嚥下を改善するためシンナムアルデヒド及び亜鉛を含む組成物 |
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申请号 | JP2016557636 | 申请日 | 2015-03-17 | 公开(公告)号 | JP2017509640A | 公开(公告)日 | 2017-04-06 |
申请人 | ネステク ソシエテ アノニム; ネステク ソシエテ アノニム; | 发明人 | ゴンザレス, ステファニー ミクリグ; ゴンザレス, ステファニー ミクリグ; マーリニ, ジェニー メイラン; マーリニ, ジェニー メイラン; アダム バービッジ,; アダム バービッジ,; クトル, ヨハネス ル; クトル, ヨハネス ル; | ||||
摘要 | 組成物は、経口的に忍容可能な量であり、したがって不快な 口腔 感覚を避け、胃腸管においても忍容可能である量のシンナムアルデヒドを含む。シンナムアルデヒドの量を亜鉛により補強し、この組み合わせは嚥下反射を促進するのに効果的である。シンナムアルデヒド及び亜鉛を組み合わせて含む組成物は、嚥下困難の治療方法及び/又は嚥下困難による誤嚥性 肺 炎の治療方法に使用できる。一実施形態では、シンナムアルデヒドを含む組成物をヒトに投与する。シンナムアルデヒドを含む組成物は、薬剤、食品製品、又は食品製品に対する栄養補給剤であってもよい。【選択図】なし | ||||||
权利要求 | シンナムアルデヒド及び亜鉛を含む組成物を、嚥下反射を促進する必要のある患者に投与することを含む、嚥下反射を促進する方法。前記シンナムアルデヒドが、摂取するのに忍容可能な量であり、かつ前記亜鉛と組み合わせて前記患者における嚥下反射を促進するのに有効な量で、前記組成物中に存在する、請求項1に記載の方法。前記嚥下反射の促進が、前記嚥下反射の惹起、前記患者の嚥下能の向上、前記嚥下反射の効率の向上、嚥下遅延の低減、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される効果を含む、請求項2に記載の方法。前記組成物が、前記シンナムアルデヒドの少なくとも一部をもたらすシナモン精油抽出物を含む、請求項1に記載の方法。前記シンナムアルデヒドの少なくとも一部が、単離シンナムアルデヒド及び合成シンナムアルデヒドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。前記亜鉛の少なくとも一部が、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。嚥下困難を有する患者にシンナムアルデヒド及び亜鉛を含む組成物を投与することを含む、嚥下困難の治療方法。前記嚥下困難が、癌、癌化学療法、癌放射線療法、口腔癌手術、咽喉癌手術、脳卒中、脳損傷、進行性神経筋疾患、神経変性疾患、患者が高齢であること、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された状態に関連する、口腔咽頭嚥下困難である、請求項7に記載の方法。嚥下困難による誤嚥性肺炎の危険性のある患者に、シンナムアルデヒド及び亜鉛を含む組成物を投与することを含む、嚥下困難による誤嚥性肺炎の予防方法。前記シンナムアルデヒドが、摂取するのに忍容可能な量であり、かつ前記亜鉛と組み合わせて前記患者における嚥下反射を促進するのに有効な量で、前記組成物中に存在する、請求項9に記載の方法。シンナムアルデヒド及び亜鉛を含む組成物。前記シンナムアルデヒドが、経口的に忍容可能な量であり、前記組成物の前記亜鉛と組み合わせて嚥下反射を促進するのに有効な量で、前記組成物中に存在する、請求項11に記載の組成物。前記組成物が、前記シンナムアルデヒドが約100ppmの濃度で存在する食品製品である、請求項11に記載の組成物。前記組成物が、前記シンナムアルデヒド:亜鉛比が1:0.5〜1:0.005の食品製品である、請求項11に記載の組成物。前記組成物が、タンパク質、炭水化物、脂質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む食品製品である、請求項11に記載の組成物。 |
