【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、筆記具、化粧具などの軸や装飾パネル等といった装飾体に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、軸筒や板などの表面を傷つきにくくしたり、錆びにくくしたり、摩耗しにくくしたりする事を目的として表面処理が行われている。 この表面処理は、樹脂製や金属製の基材上に、透明又は着色樹脂層を形成する方法が多く知られている。 これは、基材より硬度の高い樹脂層を形成することで傷が着くことを防止したり、基材に直接水分や空気が触れることを防止することで錆の発生を防いだり、基材より耐摩耗性の良好な樹脂層を形成することで摩耗を防ぐという作用に基づくものである。 【0003】ところで、表面処理は、上記目的と異なった目的で行われることもある。 即ち、外観に高級感を付与し、商品価値を高めることを目的とした表面処理である。 このような表面処理は、筆記具、化粧具などの軸や装飾パネルのパネル部分に対する処理として行われている。 具体的な方法としては、塗装法、アルマイト法、めっき法などが挙げられる。 これらの表面処理方法において、外観の高級感を更に向上させる為に、色調の深み感の付与、及び、光沢の付与が行われている。 色調の深み感は、塗装法やアルマイト法による着色層上に平滑で着色されていない透明樹脂層を形成することにより付与し、表面の光沢は、塗装法やアルマイト法による着色層をバフ研磨する事により付与していた。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の方法により製造された装飾体は、用いる材料の組み合わせにより単一の色調しか得られなく、かつ色の深み感や光沢感を任意に選択ることはできなかった。 またルビ−、エメラルド、サファイヤ等の貴石の様な透明でしかも深みのある色調を得ることは不可能であった。 本発明は、色調の深み感及び光沢感が制御できる装飾体を提供することを課題とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、材料特有の光学特性を利用し、その光学特性の異なる材料を積層する事により色調の深み感および光沢感等の外観特性が制御できることを発見し本発明を完成させたものである。 即ち、本発明は、基材上に金属、金属コロイド又は金属化合物から選ばれる少なくとも1種類のものからなり、光が透過する層を形成し、その上に透明な樹脂層を形成した装飾体を要旨とするものである。 【0006】以下図面に基づき本発明を詳細に説明する。 図1は、本発明の装飾体の一例の断面模式図を示すものであって、参照符号1は基材である。 基材は、ガラス、石、陶磁器などのセラミックス、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(以下ABSと略記する)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(以下ASと略記する)、ポリプロピレン(以下PPと略記する)等の熱可塑性樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂といった非導電性材料や、表面に前記非導電性材料を被覆した金属・合金を用いることが出来る。 基材は、筆記具、化粧具などの軸や装飾パネル等といった装飾体に用いることが可能であれば、特に限定がない。 例えば、その形状は、どのようなものであっても良く、また、透明な材料であっても、不透明な材料であっても良く、更に、透明な材料に着色剤を添加して不透明化したものであっても良い。 【0007】参照符号2は、基材1上に形成された金属、金属コロイド又は金属化合物から選ばれる少なくとも1種類のものからなる層(以下、金属層と総称する) であり、その厚さは光が透過するものであることが必要である。 光が透過する厚さである理由は、光の反射、屈折、透過を制御するためである。 なお、金属層2は、基材1の全面に形成されていても、また、島(所々にすき間がある)状に形成されていても良い。 更に、金属層2 は、異なった材料を順次積層し形成しても何ら差し支えない。 金属層2を形成する金属としては、金・銀・パラジウム等の貴金属、チタン・クロム等の金属およびアルミニウム・ケイ素・インジウム・すず等の半導体金属などが挙げられ、金属コロイドとしては、前記金属のコロイド粒子が挙げられ、金属化合物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、インジウム・スズ合金酸化物などの金属酸化物、その他金属窒化物などが挙げられる。 これらの材料は、単独で用いても、複数混合して用いても良い。 