【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、市場のセリによって価格が決定する商品の取引に使用するデータキャリアを用いた物流システムに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、市場のセリによって価格が決まる商品の物流システムは、例えば図９に示すような流れになっている。 図９において、まず生産者により生産された商品、例えば野菜や花などは所定個数ずつダンボール詰めにして梱包され、保冷トラックによって市場の集荷場に運ばれる。 集荷された商品は台車に載せられ、セリにかけられるまで鮮度が落ちないように保冷庫に保存されることもある。

【０００３】セリにかけられるときには、台車ごと又は台車から商品をおろしてセリにかけられる。 セリ落された商品は、市場を出る前に配送先に従って振り分けられる。 このとき配送先によって商品を異なる台車に積みかえるという作業が生ずる。 季節や配送先によっては、何日か保冷庫に置いておく場合もある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の物流システムにあっては、例えばセリ落された商品を配送先の台車ごとに積みかえる作業を行う際に、台車には配送先が書かれているが、市場内には沢山の台車があり、一目で配送先の台車を見つけることはできない。

【０００５】また台車に載せられている商品は、どれも似たようなものなので、商品で区別しようとしても簡単には判らない。 更に商品には配送先を示す紙が貼ってあるが、雨天や強風の時には剥れてしまう可能性があり、
そのため間違った商品を配送したり、配送日時を間違ったりすることがある。 また通常、市場への人の出入りは自由であるため、商品が盗難にあって運び出されてしまう可能性もある。

【０００６】一方、商品輸送のために梱包したダンボールには商品名、産地などを印刷して内容物を区別するようにしており、流通コストを低減するためにダンボールを統一しようとしてもできなかった。 本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、データキャリアを使用することで商品そのものに流通情報を持たせ、この流通情報を読み書きすることによって流通に必要な作業を正確に効率良く行うことのできるデータキャリアを用いた物流システムを提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この目的を達成するため本発明のデータキャリアを用いた物流システムは次のように構成する。 まず本発明のデータキャリアを用いた物流システムは、非接触結合により情報の読み書きが可能な耐候性構造を備えたデータキャリアと、データキャリアに対し情報を書き込むライタ装置と、データキャリアに書かれた情報を読み出して表示するリーダ装置とを有し、商品又は商品収納容器毎に設けたデータキャリアにライタ装置により流通情報を書き込むと共に、リーダ装置でデータキャリアから読出した流通情報に従って流通業務を行うことを特徴とする。

【０００８】ここでライタ装置によるデータキャリアへの情報の書き込みを有償にて行うことによりプリペイド機能を持たせることもできる。 またデータキャリアに商品取引き場所への立ち入りが許可された人物、車等のＩ
Ｄコードを書き込んでおき、データキャリアの書き込み情報をリーダ装置で入退出時に読み取って入退場券として機能させることもできる。

【０００９】

【作用】このような構成を備えた本発明のデータキャリアを用いた物流システムによれば、商品又はその容器に商品と商品流通のための情報が書かれたデータキャリアが設けられているため、トラックなどに商品を積み込む時にデータキャリアの内容を読み出して見ることで、配送先、商品の個数、配送時期等を知ることができる。

【００１０】また積み込み時には配送伝票等によって何を何個積み込むかは判っていることから、データキャリアからの読出データと照合することで正しい配送業務を補償することができる。 更にデータキャリアは非接触結合により離れた位置から読み書きができるめた、データキャリアに情報を書いたり、データキャリアの情報を読んだりする操作は、簡単にできる。

【００１１】一方、データキャリアを使用して売買商品の取引を有償で行うことで、プリペイドカードして機能させることができる。 更に、出入り許可を示すＩＤコードを書き込んでおくことで、市場の入退場券としても使用できる。

【００１２】

【実施例】図１は本発明によるデータキャリアを用いた物流システムの流れを示した説明図である。 図１において、生産者は生産した野菜や花などの生産品１を特定の個数ずつ梱包してダンボールに詰める。 本発明にあっては、ダンボール２の例えば側面などにデータキャリア１
０が装着されている。 商品を入れたダンボール２のデータキャリア１０に対してはリーダライタ装置１２ａを使用して商品固有のデータを書き込む。

