上半分の部分が水との接触角が5°の低接触角部分、部材(A)面及び部材(B)面の図2における紙面内下半分の部分が水との接触角が91°の高接触角部分及び全側面が91° の高接触角部分から構成されていた。 また、流路(1 4)の内面の水との接触角は91°であり、分液室の低接触角部(15)との接続部における流出路(16)の内面の水との接触角は22°、高接触角部(15')との接続部における流出路(16')の内面の水との接触角は91°であった。 【0109】〔液−液接触試験〕実施例3と同様の試験を行い、実施例3と同様の結果を得た。 【0110】[実施例5]実施例3において、部材(A)のエネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層1 (12')の上へのエネルギー線硬化性組成物[e2] の塗布に際し、127μm のバーコーター代えて、30 0μm のバーコーターを用いることにより、厚さ220 μm のエネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層2 (13)を形成したこと、流路寸法が幅300μm 、 高さ220μm であること、流出路(17')として直径1.6mmのキリ孔を穿ち、外径1.6mm、内径0. 5mmのポリ四フッ化エチレン製のチューブを流路(1 4)位置まで挿入し固定したこと、及び流出路(1 7)として直径0.5mmのキリ孔を流路(14)位置までで穿ち、また流路(14)位置までの半分の深さまでの範囲を直径1.6mmのキリ孔とし、外径1.6mm、内径0.5mmのポリ四フッ化エチレン製のチューブを流路(14)位置の半分の深さまで挿入し固定したこと、以外は、実施例3と同様にして、微小ケミカルデバイス[D5]を作製した。 【0111】〔各部の水との接触角〕微小ケミカルデバイス[D5]は、流出路(17)の分液室低接触角部(15)との接続部における内面の水との接触角が22 °、流出路(17')の分液室高接触角部(15')との接続部の内面の水との接触角が110°であった以外は、微小ケミカルデバイス[D3]と同様であった。 【0112】〔液−液接触試験〕微小ケミカルデバイス[D5]を、流入路(16、16')と流出路(17、 17')がデバイスの側面となる向きに設置し、流入路(16、16')にそれぞれマイクロシリンジを接続して、流入路(16)から水を流量0.04mm 3 /秒で注入すると、流出路(17)に接続されたチューブから水が流出した。 次いで、水を同様に注入しながら、流入路(16')からn−ヘキサンを流量0.04mm 3 /秒で注入すると、水とn−ヘキサンはそれぞれ凝集して塊状で流れたが、分液室(15、15')でそれぞれが凝集、分離し、流出路(17)に接続されたチューブから水、流出路(17')に接続されたチューブからn−ヘキサンが流出した。 【0113】また、n−ヘキサンの流量を一定とし、水の流量を0.5〜2倍に変化させても水とn−ヘキサンは分離されて流出し、水とn−ヘキサンの体積流量比を1とし、合計の流量を3倍にしても、水とn−ヘキサンは分離されて流出した。 さらに、階段状の流量変化や加速度を伴うデバイスの姿勢変化があっても変化はなかった。 【0114】<実施例6> 〔微小ケミカルデバイスの作製〕実施例1において、エネルギー線硬化性組成物[e2]に代えて、エネルギー線硬化性組成物[e6]を使用した以外は、実施例1と同様にして、微小ケミカルデバイス[D6]を作製した。 【0115】〔各部の水との接触角〕微小ケミカルデバイス[D6]は、分液室(6、6')の部材(B)面及び側面が水との接触角45°の高接触角部分(6')であり、流出路(7')の部材(B)面の水との接触角が45°であり、流出路(7)は、内面全部が水との接触角が45であった以外は、微小ケミカルデバイス[D 1]と同様であった。 【0116】〔液−液接触試験〕微小ケミカルデバイス[D6]について、実施例1と同様の試験を行ったところ、水とn−ヘキサンの体積流量比が1の時は、実施例1と同様に、水とn−ヘキサンは流路(4)中を層状に流れ、分液室(6、6')にて分液され、水とn−ヘキサンは流出路(7)と流出路(7')にそれぞれ独立に入り、流出口(9)と流出口(9')からそれぞれ流出した。 しかし、n−ヘキサンの流量を一定とし、水の流量を1.5倍にしたところ、流出口(8')から、n− ヘキサンと同時に水が流出した。 【0117】また、水とn−ヘキサンの体積流量比が0.5:1.5では、2液はそれぞれ凝集し、塊状となって流路を流れたが、分液室(6、6')で分離され、 流出路(7)、流出路(7')からそれぞれ独立に流出させることが可能であった。 しかしながら、階段状の流量変化や加速度を伴うデバイスの姿勢変化により分液室で分離されず、流出路(7)、流出路(7')の双方又は一方から、水とn−ヘキサンの両者が流出しがちであった。 【0118】即ち、分液室の低接触角部分の水との接触角と高接触角部分の水との接触角の差が10°以上あると、互いに混和しない2液を分離して流出させることが可能であることがわかる。 【0119】<実施例7>本比較例では、分液室の断面積が流路断面積の2.5倍である例を示した。 【0120】〔微小ケミカルデバイスの作製〕実施例5 において、分液室の低接触角部分及び高接触角部分の寸法を幅750μm 、高さ220μm とした以外は、実施例5と同様にして、微小ケミカルデバイス[D7]を作製した。 【0121】〔液−液接触試験〕微小ケミカルデバイス[D7]について、実施例5と同様の試験を行ったところ、分液室で水とn−ヘキサンがそれぞれ凝集、分離し、流出路(17)に接続されたチューブから水、流出路(17')に接続されたチューブからn−ヘキサンが流出した。 但し、水とn−ヘキサンの体積流量比を1とし、合計の流量を3倍にすると分離は不完全となった。 【0122】<比較例2>本比較例では、分液室の断面積が流路断面積と同じである例を示した。 【0123】〔微小ケミカルデバイスの作製〕実施例5 において、分液室断面の低接触角部分及び高接触角部分の幅を流路幅の各1/2とし、分液室断面積を流路断面積と同じとした以外は、実施例5と同様にして、微小ケミカルデバイス[CD2]を作製した。 【0124】〔液−液接触試験〕微小ケミカルデバイス[CD2]について実施例5と同様の試験を行ったところ、分液室で水とn−ヘキサンは分離されず、流出路(17)に接続されたチューブ及び流出路(17')に接続されたチューブの両者から、水とn−ヘキサンの両者が流出した。 