新規発酵調味料組成物

申请号 JP2017529916 申请日 2016-07-21 公开(公告)号 JPWO2017014253A1 公开(公告)日 2018-05-10
申请人 テーブルマーク株式会社; 发明人 小川 真悟; 平沼 未来; 高野 靖子; 熊谷 健; 荒木 淳也; 高野 茂紀; 長澤 淳; 奥濱 英則; 佐野 博之;
摘要 加熱調理後、冷却され、冷蔵または冷凍される、冷蔵食品または冷凍食品における、素材感(具材特有の味および/または食感(テクスチャ)を鮮明に感じられることをいう。)、を改良する。畜肉等の軟化、豆乳の青臭味のマスキング、 植物 タンパク質臭のマスキング、香辛料の刺激感のエンハンス、カカオ風味向上、 牛 乳または豆乳の光劣化臭の抑制、乳感向上、味噌の穀物風味の向上、魚肉臭マスキング、畜肉臭マスキング、果実感向上、または納豆臭マスキングのための剤を提供することを課題とする。 乳清 または豆乳の、乳酸菌および 酵母 による発酵物(乳酸菌・酵母発酵物)による。好ましくは、乳清または豆乳の乳酸菌発酵物を酵母でさらに発酵して得られる、乳酸菌・酵母発酵物による。
权利要求

豆乳または乳清の、乳酸菌および酵母による発酵物(乳酸菌・酵母発酵物)を有効成分とする、食品の素材感改良、畜肉または魚肉の軟化、豆乳の青臭味マスキング、植物タンパク質臭マスキング、香辛料による刺激のエンハンス、カカオ風味向上、乳または豆乳の光劣化臭の抑制、乳感向上、味噌の穀物風味の向上、魚肉臭マスキング、畜肉臭マスキング、果実感向上、および納豆臭マスキングからなる群より選択されるいずれかのための、発酵調味料組成物。乳酸菌が、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ペディオコッカス・アシドラクティチ(Pediococcus acidlactici)、ラクトバチルス・コンフュサス(Lactobacillus confusus)、ラクトバチルス・メールファメンタス(Lactobacillus malefermentans)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、およびラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)からなる群より選択されるいずれかである、請求項1に記載の発酵調味料組成物。酵母が、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)、サッカロマイセス・ベティカス(Saccharomyces beticus)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)からなる群より選択されるいずれかである、請求項1または2に記載の発酵調味料組成物。豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を有効成分とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発酵調味料組成物。請求項1〜4のいずれか1項に定義された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を含む、食品。請求項1〜4のいずれか1項に定義された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を含む、加熱調理された、冷蔵食品または冷凍食品。乳酸菌・酵母発酵物を、乳清を原料とする乳酸菌・酵母発酵物である場合は固形分10.7%、豆乳を原料とする乳酸菌・酵母発酵物である場合は固形分6.5%の乳酸菌・酵母発酵物に換算して、0.1〜2.0%含む、請求項5に記載の食品、または請求項6に記載の冷蔵食品または冷凍食品。請求項1〜4のいずれか1項に定義された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を含む加熱調理された食品を、冷蔵または冷凍して冷蔵食品または冷凍食品を得る工程 を含む、冷蔵食品または冷凍食品の、製造方法、または 請求項1〜4のいずれか1項に定義された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を添加する工程 を含む、畜肉もしくは魚肉、豆乳、植物タンパク質、香辛料、カカオ由来原料、牛乳、味噌、トマトもしくは果実、または納豆を原料に含む食品の製造方法。請求項1〜4のいずれか1項に定義された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を含む加熱調理された食品を、冷蔵または冷凍して冷蔵食品または冷凍食品を得る工程 を含む、冷蔵食品または冷凍食品の、素材感の改良方法、または 請求項1〜4のいずれか1項に定義された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を添加する工程 を含む、畜肉もしくは魚肉の軟化、豆乳の青臭味マスキング、植物タンパク質臭マスキング、香辛料による刺激のエンハンス、カカオ風味向上、牛乳または豆乳の光劣化臭の抑制、乳感向上、味噌の穀物風味の向上、魚肉臭マスキング、畜肉臭マスキング、果実感向上、および納豆臭マスキングからなる群より選択されるいずれかのための方法。豆乳または乳清の乳酸菌発酵物を酵母でさらに発酵する工程 を含む、乳酸菌・酵母発酵物を有効成分とする、発酵調味料組成物の製造方法。有効成分が、乳酸菌・酵母発酵物の分子量に基づき分画された画分であって、下限の分子量が75〜1,800であり、上限の分子量が2,200〜10,000である画分を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発酵調味料組成物。豆乳または乳清の、乳酸菌・酵母発酵物の分子量500〜3,500の画分を含む、食品の素材感改良、畜肉もしくは魚肉の軟化、豆乳の青臭味マスキング、植物タンパク質臭マスキング、香辛料による刺激のエンハンス、カカオ風味向上、牛乳または豆乳の光劣化臭の抑制、乳感向上、味噌の穀物風味の向上、魚肉臭マスキング、畜肉臭マスキング、果実感向上、および納豆臭マスキングからなる群より選択されるいずれかのための剤。

说明书全文

本発明は、新規な発酵調味料組成物に関する。より詳細には、乳酸菌および酵母による発酵物を用いた、冷凍食品等における具材の素材感を改良するための発酵調味料組成物に関する。本発明は、食品製造等の分野で有用である。

冷凍焼売、冷凍餃子、冷凍春巻等の調理冷凍食品は、買い置き・保存ができ、調理中に生じる材料の廃棄部や無駄も生じず、短時間の調理で食卓や弁当のメニューを増やし、彩りを添えることが容易である等の利点がある。近年では、味や風味を優れたものとする観点からも種々の技術が用いられてきており、一般家庭を含む様々な場面で広く利用されてきている。

一方、食品の味や風味の向上を目的として、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、または穀類、果実、野菜もしくは乳製品等を主原料とする発酵調味料を添加することが行われている。発酵調味料に関し、乳清や豆乳を原料とするものが幾つか提案されている。乳清については、例えば、特許文献1および2は、乳清を乳酸菌により発酵させ、次いで酵母により発酵させて得られた清澄乳酸菌・酵母乳清発酵液を有効成分として含有することを特徴とする調味液風味改良剤、および果実飲料の風味増強剤を提案する。また特許文献3は、発酵乳からカードを除去して得られた発酵乳乳清に酵母発酵を行うことを特徴とする発酵乳乳清発酵液の製造法、および得られた発酵乳乳清発酵液を、飲料または調味料の発酵風味付与剤の有効成分として用いることを提案する。

乳清の発酵物に関しては、調味料としてではないが、特許文献4は、安全性が高く、医薬品、機能性食品、健康食品等として使用できるACEペプチドを高い割合で含む発酵乳および乳清を高回収率で効率的に得ることができる製造法として、(A)乳酸菌と乳を含む原料とを混合撹拌し混合原料を得る工程と、(B−1)カード細片と、アンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドを含む乳清とを生成させるように前記混合原料を撹拌下で発酵させる工程とを含み、カード細片と、アンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドを含む乳清とを含有する発酵乳を調製するアンジオテンシン変換酵素阻害ペプチド含有発酵乳の製造法を提案する。

豆乳に関しては、例えば、特許文献5は、大豆を磨砕して豆乳区分とオカラ区分に分離し、この豆乳区分とオカラ区分とを任意の割合で配合し、この配合により得た混合物を酵素処理して調味料を製造することを特徴とする大豆を用いた調味料の製造方法を提案する。なお豆乳ではないが、特許文献15は、大豆を食塩5重量%以下又は無塩の状態で真菌、酵母及び乳酸菌のいずれか1以上により発酵分解させた大豆発酵物を主成分とすることを特徴とする、食品の異味・異臭抑制組成物を提案する。

また調味料としてではないが、特許文献6は、青臭みや渋味がなく、さらに香味がよく、豆乳由来の風味を生かした豆乳発酵酒の製造方法として、酒類の製造工程において、発酵直前の醪が豆乳を含み、この醪に酵母または酵母と乳酸菌を添加して発酵させることを特徴とする豆乳発酵酒の製造方法を提案する。特許文献7は、大豆臭がなく、風味の良い万人向けの豆乳として、糖類を添加したまたはしない豆乳を乳酸菌及び酵母菌によりアルコール発酵及び乳酸発酵を行って得られた発酵豆乳に、菌の不活性化処理とアルコール並びに炭酸ガスの除去処理を行うことを特徴とする発酵豆乳の製造法を提案する。さらに特許文献8は、大豆又はその加工物を、乳酸菌と酵母菌とを共棲培養して発酵させた発酵物を有効成分とする免疫増強剤を提案する。

特開平7−75520号公報(特許第3333011号)

特開平7−75521号公報(特許第3343790号)

特開2004−236638号公報

国際公開WO00/41572

特開2003−24003号公報

特開昭59−169483号公報

特開平11−46685号公報

特開2003−335695号公報

特開平4−36167号公報

特開2007−319166号公報

特開2003−304836号公報

国際公開WO2010/126165

特開2002−281942号公報

特開2010−166886号公報

特開2007−129985号公報

特開2011−217646号公報

特開2012−175963号公報

特開2010−200635号公報

特開昭60−203174号公報

特開2011−4673号公報

国際公開WO2013/031571

特開2009−261385号公報

特開2006−61066号公報

特開2010−57434号公報

特開2015−216846号公報

特開2016−42818号公報

特開2009−297009号公報

特開2001−299267号公報

特開2015−43749号公報

特開2011−254762号公報

国際公開WO2011/074359

特開2010−233460号公報

特開2009−22266号公報

特開2007−97587号公報

特開2003−284528公報

特開2003−289836公報

冷凍・冷蔵食品には、様々な種類の素材が原料として使用される。例えば冷凍春巻には筍、椎茸、キャベツ、人参、豚肉等が使用されている。これらの具材は、加熱調理の際に味がこなれ、調和し、食品全体としての一体感が増す一方で、冷却し、低温で保存すると、各素材に特有の味や食感が大きく失われ、喫食時には口の中で各素材を判別しがたくなる。

一方、畜肉、魚肉またはそれらの加工品に対して、主として食感の改善が検討されている。中でも畜肉等の軟化に関する技術は、乳幼児食、病院食、介護食等において重要であり、アルカリ製剤を添加する方法(特許文献9)、タンパク質分解酵素を添加する方法(特許文献10)、焼き塩、糖アルコール、澱粉誘導体及び有機酸を添加する方法(特許文献11)、乳酸カルシウム、アミノ酸及び糖質を添加する方法(特許文献12)、アルギン酸エステルを添加する方法(特許文献13)などが知られている。 またアレルギーやカロリーの過剰摂取等の問題から、乳や畜肉等の代わりに豆乳や植物タンパク質を用いることが検討されているが、豆乳の青臭味や植物タンパク質の独特の臭いが懸念される。他方、香辛料等の香気をエンハンスする目的として、特定の酵母由来の酵母エキスを用いることが検討されている(特許文献14)。