【００１３】この商品固有のデータとしては、例えば商品名，産地，個数などである。 このデータキャリア１０
に対するリーダライタ装置１２ａを使用した商品固有データの書き込みは例えば農協などのような最初に集荷される場所で書き込まれる。 生産者側で集荷が済んだ商品のダンボール２は保冷トラック３に積んで市場，集荷場へ向けて運ばれる。 市場の集荷場に集められた商品は台車４に乗せられ、セリを待つ。 必要ならば保冷庫に保存する。 セリは台車４毎あるいは台車４から商品を降ろして行われ、セリ落とされた商品は市場を出る前に配送先Ｎｏ． １，Ｎｏ． ２，・・・Ｎｏ． ｎに振り分けられる。 このとき配送先によって商品を異なる台車４に積み替えるという作業が生ずる。

【００１４】市場で使用する台車４には台車専用のデータキャリア１０´が設けられており、市場においてリーダライタ装置１２ｂを使用して台車４のデータキャリア１０´に流通に必要なデータを書いたり読んだりすることができる。 また、商品のダンボール２に設けているデータキャリア１０に書かれている商品固有のデータをリーダライタ装置１２ｂで読んでみることができる。

【００１５】図２は図１のセリ落としが済んだ商品を配送先Ｎｏ． １〜Ｎｏ． ｎ毎に台車に振り分ける作業を示した説明図である。 図２において、セリ落とされた商品はこの時点でセリ落とした人の所有になる。 そこで、セリ落とした時点で商品のデータキャリア１０に対しリーダライタ装置１２を使用してセリ落とした人の名前あるいはＩＤコードを書き込む。 以下の説明では、セリ落とした人を仲買人という。

【００１６】仲買人は商品を小売りへ売るか自分で売るかの２つの場合がある。 小売りへ売る場合にはどの商品を幾つだれにいくらで売るという事は小売り側と予め協議されているので、小売りとの協議結果にしたがってリーダライタ装置１２により対応する商品のデータキャリア１０に小売り人のＩＤコード，個数，値段，発送日時などを書き込む。

【００１７】仲買人が自分で商品を売る場合には所有者としての自分のＩＤコード，個数，売値などを書き込んでおく。 更に、台車４に設けたデータキャリア１０´には配送先を示す小売り人のＩＤコード，積み荷の個数など台車４に積まれた商品全体の情報が予め書かれており、リーダライタ装置１２ｂに示すように台車４に設けたデータキャリア１０に書かれている情報を読むことでどの小売り人の所有する台車なのかが判るようになっている。

【００１８】このため、セリ落とされた個々の商品を小売り人ごとの台車４に積み分けるには、台車４についているデータキャリア１０´と商品に付いているデータキャリア１０とを読んで読出した小売り人のＩＤコードが一致しているものを該当する台車４に積めばよい。 このようなセリ落とした商品の小売り人などの異なる台車４
への積み替えが済んだならば再び図１に示すようにトラックに積んで商品を発送するようになる。

【００１９】この発送作業にあっては、台車４に設けているデータキャリア１０をリーダライタ装置１２によって読むことで台車を所有している小売り人を知り、小売り人の所有しているトラックあるいは小売り人が契約しているトラックに同じ小売り人のＩＤコードのデータが書かれた台車４の商品を積み込めばよい。 図３は本発明で用いるリーダライタ装置の外観説明明図である。

【００２０】図３に於て、リーダライタ装置１２にはディスプレイ１４，テンキー１６，ライトキー１８，リードキー２０、更にブザー２２が設けられている。 リーダライタ装置１２を使用してデータキャリアに情報書き込みを行いたい場合には、所定のライトコマンドを示す番号をテンキー１６で入力し、また書き込むデータをテンキー１６で入力し、最終的にライトキー１８を押すとデータキャリアに対する書き込み動作が行われる。

【００２１】また、データキャリアの読出については、
テンキー１６で所定のリードコマンドを示す番号を入力してリードキー２０を押すと、リーダライタの指定された内容が読み出されたディスプレイ１４上に表示される。 また、ブザー２２は読出エラー，書き込みエラー、
更にはデータ照合エラー等のエラー時にブザー音を出すようになっている。

【００２２】尚、リーダライタ装置１２の操作はテンキー１６以外に専用のコマンドキーを設けるようにしてもよいことは勿論である。 図４は本発明で用いるリーダライタ装置の実施例を示した回路ブロック図である。 図４
において、リーダライタ装置１２はＭＰＵを用いた制御部２４，ディスプレイ部１４を備えた表示部２６，テンキー等を備えた操作部２８，データ伝送部３０及び送受信部３２で構成される。 送受信部３２はデータキャリアとの非接触結合を行うもので、非接触結合距離が短くてよい場合には電磁誘導結合方式を使用し、非接触結合距離が長くなる場合には電磁波方式を使用する。

