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Manufacturing method of retardation film

阅读:469发布:2024-01-11

专利汇可以提供Manufacturing method of retardation film专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a manufacturing method of retardation film which can manufacture a retardation film with excellent adhesiveness to another film more easily than the conventional method.SOLUTION: A retardation film is manufactured through a step (A) of stretching a thermoplastic resin film to obtain a stretched film 10 and a step (B) of heating the stretched film 10 to selectively reduce a plane orientation factor of a surface 11 of the stretched film 10.,下面是Manufacturing method of retardation film专利的具体信息内容。

  • 熱可塑性樹脂フィルムを延伸して延伸フィルムを得る工程(A)と、
    前記延伸フィルムを加熱して前記延伸フィルムの表面の面配向係数を選択的に小さくする工程(B)と、を有する、位相差フィルムの製造方法。
  • 前記工程(B)において前記延伸フィルムを加熱したときに、前記面配向係数を小さくされる表面の温度が前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度より20℃以上高い温度であり、前記面配向係数を小さくされる表面とは反対側の表面の温度が50℃以下である、請求項1記載の製造方法。
  • 前記熱可塑性樹脂フィルムが単層である、請求項1又は2記載の製造方法。
  • 前記工程(B)における加熱を、フラッシュランプアニーリング装置を用いて行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  • 前記工程(B)が、前記延伸フィルムの少なくとも一方の表面から0μmより大きく2μm以下の深さまでの部分を加熱する工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  • 前記工程(B)の後に、前記延伸フィルムの前記面配向係数を小さくされた表面に、加熱により硬化しうる硬化性材料を塗布して塗布層を形成する工程(C)と、前記塗布層を硬化して硬化層を得る工程(D)と、を有し、
    前記工程(D)が、前記塗布層の表面を加熱する工程を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  • 前記熱可塑性樹脂のビカット軟化温度と前記硬化性材料の硬化温度との差が20℃以下である、請求項6記載の製造方法。
  • 前記塗布層の表面を加熱する工程における前記塗布層の表面の温度が、前記熱可塑性樹脂のビカット軟化温度以上である、請求項6又は7記載の製造方法。
  • 前記工程(D)における加熱を、フラッシュランプアニーリング装置を用いて行う、請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
  • 前記熱可塑性樹脂が、脂環式構造含有重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びセルロースエステル樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は位相差フィルムの製造方法に関する。

    位相差フィルムは、通常、樹脂フィルムを延伸して製造される。 樹脂フィルムを延伸することにより、樹脂フィルム中の分子が配向して、当該樹脂フィルムに位相差が発現する。 このような位相差フィルムは、単独で使用されることもあるが、通常は偏光フィルム等の他のフィルムと貼り合せられて使用される。

    ところが、一般に樹脂フィルムを延伸した延伸フィルムは、他のフィルムと貼り合わせる際の接着強度が低い傾向がある。 そこで、従来から、位相差フィルムの接着強度を高めるために様々な検討がなされている。 例えば特許文献1,2では、セルロースエステルフィルムの表面に溶剤を塗布することにより、フィルムの表面の配向を弱める技術が記載されている。 また、特許文献2では、セルロースエステルフィルムの表面の配向を弱めることにより、セルロースエステルフィルムと偏光フィルムとの密着性を向上させられることが記載されている。

    特開平9−216955号公報

    特開2010−79239号公報

    しかしながら、特許文献1,2のように溶剤を使用した方法では、位相差フィルムを形成する樹脂の溶剤に対する溶解度及び膨潤度並びに乾燥条件を調整することになるために制御が複雑であり、特に位相差フィルムの厚み方向における配向を制御することが困難であった。 また、溶剤の濃度の変動により塗布ムラが生じる場合があった。
    また、溶剤を使用する方法では、耐溶剤性能に劣る位相差フィルムに適用しようとしても、溶剤による欠損(例えば、ソルベントクラック等)が発生し易いため、適用が困難であった。

    本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、他のフィルムとの接着性に優れる位相差フィルムを容易に製造できる、位相差フィルムの製造方法を提供することを目的とする。

    本発明者は上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、位相差フィルムの表面のみを選択的に加熱することにより、位相差フィルムの表面の配向を弱めて接着性を向上させることができること、並びに、位相差フィルムの加熱した以外の部分の配向を保つようにすれば位相差フィルムに所望の位相差を安定して発現させることができることを見出し、本発明を完成させた。
    すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔8〕を要旨とする。

    〔1〕 熱可塑性樹脂フィルムを延伸して延伸フィルムを得る工程(A)と、
    前記延伸フィルムを加熱して前記延伸フィルムの表面の面配向係数を選択的に小さくする工程(B)と、を有する、位相差フィルムの製造方法。
    〔2〕 前記工程(B)において前記延伸フィルムを加熱したときに、前記面配向係数を小さくされる表面の温度が前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度より20℃以上高い温度であり、前記面配向係数を小さくされる表面とは反対側の表面の温度が50℃以下である、〔1〕記載の製造方法。
    〔3〕 前記熱可塑性樹脂フィルムが単層である、〔1〕又は〔2〕記載の製造方法。
    〔4〕 前記工程(B)における加熱を、フラッシュランプアニーリング装置を用いて行う、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の製造方法。
    〔5〕 前記工程(B)が、前記延伸フィルムの少なくとも一方の表面から0μmより大きく2μm以下の深さまでの部分を加熱する工程を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の製造方法。
    〔6〕 前記工程(B)の後に、前記延伸フィルムの前記面配向係数を小さくされた表面に、加熱により硬化しうる硬化性材料を塗布して塗布層を形成する工程(C)と、前記塗布層を硬化して硬化層を得る工程(D)と、を有し、
    前記工程(D)が、前記塗布層の表面を加熱する工程を含む、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の製造方法。
    〔7〕 前記熱可塑性樹脂のビカット軟化温度と前記硬化性材料の硬化温度との差が20℃以下である、〔6〕記載の製造方法。
    〔8〕 前記塗布層の表面を加熱する工程における前記塗布層の表面の温度が、前記熱可塑性樹脂のビカット軟化温度以上である、〔6〕又は〔7〕記載の製造方法。
    〔9〕 前記工程(D)における加熱を、フラッシュランプアニーリング装置を用いて行う、〔6〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の製造方法。
    〔10〕 前記熱可塑性樹脂が、脂環式構造含有重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びセルロースエステル樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂である、〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の製造方法。

    本発明の位相差フィルムの製造方法によれば、他のフィルムとの接着性に優れる位相差フィルムを容易に製造できる。

    図1は、工程(B)において加熱された延伸フィルムの様子を模式的に示す断面図である。

    図2は、フラッシュランプアニーリング装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。

    以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。 なお、以下の説明において、工程(A)、工程(B)、工程(C)及び工程(D)の符号(A)、(B)、(C)及び(D)は、いずれも当該符号が付された要素を他の要素と区別するための符号であり、要素の区別以外に意味を有するものではない。

    〔1. 概要〕
    本発明の位相差フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムを延伸して延伸フィルムを得る工程(A)と、延伸フィルムを加熱して延伸フィルムの表面の面配向係数を選択的に小さくする工程(B)とを有する。 また、本発明の位相差フィルムの製造方法は、工程(B)の後に、延伸フィルムの面配向係数を小さくされた表面に加熱により硬化しうる硬化性材料を塗布して塗布層を形成する工程(C)と、塗布層を硬化して硬化層を得る工程(D)とを有することが好ましい。 なお、以下、延伸フィルムの面配向係数を小さくされた表面を、適宜「低配向面」と呼ぶ。

