Antibacterial from avocado extract biologically active compound is concentrated, antibacterial or spore germination inhibitory activity,

申请号 JP2013523692 申请日 2011-08-08 公开(公告)号 JP2013535499A 公开(公告)日 2013-09-12
申请人 インスティテュート テクノロヒコ イ デ エステューディオス スペリオレス デ モンテレイ; アヴォメックス インコーポレーテッド; 发明人 カルメン エルナンデス−ブレネス、; イサベル ガルシア−クルス、マリア; アレハンドラ グティエレス−ウリーベ、ハネ; ホルヘ アレハンドロ ベナヴィデス−ロサーノ; グラシエラ ロドリゲス−サンチェス、ダリアナ;
摘要 本発明は、抗菌剤、抗細菌剤、または芽胞発芽阻止化合物として使用可能な 生物 活性化合物が濃縮されているペルセア(Persea)属の種(アボカド)からの抽出物、この抽出物を得る方法、アセトゲニンおよび単離分子、ならびに抗菌、抗細菌、または芽胞発芽阻止効果を得るための、生物活性化合物が濃縮されている抽出物の使用に関する。
权利要求
  • 抗菌、抗細菌、または芽胞発芽阻害効果を得るための天然のペルセア(Persea)属の種(アボカド)由来の抗菌剤、抗細菌剤、または芽胞発芽阻害化合物の濃縮物の製造方法であって、
    (a)極性溶剤を用いて、種子または他のアボカドの植物組織(たとえば、中果皮(乾燥または生)および/または葉)を抽出する工程、および、
    (b)その後、アボカドの極性溶剤抽出物からアセトゲニンを濃縮するか、直接、破砕した種子または他のアボカドの植物組織からアセトゲニンを濃縮する精製工程、または
    (a1)非極性溶剤を用いて、種子または他のアボカドの植物組織(たとえば、中果皮(乾燥または生)および/または葉)を抽出する工程、および
    (b1)その後、アボカドの非極性溶剤抽出物からアセトゲニンを濃縮するか、直接、破砕した種子または他のアボカドの植物組織からアセトゲニンを濃縮する精製工程、
    を含む方法。
  • 極性溶剤が、C 1 -C 4アルコール(たとえばエタノール、イソプロパノール、メタノール)、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、またはそれらの混合物などを含むが、それらに限定されない溶剤である請求項1に記載の方法。
  • 精製が、極性溶剤(単独または組み合わせ)、たとえば水、C 1 -C 4アルコール(たとえば、エタノール、イソプロパノール、メタノール)、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリルと、非極性溶剤(単独または組み合わせ)、たとえばヘキサン、へプタン、エチルエーテル、酢酸エチル、石油エーテル、ブチルアルコール、クロロホルム、トルエン、メチルtert-ブチルエーテル、メチルイソブチルケトン、またはそれらの混合物とを使用する二相分配系を含むものである請求項1または2に記載の方法。
  • 二相分配系用の溶剤系として、(各種の比の)メタノール:ヘプタン、および/または水:ヘキサン、および/または水:ブタノール、および/またはメチルtert-ブチルエーテル:アセトニトリル:水、および/またはへプタン:酢酸エチル:アセトニトリル、へプタン:酢酸エチル:メタノール:水を含むがそれらに限定されない溶剤系を単独また並行で使用して、どちらかの相に活性を濃縮する請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  • 精製方法が、高速遠心分配クロマトグラフィー(Fast or High Performance Centrifugal Partition Chromatography、FCPCまたはHPCPC)による分配分離または向流クロマトグラフィー(Countercurrent chromatography、CCC)である請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  • 濃縮物が、化合物:
    または
    を含む請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  • 濃縮物がさらに、式(I):
    で表され、式中の
    R 1が、水素またはアセチルであり、
    R 2が、水素またはヒドロキシ保護基であり、
    R 3が、1以上の炭素-炭素二重結合を有するアルケニル基である化合物、および/または式(II):
    で表され、式中の
    R 1が、水素またはアセチルであり、
    R 2およびR 4が、水素またはヒドロキシ保護基であり、
    R 3が、1以上の炭素−炭素二重結合を有するアルケニル基である化合物を含む請求項1から6のいずれかに記載の方法。
  • 抽出および精製過程が、必要に応じて、濃縮または単離化合物のケン化を生じない請求項1から7のいずれかに記載の方法。
  • 請求項1から8のいずれかの抽出物を含む抗菌、抗細菌、または芽胞発芽阻止組成物または製品。
  • 組成物または製品が、
    (a)経口、経皮、経腸、経鼻、経眼、舌下、経直腸、または経膣的投与に適した製剤組成物、
    (b)魚類、甲殻類、魚代用品、甲殻類代用品、肉類、肉代用品、鶏肉製品、野菜、青菜類、ソース、乳液、飲料、ジュース類、ワイン類、ビール、乳製品、卵製品、ジャム、ゼリー、穀類製品、パン類、菓子類よりなるが、これらに限られない製品から選ばれる食料品、
    (c)クリーム、ゲル、粉末、ローション、日焼け止め、口紅およびリップクリーム、ボディウォッシュ、ハーブ抽出物、細菌の発育を支える処方よりなるが、これらに限られない製品から選ばれる化粧品および
    (d)カウンタートップ、ドア、窓、ハンドル、外科用器具、医用器具、ヒトや動物の汚染を引き起こす可能性のある接触面よりなるが、これらに限られない製品から選ばれる表面を有する製品よりなる群から選ばれる請求項9に記載の抗菌、抗細菌、または芽胞発芽阻止組成物または製品。
  • 式(I):
    において、式中の
    R 1が、水素またはアセチルであり、
    R 2が、水またはヒドロキシ保護基であり、
    R 3が、1以上のトランス型の炭素-炭素二重結合を有するアルケニル基である化合物。
  • 化合物のC-16およびC-17の位置に二重結合を有する請求項11に記載の化合物。
  • 式:
    または
    を有する請求項12に記載の化合物。
  • 抗細菌、抗菌、または芽胞発芽阻止作用を、そうした作用を必要としている患者または製品に対して提供するための組成物または製品を製造するための請求項1から8のいずれかの抽出物の使用。
  • 抗菌、抗細菌、または芽胞発芽阻止作用を、クロストリジウム属(Clostridium)、Bacillus(バチルス)属、アリキクロバチルス(Alicyclobacillus)属、およびリステリア(Listeria)属を含むが、これらに限られない属の微生物、細菌、または芽胞に適用することができる請求項14に記載の使用。
  • 抗菌、抗細菌、または芽胞発芽阻止作用を、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・ディフィキレ(Clostridium difficile)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リキノホフミス(Bacillus lichniformis)、アリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)、アリシクロバチルス・アシドフィルス(Alicyclobacillus acidiphilus)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)よりなるが、これらに限られない種から選ばれる微生物、細菌、または芽胞に適用することができる請求項15に記載の使用。
  • 说明书全文

    先行する任意の出願、それらの出願または審査経過中に言及されたすべての文献(「出願言及文献」)、出願言及文献で引用または言及されたすべての文献、本明細書で引用または言及されたすべての文献(「本明細書言及文献」)、本明細書言及文献で引用または言及されたすべての文献は、本明細書または本発明で言及することによって本発明に組み込まれた任意の文献で言及された任意の製品についての製造業者の指示、説明、製品の使用、および製品シートとともに、ここに言及することをもって、本明細書に組み込むものとし、本発明を実施するにあたって用いることができる。

    発明の背景1. 技術分野 本発明に関する技術的定義をいくつか挙げる。 「非芽胞形成菌」 は、細菌芽胞を形成することができず、熱処理、嫌気性条件下での冷蔵保存、抗細菌物質の使用、当業界で公知の他の方法のいずれかまたはそれらの組み合わせによって破壊または管理が可能な病原性および腐敗性細菌に使用される既知の用語である。 別の関連用語としては、「芽胞形成菌」があり、これには、非芽胞形成菌の制御に関して当業界で公知の一般的な方法で破壊したり制御したりすることが必ずしも可能ではなく、発育阻止および/または不活性化には特殊な処理が必要になる極めて抵抗性の高い細菌芽胞とよばれる(内生胞子とも呼ばれる)構造を形成することができる病原性および腐敗性細菌が含まれる。 また、双方のタイプの細菌とも、自然界において、「栄養状態」の状態(生細胞とも称される)で存在することができるものの、「芽胞形成細菌」は、「芽胞状態」でも存在が可能であり、この状態の方が、化学薬品や物理的処理による不活性化に対しての抵抗性が高い。 食品技術分野では、さらに、芽胞形成菌の細菌状態として、熱を加えて人工的に創出される「ヒートショック処理芽胞」と呼ばれる、および/または圧を加えて人工的に創出される「圧力ショック処理芽胞」と呼ばれる芽胞形成菌の細菌状態もある。 食品産業において生起されるこうした人為的状態は、化学または物理的手段による不活性化に対する芽胞のさらに高い抵抗性を生じ、食品系によっては、こうした状態は、芽胞形成菌が発芽して栄養形態となり、その結果、食品の腐敗および/または毒素の生産が起こることを阻止するために制御する必要がある。

    本発明は、食品および薬品技術に関する。 より詳細には、本発明は、ペルセア・アメリカナ(Persea americana)に天然に存在する化学物質を使用することによって、植物細胞、芽胞の発芽、グラム陽性細菌の発育を阻止する方法に関する。

    本発明は、医療技術にも関する。 より詳細には、本発明は、人間または人間以外の脊椎動物の消化管を含む生体中での病原性芽胞形成菌の発育を、このタイプの細菌に対する特異性を有する抗菌抽出物を用いて阻止する方法に関する。

    食品加工の分野では、pH値4.6超の食品(食品産業では、一般に、低酸性食品として知られている)では、芽胞形成菌が発芽し、発育しうることが知られている。 食品産業で特に重要なのは、病原性芽胞形成生物、とりわけクロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens)、バチルス・ケレウス(Bacillus cereus)などからの芽胞の発芽や栄養細胞の発育を阻止しうる食品添加物の使用である。 密封容器や食品マトリックス内で生じる嫌気性条件のような適正な食品環境では、こうした病原微生物の芽胞が発芽し、細菌細胞が有害数となるまで発育して、場合によっては、ヒトの健康を害する毒を精製することもある。 特に、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)は、タンパク分解性の系統も、非タンパク分解性の系統も、細菌の芽胞が潜在的に発芽して強い神経毒可能を生じうるがゆえに、食品産業の悩みの種である。 食品産業では、亜硝酸塩/エステルが、芽胞形成性の病原性細菌の冷蔵低酸性食品中での発育を遅らせる/阻止するうえで、最も一般的に使用される食品添加物である。 しかし、合成食品添加物、特に亜硝酸塩/エステル化合物の使用を減らすことは、消費者も産業も長年注力してきたことがらである。 同一目的で使用されてきた食品添加物としては、他にも、ナイシン(Rayman、1981)、組み替えペプチド(Tangら,2008)、5-アミノサリチル酸(Lin and Pimentel、2001)、アルギン酸エチルラウロイル(Beltranら、2011)がある。 また、細菌の栄養細胞に対して作用する天然起源の抗菌化合物に関する先願や先行文献もある。 多くの天然ソースが、主に親油性の抗菌化合物を含むことが伝えられているが、親性化合物の一部も、活性を示すことが伝えられている。 この種の抗菌化合物の報告は、文献として入手可能である。