さらに、チョコレートの味および風味の改善に関しては、乳清ミネラルを用いてチョコレート風味を強く感じられるようにすること(特許文献16)、グルタミン酸を豊富に含有し、かつ核酸類も多く含む酵母エキスを有効成分とする、チョコレート製品における食味改善剤(特許文献17)が検討されている。乳製品に関しては、1,3−オクタンジオール、5−オクテン−1,3−ジオール及びジメチルメトキシフラノンよりなる群から選ばれる化合物を有効成分として含有することを特徴とする、乳製品の光劣化臭のマスキング剤(特許文献18)、ルチン、モリンまたはケルセチンのうち1種または2種以上を添加することを特徴とする乳含有酸性飲料の製造法(特許文献19)が提案されている。濃厚なミルク感、牛乳様のコクや甘味に関しては、所定の酵母エキスを用いることによる濃厚なミルク感または乳のコクの増強(特許文献20、21)、食用植物油脂と酵母エキス粉末の混合物を粉末状態で加熱して調製されるミート様フレーバーを有する粉末調味料と酵母エキスを配合した、チーズ風味および/または乳感増強剤(特許文献22)、果汁と酵母エキスを混合して加熱した、乳製品の風味を改善するための調味料(特許文献23)、ビール醸造工程から回収された酵母に由来する、脱苦味乾燥酵母を主要成分とする乳入り食品用乳感増強剤(特許文献24)が検討されている。大豆を原料素材とする食品に関しては、豆乳のリパーゼ処理物からなる大豆風味付与剤が検討されている(特許文献25)。魚肉および畜肉を用いた食品に関しては、酒粕を、デンプン分解酵素処理およびタンパク分解酵素処理と平行して酵母で再発酵させる工程を経て得られたエキスを用いる、鰯や鶏肉の生臭みのマスキング(特許文献26)、豆乳を乳酸発酵させて得られる乳酸菌生成エキスによるサメ肉の臭気抑制(特許文献27)、魚介類のエキスを主原料にして麹で処理し、さらに乳酸菌および酵母を添加し、もろみを発酵熟成させて得られた、従来のエキスや魚醤油の不快臭が低減された醗酵調味料(特許文献28)が検討されている。また、大豆を含む原料を麹菌で発酵させた発酵分解物から得られる溶性多糖を有効成分として含有する、畜肉用消臭組成物(特許文献29)、牛肉からなる肉塊に、アルギニンを添加する工程を含む、畜臭がマスキングされた牛肉又は牛肉加工食品の製造方法(特許文献30)、全固形分に対して5質量%以上のアルギニンを含んでなる酵母エキス組成物による畜肉臭の抑制および/または先味の増強(特許文献31)、白麹清酒又は白麹みりんを畜肉又は魚介類に接触させることにより、アルデヒドの発生を抑制し、前記畜肉又は魚介類の不快臭を低減又はマスキングすることを特徴とする食材の処理方法(特許文献32)、アコニット酸の含有量は、1mg/リットル以上3000mg/リットル以下であるみりん類を煮汁に添加して畜肉を加熱調理することによる、畜肉のにおいを抑制しつつコク味を付与する方法(特許文献33)、ラクトン類及び/又はラクトン類含有物質を利用した、グラス臭が改善された牛肉または加工牛肉製品の製造方法(特許文献34)、所定量の5’−ヌクレオチド類、β−グルカン、マンナン、及びペプチドを含む酵母エキスを有効成分とする畜肉食品の肉色改善剤による獣臭のマスキング(特許文献35)が検討されている。果汁含有飲料に関しては、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有し、重合度が50以上であるグルカンを有効成分とする果汁感向上剤(特許文献36)が検討されている。

しかしながら、これらの目的で、乳清や豆乳を原料とする発酵調味料を用いることは検討されていない。

本発明者らは、清澄乳酸菌・酵母乳清発酵液について種々検討してきた(特許文献1、2参照)。その中で、乳清または豆乳の乳酸菌と酵母による発酵液が添加されて調理された冷凍食品においては、従来よりも具材の素材感が維持される傾向にあることを見出した。また乳清または豆乳の乳酸菌と酵母による発酵液が、畜肉等の軟化、豆乳の青臭味のマスキング、植物タンパク質臭のマスキング、香辛料の刺激感のエンハンスのためにも用い得ることを見出した。さらにはカカオ風味向上、牛乳または豆乳の光劣化臭の抑制、乳感向上、味噌の穀物風味の向上、魚肉臭マスキング、畜肉臭マスキング、果実感向上、および納豆臭マスキングのためにも用い得ることを見出した。これらの知見に基づき、本発明を完成させた。

すなわち本発明は、以下を提供する。 [1] 豆乳または乳清の、乳酸菌および酵母による発酵物(乳酸菌・酵母発酵物)を有効成分とする、食品の素材感改良、畜肉または魚肉の軟化、豆乳の青臭味マスキング、植物タンパク質臭マスキング、香辛料による刺激のエンハンス、カカオ風味向上、牛乳または豆乳の光劣化臭の抑制、乳感向上、味噌の穀物風味の向上、魚肉臭マスキング、畜肉臭マスキング、果実感向上、および納豆臭マスキングからなる群より選択されるいずれかのための、発酵調味料組成物。 [2] 乳酸菌が、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ペディオコッカス・アシドラクティチ(Pediococcus acidlactici)、ラクトバチルス・コンフュサス(Lactobacillus confusus)、ラクトバチルス・メールファメンタス(Lactobacillus malefermentans)ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、およびラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)からなる群より選択されるいずれかである、1に記載の発酵調味料組成物。 [3] 酵母が、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)、サッカロマイセス・ベティカス(Saccharomyces beticus)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)からなる群より選択されるいずれかである、1または2に記載の発酵調味料組成物。 [4] 豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を有効成分とする、1〜3のいずれか1項に記載の発酵調味料組成物。 [5] 1〜4のいずれか1項に定義された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を含む、食品。 [6] 1〜4のいずれか1項に定義された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を含む、加熱調理された、冷蔵食品または冷凍食品。 [7] 乳酸菌・酵母発酵物を、乳清を原料とする乳酸菌・酵母発酵物である場合は固形分10.7%、豆乳を原料とする乳酸菌・酵母発酵物である場合は固形分6.5% の乳酸菌・酵母発酵物に換算して、0.1〜2.0%含む、5に記載の食品、または6に記載の冷蔵食品または冷凍食品。 [8] 1〜4のいずれか1項に定義された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を含む加熱調理された食品を、冷蔵または冷凍して冷蔵食品または冷凍食品を得る工程 を含む、冷蔵食品または冷凍食品の、製造方法、または 1〜4のいずれか1項に定義された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を添加する工程 を含む、畜肉もしくは魚肉、豆乳、植物タンパク質、香辛料、カカオ由来原料、牛乳、味噌、トマトもしくは果実、または納豆を原料に含む食品の製造方法。 [9] 1〜4のいずれか1項に定義された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を含む加熱調理された食品を、冷蔵または冷凍して冷蔵食品または冷凍食品を得る工程 を含む、冷蔵食品または冷凍食品の、素材感の改良方法、または 1〜4のいずれか1項に定義された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を添加する工程 を含む、畜肉または魚肉の軟化、豆乳の青臭味マスキング、植物タンパク質臭マスキング、または香辛料による刺激のエンハンス、カカオ風味向上、牛乳または豆乳の光劣化臭の抑制、乳感向上、味噌の穀物風味の向上、魚肉臭マスキング、畜肉臭マスキング、果実感向上、および納豆臭マスキングからなる群より選択されるいずれかのための方法。 [10] 豆乳または乳清の乳酸菌発酵物を酵母でさらに発酵する工程 を含む、乳酸菌・酵母発酵物を有効成分とする、発酵調味料組成物の製造方法。 [11] 有効成分が、乳酸菌・酵母発酵物の分子量に基づき分画された画分であって、下限の分子量が75〜1,800であり、上限の分子量が2,200〜10,000である画分を含む、1〜4のいずれか1項に記載の発酵調味料組成物。 [12] 豆乳または乳清の、乳酸菌・酵母発酵物の分子量500〜3,500の画分を含む、食品の素材感改良、畜肉または魚肉の軟化、豆乳の青臭味マスキング、植物タンパク質臭マスキング、香辛料による刺激のエンハンス、カカオ風味向上、牛乳または豆乳の光劣化臭の抑制、乳感向上、味噌の穀物風味の向上、魚肉臭マスキング、畜肉臭マスキング、果実感向上、および納豆臭マスキングからなる群より選択されるいずれかのための剤。

[1’] 豆乳または乳清の、乳酸菌および酵母による発酵物(乳酸菌・酵母発酵物)の、食品の素材感改良、畜肉または魚肉の軟化、豆乳の青臭味マスキング、植物タンパク質臭マスキング、香辛料による刺激のエンハンス、カカオ風味向上、牛乳または豆乳の光劣化臭の抑制、乳感向上、味噌の穀物風味の向上、魚肉臭マスキング、畜肉臭マスキング、果実感向上、および納豆臭マスキングからなる群より選択されるいずれかのための、使用。 [2’] 乳酸菌が、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ペディオコッカス・アシドラクティチ(Pediococcus acidlactici)、ラクトバチルス・コンフュサス(Lactobacillus confusus)、ラクトバチルス・メールファメンタス(Lactobacillus malefermentans)ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、およびラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)からなる群より選択されるいずれかである、1’に記載の使用。 [3’] 酵母が、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)、サッカロマイセス・ベティカス(Saccharomyces beticus)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)からなる群より選択されるいずれかである、1’または2’に記載の使用。 [4’] 豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を有効成分とする、1’〜3’のいずれか1項に記載の使用。 [5’] 有効成分が、乳酸菌・酵母発酵物の分子量に基づき分画された画分であって、下限の分子量が75〜1,800であり、上限の分子量が2,200〜10,000である画分を含む、1’〜4’のいずれか1項に記載の使用。 [6’] 豆乳または乳清の、乳酸菌・酵母発酵物の分子量500〜3,500の画分の、食品の素材感改良、畜肉または魚肉の軟化、豆乳の青臭味マスキング、植物タンパク質臭マスキング、香辛料による刺激のエンハンス、カカオ風味向上、牛乳または豆乳の光劣化臭の抑制、乳感向上、味噌の穀物風味の向上、魚肉臭マスキング、畜肉臭マスキング、果実感向上、および納豆臭マスキングからなる群より選択されるいずれかのための使用。

乳清の乳酸菌・酵母発酵物を用いた春巻の評価結果(素材感)

乳清の乳酸菌・酵母発酵物を用いた春巻の評価結果(風味の好ましさ)

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いた春巻の評価結果(素材感)

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いた春巻の評価結果(風味の好ましさ)

乳清の乳酸菌・酵母発酵物を用いた中華丼の具の評価結果(素材感)

乳清の乳酸菌・酵母発酵物を用いた中華丼の具の評価結果(風味の好ましさ)

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いた中華丼の具の評価結果(素材感)

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いた中華丼の具の評価結果(風味の好ましさ)

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いた鶏の香味焼きの評価結果

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いた鶏の香味焼きの破断試験の結果

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いた豆乳の評価結果

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いた植物タンパク質を使用したハンバーグの評価結果

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いたお好み焼きソースの評価結果

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いたショコラショーの評価結果

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いたミルクチョコレートの評価結果

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いた牛乳の光劣化臭抑制効果の評価結果

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いた、豆乳の光劣化臭抑制効果の評価結果(素材感)

豆乳の乳酸菌・酵母発酵物を用いた、味噌の評価結果

%および部は、特に記載した場合を除き、質量を基準としている。数値範囲「X〜Y」は、特に記載した場合を除き、両端の値XおよびYを含む。「Aおよび/またはB」は、特に記載した場合を除き、A、Bのうち少なくとも一方が存在することを指し、AとBの双方が存在する場合も含む。食品は、固形のものみならず、飲料およびスープのような液状の経口摂取物も含む。また、そのまま摂取される形態のもの(例えば、調理済みの各種の食品、サプリメント、ドリンク剤)のみならず、食品添加物、発酵調味料組成物、飲料濃縮物も含む。さらに、ヒトのみならず、非ヒト動物(ペット、家畜等)のためのものも含む。食品はまた、一般食品(いわゆる健康食品を含む。)のほか、保健機能食品(機能性表示食品、栄養機能食品、および特定保健用食品を含む。)を含む。発酵物というとき、形態は特に限定されず、液状であってもよく、固体状であってもよい。発酵物は、有効成分として機能しうる限り、種々の処理を経たもの、例えば発酵液を殺菌、脱塩、濃縮、成分調整、清澄化、および/または乾燥したものであってもよい。

本発明は、乳清または豆乳の、乳酸菌および酵母による発酵物を有効成分とする、食品の素材感改良等のための、発酵調味料組成物に関する。本発明はまた、乳清または豆乳の乳酸菌発酵物を酵母でさらに発酵して得られる、乳酸菌・酵母発酵物を有効成分とする、食品の素材感改良等のための、発酵調味料組成物、およびその製造方法に関する。なお、乳酸菌および酵母による発酵物を、乳酸菌・酵母発酵物ということがある。