    図1は、工程(B)において加熱された延伸フィルムの様子を模式的に示す断面図である。 図1に示すように、工程(B)においては、延伸フィルム10の表面11の近傍部分12を選択的に加熱することにより、延伸フィルム10の表面11に露出した薄い部分12の分子の配向を弱め、延伸フィルム10の表面11の面配向係数を下げ、その表面11を低配向面とすることができる。 低配向面11においては、延伸フィルム(位相差フィルムに相当する。)10と他のフィルムとの接着性を向上させることができる。 ここで、延伸フィルム10の表面11の面配向係数を下げることにより接着性が向上する理由は定かではないが、本発明者の検討によれば、延伸フィルム10の表面11において配向が弱められることにより、延伸フィルム10の厚み方向の脆性が向上し、貼り合せられるフィルム間の剥離が抑制されることに起因すると推察される。 また、工程(B)では延伸フィルム10の組成を変化させたり低配向面11の近傍部分12以外の部分13の配向を変化させたりすることが無いので、通常は工程(A)において延伸フィルム10に発現した位相差を工程(B)で変化させることは無い。

    〔2. 工程(A)〕
    工程(A)では、熱可塑性樹脂フィルムを延伸して、延伸フィルムを得る。

    〔2−1. 熱可塑性樹脂フィルム〕
    熱可塑性樹脂フィルムとは、熱可塑性樹脂で形成されたフィルムである。 この際、熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
    熱可塑性樹脂の種類は、位相差フィルムに発現させようとする位相差に応じて適切な樹脂を選択することが好ましい。 中でも、非晶性樹脂が好ましく、延伸加工性及び位相差の発現性に優れることから、脂環式構造含有重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びセルロースエステル樹脂がより好ましい。

    ・脂環式構造含有重合体樹脂 脂環式構造含有重合体樹脂は、脂環式構造含有重合体を含む樹脂である。 この際、脂環式構造含有重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    脂環式構造含有重合体は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いてもよい。 中でも、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。

    脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。 中でも、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。

    脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及び熱可塑性樹脂フィルムの成形性が高度にバランスされ、好適である。

    脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。 脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、位相差フィルムの透明性および耐熱性の観点から好ましい。

    脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。 これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。

    ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。 これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。 なお、「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体のことをいう。

    ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.1 2,5 ]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1 2,5 ]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。 ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。 また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。 なお、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。 ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。 極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。

    ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。 なお、ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。

    ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素原子数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。 これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。 なお、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。

    単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。

    環状共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物;などを挙げることができる。

    ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマー、またはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素化物;等を挙げることができる。 なお、前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。

    脂環式構造含有重合体樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、脂環式構造含有重合体以外にもその他の成分を含んでいてもよい。 その他の成分の例を挙げると、滑剤;層状結晶化合物;無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;可塑剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。 中でも、滑剤及び紫外線吸収剤は、可撓性や耐候性を向上させることができるので好ましい。 なお、その他の成分は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。 また、その他の成分の量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜定めることができ、例えば、位相差フィルムの1mm厚換算での全光線透過率が80%以上を維持できる範囲とすればよい。

    滑剤としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム等の無機粒子;ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等の有機粒子などが挙げられる。 中でも、滑剤としては有機粒子が好ましい。

    紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。 好適な紫外線吸収剤の具体例を挙げると、2,2'−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられ、特に好適なものとしては、2,2'−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)が挙げられる。

    ・ポリカーボネート樹脂 ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートを含む樹脂である。 この際、ポリカーボネートは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    ポリカーボネートとしては、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)による繰り返し単位(以下、適宜「カーボネート成分」という。)を有する重合体であれば任意のものを使用できる。 また、ポリカーボネートは、1種類の繰り返し単位からなるものを用いてもよく、2種類以上の繰り返し単位を任意の比率で組み合わせてなるものを用いてもよい。 さらに、ポリカーボネートは、カーボネート成分以外の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。 ただし、ポリカーボネートがカーボネート成分以外の繰り返し単位を有する場合でも、ポリカーボネートが含むカーボネート成分の含有率が高いことが好ましく、具体的には、80重量%以上が好ましく、85重量%以上がより好ましい。

    ポリカーボネートの例を挙げると、ビスフェノールAポリカーボネート、分岐ビスフェノールAポリカーボネート、o,o,o',o'−テトラメチルビスフェノールAポリカーボネートなどが挙げられる。

    また、ポリカーボネート樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、ポリカーボネート以外にもその他の成分を含んでいてもよい。 その他の成分の例及び量は、脂環式構造含有重合体樹脂が含んでいてもよいその他の成分と同様である。 なお、その他の成分は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    ・セルロースエステル樹脂 セルロースエステル樹脂は、セルロースエステルを含む樹脂である。 この際、セルロースエステルは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    セルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。 セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。 セルロースの低級脂肪酸エステルの例を挙げると、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等が挙げられる。 また、セルロースの低級脂肪酸エステルの例としては、特開平10−45804号公報、特開平8−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルなどが挙げられる。 これらの中でも、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが特に好ましい。

    また、セルロースエステル樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、セルロースエステル以外にもその他の成分を含んでいてもよい。 その他の成分の例及び量は、脂環式構造含有重合体樹脂が含んでいてもよいその他の成分と同様である。 なお、その他の成分は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    ・熱可塑性樹脂の物性 熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、通常90℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。 ガラス転移温度Tgをこのように高くすることにより、高温環境における位相差フィルムの配向緩和を防止して耐久性を向上させることができる。 ただし、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが過度に高いと延伸処理が困難になる可能性があるので、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは通常300℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。

    熱可塑性樹脂のビカット軟化温度は、通常90℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。 ビカット軟化温度をこのように高くすることにより、高温環境における位相差フィルムの変形を防止して耐久性を向上させることができる。 ただし、熱可塑性樹脂のビカット軟化温度が過度に高いと延伸処理が困難になる可能性があるので、熱可塑性樹脂のビカット軟化温度は通常300℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。

    ・熱可塑性樹脂フィルムの層構成 熱可塑性樹脂フィルムは、2層以上の層を有する複層のフィルムであってもよいが、他のフィルムとの接着性に優れる位相差フィルムを従来よりも容易に製造できるという本発明の利点を有効に活用する観点からは、1層だけを有する単層のフィルムであることが好ましい。

    ・熱可塑性樹脂フィルムの製造方法 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。 中でも、溶剤を使用しない溶融押出法は、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。 溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。

    〔2−2. 延伸処理〕
    熱可塑性樹脂フィルムを延伸することにより、延伸フィルムを得る。 延伸方法は特に制限されず、例えば、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれを採用してもよい。 延伸方法の例を挙げると、一軸延伸法の例としては、フィルム搬送用のロールの周速の差を利用して長尺方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて幅方向に一軸延伸する方法等が挙げられる。 また、二軸延伸法の例としては、固定するクリップの間隔を開いての長尺方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり度により幅方向に延伸する同時二軸延伸法;フィルム搬送用のロール間の周速の差を利用して長尺方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて幅方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法等が挙げられる。 さらに、例えば、幅方向又は長尺方向に左右異なる速度の送り若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いて、フィルムの幅方向に対して任意の角度θをなす方向に連続的に斜め延伸する斜め延伸法を用いてもよい。

