【技術分野】 【0001】 本発明は、少なくとも一つの水性相及び少なくとも一つの油性相を含む分散物、特に化粧品分散物に関する。 そのような分散物は、水中油型エマルションの形態、水中油中水型多相エマルションの形態、または別法として水中油型エマルションの水性相の鉱物及び/または有機粒子の分散物からなる多相組成物の形態で存在しても良い。 【0002】 本発明はとりわけ、その特性を損なうことなく、4から50℃の範囲の広範囲の温度でのそのような分散物の安定化に関する。 【背景技術】 【0003】 化粧品の分野では、懸濁液またはエマルションのような分散物が、広範囲の温度で安定であることが必須である。 この理由は、その保存期間の間で、気候条件、保存条件、及び/または輸送条件に依存して、化粧品分散物が4℃から最小で+50℃の範囲の温度に曝され得るためである。 例えば、太陽光中で長期間費やされる車両中、つまり容易に50℃に到達する温度で輸送されるクリームは、その安定性を維持することが必要である。 さらにこれらのクリームは、その輸送及び貯蔵に関して問題を生じることなく、熱帯の国で使用される必要も存在する。 分散物の不安定性は一般的に、巨視的な脱混合によって反映され、少なくとも二相への分離を生じる。 【0004】 さらに、化粧品組成物は、貯蔵サイクルにおいて満足な安定性を示さなければならない。 貯蔵サイクルは、いくつかの連続的な温度に組成物を通過させることからなる。 かくして組成物は、室温(約+20℃)で一定時間(例えば6時間)維持され、次いで同様な時間(即ち6時間)で温度は約4℃に徐々に低下し、次いで組成物は再びこの時間(即ち6時間)4℃の温度で放置され、次いで同様な時間(6時間)で温度は室温(+20℃)に上昇され、このサイクルが数回(一般的に5回)繰り返される。 この各種の温度の通過により、組成物の満足な安定性を試験することが可能である。 ここで、化粧品組成物は、それらが見出される条件とは無関係に、良好な安定性を有することが有利である。 【0005】 水中油型エマルション、水中油中水型多相エマルション、及び水中油型エマルションの水性相中の鉱物及び/または有機粒子の分散物からなる化粧品分散物の場合、これらの分散物の安定性は、温度が上昇した場合に、水性相の粘度の低下のため一般的に弱まる。 これは、分散相が連続的水性相のものより高い密度を有する場合に、沈降現象によって反映される;これは、鉱物粒子の多くの水性分散物に当てはまる。 分散相が連続的水性相より低い密度を有する場合、例えばエマルションの場合のように乳化現象が生じる。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 4から50℃の範囲の温度でのそのような分散物の安定性を確保するために、架橋化ポリアクリル酸誘導体(Goodrich社により市販されているCarbopol)、及びキサンタンゴム(Kelco社により市販されているKeltrol T)のような天然ポリマーといった水性相ゲル化剤の使用が実施されている。 そのようなゲル化剤の使用は、ゲル化形成物に対して利用可能な極めの範囲を制限する。 【0007】 それ故、一方で4℃から50℃の温度で化粧品分散物の安定性を確保することが可能で、他方で流体またはゲル化製剤で室温で利用可能な広範囲の極めを維持することが可能な他の化合物を使用できることが必要であろう。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の一つの主題は、正確には、そのような分散物が4から50℃の範囲での温度変化を受ける場合に、これらの分散物の安定性を確保するために、そのような分散物の水性相に加えられる、水溶性単位及びLCSTを有する単位を含むポリマーの使用である。 【0009】 かくして、本発明の主題は、水性相が水溶性単位及びLCSTを有する単位を含むポリマーを含み、LCSTを有する単位が水中で1質量%の濃度で5から40℃の脱混合温度を有し、水性相のゲル化点が5から40℃、好ましくは10から35℃であるような濃度で、前記ポリマーが水性相中に存在することを特徴とする、少なくとも一つの水性相及び少なくとも一つの油性相を含む分散物である。 【0010】 本発明によれば、前記分散物は、水が水性相である水中油型(O/W)エマルションによって、水中油中水型(W/O/W)多相エマルションによって、または別法として水中油型エマルションの水性相における鉱物及び/または有機粒子の分散物によって形成されても良い。 【0011】 水溶性単位及びLCSTを有する単位を含むポリマーは、以下の文献に記載されている:D. Hourdet等, Polymer, 1994, Vol. 35, No. 12, 第2624から2630頁[1]; F. L'Alloret等, Coll. Polym. Sci., 1995, Vol. 273, No. 12, 第1163から1173頁[2]; F. L'Alloret等, Revue de l'Institut Francais du Petrole, 1997, Vol. 52, No. 2, 第117から128頁[3]; EP-A-0 583 814[4]及びEP-A-0 629 649[5]。 【0012】 これらの文献に記載されているように、これらのポリマーは、水溶性単位及びLCSTを有する単位を含み、水中で低臨界溶液温度を有する。 かくして、LCSTを有するこれらの単位は、特定の温度未満で変性された水中での溶解性を有する単位である。 それらは、それらの水溶性の領域を規定する熱誘導化脱混合温度(または曇点)を有する単位である。 ポリマー濃度の関数として得られる最小の脱混合温度は、「LCST」(Lower Critical Solution Temperature;低級臨界溶液温度)として知られている。 各ポリマー濃度について、熱誘導化脱混合温度が観察されている;それは、曲線の最小点であるLCSTよりは高い。 この温度未満でポリマーは水溶性であり、この温度を超えるとポリマーは水溶性を失う。 【0013】 かくして、これらのポリマーは、温度を上昇することによってもたらされる水ゲル化特性を有する。 これらの特性は、文献[4]及び[5]に記載されているように、石油の分野での使用のため開発されても良い。 【0014】 WO-A-95/24430[6]もまた、LCSTを有する単位及びpH感受性単位を含むコポリマーを記載し、それは熱誘導化ゲル化特性を有する。 製薬業界及び化粧品業界で、活性物質の制御放出のために使用されるものである。 得られたゲルは不透明でLCSTを有するものであり、LCSTを有する単位を含むがCSTタイプのものではない挙動を有し、透明な組成物を導く本発明のポリマーとは異なる。 【0015】 本発明によれば、ポリマーとしては、所望の範囲でこのポリマーを含む水性相のゲル化を得るために、1質量%の濃度で5から40℃の脱混合温度を有するLCSTを有する単位を有するポリマーが選択される。 