炭素数2~7の含フッ素有機酸および不純物を含む組成物の処理方法
本発明は、炭素数2~7の含フッ素有機酸および不純物を含む組成物から、不純物を少なくとも部分的に取り除く処理方法に関する。
ポリマーの乳化重合においては、乳化剤が用いられる。 例えば、含フッ素単量体を単独重合または共重合してフッ素ポリマーを製造するプロセスにおいては、フルオロカルボン酸などの含フッ素有機酸が乳化剤として使用されている。 ここで、例えばフルオロカルボン酸などの含フッ素有機酸は、一般に高価であることおよび環境への影響を考慮すれば、通常回収するのが望ましい。 WO2013/038990号明細書(特許文献1)には、アニオン性含フッ素乳化剤を吸着した塩基型イオン交換樹脂から、アニオン性含フッ素乳化剤を溶離して、アニオン性含フッ素乳化剤の酸として回収するアニオン性含フッ素乳化剤の回収方法が記載されている。 この特許文献1には、上記方法によって、含フッ素ポリマーの製造において用いられるアニオン性含フッ素乳化剤の酸を高い収率で回収することができ、そして回収したアニオン性含フッ素乳化剤の酸は、そのまま含フッ素ポリマーの乳化重合に使用することができると記載されている。 WO2010/113720号明細書(特許文献2)には、エーテル結合を有するフルオロカルボン酸を含有した液と活性炭とを接触させることにより、活性炭にフルオロカルボン酸を吸着させる、フルオロカルボン酸の吸着方法が記載されている。 この特許文献2には、例えば工場廃水、生活廃水、河川などの液相中から、エーテル結合を有するフルオロカルボン酸を効率よくかつ選択的に除去することができると記載されている。
WO2013/038990号明細書
WO2010/113720号明細書
例えばフルオロカルボン酸またはフルオロスルホン酸などの含フッ素有機酸を回収する手段については、従来から検討がなされている。 一方で、回収によって得られる、含フッ素有機酸を含む組成物は、一般に様々な不純物を含む。 本発明は、例えば回収などによって得られた、炭素数2~7の含フッ素有機酸および不純物を含む組成物から、不純物を少なくとも部分的に取り除く処理方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。 炭素数2~7の含フッ素有機酸および不純物を含む組成物から不純物を少なくとも部分的に取り除く処理方法であって、 上記方法は、下記工程: 上記組成物および凝集剤を混合する、凝集剤混合工程、および、 上記混合工程で得られた混合相を、固相および液相に分離する、分離工程: を包含する、方法。 炭素数2~7の含フッ素有機酸および不純物を含む組成物から不純物を少なくとも部分的に取り除く処理方法であって、 上記方法は、下記工程: 上記組成物および活性炭を接触させる、接触工程、および、 上記工程で得られた接触混合相を、固相および液相に分離する、分離工程: を包含する、方法。 上記処理方法は、それぞれ単独で行ってもよく、組み合わせて行ってもよい。 上記処理方法を組み合わせて行う場合は、任意の順序で行ってよい。
本発明の方法を用いることによって、炭素数2~7の含フッ素有機酸を含む組成物(例えば含フッ素有機酸の回収により得られた組成物)から、不純物を少なくとも部分的に取り除くことができる。 本発明の方法は、特に、含フッ素有機酸を回収することなどによって得られた組成物から、例えば炭素数3~50の有機化合物を含む不純物、より具体的には、炭素数8~50のカルボン酸およびその誘導体、炭素数8~50の炭化水素、炭素数6~50のフェノール、炭素数3~30のアルコールおよび炭素数8~50のポリエーテルからなる群から選択される1種またはそれ以上を含む不純物、を、効果的に取り除くことができる。
本発明における処理方法は、炭素数2~7の含フッ素有機酸および不純物を含む組成物から、不純物を少なくとも部分的に取り除く方法である。 以下、本発明の方法について詳述する。 炭素数2~7の含フッ素有機酸 本発明の方法における組成物に含まれる、炭素数2~7の含フッ素有機酸としては、炭素数2~7の含フッ素カルボン酸およびその塩、炭素数2~7の含フッ素スルホン酸およびその塩が挙げられる。 炭素数2~7の含フッ素カルボン酸として、式(i): X-Rf-COOH (i) [式中、Xは、H、FまたはClであり、Rfは、炭素数1~6の直鎖または分枝状のフルオロアルキレン基、モノオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1~6の基、または、ポリオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1~6の基である。 ] で表される化合物が挙げられる。 上記Rf基における、炭素数1~6の直鎖または分枝状のフルオロアルキレン基として、例えば、CF 2 、C 2 F 4 、C 3 F 6 、C 4 F 8 、C 5 F 10 、C 6 F 12 、CHF、C 2 F 3 H、C 2 F 2 H 2 、C 2 FH 3 、C 3 F 5 H、C 3 F 4 H 2 、C 3 F 3 H 3 、C 3 F 2 H 4 、C 3 F 1 H 5 、C 4 F 7 H、C 4 F 6 H 2 、C 4 F 5 H 3 、C 4 F 4 H 4 、C 4 F 3 H 5 、C 4 F 2 H 6 、C 4 FH 7 、C 5 F 9 H、C 5 F 8 H 2 、C 5 F 7 H 3 、C 5 F 6 H 4 、C 5 F 5 H 5 、C 5 F 4 H 6 、C 5 F 3 H 7 、C 5 F 2 H 8 、C 5 FH 9 、C 6 F 11 H、C 6 F 10 H 2 、C 6 F 9 H 3 、C 6 F 8 H 4 、C 6 F 7 H 5 、C 6 F 6 H 6 、C 6 F 5 H 7 、C 6 F 4 H 8 、C 6 F 3 H 9 、C 6 F 2 H 10 、C 6 FH 11が挙げられる。 