金属層2の形成方法は、形成される金属層2の厚さが光を透過する厚さとなるよう調整できる方法であれば特に限定されるものではないが、具体的には、材料が金属の場合には、めっき法やスパッタリング、真空蒸着などの物理蒸着法がコストおよび形成し易さの点から好ましく、また、材料が金属コロイド又は金属化合物の場合には、金属コロイド又は金属化合物を分散した溶液中に基材を浸せきし、引き上げる方法(ディッピング法)やスプレーやコーターにより塗布(塗装法)する方法が好ましく用いられる。 【0008】参照符号3は、金属層2の上に形成された透明な樹脂層である。 透明な樹脂層3は、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、アルキド樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂などや、これらの変性樹脂および合成樹脂などの透明な樹脂を用いて形成するが、金属層2が基材1に対して島状に形成されている場合、金属層2だけでなく、基材1の上に形成されても本発明の範囲を逸脱するものではない。 また、透明な樹脂層3は、 要すれば、下側の金属層2が見えればよいのであるから、着色半透明であってもよい。 即ち、光の透過を妨げない範囲の量、染料や顔料を添加した樹脂を用いて透明な樹脂層3を形成しても良い。 透明な樹脂層3は、上記透明な樹脂を塗料化して刷毛を用いて塗布したり、スプレー法を用いて塗布したりした後、乾燥することによって形成することが出来るが、この方法以外、従来公知の方法を特に限定無く採用することが出来る。 なお、透明な樹脂層3の形成に当たっては、上記樹脂を塗料化したり、市販の塗料を用いたりすることができる。 【0009】本発明の装飾体は、基本的に金属層2と透明な樹脂層3との組み合わせでその効果を発現するものであるが、前記透明な樹脂層3の上に、更に、金属層と透明な樹脂層とを積層したものを積み上げても良い。 また1組目の金属層と透明な樹脂層及び2組目の金属層と透明な樹脂層の材料の組み合わせ内容は、異なっても何ら差し支えない。 【0010】 【作用】透明樹脂層に入射した光は、反射光と透過光に分離される。 透過光は、樹脂層に一部吸収されながら進行し金属層に到達する。 到達した光は、再び反射光と透過光に分離され、反射光は、樹脂層を透過して空気中に出るものと透明樹脂−空気界面で反射するものとに分かれる。 金属層を透過した光は、吸収をほとんど受けずに基材表面へ到達する。 基材表面に到達した光は、反射光と吸収光に分離され、反射光は、再び金属層に到達し、 反射光と透過光に分離される。 反射光は基材に到達し、 透過光は、透明樹脂−空気界面で反射光と空気中に出る光とに分離される。 そして、この空気中に出る光が我々の目に到達する。 これらの光の行路の変更および反射・ 屈折・透過現象の結果を我々は目で見ているのであり、 色調とその深み感、光沢感は、その結果得られるものである。 よって本発明によって得られる装飾体は、金属層を基材上に形成し、更にその上に透明な樹脂層を形成して、光の反射・屈折・透過・吸収現象を制御するようにしたため、任意の色調、色の深み感、光沢感が得られる。 【0011】 【実施例】以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。 実施例1 基材としてABSで成形された黒軸(φ10mm×50 mm)を用いた。 この基材上に金属層として金膜を真空蒸着法で形成した。 蒸着厚さは、青色の発色がある程度であった。 その後青色の染料(OIL BLUE 61 3,オリエント化学工業(株)製)を固形分に対して0.5%添加したクリアー塗料(S5005S、長島特殊塗料(株)製)をスプレーで塗装し、50℃,30分の条件で乾燥し、透明な樹脂層を形成し装飾体を得た。 この装飾体は、光沢感と深み感のあるサファイアブルーの軸体であった。 【0012】実施例2 基材としてABSで成形された黒軸(φ10mm×50 mm)を用いた。 この基材上に金属層として銀膜を真空蒸着法で形成した。 蒸着厚さは、黄色の発色がある程度であった。 その後青色の染料(OIL BLUE 61 3,オリエント化学工業(株)製)を固形分に対して0.5%添加したクリアー塗料(S5005S、長島特殊塗料(株)製)をスプレーで塗装し、50℃,30分の条件で乾燥し、透明な樹脂層を形成し装飾体を得た。 この装飾体は、光沢感と深み感のあるサファイアブルーの軸体であった。 【0013】実施例3 基材としてABSで成形された黒軸(φ10mm×50 mm)を用いた。 この基材上に金属層としてアルミニウム膜を真空蒸着法で形成した。 蒸着厚さは、スライドガラスに同条件で形成したときハーフミラー(即ち、半透明)になる程度であった。 