さらに、使用されるポリマー濃度は、各種の巨大分子によって有されるLCSTを有する単位の間で相互作用が可能であり、この水性相のゲル化を得るのに十分なものであり、かくして分散物の安定性を確保することを可能にする。 【0016】 温度が上昇した場合に、所望の極めが標準的なゲル化剤によって得られる化粧品分散物の場合、開始時に使用されるゲル化剤は流動化する。 本発明によれば、水溶性単位及びLCSTを有する単位を含むポリマーの存在により、この粘度の熱誘導化減少は生じない。 【0017】 ポリマー濃度が、各種の巨大分子によって有されるLCSTを有する単位の間の相互作用を許容するのに十分である場合、これらのゲル化特性が得られる。 「臨界凝集濃度」またはCAC("critical aggregation concentration")として知られている、必要とされる最小濃度は、流動学的測定によって評価される:それは、その温度以上で、本発明のポリマーの水溶液の粘度が、LCSTを有する鎖を含まない同等なポリマーの溶液の粘度よりも高くなる場合の温度である。 【0018】 CAC未満では、温度が「ゲル化点」またはT gelとして知られている臨界値より高くなると、本発明のポリマーはゲル化特性を有する。 文献データによれば、同じ濃度条件下で、LCSTを有する鎖のT gelと脱混合温度の間で良好な一致が存在する。 本発明のポリマーの水溶液のゲル化点は、流動学的測定によって決定される:それは、その温度以上で、ポリマー溶液の粘度が、LCST単位を含まない同等なポリマーの溶液の粘度よりも高くなる場合の温度である。 【0019】 本発明で使用されるポリマーは、2質量%に等しい水中での濃度について、5℃から40℃、好ましくは10℃から35℃の範囲のゲル化点によって特徴付けされる。 【0020】 US-A-5 939 485[7]及びWO 97/00275[8]は、外的刺激及び構造的成分の変化に応答して凝集可能な感受性成分を含む可逆的ゲル化ポリマーシステムを記載している。 外的刺激は温度であっても良い。 前記感受性成分は、例えばPluronic(登録商標)といったポロキサマーのようなブロックコポリマーであって良く、それはLCSTに対応しない臨界温度未満で微視的に凝集する。 非イオン性界面活性剤も、感受性成分として使用されても良い。 これらのポリマーは熱誘導化ゲル化特性を有し、医薬製品を輸送するために製薬業界で使用されても良く、化粧品業界を含む多くの他の業界で使用されても良い。 【0021】 これらの製剤では、ポリマーシステムの感受性成分は、加熱の間でLCSTを有する成分のものとは異なる挙動を有する。 かくして、それが約30−40℃に加熱された場合、それはミセル化、つまり微視的なレベルでの凝集の温度を示し、次いでそれがさらに加熱されると、より高温のLCST温度を示す。 このLCSTは、分子間の巨視的凝集に対応する。 WO-A-97/00275[8]の第16から17頁では、ゲル化及びLCSTが約70℃まで異なる温度で観察されることが説明されている。 これは、これらのポリマーが本発明のポリマーとは異なることを示す。 【0022】 文献WO-A-98/48768[9]もまた、ポリアクリル酸及びポロキサマーを含む可逆的熱誘導化ゲル化ポリマーシステムを使用する化粧品組成物を開示している。 かくしてこのポリマーは、本発明のポリマーとは異なる。 【0023】 文献[7]、[8]及び[9]に記載された可逆的ゲル化を有するシステムは、本発明で使用されるポリマーシステムとは異なる。 第一に、熱感受性単位は、5から40℃の範囲で脱混合温度を有さない。 第二に、LCSTを有する鎖の脱混合温度が、同じ温度条件下でゲル化点に実質的にタイプする本発明にポリマーとは異なり、これらのポリマーの熱感受性単位は、ゲル化点からは全くかけ離れた脱混合温度を有する。 【0024】 さらに、4から50℃の範囲の温度変化を受ける、懸濁液及びエマルションのような分散物を安定化するためのこれらのポリマーシステムを使用することは考慮されていなかった。 【0025】 本発明で使用されるポリマーは、一方で水溶性単位を含む、他方で前述のLCSTを有する単位を含む、ブロックポリマーまたはグラフトポリマーであって良い。 【0026】 かくして、本発明の文脈で使用されるポリマーは、例えばLCSTを有するブロックと交互に存在する水溶性ブロックを含むブロックポリマーであっても良い。 【0027】 これらのポリマーは、LCSTを有するグラフトを有する水溶性単位から形成される骨格を有するグラフトポリマーの形態で存在しても良い。 【0028】 この明細書では、用語、「水溶性単位」及び「LCST単位」は、一方で水溶性単位を、他方でLCSTを有する単位を共に結合する基で、結合単位が、一方で水溶性単位、他方でLCSTを有する単位によって有される反応部位の反応から由来するものを含まない。 【0029】 これらのポリマーにおける水溶性単位は、少なくとも10g/l、好ましくは20g/lの割合に、5℃から80℃の温度で水中で可溶性である単位である。 【0030】 しかしながら用語、「水溶性単位」はまた、前述の溶解性を有する単位を必ずしも有さない単位をも意味するが、5℃から80℃で1重量%での水溶液において、巨視的に均一で透明な溶液、つまり1cmの厚みのサンプルを通じて400から800nmの間の波長とは無関係に、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%の最大光透過値を有する溶液の生産の可能にする。 【0031】 これらの水溶性単位は、LCSTタイプの熱誘導化脱混合温度を有さない。 【0032】 これらの水溶性単位は、ビニルモノマーのフリーラジカル重合によって、または重縮合によって得られても良く、あるいは別法として、天然ポリマーまたは変性存在天然ポリマーからなっても良い。 【0033】 例として、単独でまたは混合物として、前記水溶性単位を形成するために使用されても良い以下のモノマーが挙げられる: − (メタ)アクリル酸; − 以下の式(I)のビニルモノマー: 【0034】 【化2】
【0035】 [式中:
− RはH、−CH
3 、−C 2 H 5 、または−C 3 H 7から選択され;及び− Xは以下のものから選択される: − −OR'タイプのアルキルオキシドであって、R'は少なくとも一つのハロゲン原子(ヨウ素、臭素、塩素、またはフッ素);スルホン酸(−SO
