筋の老化防止用組成物 |
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申请号 | JP2015510016 | 申请日 | 2014-03-25 | 公开(公告)号 | JP6088044B2 | 公开(公告)日 | 2017-03-01 |
申请人 | 国立大学法人大阪大学; | 发明人 | 萩原 圭祐; | ||||
摘要 | |||||||
权利要求 | 牛車腎気丸を含有することを特徴とするサルコペニアまたはロコモティブシンドロームの予防および/または改善用組成物。請求項1に記載の組成物を含有する、サルコペニアまたはロコモティブシンドロームの予防および/または改善用医薬。 |
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说明书全文 | 本発明は、筋の老化防止用組成物に関するものである。 近年、加齢に伴う筋力の低下および筋肉量の減少を「サルコペニア」とよび、寝たきりに関与するものとして非常に注目されている。サルコペニアには加齢に伴って変化する身体活動の低下の他、栄養摂取量、ホルモン、炎症反応など様々な要因が関与すると言われており、80歳以上では50%以上が罹患していると推計される。サルコペニアが生じると、易転倒・転落、骨折、体動制限そしてサルコペニアの進行という悪循環を呈し、寝たきり状態を誘発する。70歳以上でサルコペニアを合併している場合、合併していない場合と比べて死亡率は2.3倍になるという報告もある。厚生白書によると、日本では2025年には寝たきりの高齢者が230万人に達すると推計されており、サルコペニアの予防や治療は重要な課題である。 現在、サルコペニアの予防および治療において、最も有効な手段は筋力トレーニングであるが(非特許文献1、2)、関節や循環器などの合併症を持つ高齢者や、既に体動制限を余儀なくされたりしている高齢者に対して、必要十分な強度の運動介入は困難である。サルコペニアの予防および治療薬として、必須アミノ酸、ホルモン剤(テストステロン、エストロゲン、成長ホルモン)、ACE阻害剤の臨床研究がなされているが、アミノ酸は治療効果がなく(非特許文献3)、ホルモン剤は乳がんや前立腺がん等のリスクが上がり、ACE阻害剤は症例が少なくエビデンス構築に至らないと報告されている(非特許文献4)。つまり、現在のところサルコペニアに対して十分な対策が行われていない状況であり、その治療薬として承認されている薬剤は皆無である。 Liu CJ, Latham NK. Cochrane Database Syst Rev. 2009 Jul 8(3): CD002759. Wilkes EA et al., Am J Clin Nutr. 2009 Nov; 90(5): 1343-50. Ferrando AA et al., Clin Nutr. 2010 Feb; 29(1): 18-23. Burton LA et al., Clin Interv Aging. 2010 Sep 7; 5: 217-28.
本発明は、筋の老化防止に有用な組成物、特に老化に伴う筋の委縮を改善することによりサルコペニアの予防または改善に有用な組成物を提供することを課題とする。 本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。 [1]ジオウの含有成分、サンシュユの含有成分、サンヤクの含有成分、タクシャの含有成分、ブクリョウの含有成分、ボタンピの含有成分、ケイヒの含有成分、ブシの含有成分、ゴシツの含有成分およびシャゼンシの含有成分からなる群より選択される一種または二種以上の成分を含有することを特徴とする筋の老化防止用組成物。 [2]ジオウの含有成分、ボタンピの含有成分、ケイヒの含有成分、ブシの含有成分、ゴシツの含有成分およびシャゼンシの含有成分からなる群より選択される一種または二種以上の成分を含有することを特徴とする前記[1]に記載の組成物。 [3]ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬を含有することを特徴とする前記[1]に記載の組成物。 [4]ジオウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬を含有することを特徴とする前記[3]に記載の組成物。 [5]筋の萎縮を改善する前記[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。 [6]サルコペニアの予防および/または改善用である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。 [7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物を含有する医薬。 [8]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物を含有する飲食品。 [9]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物を含有するサプリメント。 [10]牛車腎気丸、八味丸または六味丸である前記[7]に記載の医薬。 本発明により、筋の老化防止に有用な組成物を提供することができる。本発明の組成物は、老化に伴う筋の委縮を改善することができ、サルコペニアの予防または改善用の医薬、飲食品、サプリメント等として非常に有用である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)を用いた牛車腎気丸投与試験における、試験開始時(8週齢)の平均体重と試験終了時(38週齢)の平均体重の変化を示す図である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)を用いた牛車腎気丸投与試験における、13週齢〜14週齢時の1週間の1日1匹当たりの食事摂取量を示す図である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)を用いた牛車腎気丸投与試験終了時(38週齢)のマウスのヒラメ筋をヘマトキシリン・エオジン染色して観察した結果を示すである。 