    延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。
    延伸時の温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、好ましくは(Tg−30℃)以上、より好ましくは(Tg−10℃)以上であり、好ましくは(Tg+60℃)以下、より好ましくは(Tg+50℃)以下である。 なお、熱可塑性樹脂フィルムが複層のフィルムである場合、層によって熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが異なることがありえる。 その場合には、好ましくはガラス転移温度Tgが最も低い層を形成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、延伸時の温度を設定する。
    延伸倍率は、位相差フィルムに発現させようとする位相差等の光学特性に応じて適宜選択すればよく、通常1.05倍以上、好ましくは1.1倍以上であり、通常10.0倍以下、好ましくは2.0倍以下である。

    〔2−3. 延伸フィルム〕
    熱可塑性樹脂フィルムを延伸することにより得られる延伸フィルムでは、フィルムに含まれる分子が配向することにより、位相差が発現する。 本発明の位相差フィルムの製造方法では工程(B)において延伸フィルムの位相差が変化し難いので、通常は、工程(A)で得られた延伸フィルムの位相差が、そのまま位相差フィルムの位相差となる。 また、本発明の位相差フィルムの製造方法では工程(B)において延伸フィルムの透明性及び光散乱性等の光学特性も変化し難い。 したがって、延伸フィルムの厚み並びに透明性及び光散乱性等の光学特性は、製造しようとする位相差フィルムと同じになるように設定することが好ましい。

    工程(A)で得られた延伸フィルムにおいては、通常、延伸フィルムの表面及び内部のいずれにおいても分子が配向している。 ここで一般に、表面の分子が配向した延伸フィルムは他のフィルムとの接着性に劣る傾向がある。 そこで、本実施形態では、工程(A)の後で工程(B)を行うことにより、延伸フィルムの接着性を改善させるようにしている。 なお、延伸フィルムが複層構造を有する場合、一部の層においては分子が配向していないこともありえる。 しかし、そのような場合でも、後述する加熱処理によって接着性を向上させるという利点を有効に活用する観点からは、通常、当該延伸フィルムの表面に露出している層において分子が配向するようにする。

    〔3. 工程(B)〕
    〔3−1. 加熱処理〕
    工程(B)では、延伸フィルムを加熱して、延伸フィルムの表面の面配向係数を選択的に小さくする。 ここで、延伸フィルムの表面の面配向係数を選択的に小さくするとは、延伸フィルムの表面に露出した部分の配向を弱くして当該表面の面配向係数を小さくするが、それ以外の部分の面配向係数は変化させないようにすることを意味する。 また、延伸フィルムには2つの表面が存在するが、工程(B)においては通常は一方の表面の面配向係数を選択的に小さくし、他方の表面の面配向係数は変化させないことが、加熱前の延伸フィルムの位相差を安定して維持する観点から好ましい。

    面配向係数を小さくする程度は、実現しようとする接着性によるが、通常0.5×10 −3以上、好ましくは1.0×10 −3以上小さくする。 このように面配向係数を小さくされた表面(即ち、低配向面)においては、延伸フィルムと他のフィルムとの接着性が改善する。 なお、面配向係数Pは、フィルムの分子鎖の配向状態を示す指標であり、波長590nmにおける面内最大屈折率nx、nxに直交する方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nzから、以下の式に従って算出される数値である。
    P=(nx+ny)/2−nz

    また、低配向面に露出した部分以外の部分においては延伸フィルムの組成及び配向は変わらないので、加熱前の延伸フィルムの位相差は維持され、加熱後の位相差フィルム(すなわち、本発明に係る位相差フィルム)においても加熱前の延伸フィルムと同様の位相差を発現させることができる。 このため、本実施形態では工程(A)における延伸条件を調整するだけで位相差の制御ができるため、位相差フィルムの位相差を容易に制御できる。

    前記のように延伸フィルムの表面の面配向係数を選択的に小さくするためには、延伸フィルムを加熱する際に、延伸フィルムにおいて低配向面にしようとする表面の近傍部分が配向緩和を生じる温度以上となり、それ以外の部分が配向緩和を生じる温度よりも低い温度にしかならないようにする。 したがって、工程(B)が、延伸フィルムの少なくとも一方の表面(即ち、低配向面にしようとする表面)から所定の深さDまでの部分(即ち、低配向面にしようとする表面の近傍部分)を加熱する工程を含むようにすることが好ましい(図1参照)。 この際、低配向面にしようとする表面の近傍部分以外の部分は加熱されないことが好ましいが、配向緩和を生じない程度であれば、加熱されても構わない。 これにより、低配向面にしようとする表面の近傍部分では分子が配向緩和を生じるので当該表面の面配向係数は下がるが、それ以外の部分では配向緩和が生じないので配向は保たれる。

    具体的には、工程(B)において延伸フィルムを加熱したときに、面配向係数を小さくされる表面の温度が熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgよりも、20℃以上高い温度であることが好ましく、30℃以上高い温度であることがより好ましく、40℃以上高い温度であることが特に好ましい。 これにより、当該表面の近傍部分において配向緩和を確実に生じさせて、当該表面の面配向係数を小さくできるので、接着性を安定して向上させることができる。 また、温度を過度に高くしなくても十分な効果が得られることから、面配向係数を小さくされる表面の温度は、通常は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも100℃高い温度以下である。 なお、熱可塑性樹脂フィルムが複層のフィルムである場合、層によって熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが異なることがありえる。 その場合には、工程(B)において面配向係数を小さくされる表面の温度の基準となる熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgとしては、面配向係数を小さくされる表面において露出した層を形成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度を採用する。

    また、工程(B)において延伸フィルムを加熱したときに、面配向係数を小さくされる表面とは反対側の表面の温度は、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、特に好ましくは30℃以下である。 工程(B)においては低配向面にしようとする表面の近傍の薄い部分を加熱して配向緩和させるが、それ以外の部分は配向緩和しないようにするので、面配向係数を小さくされる表面とは反対側の表面の温度は低くなる。 この際、面配向係数を小さくされる表面とは反対側の表面の温度が前記のように十分に低い温度となるようにすれば、延伸フィルムの大部分の配向は変化しないことになり、加熱前の延伸フィルムの位相差を安定して維持することができる。

    加熱前の延伸フィルムの位相差を安定して維持する観点からは、工程(B)において配向緩和されない部分が厚いことが好ましく、すなわち、配向緩和される部分(即ち、延伸フィルムにおいて低配向面にしようとする表面の近傍部分)の厚みは薄いことが好ましい。 したがって、工程(B)において配向緩和が生じる程度に加熱される部分の厚みは、薄いことが好ましい。 このような観点から、工程(B)において配向緩和を生じる程度に加熱される部分は、延伸フィルムの少なくとも一方の表面(即ち、低配向面にしようとする表面)から、0μmより大きく2μm以下の深さDまでの部分であることが好ましい(図1参照)。

    なお、延伸フィルムの厚み方向の部分(表面及び内部の一部分)の温度は、例えば、安立計器(株)製STシリーズなどのテープ型熱電対表面温度センサーにより測定できる。

    前記のように延伸フィルムの表面の面配向係数を選択的に小さくする加熱に用いる加熱装置としては、例えば、フラッシュランプアニーリング装置やエキシマレーザーアニーリング装置が挙げられ、中でもフラッシュランプアニーリング装置を用いることが好ましい。 フラッシュランプアニーリング装置はフィルムに光を照射して当該光によってフィルムを加熱する装置である。 フラッシュランプアニーリング装置では光の照射時間をミリ秒ないしマイクロ秒のような短時間にすることができるので、フィルムの表面の近傍の薄い部分を選択的に加熱することが可能である。 特に、光の照射時間及び照射強度などを調整することで、配向緩和を生じる部分の厚みを容易に制御できるので、工程(B)に使用する加熱装置として適している。 なお、光の照射回数は、1回でもよく、2回以上でもよい。