3 − )、スルファート(−SO 4 − )、ホスファート(−PO 4 H 2 );ヒドロキシル(−OH);第一級アミン(−NH 2 );第二級アミン(−NHR 1 )、第三級アミン(−NR 1 R 2 )、または第四級アミン(−N + R 1 R 2 R 3 )基{ここで、R 1 、R 2及びR 3は互いに独立に、1から6の炭素原子を含む直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の炭化水素基(ここでR'+R 1 +R 2 +R 3の炭素原子の合計が7超えないことを条件とする)である}で任意に置換された、1から6の炭素原子を含む直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の炭化水素基である;及び− −NH 2 、−NHR 4 、及び−NR 4 R 5基であって、R 4及びR 5は互いに独立に、1から6の炭素原子を含む直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の炭化水素基(ここでR 4 +R 5の炭素原子の合計が7超えないことを条件とする)であって、前記R 4及びR 5はハロゲン原子(ヨウ素、臭素、塩素、またはフッ素);ヒドロキシル(−OH);スルホン酸(−SO 3 − )、スルファート(−SO 4 − );ホスファート(−PO 4 H 2 );第一級アミン(−NH 2 );第二級アミン(−NHR 1 )、第三級アミン(−NR 1 R 2 )、及び/または第四級アミン(−N + R 1 R 2 R 3 )基{ここで、R 1 、R 2及びR 3は互いに独立に、1から6の炭素原子を含む直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の炭化水素基(ここでR 4 +R 5 +R 1 +R 2 +R 3の炭素原子の合計が7超えないことを条件とする)である}で任意に置換される] − マレイン酸無水物;
− イタコン酸;
− 式CH
2 =CHOHのビニルアルコール; − 式CH
2 =CH−OCOCH 3のビニルアセタート; − N−ビニルラクタム、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びN−ブチロラクタム− 式CH
2 =CHOR 6のビニルエーテルであって、R 6は1から6の炭素を含む直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和の炭化水素基である; − 水溶性スチレン誘導体、特にスチレンスルホナート;
− ジメチルジアリルアンモニウムクロリド;並びに− ビニルアセタミド。
【0036】
水溶性単位の全部または一部を構成しても良い重縮合物及び天然ポリマーまたは変性された天然ポリマーの中では、以下のものが挙げられる:
− 水溶性ポリウレタン;
− キサンタンゴム、特にKelco社によりKeltrol T及びKeltrol SFの名称で;またはRhodia社によりRhodigel SM及びRhodigel 200の名称で市販されている製品;
− アルギナート(Monsanto社製のKelcosol)、及びその誘導体、例えばプロピレングリコールアルギナート(Kelco社製のKelcoloid LVF);
− セルロース誘導体、特にカルボキシメチルセルロース(Aquasorb A500, Hercules)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及び第四級化ヒドロキシエチルセルロース;
− ガラクトマンナン及びその誘導体、例えばコンニャクゴム、グアゴム、ヒドロキシプロピルグア、ナトリウムメチルカルボキシラート基で変性されたヒドロキシプロピルグア(Jaguar XC97-1, Rhodia)、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムグアクロリド。
【0037】
さらにポリエチレンイミンが挙げられる。
【0038】
水溶性単位は好ましくは、それらがグラフトポリマーの水溶性骨格を構成する場合、1000g/molから5000000g/molの範囲のモル質量を有する。
【0039】
水溶性単位は好ましくは、それらがマルチブロックポリマーのブロックを構成する場合、500g/molから100000g/molの範囲のモル質量を有する。
【0040】
本発明で使用されるポリマーのLCSTを有する単位は、特定の温度未満で変性される水溶性を有する単位であると定義されて良い。 それらは、水中でのそれらの溶解性の領域を規定する熱誘導化脱混合温度(または曇点)を有する単位である。 ポリマー濃度の関数として得られる最初脱混合温度は、「LCST」(Lower Critical Solution Temperature;低級臨界溶解温度)と称される。 各ポリマー濃度について、熱誘導化脱混合温度が観察される;それは、曲線の最小点であるLCSTより高い。 この温度未満では、ポリマーは水中で可溶性である;この温度を超えると、ポリマーは水中での溶解性を失う。
【0041】
用語、「温度Tで水中に可溶性」は、その単位がTで少なくとも1g/l、好ましくは少なくとも2g/lの可溶性を有することを意味する。
【0042】
LCSTの測定は、視覚的に実施されて良い:水溶液の曇点が出現する温度が測定される;この曇点は、溶液の不透明化または透明性の損失によって反映される。
【0043】
一般的に、透明な組成物は、1cmの厚みのサンプルを通じて、400から800nmの間の波長に無関係に、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%の最大光透過値を有するであろう。
【0044】
透過率は、その光スペクトルの波長で作用する分光光度計の光ビームに1cmの厚みのサンプルを配置することによって測定されて良い。
【0045】
本発明で使用されるポリマー中のLCSTを有する単位は、以下のポリマーの一つ以上からなって良い:
− ポリエーテル、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、またはエチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)とのランダムコポリマー;
− ポリビニルメチルエーテル;
− ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、及びポリ−N−エチルアクリルアミド;並びに− ポリビニルカプロラクタム。
【0046】
好ましくは、LCSTを有する単位は、n=1から50であるポリプロピレンオキシド(PPO)
n 、または下式によって表されるエチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)とのランダムコポリマーからなる: (EO)
m (PO) n [式中、mは1から40、好ましくは2から20の範囲の整数であり、nは10から60、好ましくは20から50の範囲の整数である]。
【0047】
好ましくはLCSTを有するこれらの単位のモル質量は、500から5300g/mol、特に1500から4000g/molである。
【0048】