老化促進モデルマウス(SAMP8)を用いた牛車腎気丸投与試験終了時(38週齢)のマウスのヒラメ筋の筋線維面積を測定した結果を示す図である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)を用いた牛車腎気丸投与試験終了時(38週齢)のマウスのヒラメ筋の遅筋(トロポニンI陽性)および速筋(トロポニンT陽性)を免疫染色により染め分けて観察した結果を示す図である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)を用いた牛車腎気丸投与試験終了時(38週齢)のマウス筋肉中のトロポニンIおよびトロポニンTの発現量をウエスタンブロッティングで解析した結果を示す図である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)を用いた牛車腎気丸投与試験終了時(38週齢)のマウス筋肉中のPGC−1αの発現量をウエスタンブロッティングで解析した結果を示す図である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)を用いた牛車腎気丸投与試験終了時(38週齢)のマウス筋肉中のAktのリン酸化をウエスタンブロッティングで解析した結果を示す図である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)を用いた牛車腎気丸投与試験終了時(38週齢)のマウス筋肉中のGSK3βのリン酸化をウエスタンブロッティングで解析した結果を示す図である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)を用いた牛車腎気丸投与試験終了時(38週齢)のマウスのヒラメ筋をPAS染色して観察した結果を示す図である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)を用いた牛車腎気丸投与試験終了時(38週齢)のマウス筋肉中のFoxOファミリーのリン酸化をウエスタンブロッティングで解析した結果を示す図である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)を用いた牛車腎気丸投与試験終了時(38週齢)のマウスの筋肉中のMAFbxおよびMuRF1の発現量をウエスタンブロッティングで解析した結果を示す図である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)に各漢方補腎剤を6週間摂取させた後のマウスのヒラメ筋をヘマトキシリン・エオジン染色して顕微鏡観察した結果を示す図である。 老化促進モデルマウス(SAMP8)に各漢方補腎剤を6週間摂取させた後のマウスのヒラメ筋の筋線維面積を測定した結果を示す図である。 牛車腎気丸の抗サルコペニア効果の臨床的検討における対象患者の背景を示す図である。 牛車腎気丸の抗サルコペニア効果の臨床的検討における牛車腎気丸治療前後の体重、BMI、脂肪量、筋肉量の評価結果を示す図である。 牛車腎気丸の抗サルコペニア効果の臨床的検討における牛車腎気丸治療前後の握力(左右)、2ステップ値、ロコモ25の評価結果を示す図である。 牛車腎気丸の抗サルコペニア効果の臨床的検討における著効患者の握力の推移を示す図である。 牛車腎気丸の抗サルコペニア効果の臨床的検討における著効患者の立ち上がりテストの推移を示す図である。 牛車腎気丸の抗サルコペニア効果の臨床的検討における著効患者の2ステップ値の推移を示す図である。 牛車腎気丸の抗サルコペニア効果の臨床的検討における著効患者のロコモ25の推移を示す図である。
漢方では、生長・発育・生殖をつかさどる生命エネルギーを腎気と呼び、腎気が加齢によって減少した状態を腎虚と呼ぶ。腎虚になると、関節痛、下肢のしびれ、耳鳴り、夜間の頻尿などのいわゆる老化の症状を示す。腎虚の諸症状を改善する漢方薬は補腎剤と呼ばれ、牛車腎気丸、八味丸(八味地黄丸、八味腎気丸とも称される)、六味丸(六味地黄丸とも称される)などが知られている。 牛車腎気丸は、疲れやすい、四肢が冷えやすい、尿量減少または多尿、口渇等の症状を伴う下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ等に効果がある。八味丸は、疲労・倦怠感、尿量減少または多尿、口渇、手足に交互に冷感と熱感がある等の症状を伴う腎炎、糖尿病、陰萎、坐骨神経痛、腰痛、脚気、膀胱カタル、前立腺肥大、高血圧等に効果がある。六味丸は、疲れやすい、尿量減少または多尿、口渇等の症状を伴う排尿困難、頻尿、むくみ、かゆみ等に効果がある。しかし、これらの補腎剤が加齢に伴う筋力の低下や筋肉量の減少にどのような効果を奏するかについては知られていない。本発明者は、補腎剤と呼ばれる漢方薬の成分が老化による筋の委縮を改善することを見出し、本発明を完成した。 本発明は、ジオウの含有成分、サンシュユの含有成分、サンヤクの含有成分、タクシャの含有成分、ブクリョウの含有成分、ボタンピの含有成分、ケイヒの含有成分、ブシの含有成分、ゴシツの含有成分およびシャゼンシの含有成分からなる群より選択される一種または二種以上の成分を含有する筋の老化防止用組成物を提供する。 ジオウ(地黄)はゴマノハグサ科ジオウ属植物の根茎である。ジオウの含有成分としては、カタルポール等のイリドイド配糖体、マンニノトリオース、ラフィノース、スタキオース等の糖類、マンニトール等の糖アルコール、アルギニン等のアミノ酸、リン酸類などが挙げられる。 サンシュユ(山茱萸)は、ミズキ科サンシュユの種子を除いた果実を乾燥したものである。サンシュユの含有成分としては、モロニサイド、ロガニン、スウェロサイド等のイリドイド配糖体、没食子酸、リンゴ酸などが挙げられる。 サンヤク(山薬)は、ヤマノイモ科ヤマノイモの皮を薄く剥いて乾燥したものである。