    本発明は、重要な公衆衛生の懸念、すなわち、病原性の種、特にグラム陽性のリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)が商業的な冷蔵温度で発育可能で、加工食品は最終的に消費されるまでこの温度で保存されることにも関わっている。 リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)は、未調理で食される肉類や乳製品で特に問題になる芽胞非形成性病原性細菌で、これは、この種の食品を加熱せずに食されることが多いというのと関わっている。 リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)で汚染した食品の消費すると、感染の危険が増すこと、特に幼児、高齢者、妊婦、免疫に問題のある個人ではその可能性が高いことは、当業界でも公知である。

    本発明の目的に関していえば、殺芽胞剤は、少なくとも一部の細菌の芽胞を殺すことができる物質であるのに対し、芽胞抑制剤は、少なくとも一部の細菌の芽胞の発育と生殖を阻止することができる物質である。 芽胞の発芽阻止剤には、殺芽胞剤と芽胞抑制剤の双方が含まれる。

    また、特記しない限り、以下で記載する化合物の記載は、(R)と(S)、シス(Z)とトランス(E)の化合物をはじめ、立体異性体をすべて含むことを意図するものである。 本発明の目的に関していえば、トランス(E)型は、式-CH=CH 2を有する末端アルケン(たとえば、下記の(2R,16E)-1-アセトキシ-2-ヒドロキシ-4-オキソ-ノナデカ-16,18-ジエンを参照)も含むものである。

    2. 関連出願の説明
    1951年(米国特許番号第2,550,254号)に、ジェンセン(Jensen)が、アボカド(ペルセア・グラティシマ(Persea gratissima)の種子から、スタフィロコッカス・アウレウス(黄色ブドウ球菌,Staphylococcus aureus)、バチルス・ズブチリス(枯草菌、Bacillus subtilis)、アスペルギルス・グラウクス(Aspergils glaucus)、ペニシリウム・ノタトゥム(アオカビ、Penicillium notatum)、およびアクロモバクター・ペロレンス(Achromobacter perolens)の栄養細胞に対して抗菌活性を有するアセトン抽出物を得た。この抽出物は、エシェリキア・コリ(大腸菌、Esherichia coli)、シュードモナス・フロレセンス(蛍光菌、Pseudomonas fluorescens)およびペニシリン・カメンベルティ(Penicilliun camemberti)に対しては不活性であることがわかった。同じジェンセン(Jensen)が、1953年(カナダ国特許第494,110号)に、抗菌活性のある抽出物を得るのに使用できる可能性のある天然ソースとして、アボカド(Persea americana)の種子に言及している。ヴァレリとギメノ(Valeri and Gimeno)は、1954年に、石油エーテルでアボカドの種子を抽出し、得られた粗ワックスが、ミクロコッカス・ピオゲネス(Micrococcus pyogenes)とサルシナ・ルテア(Sarcina lutea)の発育を阻止したが、枯草菌(B. subtilis)と大腸菌(E. coli)の発育は阻止しなかったと報告している。こうした従来技術からは、アボカドの種子が、抗菌化合物を含むものの、特定の微生物に対する抽出物の特異的生物活性は明らかに抽出方法に左右され、この抽出方法が、最終的には抽出物の化学組成に影響を与えていることが示唆される。

    関連技術では、いくつかの化合物がアボカドの種子抽出物から単離され、それらの化合物による特定の微生物(細菌、酵母真菌)の発育阻止について試験が行われている。 Kashmanら(1969)は、アボカドの果実と種子のヘキサン抽出物から8種の化合物を単離し、構造を明らかとし、いくつかの誘導体を調製した。 Kashman(1969)の示した化合物は、いずれも、一端に不飽和結合を持ち、他端が高度に酸化された長分子鎖脂肪族の化合物の同じグループに属している。 興味深いことに、これらの化合物は、著者によって、鎖の末端に二重結合を持つか、三重結合を持つかによって異なる2つのグループに分けられている。 これらの化合物の単離は、化学的性質を調べる目的で実施されたが、生物活性成分を得るために行われたのではなかった(生物活性を手がかりとした単離ではなかった。)その後、さらなる研究が行われ、バチルス・ズブチリス(枯草菌、Bacillus subtilis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、サルモネラ・ティフィ(Salmonella typhi)、シゲラ・ディセンテリエ(Shigella dysenteriae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、カンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、サッカロミセス・セルヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)(ATCC 7752 and S 288C)に対する抗菌活性の評価が行われた(Neemanら,1970)。 調べた12種の長分子鎖脂肪族化合物うち6種のみが、これらの微生物のいくつかに対する発育阻止効果を示し、1、2,4-トリヒドロキシ-n-ヘパデカ-16-エンのみが、研究に含まれていた微生物のすべての発育を、0.05mgの化合物を使用したディスク発育阻止抗菌試験で阻止することができた。 著者は、化合物の酸化された部分のヒドロキシル基の全部または一部がアセチル化されている場合に、抗菌活性が大幅に弱まると結論づけている(Neemanら,1970)。 したがって、上記の長分子鎖脂肪族化合物がアセチル化された形態であるアセトゲニン類は、上述の微生物の発育を阻止しなかった。 Barattaら(1998)は、より最近になって、クスノキ科のゲッケイジュ(ラウルス・ノビリス(Laurus nobilis))を含む植物の精油からの抽出物の抗菌および抗酸化特性を評価する研究を行ったが、この研究には、ペルセア属(Persea)は含まれていない。

    最近、UgboguおよびAkukwe(2009)が、他の植物の種子油でなく、ペルセア・グラティシマ(Persea gratissima Gaerth F)から得た種子油が、大腸菌(Escherichia coli)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、およびスタフィロコッカス・エピデルミス(Staphylococcus epidermisをはじめとする非芽胞形成菌の臨床単離物に対する抗菌効果を持つことを報告した。著者らは、ペルセア(Persea)種子油を傷の治療に使用する可能性についても報告している。ChiaおよびDykes(2010)も、ペルセア・アメリカナ(Persea Americana Mill. vars. Hass, Shepard and Fuerte)の外果皮と種子からのエタノール抽出物を調製し、104.2〜416.7μg/mlの濃度では、抽出物が、グラム陽性およびグラム陰性菌の栄養細胞の発育に対して抗菌活性を示したことを報告している。この著者らは、リステリア・モノキトゲネス(Listeria monocytogenes)(93.8〜375μg/ml)およびスタフィロコッカス・エピデルミス(Staphylococcus epidermis)(354.2μg/ml)の発育のみを阻止する水抽出物を調製した。クロストリジウム(Clostridium)またはバチルス属に対する活性は、エタノール抽出物についても、水抽出物についても見いだされなかった。Rodriguez-Carpenaら(2011)は、抗菌活性を持つ分子を単離する目的で、2種のアボカドの栽培品種(ペルセア・アメリカナ(Persea americana) Mill.)の皮、果肉、種子から、酢酸エチル、アセトン(70%)及びメタノール(70%)を含む3種の異なる溶剤を用いて、抽出物を調製した。著者らは、非芽胞形成菌と芽胞形成菌の栄養細胞のパネルに対しての抽出物の抗細菌特性を試験し、抽出物の抗菌活性は中程度で、抗菌活性は、抽出物中のフェノール性化合物のせいであるとの結論に達した。このように、以上の研究では、観察された生物活性の原因である可能性のある成分の単離または化学物質の特定も、細菌芽胞、ヒートショック処理細菌芽胞、圧力ショック処理芽胞での試験も成功裡には行われなかった。

    同様に、他の著者らも、アボカド植物の細菌以外の微生物に対する抗菌特性の試験を行った。 Pruskyら(1982)は、未成熟なアボカド果実の果皮に1-アセトキシ-2-ヒドロキシ-4-オキソ-ヘンエイコサ-12,15-ジエン(ペルシン)が存在することを記載し、この分子が、アボカドの果実の貯蔵中に見られる公知の問題である炭疽病を起こす菌であるコレトトリクム・グロエオスポリオイデス(Colletotrichum gloeosporioides)に対する抗菌活性を持つことを記載した。 この化合物は、ジクロロメタンで分離されたエタノール抽出物の薄層クロマトグラフィーによって単離された。 この化合物は、その後、「ペルシン」と命名され(Oelrichsら,1995)、他の著者らによって、菌コレトトリクム・グロエオスポリオイデス(Colletotrichum gloeosporioides)の栄養発育を阻止する活性がアボカドの成分といては最も高いことがインビトロで確かめられ(SivanathanおよびAdikaram、1989;Domergueら,2000)、菌の芽胞の発芽と、発芽管の伸長を阻止する能力があることも確認された(Pruskyら,1991a)。 ペルシンは、790μg/mlで、菌の芽胞の発芽を完全に阻止し、この化合物の果皮での濃度は、成熟の過程で大幅に低減した(Pruskyら,1982)。 似た構造を持つモノエン1-アセトキシ-2,4-ジヒドロキシ-n-heptadeca-16-エンも、コレトトリクム・グロエオスポリオイデス(Colletotrichum gloeosporioides)に対する生物活性を示したが、生物活性は、ペルシンより3倍低かった。 興味深いことに、双方の抗真菌化合物の1:1の混合物は相乗的な活性を示し、発芽した分生子の発芽管の伸びの阻止率を増大させた(Pruskyら,1991b)。 他の化合物、たとえば1-アセトキシ-2-ヒドロキシ-4-オキソ-ヘンエイコサ-5,12,15-トリエン(Domergueら,2000)も、抗真菌生物活性を持つことが示された。 この最後の化合物は、「ペルセノンA」と命名されているが(Kimら,2000a)、いずれの単離のケースも、生物活性に基づいて、また新規な化合物を発見する目的では行われていない。 従来の技術の発表物の大半は、収穫後の被害を防止するための分子を見いだすことに焦点を当てていた。

    アセトゲニンについて報告されている生物活性としては、他にも、殺虫、抗腫瘍、駆虫特性がある。 ペルシンは、殺虫活性を持ち、人工飼料中の濃度が200μg/g以上になると、家蚕ボンビクス・モリ(Bombyx mori L.)の幼虫が摂食阻害を示す(Chang,1975;Murakoshiら,1976)。 より最近では、Rodriguez-Saonaら(1997)が、アボカドは食べないが、多くの野菜の主要害虫である汎食害虫であるスポドプテラ・エクシギュア(Spodoptera exigua、ヨトウムシの一種)にペルシンが影響を及ぼすことを示している。 発育阻止効果は、幼虫と成虫の双方について、それぞれ餌中濃度200μg/gおよび400μg/gで示された。