EO及びPO単位のランダムな分布は、その温度を超えると巨視的相分離が観察される低級臨界脱混合温度の存在によって反映されることが見出されている。 この挙動は、ミセル化温度として知られている臨界温度を超えてミセルを形成する(巨視的凝集)、ブロック(EO)(PO)コポリマーの挙動とは異なる。
【0049】
かくしてLCSTを有する単位は、特にアミノ化、特にモノアミノ、ジアミノ、またはトリアミノ、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダムコポリマーから由来して良い。 市場で入手可能なLCSTを有する単位としては、Huntsman社によりJeffamineの名称で市販されているコポリマー、特にJeffamin XTJ-507 (M-2005)、Jeffamine D-2000、及びJeffamine XTJ-509 (またはT-3000)が挙げられる。
【0050】
LCSTを有する単位はまた、OH末端基を含むランダムEO/POコポリマー、例えばClariant社によりPolyglycols P41及びB11の名称で市販されている製品から由来しても良い。
【0051】
LCSTを有するポリマー状及びコポリマー状N置換化アクリルアミド誘導体、さらにはポリビニルカプロラクタム及びビニルカプロラクタムコポリマーもまた、LCSTを有する単位として本発明で使用されて良い。
【0052】
LCSTを有するポリマー状及びコポリマー状N置換化アクリルアミド誘導体の例としては、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エチルアクリルアミド、及びN−イソプロピルアクリルアミド(またはN−エチルアクリルアミド)と、前述の式(I)を有するビニルモノマー、またはマレイン酸無水物、イタコン酸、ビニルピロリドン、スチレン及びその誘導体、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ビニルアセタミド、ビニルエーテル、及びビニルアセタート誘導体から選択されるモノマーとのコポリマーが挙げられる。
【0053】
これらのポリマーのモル質量は、好ましくは1000g/molから500000g/mol、好ましくは2000から50000g/molである。
【0054】
これらのポリマーは、反応性アミノ末端基を有する前駆体オリゴマーを得るために、過硫酸カリウムの存在下で、アミノエタンチオールヒドロクロリドのような開始剤のペアを使用してフリーラジカル重合によって合成されて良い。
【0055】
ビニルカプロラクタムコポリマーの例としては、ビニルカプロラクタムと、前述の式(I)を有するビニルモノマー、またはマレイン酸無水物、イタコン酸、ビニルピロリドン、スチレン及びその誘導体、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ビニルアセタミド、ビニルアルコール、ビニルアセタート、ビニルエーテル、及びビニルアセタート誘導体から選択されるモノマーとのコポリマーが挙げられる。
【0056】
これらのビニルカプロラクタムポリマーまたはコポリマーのモル質量は、一般的に1000g/molから500000g/mol、好ましくは2000から50000g/molである。
【0057】
これらの化合物は、反応性アミノ末端基を有する前駆体オリゴマーを得るために、過硫酸カリウムの存在下で、アミノエタンチオールヒドロクロリドのような開始剤のペアを使用してフリーラジカル重合によって合成されて良い。
【0058】
最終ポリマー中のLCSTを有する単位の重量割合は、最終ポリマーに対して好ましくは5から70重量%、特に20から65重量%、特には30から60重量%である。
【0059】
前述のように、前記LCSTを有する単位の脱混合温度は、前記LCSTを有する単位の1質量%の水中での濃度について、5から40℃、好ましくは10から35℃である。
【0060】
本発明の文脈で使用されるポリマーは、グラフト化、共重合、またはカップリング反応工程を使用して、当業者の一般的知見に基づいて当業者によって容易に調製されて良い。
【0061】
最終ポリマーが、特にLCST側鎖を有する水溶性骨格を有するグラフトポリマーの形態で存在する場合、少なくとも一つの反応性末端基、特にアミノ末端基を含むLCSTを有する単位を、少なくとも10%(モル基準で)のカルボン酸官能基のような反応性基を有する、骨格を形成する水溶性ポリマーにグラフトすることによって、前記ポリマーを調製することが可能である。 この反応は、N−メチルピロリドンまたは水のような溶媒中で、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドヒドロクロリドのようなカルボジイミドの存在下で実施されて良い。
【0062】
グラフトポリマーを調製するための別の可能性は、例えば、LCSTを有するマクロモノマー(ビニル末端基を有する前述のLCSTを有する鎖)と、アクリル酸または式(I)のビニルモノマーのような水溶性ビニルモノマーとを共重合することからなる。
【0063】
最終ポリマーがブロックポリマーの形態で存在する場合、各末端で相補的な反応部位を有する、水溶性単位とLCSTを有する単位の間でのカップリングによって、前記ポリマーを調製することが可能である。
【0064】
グラフト工程及びカップリング工程の場合では、LCSTを有する単位の反応性部位は、アミン官能基、特にモノアミン、ジアミン、またはトリアミン、及びOH官能基であって良い。 この場合、水溶性単位の反応性部位は、カルボン酸官能基であって良い。
【0065】
以前に記載されているように、本発明の分散物は、水中油型エマルション及び水中油中水型多相エマルションの形態、またはO/Wエマルションの水性相中の粒子の分散物からなる多相組成物の形態で存在して良い。 全ての場合で、分散物の安定性は、前述のような水溶性単位とLCSTを有する単位を含むポリマーの存在によって確保される。 この安定性を確保するために、水中油型エマルション及び水中油中水型エマルション、または多相組成物の連続的水性相中のポリマーの質量濃度は、一般的に0.01から20%、好ましくは0.1から10%である。
【0066】
前記連続相は、局所適用、特に化粧品適用を許容する生理学的に許容可能な媒体からなって良い。
【0067】
この特許出願では、用語、「生理学的に許容可能な媒体」は、頭皮を含む皮膚、爪、粘膜、目、及び毛髪、または身体の皮膚の他の領域のような全てのケラチン物質と適合的である媒体を意味する。
【0068】
本発明の分散物のための生理学的に許容可能な媒体は水を含む。 水の量は、組成物の全重量に対して30から99.98重量%、好ましくは40から95重量%の範囲であって良い。
【0069】