【００２３】制御部２４は操作部２８からの操作入力に基づいてデータキャリアに対するライトアクセスまたはリードアクセスを実行する。 データ伝送部３０は制御部２４から得られたデータキャリアへの送信データを例えばＦＳＫ変調し、送受信部３２に送る。 また、送受信部３２で受信したデータキャリア側からの変調信号を復調して送信データを作り出して制御部２４に送る。

【００２４】図５は本発明で用いるデータキャリア１０
の実施例を示した実施例ブロック図である。 図５において、データキャリア１０は送受信部３４，送受信切替スイッチ３６，データ伝送部３８，不揮発性メモリとして設けたＥ ² ＰＲＯＭ４０及び整流回路４２で構成される。 送受信切替スイッチ３６はスタンバイ状態で図示のように受信側に閉じており、送受信部３４で受信したリーダライタ装置１２からの適宜のコマンドを含む受信信号をデータ伝送部３８に与えて復調し、復調コマンドに基づきＥ ² ＰＲＯＭ４０に対する書き込み動作または読出動作を実行する。

【００２５】Ｅ ² ＰＲＯＭ４０の書き込み動作または読出動作はチップセレクトＣＳをオンした状態でシフトクロックＣＬＫに同期してビット単位にデータＤＩを送ることで書き込みまたは読出コマンドの伝送、アドレスの指定、及び書き込みデータの供給を行う。 リードアクセスについてはＥ ² ＰＲＯＭより読出データＤＯがデータ伝送部３８に読み出され、この読出時にあっては送受信切替スイッチ３６が送信側に切り替わり、データ伝送部３８で変調した読出データを送受信部３４よりリーダライタ装置１２側に送るようになる。

【００２６】図６は本発明で用いるデータキャリア１０
の外観構成の一例を示したもので、例えばコイン状の外形形状を持ち、内部に図５の回路ブロックを実装した回路基板を密封構造で封入しており、ダンボール等の商品の外側に取り付けても十分な耐候性を持つ構造となっている。 更に図５から明らかなように、データキャリア１
０内には整流回路４２が設けられており、送受信部３４
で受信した受信信号を整流して内部の動作電源を作り出している。 このため、データキャリア１０の電池交換は不要であり、図６に示すような完全な密封構造として封入できる。

【００２７】このような本発明で用いるリーダライタ装置１２及びデータキャリア１０としては、例えば特開平１−１８４７８１号等に詳細に示される。 図７は本発明のデータキャリアを用いた物流システムにおける他の実施例を示した説明図であり、この実施例にあっては、セリ落とされた商品を所有者のＩＤコードに従って自動的に台車に振り分けるようにしたことを特徴とする。

【００２８】図７において、４４はベルトコンベアであり、ベルトコンベア４４に沿って所有者ＩＤの異なる台車４がＮｏ． １，Ｎｏ． ２，Ｎｏ． ３，・・・として配置されており、台車４に相対する位置にリーダライタ装置１２が設置されている。 コンベア４４に対しては右側よりセリの済んだ商品としてダンボール２が送り込まれ、コンベア４４を移動してくるダンボール２に設けているデータキャリア１０の情報をリーダライタ装置１２
で読み取る。

【００２９】リーダライタ装置１２側には照合基準データとしてＮｏ． １，Ｎｏ． ２，・・・の各所有者ＩＤコードが予め設定されており、ダンボール２のデータキャリア１０から読み取った所有者ＩＤコードが設定コードと一致すると、矢印で示すように対応する台車４に対しダンボール２を送り出す。 これによってデータキャリアに書き込んだ所有者ＩＤコードを使用してセリ落とした商品の自動振り分けが可能となる。

【００３０】図８は商品の盗難防止を目的として市場への立ち入りが許可されている小売り人が所有するトラック４８，５０にそれぞれデータキャリア１０を設けて小売り人ＩＤコードを書き込んでおき、トラック４８，５
０が市場に入るとき及び出るときに正規の小売り人のトラックか否かをチェックするようにしたことを特徴とする。

【００３１】即ち、市場の出入り口となるゲート４６にはリーダライタ装置１２が設けられている。 今、ゲート４６を通って市場に入ろうとするトラック４８があった場合、トラック４８には予めデータキャリア１０が装着され、データキャリア１０には許可された小売り人を示すＩＤコードが書かれている。 トラック４８がゲート４
６に設けたリーダライタ装置１２の通信可能距離に近付くとトラック４８のデータキャリア１０の内容が読み取られ、例えば自動的にゲート４６を開いてトラック４８
を中に入れる。