上記Rf基における、モノオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1~6の基およびポリオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1~6の基として、例えば、 (CF 2 ) l -(CF 2 OCF 2 ) m -(CF 2 OCF(CF 3 )) n式(a) (CF 2 ) l -(CHFOCF 2 ) m -(CF 2 OCF(CF 3 )) n式(b) (CF 2 ) l -(CF 2 OCHF) m -(CF 2 OCF(CF 3 )) n式(c) (CHF) l -(CF 2 OCF 2 ) m -(CF 2 OCF(CF 3 )) n式(d) (CHF) l -(CHFOCF 2 ) m -(CF 2 OCF(CF 3 )) n式(e) (CHF) l -(CF 2 OCHF) m -(CF 2 OCF(CF 3 )) n式(f) [上記式中、lは0または1~4の整数であり、mは0または1~3の整数であり、nは0、1または2であり、ただし、l+2m+3nは6を超えないこと、そして、mおよびnの両方が0である場合は除かれること、を条件とする。 ] で示される基が挙げられる。 なお、上記式中において、上記括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意であることを条件とする。 式(i)において、XはHまたはFであり、Rfは、モノオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1~6の基、または、ポリオキシフルオロアルキレン基を有する炭素数1~6の基であるのがより好ましい。 炭素数2~7の含フッ素カルボン酸は、式(i-a): X-Rf-COOH (i-a) [式中、Xは、HまたはFであり、Rfは、式(a) (CF 2 ) l -(CF 2 OCF 2 ) m -(CF 2 OCF(CF 3 )) n式(a) で示される基であって、 上記式(a)中、lは0または1~4の整数であり、mは0または1~3の整数であり、nは0、1または2であり、ただし、l+2m+3nは6を超えないこと、mおよびnの両方が0である場合は除かれること、および上記括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意であること、を条件とする。 ] で示されるパーフルオロカルボン酸であるのが、さらに好ましい。 上記含フッ素カルボン酸において、炭素数は3~7であるのが好ましく、5~7であるのがより好ましく、6~7であるのが特に好ましい。 好ましい態様である、炭素数5~7の含フッ素カルボン酸として、例えば、 CF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COOH、 CF 3 CF 2 OCF 2 CF 2 OCF 2 COOH、 CF 3 OCF 2 CF 2 CF 2 OCHFCF 2 COOH、 CF 3 CF 2 OCF 2 CF 2 OCF 2 COOH、 CF 3 CF 2 OCF 2 CF 2 OCF 2 COOH、 CF 3 OCF 2 CF 2 CF 2 OCHFCF 2 COOH、 CF 3 OCF 2 CF 2 CF 2 OCHFCF 2 COOH、 CF 3 (CF 2 ) 4 COOH、 CF 3 CF 2 CF 2 OCF(CF 3 )COOH、 H(CF 2 ) 6 COOH、 H(CF 2 ) 4 COOH、 CH 2 =CFCF 2 OCF(CF 3 )COOH などを例示することができる。 炭素数2~7の含フッ素スルホン酸として、例えば、パーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、CF 2 =CFOCF 2 CF 2 SO 3 H、CF 2 =CFOCF 2 CF(CF 3 )OCF 2 CF 2 SO 3 Hなどが挙げられる。 上記含フッ素カルボン酸および含フッ素スルホン酸の塩として、1価のカチオンを対イオンとして有する塩、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩およびアミン塩(例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン塩など)などが挙げられる。 なお、本発明における処理前の組成物中に含まれる二価の金属塩の含有量は、組成物の重量に対して1000ppm以下であるのが好ましく、100ppm以下であるのがより好ましい。 不純物 本発明の方法における組成物に含まれる不純物として、任意の不純物が挙げられる。 上記不純物として、炭素数3~50の有機化合物を含む不純物が挙げられる。 上記炭素数3~50の有機化合物として、例えば、炭素数8~50のカルボン酸およびその誘導体、炭素数8~50の炭化水素、炭素数6~50のフェノール、炭素数3~30のアルコールおよび炭素数8~50のポリエーテルから選択される1種またはそれ以上を含む不純物が挙げられる。 上記有機化合物の炭素数は、10~40の範囲であるのが好ましく、14~35の範囲であるのがより好ましい。 炭素数8~50のカルボン酸の誘導体として、典型的には、カルボン酸エステルが挙げられる。 炭素数8~50のカルボン酸およびその誘導体として、 炭素数8~50の芳香族カルボン酸およびそのエステル、例えば、フタル酸、フタル酸無水物、フタルイミド、フタル酸塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩)、フタル酸モノまたはジアルキルエステル(例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジアリル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ビスブチルベンジルなど)、安息香酸、安息香酸アルキルエステル(例えば、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチルなど)、サリチル酸、サリチル酸アルキルエステル(例えば、サリチル酸メチル、サリ� ��ル酸エチル、サリチル酸プロピル、サリチル酸ブチルなど)、没食子酸、没食子酸アルキルエステル(例えば、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチルなど)、メリト酸、メリト酸無水物、ケイ皮酸、ケイ皮酸無水物、ケイ皮酸アルキルエステル(例えば、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸プロピル、ケイ皮酸ブチルなど)、およびこれらのフッ素化物、 炭素数8~50の脂肪族カルボン酸およびそのエステル、例えば、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、CF 3 (CF 2 ) 6 COOH、CF 3 (CF 2 ) 8 COOH、H(CF 2 ) 8 COOH、H(CF 2 ) 10 COOH、CF 3 CF 2 CF 2 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COOHなど、およびこれらのアルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステルなど)、 などが挙げられる。 