サンヤクの含有成分としては、デンプン、糖蛋白質、アミノ酸、コリン、アラントイン、ジアスターゼ、カタラーゼ、ムチンなどが挙げられる。 タクシャ(沢瀉)はオモダカ科サジオモダカの根茎を乾燥したものである。タクシャの含有成分としては、四環性トリテルペノイドのアリソールA、B、C、それらのアセチル化合物などが挙げられる。 ブクリョウ(茯苓)は、サルノコシカケ科のマツホド菌の菌核を乾燥し外皮を除いたものである。ブクリョウの含有成分としては、パキマン等の多糖類、パキマ酸、エブリコ酸、デハイドロエブリコ酸、ツムロース酸等の四環性トリテルペンカルボン酸、エルゴステロールなどが挙げられる。 ボタンピ(牡丹皮)は、ボタン科ボタンの根の皮を乾燥したものである。ボタンピの含有成分としては、ペオニフロリン、ペオノール、ペオノサイド、ペオノライド、安息香酸、ベンゾイルオキシペオニフロリン、カンペステロールなどが挙げられる。 ケイヒ(桂皮)は、クスノキ科、ニッケイの樹皮、または周皮の一部を除いたものである。ケイヒの含有成分としては、精油、ケイヒアルデヒド、ジテルペノイド、カテキン類、タンニンなどが挙げられる。 ブシ(附子)は、キンポウゲ科トリカブトの塊根を減毒加工したものである。ブシの含有成分としては、強毒性のブシジエステルアルカロイドとしてアコニチン、ジェサコニチン、ヒバコニチン、メサコニチン、低毒性のアチシン系としてアチシン、コブシン、イグナビン、ソンゴリン、強心成分としてハイゲナミン、コリネインなどが挙げられる。 ゴシツ(牛膝)は、ヒユ科ヒナタイノコズチまたはトウイノコズチの根である。ゴシツの含有成分としては、オレアノン酸、エクジソン、イノコステロンなどが挙げられる。 シャゼンシ(車前子)は、オオバコ科オオバコの種子である。シャゼンシの含有成分としてはイリドイド、粘液性多糖であるプランタサン、プランタゴームシラーゲA、フラバノン配糖体であるプランタゴシドなどが挙げられる。 本発明の組成物は、ジオウの含有成分、ボタンピの含有成分、ケイヒの含有成分、ブシの含有成分、ゴシツの含有成分およびシャゼンシの含有成分からなる群より選択される一種または二種以上の成分を含有することが好ましく、ケイヒの含有成分、ブシの含有成分、ゴシツの含有成分およびシャゼンシの含有成分からなる群より選択される一種または二種以上の成分を含有することがより好ましい。 本発明の組成物は、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬を含有するものであってもよい。本発明の組成物は、ジオウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬を含有することが好ましく、ケイヒ、ブシ、ゴシツおよびシャゼンシからなる群より選択される一種または二種以上の生薬を含有することがより好ましい。 生薬は生薬の粉砕物または生薬の抽出エキスであることが好ましい。生薬の抽出エキスは、例えば原料生薬を単独または混合し、生薬の合計質量に対して約5〜約25倍量の水を加えて、通常約80〜約100℃で約30分間〜約2時間加熱してエキスを煎出し、濾過等を行って固形成分を除去することにより製造することができる。得られた抽出エキスを、例えばスプレードライ、減圧濃縮乾燥、凍結乾燥等により乾燥し、乾燥エキス粉末としてもよい。 本発明の組成物は、筋の老化を有効に防止することができる。特に、老化に伴う筋の委縮を顕著に改善することができるので、サルコペニア(加齢に伴う筋力の低下および筋肉量の減少)の予防および/または改善用の組成物としてとして非常に有用である。本発明の組成物は、医薬、飲食品、サプリメント、食品添加物、飼料、飼料添加物等の形態で実施することができる。本発明の組成物に含有される生薬またはその含有成分は、漢方薬として広く使用されているので、ヒトや他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して、安全に長期間摂取させることができる。 老化防止の対象となる筋は特に限定されないが、骨格筋が好ましい。骨格筋としては、例えば、胸鎖乳突筋、大胸筋、小胸筋、前鋸筋、鎖骨下筋、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋、腰方形筋、僧帽筋、広背筋、脊柱起立筋、肩甲挙筋、菱形筋、三角筋、小円筋、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、大円筋、烏口腕筋、上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋、上腕三頭筋、肘筋、円回内筋、方形回内筋、回外筋、尺側手根屈筋、橈側手根屈筋、長掌筋、浅指屈筋、深指屈筋、長母指屈筋、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、指伸筋、示指伸筋、小指伸筋、長母指伸筋、短拇指伸筋、長母指外転筋、中様筋(4筋)、掌側骨間筋(3筋)、背側骨間筋(4筋)、小指外転筋、短小指屈筋、小指対立筋、短掌筋、母指内転筋、短拇指屈筋、母指対立筋、短拇指外転筋、大腿直筋、外側公筋、中間公筋、内側広筋、腸骨筋、大腰筋、小腰筋、縫工筋、恥骨筋、大腿筋膜張筋、大殿筋、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、中殿筋、小殿筋、薄筋、長内転筋、短内転筋、大内転筋、深層外旋六筋、腓腹筋、ヒラメ筋、膝窩筋、後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋、足底筋、前脛骨筋、長腓骨筋、短腓骨筋、第3腓骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋などが挙げられる。好ましくはヒラメ筋、大腿直筋、脊柱起立筋である。 本発明は、上記本発明の組成物を含有する医薬を提供する。本発明の医薬は、筋の委縮改善用の医薬、サルコペニアの予防および/または改善(治療)用の医薬として好適である。本発明の医薬は、上記本発明の組成物に、薬学的に許容される担体、さらに添加剤を適宜配合して製剤化することができる。