〔発酵原料〕 発酵調味料組成物の原料は、牛乳由来の全乳、乳清または豆乳であり、好ましくは牛乳由来の乳清または豆乳である。

使用できる乳清は、食品原料として用いることができるものであれば特に限定されない。乳清は、乳漿(にゅうしょう)と称されることもあり、牛乳から乳タンパク質の主成分であるカゼインと乳脂肪を取り除いたもので 、水溶性のタンパク質や乳糖、水溶性のビタミン類やミネラル分を含む水溶液状の部分である。牛乳からチーズを生産する際に副生物として生じるほか、ヨーグルトの上澄み液としても得られる。乳清は、乾燥粉末として市場に供給されており、本実施態様においてもそのような乾燥品を好適に用いることができる。発酵に供する乳清の固形分濃度は、乳酸菌による発酵が好適に進む限り特に限定されないが、乳清粉末として、発酵液中の出発濃度は、例えば5〜40%とすることができ、10〜25%とすることが好ましく、12〜18%とすることがより好ましい。

使用できる豆乳は、食品原料として用いることができるものであれば特に限定されない。好適に使用できる豆乳として、市販の種々のもの、例えば、成分無調整豆乳(大豆固形分8%以上)、調整豆乳(大豆固形分6%以上)、豆乳飲料(大豆固形分4%以上)、豆乳の乾燥粉末が挙げられる。発酵液の大豆固形分濃度は、乳酸菌による発酵が好適に進む限り特に限定されないが、発酵液中の大豆固形分濃度は、例えば2〜25%とすることができ、5〜20%とすることが好ましい。

発酵に用いる乳清および豆乳は、発酵に供する前に雑菌汚染を防止するため、加熱殺菌してもよい。加熱殺菌の条件は、例えば80〜90℃、30〜60分である。

〔乳酸菌発酵〕 乳清または豆乳液の発酵に際しては、乳酸菌による発酵と酵母に拠る発酵との順は、適宜とし得るが、好ましい実施態様の一つにおいては、まず乳酸菌による発酵が先に行われる。嫌気性の乳酸菌による発酵と、後述するように通気しながら行う酵母による発酵とは、この順で順次行うことにより、例えば乳酸菌によりpH低下しても酵母は酸性に強いため生育することができる等、それぞれの菌に対して好適な条件を与えることができる。また、それにより、発酵工程全体が短時間で終了できる。さらに、酵母由来の香気成分を十分に活かすことができる。

用いる乳酸菌は、食品製造のために使用できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ペディオコッカス・アシドラクティチ(Pediococcus acidlactici)、ラクトバチルス・コンフュサス(Lactobacillus confusus)、ラクトバチルス・メールファメンタス(Lactobacillus malefermentans)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、およびラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)等からなる群より選択されるいずれかを用いることができる。好ましくは、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ペディオコッカス・アシドラクティチ(Pediococcus acidlactici)、ラクトバチルス・コンフュサス(Lactobacillus confusus)、ラクトバチルス・メールファメンタス(Lactobacillus malefermentans)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、およびラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)からなる群より選択される乳酸菌であり、より好ましくは、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)またはペディオコッカス・アシドラクティチ(Pediococcus acidlactici)のいずれかである。増殖性が良好であり、発酵風味も優れているとの観点からは、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)を用いることが好ましい。

好ましい実施態様においては、乳酸菌としては、ラクトバチルス・ラムノサスAN1株もしくはそれと同じ種に属し、かつ同じ科学的性質を有する菌株、またはペディオコッカス・アシドラクティチYU2株、もしくはそれと同じ種に属し、かつ同じ科学的性質を有する菌株を用いることができる。

ラクトバチルス・ラムノサスAN1株は、以下の科学的性質を有する。 細胞形態:桿状 コロニー:クリーム色 特徴:ヘテロ乳酸発酵を行う。

ペディオコッカス・アシドラクティチYU2株は、以下の科学的性質を有する。 細胞形態:球状 コロニー:クリーム色 特徴:四連球菌、ホモ乳酸発酵を行う。

ラクトバチルス・ラムノサスAN1株、およびペディオコッカス・アシドラクティチYU2株は、それぞれ順に、受託番号NITE BP-02072、およびNITE BP-02073として、2015年6月26日付けで、テーブルマーク株式会社(住所:日本国東京都中央区築地6-4-10)により、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)へ、ブタペスト条約および日本国特許法に基づき、寄託された。

乳酸菌による発酵のための条件は、当業者であれば、用いる乳酸菌に応じ、適宜設計することができる。培養液には、乳清または豆乳以外に、種々のものを添加してよい。炭素源として、例えば、サトウキビ廃糖蜜、ビート廃糖蜜、蔗糖、木材チップ蒸解液、亜硫酸パルプ廃液、サトウキビ抽出液、グルコース、酢酸、およびエタノールからなる群より選択されるいずれかを用いることができる。窒素源として、例えば、酵母エキス、ペプトン、コーンスティプリカー(CSL)、カゼイン等の含窒素有機物、ならびに尿素、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、およびリン酸アンモニウム等の無機塩からなる群より選択されるいずれかを用いることができる。さらに、リン酸成分、カリウム成分、マグネシウム成分を培地に添加してもよく、ビオチン、パントテン酸、チアミン、イノシトール、ピリドキシン等のビタミン類、亜鉛、銅、鉄、マンガン等のミネラル類を添加してもよい。乳酸菌発酵は、使用菌株にもよるが、例えば30〜45℃、好ましくは35〜40℃で、例えば16〜48時間、好ましくは20〜36時間行うことができる。発酵は、乳酸菌が嫌気性であることを考慮して、静置または弱い攪拌を行いながら、実施することができる。発酵はまた、pHが3.0〜4.0、好ましくは3.2〜3.8の範囲となるまで行うことができる。

〔酵母発酵〕 好ましい実施態様の一つにおいては、このようにして得られた乳酸菌発酵物に対して、逐次の工程として酵母発酵を行うことができる。

酵母発酵に用いられる酵母は、食品製造のために用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、酒酵母、ワイン酵母、ビール酵母等の慣用されている酵母を用いることができる。より具体的には、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Shizosaccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属、ウィリオプシス(Williopsis)属、デバリオマイセス(Debaryomyces)属、ガラクトマイセス(Galactomyces)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、およびジゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属からなる群より選択されるいずれかである。酵母は、増殖性が良好であることから、パン製造に用いられているパン酵母、食料や飼料等の製造に用いられているトルラ酵母、ビール製造に用いられているビール酵母であることが好ましく、サッカロマイセス(Saccharomyces)に属する菌やキャンディダ(Candida)に属する菌であることがより好ましい。サッカロマイセス属の例として、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)、サッカロマイセス・ベティカス(Saccharomyces beticus)が挙げられる。なお、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)とサッカロマイセス・ベティカス(Saccharomyces beticus)は、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の一種として分類される場合もある。キャンディダ属の例として、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・リポリティカ(Candida lypolitica)、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)、キャンディダ・サケ(Candida sake)が挙げられる。より好ましくは、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等からなる群より選択されるいずれかである。特に好ましい酵母の一つは、サッカロマイセス・セレビジエの一種ともされる、サッカロマイセス・ベティカス(Saccharomyces beticus)であり、主としてシェリー酒の製造に用いられる産膜酵母が挙げられる。

好ましい実施態様においては、酵母としては、サッカロマイセス・セレビジエFAHP−1株もしくはそれと同じ種に属し、かつ同じ科学的性質を有する菌株、またはサッカロマイセス・セレビジエFAHP−2株、もしくはそれと同じ種に属し、かつ同じ科学的性質を有する菌株を用いることができる。

サッカロマイセス・セレビジエFAHP−1株は、以下の科学的性質を有する。 細胞形態:卵型 コロニー:クリーム色 特徴:発酵能を有する、子嚢胞子をつくる。

サッカロマイセス・セレビジエFAHP−2株は、以下の科学的性質を有する。 細胞形態:卵型 コロニー:クリーム色 特徴:発酵能を有する、子嚢胞子をつくる。

サッカロマイセス・セレビジエFAHP−1株、およびサッカロマイセス・セレビジエFAHP−2株は、それぞれ順に、受託番号NITE BP-02074、およびNITE BP-02075として、2015年6月26日付けで、テーブルマーク株式会社(住所:日本国東京都中央区築地6-4-10)により、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)へ、ブタペスト条約および日本国特許法に基づき、寄託された。

酵母による発酵のための条件は、当業者であれば、用いる酵母に応じ、適宜設計することができる。培養に際しては、乳酸菌発酵物を滅菌してもよい。さらに乳酸菌発酵物には、種々のものを添加してよい。炭素源として、例えば、サトウキビ廃糖蜜、ビート廃糖蜜、蔗糖、木材チップ蒸解液、亜硫酸パルプ廃液、サトウキビ抽出液、グルコース、酢酸、およびエタノールからなる群より選択されるいずれかを用いることができる。窒素源として、例えば、酵母エキス、ペプトン、コーンスティプリカー(CSL)、カゼイン等の含窒素有機物、ならびに尿素、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、およびリン酸アンモニウム等の無機塩からなる群より選択されるいずれかを用いることができる。さらに、リン酸成分、カリウム成分、マグネシウム成分を培地に添加してもよく、ビオチン、パントテン酸、チアミン、イノシトール、ピリドキシン等のビタミン類、亜鉛、銅、鉄、マンガン等のミネラル類を添加してもよい。

酵母発酵は、使用菌株にもよるが、例えば20〜40℃、好ましくは25〜35℃で、例えば12〜40時間、好ましくは16〜24時間行うことができる。発酵は、好気条件下で行う。必要に応じ、酵母発酵上十分な通気および/または攪拌を行いながら実施することができる。通気および/または攪拌は、具体的には、1分間当たり発酵液体積の約1/4量から同量の無菌エアーを発酵槽底部に吹き込み、100〜400rpmで攪拌することにより行うことができる。尚、酒類の製造工程においては、通常、嫌気条件下で発酵を行うため、酵母は多量のエタノールを生成する。しかし本実施態様では、好気条件下で発酵を行うため、発酵中のエタノール濃度は低く保たれ、酵母はエステルや脂肪酸、高級アルコール等の各種香気成分を多く生成しうる。酵母発酵過程および発酵終了後における発酵液中のアルコール濃度は、1.0%未満であることが好ましい。

酵母発酵の終点は、当業者であれば適宜決定しうるが、例えば、発酵の進行にしたがい減少するBrix値の減少の停止、Brix値、および香気等を基準とすることができる。Brix値を基準とする場合、豆乳を原料とするときは5〜9%、好ましくは6〜8%、乳清を原料とするときは9〜13%、好ましくは10〜12%を基準とすることができる。ここでいうBrix値は、液状の発酵物から、乳清または豆乳由来の不溶性の固形分や乳酸菌菌体、および酵母の菌体を除いたものについての値である。発酵物が加塩された場合は、その加えられた塩分部分の値は含まない。

なお Brix値は20℃のショ糖溶液の質量百分率に相当する値で定められたもので、ショ糖1gのみを溶質として含む水溶液100 gをBrix屈折計で測定したときその示度 Brix 値が1%である。ショ糖以外の固形成分を含む溶液では、Brix値は固形成分の濃度の目安になる。Brix値を測定するための機器は市販されており、当業者であれば適宜測定しうる。

〔他の工程〕 得られた乳酸菌・酵母発酵物は、保存安定性を高める目的で食塩を添加してもよい。食塩の添加量は、特に限定されるものではないが、水分活性を充分に下げるため、乳酸菌・酵母発酵液に対して、例えば10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは18%以上となるように添加することができる。さらに、得られた乳酸菌・酵母発酵物は、乳清または豆乳由来の不溶性の固形分や乳酸菌菌体、および酵母の菌体を含んでいるので、清澄性が求められる商品に使用したい場合は、清澄化処理を行い、これらの不溶性成分や菌体の除去をおこなってもよい。清澄化の手段は、同様の目的で食品の製造分野で用いられる種々の手段を適用することができる。例えば、珪藻土やパーライトを濾過助剤としたフィルタープレス濾過、または精密濾過(MF:Micro filtration)が挙げられる。