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说明书全文 | [0001]本開示は、概して嚥下反射を改善する方法及び組成物に関する。より詳細には、本開示は、風味にもたらす影響を最小限に抑えた量でシンナムアルデヒド及び亜鉛を投与することによる嚥下反射の改善に関する。 [0002]嚥下困難は、嚥下能力の低下に代表される状態である。正常な嚥下は、独立しており良好に協調している別々の三期、すなわち口腔期、咽頭期、及び食道期を含む。随意制御下にある口腔期では、咀嚼され唾液と混ざった食物は食塊となり、舌の随意運動により口の後ろ側の咽頭に移送される。咽頭期は不随意なものであり、食物塊が口峡柱を通過し咽頭に進入することがトリガーとなる。三種類の咽頭収縮筋が、食物塊を上部食道括約筋に向けて推し進めるよう収縮する。同時に、軟口蓋が鼻咽頭を閉鎖する。咽頭は食物又は液体が気道に進入するのを予防するよう上向きに動き、この動きは喉頭蓋が後傾していること、及び声帯ヒダが閉鎖することにより補助される。食道期もまた不随意であり、上部食道括約筋の弛緩、続いて蠕動により開始し、食塊を胃に押し進める。 [0003]食道嚥下困難は、あらゆる年齢の多数の個体に影響を及ぼすが、通常は薬物療法により治療可能であり、かつ嚥下障害のさほど深刻でない形態と考えられている。他方、口腔咽頭嚥下困難は、非常に深刻な状態であり、概して薬物療法では治療不能である。口腔咽頭嚥下困難も全年齢の個体で影響を及ぼすものの、特に老齢個体において蔓延している。国際的には、口腔咽頭嚥下困難は、50歳齢超でおよそ2千2百万人が影響を受けている。 [0004]口腔咽頭嚥下困難は、放置したり又は管理を誤ったりすると、結果として脱水症状、栄養障害、固体食品による気道閉塞(窒息)、並びに誤嚥性肺炎及び/又は間質性肺炎を増悪する液体及び半固体食品の気道への誤嚥下を含む深刻なものになる。いくつかの口腔咽頭嚥下困難は、経管栄養による栄養供給を必要とする場合がある。軽度から中等度合の口腔咽頭嚥下困難では、窒息又は誤嚥の可能性を最小限にするために、食品の質感を変更する必要がある。 [0005]多くの場合、口腔咽頭嚥下困難は、脳卒中、脳障害、又は口腔癌若しくは咽喉癌のための外科手術などの急性事象の結果である。更に、放射線療法及び化学療法は、嚥下反射の生理機能及び神経支配に関係する筋肉を衰弱させ、かつ神経を劣化させ得る。パーキンソン病などの進行性の神経筋疾患患者も共通して、嚥下開始時のつかえ感が強くなるようになる。 [0006]個体の嚥下能力及び嚥下効率を改善させることで、肺への誤嚥のリスクが低下し、個体の安全性が改善される。効率的な嚥下により、摂食補助からの一層の独立、及び/又は食事の摂取中の摂食補助に費やす時間短縮が可能となる場合がある。また、効率的な嚥下により、安全性のため液体(例えば、プディング、ハチミツ、及び花蜜などの粘稠な食品)に要求される粘度が低減され、質感を改良した食品の使用を抑えることもできる。前述のこれら全ての因子は、個体の生活の質を改善することを目標としている。 [0007]辛味感覚の基礎をなす分子機構の研究は、2つのカチオンチャネルである、口腔を刺激する体性感覚神経に発現するTRPV1(一過性受容体電位V1)及びTRPA1(一過性受容体電位A1)の存在を明らかにした。TRPV1は、トウガラシの辛味化合物である、カプサイシン等の温熱感及び灼熱感の受容体である。TRPA1は、冷感及び辛味化合物に応答し、適度な濃度のTRPA1アゴニストは心地よいピリピリ感を生じる。 [0008]TRPV1アゴニストであるカプサイシンの経口投与で、嚥下反射の促進が示されているものの、カプサイシンは特に刺激性でかつ毒性の化合物である。カプサイシンの経口投与に関係する生理作用としては、舌の中央部から喉に至る灼熱感、息切れ、失神、悪心、及び自己誘発性嘔吐が挙げられる。結果として、個体に不快感をもたらさずに投与できるカプサイシンは非常に少量である。カプサイシンを含有する食品製品は、かかる製品が非常に不快な口腔感覚をもたらすため、多くの場合、消費者に受け入れられない。特に、灼熱効果は非常に不快であるとみなされ、食品製品の消費に影響を与える。 [0009]経皮に由来する化合物であるシンナムアルデヒドは、α,β−不飽和アルデヒドであり、TRPA1を活性化するもののTRPV1又はTRPM8は活性化せず、EC50は約10μMである。シンナムアルデヒドは共有結合でTRPA1と相互作用する。シンナムアルデヒドの有する香りは、カプサイシンほど強烈ではない。それでもなお、シンナムアルデヒドは比較的高濃度の辛味成分であり、強いシナモン風味を有する。 [0010]本発明者らは、驚くべきことに、かつ予想外にも、シンナムアルデヒド及び亜鉛がTRPA1の薬理活性に対し相乗作用することを突き止めた。この相乗作用を用いると、シンナムアルデヒドの有効量は、シンナムアルデヒドに少量の亜鉛を添加することにより低減させることができる。