    ペルシンは、アボカドの葉に含まれる活性因子であることが特定され、用量60〜100mg/kgで泌乳中のマウスの乳腺のネクローシスを生じ、用量が100mg/kgを超えると、マウスの心筋繊維の壊死を生じ、重症になると水胸も併発することが示されている(Oelrichsら,1995)。 この効果を利用するかたちで、この化合物をはじめとするアボカドの葉から得られた一連の化合物が、哺乳動物の卵巣癌と乳癌の治療方法として特許を取得している(Seawrightら,2000)。 治療対象動物の体重1kg当たりの投与量で100mg/kg以下となるよう、この化合物を経口的に投与するが、すでに報告されている毒性作用を避けるうえで好ましいのは、体重1kg当たりの投与量で20〜40mg/kgとなるよう何日かに分けて連日投与することである。 すでに報告されているように、これらの化合物のアボカド果肉中の濃度は、果実が熟するのにしたがって大幅に低減して1500μg/g未満となる(Kobilerら、1993)ので、体重60kgのヒトの場合、制癌作用を得るためには、一日あたり0.8kg超、細胞障害作用を得るためには、さらに高濃度となるようなアボカドの果肉の摂取が必要となる。 癌治療目的での年間投与量として提案されている量は、Pollackら(2010)の報告する米国での実際の一人当たりのアボカド年間消費量(1.8kg、すなわち4.1ポンド)の160倍である。

    ペルセノンAとその類似体である1-アセトキシ-2-ヒドロキシ-5-ノナデセン-4-オン(ペルセノンB)は、ペルシンともども、細胞培養中での超酸化物(O 2 - )および一酸化窒素(NO)の生成を阻害することが見いだされており、この活性を、Kimら(2000a、2000b、および2000c)は、炎症関連器官での癌の化学防御剤に関連づけている。 インビトロでの結果からは、天然のNO生成阻害物質であるDHA(ドコサヘキサエン酸)と同等またはそれ以上の活性を有することが示されている。 IC 50値は、アセトゲニンについては1.2〜3.5μM、DHAについては、4.5μMである(Kimら,2000a)。 また、1-アセトキシ-2,4-ジヒドロキシ-n-ヘプタデカ-16-エン、ペルシン、およびペルセノンAは、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)活性の阻害作用を示し、IC 50値の範囲は4.0〜9.4μMであった(Hashimura、2001)。 著者らは、アセチルCoAカルボキシラーゼが脂肪酸の生合成に関与していることから、これらの化合物が、肥満を防止するための脂肪蓄積抑制剤として利用できる可能性があると結論づけている。

    長分子鎖脂肪酸誘導体の抽出方法の多くは、油分を回収する前工程や、ヘキサンのような有機溶剤の使用を要する。 Kashman、Neeman、およびLifshitz(1969)が特定した抗菌化合物の抽出に使用されている方法では、ヘキサンを沸点で使用している。 Broutinら(2003)(米国特許番号第6,582,688B1号)は、フラン脂質化合物およびポリヒドロキシル化脂肪アルコールなどの特定の一群の長分子鎖脂肪族化合物が濃縮されたアボカド果実油から抽出物を得る方法を開発した。 著者らは、これらの非極性化合物の各種の組成を、各種の治療用途、化粧品用途、および食料品用途で利用可能だと論じた。 しかし、彼らの方法によって抽出した抽出物の化学組成や活性分子の含有量は、抗菌剤用途に関しては記載されていない。 一部の化合物が毒性を持ち、そうした化合物が未処理抽出物中に存在しうることを考慮すると、所望の効果を得るための最少濃度を決定することが、きわめて重要である(米国特許公開番号第2006-0099323号および米国特許公開番号第2009-0163590号参照)。

    アセトゲニンのいくつかについて、細菌の栄養細胞に対する抗菌活性の存在が証明されているとしても、従来技術では、微生物、特に芽胞状態の微生物に対するバイオアッセイという経路での、アボカド(ペルセア・アメリカナ(Persea americana))からの抗菌化合物の単離については示されていない。 本発明は、芽胞形成菌の栄養段階と芽胞段階での発育を阻止するペルセア・アメリカナ(Persea americana)中の天然の抗細菌化合物が濃縮された単離化合物および/または組成物を得る過程での一連の工程を提供する。 芽胞状態の微生物の発育阻止を利用した化合物の単離というのは、従来の技術の教示内容には含まれていない。 さらに重要なことであるが、本発明は、部分精製混合物での特定の化合物同士の相乗効果についても包含する。 本発明者らは、単離化合物の部分精製抽出物および/または混合物が芽胞発芽阻止特性、たとえば、芽胞抑制および/または殺芽胞特性を持つこと、そして、芽胞発芽阻止特性が単離化合物単独よりも高い場合もあることに関心を持った。 活性化合物の化学的特定および活性化合物の芽胞形成微生物に対する特異性についても、工業規模で利用可能な処理条件での生物活性化合物の熱または圧力に対する安定性についても、これまでのところ報告はない。

    Maseko(2006)は、(2R,4R)-1,2,4-トリヒドロキシヘプタデカ-16-エンという名称の非アセチル化脂肪酸誘導体を製造する簡単な方法であって、(S)-リンゴ酸をトリオール断片の安価な出発材料として利用し、脂肪鎖の伸長にグリニャール反応を利用する方法を提示している。 この前駆体は、アボカド油中の大半のアセトゲニンの合成に使用できる。 この分子は、Masenko(2006)では、分析用標準品として調製され、従来の技術では、Neemanら(1970)によって、この化合物を非芽胞形成菌であるブドウ球菌の一種に対する抗菌剤として使用する可能性が示されている。 これらの著者のいずれも、芽胞形成菌に対する特異的な抗菌特性についても、特定の作用を持つアセトゲニンの製造方法についても、試験を行っていない。

    冷蔵食品中のリステリア・モノキトゲネス(Listeria monocytogenes)の栄養細胞を特異的に管理するための抗菌物質の利用に関する従来技術ということでは、米国特許番号第5,217,950号に、ナイシン組成物を、グラム陽性菌に対する殺菌剤として使用することが示唆されている。 米国特許番号第5,573,797号、米国特許番号第5,593,800号、および米国特許番号第5,573,801号には、ストレプトコッカス(Streptococcus)またはペディオコッカス(Pediococcus)に由来するバクテリオシンまたは合成の同等な抗細菌剤とキレート剤との組み合わせを含む抗細菌組成物が開示されている。 米国特許番号第5,458,876号には、抗細菌としての抗生物質(たとえばナイシン)とリゾチームとの組み合わせがが示唆されている。 この場合、リゾチームは、標的細胞の細胞壁を破壊して標的細胞の構造的一体性を弱め、抗細菌剤が細菌細胞を傷つけたり殺したりする際に、より効果的に作用するように作用している。 より詳細には、この組み合わせは、ナイシンのリステリア・モノキトゲネス(Listeria monocytogenes)に対する抗細菌効果を改善し、リステリアの完全な除去には至らないものの、使用に適するレベルまでリステリアを有意に低減させることが立証されている。 米国特許番号第6,620,446B2号には、食料品用途でグラム陽性菌を管理するための抗細菌組成物であって、食料品の一材料または、食糧品表面に適用するかたちで利用可能な抗細菌組成物が記載されている。 この組成物は、グラム陽性の腐敗菌または病原性細菌、特に、有害で病原性のあるリステリア・モノキトゲネス(Listeria monocytogenes)の全系統を低減または除去するために、ナイシンおよび/またはリゾチームと、ホップのβ酸を含んでいる。 PerumallaおよびHettiarachchy(2011)は、緑茶抽出物およびブドウ種子抽出物(ポリフェノールおよびプロアントシアニジンを豊富に含む化合物)が、主要な食物由来病原微生物、たとえばリステリア・モノキトゲネス(Listeria monocytogenes)、サルモネラ・ティフィリウム(Salmonella typhimurium)、大腸菌O157:H7(Escherichia coli O157)、およびカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)に対する抗菌活性を持っていることを報告し、さらに、有機酸(リンゴ酸、酒石酸、安息香酸など)、ナイシンのようなバクテリオシン、EDTAのようなナイシンと組みあわせて、各種のモデル系、たとえば生鮮食品(果物や野菜)ならびに生肉および加工済み肉製品および鶏関連製品で使用すると、抗菌活性の相乗効果が得られることについても示している。

    適切な抗細菌、抗菌、または芽胞発芽阻止活性を有する抽出物を得る作業に伴う困難、細菌、微生物、および芽胞による、公知の抗細菌、抗菌、芽胞発芽阻止化合物および組成物への耐性の発現、天然起源の食料品および医薬品への要望にかんがみ、当業界では、いまなお、好ましくは経済的可能性のあるソース、たとえば植物の処理を行った際の複製物や廃棄物から得られた抗細菌、抗菌、または殺芽胞性の化合物ならびに組成物が、さらに必要とされている。

    本発明は、アセトゲニンを豊富に含有するペルセア・アメリカナ(Persea americana)(アボカド)からの抽出物、または、その抽出物から単離された抗菌、抗細菌、または芽胞発芽阻止剤として使用が可能な分子に関する。 アセトゲニンを豊富に含有する抽出物は、芽胞発芽阻止活性、たとえば、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)(タンパク質分解性および非タンパク質分解性の系統)、クロストリジウム・ディフィキレ(Clostridium difficile)、およびクロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)、ならびにバチルス属の種、ならびに他の病原性および非病原性細菌の未変性細菌芽胞に対する殺芽胞性および/または芽胞抑制活性を示す。 また、発明者らは、アセトゲニン富化抽出物またはアセトゲニン富化抽出物から単離された分子が、細菌のヒートショックおよび/または圧力ショックを加えた芽胞に対する芽胞発芽阻止活性、たとえば殺芽胞性または芽胞抑制活性を示し、したがって、食料品、化粧品、および製剤組成物に利用して、その発育を阻止できることも見いだした。 また、発明者らは、アセトゲニン富化抽出物が、冷蔵条件と組みあわせると、たとえばリステリア・モノキトゲネス(Listeria monocytogenes)の生存細胞の発育を阻止するための抗菌剤としても有効なことも見いだした。 アセトゲニンを高濃度で含む抽出物の使用を、熱処理、圧力処理、または他の非熱的保存技術によって安定化された処方に限定することも、本発明の一部である。

    グラム陽性菌の栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞の抗菌活性を評価する際に使用したアボカド種子中に存在する化合物の一次抽出についての図である。

    クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC 7955)の栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞の発育に対する、アボカド種子(核)の粗抽出物の抗菌活性に対して、抽出溶剤の種類が及ぼす影響を示す図である。 抽出物は、固形分の最終濃度が12.5μgになるようにして試験を行った。 データは、3回の反復試験での平均値±平均の標準誤差を示す。

    ヘキサンを使用したアボカド種子(核)抽出物からの抗菌化合物の抽出と、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC 7955)の栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞の発育に対する抗菌活性の評価に対して振盪が及ぼす影響を示す図である。 抽出物は、固形分の最終濃度が12.5μgになるようにして試験を行った。 データは、3回の反復試験での平均値±平均の標準誤差を示す。 同じ文字を付した値同士は、有意には異なっていない(LSD検定、p<0.05)。