〔乳酸菌・酵母発酵物(有効成分)〕 このようにして、原料の乳清または豆乳から、乳酸菌・酵母発酵物が得られる。 乳酸菌・酵母発酵物は、乳酸菌発酵および酵母発酵を経て得られたものから乳清または豆乳由来の不溶性の固形分や乳酸菌菌体、および酵母の菌体を除いた液状のものとしては、Brixは、乳清を原料とするときは9〜13%、好ましくは10〜12%、豆乳を原料とする場合は、5〜9%、好ましくは6〜8%であり得る。

乳酸菌・酵母発酵物は、種々の形態であり得る。例えば、上記の液状のものを、必要に応じ、濃縮または乾燥等し、ペースト状、固形状、粉末状、顆粒状等とすることができる。乳酸菌・酵母発酵物は、W(double)発酵調味料と称されることもあり、また単に発酵調味料、等と称されることもある。

本発明者らのさらなる検討によると、乳清または豆乳の乳酸菌・酵母発酵物において、分子量100〜5,000の画分、より特定すると分子量500〜3,500の画分に含まれる成分が、目的の効果に貢献していることが分かった。したがって、本発明により、有効成分が、乳酸菌・酵母発酵物の分子量に基づき分画された画分であって、下限の分子量が75〜1800であり、好ましくは100〜500であり、下限がいずれの場合であっても上限の分子量が2200〜10000であり、好ましくは3500〜5000である画分(例えば分子量500〜3500の画分、または分子量100〜5000の画分)を含む、発酵調味料組成物が提供される。また、乳清または豆乳の乳酸菌・酵母発酵物の、分子量に基づき分画された画分であって、下限の分子量が75〜1800であり、好ましくは100〜500であり、下限がいずれの場合であっても上限の分子量が2200〜10000であり、好ましくは3500〜5000である画分(例えば分子量500〜3500の画分、または分子量100〜5000の画分)を含む、食品の素材感改良剤が提供される。

本発明およびその実施態様に関し、分子量をいうときは、分子分画能を有する透析チューブを用いて分画される分子量を指す。乳清または豆乳の、乳酸菌・酵母発酵物の分子量500〜3,500の画分(分子量100〜5,000の画分であってもよい。)は、典型的には、少なくとも分画分子量3500〜5000の透析チューブ(スペクトラ/ポア、フナコシ)および分画分子量100〜500の透析チューブ(スペクトラ/ポア、フナコシ)を用い、通常の操作(より特定すると、本明細書の実施例8の項に記載された条件)によって分画して得られる画分を指す。なおここで挙げた透析チューブの分画分子量(Molecular Weight Cut Off:MWCO) は、その大きさの成分が90%以上保持されることを示す。

本発明の実施態様の一つである、豆乳を原料とする乳酸菌・酵母発酵物、好ましくは豆乳の乳酸菌発酵物を酵母でさらに発酵して得られる乳酸菌・酵母発酵物は、新規なものである。

〔発酵調味料組成物〕 得られた乳酸菌・酵母発酵物は、発酵調味料組成物の有効成分とすることができる。発酵調味料組成物は、乳酸菌・酵母発酵物そのものでもよく、有効成分が目的の効果を発揮しうる限り、他の成分を配合することができる。他の成分は、食品として許容される種々の添加剤、であり得る。この例には、酸化防止剤(抗酸化剤)、香料、調味料、甘味料、着色料、増粘安定剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料等、酵素、光沢剤、酸味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、賦形剤、結合剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、凝固剤等である。発酵調味料組成物中の有効成分の量は、例えば1〜100%であり、10〜80%とすることができ、20〜60%としてもよい。

発酵調味料組成物は、後述するように、食品の素材感改良、畜肉等の軟化、豆乳の青臭味のマスキング、植物タンパク質臭のマスキング、または香辛料の刺激感のエンハンスのために用いるのに特に適しており、そのため発酵調味料組成物は、「食品の素材感改良剤」、「畜肉等の軟化剤」、「豆乳の青臭味のマスキング剤」、「植物タンパク質臭のマスキング剤」、「香辛料の刺激感のエンハンス剤」、「カカオ風味向上剤」、「牛乳または豆乳の光劣化臭の抑制剤」、「乳感向上剤」、「味噌の穀物風味の向上剤」、「魚肉臭マスキング剤」、「畜肉臭マスキング剤」、「果実感向上剤」、および「納豆臭マスキング剤」と言い換えることもできる。すなわち、本発明は、以下も提供する。 [1a] 乳清または豆乳の、乳酸菌・酵母発酵物を有効成分とする、食品の素材感改良剤、畜肉等の軟化剤、豆乳の青臭味のマスキング剤、植物タンパク質臭のマスキング剤、香辛料の刺激感のエンハンス剤、カカオ風味向上剤、牛乳または豆乳の光劣化臭の抑制剤、乳感向上剤、味噌の穀物風味の向上剤、魚肉臭マスキング剤、畜肉臭マスキング剤、果実感向上剤、または納豆臭マスキング剤。 [2a] 乳酸菌が、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ペディオコッカス・アシドラクティチ(Pediococcus acidlactici)、ラクトバチルス・コンフュサス(Lactobacillus confusus)、ラクトバチルス・メールファメンタス(Lactobacillus malefermentans)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、およびラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)からなる群より選択されるいずれかである、1aに記載の剤。 [3a] 酵母が、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake) 、サッカロマイセス・ベティカス(Saccharomyces beticus)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)からなる群より選択されるいずれかである、1aまたは2aに記載の剤。 [4a] 豆乳の乳酸菌発酵物を酵母でさらに発酵して得られる乳酸菌・酵母発酵物を有効成分とする、1a〜3aのいずれか1項に記載の剤。

〔用途〕 <素材感改良> 得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、食品の素材感改良のために用いることができる。素材感とは、食品に含まれる具材が、具材特有の味および/または食感(テクスチャ)を鮮明に感じられることをいう。食品には、種々の具材が含まれるが、具材は、加熱調理の際に互いに調和し、こなれ、食品全体としての一体感が増す。これは、調和のとれた味やまろやかさとして好ましく感じる一方で、加熱調理された食品を冷却し、低温で保存すると、一体感やこなれ感が意図しない程度にまで増す。各素材に特有の味や食感が大きく失われ、喫食時には口の中で各素材を判別しがたくなる。本発明者らの検討によると、乳酸菌・酵母発酵物の添加により、加熱調理後、冷却され、冷蔵または冷凍で保存される食品においても、従来よりも具材の素材感を維持させることができる。したがって、本発明の一態様は、得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する、食品の素材感の改良剤である。

<畜肉等軟化> 得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、食材となる畜肉または魚肉(それらを原料とする加工品を含む。魚肉は魚介類の肉を含む。これらを総称して「畜肉等」ということもある。)を軟化させるために用いることができる。したがって、本発明の一態様は、得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する畜肉等の軟化剤である。

本発明の軟化剤は、ピックル液等の調味液に含有させ、畜肉等にインジェクション(注射)して用いてもよい。あるいは、畜肉等を、本発明の軟化剤を含有する漬け込み液に漬け込むことによって用いてもよい。あるいは、例えばハンバーグ等の食品に含有させてもよい。

本発明の軟化剤を用いることにより、畜肉等は、柔らかさだけではなくジューシー感も向上されうる。ここでいうジューシー感とは、喫食時において畜肉等を噛んだときに口中に感じられる肉汁感をいう。

<豆乳青臭味マスキング> 得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物はさらに、豆乳(それを原料とする加工品を含む。)の青臭味を抑制するためにも用いることができる。したがって、本発明の一態様は、乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する、豆乳の青臭味のマスキング剤である。本発明の青臭味マスキングの対象は、豆乳に限られず、豆乳を原料とする加工品、例えば、豆乳クリームであってもよい。

本発明のマスキング剤を用いることにより、豆乳は、青臭味のマスキングだけではなく、甘味、まろやかさ、味の厚みにおいても向上されうる。

<植物タンパク質臭マスキング> 植物タンパク質、特に大豆タンパク質(それを原料とする加工品を含む。)は独特の酸化臭を有しているが、得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、このような植物タンパク質臭(「植物タンパク臭」ということもある。)を抑制するために用いることができる。したがって、本発明の一態様は、乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する、植物タンパク質臭のマスキング剤である。

本発明の乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、味や風味が非常に薄いため、素材の味や風味を活かしつつ、植物タンパク質臭をマスキングすることができる。

本発明のマスキング剤を用いることにより、植物タンパク質は、酸化臭のマスキングだけではなく、柔らかさ、ジューシーさ、肉感においても向上されうる。

<香辛料の刺激感のエンハンス> 得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、料理や調味液などに含まれる香辛料(それを原料とする加工品を含む。)をエンハンスするために用いることができる。すなわち、本発明の乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を、香辛料を含有する調味液や各種ソースに添加することにより、喫食時に香辛料の刺激をより強く感じさせ、かつ、長く保持させることができる。したがって、本発明の一態様は、乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する、香辛料の刺激感(「香辛料感」ということもある。)のエンハンス剤である。

香辛料とは、食品に加えることにより、味、香り、色、コク、熟成感または刺激感(辛味)に変化をもたらし、おいしく感じさせたり食欲を増進させたりする効果があるものを指す。限定されるものではないが、本発明により刺激感がエンハンスされる香辛料として、ブラックペッパー、レッドペッパー、グリーンペッパー、コショウ、シナモン、ナツメグ、クローブ、オールスパイス、クミン、チンピ、コリアンダー、アニス、セージ、タイム、ローレル、オレガノ、カレーリーフ、サフラン、サンショウ、唐辛子、マスタード、しょうが、にんにく、パプリカ、玉葱、ネギ、ゴマ、五香粉、ガラムマサラ、カレー粉、七味唐辛子、チリパウダー等が挙げられる。

本発明のエンハンス剤を用いることにより、香辛料は、刺激感がエンハンスされるだけではなく、熟成感、コク、後味をひくことにおいても向上されうる。

<カカオ風味向上> 得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、カカオ由来原料を含有する食品において、カカオの風味を向上させるために用いることができる。すなわち、本発明の乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を、カカオ由来原料を含有する食品に添加することにより、喫食時にカカオの風味をより強く感じさせることができる。したがって、本発明の一態様は、乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する、カカオ由来原料を含有する食品における、カカオ風味向上剤である。カカオ風味は、チョコレートの風味(カカオ風味、ビター風味、ミルク風味)の一つとしても知られている。

限定されるものではないが、カカオ由来原料として、カカオニブ、カカオマス、カカオリカー、ココアパウダー、ココアケーキ、ココアバター、チョコレート等が挙げられる。

<光劣化臭の抑制> 得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物はさらに、牛乳(それを原料とする加工品を含む。)もしくは豆乳(それを原料とする加工品を含む。)の光劣化臭の抑制のためにも用いることができる。光劣化臭は、太陽光等による酸化により生じる臭いをいう。光劣化臭抑制は、光による酸化劣化の抑制であってもよく、また光劣化により生じた臭いのマスキングであってもよい。本発明の一態様は、乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する、牛乳または豆乳の光劣化臭抑制剤である。

<乳感の向上> 得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、乳感を向上させるために用いることができる。すなわち、本発明の乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を、牛乳(それを原料とする加工品を含む。)を用いた食品に添加することにより、喫食時に乳感をより強く感じさせることができる。したがって、本発明の一態様は、乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する乳感向上剤である。乳感の向上とは、ミルク特有の好ましい風味を向上させることをいう。

限定されるものではないが、乳感向上の対象となる食品は、牛乳または乳製品自体、およびそれを原料として用いた食品である。

<味噌の穀物風味の向上> 得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、味噌の穀物風味(大豆風味、米風味、または麦風味)を向上させるために用いることができる。すなわち、本発明の乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を、味噌を含有する食品に添加することにより、喫食時に味噌の穀物風味をより強く感じさせることができる。したがって、本発明の一態様は、乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する味噌の穀物風味向上剤である。