【００３２】一方、商品を積んだトラック５０が市場を出ようとしてゲート４６に近付いた場合にも、同様にしてリーダライタ装置１２がトラック５０に設けているデータキャリア１０の内容を読み、予め登録されている小売り人のＩＤコードとの照合一致が得られると、正規の小売り人のトラックと見做してゲート４６を開く。 これに対し、盗難などの目的で市場に入ろうとしたり、なんとか市場に入って商品を積んで市場から出ようとしても、リーダライタ１２からの読出要求に対し正式に立ち入りが許可されていないトラックにあっては、データキャリア１０を持っていないことから当然に書き込み内容の応答ができず、ゲート４６は開くことがなく、また正式な小売り人でないことを警報表示することで不審なトラックの出入りを未然に防ぐことができる。

【００３３】更に本発明のデータキャリアを用いたプリペイドシステムにあっては、データキャリア１０自身をプリペイドカードとして使用することができる。 即ち、
小売り人と仲買人の取り引きにおいて、それぞれがデータキャリアをプリペイドカードとして保有しており、有償取り引き専用のリーダライタ装置を使用して仲買人のデータキャリアに格納されている商品を小売人のデータキャリアに移し、同時に小売り人のデータキャリアに記録された金額から売上金額分を仲買人のデータキャリアに移して決済する処理を行う。

【００３４】このようにデータキャリアをプリペイドカードとして使用することで処理現金，手形などのやり取りを不要とし、流通に要する時間を短縮することができる。 更に、本発明のデータキャリアを用いた物流システムにあっては、市場における商品固有情報及び流通情報は全てデータキャリアに書き込まれ、リーダライタ装置に読出して確認できるため、ダンボールの表面に従来のように商品名や産地などを印刷して区別する必要はなくなる。 このため、ダンボール等の商品梱包材を統一化することができる。

【００３５】尚、上記の実施例はリーダライタ装置１２
を使用してデータキャリア１０の読み書きを行う場合を例にとるものであったが、書き込み専用のライト装置及び読出専用のリード装置を各々使用して必要に応じてデータキャリアの書き込みまたは読出を行うようにしてもよいことは勿論である。

【００３６】

【発明の効果】以上説明してきたように本発明によれば、データキャリアに商品の情報，流通の情報を書き込み、この書き込んだ情報に従って商品を流通させることにより商品の発送先，発送日時，発送個数などの間違いを回避して正確な流通業務を行うことができる。

【００３７】また、リーダライタ装置を使用して離れた位置からデータキャリアの内容を読出して必要な作業ができるため、商品の仕分けに要する時間を短縮でき、流通作業の効率を大幅に向上できる。 また、商品情報及び流通情報は全てデータキャリアに書かれているため、梱包材料などに商品名，産地などを印刷する必要はなくなり、梱包材の統一化を可能として流通コストの低減を図ることができる。

【００３８】更に、データキャリアは耐環境性に優れるため、搬送中に従来の印刷や紙の場合のように配送先の情報が消えてしまったり剥がれてしまったりする不便はなくなる。 更にまた、データキャリアを市場への出入りチェックに用いることで商品の盗難防止を図ることができる。

【００３９】更にまた、データキャリアをプリペイドカードとして発行して仲買人と小売人との間の取り引き業務に使用することで、従来の処理現金，手形などによる決済を不要とし、流通コストの低減により、結果として商品価格を下げることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のデータキャリアを用いた物流システムの流れを示した説明図

【図２】セリ落した商品に対する流通情報の読み書きを示した説明図

【図３】本発明で用いるリーダライタ装置の外観説明図

【図４】本発明で用いるリーダライタ装置の実施例を示した回路ブロック図

【図５】本発明で用いるデータキャリアの実施例を示した回路ブロック図

【図６】本発明で用いるデータキャリアの外観説明図

【図７】本発明における商品の自動振り分けを示した説明図

【図８】本発明におけるデータキャリアの入退場券としての利用を示した説明図

【図９】従来の物流システムの流れを示した説明図

【符号の説明】

１：生産品 ２：ダンボール（商品） ３：保冷トラック ４：台車 １０，１０´：データキャリア １２，１２ａ，１２ｂ：リーダライタ装置 １４：ディスプレイ部 １６：テンキー １８：ライトキー ２０：リードキー ２２：ブザー ２４：制御部 ２６：表示部 ２８：操作部 ３０，３８：データ伝送部 ３２，３４：送受信部 ３６：送受信切替スイッチ ４０：Ｅ ² ＰＲＯＭ ４２：整流回路 ４４：コンベア ４６：ゲート ４８，５０：トラック