シンナムアルデヒドの量を減少することで、TRPA1の活性に対し良好な有効性を維持しつつ芳香の作用を低減させることができる。更に、嚥下障害の患者は、特に栄養補助食品を摂取している場合に食品からすでに亜鉛を摂取していることから、相乗効果に必要とされる亜鉛濃度が低い(試験管内で1μM未満)ことは有利である。 [0011]本発明者らは、細胞モデルで表されたTRPA1の生理活性に対しシンナムアルデヒド及び亜鉛が相乗作用することを突き止めた。本発明者らの知る限りでは、この組み合わせによる相乗作用は、本開示において初めて示される。 [0012]したがって、一般的な実施形態では、本開示は、投与を必要としている患者にシンナムアルデヒド及び亜鉛を含む組成物を投与することを含む、嚥下反射を促進する方法を提供する。 [0013]一実施形態では、シンナムアルデヒドは、摂取するのに忍容可能な量であり、かつ亜鉛と組み合わせて患者における嚥下反射を促進するのに有効な量で、組成物中に存在する。 [0014]一実施形態では、嚥下反射の促進は、嚥下反射の惹起、患者の嚥下能の向上、嚥下反射の効率の向上、嚥下遅延の低減、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される効果を含む。 [0015]一実施形態において、組成物は、シンナムアルデヒドの少なくとも一部をもたらすシナモン精油抽出物を含む。 [0016]一実施形態において、シンナムアルデヒドの少なくとも一部は、単離シンナムアルデヒド及び合成シンナムアルデヒドからなる群から選択される。 [0017]一実施形態では、亜鉛の少なくとも一部は、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。 [0018]別の実施形態では、本開示は、嚥下困難の処置方法を提供する。方法は、嚥下困難を有する患者にシンナムアルデヒド及び亜鉛を含む組成物を投与することを含む。 [0019]一実施形態では、嚥下困難は、癌、癌化学療法、癌放射線療法、口腔癌手術、咽喉癌手術、脳卒中、脳損傷、進行性神経筋疾患、神経変性疾患、患者が高齢であること、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された状態に関連する、口腔咽頭嚥下困難である。 [0020]別の実施形態では、本開示は、シンナムアルデヒド及び亜鉛を含む組成物を、嚥下困難による誤嚥性肺炎の恐れのある患者に投与することを含む、嚥下困難による誤嚥性肺炎の予防方法を提供する。 [0021]一実施形態では、シンナムアルデヒドは、摂取するのに忍容可能な量であり、かつ亜鉛と組み合わせて患者における嚥下反射を促進するのに有効な量で、組成物中に存在する。 [0022]別の実施形態では、本開示は、シンナムアルデヒド及び亜鉛を含む組成物を提供する。 [0023]一実施形態では、シンナムアルデヒドは、経口的に忍容可能な量であり、組成物中の亜鉛と組み合わせて嚥下反射を促進するのに有効な量で、組成物中に存在する。 [0024]一実施形態では、組成物は、シンナムアルデヒドが約100ppm以下の濃度で存在する食品製品である。 [0025]一実施形態では、組成物は、シンナムアルデヒド:亜鉛比が1:0.5〜1:0.005であり、好ましくは1:0.03である食品製品である(モル比)。 [0026]一実施形態において、組成物は、タンパク質、炭水化物、脂質及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む食品製品である。 [0027]本開示の利点は、嚥下反射を促進するというものである。 [0028]本開示の別の利点は、嚥下困難を処置するというものである。 [0029]本開示の更に別の利点は、嚥下困難に由来する誤嚥性肺炎を予防するというものである。 [0030]本開示の更に別の利点は、食品製品に容易かつ安全に使用することのできる成分により、嚥下反射を促進するというものである。 [0031]本開示の更なる利点は、スパイスに見出され得る天然化合物により嚥下反射を促進するというものである。 [0032]本開示の別の利点は、忍容可能な副作用を伴って、又は副作用を全く伴わずに、嚥下反射を促進するというものである。 [0033]本開示の更に別の利点は、カプサイシンと比較して許容性が向上しており、刺激性が低減しており、及び胃腸管における忍用性が向上している化合物により、嚥下反射を促進するというものである。 [0034]本開示の利点は、嚥下障害を有する患者を治療するというものである。 [0035]本開示の別の利点は、嚥下反射の促進に必要とされるシンナムアルデヒドの量を低減させるようシンナムアルデヒドに亜鉛を添加するというものである。 [0036]追加の特徴及び利点を本明細書に記載する。これらは、以降の発明を実施するための形態及び図面から明らかとなろう。 シンナムアルデヒドの化学構造を示す。 蛍光染料により細胞内カルシウム濃度を測定することによる、CHO細胞において発現したTRPチャネルの活性の試験管内測定についてのグラフを示す。