使用される水は、水の他に、植物水、例えばヤグルマソウ水、鉱水、例えばeau de Vittel、eau de Lucas、またはeau de la Roche Posay、及び/または湧き水であって良い。
【0070】
生理学的に許容可能な媒体は、水の他に、1から8の炭素原子を含む低級アルコール、例えばエタノール;ポリオール、例えばグリセロール;グリコール、例えばブチレングリコール、イソプレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばPEG−8;ソルビトール;糖、例えばグルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、及びスクロース;並びにそれらの混合物から選択される一つ以上の溶媒を含んで良い。 溶媒の量は、水性相の全重量に対して0.5から30重量%、好ましくは5から20重量%の範囲であって良い。
【0071】
油性相は好ましくは少なくとも一つの油を含む。
【0072】
本発明の組成物で使用できる油としては、例えば以下のものが挙げられる:
− 動物起源の炭化水素ベースの油、例えばパーヒドロスクアレン;
− 植物起源の炭化水素ベースの油、例えば4から10の炭素原子の脂肪酸の液体トリグリセリド、例えばヘプタン酸またはオクタン酸トリグリセリド、または別法として、例えばヒマワリ油、コーン油、ダイズ油、インゲンマメ油、グレープシード油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アンズ油、マカダミア油、アララ油、ヒマシ油、アボカド油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えばStearineries Dubois社により市販されているもの、またはDynamit Nobel社によりMyglyol 810、812及び818の名称で市販されているもの、ホホバ油、またはカリテバター;
− 特に脂肪酸の合成エステル及びエーテル、例えば式R
1 COOR 2及びR 1 OR 2の油、でR 1が8から29の炭素原子を含む脂肪酸残基を表し、R 2が3から30の炭素原子を含む分枝状または非分枝状炭化水素ベースの鎖を表すもの、例えばパーセリン油、イソノニルイソノナノアート、イソプロピルミリスタート、2−エチルヘキシルパルミタート、2−オクチルドデシルステアラート、2−オクチルドデシルエルカート、またはイソステアリルイソステアラート;ヒドロキシル化エステル、例えばイソステアリルラクタート、オクチルヒドロキシステアラート、オクチルドデシルヒドロキシステアラート、ジイソステアリルマラート、トリイソセチルシトラート、及び脂肪アルコールヘプタノアート、オクタノアート、及びデカノアート;ポリオールエステル、例えばプロピレングリコールジオクタノアート、ネオペンチルグリコールジヘプタノアート、及びジエチレングリコールジイソノナノアート;及びペンタエリスリトールエステル、例えばペンタエリスリチルテトライソステアラート; − 鉱物または合成起源の直鎖状または分枝状炭化水素、例えば揮発性または不揮発性流動パラフィン及びその誘導体、ワセリン、ポリデセンまたは水素化ポリイソブテン、例えばパーリーム油;
− 天然または合成精油、例えばユーカリ油、ハイブリッドラベンダー油、ラベンダー油、ベチベルソウ油、リッツアキュベバ油、レモン油、ビャクダン油、ローズマリー油、カモミール油、ハッカ油、ナツメグ油、シナモン油、ヒソップ油、キャラウェイ油、オレンジ油、ゲラニトール油、カデ油、及びベルガモ油;
− 8から26の炭素原子を含む脂肪アルコール、例えばセチルアルコール、ステアリルアルコール、及びそれらの混合物(セチルステアリルアルコール)、オクチルドデカノール、2−ブチルオクタノール、2−ヘキシルデカノール、2−ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコール、またはリノレイルアルコール;
− 部分的に炭化水素ベースの及び/またはシリコーンベースのフルオロ油、例えば文献JP-A-2-295 912に記載されているもの;
− シリコーン油、例えば室温で液状またはペースト状である、直鎖状または環状シリコーン鎖を含む、揮発性または不揮発性のポリジメチルシロキサン、特にシクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコーン)、例えばシクロヘキサシロキサン;2から24の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ、またはフェニル基をシリコーン鎖にペンダント状にまたは末端に含むポリジメチルシロキサン;フェニルシリコーン、例えばフェニルトリメチコーン、フェニルジメチコーン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコーン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、2−フェニルエチルトリメチルシロキシシリカート、及びポリメチルフェニルシロキサン;
− これらの混合物。
【0073】
前述の油のリストにおいて用語、「炭化水素ベースの油」は、主に炭素原子及び水素原子を含み、任意にエステル、エーテル、フルオロ、カルボン酸、及び/またはアルコール基を含むいずれの油をも包含する。
【0074】
油性相に存在してより他の脂肪物質は、例えば8から30の炭素原子を含む脂肪酸、例えばステアリン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、及びオレイル酸;ワックス、例えばラノリン、ミツロウ、カルナウバワックス、カンデリラワックス、パラフィンワックス、リグナイトワックス、またはマイクロクリスタリンワックス、セレシンまたはオゾケライト、合成ワックス、例えばポリエチレンワックス、及びフィッシャートロプシュワックス;ゴム、例えばシリコーンゴム(ジメチコノール);シリコーン樹脂、例えばトリフルオロメチル−C1−4−アルキルジメチコーン、及びトリフルオロプロピルジメチコーン;及びシリコーンエラストマー、例えばShin-Etsu社により"KSG"の名称で、Dow Corning社により"Trefil"、"BY29"、または"EPSX"の名称で、あるいはGrant Industries社により"Gransil"の名称で市販されている製品が挙げられる。
【0075】
これらの脂肪物質は、所望の特性、例えば粘稠度または極めの特性を有する組成物を調製するために、当業者により可変的な態様で選択されて良い。
【0076】
油性相の量は、組成物の全重量に対して、例えば0.01から50重量%、好ましくは0.1から30重量%の範囲であって良い。
【0077】