    C・スポロゲネス(C. sporogenes)(ATCC 7955)の栄養細胞の発育を阻止するアボカド種子(核)由来の生物活性化合物を得るためにヘキサンのかわりにアセトンまたはエタノールを使用した際の抽出時間の影響の比較を示す図である。 抽出物は、固形分の最終濃度が12.5μgになるようにして試験を行った。 データは、3回の反復試験での平均値±平均の標準誤差を示す。 同じ文字を付した値同士は、有意には異なっていない(LSD検定、p<0.05)。

    C・スポロゲネス(C. sporogenes)(ATCC 7955)の未処理芽胞の発育を阻止するアボカド種子(核)由来の生物活性化合物を得るためにヘキサンのかわりにアセトンまたはエタノールを使用した際の抽出時間の影響の比較を示す図である。 抽出物は、固形分の最終濃度が12.5μgになるようにして試験を行った。 データは、3回の反復試験での平均値±平均の標準誤差を示す。 同じ文字を付した値同士は、有意には異なっていない(LSD検定、p<0.05)。

    C・スポロゲネス(C. sporogenes)(ATCC 7955)のヒートショック処理芽胞の発育を阻止するアボカド種子(核)由来の生物活性化合物を得るためにヘキサンのかわりにアセトンまたはエタノールを使用した際の抽出時間の影響の比較を示す図である。 抽出物は、固形分の最終濃度が12.5μgになるようにして試験を行った。 データは、3回の反復試験での平均値±平均の標準誤差を示す。 同じ文字を付した値同士は、有意には異なっていない(LSD検定、p<0.05)。

    アセトンを用いて、アボカド種子中に存在する化合物の一次抽出を行い、その後、ヘプタン:メタノール系で分離を行って、それぞれの相で分画F001およびF002を得て、グラム陽性菌の栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞の抗菌活性の評価するのにその後使用できるようにする過程についての図である。

    アボカド種子中に存在する化合物の抽出と分離を同時に行う過程についての図であり、この過程では、ヘプタン:メタノール系で分離を行って、それぞれ、分画F003およびF004を得、これらの分画は、その後、グラム陽性菌の栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞の抗菌活性について評価する際に使用できる。

    クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC 7955)の栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞の発育に対する、図7に記載した手順によって得た抽出物F001〜F004の抗菌活性の評価についての図である。 抽出物は、固形分の最終濃度が12.5μgになるようにして試験を行った。 データは、3回の反復試験での平均値±平均の標準誤差を示す。 同じ文字を付した値同士は、有意に異なってはいない(LSD検定、p<0.05)。

    クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC7955)の栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞の発育に対して、図7Aに記載した手順によって得た下相F002(メタノール)についての二次的な二相系(酢酸エチル:水)の上相と下相が持つ抗菌活性の評価結果を示す図である。 抽出物は、固形分の最終濃度が12.5μgになるようにして試験を行った。 データは、3回の反復試験での平均値±平均の標準誤差を示す。 同じ文字を付した値同士は、有意に異なっていない(LSD検定、p<0.05)(cは、ディスク阻止帯の0(ゼロ)cmの値、したがってチャートでは棒の高さはゼロである。)

    クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC7955)の栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞の発育に対して、実施例1に記載したようにして得た粗アセトン抽出物の分離に使用する二相系(ヘキサン:メタノール)の上相と下相が持つ抗菌活性の評価結果を示す図である。 抽出物は、固形分の最終濃度が12.5μgになるようにして試験を行った。 データは、3回の反復試験での平均値±平均の標準誤差を示す。 同じ文字を付した値同士は、有意には異なっていない(LSD検定、p<0.05)。

    実施例1に記載した手順にしたがって得た未処理アセトン抽出物から得たケン化不能化合物と、実施例5に記載の未処理アセトン抽出物の分離に使用した二相系(ヘキサン:メタノール)の上相から得たケン化不能化合物の、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC7955)の栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞の発育に対する抗菌活性を評価した結果を示す図である。 抽出物は、固形分の最終濃度が12.5μgになるようにして試験を行った。 データは、3回の反復試験での平均値±平均の標準誤差を示す。 同じ文字を付した値同士は、有意には異なっていない(LSD検定、p<0.05)。 (dは、ディスク阻止帯の0(ゼロ)cmの値、したがってチャートでは棒の高さはゼロである。)

    実施例5に記載の未処理アセトン抽出物の分離に使用した二相系(ヘプタン:メタノール)の上相(ヘプタン)の逆相高速遠心分配クロマトグラフィー(RP-FCPC)を行うことのよって得られた分画の、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC 7955)の栄養細胞とヒートショック処理芽胞の発育に対して、抗菌活性を評価した結果を示す図である。 RP-FCPCを実施するために使用した溶剤系は、ヘプタン:メタノール(1:1)で、メタノールを移動相に用いた。 分画は、固形分の最終濃度が12.5μgになるようにして試験を行った。

    実施例5に記載の未処理アセトン抽出物の分離に使用した二相系(ヘプタン:メタノール)の上相(ヘプタン)の正常相高速遠心分配クロマトグラフィー(NP-FCPC)を行うことのよって得られた分画の、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC7955)の栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞の発育に対する抗菌活性を評価した結果を示す図である。 NP-FCPCを実施するために使用した溶剤系は、ヘプタン:メタノール(1:1)で、ヘプタンを移動相に用いた。 分画は、固形分の最終濃度が12.5μgになるようにして試験を行った。

    実施例5に記載の未処理アセトン抽出物の分離に使用した二相系(ヘプタン:メタノール)の上相(ヘプタン)の正常相高速遠心分配クロマトグラフィー(NP-FCPC)を行うことのよって得られた分画の、S・アウレウス(S. aureus)およびB・ズブチリス(B. subtilis)の栄養細胞の発育に対する抗菌活性を評価した結果を示す図である。 NP-FCPCを実施するために使用した溶剤系は、ヘプタン:メタノール(1:1)で、ヘプタンを移動相に用いた。 分画は、固形分の最終濃度が12.5μgになるようにして試験を行った。

    実施例5に記載したようにして得たヘキサンの上相と酢酸エチルの上相に対する温度処理(25℃〜100℃/60分)が、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC 7955)の栄養細胞に対する発育阻止活性に及ぼす影響を示す図である。

    実施例5に記載したようにして得たヘキサンの上相と酢酸エチルの上相に対する温度処理(25℃〜100℃/60分)が、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC 7955)の未処理芽胞の発育阻止活性に及ぼす効果を示す図である。

    実施例10に記載された手順にしたがって得られた活性プール中の各分画のクロマトグラフ特性が、分配係数(Kd)の増加とともに連続的に変化していることを示す図である。 これらの分画は、高速液体クロマトグラフィーおよび220nmに設定したダイオード・アレイ・検出装置で分析した。 数字は、異なる複数の分画に共通に見られたピークを付してある。

    実施例10に記載された活性分画のプール中の活性化合物の濃度を示す図である。

    本発明は、ペルセア・アメリカナ(Persea americana、アボカド)から、抗菌、抗細菌、または芽胞発芽阻止効果を得るための天然の抗菌、抗細菌、または芽胞発芽阻止化合物の濃縮された抽出物を得る一連の工程を提供する。

    本発明の一観点では、抽出物は、アボカドの種子、またはアボカド果実の可食部分である肉質の中果皮から得るものである。

    本発明の一観点では、アボカドの組織(種子または中果皮)からの抽出は、極性溶剤および非極性溶剤を用いた抽出によって行われるものである。

    本発明のこの観点の一実施形態は、グラム陽性細菌の栄養細胞および芽胞を含むが、それらに限られない細胞の発育に関して、抗菌、抗細菌、または芽胞発芽阻止効果を得るための天然のペルセア(Persea)属の(アメリカナおよびグラティシマを含むが、それらに限られない)種(アボカド)由来の抗菌剤、抗細菌剤、または芽胞発芽阻止化合物の濃縮物の製造方法であって、
    (a)極性溶剤を用いて、種子または他のアボカドの植物組織(たとえば、中果皮(乾燥または生)および/または葉)を抽出する工程、および、
    (b)その後、アボカドの極性溶剤抽出物からアセトゲニンを濃縮するか、直接、破砕した種子または他のアボカドの植物組織からアセトゲニンを濃縮する精製工程、または
    (a1)非極性溶剤を用いて、種子または他のアボカドの植物組織(たとえば、中果皮(乾燥または生)および/または葉)を抽出する工程、および
    (b1)その後、アボカドの極性溶剤抽出物からアセトゲニンを濃縮するか、直接、破砕した種子または他のアボカドの植物組織(たとえば、中果皮(乾燥または生)および/または葉)からアセトゲニンを濃縮する精製工程、
    を含む方法である。

    本発明のこの観点の一実施形態で、抽出または精製に(単独または混合物として)それぞれ用いることのできる極性溶剤としては、C 1 -C 4アルコール(たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール)、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、またはそれらの混合物を挙げることができる。

    本発明のこの観点の一実施形態で、抽出または精製に(単独または混合物として)それぞれ用いることのできる非極性溶剤としては、ヘキサン、へプタン、エチルエーテル、酢酸エチル、石油エーテル、クロロホルム、トルエン、メチルtert-ブチルエーテル、メチルイソブチルケトン、またはそれらの混合物を挙げることができる。

    本発明の別の観点は、極性溶剤または非極性溶剤の抽出物からアセトゲニンを濃縮する精製方法である。

    本発明の別の実施形態では、二相分配系用の溶剤系として、(各種の比の)メタノール:ヘプタン、および/または水:ヘキサン、および/または水:ブタノール、および/またはメチルtert-ブチルエーテル:アセトニトリル:水、および/またはへプタン:酢酸エチル:アセトニトリル、へプタン:酢酸エチル:メタノール:水を含むがそれらに限定されない溶剤系を単独また並行で使用して、どちらかの相に活性を濃縮する。

    精製方法の別の実施形態は、精製中に生じる夾雑物を低減および/または除去する目的で化合物を分配係数に基づいて分離するための、高速遠心分配クロマトグラフィー(Fast or High Performance Centrifugal Partition Chromatography、FCPCまたはHPCPC)による分配分離または向流クロマトグラフィー(Countercurrent chromatography、CCC)である。 たとえば、Alain P. Foucalt. Centrifugal Partition Chromatography, Chromatographic Sciences Series, vol. 68, Marcel-Dekker (1995)を参照されたい。 CPCを用いた精製方法は、グラム陽性細菌の栄養細胞および芽胞の発育を阻止するアボカド由来の天然の抗菌化合物の濃度を増大(4倍以上)させて、同じ固形分濃度(2.5 mg/mL)で評価した際のアボカドの種子の粗アセトン抽出物と比べて1.2〜2倍以上高い抗細菌特性を付与することができる。