    以下、図面を用いて、フラッシュランプアニーリング装置の一例について説明する。 図2は、フラッシュランプアニーリング装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。
    図2に示すように、フラッシュランプアニーリング装置20は、光源であるフラッシュランプ110及び反射材120を備えたフラッシュランプユニット100を備える。 また、フラッシュランプ110は、反射材120及びカバー130を備える筐体140内に収納されていて、フラッシュランプ110が発した光Lは、直接又は反射材120に反射されてからカバー130を透過して延伸フィルム200に当たり、延伸フィルム200の表面210の近傍部分が加熱されるようになっている。

    また、フラッシュランプアニーリング装置20は、必要に応じてプレヒーティングユニット300を備えていてもよい。 プレヒーティングユニット300はヒーター310を備えるので、フラッシュランプユニット100による光加熱に先立って延伸フィルム200を予熱できるようになっている。 配向緩和を生じない程度であれば延伸フィルム200の全体を加熱することに問題は無く、例えば溶剤の乾燥又は配向した分子の固定化のために延伸フィルム200全体を加熱することが好ましい場合がありえるので、必要に応じてヒーター310により延伸フィルム200の全体を加熱してもよい。

    図2に示すフラッシュランプアニーリング装置20では、プレヒーティングユニット300は基材320及びカバー330を備える筐体340内にヒーター310を備えていて、ヒーター310の上部には延伸フィルム200を通す通路350を有している。 そして、当該通路350を通るように搬送される延伸フィルム200にカバー330を透過した光Lが照射されることにより、連続的又は断続的に加熱が行われるようになっている。 また、光Lによる加熱は必ずしも延伸フィルム200を搬送しながら行わなくてもよく、例えば延伸フィルム200を通路350に載置して加熱するようにしてもよい。

    工程(B)においては、延伸フィルム200の表面210の面配向係数を選択的に小さくする観点から、表面210の近傍部分を選択的に加熱する。 この際、表面210の近傍部分を選択的に加熱するためには、光Lの波長を延伸フィルム200が吸収しやすい波長に設定したり、光Lの照射時間を短くしたり、光Lの強度を適切に設定したり、通路350内の雰囲気を適切に設定したりすることが好ましい。 具体的な設定は、通常、熱可塑性樹脂の種類及びガラス転移温度、延伸フィルム200の厚み、位相差フィルムに発現させようとする位相差の値などに応じて設定する。

    図2に示したフラッシュランプアニーリング装置の例を製品名で挙げると、例えば、DTF社製のフラッシュランプアニーリング装置(DTF社パンフレット、[online]、[平成23年1月6日検索]、インターネット〈URL:http://www.thin−film.de/fileadmin/medien/Website/Dokumente/Download_Center/Technische_Informationen/No2_FLA.pdfを参照)が挙げられる。

    〔3−2. 位相差フィルム〕
    上述したように延伸フィルムを加熱することにより、本発明に係る位相差フィルムが得られる。 得られる位相差フィルムは、少なくとも一方の表面が、面配向係数が小さい低配向面となっているので、当該低配向面において他のフィルムと貼り合わせる際の接着性が良好である。 具体的な範囲を挙げると、低配向面の面配向係数は、通常1.0×10 −3以下、好ましくは0.8×10 −3以下である。

    また、工程(B)では延伸フィルムの低配向面の近傍部分だけが配向が弱められており、それ以外のフィルム大部分の配向は保たれている。 また、通常は工程(B)における加熱では熱可塑性樹脂の組成は変化しない。 したがって、位相差フィルムでは加熱前の延伸フィルムの位相差が維持されているので、位相差を容易に制御することができる。

    前記のように位相差フィルムの低配向面の近傍部分以外の部分は配向が保たれているので、位相差フィルムでは、低配向面の近傍部分の面配向係数が最も小さくなる。 通常は、工程(B)において配向緩和を生じる程度に加熱される部分は、延伸フィルムの少なくとも一方の表面から0μmより大きく2μm以下の深さまでの部分であることが好ましいので、位相差フィルムの厚み方向において面配向係数が最も小さい部分は、低配向面からの深さが0μmより大きく2μm以下の部分に存在することが好ましい。

    位相差フィルムの厚み方向における中央部の面配向係数は、通常1.1×10 −3以上、好ましくは1.5×10 −3以上、より好ましくは2.0×10 −3以上である。 工程(B)における加熱の前後で面配向係数が維持されるので、位相差フィルムにおいても通常は厚み方向の中央部の面配向係数は前記のように大きい。

    位相差フィルムの厚みは、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、特に好ましくは30μm以下である。 本発明の位相差フィルムの製造方法では熱による配向緩和を利用して延伸フィルムの表面の面配向係数を小さくしているので、延伸フィルムの低配向面の近傍の配向緩和が生じる部分の厚みを自在に制御できる。 このため、配向が緩和された部分の厚みを高い接着性を確保できる範囲で薄くできるので、厚みが薄いフィルムにおいても面配向係数が大きい部分を厚み方向において十分に確保することができる。 したがって、厚みが薄い位相差フィルムにおいても大きい位相差と高い接着性とを両立することができる。 特に、位相差が大きい位相差フィルムは延伸倍率が大きくなって厚みが薄くなる傾向があり、延伸倍率が大きいために配向も大きく接着性も低くなり易かったことに鑑みれば、薄い位相差フィルムにおいても大きい位相差と高い接着性とを両立できることは優れた利点である。 なお、位相差フィルムの厚みの下限は、通常は5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。

    位相差フィルムでは、低配向面の近傍部分だけが配向が弱められており、それ以外のフィルム大部分の配向は保たれている。 配向が弱められている部分の具体的な割合は一概には言えないが、通常は、位相差フィルムの厚み方向において、面配向係数が1.0×10 −3以下である部分の厚みの割合は、0%より大きく、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。

    位相差フィルムは、光学部材としての機能を安定して発揮させる観点から、1mm厚換算での全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。 光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定できる。

    位相差フィルムは、1mm厚換算でのヘイズが、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。 ヘイズを低い値とすることにより、本発明に係る位相差フィルムを組み込んだ表示装置の表示画像の鮮明性を高めることができる。 ここで、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値である。

    位相差フィルムの面内位相差Re及び厚み方向の位相差Rthの値は、位相差フィルムの用途によって異なり、通常は、面内位相差Reで10nm〜500nm、厚み方向の位相差Rthで−500nm〜500nmの範囲から適宜選択される。 ただし、本発明の位相差フィルムの製造方法は、大きい位相差と高い接着性とを両立できることを利点の一つとしているので、この利点を有効に活かす観点からは、面内位相差Re及び厚み方向の位相差Rthの絶対値は大きいことが好ましい。 特に、厚み方向の位相差Rthの絶対値は、200nm以上が好ましく、220nm以上がより好ましく、250nm以上が特に好ましい。

    なお、面内位相差Reは、位相差フィルムの遅相軸方向の屈折率nx、遅相軸に面内で直交する方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nz、位相差フィルムの平均厚みDとしたときに、(nx−ny)×Dで定義される値である。 また、厚み方向の位相差Rthは、((nx+ny)/2−nz)×Dで定義される値である。