本発明の分散物はまた、特にケア、メイクアップ、メイクアップ除去、抗日光製品、毛髪製品、及び髭剃り製品の分野での使用のための、化粧品及び皮膚科学分野で一般的に使用されるアジュバントを含んでも良い。 これらのアジュバントは、鉱物または有機フィラー、界面活性剤、親水性または親油性活性剤、防腐剤、ゲル化剤、可塑剤、抗酸化剤、香料、脱臭剤、消泡剤、金属イオン封鎖剤(EDTA)、酸性または塩基性pH調節剤またはバッファー、及び染料(顔料または着色剤または真珠光沢剤)からなって良い。 それらの性質に依存して、これらのアジュバントは、油性相中、水性相中、及び/または脂質ベシクル中に導入しても良い。 これらの各種のアジュバントの量は、考慮される分野で一般的に使用される量、例えば分散物の全重量の0.01から20%である。 言うまでもなく、当業者は本発明の分散物に添加される任意の化合物を選択するのに注意を払い、これらの分散物に本質的に関連する有利な特性が、考慮される添加によって負に影響されない、または実質的に負に影響されないようにするであろう。
【0078】
用語、「鉱物または有機粒子」は、フィラー、顔料、及び真珠光沢剤を含むように理解されるべきである。 用語、「フィラー」は、組成物に体質または堅さを与え、及び/またはメイクアップに柔軟性、光沢を消す効果、及び均一性を与えることを企図した無色または白色の、鉱物または合成の、ラメラ状または非ラメラ状の粒子を意味するように解されるべきである。 特にフィラーとしては、タルク、マイカ、シリカ、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、カオリン、ナイロン(登録商標)パウダー、例えばナイロン(登録商標)-12(Atochem社により市販されているOrgasol)、ポリエチレンパウダー、テフロン(登録商標)(テトラフルオロエチレンポリマーパウダー)、ポリウレタンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリエステルパウダー、任意に変性されたデンプン、コポリマーミクロスフェア、例えばNobel Industrie社によりExpancelの名称で市販されているもの、ミクロスポンジ、例えばDow Corning社により市販されているPolytrap、シリコーン樹脂ミクロビーズ、例えばToshiba社によりTospearlの名称で市販されているもの、沈降化炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マグネシウムヒドロカーボナート、ヒドロキシアパタイト、中空シリカミクロスフェア(Maprecos社製のSilica Beads)、ガラスまたはセラミックミクロカプセル、8から22の炭素原子、好ましくは12から18の炭素原子を含む有機カルボン酸から由来する金属石鹸、例えばステアリン酸亜鉛、マグネシウム、またはリチウム、ラウリン酸亜鉛、またはミリスチン酸マグネシウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0079】
用語、「顔料」は、組成物を着色及び/または不透明化することを企図した、媒体中に不溶性の白色または着色の、鉱物または有機粒子を意味すると解されるべきである。 それらは白色または着色でも良く、鉱物及び/または有機でも良く、標準的またはナノメーターのサイズを有しても良い。 鉱物顔料及びナノ顔料の中では、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、または二酸化セリウム、さらには酸化亜鉛、酸化鉄、または酸化クロム、ナノチタン(二酸化チタンナノ顔料)、ナノ亜鉛(酸化亜鉛ナノ顔料)、及びフェリックブルーが挙げられる。 有機顔料の中では、カーボンブラック及びレーキ、例えば酸性染料、例えばハロ酸染料、アゾ染料、またはアントラキノン染料のカルシウム、バリウム、アルミニウム、またはジルコニウム塩が挙げられる。
【0080】
用語、「真珠光沢剤」は、光を反射する真珠光沢顔料を意味すると解されるべきである。 考慮される真珠光沢剤としては、天然真珠母、酸化チタン、酸化鉄、天然顔料、またはオキシ塩化ビスマスで被覆されたマイカ、並びに着色化チタンマイカが挙げられる。
【0081】
エマルションの極めを調節するために、または乳液からクリームの広範囲の極めに近づけるために、本発明の組成物にゲル化剤を添加してもよい。
【0082】
使用されて良いゲル化剤は、親水性ゲル化剤であって良い。 親水性ゲル化剤の例として、特にカルボキシビニルポリマー(カーボマー)、アクリル酸コポリマー、例えばアクリラート/アルキルアクリラートコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリサッカリド、天然ゴム、及びクレーが挙げられる。
【0083】
水中油型エマルションで使用されて良い界面活性剤は、特に非イオン性乳化界面活性剤、例えば2から16の炭素原子を含むポリオールと、12から22の炭素原子を含む脂肪酸の部分的エステルに、1から200molのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの添加により得られる製品、例えばポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、例えばPEG−100ステアラート、PEG−50ステアラート、及びPEG−40ステアラート;ポリオールの脂肪酸エステル、例えばグリセリルステアラート、ソルビタントリステアラート、及びTween(登録商標)20またはTween(登録商標)60の商標名で市販されているオキシエチレン化ソルビタンステアラート、糖エステル、例えばスクロースステアラート、並びにこれらの混合物であって良い。
【0084】
本発明の分散物は、頭皮を含む皮膚、爪、毛髪、睫毛、眉毛、眼、粘膜、及び半粘膜、並びに身体または顔の皮膚のいずれかの他の領域に適用されても良い、特に化粧品メイクアップまたはケア組成物の形態で存在しても良い。
【0085】
本発明に係る分散物は、多くの化粧品または皮膚科学的応用において使用されて良い;それらは特に、顔の皮膚及び/または身体の皮膚、粘膜(唇)、頭皮、及び/またはケラチン繊維(毛髪または睫毛)を処理、ケア、及び/またはメイクアップするために使用されて良い。
【0086】
かくして本発明の分散物は、皮膚または粘膜をケアするための、あるいは皮膚からメイクアップを除去するためのまたは皮膚を擦るための、顔、手、または身体のための保護、処理、またはケアクリーム、保護またはケアボディー乳液、ローション、乳液、ゲル、またはムースのようなケア製品及び/または衛生製品として使用されて良い。 それらはまた、ケラチン繊維、皮膚、唇、及び/または爪のためのメイクアップ製品、例えばファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウ、口紅、マスカラ、またはアイライナーを構成しても良い。
【0087】