上記カルボン酸およびその誘導体の炭素数は、10~40の範囲であるのが好ましく、14~35の範囲であるのがより好ましい。 炭素数8~50の炭化水素として、炭素数8~50の、直鎖、分枝状または脂環式の、飽和または不飽和炭化水素が挙げられる。 上記炭素数は、10~40であるのがより好ましく、20~40であるのがさらに好ましい。 なお上記飽和炭化水素は、パラフィンと言われることもある。 炭素数6~50のフェノールとして、炭素数6~50の1価または多価フェノール化合物、例えば、フェノール、ジ-t-ブチルフェノール、クレゾール、ナフトール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシベンゼンなど、が挙げられる。 炭素数3~30のアルコールとして、例えば、プロパン-1-オール、ブタン-1-オール、ペンタン-1-オール、ヘキサン-1-オール、ヘプタン-1-オール、オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、デカン-1-オール、ウンデカン-1-オール、ドデカン-1-オール、トリデカン-1-オール、テトラデカン-1-オール、ペンタデカン-1-オール、ヘキサデカン-1-オール、ヘプタデカン-1-オール、オクタデカン-1-オール、ノナデカン-1-オール、イコサン-1-オール、ヘネイコサン-1-オール、ドコサン-1-オール、トリコサン-1-オール、テトラコサン-1-オール、ペンタコサン-1-オール、ヘキサコサン-1-オール、ヘプタコサン-1-オール、オクタコサン-1-オール、ノナコ� ��ン-1-オール、トリアコンタン-1-オール、ポリコサノール、2-メチルプロパン-1-オール、3-メチルブタン-1-オール、プロパン-2-オール、ブタン-2-オール、ペンタン-2-オール、ヘキサン-2-オール、ヘプタン-2-オール、2-メチルブタン-1-オール、シクロヘキサノール、2-メチルプロパン-2-オール、2-メチルブタン-2-オール、2-メチルペンタン-2-オール、2-メチルヘキサン-2-オール、2-メチルヘプタン-2-オール、3-メチルペンタン-3-オール、3-メチルオクタン-3-オール、エチレングリコール、グリセリン、ヒドロキノン、カテコール、4-t-ブチルカテコールなどが挙げられる。 炭素数8~50のポリエーテルとして、例えば、 炭素数8~50であるポリエチレングリコール、炭素数8~50であるポリプロピレングリコール、炭素数8~50であるポリエチレン/ポリプロピレングリコール(ここで「ポリエチレン/ポリプロピレン」とは、オキシエチレン部およびオキシプロピレン部より構成される基を意味する)などの、炭素数8~50であるポリエーテルポリオール; 炭素数8~50であるポリ(オキシエチレン)モノアルキルエーテル、炭素数8~50であるポリ(オキシエチレン)ジアルキルエーテル、炭素数8~50であるポリ(オキシプロピレン)モノアルキルエーテル、炭素数8~50であるポリ(オキシプロピレン)ジアルキルエーテル、炭素数8~50であるポリ(オキシエチレン)/(オキシプロピレン)モノアルキルエーテル、炭素数8~50であるポリ(オキシエチレン)/(オキシプロピレン)ジアルキルエーテル(上記において「(オキシエチレン)/(オキシプロピレン)」とは、オキシエチレン部およびオキシプロピレン部より構成される基を意味する)などの、炭素数8~50であるポリ(オキシアルキレン)アルキルエーテル; 炭素数8~50であるポリ(オキシエチレン)モノアリールアルキルエーテル、炭素数8~50であるポリ(オキシエチレン)ジアリールアルキルエーテル、炭素数8~50であるポリ(オキシプロピレン)モノアリールアルキルエーテル、炭素数8~50であるポリ(オキシプロピレン)ジアリールアルキルエーテル、炭素数8~50であるポリ(オキシエチレン)/(オキシプロピレン)モノアリールアルキルエーテル、炭素数8~50であるポリ(オキシエチレン)/(オキシプロピレン)ジアリールアルキルエーテル(上記において「(オキシエチレン)/(オキシプロピレン)」とは、オキシエチレン部およびオキシプロピレン部より構成される基を意味する)などの、炭素数8~50であるポリ(オキシアルキレン)アリールア� ��キルエーテル; などが挙げられる。 本発明の方法は、従来の方法においては除去が困難であると考えられていた、液体状の不純物、水溶性または両親媒性の有機不純物などの不純物を少なくとも部分的に取り除く方法として、有意に用いることができる。 液体状の不純物として、例えば、フタル酸ジアルキルエステル(フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジアリル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ビスブチルベンジルなど)、安息香酸アルキルエステル(例えば、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチルなど)、サリチル酸アルキルエステル(例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸プロピル、サリチル酸ブチルなど)、ケイ皮酸アルキルエステル(例えば、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸プロピル、ケイ皮酸ブチルなど)� ��炭素数8~9の脂肪族カルボン酸およびそのエステル、例えば、オクタン酸、ノナン酸、およびこれらのアルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステルなど)、炭素数3~10のアルコールとして、例えば、プロパン-1-オール、ブタン-1-オール、ペンタン-1-オール、ヘキサン-1-オール、ヘプタン-1-オール、オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、デカン-1-オールなど、が挙げられる。 