味噌としては、限定されるものではないが、白味噌、赤味噌、合わせ味噌、米味噌(大豆と米を発酵・熟成させたもの)、麦味噌(大豆と大麦またははだか麦を発酵・熟成させたもの)、豆味噌(大豆を発酵・熟成させたもの)、調合味噌(米味噌、麦味噌、豆味噌の各味噌を混合したもの)等が挙げられる。好ましい例は、白味噌、および合わせ味噌である。一般に加熱殺菌された味噌やフリーズドライされた味噌、例えば即席味噌汁用の調味味噌では、味噌の風味が劣化する傾向がみられるが、本発明の乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、このような味噌における穀物風味の向上にも好ましく使用することができる。本発明の味噌の穀物風味向上剤は、味噌を含有するさまざまな食品に適用することができる。

本発明の味噌の穀物風味の向上剤を用いることにより、味噌は、穀物風味が向上されるだけではなく、甘味および/または旨味においても向上されうる。

<魚肉臭マスキング> 得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物はさらに、魚肉臭抑制するためにも用いることができる。本発明の一態様は、乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する魚肉臭抑制剤である。魚肉臭は、生魚の不快な臭い(生臭み)、および加熱された魚がもつ特有の臭い(魚臭)を含む。

魚肉臭抑制の対象となる食品は、魚肉そのものに限られず、魚肉を原料として用いた加工品、それらを用いた食品であってもよい。

<畜肉臭マスキング> 得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物はさらに、畜肉臭を抑制するためにも用いることができる。畜肉臭は、内臓臭(もつ臭)、グラス臭、および獣臭を含む。グラス臭とは、牧草肥育している牛から得られた牛肉に特有の草の青臭い臭いをいう。本発明の一態様は、乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する畜肉臭抑制剤である。

本発明の畜肉臭抑制剤の対象は、畜肉に限られず、それを原料とする加工品や、それらを原料とする食品であってもよい。なお、前掲特許文献30は、アルギニンによる蓄肉の不快臭低減を提案するが、前掲特許文献29中では、アルギニン自体が苦味を呈することから、蓄肉にも苦味が付くという問題が指摘されている。本発明によれば、本発明の有効成分を有効量用いたとしても、このような問題はないと考えられる。

<果実感の向上> 得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、トマトまたは果実(それらを原料とする食品を含む。)の、果実感を向上させるために用いることができる。果実感の向上とは、トマト(または果実)らしい好ましい風味を向上させることをいう。本発明の一態様は、乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する果実由来食品の果実感向上剤である。

対象となる食品の特に好ましい例は、長時間の煮込み加熱により調理されるものである。本発明により、このような煮込み加熱調理する食品であっても、果実感を向上させることができる。

本発明により、トマトまたは果実の果実感が向上されるだけではなく、酸味においても向上されうる。一般に、酸味だけが強まると食品の味としては好ましくない傾向にあるが、本発明による場合のように、トマトまたは果実において果実感とともに酸味が向上されるときは、味全体として好ましいものとなる。

<納豆臭マスキング> 得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物はさらに、納豆(それを原料とする加工品を含む。)の納豆臭を抑制するためにも用いることができる。本発明の一態様は、乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物を有効成分として含有する納豆の納豆臭抑制剤である。

納豆臭を抑制するために用いる場合、乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、納豆に直接添加してもよく、また納豆のたれに含有させ、喫食時に納豆と混合されるように用いてもよい。

<評価方法および基準> 素材感が改良されているか否か、また素材感の改良の程度;畜肉等が軟化されているか否か、またその軟化の程度;豆乳の青臭味がマスキングされているか否か、またそのマスキングの程度;植物タンパク質臭がマスキングされているか否か、またそのマスキングの程度;香辛料の刺激感がエンハンスされているか否か、またそのエンハンスの程度;カカオ風味が向上されているか否か、またその向上の程度;牛乳または豆乳の光劣化臭が抑制されているか否か、またその抑制の程度;乳感が向上されているか否か、またその向上の程度;味噌の穀物風味が向上されているか否か、またその向上の程度;魚肉臭がマスキングされているか否か、またそのマスキングの程度;畜肉臭がマスキングされているか否か、またそのマスキングの程度;果実感が向上されているか否か、またその向上の程度;および納豆臭がマスキングされているか否か、またそのマスキングの程度は、当業者であれば、適切な対照食品を基準とした官能試験を企画して評価することができる。より具体的には、例えば有効成分を含まない食品等適切な対照を準備し、3〜10段階程度の基準を定め、基準(産業上意義のある基準、例えば7段階目以上を合格とするように定めることができる。)に基づき、訓練されたパネラーが対象となる食品と対照とを比較することにより評価することができる。

素材感の改良に関しては、食品に複数の具材が含まれる場合、より多くの具材について素材感が改良されることが好ましい。本実施態様の乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、野菜類の素材感のみならず、肉類、魚介類の素材感も改良しうる。畜肉等の軟化に関しては、食品の固さを測定する手段によっても評価することができる。畜肉等の軟化においては、併せてジューシー感が向上していることが好ましい。豆乳の青臭味のマスキングにおいては、併せて甘味、まろやかさ、厚みが向上していることが好ましい。タンパク質臭のマスキングにおいては、併せて柔らかさ、ジューシーさ、肉感が向上していることが好ましい。香辛料の刺激感のエンハンスにおいては、併せてコク、熟成感、後味が向上していることが好ましい。

より具体的な評価のための方法として、本明細書の実施例の項に記載した方法を参照することができる。

乳清または豆乳の乳酸菌・酵母発酵物が、食品の素材感の改良のために用いうることは、本願によって初めて提供される用途である。前掲特許文献1は、乳清の乳酸菌・酵母発酵液に関するものであるが、加熱調理後冷却され、冷蔵または冷凍される食品への使用には言及していない。また前掲特許文献2は、乳清の乳酸菌・酵母発酵液を果実飲料に添加することで、果実本来のコクと風味が増強され、完熟風味が付与されると述べているが、加熱調理後冷却され、冷蔵または冷凍される食品への使用には言及していない。乳清または豆乳の乳酸菌・酵母発酵物が畜肉等の軟化、豆乳青臭味臭のマスキング、植物タンパク質臭のマスキング、香辛料の刺激感のエンハンス、カカオ風味向上、牛乳または豆乳の光劣化臭の抑制、乳感向上、味噌の穀物風味の向上、魚肉臭マスキング、畜肉臭マスキング、果実感向上、および納豆臭マスキングのために用い得ることもまた、本願によってはじめて提供される用途である。

本実施態様により得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物はまた、特定の食品の塩味を増強するために用いることができる。塩味が増強されているか否か、また塩味の増強の程度は、当業者であれば、適切な対照食品を基準とした官能試験を企画して評価することができる。

〔適用される食品〕 本実施態様により得られた乳酸菌・酵母発酵物または発酵調味料組成物は、種々の食品に適用できる。適用される食品の好ましい例は、加熱調理され、冷却された後、冷蔵または冷凍される、冷蔵食品および冷凍食品、畜肉または魚肉(それらを原料とする加工品を含む。魚肉は魚介類の肉を含む。これらを総称して「畜肉等」ということもある。)、豆乳(それを原料とした加工品を含む。)、植物タンパク質(それを原料とした加工品を含む。)、ならびに香辛料(それを原料とした加工品を含む。)、カカオ由来原料を含有する食品、牛乳(それを原料とした加工品を含む。)、味噌(それを原料とした加工品を含む。)、トマト(それを原料とした加工品を含む。)、果実(それを原料とした加工品を含む。)、および納豆(それを原料とした加工品を含む。)である。

冷蔵食品および冷凍食品の例としては、例えば、春巻、中華丼(の具)、餃子、焼売、小龍包、肉まん、八宝菜、回鍋肉、青椒肉絲、野菜炒め、きんぴら、筑前煮のほか、コロッケ、メンチカツ、エビカツ等のフライ製品、ハンバーグ等の肉製品、あんかけうどん、長崎ちゃんぽん、焼きそば、スパゲッティナポリタン、マカロニグラタン、ラザニア等の麺類、チャーハン、ピラフ、炊き込みご飯、ちらしずし等の米飯製品、お好み焼き、たこ焼き、ピザ等の小麦粉製品が挙げられる。畜肉等の例としては、特に限定されず、牛肉、鶏肉、豚肉、馬肉、羊肉、山羊肉、タラ、サケ等の白身魚、マグロ、カツオ等の赤身魚、貝、イカ、タコ、エビ、カニ等が挙げられる。畜肉や魚肉を原料とした加工品の例としては、特に限定されるものではなく、軟化が好ましいものが種々挙げられ、具体的には、香味焼き、から揚げ、竜田揚げ、てんぷら、フリッター、豚カツ、鶏カツ、牛カツ、エビカツ、焼き肉用肉、ステーキ用肉、ロースト用肉、煮込み用肉、ハム、ベーコン等が挙げられる。豆乳を原料とした加工品の例としては、特に限定されず、青臭味のマスキングが好ましいものが種々挙げられ、具体的には、豆乳クリーム、コーヒー飲料、紅茶飲料、ココア飲料、豆乳ヨーグルト、パン類、菓子類等が挙げられる。植物タンパク質を原料とした加工品の例としては、独特の酸化臭のマスキングが好ましいものが種々挙げられ、具体的には、ハンバーグ、メンチカツ、ミートボール、ミートローフ、ロールキャベツ、ソーセージ等が挙げられる。より好ましくは、大豆タンパク質を原料とした加工品である。香辛料を原料とした加工品の例としては、特に限定されず、香辛料感をエンハンスすることが好ましいものが種々挙げられ、具体的には、お好み焼きソース、タコ焼きソース、ウスターソース、中濃ソース、豚カツソース、ステーキソース、バーベキューソース、焼き肉のたれ、ハーブソルト等が挙げられる。

カカオ由来原料を含有する食品の例としては、特に限定されず、和洋菓子、焼菓子、パン、飲料、冷菓、惣菜、調味料等が挙げられる。光劣化臭の抑制の対象となる食品の例としては、特に限定されず、生乳、牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、加工乳、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス等)、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳(育児用粉ミルク等)、乳飲料、発酵乳、および乳酸菌飲料が挙げられる。対象となる食品の特に好ましい例として、豆乳、牛乳、およびクリームが挙げられる。乳感向上の対象となる食品の他の例としては、特に限定されず、ヨーグルト、アイスクリーム類、シュークリーム、クリームブリュレ、ショートケーキ、ホワイトソース、クリームシチュー、クリームコロッケ、グラタン、およびドリア等が挙げられる。味噌の穀物風味の向上の対象となる食品の例としては、特に限定されず、味噌自体のほか、即席味噌汁、味噌だれが挙げられる。魚肉臭をマスキングする対象となる食品の例としては、特に限定されず、焼き魚、魚肉加工品(魚肉ソーセージ、かまぼこ、揚げかま、ちくわ、はんぺん等)、魚加工品(干物、ぬれ珍味、煮魚、西京漬け、魚缶詰等)、つみれ、魚介類エキス、かつお飯が挙げられる。畜肉臭をマスキングする対象となる食品の例としては、特に限定されず、食肉調製品(牛肉、豚肉、その他の食肉を原料としたもので、加熱調理、または味つけした製品や半加工品等)、具体的には、牛肉調製品(ビーフカレー、ビーフジャーキー、コンビーフ、ローストビーフ、シーズンド・ビーフ等)、豚肉調製品(シーズンド・ポーク、 ソーセージ、 缶入りハム、ポークランチョンミート等)、ハンバーガー用のパティー、ステーキ用肉、焼き肉用肉(牛タン、ハラミ、肝臓等)、ハム、ソーセージ、ベーコン、味付けスペアリブ、牛丼、豚丼、もつ入り鍋、ハンバーグ、とんかつ、酢豚、豚てんぷら、餃子、ポークビーンズが挙げられる。果実感を向上させる対象となる食品は、トマトおよび果実(それを原料とした加工品を含む。)であり、果実は、特に限定されず、柑橘類果実、例えば、レモン、グレープフルーツ(ホワイト種、ルビー種)、ライム、オレンジ類(ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ)、うんしゅうみかん、タンゴール、なつみかん、甘夏、はっさく、ひゅうがなつ、シイクワシャー、すだち、ゆず、かぼす、だいだい、いよかん、ぽんかん、きんかん、さんぼうかん、オロブランコ、ぶんたん;核果類果実、例えば、あんず(別名アプリコット)、さくらんぼ、うめ、すもも類(にほんすもも、プルーン)、もも類(もも、ネクタリン、黄桃);漿果類果実、例えば、ふどう(マスカット、リースリング、デラウエア、巨峰)、バナナ、ブラックベリー、ブルーベリー、ラズベリー、グズベリー(別名西洋すぐり)、ざくろ、りんご、なし類(にほんなし、中国なし、西洋なし)、かりん、キウイフルーツ、パインアップル、パッションフルーツ、アセロラ、ライチー、あけび、アテモヤ、アボカド、いちじく、オリーブ、かき、キワノ、グァバ、ぐみ、ココナッツ、ごれんし(別名スターフルーツ)、タンゼロ、チェリモヤ、ドリアン、なつめ、なつめやし、ハスカップ、パパイヤ、ピタヤ、びわ、りゅうがん、ホワイトサポテ、まくわうり、マルメロ、マンゴー、マンゴスチン、やまももを含む。果実はまた、果実的野菜、すなわちイチゴ、すいか、メロンを含む。果実感を向上させる対象となる食品の好ましい例として、トマト、イチゴ、リンゴ、オレンジ、ミカン、ブルーベリー、マンゴー、イチジク、モモが挙げられる。より好ましい例として、長時間の煮込み加熱により調理される、トマトソース、果実ソース、ジャムが挙げられる。納豆臭のマスキングの対象となる食品としては、納豆およびそれを原料とした加工品であり、加工品の例としては、特に限定されず、納豆ソテー、納豆入りチヂミ、納豆入りハンバーグ、納豆入りミートソース、納豆入り寿司、納豆入りスープ、納豆入りパンケーキ、納豆のてんぷら、納豆のせ麺、納豆入り麺つゆが含まれる。