即ち、分液室の断面積が流路断面積と同じであると、塊状となって流路を流れた2液は分液室で分離されないことがわかる。 【0125】<実施例8> 〔微小ケミカルデバイスの作製〕実施例1において、部材(A)及び部材(B)の素材として、ポリカーボネート[p2]に代えて、それぞれ、透明硬質ポリ塩化ビニル[p1]、ナイロン6(BASFジャパン社製の「A4H」)[p3]、ポリアリレート樹脂(ユニチカ株式会社製の「Uポリマー U−70)[p4]をそれぞれ使用した以外は、実施例3と同様にして、微小ケミカルデバイス[D8−1〜3]を作製した。 【0126】〔液−液接触試験〕微小ケミカルデバイス[D8−1〜3]について実施例3と同様の試験を行い、実施例3と同様の結果を得た。 【0127】<応用例> 〔抽出試験〕実施例3で作製した微小ケミカルデバイス[D3]を、流入路(16、16')と流出路(17、 17')がデバイスの側面となる向きに設置し、流入路(16、16')にそれぞれマイクロシリンジを接続して、流入路(16)から0.1N水酸化ナトリウム水溶液、流入路(16')からフェノールフタレンを飽和まで溶解させたキシレン溶液をそれぞれ流量0.01mm 3 /秒で注入したところ、水溶液とキシレン溶液はそれぞれ塊状となって流れたが、分液室の低接触角部分(1 5)に水溶液、分液室の高接触角部分(15')にキシレン溶液が集まり、流出路(17)から水溶液、流出路(17')からキシレン溶液が流出した。 このとき、注入した0.1N水酸化ナトリウム水溶液およびキシレン溶液、流出するキシレン溶液は共に無色透明であったが、流出する0.1N水酸化ナトリウム水溶液は薄い赤色を呈していた。 即ち、フェノールフタレンがキシレン相から水相へ抽出された。 【0128】 【表1】本実施例で使用した素材の水との接触角 【0129】 【発明の効果】本発明の微小ケミカルデバイスは、隔膜やバッチ式分液装置を必要とせず、構造が単純で、極めて小型の抽出用ケミカルデバイスであり、極微量のサンプルの抽出処理、抽出反応などに適用することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】実施例で作製した微小ケミカルデバイスの作製途中の部材(A)をその表面に垂直な方向から見た破砕平面図である。 【符号の説明】 1 ポリ塩化ビニル板 2 エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層1 2' エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層1 【図2】実施例で作製した微小ケミカルデバイスを部材 (B)の表面に垂直な方向から見た破砕平面図である。 【符号の説明】 1 ポリ塩化ビニル板 2' エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層1 3' エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層2 4 流路 5 流入路 5' 流入路 6 分液室(低接触角部) 6' 分液室(高接触角部) 7 流出路 7' 流出路 8 流入口 8' 流入口 9 流出口 9' 流出口 10 エネルギー線硬化性組成物[e3]硬化物 【図3】実施例3で作製した微小ケミカルデバイスの作製途中の部材を部材(B)の表面に垂直な方向から見た破砕平面図である。 【符号の説明】 11 ポリカーボネート板 12 エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層1 12' エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層1 【図4】実施例3で作製した微小ケミカルデバイスの作製途中の部材を部材(B)の表面に垂直な方向から見た破砕平面図である。 【符号の説明】 11 ポリカーボネート板 12 エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層1 12' エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層1 13 エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層2 14 流路 15 分液室(低接触角部) 15' 分液室(高接触角部) 【図5】実施例3で作製した微小ケミカルデバイスの作製途中の部材を部材(B)の表面に垂直な方向から見た破砕平面図である。 【符号の説明】 18 ポリカーボネート板 19 エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層3 19' エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層3 【図6】実施例で作製した微小ケミカルデバイスを部材 (B)の表面に垂直な方向から見た破砕平面図である。 【符号の説明】 11 ポリカーボネート板 12' エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層1 13 エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層2 14 流路 15 分液室(低接触角部) 15' 分液室(高接触角部) 16 流入路 16' 流入路 17 流出路 17' 流出路 19 エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層3 【図7】実施例で作製した微小ケミカルデバイスを部材 (B)の表面に平行な方向から見た正面図である。 【符号の説明】 11 ポリカーボネート板 12 エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層1 13 エネルギー線硬化性組成物[e1]硬化物層2 16 流入路 16' 流入路 17 流出路 17' 流出路 18 ポリカーボネート板 19' エネルギー線硬化性組成物[e2]硬化物層3 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 7識別記号 FI テーマコート゛(参考) // G01N 31/20 G01N 31/20 |