同じく除去が困難と考えられてきた、水溶性または両親媒性の有機不純物として、例えば、ヒドロキノン、カテコール、4-t-ブチルカテコール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、パーフルオロオクタン酸、CF 3 (CF 2 ) 6 COOH、CF 3 (CF 2 ) 8 COOH、H(CF 2 ) 8 COOH、H(CF 2 ) 10 COOH、CF 3 CF 2 CF 2 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COOHおよびこれらの塩などが挙げられる。 組成物中に含まれる含フッ素有機酸の量は、組成物100重量部に対して、0.1~60重量部であるのが好ましく、1~50重量部であるのがより好ましく、5~30重量部であるのがさらに好ましい。 また、組成物中に含まれる不純物の量は、組成物100重量部に対して、0.00005~1重量部であるのが好ましく、0.0001~1重量部であるのが好ましく、0.0005~1重量部であるのがさらに好ましい。 なおここでいう「不純物」には、組成物を構成する溶媒、一般的には水または水性溶媒、は、含まれないものとする。 含フッ素有機酸および不純物を含む上記組成物は、含フッ素有機酸を含む廃液を濃縮する、または、含フッ素有機酸を含む廃液または中間生成物から含フッ素有機酸を回収するなどの手段によって、含フッ素有機酸の濃度を、例えば上記範囲まで高めた組成物であるのが好ましい。 含フッ素有機酸を含む廃液として、例えば、含フッ素有機酸を製造する工程または使用する工程において、生じるまたは排出される廃液などが挙げられる。 含フッ素有機酸を使用する工程において生じるまたは排出される廃液として、例えば、フッ素ポリマーの重合反応などよって生じた廃液(水性廃液)などが挙げられる。 上記廃液には、フッ素ポリマーの重合反応などよって生じた、含フッ素有機酸を含む排ガスを、湿式排ガス浄化装置(スクラバー)により洗浄することによって生じた廃液も含まれる。 フッ素ポリマーを製造するプロセスにおいては、一般に、含フッ素有機酸が乳化剤として使用される。 そのため、重合反応によって生じた廃液または排ガスに、含フッ素有機酸が含まれることとなる。 また、含フッ素有機酸を製造する工程において、生じるまたは排出される廃液として、例えば、含フッ素有機酸の製造工程(例えば洗浄工程など)によって生じた廃液(水性廃液)などが挙げられる。 含フッ素有機酸を含む中間生成物として、例えば、フッ素ポリマーを製造する重合反応プロセスにおいて生成する反応生成物である、フッ素ポリマー分散液などが挙げられる。 本明細書において「中間生成物」とは、重合反応などの反応によって生成した反応生成物であって、精製などの処理前の状態である生成物を意味する。 含フッ素有機酸の濃縮方法または回収方法の具体例として、例えば、 含フッ素有機酸を含む廃液を、限外ろ過を行い、含フッ素有機酸を濃縮(回収)する方法、 含フッ素有機酸を含む廃液を、逆浸透膜を用いたろ過処理を行い、含フッ素有機酸を濃縮(回収)する方法、 含フッ素有機酸を含む廃液または含フッ素有機酸を含む中間生成物(例えば重合反応後の樹脂分散液など)を、陰イオン交換樹脂に吸着させて(陰イオン交換樹脂処理)、含フッ素有機酸を濃縮(回収)する方法、 含フッ素有機酸を含む廃液を、賦活処理活性炭(例えばスチーム賦活処理活性炭など)などの高賦活活性炭に接触させることによって、高賦活活性炭に含フッ素有機酸を吸着させて濃縮(回収)する方法、 含フッ素有機酸を含む廃液を蒸発濃縮することによって、含フッ素有機酸を濃縮する方法、 などが挙げられる。 これらの処理によって、廃液中または中間生成物中に含まれる含フッ素有機酸が回収されるか、または廃液中に含まれる含フッ素有機酸の濃度が増大化されることとなる(本明細書においては、これらの操作をまとめて「含フッ素有機酸を濃縮」すると示す。)。 これによって、含フッ素有機酸の含有量が組成物100重量部に対して0.1~60重量部である組成物を調製することができる(組成物調製工程)。 上記限外ろ過として、例えば、特開昭55-120630号公報に記載される、公知の限外ろ過手段を用いることができる。 上記逆浸透膜を用いたろ過処理として、例えば、特開2002-58966号公報に記載される、公知の、逆浸透膜を用いたろ過処理手段を用いることができる。 逆浸透膜として、例えば、ポリアミド系膜、ポリスルホン系膜、ポリイミド系膜などを用いることができる。 上記陰イオン交換樹脂による処理として、例えば、特開2002-59160号公報に記載される、公知の、陰イオン交換樹脂(IER)による含フッ素有機酸分離方法を用いることができる。 陰イオン交換樹脂として、例えば、イオン交換基としてアミノ基および/または四級アンモニウム塩を有するイオン交換樹脂が挙げられる。 上記高賦活活性炭として、例えば、国際公開番号WO2010/113720号記載の公知の、高賦活活性炭が挙げられる。 含フッ素有機酸を含む廃液と、高賦活活性炭とを接触させることによって、高賦活活性炭に含フッ素有機酸が吸着し、これにより含フッ素有機酸を回収することができる。 上記蒸発濃縮として、当業者において一般的に用いることができる、公知の蒸発濃縮手段を用いることができる。 上記以外の公知の方法も用いることができる。 例えば、国際公開番号WO2004/050719号に記載され公知である、曇点濃縮法などを用いることもできる。 これらの操作は1種の操作を一回行ってもよく複数回行ってもよく、1種または2種以上の操作を組み合わせて行ってもよい。 凝集剤混合工程および分離工程 本発明の方法の1態様は、炭素数2~7の含フッ素有機酸および不純物を含む組成物から不純物を少なくとも部分的に取り除く処理方法であって、 上記組成物および凝集剤を混合する、凝集剤混合工程、および、 前記混合工程で得られた混合相を、固相および液相に分離する、分離工程、 を包含する方法が挙げられる。 上記凝集剤として、例えば、金属塩、高分子凝集剤などが挙げられる。 凝集剤として、金属塩が好ましい。 ここで、金属塩である凝集剤として、2価以上の金属元素を含む金属塩が好ましい。 ここで、金属塩を構成する2価以上の金属元素は、Fe、AlおよびCaからなる群から選択される1種またはそれ以上の金属元素であるのがより好ましい。 また、金属塩を構成する金属元素の対イオンとして、硫酸イオン、水酸化物イオン、フッ素イオン、硝酸イオンおよび塩素イオンからなる群から選択される1種またはそれ以上であるのがより好ましい。 