その後青色の染料(OIL BLUE 613,オリエント化学工業(株)製)を固形分に対して0.5%添加したクリアー塗料(S500 5S、長島特殊塗料(株)製)をスプレーで塗装し、5 0℃,30分の条件で乾燥し、透明な樹脂層を形成し装飾体を得た。 この装飾体は、光沢感と深み感のある薄いブルーの軸体であった。 【0014】実施例4 基材としてABSで成形された黒軸(φ10mm×50 mm)を用いた。 この基材上にクリアー塗料(S500 5S、長島特殊塗料(株)製)をスプレーで塗装し、5 0℃,30分の条件で乾燥した。 その後金属層として金膜を真空蒸着法で形成した。 蒸着厚さは、銀色の発色がある程度であった。 次に後赤色の染料(OIL SCA RLET 308,オリエント化学工業(株)製)を固形分に対して0.5%添加したクリアー塗料(S500 5S、長島特殊塗料(株)製)をスプレーで塗装し、5 0℃,30分の条件で乾燥し、透明な樹脂層を形成し装飾体を得た。 この装飾体は、光沢感と深み感があるルビーレッドの軸体であった。 【0015】実施例5 基材として真鍮をプレス成形法によって成形した軸(φ 10mm×50mm)を用いた。 この基材に黒の塗料(MG1000,関西ペイント(株)製)を用いてスプレー塗装し、150℃,20分の条件で乾燥した。 その後、基材を金コロイドを含む水溶液(TCG−111, 戸田工業(株)製)に浸せきし、引き上げ、80℃、2 0分の条件で乾燥し金属層として金コロイド膜を形成した。 次に青色の染料(OIL BLUE 613,オリエント化学工業(株)製)を固形分に対して0.5%添加したクリアー塗料(S5005S、長島特殊塗料(株) 製)をスプレーで塗装し、50℃,30分の条件で乾燥し、透明な樹脂層を形成し装飾体を得た。 この装飾体は、光沢感と深み感のあるサファイアブルーの軸体であった。 【0016】実施例6 基材としてABSで成形された黒軸(φ10mm×50 mm)を用いた。 この基材をシリカコロイドを含む溶液中(IPA−ST,日産化学工業(株)製)浸せきし引き上げ80℃,20分の条件で乾燥し金属層としてシリカコロイド膜を形成した。 その後青色の染料(OIL BLUE 613,オリエント化学工業(株)製)を固形分に対して0.5%添加したクリアー塗料(S500 5S、長島特殊塗料(株)製)をスプレーで塗装し、5 0℃,30分の条件で乾燥し、透明な樹脂層を形成し装飾体を得た。 この装飾体は、光沢感と深み感のあるサファイアブルーの軸体であった。 【0017】実施例7 基材としてABSで成形された黒軸(φ10mm×50 mm)を用いた。 この基材をアルミナゾルを含む溶液中(520,日産化学工業(株)製)浸せきし引き上げ8 0℃,20分の条件で乾燥し金属層としてシリカコロイド膜を形成した。 その後青色の染料(OIL BLUE 613,オリエント化学工業(株)製)を固形分に対して0.5%添加したクリアー塗料(S5005S、長島特殊塗料(株)製)をスプレーで塗装し、50℃,30 分の条件で乾燥し、透明な樹脂層を形成し装飾体を得た。 この装飾体は、光沢感と深み感のあるサファイアブルーの軸体であった。 【0018】比較例1 基材としてABSで成形された黒軸(φ10mm×50 mm)を用いた。 この基材上に青色の染料(OIL B LUE 613,オリエント化学工業(株)製)を固形分に対して0.5%添加したクリアー塗料(S5005 S、長島特殊塗料(株)製)をスプレーで塗装し、50 ℃,30分の条件で乾燥し装飾体を得た。 この装飾体は、光沢感のある黒の軸体であった。 【0019】比較例2 基材としてABSで成形された黒軸(φ10mm×50 mm)を用いた。 この基材上にホットスタンプ箔を用いて全面に銀色の転写層を形成した。 その後青色の染料(OIL BLUE 613,オリエント化学工業(株) 製)を固形分に対して0.5%添加したクリアー塗料(S5005S、長島特殊塗料(株)製)をスプレーで塗装し、50℃,30分の条件で乾燥し装飾体を得た。 この装飾体は、鏡状の淡青色の軸体であった。 【0020】 【発明の効果】本発明に係る装飾体は、色調の深み感および光沢感を任意に選択でき、かつ貴石調の装飾体が得られる優れたものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】 装飾体の断面模式図である。 【符号の説明】 1 基材 2 金属層 3 透明な樹脂層 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 7識別記号 FI テーマコート゛(参考) B43K 3/00 B43K 3/00 N Fターム(参考) 4F100 AB01B AB24B AK01C AK25C AK41C AK53C AK74A AT00A BA03 BA07 BA10C CA13 CC00C DA16 DD31 EH66B GB71 GB90 HB00 JM02B JN01C JN21 |