本発明の組成物はまた、紫外線に対して皮膚を保護するための抗日光製品として使用されても良い。
【0088】
かくして本発明の主題は、顔の皮膚及び/または身体の皮膚、粘膜(唇)、頭皮、及び/またはケラチン繊維を処理、ケア、及び/またはメイクアップするための、前述の分散物の美容用の使用である。
【0089】
本発明の別の主題は、前述の分散物を、この組成物を使用するための常法によってケラチン物質に適用することを特徴とする、頭皮を含む皮膚、毛髪、睫毛、眉毛、爪または粘膜、特に唇のようなヒトのケラチン物質を処理するための美容方法である。 例えば、皮膚、頭皮、及び/または粘膜に対するクリーム、ゲル、漿液、ローション、または乳液の適用が挙げられる。
【0090】
本発明の他の特徴及び利点は、添付された図面を参考にして、非制限的な説明のために与えられた以下の記載を読むことでより明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0091】
以下の実施例は、温度安定性分散物を調製するための、水溶性単位及びLCSTを有する単位を含むポリマーの使用を説明する。
【0092】
これらの実施例で使用されるポリマーは、LCSTを有する側鎖またはグラフトを有するポリアクリル酸(PAA)骨格からなる。 それらは、水溶性骨格(ポリアクリル酸)のモル質量、LCSTを有する鎖の化学的性質、それらのポリマー中の質量割合、及びそれらのモル質量によって特徴付けされる。
【0093】
使用されるポリマーの特徴は、表1に示されている。
【0094】
【表1】
【0095】
これらのポリマーは、以下の態様で調製される。
【0096】
ポリマー1の調製450000g/molの平均モル質量を有する3グラムのポリアクリル酸(Aldrich)を、60℃で12時間攪拌しながら、コンデンサーを備えた500ml反応器中の220mlのN−メチルピロリドンに溶解する。
【0097】
水中に1重量%の濃度で、16℃の曇点を有する2600g/molのモル質量を有する4.181グラムのモノアミノランダム(EO)
6 (PO) 39コポリマー(Huntsman社製のJeffamine M-2005)を、20℃で15分間攪拌しながら、50mlのN−メチルピロリドンに溶解する。 得られた溶液を、60℃で激しく攪拌しながら、ポリアクリル酸を含む反応媒体に滴下して加える。 【0098】
2.158グラムのジシクロヘキシルカルボジイミドを、20℃で15分間攪拌しながら、30mlのN−メチルピロリドンに溶解する。 得られた溶液を、60℃で激しく攪拌しながら、ポリアクリル酸とモノアミノランダム(EO)
6 (PO) 39コポリマーを含む反応媒体に滴下して加える。 最終混合物を60℃で12時間攪拌する。 【0099】
混合物を20℃に冷却し、次いで4℃で24時間冷蔵庫中に配置する。 形成されたジシクロヘキシルウレアの結晶を、反応媒体の濾過によって取り出す。
【0100】
次いで19gの35%水酸化ナトリウム(アクリル酸のモル数に対して4倍過剰)でポリマーを中和し、その沈降を導く。 12時間放置した後、反応媒体を濾過して、沈降化ポリマーを回収する。 このポリマーを35℃で24時間真空下で乾燥する。
【0101】
13.55グラムの固体を回収し、2リットルの脱イオン水に溶解する。 10000ドルトンにセットされたカットオフ値を有する膜を含むMillipore限外濾過システムを使用して、この溶液を限外濾過する。 かくして精製された溶液を凍結乾燥し、固体形態のポリマーを集積する。
【0102】
3.9%(モル基準)のモノアミノランダム(EO)
6 (PO) 39コポリマーをグラフトした7.05グラムのポリアクリル酸(450000g/mol)が得られる。 【0103】
最終ポリマー中のLCSTを有する単位の質量割合は51%である。
【0104】
かくして得られたポリマーは、20℃で水中に少なくとも10g/lの溶解度を有する。
【0105】
ポリマー2の調製ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(pNIPAM)グラフトを含むポリマー2を、2工程法によって調製する:
【0106】
1)反応性アミノ末端基を有するpNIPAMオリゴマーの合成8グラムのN−イソプロピルアクリルミド及び80mlのジメチルスルホキシドを、コンデンサーと窒素流入口を備えた250mlの三口丸底フラスコ内に導入する。 ウォーターバスを使用して攪拌しながらこの混合物を29℃に加熱し、窒素をバルリングさせる。 45分後、4mlのジメチルスルホキシドに事前に溶解した0.161グラムのアミノエタンチオールヒドロクロリドを反応媒体に加える。 5分後、8mlのジメチルスルホキシドに溶解した0.191グラムの過硫酸カリウムを反応媒体に加える。 この反応媒体を、29℃で3時間窒素雰囲気下で攪拌する。
【0107】
合成されたポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(pNIPAM)オリゴマーを、アセトン(40容量%)及びヘキサン(60容量%)の混合物中で反応媒体から沈降することによって単離する。
【0108】
2)ポリアクリル酸へのpNIPAMオリゴマーのグラフト化550000g/molのモル質量を有する3グラムのポリアクリル酸を、60℃で12時間攪拌しながら、250ml三口丸底フラスコ中の100mlの1−メチル−2−ピロリドンに溶解する。 25mlの1−メチル−2−ピロリドンに事前に溶解した3.757グラムのpNIPAMオリゴマーを、攪拌しながら反応媒体内に滴下して導入する。 15分後、25mlの1−メチル−2−ピロリドン中に事前に溶解した0.776グラムのジシクロヘキシルカルボジイミドを、激しく攪拌しながら反応媒体中に滴下して導入する。 反応媒体を、攪拌しながら60℃で12時間維持する。
【0109】
次いで反応媒体を20℃に冷却し、次いで4℃で24時間冷蔵庫に配置する。 次いで形成されたジシクロヘキシルウレアの結晶を濾過によって取り出す。 次いで19gの35%水酸化ナトリウム(アクリル酸のモル数に対して4倍過剰)でポリマーを中和し、その沈降を導く。 12時間放置した後、反応媒体を濾過して、沈降化ポリマーを回収する。 このポリマーを35℃で24時間真空下で乾燥する。
【0110】
10.2グラムの固体を回収し、2リットルの脱イオン水に溶解する。 10000ドルトンにセットされたカットオフ値を有する膜を含むMillipore限外濾過システムを使用して、この溶液を限外濾過する。 かくして精製された溶液を凍結乾燥し、固体形態のポリマーを集積する。
【0111】
0.9%(モル基準)のポリ−N−イソプロピルアクリルアミドをグラフトした4.8グラムのポリアクリル酸(550000g/mol)が得られる。
【0112】
最終ポリマー中のLCSTを有する単位の質量割合は49%である。
【0113】