食品への乳酸菌・酵母発酵物の添加量は、食品の種類にもよるが、典型的には食品に対し、乳清を原料とする乳酸菌・酵母発酵物である場合は固形分10.7%、豆乳を原料とする乳酸菌・酵母発酵物である場合は固形分6.5% の乳酸菌・酵母発酵物に換算して、0.1%以上であり、好ましくは0.13%以上であり、より好ましくは0.17%以上であり、さらに好ましくは0.2%以上である。0.1%未満では効果が乏しいからである。豆乳の青臭味をマスキングするためには、0.4%以上とすることが特に好ましい。添加量の上限は、乳酸菌・酵母発酵物の酸味や香気が、対象となる食品の風味を損なわない限り、限定されない。食品にも拠るが、2%を超えると乳酸菌・酵母発酵物の風味が感じられるようになるので、2.0%以下であることが好ましく、1.8%以下としてもよく、1.5%以下としてもよい。雑味や渋みを感じやすい味の薄い食品、例えば豆乳に対しては、1.0%以下としてもよく、また雑味・渋みが感じられず、かつ十分に高い効果を得るとの観点からは、0.7%以下としてもよい。

〔その他〕 本発明の実施態様の一つは、上で説明された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を含む加熱調理された食品を、冷蔵または冷凍して冷蔵食品または冷凍食品を得る工程を含む、冷蔵食品または冷凍食品の、製造方法である。あるいは、乳酸菌・酵母発酵物の有効量を添加する工程を含む、畜肉もしくは魚肉、豆乳、植物タンパク質、香辛料、カカオ由来原料、牛乳、味噌、トマトもしくは果実、または納豆を原料に含む食品の製造方法である。食品の製造方法における、乳酸菌・酵母発酵物の添加の段階は、作業性等を考慮し、適宜とすることができる。ここで、添加するとは、インジェクションすること、接触させることを含む。例えば畜肉等の軟化のためには、添加は、軟化剤をピックル液等の調味液に含有させ、畜肉等にインジェクションすることであってもよく、軟化剤を含有する漬け込み液に畜肉等を漬け込むことであってもよく、軟化剤を原料または中間製品に添加して混合することであってもよい。

本発明の他の実施態様として、上で説明された乳酸菌・酵母発酵物の有効量を含む加熱調理された食品を、冷蔵または冷凍して冷蔵食品または冷凍食品を得る工程を含む、冷蔵食品または冷凍食品の、素材感の改良方法、または乳酸菌・酵母発酵物の有効量を添加する工程を含む、畜肉もしくは魚肉の軟化、豆乳の青臭味マスキング、植物タンパク質臭マスキング、香辛料による刺激のエンハンス、カカオ風味向上、牛乳または豆乳の光劣化臭の抑制、乳感向上、味噌の穀物風味の向上、魚肉臭マスキング、畜肉臭マスキング、果実感向上、または納豆臭マスキングのための方法;乳清または豆乳の乳酸菌発酵物を酵母でさらに発酵する工程を含む、乳酸菌・酵母発酵物を有効成分とする、発酵調味料組成物の製造方法が提供されうる。

次に、本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。

〔実施例1〕清澄加塩乳酸菌・酵母乳清発酵液の調製 配合表を下記に示す。

・乳酸菌シード培養液 上記(1)に従い100ml三フラスコに乳酸菌シード培地の各原料を混合・溶解後、85℃、30分の加熱殺菌を行い、36℃まで冷却した。冷却後の培地に乳酸菌ペディオコッカス・アシドラクティチYU2株をMRS寒天培地上から白金にて接種し、36℃、24時間静置培養して乳酸菌シード培養液70gを得た。

・酵母シード培養液 上記(2)に従い500mlバッフル付三角フラスコに酵母シード培地の各原料を混合・溶解後、120℃、20分間のオートクレーブ滅菌を行い、30℃まで冷却した。冷却後の培地にサッカロマイセス・セレビジエFAHP−2株をYPD寒天培地上から白金耳にて接種し、30℃、24時間振盪培養(回転速度:200rpm)して酵母シード培養液70gを得た。

・乳酸菌主発酵 上記(3)に従い3リットル小型培養槽(ABLE社製)に各原料を混合・溶解後、85℃、30分の加熱殺菌を行い、36℃まで冷却した。冷却後の液に上述の乳酸菌シード培養液70gを接種した後、50rpmで微速撹拌しつつ36℃、24時間乳酸発酵を行い乳酸菌乳清発酵液2070gを得た。

・酵母主発酵 上記(4)に従い100ml三角フラスコに各原料を混合・溶解後、120℃、20分のオートクレーブ滅菌を行った。30℃まで冷却後、30℃に温度調整した3リットル小型培養槽中の乳酸菌乳清発酵液に添加し、撹拌・混合後に上述の酵母シード培養液70gを接種し30℃にて通気撹拌発酵(撹拌速度:400rpm、通気量:1.0リットル/分(0.5vvm))を20時間行って乳酸菌・酵母乳清発酵液2100gを得た。

尚、酒類等の製造工程においては、通常、嫌気条件下で発酵を行うため、酵母は多量のエタノールを生成するが、本実施例では撹拌と通気により好気条件下で発酵を行うため、発酵中のエタノール濃度は常に1.0%以下に保たれ、酵母はエステルや脂肪酸、高級アルコール等の各種香気成分を主に生成する。

・加塩工程 乳酸菌・酵母乳清発酵液の保存性を高めるため、食塩を最終製品中にて20%となるように添加し、撹拌しつつ溶解することで加塩乳酸菌・酵母乳清発酵液を得た。

・濾過工程 清澄性を高めるため、加塩乳酸菌・酵母乳清発酵液を精密ろ過膜(MF)にて濾過を行い、清澄加塩乳酸菌・酵母乳清発酵液を得た。MFは旭化成ケミカルズ社製のマイクローザUSP-143(公称孔径0.1μm)を用いた。

・殺菌工程 85℃の恒温水槽中にて30分間保持し加熱殺菌を行い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・酵母乳清発酵液(発明品1)2000gを得た。

・分析工程 得られた発明品1の各種分析を行った。結果を下表に示す。

〔実施例2〕清澄加塩乳酸菌・酵母豆乳発酵液の調製 配合表を下記に示す。

・乳酸菌シード培養液 上記(1)に従い、100ml三角フラスコに乳酸菌シード培地の各原料を混合・溶解後、85℃、30分の加熱殺菌を行い、36℃まで冷却した。冷却後の培地に乳酸菌ラクトバチルス・ラムノサスAN1株をMRS寒天培地上から白金耳にて接種し36℃、24時間静置培養して乳酸菌シード培養液70gを得た。

・酵母シード培養液 上記(2)に従い、500mlバッフル付三角フラスコに酵母シード培地の各原料を混合・溶解後、120℃、20分間のオートクレーブ滅菌を行い、30℃まで冷却した。冷却後の培地にサッカロマイセス・セレビジエFAHP−1株をYPD寒天培地上から白金耳にて接種し30℃、24時間振盪培養(回転速度:200rpm)して酵母シード培養液70gを得た。

・乳酸菌主発酵 上記(3)に従い、3リットル小型培養槽(ABLE社製)に各原料を混合・溶解後、85℃、30分の加熱殺菌を行い、36℃まで冷却した。冷却後の液に上述の乳酸菌シード培養液70gを接種した後、50rpmで微速撹拌しつつ36℃、24時間乳酸発酵を行い乳酸菌豆乳発酵液2070gを得た。

・酵母主発酵 上記(4)に従い、100ml三角フラスコに各原料を混合・溶解後、120℃、20分のオートクレーブ滅菌を行った。30℃まで冷却後、30℃に温度調整した3リットル小型培養槽中の乳酸菌豆乳発酵液に添加し、撹拌・混合後に上述の酵母シード培養液70gを接種し30℃にて通気撹拌発酵(撹拌速度:400rpm、通気量:1.0リットル/分(0.5vvm))を20時間行って乳酸菌・酵母豆乳発酵液2100gを得た。

・加塩工程 乳酸菌・酵母豆乳発酵液の保存性を高めるため、食塩を最終製品中にて20%となるように添加し、撹拌しつつ溶解することで加塩乳酸菌・酵母豆乳発酵液を得た。

・濾過工程 清澄性を高めるため、加塩乳酸菌・酵母豆乳発酵液を精密ろ過膜(MF)にて濾過を行い、清澄加塩乳酸菌・酵母豆乳発酵液を得た。MFは旭化成ケミカルズ社製のマイクローザUSP-143(公称孔径0.1μm)を用いた。

・殺菌工程 85℃の恒温水槽中にて30分間保持し加熱殺菌を行い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・酵母豆乳発酵液(発明品2)2000gを得た。

・分析工程 得られた発明品2の各種分析を行った。結果を下表に示す。

〔実施例3〕冷凍春巻試作 下表および下記の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・酵母乳清発酵液(発明品1)の冷凍春巻への添加効果を確認した。

・手順 (1)配合表5の原料中のごま油以外の調味料原料を予め混合しておく。 (2)予熱したフライパンに油大匙1をひき、肉類を軽く炒める。 (3)その他の具材を加え炒める。 (4)具材に火が通ったら調味料混合液を加え、加熱する。 (5)粘度が出たら火を止め、ごま油を加えてパットにとる。 (6)市販の春巻の皮で具材30gを包む。 (7)170℃の油で2分揚げる。 (8)室温にて冷却後、-25℃の冷凍庫にて2週間、冷凍保管。

Control品のみ別途、Blankや試験1〜6の冷凍春巻を加熱解凍するタイミングに合わせて調製し、冷凍保管していない状態で評価試験に供した。

・評価方法 冷凍2週間保管後、各春巻試作品を電子レンジにて解凍し、よく訓練されたパネル14名にて素材感および風味の好ましさについてControl(非冷凍品)を10点、Blank(無添加冷凍品)を5点として10段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。なお、1桁の有効数字に丸めて7点以上となる場合を、従来品にはない十分な素材感または風味を与えるものであり、合格と定めた(以下の実施例において同じ。)。