    位相差フィルムは、面内位相差Reのバラツキが、通常10nm以内、好ましくは5nm以内、さらに好ましくは2nm以内である。 面内位相差Reのバラツキを上記範囲にすることにより、位相差フィルムを液晶表示装置に適用した場合に、表示品質を良好なものにすることが可能になる。 ここで、面内位相差Reのバラツキは、光入射角0°(入射光線と位相差フィルムの表面とが直交する状態)の時の面内位相差Reを、位相差フィルムの幅方向に測定したときの、その面内位相差Reの最大値と最小値との差である。

    位相差フィルムの厚み変動幅は、MD方向(machine direction;製造ラインにおけるフィルムの流れ方向であり、長尺のフィルムの長尺方向。縦方向ともいう。)及びTD方向(traverse direction;フィルム面に平行な方向でありMD方向に直交する方向。横方向又は幅方向ともいう。)にわたって、平均厚さの±3%以内であることが好ましい。 厚み変動を上記範囲にすることにより、位相差フィルムの面内位相差Reなどの光学特性のバラツキを小さくすることができる。

    位相差フィルムの残留揮発性成分の含有量は特に制約されないが、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。 残留揮発性成分の含有量が0.1重量%を超えると、経時的に位相差フィルムの光学特性が変化するおそれがある。 揮発性成分の含有量を上記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、位相差フィルムの面内位相差Re及び厚み方向の位相差Rthの経時変化を小さくすることができる。 揮発性成分は、位相差フィルムに含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体及び溶剤などが挙げられる。 揮発性成分の含有量は、分子量200以下の物質の合計として、位相差フィルムをガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。

    位相差フィルムは、そのTD方向の寸法を、例えば1000mm〜2000mmとしてもよい。 また、位相差フィルムは、そのMD方向の寸法に制限は無いが、長尺のフィルムであることが好ましい。 ここで「長尺」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。

    〔4. 工程(C)〕
    必要に応じて、工程(B)の後に、延伸フィルムの低配向面(即ち、面配向係数を小さくされた表面)に硬化性材料を塗布して、塗布層を形成する。 この塗布層は、後の工程(D)において硬化されて、硬化層となる。 硬化層に所望の性質を備えさせることにより、硬化層によって延伸フィルムの性質を補い、所望の性質を有する複層構造の位相差フィルムを得ることができる。 なお、延伸フィルムの表面に硬化層を形成する場合、延伸フィルムと硬化層とを備える複層フィルムを位相差フィルムと呼ぶ。

    例えば、硬化層に紫外線吸収剤を含ませれば、位相差フィルムの対紫外線性を向上させることができる。 また、例えば、硬化層の硬度を高めれば、位相差フィルムの耐擦傷性を向上させることができる。 さらに、位相差フィルムの接着性を向上させる観点からは、硬化層を易接着層として形成することが好ましい。 易接着層とは、接着剤を介して位相差フィルムを他のフィルムと貼り付ける際に、接着剤による位相差フィルムと他のフィルムとの接着を補強して、より強固に接着させる層である。 すなわち、易接着層は、接着剤の機能を補強する層であり、別称としてプライマー層などと呼ばれる。 以下、硬化層として易接着層を形成する場合を例に挙げて、工程(C)及び工程(D)を説明する。

    硬化性材料としては、加熱により硬化しうる材料を用いる。 この際、熱可塑性樹脂フィルムを形成する熱可塑性樹脂のビカット軟化温度と、硬化性材料の硬化温度との差は、20℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましく、5℃以下がさらに好ましい。 ここで硬化温度とは、硬化性材料が硬化する温度のことをいう。 熱可塑性樹脂のビカット軟化温度と硬化性材料の硬化温度とが前記のように近い場合、延伸フィルム及び塗布層の両方を加熱して塗布層を硬化させようとすると延伸フィルムに配向緩和及び変形が生じる可能性がある。 しかし、工程(D)で塗布層の表面を加熱して塗布層を硬化させるようにすれば、延伸フィルムには大きな熱が与えられないので、延伸フィルムに配向緩和及び変形が生じることがなく、位相差フィルムを簡単に製造できると言う本発明の効果を顕著に発揮することができる。

    易接着層を形成する場合、硬化性材料としては、例えば、水系樹脂を用いることが好ましい。 水系樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびそれぞれの樹脂のエマルジョンなどが挙げられ、好ましくは水系ウレタン樹脂が挙げられる。

    水系ウレタン樹脂はポリウレタンと、必要に応じてその他の成分とを含む。 水系ウレタン樹脂に含まれるポリウレタンとしては、例えば、(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と(ii)多価イソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタン;または、上記(i)成分及び(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶剤中でウレタン化反応させてイソシアネート基含有プレポリマーとし、次いで、該プレポリマーを中和し、鎖延長剤を用いて鎖延長し、水を加えて分散体とすることによって製造されるポリウレタン;などが挙げられる。 これらのポリウレタン中には酸構造(酸残基)を含有させてもよい。

    なお、イソシアネート基含有プレポリマーの鎖伸長方法は公知の方法によればよく、例えば、鎖伸長剤として、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを使用し、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖伸長剤とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させればよい。

    前記(i)成分(すなわち、1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分)としては、特に限定されるものではないが、水酸基性の活性水素を有するものが好ましい。 このような化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。

    (1)ポリオール化合物 ポリオール化合物として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。

    (2)ポリエーテルポリオール ポリエーテルポリオールとして、例えば、前記のポリオール化合物のアルキレンオキシド付加物;アルキレンオキシドと環状エーテル(例えばテトラヒドロフランなど)との開環(共)重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体;グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。

    (3)ポリエステルポリオール ポリエステルポリオールとして、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸又はその無水物と、上記(1)で挙げられたようなエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコールなどのポリオール化合物とを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものなどが挙げられる。 より具体的には、例えば、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオールなどが挙げられる。

    (4)ポリエーテルエステルポリオール ポリエーテルエステルポリオールとして、例えば、エーテル基含有ポリオール(例えば、前記(2)のポリエーテルポリオールやジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を上記(3)で例示したようなジカルボン酸又はその無水物に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるものなどが挙げられる。 より具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物などが挙げられる。

    (5)ポリカーボネートポリオール ポリカーカーボネートポリオールとしては、例えば、一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)x−OH(ただし、式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ポリオール残基を示す。また、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物などが挙げられる。 これらは、飽和脂肪族ポリオールと置換カーボネート(例えば、炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを、水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法;前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンとを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法;などにより得ることができる。

    上記の(1)から(5)に例示したような化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    前記(i)成分と反応させる(ii)成分(即ち、多価イソシアネート成分)としては、例えば、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する脂肪族、脂環族または芳香族の化合物を使用してもよい。

    脂肪族ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。 脂環式ジイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)などが挙げられる。 芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。

    また、水系ウレタン樹脂のうちでポリウレタンが酸構造を含有するもの(以下、適宜「酸構造含有水系ウレタン樹脂」という。)は、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、水中に分散させることが可能となるので、易接着層の耐水性が良くなることが期待される。 これを自己乳化型といい、界面活性剤を使用すること無く分子イオン性のみで、水中にポリウレタン樹脂が分散安定化しうることを意味する。 このような水系ウレタン樹脂を用いた易活性層は、界面活性剤が不要であるために、脂環式構造含有重合体樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、およびポリエステル樹脂との接着性に優れ、かつ高い透明性を維持できるため、好ましい。