    本発明の別の観点では、抽出および精製過程は、必要に応じて、濃縮または単離化合物のケン化を生じることがないようにする。 本発明のこの観点の別の実施形態では、抽出および精製過程は、必要に応じて、濃縮または単離化合物のケン化を生じることがないようにする。

    本発明の抽出物は、m/zが329〜381である化合物、または、以下のアセトゲニン、すなわち、ペルセア・アメリカナ(Persea americana)から精製するか、生物活性を濃縮すべく化学合成することができるペルセノンA、ペルセノンB、または新規に見いだされた(2R,5E,16E)-1-アセトキシ-2-ヒドロキシ-4-オキソ-ノナデカ-5,16-ジエン、または新規に見いだされた(2R,16E)-1-アセトキシ-2-ヒドロキシ-4-オキソ-ノナデカ-16,18-ジエンの少なくとも1種を含んでいる。

    本発明の別の観点は、式(I)で表される化合物である。

    式中の
    R 1が、水素またはアセチルであり、
    R 2が、水素またはヒドロキシ保護基であり、
    R 3が、2以上のトランス(E)状態の炭素-炭素二重結合を有するアルケニル基である。

    ヒドロキシ保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis (第三版), Wiley-Interscience (1999)に記載されたものをはじめとして、任意の公知のヒドロキシ保護基とすることができる。 上述のように、式(I)の化合物は、(R)および(S)状態ならびにシス(Z)および(E)などの立体異性体をすべて含むものである。 本発明の目的では、トランス(E)状態は、式:-CH=CH 2で表される末端アルケンも含むものである(たとえば、下記の(2R,16E)-1-アセトキシ-2-ヒドロキシ-4-オキソ-ノナデカ-16,18-ジエン参照)。

    本発明のこの観点の一実施形態は、式(I)の化合物であって、式中の
    R 1が、水素またはアセチル、
    R 2が、水素、またはヒドロキシ保護基、
    R 3が、トランス状態の炭素−炭素二重結合2つを有するC 5 -C 22アルケニル基であるような化合物である。

    本発明のこの観点の別の実施形態は、式(I)の化合物であって、式中の
    R 1が、水素またはアセチル、
    R 2が、水素、
    R 3が、トランス状態の炭素−炭素二重結合2つを有するC 5 -C 22アルケニル基であるような化合物である。

    本発明のこの観点の別の実施形態は、式(I)の化合物であって、式中の
    R 1が、アセチル、
    R 2が、水素、
    R 3が、トランス状態の炭素−炭素二重結合2つを有するC 12 -C 18アルケニル基で、
    OR 2に結合した炭素が、(R)状態であるような化合物である。

    本発明のこの観点の別の実施形態は、式(I)の化合物であって、二重結合が、化合物のC16〜C17の位置にあるものである。

    本発明のこの観点の別の実施形態は、下記式の化合物である。

    式(I)の化合物は、Bullら(1994)の方法を用い、ハロゲン化(たとえば、塩化または臭化)ジメチル-1,3-ジオキソラン-エチルマグネシウムを、式R 3 COX(式中のR 3は上記定義の通り、Xはハロゲン化物)の物質と反応させ、その後ジオキサン環からジオールを形成することによって合成することがきる。

    また、式(I)の化合物は、MacLeodら(1995)に記載された方法を用い、不飽和脂肪酸を得て、この不飽和脂肪酸を対応するメチルケトンに転化し、その後、この対応するメチルケトンを2-アセトキシアセトアルデヒドと反応させることによって合成することができる。

    式(I)の化合物の上記の形成方法は、具体例を示すために記載するもので、化合物を製造するにあたって用いることが可能なすべての方法を網羅することを意図するものではない。

    抽出物または化合物は、食料品をはじめとして細菌が発育しやすい組成物に、単独、または当業界で公知の他の抗菌物質と組みあわせて用いることができ、組みあわせる抗菌物質としては、特に栄養および芽胞状態の細菌の発育に対する抗菌活性を高める目的で用いるものとして、亜硝酸塩化合物、ナイシン、バクテリオシン、エチルラウロイルアルギネート、精油、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アスコルビン酸誘導体、安息香酸誘導体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。 細菌の栄養および芽胞形態の発育を阻止するこのアボカド抽出物、またはそれらから誘導された抽出物または化合物は、担体、賦形剤、カプセル形成剤、他の製剤成分とともに、固形状の製剤として、生物活性成分の適用性および安定性を改善することができる。

    本発明の抽出物、化合物、組成物は、経口、経皮、経腸、経鼻、経眼、経、舌下、経直腸、または経膣的に投与できるよう調製する。 経皮投与は、局所適用または、経皮投与を行うことができる。 経腸投与は、静脈、動脈、筋肉、皮下注射、ならびに輸液技術の利用を行うことができる。 本発明の1種以上の化合物を、1種以上の無毒な製薬学的に許容しうる成分と一緒に配合して、組成物を調製することができる。 これらの組成物の調製は、当業界で公知の技術、たとえば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy第21版(2005)、Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics第11版(2005)、Ansel's Parmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems第8版、Allenら編、Lippincott Williams & Wilkins(2005)に教示された技術を適用することによって行うことができる。

    本発明の別の観点は、本発明の抽出物または化合物を含む食料品であって、魚類、甲殻類、魚代用品、甲殻類代用品、肉類、肉代用品、鶏肉製品、野菜、青菜類、ソース、乳液、飲料、ジュース類、ワイン類、ビール、乳製品、卵製品、ジャム、ゼリー、穀類製品、パン類、菓子類であるが、これらに限られない食料品を挙げることができる。

    本発明の別の観点は、本発明の抽出物または化合物を含む化粧品であって、クリーム、ゲル、粉末、ローション、日焼け止め、口紅およびリップクリーム、ボディウォッシュ、ハーブ抽出物、細菌が発育しやすい処方剤であるが、これらに限られない化粧品を挙げることができる。

    本発明の別の観点は、本発明の抽出物または化合物を含む表面を有する製品であって、カウンタートップ、ドア、窓、ハンドル、外科用器具、医用器具、ヒトや動物の汚染を引き起こす可能性のある接触面であるが、これらに限られない製品を挙げることができる。

    本発明の別の観点は、抗細菌、抗菌、または芽胞発芽阻止作用を、そうした作用を必要としている患者に付与するための、本発明の抽出物または単離化合物、またはそれらを含む組成物の使用である。

    本発明の別の観点は、抗細菌、抗菌、または芽胞発芽阻止作用を食品または化粧品組成物に付与するための、本発明の抽出物または単離化合物、またはそれらを含む組成物の使用である。

    本発明の別の観点は、表面に、抗細菌、抗菌、または芽胞発芽阻止作用を付与するための、本発明の抽出物または単離化合物、またはそれらを含む組成物の使用である。 この作用は、その表面を、本発明の抽出物または単離化合物に接触させるか、本発明の抽出物または単離化合物を、その表面自体に積層または埋設することによって得ることができる。

    この抗菌、抗細菌、および/または芽胞発芽阻止作用は、クロストリジウム属(Clostridium)、Bacillus(バチルス)属、アリキクロバチルス(Alicyclobacillus)属、およびリステリア(Listeria)属を含むが、これらに限られない属の微生物、細菌、または芽胞に適用することができる。

    抗菌、抗細菌、および/または芽胞発芽阻止作用は、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・ディフィキレ(Clostridium difficile)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis, バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リキノホフミス(Bacillus lichniformis)、アリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)、アリシクロバチルス・アシドフィルス(Alicyclobacillus acidiphilus)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)よりなるが、これらに限られない種から選ばれる微生物、細菌、または芽胞に適用することができる。

    本発明の抽出物および精製から得られた新規な化合物は、上記式(I)で表される。 抗菌、抗細菌、および/または芽胞発芽阻止作用を得るためには、式(I)の化合物は、R 3が1以上の炭素−炭素二重結合をを有することができ、この二重結合は、シス(Z)およびトランス(E)状態のいずれでもよい。 式(I)の化合物の範囲に含まれる一実施形態は、炭素−炭素二重結合が、C-5/C-6、C-12/C-13、C-15/C-16、C-16/C-17、またはそれらの任意の組み合わせの位置にあり、二重結合がシスまたはトランス結合のものである。 式(I)の化合物の範囲に含まれる別の実施形態は、炭素−炭素二重結合が、C-5およびC-6のみにあるか、および/またはC-16およびC-17、および/またはC-12およびC-13、および/またはC-15およびC-16の位置にあり、それらがシスまたはトランス結合のものである。

    この式(I)の化合物の具体的な範囲内の例としては、下記を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。

    さらに、抗菌、抗細菌、および/または芽胞発芽阻止作用を得るうえで、式(I)の化合物は、単独で使用することも、下記式(II)で表されるような化合物と組みあわせて使用することもできる。

    式中の
    R 1が、水素またはアセチル、
    R 2およびR 4が、水素、またはヒドロキシ保護基、
    R 3が、シスまたはトランス状態の炭素−炭素二重結合1つを有するアルケニル基である。

    本発明のこの観点の一実施形態は、式(II)の化合物であって、式中の
    R 1が、水素またはアセチル、
    R 2およびR 4が、水素、またはヒドロキシ保護基、
    R 3が、シスまたはトランス状態の炭素−炭素二重結合1つを有するC 5 -C 22アルケニル基であるような化合物である。

    本発明のこの観点の別の実施形態は、式(II)の化合物であって、式中の
    R 1が、水素またはアセチル、
    R 2およびR 4が、水素、
    R 3が、シスまたはトランス状態の炭素−炭素二重結合2つを有するC 5 -C 22アルケニル基であるような化合物である。

    本発明のこの観点の別の実施形態は、式(II)の化合物であって、式中の
    R 1が、アセチル、
    R 2およびR 4が、水素、
    R 3が、トランス状態の炭素−炭素二重結合1つを有するC 12 -C 18アルケニル基で、
    R 2およびR 4に結合した炭素が、(S)状態であるような化合物である。

    本発明のこの観点の別の実施形態は、式(II)の化合物で、二重結合が、化合物のC-16およびC-17の位置にあるものである。

    本発明のこの観点の別の実施形態は、下記の式(II)の化合物の使用である。

    この式(II)の化合物は、式(I)の化合物からケトンの還元によって合成することも、また、ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-エタノールをR 3 MgX(式中のR 3は、上記定義の通り、Xは、ハロゲン化物である)の化合物と、杉山ら(1982)に開示された方法を使用して反応させることによって合成することもできる。

    本発明の別の観点では、抗細菌、抗菌、または殺芽胞/芽胞抑制作用は、少なくとも、他の公知の抗細菌、抗菌、または殺芽胞/芽胞抑制剤、たとえば、LAE(アルギニンモノヒドロクロリドのラウラミドのエチルエステル)、亜硝酸エステル、またはナイシン(アミノ酸34個の多環ペプチド)と同程度に効果がある。 本発明の抽出物または単離化合物の使用は、天然精製物または天然精製物から容易に得られるので、非天然精製物あるいは容易には得られない他の公知の物質より有利である。 非天然精製物の使用は、特に、使用にあたって規制当局による承認が必要である場合もあるような食料品や化粧品を製造する場合には、問題がある。