具体的には錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の経口剤;注射剤、輸液、坐剤、軟膏、パッチ剤等の非経口剤とすることができる。担体または添加剤の配合割合については、医薬品分野において通常採用されている範囲に基づいて適宜設定すればよい。配合できる担体または添加剤は特に制限されないが、例えば、水、生理食塩水、その他の水性溶媒、水性または油性基剤等の各種担体;賦形剤、結合剤、pH調整剤、崩壊剤、吸収促進剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、香料等の各種添加剤が挙げられる。 錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は通常の製剤手順(例えば有効成分を注射用水、天然植物油等の溶媒に溶解または懸濁させる等)に従って調製することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。 本発明の医薬は、牛車腎気丸、八味丸または六味丸であることが好ましい。本発明の医薬の1日当たりの投与量は、筋の老化防止に有効な量であって副作用の少ない量であれば特に限定されない。本発明の組成物の1日当たりの投与量は、市販の牛車腎気丸、八味丸または六味丸の1日当たりの投与量に準じて設定することが好ましい。 牛車腎気丸は、例えば通常質量比で、ジオウ5.0、サンシュユ3.0、サンヤク3.0、タクシャ3.0、ブクリョウ3.0、ボタンピ3.0、ケイヒ(桂皮)1.0、ブシ(附子)1.0、ゴシツ(牛膝)3.0、シャゼンシ(車前子)3.0からなる混合生薬から得られる濃縮エキスまたは乾燥エキス粉末が挙げられる。牛車腎気丸は、市販の漢方製剤(例えば、株式会社ツムラの「ツムラ牛車腎気丸エキス顆粒(医療用)」など)を好適に用いることができる。 八味丸は、例えば通常質量比で、ジオウ6.0、サンシュユ3.0、サンヤク3.0、タクシャ3.0、ブクリョウ3.0、ボタンピ2.5、ケイヒ1.0、ブシ0.5からなる混合生薬から得られる濃縮エキスまたは乾燥エキス粉末が挙げられる。八味丸は、市販の漢方製剤(例えば、株式会社ツムラの「ツムラ八味地黄丸エキス顆粒(医療用)」など)を好適に用いることができる。 六味丸は、例えば通常質量比で、ジオウ5.0、サンシュユ3.0、サンヤク3.0、タクシャ3.0、ブクリョウ3.0、ボタンピ3.0からなる混合生薬から得られる濃縮エキスまたは乾燥エキス粉末が挙げられる。六味丸は、市販の漢方製剤(例えば、株式会社ツムラの「ツムラ六味丸エキス顆粒(医療用)」など)を好適に用いることができる。 本発明は、上記本発明の組成物を含有する飲食品を提供する。本発明の飲食品は、筋の委縮改善用の飲食品、サルコペニアの予防および/または改善用の飲食品として好適である。飲食品には、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品等が含まれる。飲食品の形態は特に限定されない。例えば茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、そば、うどん、中華麺、即席麺等の麺類、飴、キャンディー、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子およびパン類、かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品、加工乳、発酵乳等の乳製品、サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂および油脂加工食品、ソース、たれ等の調味料、カレー、シチュー、丼、お粥、雑炊等のレトルトパウチ食品、アイスクリーム、シャーベット、かき氷等の冷菓などを挙げることができる。 本発明は、上記本発明の組成物を含有するサプリメントを提供する。本発明のサプリメントは、筋の委縮改善用のサプリメント、サルコペニアの予防および/または改善用のサプリメントとして好適である。サプリメントは、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、ドリンク剤等の形態で提供することができる。 さらに本発明は、上記本発明の組成物を含有する食品添加物、飼料、飼料添加物等としても好適に実施することができる。 本発明には、以下の各発明が含まれる。 哺乳動物に対してジオウの含有成分、サンシュユの含有成分、サンヤクの含有成分、タクシャの含有成分、ブクリョウの含有成分、ボタンピの含有成分、ケイヒの含有成分、ブシの含有成分、ゴシツの含有成分およびシャゼンシの含有成分からなる群より選択される一種または二種以上の成分の有効量を投与することを特徴とする筋の老化防止方法。 筋の老化防止用組成物を製造するための、ジオウの含有成分、サンシュユの含有成分、サンヤクの含有成分、タクシャの含有成分、ブクリョウの含有成分、ボタンピの含有成分、ケイヒの含有成分、ブシの含有成分、ゴシツの含有成分およびシャゼンシの含有成分からなる群より選択される一種または二種以上の成分の使用。 筋の老化防止に使用するための、ジオウの含有成分、サンシュユの含有成分、サンヤクの含有成分、タクシャの含有成分、ブクリョウの含有成分、ボタンピの含有成分、ケイヒの含有成分、ブシの含有成分、ゴシツの含有成分およびシャゼンシの含有成分からなる群より選択される一種または二種以上の成分。 以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 〔実施例1:老化促進モデルマウスの骨格筋に対する牛車腎気丸の効果〕 (1)使用動物 老化促進モデルマウスであるSAMP8(7週齢、雄)および正常老化マウスであるSAMR(7週齢、雄)を日本エスエルシーから入手し、1週間の馴化後に試験に供した。動物は12時間明暗周期を持つ特定の病原体フリーの条件下で飼育した。 (2)実験方法 (2-1)飼育および投与 実験プロトコールと飼育条件は大阪大学動物実験委員会によって承認され、「実験動物の管理と使用のための国立衛生研究所・ガイド」に従って、実験を実施した。 