    酸構造としては、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SO H)等の酸基などを挙げることができる。 また、酸構造は、ポリウレタンにおいて側鎖に存在していてもよく、末端に存在していてもよい。 なお、酸構造は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    酸構造の含有量としては、水系ウレタン樹脂中の酸価として、好ましくは20mgKOH/g以上、より好ましくは25mgKOH/g以上であり、好ましくは250mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下である。 酸価が20mgKOH/g未満では水分散性が不十分となりやすく、一方、酸価が250mgKOH/gより大きいと易接着層の耐水性が劣る傾向となる。

    ポリウレタンに酸構造を導入する方法は、従来から用いられている方法が特に制限なく使用できる。 好ましい例を挙げると、ジメチロールアルカン酸を、前記(2)から(4)に記載したグリコール成分の一部もしくは全部と置き換えることによって、予めポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等にカルボキシル基を導入する方法が挙げられる。 ここで用いられるジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。 なお、ジメチロールアルカン酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    また、ポリウレタンが含む酸構造の一部又は全部は、中和することが好ましい。 酸構造を中和することにより、水系ウレタン樹脂の水分散性を向上させることができる。 酸成分を中和する中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基;などを挙げられる。 なお、中和剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    ポリウレタンの数平均分子量は、1,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上であり、1,000,000以下が好ましく、より好ましくは200,000以下である。

    水系ウレタン樹脂として、市販されている水系ウレタン樹脂をそのまま使用することも可能である。 水系ウレタン樹脂としては、例えば、旭電化工業(株)製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井東圧化学(株)製の「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業(株)製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン」シリーズ、バイエル社製の「インプラニール」シリーズ、日本ソフラン(株)製の「ソフラネート」シリーズ、花王(株)製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業(株)製の「サンプレン」シリーズ、保土谷化学工業(株)製の「アイゼラックス」シリーズ、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス」シリーズ、ゼネカ(株)製の「ネオレッツ」シリーズなどを用いることができる。 なお、水系ウレタン樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    また、易接着層は、微粒子を含むことが好ましい。 したがって、易接着層が水系樹脂により形成される場合、当該水系樹脂は微粒子を含むことが好ましい。 易接着層に微粒子を含ませることにより、易接着層の表面に凹凸が形成され、それによって巻回の際に易接着層が他の層と接触する面積が小さくなり、その分だけ易接着層の表面の滑り性を向上させて、位相差フィルムを巻回する際のシワの発生を抑制できる。

    微粒子の平均粒子径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、通常500nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。 平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより易接着層の滑り性を効果的に高めることができ、前記範囲の上限値以下にすることによりヘイズを低く抑えることができる。 なお、微粒子の平均粒子径としては、レーザー回折法によって粒径分布を測定し、測定された粒径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(50%体積累積径D50)を採用する。

    微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子のいずれを用いてもよいが、水分散性の微粒子を用いることが好ましい。 無機微粒子の材料を挙げると、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。 また、有機微粒子の材料を挙げると、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。 これらの中でも、シリカが好ましい。 シリカの微粒子は、シワの発生を抑制する能力及び透明性に優れ、ヘイズを生じ難く、着色が無いため、位相差フィルムの光学特性に与える影響がより小さいからである。 また、シリカはウレタン樹脂への分散性および分散安定性が良好だからである。 また、シリカの微粒子の中でも、非晶質コロイダルシリカ粒子が特に好ましい。
    なお、微粒子は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    微粒子の量は、水系樹脂に含まれる重合体100重量部に対し、通常0.5重量部以上、好ましくは5重量部以上、より好ましくは8重量部以上であり、通常20重量部以下、好ましくは18重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。 微粒子の量を前記の範囲の下限値以上とすることにより、位相差フィルムを巻回した場合にシワの発生を抑制できる。 また、微粒子の量を前記範囲の上限値以下とすることにより、位相差フィルムの白濁の無い外観を維持できる。

    易接着層の厚みが1μm以下の場合、易接着層の機械強度を向上させる目的で、水系樹脂には、更に架橋剤を含ませることが好ましい。 架橋剤としては、水系樹脂に含まれる重合体が有する反応性基と反応する官能基を有する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。 例えば、水系樹脂として水系ウレタン樹脂を用いる場合には、架橋剤として水系エポキシ化合物、水系アミノ化合物、水系イソシアネート化合物、水系カルボジイミド化合物、水系オキサゾリン化合物等を使用することが、材料の汎用性の観点から好ましい。 この中でも、特に水系エポキシ化合物、水系アミノ化合物、水系オキサゾリン化合物を使用することが、接着性の観点から好ましい。

    水系エポキシ化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のエポキシ基を有する化合物であればよい。 水系エポキシ化合物の例を挙げると、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール;1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物等のエポキシ化合物;などが挙げられる。

    水系アミノ化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のアミノ基を有する化合物であればよい。 水系アミノ化合物の例を挙げると、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタール酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、グリコリック酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、メラミン樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂などが挙げられる。

    水系イソシアネート化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上の非ブロック型のイソシアネート基若しくはブロック型のイソシアネート基を有する化合物であればよい。 非ブロック型のイソシアネート化合物としては、例えば、多官能イソシアネート化合物と一価又は多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールとを反応させて得られる化合物が挙げられる。 ブロック型イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TDI)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、1,12−ジイソシアネートドデカン(DDI)、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン(OCDI)、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、およびこれらのイソシアヌレート変性体、アダクト変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、並びに、これらの重合体で1個以上のイソシアネート基を有するものをポリオキシアルキレン基、カルボキシル基等で変性し、水溶性およびまたは水分散性にし、イソシアネート基をブロック剤(フェノール、ε−カプロラクタムなど)でマスクすることにより得られる化合物などが挙げられる。

    水系カルボジイミド化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のカルボジイミド結合(−N=C=N−)を有する化合物であればよい。 2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物は、例えば、2分子以上のポリイソシアネートとカルボジイミド化触媒とを用いて、2個のイソシアネート基を脱炭酸反応させてカルボジイミド結合を形成させる方法によって得ることができる。 2個以上のカルボジイミド結合を有する化合物を作製する際に使用されるポリイソシアネートおよびカルボジイミド化触媒は特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。

    水系オキサゾリン化合物としては、水に溶解性があるか、又はエマルジョン化した2個以上のオキサゾリン基を有する化合物であればよい。

    架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    水系樹脂として水系ウレタン樹脂を用いる場合、架橋剤の量は、ポリウレタン100重量部に対して、固形分で、通常1重量部以上、好ましくは5重量部以上であり、通常70重量部以下、好ましくは65重量部以下である。 このような配合にすることにより、易接着層の強度と、水系ウレタン樹脂の水分散体の安定性を両立できることが可能となる。

    さらに、硬化性材料には、必要に応じて、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、架橋剤などを含ませてもよい。 なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    また、硬化性材料として水系樹脂を用いる場合、硬化性材料は必要に応じて水を含んでいてもよい。 水系樹脂は通常は水に分散され、硬化性材料は当該水系樹脂が水に分散した組成物(水分散体)として用意される。 例えば、水系樹脂としてウレタン樹脂を用いる場合、硬化性材料は、水系ウレタン樹脂が水に分散された液状の組成物として用意される。 なお、これらの組成物は、例えば、エマルション、コロイド分散系、水溶液などの形態としてもよい。

    また、前記の水分散体には、水溶性の溶剤が含まれていてもよい。 水溶性の溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。 なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    水分散体に分散する水系樹脂の粒子の粒径は、位相差フィルムの光学特性の観点から、0.01μm〜0.4μmであることが好ましい。 水系樹脂の粒子の粒径は、動的光散乱法により測定することができ、例えば、大塚電子社製の光散乱光度計DLS−8000シリーズにより測定することができる。