・評価基準(素材感) 1点:素材感がまったくない。 2点:Blankよりかなり劣る。 3点:Blankより劣る。 4点:Blankよりやや劣る。 5点:Blank(無添加冷凍品)と同じ。 6点:Blankよりやや向上している。 7点:Blankより向上しており、1〜2種の具材について素材感がある。 8点:Blankより向上しており、3種以上の具材について素材感がある。 9点:素材感が十分にある。Controlにはやや劣る。 10点:Control(非冷凍品)と同じ、またはそれより優れた素材感がある。

・評価基準(風味の好ましさ) 1点:風味が非常に劣る。 2点:Blankよりかなり劣る。 3点:Blankより劣る。 4点:Blankよりやや劣る。 5点:Blank(無添加冷凍品)と同じ。 6点:Blankよりやや向上している。 7点:Blankより向上している。 8点:Blankより向上しており、春巻らしい風味がある。 9点:春巻らしい風味が十分にある。Controlにはやや劣る。 10点:Control(非冷凍品)と同じ、またはそれより優れた風味がある。

・評価結果 結果を図1、2に示した。春巻具材の素材感は、発明品1の添加量が増加するにつれて向上し、有効な添加量は0.1%以上だった。春巻全体の風味の好ましさも同様に発明品1の添加量増加に応じて向上したが、添加量2%では乳清発液としての酸味や香気がやや感じられ、春巻らしさが失われる傾向にあった。

よって、本実施例の春巻においては、発明品1の実用上の有効添加量は0.1%〜2.0%であると言える。

〔実施例4〕冷凍春巻試作(発明品2) 下表、および下記の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・酵母豆乳発酵液(発明品2)の冷凍春巻への添加効果を確認した。

・手順 実施例3と同様の手順で調理し、冷凍食品を調製した。

・評価方法、評価基準 実施例3と同様に行った。

・評価結果 結果を図3および4に示した。春巻具材の素材感は、発明品2の添加量が増加するにつれて向上し、有効な添加量は発明品1と同様に0.1%以上だった。春巻全体の風味の好ましさも同様に発明品2の添加量増加に応じて向上したが、添加量2%では豆乳発酵液としての酸味や香気がやや感じられ、春巻らしさが失われる傾向にあった。

よって、本実施例においては、発明品2の実用上の有効添加量は0.1%〜2.0%であると言える。

〔実施例5〕中華丼の具試作(発明品1) 下表、および下記の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・酵母乳清発酵液(発明品1)の冷凍中華丼の具への添加効果を確認した。

・手順 (1)表中のタレ原料の一部(日本酒から発明品1まで)を予め混合しておく。 (2)具材を個別に茹でてパットに取る。 (3)鍋にねぎみじん切りとおろし生姜を投入。 (4)(1)を投入して加熱。 (5)粘度が出たら火を止める。 (6)ごま油を投入して混合。 (7)茹でた具材を投入して混合。 (8)室温にて冷却後、-25℃の冷凍庫にて2週間冷凍保管。

Control品のみ別途、Blankや試験1〜6の中華丼の具を加熱解凍するタイミングに合わせて調製し、冷凍保管していない状態で評価試験に供した。

・評価方法 冷凍2週間保管後、各中華丼の具試作品を電子レンジにて解凍し、よく訓練されたパネル14名にて素材感・具材感、風味の好ましさについてControl(非冷凍品)を10点、Blank(無添加冷凍品)を5点として10段階評価で官能評価を行い各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価基準(素材感) 1点:素材感がまったくない。 2点:Blankよりかなり劣る。 3点:Blankより劣る。 4点:Blankよりやや劣る。 5点:Blank(無添加冷凍品)と同じ。 6点:Blankよりやや向上している。 7点:Blankより向上しており、1〜3種の具材について素材感がある。 8点:Blankより向上しており、4種以上の具材について素材感がある。 9点:素材感が十分にある。Controlにはやや劣る。 10点:Control(非冷凍品)と同じ、またはそれより優れた素材感がある。

・評価基準(風味の好ましさ) 1点:風味が非常に劣る。 2点:Blankよりかなり劣る。 3点:Blankより劣る。 4点:Blankよりやや劣る。 5点:Blank(無添加冷凍品)と同じ。 6点:Blankよりやや向上している。 7点:Blankより向上している。 8点:Blankより向上しており、中華丼の具らしい風味がある。 9点:中華丼の具らしい風味が十分にある。Controlにはやや劣る。 10点:Control(非冷凍品)と同じ、またはそれより優れた風味がある。

・評価結果 結果を図5、6に示した。

〔実施例6〕中華丼の具試作(発明品2) 実施例5の表において発明品1を発明品2に置き換えたほかは同じ配合で、下記の手順に従い、清澄加塩乳酸菌・酵母豆乳発酵液(発明品2)の冷凍春巻への添加効果を確認した。

・手順 実施例5と同様の手順で、調理し、冷凍食品を調製した。

・評価方法、評価基準 実施例5と同様に実施した。

・評価結果 結果を図7、8および下表に示した。また、パネラーの試食コメントは下表のとおりであった。

食品によっては、塩味を促進する効果が見られた。

〔実施例7〕異なる菌株による発酵液の調製 他の乳酸菌または酵母を用いた以外は実施例1または2に準じて、発酵液を調製した。

実施例7〜10で得られた発酵液はいずれも、目的の効果が期待できるものであった。

〔実施例8〕含有成分の分画試験 下記の手順に従い、清澄加塩乳酸菌・酵母乳清発酵液(発明品1)に含有される成分の分画液を調製した。

・手順 (1) 清澄加塩乳酸菌・酵母乳清発酵液を減圧濃縮により二倍に濃縮する。 (2) 分画分子量20000の透析チューブ(スペクトラ/ポア、フナコシ)に(1)を充填し、撹拌しながら蒸留水中で透析を行う(4℃、24時間、蒸留水1L×3回交換)。 (3) 透析チューブ内のサンプルを分画液1とする。 (4) 蒸留水側を透析前と等量になるよう減圧濃縮する。 (5) 分画分子量3500〜5000の透析チューブ(スペクトラ/ポア、フナコシ)に(4)を充填し、撹拌しながら蒸留水中で透析を行う(4℃、24時間、蒸留水1L×3回交換)。 (6) 透析チューブ内のサンプルを分画液2とする。 (7) 蒸留水側を透析前と等量になるよう減圧濃縮する。 (8) 分画分子量100〜500の透析チューブ(スペクトラ/ポア、フナコシ)に(7)を充填し、撹拌しながら蒸留水中で透析を行う(4℃、24時間、蒸留水1L×3回交換)。 (9) 透析チューブ内のサンプルを分画液3とする。 (10) 蒸留水側を透析前と等量になるよう減圧濃縮し、分画液4とする。

・分画液詳細 各分画液に含有される成分の分子量を、下表に示した。

・各分画液の評価結果 実施例3と同様の手法により、清澄加塩乳酸菌・酵母乳清発酵液の分画液の冷凍春巻への添加効果を確認した。

結果を上表に示した。春巻具材の素材感は、分画分子量が小さくなるにつれ強く感じられ、分画液3添加区で発明品1と同等の素材感が感じられた。よって、本実施例の条件においては、発明品1の有効成分は、分子量(100〜)500〜3500(〜5000)の成分であると考えられた。

〔実施例9〕若鶏の香味焼き試作試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)の若鶏の香味焼きへの添加効果を確認した。

・手順 (1) 配合表に記載の調味液原料(鶏ムネ肉以外の原料)を混合する。 (2) 鶏ムネ肉を切り、(1)で得られた調味液と混合して漬け込む。 (3) 得られた鶏ムネ肉をオーブンにて加熱する。 (4) 加熱した鶏ムネ肉を急速凍結する。

・評価方法 冷凍3日保管後、電子レンジにて解凍後、室温まで冷まし、よく訓練されたパネル10名にて食感の柔らかさとジューシーさについてBlank(無添加品)を5点として10段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価基準(各評価項目共通) 1点:Blankより非常に劣る。 2点:Blankよりかなり劣る。 3点:Blankより劣る。 4点:Blankよりやや劣る。 5点:Blank(無添加品)と同じ。 6点:Blankより僅かに向上している。 7点:Blankよりやや向上している。 8点:Blankより向上している。 9点:Blankよりとても向上している。 10点:Blankより非常に向上している。

・評価結果 結果を図9に示した。発明品2添加品は、重曹製剤添加品よりも柔らかく、ジューシーであるという評価であった。

・上記の手順で得られた鶏ムネ肉について、冷凍3日保管後、電子レンジにて解凍後、室温まで冷まし、Texture analyzer(Stable Micro Systems社製)にて、山電くさび型プランジャーNo.49を用い、速度1.0mm/secおよび歪率100%の条件で破断試験を行った。その結果を図10に示した。発明品2添加品は、重曹製剤添加品よりも弱いで破断した。

〔実施例10〕無調整豆乳添加試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)の無調整豆乳への添加効果を確認した。尚、事前試験の結果から、高い効果が得られることが分かった添加量範囲0.4%〜1%について試験した。

・手順 無調整豆乳(紀文)に発明品2を添加し(0, 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8, 0.9, 1%)、塩分を食塩で揃えた。

・評価方法 よく訓練されたパネル10名にて、甘味、まろやかさ、味の厚み、青臭味のマスキングについてBlank(無添加品)を5点として10段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価基準(各評価項目共通) 1点:非常に弱い。 2点:Blankよりかなり弱い。 3点:Blankより弱い。 4点:Blankよりやや弱い。 5点:Blank(無添加品)と同じ。 6点:Blankより僅かに強い。 7点:Blankよりやや強い。 8点:Blankより強い。 9点:Blankよりとても強い。 10点:Blankより非常に強い。

・評価結果 結果を図11に示した。発明品2添加品は、無添加品に比べ甘味、まろやかさ、味の厚みが増し、豆乳の青臭味をマスキングしているという評価であった。添加率0.7%までは全ての項目が比例的に上昇したが、その後は上昇が緩やかになった。また、1.0%になると、雑味や渋みが出てきた。

〔実施例11〕ハンバーグ添加試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、挽肉の40%を植物タンパク質(大豆タンパク質)に置き換えたハンバーグにて、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)の植物タンパク質臭マスキング効果を確認した。尚、比較対象として植物タンパク質臭マスキングに従来用いられている純米料理酒を同製造コストになるように添加した。

・手順 (1)植物タンパク質を調味液に30分浸漬する。 (2)配合Aの材料を混合、粘りが出るまで混ぜあわせる。 (3)浸漬した植物タンパク質を配合Aに添加し、さらに混ぜる。 (4)冷蔵庫で30分間ねかす。 (5)各120gに分割・成型後、230℃、10分間オーブンにて加熱。 (6)急速冷凍した後、真空パックして冷凍保管。 (7)試食時は湯煎にて温めた。

・評価方法 よく訓練されたパネル10名にて、植物タンパク質臭マスキング、柔らかさ、ジューシーさ、肉感についてBlank(無添加品)を5点として10段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価基準(各評価項目共通) 1点:Blankより非常に劣る。 2点:Blankよりかなり劣る。 3点:Blankより劣る。 4点:Blankよりやや劣る。 5点:Blank(無添加品)と同じ。 6点:Blankより僅かに向上している。 7点:Blankよりやや向上している。 8点:Blankより向上している。 9点:Blankよりとても向上している。 10点:Blankより非常に向上している。

・評価結果 結果を図12に示した。発明品2添加品は、無添加品や純米料理酒に比べ、全ての評価項目が向上した。特に植物タンパク質臭マスキング効果が高かった。また、料理酒は酒独特の風味が付与されていた。しかし、豆乳発酵液添加品は、風味自体は変えずに種々の効果のみが付与されていた。

〔実施例12〕お好み焼ソース添加試験(発明品2) 下表および以下の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)のお好み焼ソースへの添加効果を確認した。