    本発明を、以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。 また、これらの実施例によって、本発明の範囲が限定されることを意図するものではないし、限定されると解釈されるべきでもない。

    実施例1 − アボカド種子のアセトンおよびヘキサン抽出物の抗菌および殺芽胞活性

    アボカドの種子をコロイドミルにより破砕し、平均直径0.5〜2 mmの粒子を得た。 アボカドの種子破砕物(50g)を、アセトンまたはヘキサンと、物質:溶剤比が1:2(m/v)となるよう混合した。 混合物を25℃にて24時間保管し、アボカド種子の未処理抽出物を得た。 種子を、抽出物から、真空濾過法を用いて分離した。 未処理抽出物を、ロータリー・エバポレータを用いて、乾燥状態となるまで真空下で蒸発させ(35℃、22 in Hg)、得られた乾燥物を秤量し、最終濃度2.5mg/mlとなるようアセトンに再溶解した。 調整したサンプルを、抗菌試験および殺芽胞性の試験に用いた(図1参照)。

    粗抽出物の製造に用いたアボカド種子は、破砕後、芽胞形成菌に対する抗細菌活性に変化を生じることなく、25℃未満の温度で、酸素の存在または非存在下にて、14日間以上保存可能である。 つまり、アボカド種子は、生物活性化合物を高濃度で含む抽出物の調製に使用するまで、そのまま、あるいは粉砕状態で保管することができる。

    実施例2 − 芽胞形成菌の栄養細胞およびヒートショック処理芽胞に対する、アボカド種子抽出物の比活性の、他の植物由来の物質との比較

    本発明の有効性は、マンゴー種子のカーネル(仁)から抗細菌性のある粗抽出物を調製することによって観察することができる。 この粗抽出物が、芽胞形成菌の栄養細胞に対して抗菌活性を示すことは、従来技術(Kabukiら, 2000)として報告されている。

    アボカド(ペルセア・アメリカナ(Persea americana))およびマンゴー(マンギフェラ・インディカ(Mangifera indica)のカーネル由来の粗抽出物を、実施例1に記載したようにして調製し、C・スポロゲネス(C. sporogenes)の栄養細胞とヒートショック処理芽胞に対するこれらの粗抽出物の抗菌活性を調べた(表1参照)。

    意外にも、アボカド種子抽出物のみが、本実施例で試験を行った細菌の二つの生理的状態、すなわち栄養細胞とヒートショック処理芽胞に対する活性を示した。 マンゴ・カーネル抽出物は芽胞形成菌の栄養細胞に対しては抗菌活性を示したが、細菌の芽胞およびヒートショック処理芽胞の発育に対しては、抗菌活性を示さなかった。

    したがって、本実施例から示されるように、アボカド由来のこの化合物の化学的性状は、芽胞形成菌の栄養細胞、芽胞、およびヒートショック処理芽胞の発育を阻害するうえで、特段に有用である。

    実施例3 − アボカド種子の粗アセトン抽出物および粗ヘキサン抽出物の抗細菌活性に対する振盪の影響

    実施例1と同様、抗細菌性の評価に用いるため、乾燥物をアセトンに最終濃度が2.5mg/mlとなるよう再溶解させた。 試験微生物としては、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)の代替微生物として知られているクロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC 7955)を用いた。 クロストリジウムの栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞に対する抗菌活性を、実施例1に記載した手順で調べた。

    クロストリジウムの栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞に対する、アボカド種子のヘキサン抽出物の抗菌特性については、振盪処理の有意な影響が認められた(図3)。 抽出物の乾燥質量収量は振盪時の方が多いにもかかわらず、振盪処理を行わずに得た抽出物は、振盪処理を行って得られた抽出物と比べて高い抗菌活性を示した。 実施例の結果からは、振盪によって、アボカド種子中に存在する抗菌活性のない他の化合物の抽出も増え、その結果、抗細菌活性のある化合物の濃度が希釈されてしまうことがわかる。 したがって、アボカド種子の抗細菌性抽出物は、浸漬によって、できれば振盪を行わずに得るのが好ましい。

    実施例4 − アボカド種子粗抽出物の抗菌特性に対する抽出時間および抽出溶剤の種類(アセトン、エタノール、ヘキサン)の影響

    乾燥物を、アセトンに、最終濃度が2.5mg/mlとなるよう再溶解した。 抗菌性アッセイでの試験微生物として、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC 7955)を、用いた。 栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞に対する(ディスク阻止帯を用いた)抗細菌活性の測定は、実施例1に記載の手順で実施した。

    ヘキサン抽出物の栄養細胞、芽胞、ヒートショック処理芽胞に対する抗細菌活性を100%の発育阻止と見なして、同じ時間間隔をおいて測定した他の溶剤(アセトン、エタノール)との比較を行った。 栄養細胞に対する抗細菌活性についての結果を、図4に示す。 同図の結果からわかるように、抽出時間30分間の時点で得られたエタノール抽出物は、ヘキサンによって同条件で得られた抽出物とまったく同じ活性を持っていた。 一方、抽出時間30分間の時点で得られたアセトン抽出物は、ヘキサン抽出物の抗菌活性の70%にとどまっていたのが、抽出時間5時間の時点では、ヘキサン抽出物の活性の80%に達した。 この実施例からもわかるように、アセトンもエタノールも極性溶剤であり、試験条件では、抽出時間の延長は、生理活性物質の濃度の希釈、および/または溶液の飽和を生じた。 また、予想に反して、芽胞形成菌の栄養細胞に対して抗細菌性を有する化合物は、その性質ゆえに、アセトンよりエタノールを用いた方がよりよい回収が可能であった(図4)。

    これらの抽出物の未処理芽胞に対しての抗菌特性を結果を図5に示す。 この結果からわかるように、抽出時間の延長(0.5〜24時間)は、抽出溶剤としてアセトンとエタノールのいずれを用いた場合も違いを生じなかった。 この場合も、エタノールは、未処理芽胞に対する抗菌特性を持つ化合物の抽出に関して選択性が高かった。

    ヒートショック処理芽胞の発育に対する各種抽出物の抗菌活性についての結果を図6に示す。 図からわかるように、各抽出物で傾向が異なっていた。 抽出時間30分の時点で、溶剤(アセトンまたはエタノール)は、抗細菌性分子の抽出に対して、等しく効果的であったのに、アセトンを溶剤として用いて抽出時間を延長した場合には、0.5〜5時間の抽出時間の延長で発育阻止の100%から80%以下への低下を招くような抽出物中の抗細菌性分子濃度の有意な減少が観察され、その後活性は一定であった。 エタノールは、抽出時間を延長しても、アセトンによる抽出の場合のように、対象化合物に関して容易に飽和することはなく、エタノールでは、0.5時間と5時間の抽出時間の間で違いは認められなかった。 このように、本実施例からは、芽胞形成細菌の栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞の発育に対して阻止活性を持つ抗細菌性化合物の抽出に関して、エタノールはヘキサンと同様に効果的であることがわかる。

    実施例5 − アボカド種子のアセトン抽出物の分画と、アボカド種子粉末のヘプタン:メタノール二相非混和溶剤系による分画の比較

    本実施例に際しては、実施例1に記載した手順にしたがって、アボカド種子の未処理アセトン抽出物を得、乾燥状態まで蒸発させた。 アボカド種子破砕物50gから得られた乾燥未処理アセトン抽出物を、100mlのヘプタン(上相F002)と100mlのメタノール(下相F002)よりなる二相非混和溶剤系の入った分液漏斗に直接加え、抽出物中の極性化合物と非極性化合物を分離させた(図7A)。

    前述の各相(F001〜F004)は、ロータリー・エバポレータ(35℃、22 in Hg)でそれぞれ乾燥状態まで蒸発させ、得られた乾燥物を秤量した。

    その後のクロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC 7955)に対しての抗細菌活性の評価に備えて、乾燥分画を、最終濃度が2.5 mg/mlとなるようアセトンに再溶解した。 栄養細胞、未処理の芽胞、ヒートショック処理芽胞に対する抗細菌活性(ディスク阻止帯の測定)は、実施例1に記載の手順にしたがって実施した。

    ヒートショック処理芽胞についてディスク阻止帯について得られた結果からわかるのは、2種の互いに非混和性の溶剤によるアボカド種子破砕物の直接抽出を実施すると、上相に移動する(そして、混入後、活性化合物の効果を希釈するような)夾雑物の量を減少できることが示され(図8)、したがって、こうした二相分離による抽出方法は、芽胞発芽阻止化合物の1工程単離よりすぐれた選択肢であることが明らかになった。 ただし、栄養細胞について発育の阻止を調べた抗細菌性試験では、どちらの方法も似たような結果となり、他方に比べて特に有益というわけではなかった。

    このように、本実施例では、本発明で実施した種子破砕物の直接抽出と、アボカド種子乾燥物のアセトン抽出物の分離という双方の評価の過程で、抗細菌性物質がヘプタン:メタノール二相系の上相の方に濃縮されることが示された。 しかし、下相(F002およびF004)にも残存活性が観察され、上相での活性化合物の飽和、双方の系の下相への化合物の部分的溶解性といった可能性が示された。 そこで、次の、抽出工程、すなわちメタノールの下相F002を蒸発させることによって得た固形物を再抽出する二次的抽出を行った。 この残存抗細菌化合物を回収するための二次的な抽出系(第二二相非混和溶剤系)は、酢酸エチル(100ml)と水(100ml)で構成した。 酢酸エチル相と水相の抗細菌活性を、図9に示す。 この第二の二相非混和溶剤系は、第一の二相非混和溶剤系より、極性が高めで、下相(主に水)には、残存抗細菌活性が認められなかった。

    本実施例を終えるにあたって、上述のヘプタン:メタノール系を代替しうる可能性のある別の2種の非混和溶剤系の評価を行った。 すなわち、アボカド種子の乾燥アセトン抽出物の二相分離を行って生理活性分子を高濃度で含む処方を得るための方法として、ヘキサンとメタノールの二相系を用いて、抗細菌化合物をヘキサンの上相から回収した(図10)。 しかも、このヘプタン:メタノール二相系では、化合物の下相への移動がより少なく、上相からの化合物の回収ということでは、このヘプタン:メタノール二相系の方が効果的であることも立証された。 水、塩、エタノールを用いた水性の二相系で、未処理エタノール抽出物から抗細菌化合物を単離する追加試験を行ったところ、所望の化合物が、主にエタノールよりなる上相から回収された。