    水分散体の粘度は、15mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であるのが特に好ましい。 水分散体の粘度が前記範囲内にあると、低配向面に水分散体を均一に塗布することができる。 水分散体の粘度は、音叉型振動式粘度計により25℃の条件下で測定した値である。 水分散体中の水系樹脂の割合及び水系樹脂の粒子の粒径などを変化させることにより、水分散体の粘度を調整することができる。

    硬化性材料の塗布方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用することができる。 具体的な塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。

    〔5. 工程(D)〕
    工程(C)で低配向面に塗布層を形成した後で、塗布層を硬化して硬化層を得る工程(D)を行う。 工程(D)では、塗布層の表面を加熱することにより、塗布層を硬化させる。 通常、塗布層は薄い層であるので、塗布層の表面を加熱するように加熱を行えば、塗布層の全体に熱が行き渡るので、塗布層において乾燥、重合、架橋等を進行させて、塗布層を十分に硬化させることができる。 また、塗布層の表面を加熱するように加熱を行えば、延伸フィルムに大きな熱を与えることなく塗布層を選択的に加熱できるので、延伸フィルム及び塗布層を含むフィルム全体を加熱して塗布層を硬化させる場合に比べ、意図しない配向緩和によって位相差が変化することを防止することができる。 この際、延伸フィルムの塗布層に近い部分が塗布層から伝わる熱等によって加熱されることもありえる。 しかし、延伸フィルムにおいて塗布層に近い部分はすでに工程(B)において配向緩和されており、さらに伝わる熱は通常は変形又は配向緩和を生じるほど大きくは無いので、位相差フィルムの品質が低下しないようにすることができる。

    塗布層を加熱する際には、工程(B)と同様に、加熱装置としてフラッシュランプアニーリング装置を用いることが好ましい。 これにより、塗布層の表面を容易且つ選択的に加熱することができる。

    塗布層の表面を加熱する工程における前記塗布層の表面の温度は、熱可塑性樹脂フィルムを形成する熱可塑性樹脂のビカット軟化温度以上であることが好ましい。 塗布層の表面を熱可塑性樹脂のビカット軟化温度以上に加熱する場合、延伸フィルム及び塗布層の両方を加熱して塗布層を硬化させようとすると延伸フィルムに配向緩和及び変形が生じる可能性がある。 しかし、工程(D)で塗布層の表面を加熱して塗布層を硬化させるようにすれば、延伸フィルムには大きな熱が与えられないので、延伸フィルムに配向緩和及び変形が生じることがなく、位相差フィルムを簡単に製造できると言う本発明の効果を顕著に発揮することができる。

    塗布層を硬化させることにより、低配向面に硬化層が形成される。 この際、硬化層として易接着層を形成すれば、低配向面での接着性を更に高めることができる。 また、従来のように表面の面配向係数が高い延伸フィルムに易接着層を形成すると、延伸フィルムと易接着層との界面近傍で凝集破壊が生じることがあったが、低配向面を有する延伸フィルムにおいては低配向面の面配向係数が低くなっているため、分子の配向に起因する凝集が生じ難いので、前記の凝集破壊を抑制することができる。 さらに、易接着層を形成する際の硬化温度を十分に高くすることができるので、易接着層の表面と他の材料との接着性をより高くすることができる。

    易接着層の厚みは、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上が特に好ましく、また、5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下が特に好ましい。 前記範囲内にあると、延伸フィルムと易接着層との十分な接着強度が得られ、かつ、位相差フィルムの反りなどの欠陥を無くすことができる。

    延伸フィルムの厚みt1と易接着層の厚みt2との比t2/t1は、0.0003以上が好ましく、0.0010以上がより好ましく、0.0025以上が特に好ましく、また、0.0100以下が好ましく、0.0080以下がより好ましく、0.0050以下が特に好ましい。 これにより、位相差フィルムの高い透明性と高い滑り性との両立が可能となる。

    延伸フィルムと易接着層との界面屈折率差は、0.05以下であることが好ましい。 界面屈折率差が前記範囲内にあると、位相差フィルムを光が透過する際の光の損失を抑えることができる。

    〔6. その他の工程〕
    本発明の位相差フィルムの製造方法では、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した工程(A)〜(D)を2回以上行ってもよく、また、工程(A)〜(D)以外の工程を行ってもよい。
    例えば、延伸フィルムの低配向面ではない表面に、硬化層を形成してもよい。
    また、例えば、延伸フィルムに硬化層以外の層を設けてもよい。

    また、例えば、延伸フィルムの表面(低配向面でもよく、低配向面以外の表面でもよい)、並びに、硬化層の表面に、更に別の表面処理を施してもよい。 さらに、例えば、低配向面に硬化層を形成する前に、低配向面に表面処理を行ってもよい。 表面処理の例を挙げると、コロナ放電処理、プラズマ処理、ケン化処理、紫外線照射処理等の親水化表面処理などが挙げられる。

    〔7. 偏光板の製造方法〕
    本発明に係る位相差フィルムは、低配向面における接着性が改善されているので、他のフィルムと接着した場合に剥がれ難い。 このため、本発明に係る位相差フィルムは、他のフィルムと貼り合せて好適に使用できる。 貼り合わせる対象となるフィルムに制限は無いが、例えば本発明に係る位相差フィルムを偏光子である偏光フィルムと貼り合わせることにより偏光板を製造することが好ましい。

    偏光板は、例えば、本発明に係る位相差フィルムの低配向面に偏光フィルムを貼り合わせることにより製造できる。 位相差フィルムの低配向面に硬化層が形成されていない場合、低配向面に接着層を介することなく直接に偏光フィルムを貼り合せてもよく、接着層を介して貼り合せてもよい。 また、位相差フィルムの低配向面に硬化層が形成されている場合、硬化層の表面に接着層を介することなく直接に偏光フィルムを貼り合せてもよく、接着層を介して貼り合せてもよい。 さらに、偏光フィルムの一方の面だけに位相差フィルムを貼り合せてもよく、両方の面に貼り合せてもよい。 偏光フィルムの一方の面だけに位相差フィルムを貼り合わせる場合、偏光フィルムの他方の面には、透明性の高い別のフィルムを貼り合せてもよい。

    偏光フィルムは、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素若しくは二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって製造してもよい。 また、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させ延伸し、さらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって製造してもよい。 さらに、偏光フィルムとして、例えば、グリッド偏光フィルム、多層偏光フィルム、コレステリック液晶偏光フィルムなどの、偏光を反射光と透過光とに分離する機能を有する偏光フィルムを用いてもよい。 これらの中でも、ポリビニルアルコールを含んでなる偏光フィルムが好ましい。 偏光フィルムの偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。 偏光フィルムの厚さ(平均厚さ)は、好ましくは5μm〜80μmである。

    偏光フィルムと位相差フィルムとを接着するための接着剤としては、光学的に透明であれば特に限定されず、例えば、水性接着剤、溶剤型接着剤、二液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、感圧性接着剤などが挙げられる。 この中でも、水性接着剤が好ましく、特にポリビニルアルコール系の水性接着剤が好ましい。 なお、接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。