・手順 (1)表に記載の原料を配合したお好み焼ソースに、豆乳発酵液(発明品2)を添加した。

・評価方法 よく訓練されたパネル10名にて、香辛料感、酸味、熟成感、コクについてBlank(無添加品)を5点として10段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価基準(各評価項目共通) 1点:Blankより非常に劣る。 2点:Blankよりかなり劣る。 3点:Blankより劣る。 4点:Blankよりやや劣る。 5点:Blank(無添加品)と同じ。 6点:Blankより僅かに向上している。 7点:Blankよりやや向上している。 8点:Blankより向上している。 9点:Blankよりとても向上している。 10点:Blankより非常に向上している。

・評価結果 結果を図13に示した。発明品2添加品は、無添加品に比べ、香辛料感、熟成感、コクが向上した。特に香辛料感(刺激感)の向上が目立った。また、後味をひく効果もあった。

〔実施例13〕ショコラショー試作試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)のショコラショーへの添加効果を確認した。

・手順 (1)カカオマスを湯煎で溶かす。 (2)無調整豆乳を50℃まで温め、溶けたカカオマスに約半量注ぎ、混合する。 (3)残りの豆乳、およびグラニュー糖も加え混合する。 (4)食塩水または発明品2を混合する。

・評価方法 試作後、10℃、20℃、40℃にしたサンプルを、よく訓練されたパネル4名にて、カカオ風味についてBlank(無添加品)を5点として10段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価基準 1点:非常に弱い。 2点:Blankよりかなり弱い。 3点:Blankより弱い。 4点:Blankよりやや弱い。 5点:Blank(無添加品)と同じ。 6点:Blankより僅かに強い。 7点:Blankよりやや強い。 8点:Blankより強い。 9点:Blankよりとても強い。 10点:Blankより非常に強い。

・評価結果 結果を図14に示した。発明品2添加品(試験1)は、Blankよりもカカオ風味が向上したという評価であった。また、温度が高いほどカカオ感向上効果は大きかった。

〔実施例14〕ミルクチョコレート添加試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、殺菌済み清澄乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2、但し加塩していないもの)のミルクチョコレートへの添加効果を確認した。

・手順 (1)ミルクチョコレートを湯煎で溶かす。 (2)水または発明品2を混合する。

・評価方法 試作後、冷やして固体にしたサンプルおよび40℃の液体サンプルを、よく訓練されたパネル6名にて、カカオ風味についてBlank(無添加品)を5点として10段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価基準 1点:非常に弱い。 2点:Blankよりかなり弱い。 3点:Blankより弱い。 4点:Blankよりやや弱い。 5点:Blank(無添加品)と同じ。 6点:Blankより僅かに強い。 7点:Blankよりやや強い。 8点:Blankより強い。 9点:Blankよりとても強い。 10点:Blankより非常に強い。

・評価結果 結果を図15に示した。発明品2添加品(試験1)は、Blankよりもカカオ風味が向上したという評価であった。また、液体の方がカカオ風味向上効果は大きかった。

〔実施例15〕光照射牛乳、豆乳添加試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)の光照射牛乳、光照射豆乳への添加効果を確認した。

・手順 (1) 牛乳または無調整豆乳に、食塩水または発明品2を混合する。 (2) 照明付インキュベータFLI-2010T型(EYELA東京理化器械株式会社)により、光照射する(5℃、26000ルクス、5日間)

・評価方法 5日後のサンプルを、よく訓練されたパネル2名にて、光劣化臭抑制効果について、光照射ありBlankを1点、光照射なしサンプルを10点として10段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価基準 1点:光劣化臭抑制効果は非常に弱い(光劣化臭は光照射なしより非常に強いが、光照射ありBlankと同等)。 2点:光劣化臭抑制効果はかなり弱い(光劣化臭は光照射なしより非常に強いが、光照射ありBlankより僅かに弱い) 3点:光劣化臭抑制効果は弱い(光劣化臭は光照射なしより非常に強いが、光照射ありBlankよりやや弱い)。 4点:光劣化臭抑制効果はやや弱い(光劣化臭は光照射なしより非常に強いが、光照射ありBlankより弱い)。 5点:光劣化臭抑制効果は僅かに弱い(光劣化臭は光照射なしより非常に強いが、光照射ありBlankよりかなり弱い)。 6点:光劣化臭抑制効果は僅かに強い(光劣化臭は光照射なしよりかなり強い)。 7点:光劣化臭抑制効果はやや強い(光劣化臭は光照射なしより強い)。 8点:光劣化臭抑制効果は強い(光劣化臭は光照射なしよりやや強い)。 9点:光劣化臭抑制効果はかなり強い(光劣化臭は光照射なしより僅かに強い)。 10点:光劣化臭抑制効果は非常に強い(光劣化臭は光照射なしと同じ(全くない))。

・評価結果 結果を図16および17に示した。牛乳、豆乳共に、光照射によって劣化臭が発生したが、発明品2添加品(試験1)は、Blankよりもこの光劣化臭を抑制しているという評価となった。

〔実施例16〕クリーム試作試験(発明品2) 下表の通り、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)のクリームへの添加効果を確認した。

・手順 (1)油層 油を加熱し溶解したところにレシチン、乳化剤を入れ混ぜる。 (2)水層 水分を加熱し材料を加え混ぜる。 (3)水層と油層を混合し予備乳化を行い、その後、均質化処理を行い冷却する。

・評価方法 得られたサンプルの乳風味について、よく訓練されたパネル2名にて官能評価を行った。

・評価結果 発明品2添加品は、Blankよりも乳風味が向上したという評価であった。

〔実施例17〕クリームコロッケ試作試験(発明品2) 下表の通り、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)のクリームコロッケ中具への添加効果を確認した。

・手順 (1)玉ねぎを炒めた後、表に記載の原材料を混合し加熱する。 (2)(1)で得られた中具を冷却し固めた後、成型、衣付けする、 (3)(2)を油ちょう(180℃3分)してクリームコロッケを得る。

・評価方法 得られたサンプルの乳風味について、よく訓練されたパネル2名にて官能評価を行った。

・評価結果 発明品2添加品(試験1)は、Blankよりも乳風味が向上したという評価であった。

〔実施例18〕即席味噌汁への添加試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)の即席味噌汁への添加効果を確認した。即席味噌汁用の調味味噌として、合わせ味噌(永谷園製「あさげ」生味噌タイプ、大豆味噌を使用)、赤だし味噌(永谷園製「ひるげ」生味噌タイプ、大豆味噌を使用)、白味噌(永谷園製「ゆうげ」生味噌タイプ、大豆味噌を使用)を使用した。

・手順 (1)調味味噌と、食塩水および発明品2を混合する。 (2)湯を注ぎ、混合する。

・評価方法 試作後、室温まで冷ましたサンプルを、よく訓練されたパネル4名にて、穀物風味(大豆風味)、甘味、旨味の強さについてBlank(無添加品)を5点として10段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価基準 1点:非常に弱い。 2点:Blankよりかなり弱い。 3点:Blankより弱い。 4点:Blankよりやや弱い。 5点:Blank(無添加品)と同じ。 6点:Blankより僅かに強い。 7点:Blankよりやや強い。 8点:Blankより強い。 9点:Blankよりとても強い。 10点:Blankより非常に強い。

・評価結果 結果を図18に示した。発明品2添加品(試験1)は、Blankよりも穀物風味(大豆風味)、甘味、旨味が向上したという評価であった。その効果は、白味噌と合わせ味噌の即席味噌汁において特に大きかった。また、記載した生味噌タイプの他、フリーズドライタイプの即席味噌汁でも同様の効果が確認された。

〔実施例19〕シャケほぐし身への添加試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)のシャケほぐし身への添加効果を確認した。

・手順 (1) 表に記載された量の湯、食塩水および発明品2を混合する。 (2)(1)で混合した液をシャケのほぐし身と混合する。

・評価方法 得られたサンプルを、よく訓練されたパネル2名にて、魚肉の生臭みと魚臭について、Blankを+++(3点)として、3段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。なお、生魚の不快な臭いを「生臭み」、加熱された魚が持つ特有の臭いを「魚臭」とした。

・評価結果 結果を表に示した。発明品2添加品は、Blankよりも魚肉の生臭みや魚臭を抑制しているという評価であった。

〔実施例20〕もつ入り鍋スープへの添加試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)のもつ入り鍋スープへの添加効果を確認した。

・手順 (1) 表に記載された原材料を混合して調味液とする。 (2) 調味液と豚ゆでもつを表の配合率でパウチに充填し90℃10分加熱殺菌をする、これを水冷後凍結してもつ入り鍋スープとする。 (3) もつ入り鍋スープを解凍後、パックごと加熱して官能評価用サンプルとする。

・評価方法 上記手順により得られたサンプルを、よく訓練されたパネル2名にて、もつ臭さについて、Blankを+++(3点)として、3段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価結果 結果を表に示した。発明品2添加品は、Blankよりももつの臭みを抑制しているという評価であった。

〔実施例21〕牛丼具材への添加試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)の牛丼(具材)への添加効果を確認した。

・手順 (1) 表に記載された原材料を混合し、湯煎で85℃まで加熱した後、冷却して調味液とする。 (2) 牛肉と玉ねぎをボイルした後、冷却する。 (3) 牛肉、玉ねぎ、調味液を表に記載の配合率でパックに入れ、90℃10分で加熱する。これを水冷後、凍結して牛丼の素とする。 (4) (3)の牛丼の素を解凍後、パックごと加熱して官能評価用サンプルとする。

・評価方法 上記手順により得られたサンプルを、よく訓練されたパネル2名にて、牛肉のグラス臭について、Blankを+++(3点)として、3段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価結果 結果を表に示した。発明品2添加品は、Blankよりも牛肉のグラス臭を抑制しているという評価であった。

〔実施例22〕シーズンド・ポークへの添加試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)のシーズンド・ポークへの添加効果を確認した。

・手順 (1) シーズンド・ポークを半解凍の状態で、ミートチョッパーにて5mmにミンチする。 (2) ミンチしたシーズンド・ポークに、表に記載されたその他の材料を混合してパックに入れ、90℃10分で加熱する。これを冷ました後、官能評価用サンプルとする。

・評価方法 上記手順により得られたサンプルを、よく訓練されたパネル2名にて、シーズンドポークの畜肉臭について、Blankを+++(3点)として、3段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価結果 結果を表に示した。発明品2添加品は、Blankよりも豚肉の獣臭を抑制しているという評価であった。

〔実施例23〕トマトソースへの添加試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)のトマトソースへの添加効果を確認した。

・手順 (1) 玉葱をみじん切りに、キサンタンガムは砂糖と、香辛料は調味料とそれぞれ混合して溶いておく。 (2) 鍋にオリーブ油をひいて玉葱を炒め、トマトを加えて軽く火を通す。 (3) (2)に(1)とその他の原料を入れ、香辛料と白ワインを加える。 (4) (3)をパウチに入れ、90℃40分で加熱する。 (5) (4)を冷ました後、軽く温めて官能評価用サンプルとする。

・評価方法 上記手順により得られたサンプルを、よく訓練されたパネル2名にて、トマトソースの果実感と酸味について、Blankを3点として、5段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価結果 結果を表に示した。発明品2添加品は、Blankよりもトマトソースの果実感や酸味が向上しているという評価であった。

〔実施例24〕納豆への添加試験(発明品2) 下表、および以下の手順に従い、殺菌済み清澄加塩乳酸菌・豆乳発酵液(発明品2)の納豆への添加効果を確認した。

・手順 (1) 表に記載の原材料を混合し、納豆のたれとする。 (2) 納豆(おかめ納豆(タカノフーズ製))50gに対し、(1)のたれを3.7gを添加。箸にて30回かき混ぜて官能評価用サンプルとする。

・評価方法 上記手順により得られたサンプルを、よく訓練されたパネル2名にて、納豆臭について、Blankを+++(3点)として、3段階評価で官能評価を行い、各パネルの評価点の平均を求めた。

・評価結果 結果を表に示した。発明品2添加品は、Blankよりも納豆臭を抑制しているという評価であった。

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