    実施例6 − アボカド種子のアセトンおよびヘキサン抽出物の抗菌活性に対するケン化の影響

    アボカドの種子粗アセトン抽出物を、実施例5に記載した手順にしたがって、ヘキサンとメタノールによって二相分離した。 各相の分離後、極性化合物の含有量が少なく、ヘキサンを高濃度で含む上相を、ロータリー・エバポレータ(35℃、22 in Hg)を用いて乾燥状態まで蒸発させた。 Broutinら(2003)よれば、ケン化は、脂肪族アルコールまたはテルペンアルコール、ステロール、トコフェロール、カロチノイド、およびキサントフィルのように、ケン化不能部分に残存し、水に溶解しない化合物を含む生物活性分画を得る際には、必要な手段だということになっている。 しかし、本実施例では、本発明の抗細菌化合物は同じ方法では得られず、本発明の抗細菌化合物が、Broutinら(2003)が言及した化合物とは異なる化学的性状を持つものであることが示された。

    アセトンの未処理抽出物のケン化と、二相分離で生じた上相のヘキサン分画のケン化は、Broutinら(2003)にしたがって実施したが、ケン化不能部分を回収し、回収したケン化不能部分からフラン脂質とポリヒドロキシル化脂肪族アルコールを選択的に抽出するために、いくつかの変更を加えた。 これとは別に、各抽出物5gを、2.5mlの12N水酸化カリウムおよび10mlのエタノールと混合し、4時間の静置後、この水溶性−アルコール性混合物を分液漏斗に移し、17.5mlの水を加え、さらに17.5mlのジクロロエタンを加え、混合物を30秒間振盪し、二相に分離させ、有機相 (下相)を回収した。 この操作を6回繰り返し、有機相をまとめて水で洗浄し、ジクロロエタンをロータリー・エバポレータ(35℃, 22 in Hg)を用いて乾燥状態まで蒸発させ、得られた乾燥物を秤量した。

    乾燥物を、最終濃度が2.5mg/mlとなるようアセトンに再溶解し、実施例1に記載の手順にしたがって、抗菌および殺芽胞性活性試験(ディスク阻止帯の測定)を行い、その際には、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)(ATCC 7955)を試験微生物として用いた。 図11に示すように、未処理アセトン抽出物から抽出されたケン化不能部分のみが、芽胞に対するディスクによる阻止を示し、アセトン抽出物をヘキサンとメタノールで二相分離すると、ケン化不能化合物が分離されることが明らかになった。 興味深いことに、これらの粗アセトン抽出物のケン化不能部分は、アルカリ非処理の粗アセトン抽出物より活性が低く、特にこれらの細菌芽胞に対する発育阻止活性において、アルカリ非処理の粗アセトン抽出物より活性が低かった(図2)。

    粗アセトン抽出物中のケン化不能化合物は、芽胞より、栄養細胞に対して、より高い特異性を持っていた。 ヘキサン-メタノールによる二相分離は、ケン化不能物の栄養細胞に対する活性を減少させることから、こうした化合物の一部が、二相分離中にアルコール相に移動した可能性が示された。

    上側のヘキサン相と下側のメタノール相、つまり粗アセトン抽出物のケン化不部分が分配された先の抗細菌特性を、実施例1に記載した粗アセトン抽出物および粗ヘキサン抽出物の活性と比較すると、抗細菌特性は双方の相とも、有意に低かった。 この結果からは、活性化合物がアルカリ処理に対して感受性であるか、所望の化学的性状のいくつかが、ケン化処理とその後の分離処理の間に改変されるか喪失したたことが示される。 上記から明らかなように、抗菌および殺芽胞性活性を単離あるいは増加させることを目的としたケン化処理によって、活性のアボカド種子抽出物が得られると考えるべきではない。

    実施例7 − アボカド種子のアセトン抽出物の分配クロマトグラフィー

    実施例1に記載した手順にしたがって、アボカドの種子の未処理アセトン抽出物を得、乾燥状態まで蒸発させ、その後、実施例5に記載した手順にしたがってヘプタン:メタノール二相系で分離した。 極性が低めの化合物を含む上側のヘプタンの濃度が高い相(F001)をロータリー・エバポレータを用いて乾燥状態まで蒸発させ(35℃、22 in Hg)、その後、ヘプタンとメタノールを用いて化合物を分画するために、1000mlのカラムを持つ卓上型高速遠心分配クロマトグラフィーFCPC(登録商標)に注入した。 ヘプタンをポンプでカラムに注入し、 静止相(740ml)として用いた。 その後、メタノール(移動相)を、ポンプでカラムに10ml/分の流速で注入した。 ローター速度は800rpmに設定した。 アボカド種子アセトン抽出物が二相分離されているヘプタン:メタノール二相系の上相を蒸発させ、得られた濃縮抽出物(65ml)を、系が流体力学的平衡に達した後、FCPCに注入した。 最初の170分間は、分画を溶出させるためにメタノールを用い、その後移動相としてヘプタンを100分間用いた。 カラムの出口からの溶出物を、各試験管あたり10mlに設定されたフラクション・コレクターを用いて試験管に採取した。 各分画の1mlを、抗細菌および芽胞抑制・殺芽胞活性試験用に採取し、Speed Vac遠心器を用いて乾燥状態まで蒸発させ、各分画の固形物の重量を記録し、プールあたりの最終濃度が2.5mg/mlとなるよう、70の連続した分画のプールを形成した。 各プールの抗細菌特性を、実施例1に記載の手順にしたがって、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)の栄養細胞、未処理芽胞、ヒートショック処理芽胞に対して評価した。 各分画の残余量(9ml)をSpeed Vac遠心器を用いて乾燥状態となるまで蒸発させ、80℃に保存し、さらに化学的同定に用いた。

    図12からわかるように、抗細菌活性は分配係数(Kd)が、0.5より低い(より詳細にはKdの値が0.19〜0.35の範囲の)分画に存在し、活性化合物は、メタノールよりヘプタンに対して2倍以上可溶であることが示された。 また、栄養細胞に対する発育阻害物質が極性の高い分画に分布していることから、これらの分画の栄養細胞に対する活性は、芽胞に対する活性と比較してわずかな違いがあった。

    FCPCによる抽出物の分離で、上述の実験での純度の低い抽出物の場合と比較して、所望の抗菌活性が増大したことから(阻止帯の直径が3cmまで増大)、抗細菌化合物の濃度を希釈しかねない他の植物由来の化合物を除去する必要性が明確に示された(図12)。 一部のFCPC分画の抗菌活性は、図2のアボカド種子のヘキサンとアセトンによる粗抽出物のデータと比較して、50%以上増加していた。 図12の結果からは、図8同様、活性化合物が、メタノール相よりヘプタン相と親和性であることもわかる。

    活性が最も高い分画の抗細菌活性をさらに調べるうえでは、一晩の培養後の微生物の視認可能な発育を阻止する抗菌物質の最低濃度として定義される最少発育阻止濃度(MIC)を測定することが重要である。 ナイシンと比べると、Kdが0.3と0.4のFCPCにより得られた分画は、C・スポロゲネス(C. sporogenes)の未処理芽胞およびヒートショック処理芽胞より、栄養細胞に対して低いMICを示した(表2)。 Kdが0.4の分画は、芽胞の発育に関してナイシンより2倍近く活性が高かったが、Kdが0.3の分画は、ナイシンより約15倍高活性であった。 一方、ヒートショック処理芽胞の場合、ナイシンと、Kdが0.4の分画の違いは、より不明確であったが、それでも芽胞の発芽に関して、所望の発育阻止特性を持っていた。

    本実施例からわかるように、上記の条件(逆相)でFCPCによって分離された同じ抽出物も、ヘプタンを移動相(通常相)として用いることによって分離でき、クロマトグラフィーによる分離の結果では、抗菌活性に関して同じ傾向が示された(図13)。 つまり、FCPCによって得られた最初の方の分画は、最後の方の(極性が高めの)分画より活性が高く、図13で、抗菌活性が分配係数が7.2まで存在し、メタノールよりヘプタンに対して7.2倍以上高い可溶性を示した他の化合物は、C・スポロゲネス(C. sporogenes)の栄養細胞あるいは芽胞の発育を阻止しなかった。

    実施例8 − C・スポロゲネス(C. sporogenes)以外の微生物に対する発育阻止活性を有する分画を得るためのアボカド種子のアセトン抽出物の分配クロマトグラフィー

    実施例1に記載の手順にしたがって、アボカド種子の未処理アセトン抽出物を得、乾燥状態まで蒸発させ,その後、実施例5に記載の手順にしたがって、ヘプタン:メタノール二相系で分離した。 極性が低めの化合物を含み、ヘプタンの濃度が高い上相を、ロータリー・エバポレータを用いて乾燥状態まで蒸発させ(35℃、22 in Hg)、その後、これを、実施例7に記載の通常相の条件を用いて、高速遠心分配クロマトグラフィーFCPC(登録商標)に注入した。

    通常相のFCPCにより得られた分画を、S・アウレウス(S. aureus)とB・ズブチリス(B. subtilis)の栄養細胞の発育に対する抗菌活性を評価するために用いた。 図14からわかるように、C・スポロゲネス(C. sporogenes)を阻止する化合物とは異なる、極性の極めて低い化合物が、S・アウレウス(S. aureus)とB・ズブチリス(B. subtilis)の栄養細胞の発育を阻害している。 というのも、ディスクに、分配係数が7より高い分画を接種したところ、実施例7でのC・スポロゲネス(C. sporogenes)の阻止についての結果とは対照的に、これらの微生物に対してディスク阻止帯が観察されたからである。

    表3は、実施例1での粗抽出物の評価、実施例5に記載した分離抽出物の評価、実施例6でのケン化不能分画の評価など、上述の実験での抗菌性の結果をまとめたものである。 興味深いことに、表からもわかるように、これらの化合物はS・アウレウス(S. aureus)に対しては発育阻止効果を何ら示さず、B・ズブチリス(B. subtilis)に対しても、図14に示す濃縮CPC分画にみられるような、より強い発育阻止効果と比べると、きわめて低値のディスク阻止帯を示すにとどまった。

    実施例9 − 抗菌活性の安定性に対する高圧高温の影響

    実施例1に記載の手順にしたがってアボカド種子の粗アセトン抽出物を得、乾燥状態まで蒸発させた。 その後、実施例5の記載にしたがって、アセトン抽出アボカド固形分を二相ヘキサン-メタノール系で二相分離し、さらに、(実施例5に記載されているように)第一の分配系の下相(メタノール相)に存在する活性化合物を完全に回収するために、第二の酢酸エチル:水の分配系を使用した。 ヘキサンと酢酸エチルの相は別個に回収し、ロータリー・エバポレータを用いて乾燥状態まで蒸発させた(35℃、22 in Hg)。 その後、双方の相をバイアルに満たし、それぞれ、300MPaおよび600MPa(43,511および87,022psi)の静水力学的圧力(HHP)処理に、3分間および6分間暴露した。 高圧処理後の抽出物の抗細菌特性に有意な違いは認められず、観察した抗菌特性の原因化合物は、HHP処理に対して安定であることが示された。

    活性化合物の熱安定性について、25〜100℃の範囲の温度で60分間の試験を行った。 C・スポロゲネス(C. sporogenes)の栄養細胞の発育に対して活性を持つ化合物(図15)は、未処理芽胞の発育に対する阻止活性をもつ化合物(図16)より、熱処理に対する感受性が低かった。 図15からわかるように、栄養細胞に対する発育阻止特性は、酢酸エチル抽出物とヘキサン抽出物を100℃で60分間処理することにより、25℃のままとした非加熱対照抽出物の発育阻止活性と比べて、それぞれ20および23.5%減少した。