高分子凝集剤として、例えば、アルギン酸ソーダ、キチン・キトサン系凝集剤、カチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤などが挙げられる。 本明細書において「金属塩」とは、単塩、複塩および/または錯塩を意味する。 また、「2価以上の金属元素を含む塩」とは、2価以上の金属元素を含む単塩、複塩および/または錯塩を意味する。 好ましい金属塩の具体例として、例えば、 アルミニウム塩(例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムなど)、 鉄塩(例えば、水酸化第一鉄、水酸化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄など)、 カルシウム塩(例えば、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、フッ化カルシウムなど)、 2価以上の金属元素およびケイ素を含む、ケイ酸塩鉱物(例えば、カオリナイト、モンモリロナイト、ゼオライトなど)、 などが挙げられる。 なお、凝集剤として用いることができる金属塩は、組成物および凝集剤を混合する凝集剤混合工程において、金属塩を生成させるまたは金属塩の金属元素の対イオンを変換する態様であってもよい。 このような態様として、例えば、フッ素イオンを含む組成物中に、フッ素以外の対イオンを有する金属塩(例えば金属水酸化物など)を加える態様などが挙げられる。 このような態様においては、凝集剤混合工程において、金属塩の対イオンの変換が生じる。 金属塩の対イオンの変換が生じることによって、より良好な不純物除去効果が得られる場合があり、より好ましい。 凝集剤として、市販品を用いてもよい。 市販の凝集剤として、例えば、シリカアルミナ系凝集剤である、日本活性白土社製のフロナイト723、フロナイト113、フロナイト101、フロナイトS、フロナイトDなどが挙げられる。 用いられる凝集剤の量は、凝集剤の種類および含フッ素有機酸の濃度などに応じて適宜選択することができる。 凝集剤の量は、例えば、上記組成物100重量部に対して0.01~10重量部であるのが好ましく、0.05~5重量部であるのがより好ましい。 凝集剤混合工程における混合手段は、組成物の量および濃度などに従って適宜選択することができる、任意の混合手段であってよく、通常用いられる撹拌手段などを用いることができる。 組成物と凝集剤とを混合して得られた混合相を、固相および液相に分離することによって、上記組成物中に含まれる不純物が少なくとも部分的に取り除かれることとなる。 分離手段は、組成物の量および濃度などに従って適宜選択することができる、任意の分離手段を用いることができる。 具体的な分離手段として、例えば、各種フィルターを用いたろ過、セライトまたは珪藻土などの濾過助剤を用いたろ過、上澄み採取、デカンテーション、遠心分離、固液分離装置(例えばラバルセパレーターなど)を用いた分離手段などが挙げられる。 ろ過をする場合には、自然ろ過、加圧ろ過、減圧ろ過のいずれの方法でもよく、複数の分離手段を組み合わせて実施してもよい。 この分離工程において、炭素数2~7の含フッ素有機酸は液相に存在し、上記炭素数3~50の有機化合物(例えば、炭素数8~50のカルボン酸およびその誘導体、炭素数8~50の炭化水素、炭素数6~50のフェノール、炭素数3~30のアルコール、炭素数8~50のポリエーテルなど)を含む不純物の少なくとも一部は固相に存在することとなる。 より具体的には、上記組成物および上記凝集剤を混合することによって、不純物の少なくとも一部が凝集し、固相に存在することとなる。 これにより、不純物を少なくとも部分的に取り除くことができる。 上記工程は、炭素数2~7の含フッ素有機酸を含む組成物から、不純物を少なくとも部分的に取り除く手段として、極めて好適である。 例えば炭素数8以上の含フッ素有機酸を含む組成物に対して、上記金属塩を加える場合は、不溶性の有機酸塩が形成される。 不溶性の有機酸塩は、分離工程において固相となる。 そのため、含フッ素有機酸の炭素数が8以上である場合は、含フッ素有機酸自体も不純物と一緒に取り除かれることとなる。 これにより、含フッ素有機酸の濃度(回収率)が低下する。 一方で、炭素数2~7の含フッ素有機酸は、上記金属塩と不溶性塩を形成しない。 そのため、含フッ素有機酸の濃度(回収率)を低下させることなく、不純物を効率的に取り除くことができるという利点がある。 接触工程および分離工程 本発明の方法の他の1態様は、炭素数2~7の含フッ素有機酸および不純物を含む組成物から不純物を少なくとも部分的に取り除く処理方法であって、 上記組成物および活性炭を接触させる、接触工程、および、 前記工程で得られた接触混合相を、固相および液相に分離する、分離工程: を包含する方法が挙げられる。 上記接触工程で用いられる活性炭は、通常用いられる活性炭であってよい。 すなわち、上記接触工程で用いられる活性炭は、スチーム賦活処理活性炭などの高賦活活性炭は意図していない。 スチーム賦活処理活性炭などの高賦活活性炭は、炭素数2~7の含フッ素有機酸の吸着性能が向上している一方で、上記不純物の吸着性能は向上しているわけではないためである。 上記接触工程で用いられる活性炭は、比表面積が500~1900m 2 /gである活性炭であるのが好ましく、比表面積が700~1500m 2 /gである活性炭であるのがより好ましい。 上記活性炭の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、ペレット状、顆粒状、粉末状、球状粒子の形状であってよい。 上記接触工程で用いることができる活性炭は市販品であってもよい。 市販品として、例えば、カルゴン・カーボン・ジャパン社製のFiltrasorb (商標) 400、600、CAL、ダイアホープ(商標) 、ダイアソーブ(商標)など、水ing社製のエバダイヤシリーズなど、大阪ガスケミカル社製の白鷺シリーズなどが挙げられる。 用いられる活性炭の量は、上記組成物100重量部に対して0.01~5重量部であるのが好ましく、0.1~3重量部であるのがより好ましい。 活性炭接触工程における接触手段は、組成物の量および濃度などに従って適宜選択することができる、任意の接触手段であってよく、活性炭を充填した塔またはカラム等に通液してもよく、通常用いられる混合・撹拌手段なども用いることができる。 