    接着剤により形成される層(接着層)の平均厚みは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。

    位相差フィルムと偏光フィルムとを貼り合わせる方法に制限は無いが、例えば、偏光フィルムの一方の面に必要に応じて接着剤を塗布した後、ロールラミネーターを用いて偏光フィルムと位相差フィルムとを貼り合せ、必要に応じて乾燥を行う方法が好ましい。 乾燥時間及び乾燥温度は、接着剤の種類に応じて適宜選択される。

    以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。 なお、以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別に断らない限り重量基準である。

    [評価方法]
    1. 面配向係数の評価 プリズムカプラ屈折率計(メトリコン社製、MODEL2010)を用いて波長590nmにおける屈折率を測定して、面内最大屈折率nx、nxに直交する方向の屈折率ny、及び厚み方向の屈折率nzから、以下の式に従って面配向係数を算出した。
    P=(nx+ny)/2−nz

    2. 位相差値の評価 複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA21ADH)を用いて波長590nmにおける厚み方向の位相差値を測定した。

    3. ビカット軟化温度の評価 JIS K7206に準じてヒートディストーションテスター(東洋精機社製)を用いて測定した。

    4. 剥離強度の評価 得られた位相差フィルムの片面と偏光フィルムとを、接着剤を介して常法によって貼り合わせ、25mmの幅に裁断して90度剥離試験を実施した。 接着剤としては、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の水性エマルジョン(大日本インキ化学工業(株)製の“ハイドランAP−20”、固形分濃度30%、粘度30mPa・sec)100部に、多官能グリシジルエーテルである大日本インキ化学工業(株)製の“CR−5L”を3部加えたものを用いた。 なお、前記の90度剥離試験では、剥離された位相差フィルムと偏光フィルムとがなす角度が90°の角度をなすようにした。
    位相差フィルムと偏光フィルムとの間の剥離強度を以下の基準で評価した。
    A:材破壊が先に発生して試験不能 B:剥離強度3.0N以上 C:剥離強度2.0N以上3.0N未満 D:剥離強度2.0N未満

    [実施例1]
    100℃で5時間乾燥したノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製、ZEONOR1060、ガラス転移温度100℃、ビカット軟化温度101℃)のペレットを用いて、押出成形により熱可塑性樹脂フィルムとして未延伸フィルムAを得た。
    未延伸フィルムAを同時二軸延伸機により二軸延伸して厚み23μmの延伸フィルムを得た。
    得られた延伸フィルムを長尺方向に搬送しながら、延伸フィルムの片面を、加熱装置(DTF社製、フラッシュランプアニーリング装置)により、表面から深さ1μmまでの部分を、ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度+30℃に加熱して、位相差フィルムAを得た。 また、加熱の際、延伸フィルムの加熱された面とは反対側の表面の温度は30℃であった。
    評価結果を表1に示す。 なお、剥離強度の評価では、位相差フィルムAの加熱した面を偏光フィルムと貼り合わせるようにした。

    [実施例2]
    (1)塗布液の調整 純水20gにアジピン酸ジヒドラジド0.03gを加えて溶解させた。 そこに水系ウレタン樹脂であるスーパーフレックス210(第一工業製薬製:固形分濃度35%)1.5gと、水系オキサゾリン化合物であるエポクロスWS−700(日本触媒製:固形分濃度25%)0.8gとを加え、振とう器で振とうさせて、硬化性材料として易接着層用の塗布液を得た。 この塗布液の硬化温度は100℃である。

    (2)位相差フィルムの製造 実施例1と同様にして、厚み26μmの延伸フィルムを得、その延伸フィルムの片面をノルボルネン系樹脂のガラス転移温度+30℃に加熱した。 また、加熱の際、延伸フィルムの加熱された面とは反対側の表面の温度は30℃であった。 さらに、得られた延伸フィルムの加熱した表面にコロナ処理を施した。
    コロナ処理を施した面に、上記塗布液を塗布し、塗布層を形成した。 その後、同じ加熱装置により塗布層を110℃に加熱して硬化させて、厚み1μmの硬化層(易接着層)を形成し、位相差フィルムBを得た。 評価結果を表1に示す。 なお、剥離強度の評価では、位相差フィルムBの易接着層の表面に偏光フィルムを貼り合わせるようにした。 また、位相差値の評価は硬化層の形成の前及び後の両方で実施したが、位相差値の変化は見られなかった。

    [実施例3]
    ノルボルネン系樹脂の代わりに、ポリカーボネート樹脂(鎭江奇美化工社製、ワンダーライトPC110、ガラス転移温度148℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚み25μmの位相差フィルムCを得た。 なお、加熱はポリカーボネート樹脂のガラス転移温度+30℃で行い、その際の延伸フィルムの加熱された面とは反対側の表面の温度は30℃であった。 評価結果を表1に示す。 なお、剥離強度の評価では、位相差フィルムCの加熱した面を偏光フィルムと貼り合わせるようにした。

    [実施例4]
    未延伸フィルムAの代わりに、トリアセチルセルロース(ガラス転移温度140℃)からなる単層キャスト成形フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、厚み35μmの位相差フィルムDを得た。 なお、加熱はトリアセチルセルロースのガラス転移温度+30℃で行い、その際の延伸フィルムの加熱された面とは反対側の表面の温度は30℃であった。 評価結果を表1に示す。 なお、剥離強度の評価では、位相差フィルムDの加熱した面を偏光フィルムと貼り合わせるようにした。

    [比較例1]
    未延伸フィルムAを同時二軸延伸機により二軸延伸して、厚み23μmの延伸フィルムとして位相差フィルムaを得た。 なお、得られた位相差フィルムaに対して加熱装置による加熱処理は行わなかった。 評価結果を表1に示す。

    [比較例2]
    未延伸フィルムAを同時二軸延伸機により二軸延伸して、厚み25μmの延伸フィルムbを得た。 この延伸フィルムbに対し、加熱装置による加熱処理を行わずに、実施例2と同様にして塗布液を塗布して塗布層を形成した。 その後、オーブンによりフィルム全体を90℃に加熱して塗布層を硬化させて、易接着層付きの位相差フィルムbを得た。 評価結果を表1に示す。 なお、剥離強度の評価では、位相差フィルムbの易接着層の表面に偏光フィルムを貼り合わせるようにした。 また、位相差値の評価を易接着層の形成の前及び後の両方で実施したところ、易接着層の形成前の延伸フィルムbに比べて易接着層の形成後の位相差フィルムbの位相差値は5nm低下していた。

    [検討]
    表1から分かるように、実施例1〜4では剥離強度が高いことから、位相差フィルムと偏光フィルムとの接着性が高いことが分かる。
    また、実施例1〜4では、加熱処理を施された低配向面と、その反対側の面である裏面とで面配向係数が大きく異なることから、低配向面の面配向係数が選択的に小さくされていることが確認できる。
    さらに、実施例1〜4においては比較例1〜2と同程度の位相差が発現しているので、加熱前の延伸フィルムの位相差が加熱後にも維持されていることが分かる。
    以上のことから、本発明の位相差フィルムの製造方法によれば、他のフィルムとの接着性に優れる位相差フィルムを従来よりも容易に製造できることが確認できる。

    10 延伸フィルム 11 延伸フィルム10の表面(低配向面)
    12 延伸フィルム10の表面11の近傍部分 13 延伸フィルム10の表面11の近傍部分12以外の部分 20 フラッシュランプアニーリング装置 100 フラッシュランプユニット 110 フラッシュランプ 120 反射材 130 カバー 140 筐体 200 延伸フィルム 210 延伸フィルム200の表面 300 プレヒーティングユニット 310 ヒーター 320 基材 330 カバー 340 筐体 350 通路

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