SAMP8およびSAMRを、それぞれ普通食(MF、オリエンタル酵母工業株式会社)のみを与える群(普通食群、n=6)および普通食に4質量%の牛車腎気丸(ツムラ牛車腎気丸;株式会社ツムラ)を加えた混合食を与える群(牛車腎気丸群、n=6)の2群に分け、38週齢まで給餌を行った。給餌期間中2週間に1回、全てのマウスについて全身状態を観察した。13週齢〜14週齢時に1週間の食事摂取量を測定した。体重測定は、試験開始時(8週齢)および試験終了時(38週齢)に行った。 (2-2)サンプル採取 38週齢時にマウスを安楽死させ、下肢(大腿骨および脛骨を含む)を摘出した。大腿骨および脛骨を組織標本作製に供した。また、ヒラメ筋および大腿直筋を摘出し、直ちに液体窒素で凍結させ、その後−80℃で保存した。凍結保存したヒラメ筋および大腿直筋は、後日融解し、ホモジナイズしてウエスタンブロッティングに供した。 (2-3)組織標本 ヒラメ筋を観察するために、定法に従い脛骨の組織標本を作製してヘマトキシリン・エオジン染色を施した。また、遅筋(トロポニンI陽性)および速筋(トロポニンT陽性)を染色するために、抗トロポニンI抗体(TrponinI Rabbit polyclonal Ab (Novus Biologicals))および抗トロポニンT抗体(TrponinT (TT-98) Mouse monoclonal Ab (Abbiotec))を用いて、定法に従い免疫染色を行った。さらに、筋肉中のグリコーゲンを染色するためにPAS染色(Periodic acid-Schiff stain)を行った。 (2-4)筋線維面積測定 ヒラメ筋のヘマトキシリン・エオジン染色標本を用いて、1標本当たり16か所の任意の領域を選択し、二次元画像解析ソフトWinROOF(三谷商事)を用いて筋線維面積を測定した。解析は、一元配置分散分析で行った。 (2-5)ウエスタンブロッティングによる筋肉中のトロポニンIおよびトロポニンT発現量の解析 凍結保存した筋肉を、RIPAバッファーにプロテアーゼ阻害薬のカクテル(ナカライテスク)を追加したものでホモジナイズした。4℃で14000回転×5分間遠心分離し、上清を採取した。BCAプロテインアッセイキット(Thermo Fisher Scientific Inc.)を使って、タンパク質の定量を行った。等量のたんぱく質を用い、95℃で5分間熱し、SDS−PAGEに供した。SDS−PAGEには、15%ポリアクリルアミドゲルを用いた。PVDF膜に転写後、抗トロポニンI抗体(TrponinI Rabbit polyclonal Ab (Novus Biologicals))および抗トロポニンT抗体(TrponinT (TT-98) Mouse monoclonal Ab (Abbiotec))を、それぞれ4000倍に希釈し、4℃で16時間インキュベーションし、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識二次抗体(GE Healthcare Bio-Sciences Corp.)を用い、イムノスターゼータ(和光純薬)を使い発色させ、RX−Uフィルム(フジフィルム)で撮影し、GT−X970で画像を取り込み、評価を行った。 (2-6)ウエスタンブロッティングによる筋肉中のPGC−1α発現量の解析 SDS−PAGEに12.5%ポリアクリルアミドゲルを用い、抗体として、PGC1-alpha (4C1.3) Mouse monoclonal Ab(Calbiochem, Billerica)を1000倍希釈で、GAPDH (14C10) Rabbit monoclonal Ab (Cell Signaling Technology)を10000倍希釈で、それぞれ用いたこと以外は、上記(2-5)と同様にウエスタンブロッティングを行った。 (2-7)ウエスタンブロッティングによる筋肉中のAktのリン酸化の解析 SDS−PAGEに12.5%ポリアクリルアミドゲルを用い、抗体として、phospho-Akt (Thr308) (244F9) Rabbit monoclonal Ab(Cell Signaling Technology)を2000倍希釈で、phospho-Akt (Ser473) Rabbit polyclonal Ab (Cell Signaling Technology)を2000倍希釈で、Akt Rabbit polyclonal Ab(Cell Signaling Technology)を4000倍希釈で、それぞれ用いたこと以外は、上記(2-5)と同様にウエスタンブロッティングを行った。 (2-8)ウエスタンブロッティングによる筋肉中のGSK3βのリン酸化の解析 SDS−PAGEに12.5%ポリアクリルアミドゲルを用い、抗体として、phospho-GSK3-beta (5B3) Rabbit monoclonal Ab(Cell Signaling Technology)を2000倍希釈で、GSK3-beta (27C10) Rabbit monoclonal Ab (Cell Signaling Technology)を4000倍希釈で、それぞれ用いたこと以外は、上記(2-5)と同様にウエスタンブロッティングを行った。 (2-9)ウエスタンブロッティングによる筋肉中のFoxOファミリーのリン酸化の解析 SDS−PAGEに12.5%ポリアクリルアミドゲルを用い、抗体として、phospho-FoxO1 (Ser256) Rabbit polyclonal Ab(Cell Signaling Technology)を2000倍希釈で、FoxO1 (C29H4) Rabbit monoclonal Ab(Cell Signaling Technology)を5000倍希釈で、phospho-FoxO3a (Ser253) Rabbit polyclonal Ab(Cell Signaling Technology)を1000倍希釈で、FoxO3a (75D8) Rabbit monoclonal Ab(Cell Signaling Technology)を5000倍希釈で、phospho-FoxO4 (Ser193) Rabbit pAb(Cell Signaling Technology)を1000倍希釈で、FoxO4 (EPR5442) Rabbit mAb(Abcam)を1000倍希釈で、それぞれ用いたこと以外は、上記(2-5)と同様にウエスタンブロッティングを行った。 (2-10)ウエスタンブロッティングによる筋肉中のMAFbxおよびMuRF1発現量の解析 抗体として、MAFbx (H-300) Rabbit polyclonal Ab(Santa Cruz)を1000倍希釈で、MuRF1 (H-145) Rabbit polyclonal Ab(Santa Cruz)を1000倍希釈で、GAPDH (14C10) Rabbit monoclonal Ab(Cell Signaling Technology)を10000倍希釈で、それぞれ用いたこと以外は、上記(2-5)と同様にウエスタンブロッティングを行った。 (3)結果 (3-1)体重 8週齢時の各群の平均体重と38週齢時の各群の平均体重の変化を図1に示した。SAMRの体重増加量と比較してSAMP8の体重増加量は著しく低かった。しかし、38週齢時において、SAMRおよびSAMP8ともに、牛車腎気丸群の方が普通食群より平均体重が重い傾向が認められたが、牛車腎気丸群と普通食群との間に有意差はなかった。 (3-2)食事摂取量 1週間の食事摂取量を測定し、各群の1日1匹当たりの食事摂取量を算出した。結果を図2に示した。SAMRとSAMP8との間に食事摂取量の差は認められなかった。また、SAMRおよびSAMP8ともに、牛車腎気丸群の方が普通食群より食事摂取量が少ない傾向が認められたが、牛車腎気丸群と普通食群との間に有意差はなかった。 (3-3)ヒラメ筋のヘマトキシリン・エオジン染色像 ヒラメ筋のヘマトキシリン・エオジン染色像を図3に示した。上段のSAMR、下段SAMP8であり、左が普通食群、右が牛車腎気丸群である。左下のSAMP8普通食群のマウスのヒラメ筋は、上段のSAMRのヒラメ筋と比較して筋委縮の進行が認められた。一方、右下のSAMP8牛車腎気丸群のマウスのヒラメ筋は、筋委縮が明らかに改善していることが認められた。 (3-4)筋線維面積 各群のヒラメ筋の筋線維面積の測定結果を図4に示した。図中、*はP<0.0001で有意差があることを表す。図4から明らかなように、SAMP8普通食群は筋線維面積が顕著に減少していたが、SAMP8牛車腎気丸群は筋線維面積が普通食群より有意に大きく、SAMRと同等であることが示された。 (3-5)小括 SAMP8普通食群においてヒラメ筋の筋萎縮の進行が観察されたことから、従来老化促進モデルマウスとして使用されてきたSAMP8は、サルコペニアモデルマウスとして適切であることが明らかとなった。SAMP8牛車腎気丸群では、ヒラメ筋の筋萎縮が抑制されることが観察された。一方、SAMP8の普通食群と牛車腎気丸群の体重および食事摂取量に差がなかったことから、牛車腎気丸の薬効が直接的に筋肉の委縮を改善させたものと考えられた。すなわち、以上の結果から、牛車腎気丸投与に起因して食事摂取量が増加し、活動量が上がり、筋肉量が増加(体重が増加)した結果、筋萎縮が抑制されたのではないことが示された。 (3-6)遅筋(トロポニンI)および速筋(トロポニンT)の解析 サルコペニアでは速筋が減少し遅筋が増加することが知られている。そこで、免疫染色によりヒラメ筋標本の遅筋(トロポニンI陽性)および速筋(トロポニンT陽性)を染め分けた。結果を図5に示した。図中濃く染まっているのが遅筋、薄く染まっているのが速筋である。図5から明らかなように、SAMP8普通食群では遅筋の量が増加していたが、SAMP8牛車腎気丸群では遅筋の量が減少しており、SAMRと同等であった。 各群のマウスの筋肉中のトロポニンIおよびトロポニンTの発現量をウエスタンブロッティングで解析した結果を図6に示した。図6から明らかなように、SAMP8普通食群ではトロポニンIの発現量が増加し、トロポニンTの発現量が減少していたが、SAMP8牛車腎気丸群では普通食群よりトロポニンIの発現量が減少し、ロポニンTの発現量が増加していた。この結果は、上記の免疫染色の結果と一致した。 (3-7)筋肉中のPGC−1α発現量の解析 筋線維の強さは、生理範囲内におけるPGC−1α発現量に依存することが知られている(参考文献:Lin J et al. Transcriptional co-activator PGC-1 alpha drives the formation of slow-twitch muscle fibers. Nature. 2002 Aug 15;418(6899):797-801.)。そこで、各群のマウスの筋肉中のPGC−1αの発現量をウエスタンブロッティングで解析した。結果を図7に示した。図7から明らかなように、SAMP8普通食群ではPGC−1αの発現量が減少していたが、SAMP8牛車腎気丸群ではPGC−1αの発現量が増加しており、SAMRと同等であった。 (3-8)筋肉中のAktのリン酸化の解析 セリン・スレオニンキナーゼであるAktは、Thr308およびSer473の2つのアミノ酸がリン酸化されることにより活性化され、このAktのシグナルが筋肉の量と質量を規定することが知れている(参考文献:Baumgartner RN et al.Predictors of skeletal muscle mass in elderly men and women.Mech Ageing Dev. 1999 Mar 1;107(2):123-36.、Roubenoff R, Hughes VA.Sarcopenia: current concepts.J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2000 Dec;55(12):M716-24.)。そこで、各群のマウスの筋肉中のAktのリン酸化をウエスタンブロッティングで解析した。結果を図8に示した。