上記接触手段として、活性炭を充填した塔またはカラム等に通液する手段がより好ましい。 この場合は、粒状または球状粒子の活性炭を用いるのが好ましい。 ここで、活性炭の平均粒子径が0.1~5mmであるのが好ましく、0.5~2mmであるのがより好ましい。 通液する場合における通液時の線速度は、0.1~50m/hであるのが好ましく、1~20m/hであるのがさらに好ましい。 なお、上記平均粒子径は、50%粒径(D50,メジアン径)を意味する。 活性炭の平均粒子径は、例えば、JIS K1474(2014)に準拠したふるい分け方法によって測定することができる。 上記接触工程が混合・撹拌で行われた場合は、得られた接触混合相を、固相および液相に分離することによって、上記組成物中に含まれる不純物が少なくとも部分的に取り除かれることとなる。 分離手段は、組成物の量および濃度などに従って適宜選択することができる、任意の分離手段を用いることができる。 具体的な分離手段として、例えば、各種フィルターを用いたろ過、上澄み採取、デカンテーション、遠心分離、固液分離装置(例えばラバルセパレーターなど)を用いた分離手段などが挙げられる。 上記分離工程において、炭素数2~7の含フッ素有機酸は液相に存在し、上記炭素数3~50の有機化合物(例えば、炭素数8~50のカルボン酸およびその誘導体、炭素数8~50の炭化水素、炭素数6~50のフェノール、炭素数3~30のアルコール、炭素数8~50のポリエーテルなど)を含む不純物の少なくとも一部は固相に存在することとなる。 より具体的には、上記組成物および上記活性炭を接触させることによって、不純物の少なくとも一部が活性炭に吸着され、固相に存在することとなる。 これにより、不純物を少なくとも部分的に取り除くことができる。 上記工程は、炭素数2~7の含フッ素有機酸を含む組成物から、不純物を少なくとも部分的に取り除く手段として、極めて好適である。 例えば炭素数8以上の含フッ素有機酸を含む組成物に対して、活性炭を接触させると、炭素数8以上の含フッ素有機酸自体も活性炭に吸着されることとなる。 一方で、炭素数2~7の含フッ素有機酸は、通常用いられる活性炭に対する吸着性が低い。 従って、炭素数2~7の含フッ素有機酸を含む組成物に対して、活性炭を接触させることによって、組成物中に含まれる不純物を選択的かつ効率的に吸着し、取り除くことができるという利点がある。 なお、上記組成物を、活性炭を充填した塔またはカラム等に通液する場合は、活性炭を充填した塔またはカラムに上記組成物を注ぎ入れることによって、組成物および活性炭の接触が生じる、つまり接触混合相となる。 次いで組成物が流れ出ることによって、接触混合層が、固相および液相に分離されることとなる。 本発明においては、活性炭を充填した塔またはカラム等に組成物を通液する態様も、上記接触工程および分離工程を包含する処理方法に含まれるものとする。 言い換えれば、上記接触工程および分離工程は、同時進行で行われてもよい。 本発明において、上記凝集剤混合工程およびその後の分離工程、そして上記接触工程およびその後の分離工程は、それぞれ単独で行ってもよく、任意の順序で組み合わせて行ってもよい。 組み合わせて行う場合は、凝集剤混合工程およびその後の分離工程に次いで、接触工程およびその後の分離工程(第2分離工程)を行ってもよく、接触工程およびその後の分離工程に次いで、凝集剤混合工程およびその後の分離工程(第2分離工程)を行ってもよい。 凝集剤および活性炭混合工程、および分離工程 本発明における他の1態様として、 上記組成物、凝集剤および活性炭を混合する、凝集剤および活性炭混合工程、および、 上記混合工程で得られた混合相を、固相および液相に分離する、分離工程を包含する方法によって、炭素数2~7の含フッ素有機酸および不純物を含む組成物から不純物を少なくとも部分的に取り除く処理方法が挙げられる。 この態様は、上述した凝集剤混合工程および接触工程を一度に行い、次いで、得られた混合層を、固相および液相に分離することによって、不純物の少なくとも部分的に取り除く態様である。 この態様で用いられる凝集剤および活性炭の種類および量、そして混合工程および分離工程における各種手順などは、上述と同様にして行うことができる。 その他の工程など 本発明の方法においては、必要に応じて、上記混合工程後の分離工程および/または上記接触工程後の分離工程で得られた液相を洗浄してもよい。 この洗浄は、分離工程で得られた液相と無機酸とを混合して洗浄を行う、酸洗浄工程であるのが好ましい。 酸洗浄工程において用いることができる無機酸として、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの、強酸である無機酸が挙げられる。 無機酸として、硫酸を用いるのが好ましい。 洗浄工程は、例えば、無機酸を含む水溶液(例えば硫酸水溶液など)を用いる洗浄処理に、炭素数2~7の含フッ素有機酸を含む液相(水溶液)を付すことによって、行うことができる。 酸洗浄工程は、米国特許第6281374号および特開2006-501300号公報などに記載の公知の方法に準じて行うことができる。 酸洗浄工程によって、例えば、種々のイオン性成分(例えば、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、フッ素イオン)、無機酸および水溶性の高い有機酸成分(例えば硝酸、塩酸、シュウ酸、ギ酸など)などの少なくとも一部を取り除くことができる。 本発明の方法を用いることによって、炭素数2~7の含フッ素有機酸を含む組成物から、不純物を少なくとも部分的に取り除くことができる。 例えばフッ素ポリマーの重合反応において、乳化剤として用いられるフルオロカルボン酸を廃液などから回収して得られた組成物を、フッ素ポリマーの製造において再び乳化剤として使用した場合、重合反応が良好に進まないことがあることが判明した。 一方で、本発明の方法を用いることによって、炭素数2~7の含フッ素有機酸を含む組成物から、不純物を効果的に取り除くことができる。 その結果、上記のような炭素数2~7の含フッ素有機酸を含む組成物(回収組成物)であっても、重合反応での好適使用が可能となる利点がある。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。 実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。 実施例1 フッ素イオン1200ppm、パラフィン(炭素数20~40の直鎖アルカン)160ppmおよびCF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONaを16.0%含む水溶液100gに、Ca(OH) 2を0.1g添加して撹拌しながら10%硫酸を加え、pHを6~9に調整したところ、CaF 2の白色固体が生成し、沈殿した。 撹拌停止後、3時間静置して上澄み50mlをぬきとり、(i)パラフィンおよび(ii)CF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONa濃度の分析を行った。 (i)パラフィンの分析:有機溶剤を用いて水溶液からパラフィンを抽出し、FID検出器を備えたGC(ガスクロマトグラフィー)で分析し、パラフィン濃度を測定した。