ポリマーのLCSTを有する単位、つまりJeffamine単位及びpNIPAM単位の脱混合温度を測定する。
【0114】
これらの脱混合温度は、温度の関数として、これらの単位の水溶液の透過度を、500nmに等しい波長で測定することによって、視覚的UV分光光度計によって測定される;脱混合温度は、その温度未満で透過度が10℃でのその値の10%未満となる温度で同定される。 各種の質量濃度について得られた結果は、以下の表2に集積されている:
【0115】
【表2】
【0116】
純粋な水中でのポリマー1及び2の臨界凝集濃度(CAC)は、流動学によって測定される。 これは、その濃度以上で考慮されるポリマーの水溶液の粘度が、LCSTを有する単位を含まない同等なポリマーの溶液の粘度より高くなる濃度である。 粘度測定は、コーン/プレート形状(35mm、2°)、及び5から80℃の間の温度を維持するためのサーモスタットバスを備えたHaake RS150レオメーターを使用して実施される。 0.5℃/分の速度で15℃から50℃へ温度を変化させることによって、10s
−1の剪断速度でフローモードで測定を実施した。 【0117】
以下の結果が得られる:
ポリマー1:CAC=0.9重量%;
ポリマー2:CAC=0.3重量%。
【実施例1】
【0118】
実施例1:20重量%のパーリーム油及び0.8重量%のポリマー2を含む水中油型エマルション8000rpmで5分間、次いで13500rpmで1分間、DIAX600マシーン(Heidolph)を使用して攪拌にかけた、ポリマー(1.6g)/パーリーム油(0.4g)の水溶液の二相混合物からエマルションを調製する。 使用されたシャフトは、10mmの外径を有する(参照番号F10)。 乳化は、10mlの容量を有するピルボトルで実施される。
【0119】
エマルションの組成は以下の通りである:
【0120】
エマルションの巨視的外観の変化を、4℃及び45℃で経時的にモニターする;ポリマーの安定化特性が割合的に高い程、乳化相の高さが高くなる。
【0121】
4℃でt=0では、100%の容量が乳化している。 8日後、50%の容量が乳化し、水性相はピルボトルの底に存在する。
【0122】
45℃でt=0では、100%の容量が乳化している。 20日後、100%の容量が乳化しており、かくしてエマルションは安定である。
【0123】
かくしてポリマー2は、それが低質量濃度(エマルションの0.8重量%、即ち水性相中に1%)で存在する場合、45℃でエマルションの安定性を改良することが可能である。
【0124】
図1は、4℃から45℃の範囲の温度で1重量%でのポリマー2の水溶液の粘度(単位Pa.s)の変化を説明する。
【0125】
流動学的測定は、コーン/プレート形状(35mm、2°)、及び4から80℃の間の温度を維持するためのサーモスタットバスを備えたHaake RS150レオメーターを使用して実施された。 0.5℃/分の速度で4℃から45℃へ温度を変化させることによって、10s
−1に等しい賦課剪断速度でフローモードで測定を実施した。 【0126】
図1では、この濃度(1重量%)でポリマー2のゲル化点は27℃であることが観察される。
【0127】
2質量%の濃度では、ポリマー2のゲル化点は29℃である。
【0128】
かくして27℃を越えるポリマー2のゲル化力は、このゲル化点より高温でエマルションの安定性を改良することが可能であり、同時に20℃で低粘度(10s
−1下で0.2Pa.s)を維持することが可能である。 かくして室温での組成物の極めは、適切なゲル化剤を導入することによって所望のように調製されて良い。 【0129】
比較例:20重量%のパーリーム油及び0.29重量%の架橋化ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(AMPS)を含む水中油型エマルション8000rpmで5分間、次いで13500rpmで1分間、DIAX600マシーン(Heidolph)を使用して攪拌にかけた、ポリマー(1.6g)/パーリーム油(0.4g)の水溶液の二相混合物からエマルションを調製する。 使用されたシャフトは、10mmの外径を有する(参照番号F10)。 乳化は、10mlの容量を有するピルボトルで実施される。
【0130】
適切な割合で脱鉱水中にポリマーを攪拌して、単純に溶解することによってポリマー溶液を得る;次いでこの溶液のpHを、1M水酸化ナトリウム溶液で7に調節する。
【0131】
エマルションの組成は以下の通りである:
【0132】
得られたエマルションの巨視的変化を、4℃及び45℃で経時的にモニターする。
【0133】
4℃でt=0では、100%の容量が乳化している。 6日後、50%の容量が乳化し、水性相はピルボトルの底に存在する。
【0134】
45℃では、100%の容量がt=0で乳化している。 6日後、50%の容量が乳化しており、水性相はピルボトルの底に存在する。
【0135】
4℃と45℃で、このエマルションは以下の粘度を有する(実施例1に記載のプロトコールによって測定される):
粘度(10s
−1 、4℃) =0.22Pa. s 粘度(10s
−1 、45℃)=0.16Pa. s。 【0136】
このエマルションは、実施例1におけるポリマー2の溶液について得られた粘度と同様である4℃での粘度を有する;エマルションの安定性は、この温度で同様である。
【0137】
他方で、このエマルションは、45℃で6日後に不安定化し、より高い水性相の粘度を有する実施例1のエマルションとは異なる(実施例1:45℃で10s
−1下で1Pa.s)。 【0138】
かくして、本発明で使用されたポリマーは、20日間エマルションを安定化することが可能である一方で、この比較例で使用されたポリマーは、45℃で安定化力を有さない。
【実施例2】
【0139】
実施例2:ケアクリームこのクリームは、以下の組成を有する:
【0140】
TiO
2の水性10%懸濁液とポリマー1の水性10%溶液の攪拌で、単純な混合により水性相を調製する。 10%TiO 2懸濁液を、トリエタノールアミンと防腐剤を含む脱鉱水に、TiO 2粒子を攪拌しながら加えることによって調製した。 最終組成物を、4000rpmの速度で20分間Moritzブレンダーを使用して攪拌しながら、水性相に油性相をゆっくりと導入することによって得る。 【0141】
得られた組成物は、この濃度(4.5重量%)で25℃であるポリマー1のゲル化点より高温で、30日後に安定であるクリームである。
【参考文献】
【0142】
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】図1は、温度(単位℃)の関数として、本発明で使用されるポリマー2の溶液の粘度(単位Pa.s)の変化を説明するグラフである。
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