図8から明らかなように、SAMP8普通食群では、Aktの発現量は他の群と同等であるが、Thr308のリン酸化とSer473のリン酸化が減弱していた。一方、SAMP8牛車腎気丸群ではThr308およびSer473のリン酸化がSAMRと同等レベルに回復していた。 (3-9)筋肉中のGSK3βのリン酸化の解析 筋肉においては、Aktシグナルの下流に、グリコーゲン合成を促進するGSK3βが存在する。そこで、各群のマウスの筋肉中のGSK3βのリン酸化をウエスタンブロッティングで解析した。結果を図9に示した。図9から明らかなように、SAMP8普通食群では、GSK3βの発現量は他の群と同等であるが、Ser9のリン酸化が減弱していた。一方、SAMP8牛車腎気丸群ではSer9のリン酸化がSAMRと同等レベルに回復していた。 (3-10)PAS染色による筋肉中のグリコーゲン染色 各群のマウスのヒラメ筋の組織標本をPAS染色した結果を図10に示した。図中、濃く染まっているのがグリコーゲンである。図10から明らかなように、SAMP8普通食群ではグリコーゲンがほとんど染まっていないが、SAMP8牛車腎気丸群では劇的にグリコーゲン量が改善しており、加齢による筋肉のグリコーゲン貯蔵機能の低下が改善していることが示された。 (3-11)筋肉中のFoxOファミリーのリン酸化の解析 Aktシグナルのもう一つの下流にFoxOファミリーが存在する。Aktシグナルにより、FoxOファミリーのリン酸化が減弱されると、筋萎縮につながることが報告されている(参考文献:Machida S et al. Forkhead transcription factor FoxO1 transduces insulin-like growth factor's signal to p27Kip1 in primary skeletal muscle satellite cells. J Cell Physiol. 2003 Sep;196(3):523-31.、Kamei Y et al. Skeletal muscle FOXO1 (FKHR) transgenic mice have less skeletal muscle mass, down-regulated Type I (slow twitch/red muscle) fiber genes, and impaired glycemic control. J Biol Chem. 2004 Sep 24;279(39):41114-23.)。そこで、各群のマウスの筋肉中のFoxOファミリーのリン酸化をウエスタンブロッティングで解析した。 結果を図11に示した。図11から明らかなように、SAMP8普通食群では、FoxO1のSer256およびFoxO3aSer253のリン酸化は、他の群とほぼ同等のレベルであったが、FoxO4のSer193のリン酸化が減弱していた。一方、SAMP8牛車腎気丸群ではSer193のリン酸化がSAMRと同等レベルに回復していた。 (3-12)筋肉中のMAFbxおよびMuRF1発現量の解析 FoxOファミリーは、さらに下流のAtrogin−1/MAFbxとMuRF1を増加させ、筋萎縮を進行させると報告されている(参考文献:Clavel S et al.Atrophy-related ubiquitin ligases, atrogin-1 and MuRF1 are up-regulated in aged rat Tibialis Anterior muscle. Mech Ageing Dev. 2006 Oct;127(10):794-801.、Bodine SC et al.Identification of ubiquitin ligases required for skeletal muscle atrophy.Science. 2001 Nov 23;294(5547):1704-8. Epub 2001 Oct 25.)。そこで、各群のマウスの筋肉中のMAFbxおよびMuRF1の発現量をウエスタンブロッティングで解析した。結果を図12に示した。図12から明らかなように、SAMP8普通食群ではMuRF1の発現量が増強されていたが、SAMP8牛車腎気丸群ではMuRF1の発現量が、SAMRと同等レベルに正常化されていた。 (4)考察 以上より、牛車腎気丸に含まれるいずれかの成分が老化によるAktの細胞内シグナルの減弱を正常化し、その下流であるグリコーゲン合成に関わるGSK3βのリン酸化を改善する。同時に筋萎縮に関わるFoxOファミリーの中で、FoxO4のSer193のリン酸化を改善し、MuRF1の発現量を正常化し、サルコペニアを予防または治療できると考えられた。また、PGC−1α発現量を正常化することも、サルコペニアの予防または治療につながると考えられた。 〔実施例2:老化促進モデルマウスのサルコペニア進行に対する漢方補腎剤の効果〕 (1)使用動物 老化促進モデルマウスであるSAMP8(7週齢、雄)および正常老化マウスであるSAMR(7週齢、雄)を日本エスエルシーから入手し、1週間の馴化後に試験に供した。動物は12時間明暗周期を持つ特定の病原体フリーの条件下で飼育した。 (2)実験方法 実験プロトコールと飼育条件は大阪大学動物実験委員会によって承認され、「実験動物の管理と使用のための国立衛生研究所・ガイド」に従って、実験を実施した。 粉末飼料(MF、オリエンタル酵母工業株式会社)に4質量%の牛車腎気丸(乾地黄5.0 g, 山薬3.0 g, 山茱萸3.0 g, 茯苓3.0 g, 沢瀉3.0 g, 牡丹皮3.0 g, 桂皮1.0 g, 附子1.0 g, 牛膝3.0 g, 車前子3.0 g)、4質量%の八味丸(乾地黄5.0 g, 山薬3.0 g, 山茱萸3.0 g, 茯苓3.0 g, 沢瀉3.0 g, 牡丹皮3.0 g, 桂皮1.0 g, 附子1.0 g)または4質量%の六味丸(乾地黄5.0 g, 山薬3.0 g, 山茱萸3.0 g, 茯苓3.0 g, 沢瀉3.0 g, 牡丹皮3.0 g)を混ぜ、SAMP8に6週間摂取させた。