(ii)CF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONa濃度の分析:対象液を1000倍に希釈し、HPLC分析を行った。
結果を表1に示す。 ガスクロマトグラフィー分析に用いた装置および分析条件は、以下の通りである。
ガスクロマトグラフ:Agirent6890 検出器:FID サンプル注入量:1μl スプリット比:1/20。
HPLC分析に用いた装置は以下の通りである。 HPLC本体:Waters製 Allianceセパレーションモジュール2695 検出器:Waters製 Waters2487検出器 実施例2 パラフィン40ppmおよびCF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONaを9.5%含む水溶液100gに、Ca(OH) 2を0.5g入れ、撹拌した。 撹拌停止後、ろ紙にCelite Corporation製セライトNo. 503を乗せた吸引ろ過器を使用しろ過を行い、ろ液を得た。 ろ液のパラフィンおよびCF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONa濃度の分析を行った。 結果を表1に示す。 実施例3 パラフィン160ppmおよびCF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONaを16.0%を含む水溶液100gに、日本活性白土(株)製のフロナイトDを1.0g添加して撹拌した。 撹拌停止後、3時間静置して上澄み50mlをぬきとり、パラフィンおよびCF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONa濃度の分析を行った。 結果を表1に示す。 実施例4 パラフィン40ppmおよびCF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONaを9.5%含む水溶液50gに、硫酸アルミニウム16水和物を0.1g入れ、撹拌した。 撹拌停止後、ろ紙にセライトを乗せた吸引ろ過器を使用しろ過を行い、ろ液を得た。 ろ液のパラフィンおよびCF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONa濃度の分析を行った。 結果を表1に示す。 実施例5 CF 3 (CF 2 ) 6 COONH 4を25%含む水溶液400gに、オクタノール0.2gおよび炭素数12~17の直鎖アルカン0.2gを加え撹拌した。 2時間撹拌後、炭素数12~17の直鎖アルカンが乳化した白濁水溶液が得られた。 上記の方法によって作成した、炭素数12~17の直鎖アルカン分散液500ppmおよびオクタノールを500ppm含む水溶液200gに、硫酸アルミニウム16水和物を0.4g入れ撹拌し、1N水酸化ナトリウム水溶液でpH6~9に調整した。 撹拌停止後、2時間静置し上澄みをとり、パラフィンおよびCF 3 (CF 2 ) 4 COONa濃度の分析を行った。 結果を表1に示す。 なお、得られた上澄み中に含まれるオクタノールの濃度についてGCにより濃度分析したところ、35ppmであった。 比較例1 パラフィン100ppmおよびCF 3 (CF 2 ) 6 COONaを9.1%含む水溶液100mlに、Ca(OH) 2を0.5g入れ、撹拌した。 撹拌停止後、3時間静置して上澄み50mlをぬきとり、パラフィンおよびCF 3 (CF 2 ) 6 COONa濃度の分析を行った。 結果を表1に示す。
*1 :実施例1~4および比較例1は、パラフィンの濃度を意味し、実施例5は直鎖アルカンの濃度を意味する。 実施例6 CF 3 (CF 2 ) 4 COONH 4を50%含む水溶液60gに、1-デカノール0.1gを加え撹拌した。 次にフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(以下DEHPと表記)0.03gを加え撹拌した後、水240gを加え撹拌し、白濁液を得た。 この白濁液の1-デカノール、DEHPのGC分析およびCF 3 (CF 2 ) 4 COONH 4濃度の分析を行った。 結果を表2に示す。 上記より得られた白濁液100gに、硫酸アルミニウム16水和物を0.2g入れ撹拌した。 続いて、撹拌しながら1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えpH6~9に調整したところ、水酸化アルミニウムが析出し沈殿した。 撹拌停止後、1時間静置し上澄みを採取し、前述と同じ方法で1-デカノール、DEHPのGC分析およびCF 3 (CF 2 ) 4 COONa濃度の分析を行った。 結果を表2に示す。 アルコールおよびフタル酸エステルの分析はパラフィンの分析と同様にして行った。 実施例7 CF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONH 4を50%含む水溶液60gに、DEHP0.03gを加え撹拌し、さらに水200gを加え撹拌し白濁液を得た。 白濁液のDEHPのGC分析およびカルボン酸濃度を分析した結果を表2に示す。 この白濁液100gに硫酸アルミニウム16水和物を0.2g入れ撹拌した。 続いて、撹拌しながら1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えpH6~9に調整した。 撹拌停止後、1時間静置し上澄みを採取しDEHPのGC分析およびCF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONH 4濃度の分析を行った。 結果を表2に示す。