[0039]本明細書に記載の全ての百分率は、別途記載のない限り組成物の合計重量に基づくものである。pHについての参照がなされるとき、値は標準的な装置により25℃にて測定されるpHに相当する。本開示及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」には、文脈において明記されている場合を除き複数形を包含する。本明細書で使用するとき、「約」は、ある数の範囲の数字、例えば、参照された数字の−10%〜+10%の範囲の数字を指す。更に、本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数又は分数を含むと理解されるべきである。本明細書に開示される組成物は、本明細書にて具体的に開示されない任意の要素を欠く場合がある。したがって、用語「含む」を用いて提示される実施形態の開示は、特定された成分「から本質的になる」及び「からなる」実施形態の開示を含む。 [0040]「予防」は、状態又は疾患のリスク及び/又は重症度の低減を含む。用語「治療」「治療する」及び「緩和する」は、(標的とする病態若しくは疾患の進行を予防する、及び/又は遅延させる)予防(prophylactic)又は予防(preventive)治療、並びに治癒的、治療的又は疾患改変治療の両方を含み、診断された病態又は疾患の治癒、減速、症状の減少、及び/又は進行を停止する治療手段、並びに疾患に冒される危険がある、又は疾患に罹患していると疑われる患者、加えて病気であるか、又は疾病状態若しくは医学的状態を罹患していると診断されている患者の治療を含む。この用語は、対象が完全に回復するまで治療されることを、必ずしも意味するものではない。用語「治療」及び「治療する」はまた、疾患を患ってはいないが、不健康な状態を起こしやすい個体の健康維持及び/又は促進も意味する。用語「治療」「治療する」及び「緩和する」はまた、1つ以上の主たる予防又は治療手段の相乗作用、又はそうでない場合強化を含むことも目的としている。用語「治療」「治療する」及び「緩和する」は更に、疾患若しくは状態における食事療法、又は疾患若しくは状態の予防(prophylaxis)若しくは予防(prevention)のための食事療法を含むことも目的としている。治療は患者に関連するか、又は医者に関連するものとすることができる。 [0041]本明細書で使用する場合、「治療的に有効な量」とは、欠乏を防ぐ、個体の疾患若しくは医学的状態を治療する、又はより一般的には、個体に対して、症状を軽減する、疾患の進行を管理する、若しくは栄養学的、生理学的若しくは医学的利益を提供する量である。 [0042]「動物」としては、齧歯類、水生哺乳類、イヌ及びネコ等の飼育動物、ヒツジ、ブタ、ウシ及びウマ等の家畜、並びにヒトを含むがこれらに限定されない哺乳類が挙げられるが、これらに限定されない。「動物」、「哺乳類」、又はこれらの複数形が用いられる場合、これらの用語は、本節の文脈により効果が示されるか、又は示されるように意図されることができる動物にも当てはまる。本明細書で使用する場合、用語「患者」は、本明細書において定義されるような治療を受けるか、又は受けることを意図している、動物、特に哺乳類、更に具体的にはヒトを含むと理解される。用語「個体」及び「患者」は本明細書において多くの場合、ヒトを指して用いられるが、本開示はそのように限定されない。したがって、「個体」及び「患者」という用語は、治療が有益となり得る任意の動物、哺乳類又はヒトを指す。 [0043]ある動物が「老齢(elderly)」とされるときは、それが生まれた国における平均余命の最初の3分の2を経過した場合を指し、好ましくは、それが生まれた国における平均余命の最初の4分の3を経過した場合、より好ましくは、それが生まれた国における平均余命の最初の5分の4を経過した場合を指す。「老齢のヒト」とは、暦年齢で65歳以上の人を意味する。 [0044]上記のとおり、本発明者らは、驚くべきことに、かつ予想外にも、シンナムアルデヒド及び亜鉛がTRPA1の薬理活性に対し相乗作用を有することを見出した。この相乗作用を用いると、シンナムアルデヒドの有効量は、シンナムアルデヒドに少量の亜鉛を添加することにより低減させることができる。