    ヒートショック処理芽胞は、熱処理粗ヘキサン抽出物および粗酢酸エチル抽出物の作用に対して、抵抗性がより高かった。 ヒートショック処理芽胞に対する発育阻止特性は、抽出物の100℃で60分間の暴露後では、25℃のままとした対照抽出物の発育阻止活性と比べて50%減少していた。

    実施例10 − 生物活性分画中の主要化合物の特定

    逆相高速遠心分配クロマトグラフィー(RP-FCPC)を利用することによって得られた、ディスク阻止帯(図12)が最大で、しかもKdが0.19〜0.35の分画をまとめて混合し、実施例7に記載したような「活性分画のプール」を形成した。 まず、分画(13)を192.3mg/mlの同濃度に調整し、それぞれから同容積(100μl)を分取し、エタノールで50mg/mlの最終濃度に調整した。

    図17に示されている通り、活性プールに含まれる分画のクロマトグラフ特性は、Kdの増加とともに連続的に変化する。 個々の分画の一部を分取して蒸発させ、HPLC等級のメタノールで1mg/mlに調整し、2μlを注入した。 使用カラムは、Zorbax Extanded-C18(100x内径3 mm、3.5μm)カラムで、移動相は、A相として水100%、B相としてメタノール100%を用いた。 溶剤勾配は、表4に示すものを使用し、0.38ml/分の流量と、平衡後の時間6分間で供給した。 検出装置は、波長220nmに設定した。

    アボカド由来の抗菌化合物の活性プールより得られた典型的なクロマトグラフを図17に示す。 クロマトグラム中に示した数字は、220nmにおいて共通に吸光のみられるピークを表し、化合物1〜11と名付けてある。 各化合物の質量と分子式についての情報は表5に示した通りである。 これらの化合物のいくつかは,アボカド組織での存在がすでに報告されているが、いくつかの化合物は、発明者らが抗菌分画中で発見したものであり、新規化合物として、ここに開示する。 ほとんどの生物活性分画で、化合物1、2、4、11などは、化合物7および9と比べて、濃度が低かった(図17)。

    実施例11 − 抗菌化合物を高濃度で含む分画の芽胞抑制活性および殺芽胞活性の評価

    実施例10に記載した活性分画(分配係数 0.19〜0.35)のプールが芽胞抑制または殺芽胞性活性を持っていることを立証するためには、最少発育阻止濃度(MIC)と最小殺菌濃度(MBC)を決定することが必要であった。 一般論としては、最少発育阻止濃度(MIC)は、一晩培養後に微生物の視認可能な発育が阻止される、抗菌物質の最低濃度と定義される。 一方、最小殺菌濃度(MBC)は、抗生物質も抗菌物質も含まない新鮮寒天培地での継代培養後に微生物の発育が阻害される、抗菌物質の最低濃度のことである。 活性分画のプールを0.005〜2.5mg/mlの範囲の濃度で、対照としてナイシンを用いて分析した。

    表6に示すように、活性分画プールの最少発育阻止濃度(MIC)は、ナイシンの最少発育阻止濃度(MIC)のほぼ1/10であり、活性分画プールは、C・スポロゲネス(C. sporogenes)の芽胞の発育阻害剤として、ナイシンよりすぐれていることがわかる。 Smola(2007)によれば、MBC/MIC比が4以下の場合、その化合物は殺芽胞物質と見なすことができ、MBC/MICが4より大きい場合、その化合物は単に芽胞抑制物質と見なされる。 本実施例では、ナイシンとアボカド活性分画プールの双方とも、殺芽胞効果を示した。

    実施例12 − 生物活性分画から単離された化合物の抗菌活性

    本実施例では、実施例10(表5)に記載したのと同じ単離化合物の抗菌活性を、C・スポロゲネス(C. sporogenes)の栄養細胞とヒートショック処理芽胞、ならびにS・アウレウス(S. aureus)、P・アエウロギノサ(P.aeuroginosa)、大腸菌(E. coli)、およびB・ズブチリス(B. subtilis)の栄養細胞の発育に対して、実施例1に記載した手順にしたがって、0.5mg/mlの濃度で調べた。 表7にも示されているように、化合物6(ピーク6)およびペルセノンB(ピーク9A)は、高めの抗菌特性を示し、ペルセノンA(ピーク7)がそれに続いた。 また、既知の抗菌物質であるナイシンは、100倍高い濃度で試験に使用しているにもかかわらず、全生物活性化合物のうち、ペルシン(ピーク9B)のみがナイシンより活性が低かった。 ペルシンは、菌の芽胞の発芽を阻止しうることが報告されており(Pruskyら,1982)、本実験でも、ペルシンの活性は低めであることが示唆されているので、他の生物活性化合物は、菌の芽胞に対してより高い活性を持つはずである。

    意外なことに、C・スポロゲネス(C. sporogenes)の栄養細胞およびヒートショック処理芽胞に対して高い活性を示すすべての化合物(表7での抗菌活性が高い順に、化合物6、ペルセノンB、ペルセノンA)は、C5-C6二重結合を持っていたことを報告しておく(表8参照)。 また、ペルシン(化合物9B)とペルセノンA(化合物7)の構造を比較すると、唯一の違いは、ペルシン(化合物9B)では、C5-C6二重結合を欠いていることであり、本実施例では、抗菌活性が37.5%低くなることが示された。 また、ペルセノンB(化合物9A)と化合物6の構造上の唯一の違いは、後者がC16-C17二重結合も持っていることであったが、これらの化合物の発育阻止活性は同じであった。 この観察結果から、C5-C6二重結合が、本実施例でも記載したように化合物の抗菌活性を向上させるうえで望ましい構造上の特徴であること、また、C16-C17二重結合は化合物3の唯一の不飽和であり、化合物3の活性の方が、不飽和を2箇所含むのにC16-C17には不飽和のないペルシン(化合物9B)より高かったことから、C16-C17二重結合も公的な構造上の特徴であるという知見も支持された。

    C・スポロゲネス(C. sporogenes)に対する抗細菌化合物の大半(化合物6、ペルセノンB、ペルセノンA)は、S・アウレウス(S. aureus)、P・アエウロギノサ(P. aeuroginosa)、大腸菌(E. coli)に対する発育阻止活性を示さなかったものの(表9)、化合物6は、B・ズブチリス(B. subtillis)の発育に対して最大の発育阻止活性も示し、ペルセノンAがその次であった。 化合物6は、アボカド構成成分として報告されていない新たに見いだされた化合物であるため、この化合物に関しては、抗菌活性だけでなく、他の生物活性に関しても報告がない。 ペルセノンAは、抗真菌活性については以前に報告があるものの、表7の結果によると、その抗菌活性は、芽胞形成性のグラム陽性菌に特異的であるようである。 実施例10に記載したようにして得られ、実施例10でC・スポロゲネス(C. sporogenes)に対する抗細菌特性を示した活性分画のプールは、本実施例では、芽胞形成性のB・ズブチリス(B. subtilis)に対する発育阻止活性を示しただけであった。

    化合物6、ペルセノンB(化合物9A)、ペルセノンA(化合物7)の最少発育阻止濃度を、実施例11に記載した手順にしたがって、C・スポロゲネス(C. sporogenes)のヒートショック処理芽胞の発芽に対して決定した。 表10からわかるように、これらの3化合物の最少発育阻止濃度の値は、ナイシンより15〜30倍も低く、細菌芽胞への効果が示された。 活性分画のプールについては、最少発育阻止濃度は19.5μg/mlであったのが(実施例11)、単離すると、ペルセノンAとペルセノンBの最少発育阻止濃度は7.8μg/mlに下がったものの、プール内のペルセノンBの抗菌特性は、この化合物の含有量(μg)が少なく、また他の生物活性分子と組み合わさると、化合物の活性があがるようであることから、単離した際の低めの最少発育阻止濃度と対応しなかった。 興味深いことに、単離化合物は、C・スポロゲネス(C. sporogenes)に対する芽胞抑制活性のみを示し、活性分画の分画で観察されたような(表6)殺芽胞生物活性は示さなかった。

    実施例13 − リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)を制御するための、アボカド種子抽出物の抗細菌活性と低温保管との組みあわせ

    実施例10に記載した活性分画のプールは、冷蔵条件でも発育しうるグラム陽性菌、たとえばリステリア・モノキトゲネス(Listeria monocytogenes)の低温ストレスを与えた栄養細胞に対しても、抗細菌作用を示す。 リステリア・モノキトゲネス(Listeria monocytogenes)にとっての最適発育温度である37℃では、生物活性のアセトゲニンが濃縮されたアボカドプール抽出物は、調べた生物の栄養細胞の発育阻止に対して、特に有用ではなかった(表11)。 しかし、予想外にも、本発明者らは、冷蔵条件では、アボカド種子 のプール抽出物が、リステリア・モノキトゲネス(Listeria monocytogenes)の発育を阻止するうえで特に有用であることを見いだした。 さらに、表12からわかるように、本発明で単離したアボカドのアセトゲニンの抗菌活性を、リステリア・モノキトゲネス(Listeria monocytogenes)の栄養細胞の発育について試験したところ、C5とC6の間に二重結合があるという所望の特徴を示す化合物は、冷蔵条件下で保管される食糧品および生物学マトリックス中のリステリア・モノキトゲネス(Listeria monocytogenes)のコントロールに使用できた。

    実施例14 − 濃縮アボカド抽出物中の抗菌化合物の定量

    表7(実施例10)に記載した活性分画のプールに含まれる抗細菌化合物の濃度を図18に示す。 ペルセノンAが活性分画のプールの乾燥重量の36.32%を占め、ペルセノンBは0.20%、化合物6は最低量(0.05%)であった。 混合物中の他の成分は、ペルセノンAの発育阻止活性に影響せず、したがって、これ以上の精製は必要ないようである。

    表13からは、新鮮なアボカド果肉および種子には、C・スポロゲネス(C. sporogenes)に対する生物活性化合物の大半(化合物6、ペルセノンB、ペルセノンA)が極めて似た濃度で含まれており、そのうちペルセノンAが最も濃縮されていることがわかる。 本実施例の情報は、もし生物活性化合物が果肉にも存在するのであれば、そうした生物活性化合物は果実の他の部分からも容易に得られることから、大変重要である。 本実施例は、抗細菌特性を発揮するのに必要な濃度の果実を食べる際には、ヒトは生物活性分子に暴露され、したがって、この果実が食糧品、医学、化粧品技術において商業的に価値がある可能性を示している。

    以上では、本発明の各種の実施形態について記載してきたが、以上の記載によって記述した本発明については、本発明の精神や範囲から逸脱することなく、数多くの自明な改変を行うことができるため、以上の記載で説明した特定の詳細に限定されるものではない。

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