対照として、粉末飼料に4質量%のバレイショデンプンを混ぜ、SAMRおよびSAMP8にそれぞれ6週間摂取させた。 サンプル採取および組織標本作製は、実施例1と同じ方法で行った。筋線維面積測定は、1標本当たり約100か所の領域を測定したこと以外、実施例1と同じ方法で行った。 (3)結果 各群のマウスのヒラメ筋のヘマトキシリン・エオジン染色像を図13に示した。また、各群のヒラメ筋の筋線維面積の測定結果を図14に示した。図14中、*はP<0.05で有意差があることを表す。図13および図14から明らかなように、いずれの漢方補腎剤も老化促進モデルマウスのサルコペニア進行を抑制することが示された。抑制の程度は、牛車腎気丸>八味丸>六味丸であった。実施例1の結果と同様に、牛車腎気丸群の筋線維面積は、SAMRと同等であった。 〔実施例3:牛車腎気丸の抗サルコペニア効果の臨床的検討〕 (1)対象 大阪府内のクリニックにおいて2013年8月から12月までに、筋力低下を自覚し、牛車腎気丸内服を希望し、ロコモ度テストにボランティアとして協力した8名の患者を対象とした。 (2)方法 平成25年5月27日に公益社団法人日本整形外科学会ロコモチャレンジ!推進協議会が発表した「ロコモ度テスト」(将来ロコモティブシンドロームになり得る可能性を判定する方法)をベースに、以下の6項目の評価を行った。牛車腎気丸投与開始前に最初の評価を行い、外来受診の状況に応じて2〜3か月目に再評価を行った。牛車腎気丸投与開始前および牛車腎気丸治療後の各項目について平均値および標準偏差を算出し、paired t−testにより統計評価を行った。なお、ロコモチャレンジではロコモーショントレーニングを推奨しているが、今回は薬剤の効果を判定することが目的であるため、運動の指導は行わなかった。 (3)評価項目 1.身長、体重、BMI 2.筋量、脂肪量(いずれもTANITA製マルチ周波数体組成計MC−980Aを用いて測定) 3.両手の握力測定 4.立ち上がりテスト(下肢筋力の強さを判定) 5.2ステップテスト(歩幅を図ることで歩行能力を判定) 6.ロコモ25(25の質問により身体状態、生活状況を評価する。身体における痛みや動かしにくさに加え、生活積極度についてもチェックし、運動器の身体状態と生活状態に不自由なことが生じる可能性を点数化し、将来ロコモになる危険度を判定する。) 「立ち上がりテスト」の方法は以下のとおりである。10、20、30および40cmの台を用意する。まず40cmの台に両腕を組んで腰かけ、両脚を肩幅くらいに広げ、床に対して脛がおよそ70度になるようにして、反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒間保持する。40cmの台から両脚で立ち上がれた場合、次に片脚でテストをする。初めの姿勢に戻り、左右どちらかの脚を上げ、反動をつけずに立ち上がり、3秒間保持できれば成功とする。左右ともに片脚で立ち上がることができれば成功とする。次に、10cmずつ低い台に移り、同様のテストを繰り返す。 「2ステップテスト」の方法は以下のとおりである。スタートラインを決め、両足のつま先を合わせ、できる限り大股で2歩歩き、両足を揃える。バランスをくずした場合は失敗とする。最初に立ったラインから、着地点のつま先までを測定する。2回行ってよかったほうの記録を採用する。以下の計算式で2ステップ値を算出する。 2ステップ値=2歩幅(cm)÷身長(cm) (3)評価結果 (3-1)患者背景 患者背景を図15に示した。女性8人、各項目の平均値および標準偏差は、年齢62.3±10.3歳、身長159.0±5.6cm、体重54.6±7.3kg、BMI21.5±1.84、牛車腎気丸の平均投与期間は77.3±29.7日であった。 (3-2)開始時の評価 握力は、右が20.3±6.5kg、左が20.6±5.7kgであった。立ち上がりテストは、片足ができなかった患者が3人、40cmが可能であった患者が4人、10cmが1人であった。40〜60代の女性は、目安として40cmを片足で立ちあがれるとされていることから、対象患者は脚力がやや低下していると考えられた。2ステップ値は1.28±0.2であり、40〜60代の女性の平均値が1.45〜1.49であることから、対象患者は移動能力がやや低下していると考えられた。ロコモ25は10.3±10.8点であり、個人差が大きかった。 (3-3)牛車腎気丸治療後の評価(全体) 図16に牛車腎気丸治療前後の体重、BMI、脂肪量、筋肉量の評価結果を示した。いずれの項目も有意な変化は認められなかった。 図17に牛車腎気丸治療前後の握力(左右)、2ステップ値、ロコモ25の評価結果を示した。右握力および2ステップ値の有意な改善が認められた。左握力も改善傾向が認められた。一方、ロコモ25については、明確な改善が認められなかった。 (3-4)牛車腎気丸治療後の評価(著効例) 8例の対象患者中、著効を示した患者(第4症例、74歳女性)の評価結果について以下に説明する。この患者は、来院の2年前から甲状腺機能低下症としてチラージンの投与を受けていたが、甲状腺ホルモンは内服により問題ないにもかかわらず、筋肉痛が継続し改善しないため、漢方治療を希望して2013年10月31日に来院した。多発性筋炎などの膠原病の可能性を否定するために採血を行い、抗Jo−1抗体陰性であることを確認した。そこで、11月14日からツムラ牛車腎気丸エキス顆粒7.5gの内服を開始したところ、筋肉痛改善の自覚があったため内服を継続した。 図18に握力の推移を示した。図19に立ち上がりテストの推移を示した。図20に2ステップ値の推移を示した。図21にロコモ25の点数の推移を示した。図18から明らかなように、握力は右(13.1→18.5→24.2kg)、左(12.3→15.9→22.9kg)とも劇的な改善を示した。図19に示したように、投与開始前は不可能であった40cmの台から片足で立ち上がることが可能になった。2ステップ値は変化が認められなかったが(図20)、ロコモ25は順調な改善(23→18→14点)を示した(図21)。 なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。 |