結果として、亜鉛の非存在下でのシンナムアルデヒドとは異なり、シンナムアルデヒド及び亜鉛の組み合わせは、風味/味及び胃腸管の両方において忍容可能である食品中濃度で、嚥下反射を促進することができる。更に、この相乗作用が必要とする亜鉛濃度はごくわずかである(試験管内で1μM未満)。嚥下反射の促進としては、例えば、嚥下反射の惹起、個体嚥下能の向上、嚥下効率の向上、嚥下遅滞の低減、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。 [0045]したがって、本開示により提供される組成物は、亜鉛と組み合わせて経口忍容性であり、例えば、望ましくない口腔感覚を生じず、嚥下反射を促進するのに有効であるシンナムアルデヒド量を含む。 [0046]シンナムアルデヒドは商業的に入手可能である。組成物中のシンナムアルデヒドは、シナモン精油抽出物、例えば、桂皮(cinnamon bark)油の蒸留に由来する抽出物中に提供され得るものであり、単離シンナムアルデヒド、例えば、シナモン精油から単離された単離シンナムアルデヒドであってよく、あるいは合成シンナムアルデヒド、例えば、ベンズアルデヒド及びアセトアルデヒドのアルドール縮合生成物であってよい。組成物におけるシンナムアルデヒド濃度は、好ましくは、31.87ppm(香辛料,風味料)〜6191ppm(チューインガム)(Fenaroli’s Handbook;Burdock,2010)の香料濃度である。一実施形態では、シンナムアルデヒドは、組成物中に、約100.0ppm以下の量で存在し、100pmは約756μMに等価であり、ゼラチン中の香味料範囲はFenaroli’s Handbook(Burdock,2010)による。 [0047]非限定例として、シンナムアルデヒドは、以下の組成物に次のとおり存在させることができる: アルコール飲料:最大で498.8ppm、例えば、約435.6ppmなど 焼成食品:最大で367.4ppm、例えば、約273.8ppmなど チューインガム:最大で6191.0ppm、例えば、約1533.0ppmなど 香辛料又は風味量:最大で31.87ppm、例えば、約17.48ppmなど 冷凍乳製品:最大で77.96ppm、例えば、約72.98ppmなど フルーツアイス:最大で900.0ppm、例えば、900.0ppmなど ゼラチン又はプディング:最大で109.4ppm、例えば、約100.3ppmなど グレービー:最大で800.0ppm、例えば、約640.0ppmなど ハードキャンディ:最大で1003.0ppm、例えば、約792.2ppmなど 肉製品:最大で39.09ppm、例えば、約6.97ppmなど 非アルコール飲料:最大で67.82ppm、例えば、約52.71ppmなど ソフトキャンディ:最大で370.0ppm、例えば、370.0ppmなど。 [0048]亜鉛の好ましい形態としては、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、及びクエン酸亜鉛が挙げられる。シンナムアルデヒド:亜鉛比は、好ましくは1:0.5〜1:0.005、より好ましくは1:0.03である(モル比)。 [0049]一実施形態では、本開示は、嚥下反射を促進し、経口的に忍容可能な量のシンナムアルデヒド及び亜鉛を含む組成物を動物に投与することを含む方法を提供する。このような方法は、好ましくは、動物における口腔咽頭嚥下困難の処置に採用される。口腔咽頭嚥下困難は、癌、癌化学療法、癌放射線治療、口腔癌手術、咽喉癌手術、脳卒中、脳損傷、神経変性疾患、患者が高齢であること、又はパーキンソン病などの進行性神経筋疾患などのうち少なくとも1つの結果であり得る。 [0050]一実施形態では、方法は、嚥下困難による誤嚥性肺炎を予防又は治療する。誤嚥は、気管及び肺への食品又は飲料品の侵入を指し、嚥下中及び/又は嚥下後に生じ得る(嚥下後誤嚥)。嚥下後誤嚥は、概して嚥下後、咽頭内に咽頭残留物が残存する結果として生じる。 [0051]好ましい実施形態では、シンナムアルデヒド及び亜鉛は、高栄養飲料などの栄養補給食品で投与される。別の好ましい実施形態では、シンナムアルデヒド及び亜鉛は、好ましくは83%超の自由水、より好ましくは90%超の自由水を含有する水和栄養補給食品で投与される。このような栄養補給剤は、粘稠な液体の形態であってもよい。更に別の好ましい実施形態では、シンナムアルデヒド及び亜鉛は、質感を改良した食品で投与される。 [0052]シンナムアルデヒド及び亜鉛を含む組成物は、薬剤、食品製品、医療用食品、経口栄養補給剤、栄養組成物、経口美容料、又は食品製品に対する栄養補助剤であってよく、好ましくは経口投与される。医療用食品製品は、疾患又は医学的状態の食事管理(例えば、疾患又は望ましくない医学的状態の予防又は治療)を目的として特別に配合される。医療用食品製品は、臨床栄養を提供し、例えば、医学的状態を有する患者又はその他の特殊な栄養的必要性を有する人の特殊な栄養的必要性を満足することができる。医療用食品製品は、完全な食事、食事の一部、食品添加物、又は溶解用粉末の形態をとることができる。 [0053]食品製品、医療用食品又は栄養組成物は、例えば1種以上のタンパク質、炭水化物、脂質、酸味料、増粘剤、pH調節用緩衝液若しくはpH調節剤、キレート剤、着色剤、乳化剤、賦形剤、着香料、ミネラル、浸透剤、医薬的に許容され得る担体、防腐剤、安定剤、糖、甘味料、調質剤並びに/又はビタミン類等の従来の食品添加物を含む、任意の数の任意の添加成分を含む。任意の成分は、任意の好適な量で添加することができる。 [0054]食品製品、医療用食品又は栄養組成物は、任意の経口栄養形態であることができ、例えば、健康飲料として、市販飲料として、任意選択的には、ジュース、ミルクセーキ、ヨーグルトドリンク、スムージー又は大豆ベース飲料等のソフトドリンクとして、棒状で、又は任意の種類の食品、例えば、焼成製品、シリアルバー、乳製品バー、スナック食品、スープ、朝食用シリアル、ミューズリー、キャンディ、タブレット(tabs)、クッキー、ビスケット、クラッカー(ライスクラッカー等)、及び乳製品等に分散されてもよい。 [0055]栄養補給剤は、例えば、錠剤、カプセル剤、トローチ、又は液体の形態であってもよい。栄養補給剤は、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、加工デンプン等)、結合剤、フィルム形成剤、封入剤/材料、皮膜/殻材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤(油、脂質、ワックス、レシチン等)、吸着剤、キャリア、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動剤、矯味剤、増量剤、ゼリー化剤、及びゲル形成剤を更に含有してもよい。栄養補給剤は、従来の医薬品添加物及び補助剤、賦形剤及び希釈剤も含有してもよく、限定するものではないが、例としては、水、任意の由来のゼラチン、植物ガム、リグニンスルホン酸塩、タルク、糖類、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、着香料、防腐剤、安定化剤、乳化剤、緩衝液、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤等が挙げられる。 [0056]栄養補給剤は、消費者に、それぞれ摂取可能なキャリア又は支持体として許容可能な製品に、加えることができる。このようなキャリア又は支持体の非限定例は、医薬組成物、食品組成物及びペットフード組成物である。食品及びペットフード組成物の非限定例は、乳、ヨーグルト、カード、チーズ、発酵乳、乳ベースの発酵製品、発酵シリアルベースの製品、乳ベースの粉末、ヒトの乳、早産児用調製粉乳、乳児用調製粉乳、経口補給剤、及び経管栄養である。 [0057]実施例 [0058]以下の非限定例は、許容できない味又は胃腸管作用を付与することなくTRPA1を相乗的に活性化して、嚥下反射を促進するための、シンナムアルデヒド及び亜鉛の併用投与の概念を展開し、かつ支持する、試験管内での科学的データを示す。 [0059]実施例1 [0060]10μMシンナムアルデヒド、及び0.3μM亜鉛のそれぞれ、並びにこれらの併用について、CHO細胞において発現したhTRPA1の試験管内活性を測定した。結果を図2に示し、シンナムアルデヒド及び亜鉛を併用したときの相乗効果を示す(シンナムアルデヒド+亜鉛)。C+は、この試験に関し実験上の陽性対照を表し、50mMのシンナムアルデヒドである。C+は用量応答曲線によると最大効果を与える。 [0061]本明細書に記載される現在好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が当業者には明白のものであることを認識されたい。このような変更及び修正は、本発明の主題の主旨及び範囲から逸脱させずに、及び意図される利点を損なわずになすことができる。そのため、そのような変更及び修正は添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。 |