実施例8 <乳化剤回収液の調製(組成物調製工程)> CF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONH 3を乳化剤として使用し、パラフィンの存在下でフッ素樹脂を重合し、重合後の樹脂分散液にポリオキシエチレンアルキルエーテル(炭素数12および14)とドデカノールの混合物を加えた後、ポリマーを凝集し、熱風乾燥器にてポリマーを乾燥させた。 この乾燥器の排気出口の空気をアルカリ水溶液で洗浄し乳化剤を回収し、逆浸透膜により濃縮した。 濃縮液中にはCF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONaが10%含まれていた。 この濃縮水溶液をパラフィンの分析と同様の方法でGC分析した結果、含まれる不純物の濃度はカルボン酸に対して1650ppm(GC面積比)であった。
<不純物除去操作> この濃縮液2000mlに、硫酸アルミニウム16水和物を2g入れ撹拌した。 次いで撹拌しながら水酸化ナトリウムを加えpH8.5に調整した。 ここにセライトを10g加え、ろ紙にセライトを乗せた吸引ろ過器でろ過を行い、ろ液を得た。 ろ液を前述と同様の方法でGC分析した結果、含まれる不純物の濃度はカルボン酸に対して100ppm(GC面積比)であった。 実施例9 実施例6で調製した白濁液100gに、活性炭(カルゴンカーボンジャパン製F-400)を1g加え1時間撹拌した。 撹拌停止後、1時間静置し上澄みを採取しDEHP、1-デカノールのGC分析およびCF 3 (CF 2 ) 4 COONH 4濃度の分析を行った。 結果を表3に示す。 アルコールおよびフタル酸エステルのGC分析は実施例6と同様にして行った。 実施例10 CF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONH 4を50%含む水溶液60gに、1-デカノール0.03gを加え撹拌した。 さらに純水を240g加え撹拌し、無色透明の溶液をえた。 この無色透明溶液100gに活性炭(カルゴンカーボンジャパン製F-400)を1g加え1時間撹拌した。 撹拌停止後、1時間静置し上澄みを採取し1-デカノールのGC分析およびCF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONH 4濃度の分析を行った。 結果を表3に示す。 比較例2 1-デカノール200ppmおよびCF 3 (CF 2 ) 6 COONH 4 10%を含む水溶液100mlに、活性炭(カルゴンカーボンジャパン製F-400)1gを加え、30分撹拌した。 撹拌停止後、0.2μmのフィルターでろ過し、得られたろ液についてヘキサデシルアルコールおよびCF 3 (CF 2 ) 6 COONH 4濃度の分析を行った。 結果を表3に示す。 実施例11 CF 3 (CF 2 ) 4 COONH 4を50%含む水溶液200gに、1-デカノール0.5gを加え撹拌した。 次にDEHP0.1gを加え撹拌した後、水800gを加え撹拌し、白濁液を得た。 この白濁液の1-デカノール、DEHPのGC分析およびCF 3 (CF 2 ) 4 COONH 4濃度の分析を行った。 結果を表2に示す。 白濁液1000mlに、硫酸アルミニウム16水和物を2g入れ撹拌した。 続いて、撹拌しながら1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えpH6~9に調整し、セライト10gを加え、ろ紙にセライトを乗せた吸引ろ過器を使用しろ過を行い、ろ液を得た。 活性炭(カルゴン・カーボン・ジャパン製F400)をカラムに充填し、先ほど得られたろ液を3時間かけて全量通液した。 通液後の液について1-デカノール、DEHPおよびCF 3 (CF 2 ) 4 COONH 4濃度の分析を行った。 結果を表3に示す。
実施例12 活性炭(カルゴン・カーボン・ジャパン製F400)をカラムに充填し、このカラムに実施例8で不純物除去操作をした液(不純物濃度100ppm)1000mlを3時間かけて通液した。 通液後の液に98%硫酸100gを加え撹拌後、分液漏斗に入れ静置し下層を抜き出し粗カルボン酸111gを得た。 粗カルボン酸(約10%含水)に10%硫酸70gを加え撹拌後、分液漏斗に入れて静置し下層(カルボン酸層)を抜き出した。 抜き出したカルボン酸に50%硫酸100gを加え、撹拌後、分液漏斗に入れ静置し、下層のカルボン酸層を抜き出し、カルボン酸層に、98%硫酸20gを加え撹拌した。 得られた脱水カルボン酸98gを5段のオールダーショーを備えた蒸留器のスチルに入れ、常圧でスチル温度を92℃に加熱した後、徐々に減圧度を下げ35mmHgにし、カルボン酸を留出させ、留出量が89gで蒸留を終了した。 蒸留時のスチル温度およびトップ温度はほぼ一定であった。 蒸留によって得られたカルボン酸をHPLCで分析したところ、カルボン酸の純度は99%以上、また、カルボン酸を前述と同様の方法でGC分析し、検出された不純物量はカルボン酸に対して0.5ppm(GC面積比)であった。 このカルボン酸80gをアンモニア水で中和し、水を加え濃度を調整し、50%のカルボン酸アンモニウム塩水溶液を166g得た。 実施例13 実施例8と同じ方法で調製した乳化剤回収液(カルボン酸濃度10.0%、不純物濃度1650ppm)100mlに、水酸化カルシウム0.5gおよびカラムクロマトグラフ用粉末活性炭(中性)2gを加え1時間撹拌した。 この液をセライトを乗せた1μmのフィルターを使用でろ過し、ろ液96gを得た。 ろ液のカルボン酸濃度および不純物のGC測定を行った。 処理後のカルボン酸濃度は9.1%であった。 不純物濃度はカルボン酸に対して0.4ppmであった。 実施例14 純水1000gに、CF 3 (CF 2 ) 4 COONa、CF 3 OCF(CF 3 )CF 2 OCF(CF 3 )COONa、CF 3 (CF 2 ) 6 COONaをそれぞれ約1g加え、HPLCでカルボン酸濃度を測定した。 この水溶液に凝集剤として硫酸鉄7水和物を15.9g加え撹拌した。 静置すると茶色の沈殿物が沈降した。 上澄みを0.2μmフィルターでろ過しHPLCで分析を行った。 結果を表4に示す。
本発明の方法によって、含フッ素有機酸を含む組成物から、不純物をより効果的に取り除くことができる。 本発明の方法によって、例えば回収により得られた含フッ素有機酸であっても、種々の使用(例えば重合反応など)において好適に用いることが可能となる。 |