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不動態金属活性化の方法およびその使用

阅读:885发布:2022-11-30

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アノードと、カソードとおよび電解液を備える電気化学セル装置であって、前記アノードがアノード燃料の供給源としてアルミニウムを含有し、前記カソードが空気カソードであり、前記電解液が少なくとも1種の[(HF)nF]−種を含有し、前記少なくとも1種の[(HF)nF]−種が前記電解液内で測定可能なスペクトル特性を示し、前記アノードの表面は、前記電解液に露出され、フルオロヒドロゲナート−金属種(HF種)を含有し、それによって、有機溶媒を用いた洗浄後に前記測定可能なスペクトル特性を実質的に示し、かつ前記電気化学セル装置が、腐食電流よりも高い放電電流を示す、電気化学セル装置。前記測定可能なスペクトル特性が、全反射赤外スペクトルのピークであり、前記全反射赤外スペクトルのピークが、3150cm−1〜2840cm−1、1110cm−1〜800cm−1、2505cm−1〜2200cm−1、1920cm−1〜1600cm−1、および/または1170cm−1〜870cm−1からなる群から選択される波数範囲を有する、請求項1に記載の電気化学セル装置。前記アノードが、少なくとも99%のアルミニウムを含む、請求項1または請求項2に記載の電気化学セル装置。前記カソードが、金属酸化物含有カソードである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学セル装置。製造時の初期容量C0と、n回の放電/再充電サイクル後の総容量ΣCnと、を有する再充電可能な電気化学セルであって、前記総容量ΣCnが、以下の式を満たし、 ΣCn=C0+C1+C2+C3+…+Cn 式中、nが整数であり、かつ 前記総容量ΣCnが、初期容量C0よりも大きい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気化学セル装置。前記[(HF)nF]−種のモル濃度が、0.01%〜50%の前記電解液の範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気化学セル装置。前記[(HF)nF]−種が、式[(HF)2.3F]−により表されるオリゴフルオロヒドロゲナートアニオン集団である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気化学セル装置。前記電解液が、金属カチオン、無機カチオン、有機カチオン、多原子カチオン、有機金属カチオン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気化学セル装置。前記電解液が、室温イオン液体(フルオロアニオン−RTIL)を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気化学セル装置。前記フルオロアニオン−RTILが、EMIm(HF)2.3Fおよび/またはPyr14(HF)2.3Fである、請求項9に記載の電気化学セル装置。前記電解液が、有機溶媒、無機溶媒、極性溶媒、非極性溶媒、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、イオン性溶媒、イオン液体、溶融塩、非イオン性溶媒、ならびにそれらの任意の混和性および/または非混和性の組み合わせからなる群から選択される溶媒を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電気化学セル装置。前記電解液が、フルオロアニオン塩をさらに含む、請求項11に記載の電気化学セル装置。前記電解液が、溶液、液体、ゲル、ペースト、懸濁液、エマルジョン、コロイド、半固体、固体およびそれらの任意の組み合わせの形態である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電気化学セル装置。アルミニウムを備えるアノードと、空気カソードとおよび電解液を備える電気化学セル装置であって、前記電解液が、EMIm(HF)2.3Fおよび/またはPyr14(HF)2.3Fを備える、電気化学セル装置。アルミニウムを含有する電極であって、前記アルミニウム表面の少なくとも一部が、電気化学的活性フルオロヒドロゲナート−金属種(HF種)と、およびアルミニウムの天然酸化不動態層と比して、80%未満の電気化学的な不動態酸化アルミニウム種とを備え、前記少なくとも一部が、有機溶媒を用いた洗浄後の前記フルオロヒドロゲナート−金属種に対応する測定可能なスペクトル特性を示す、電極。前記測定可能なスペクトル特性が全反射赤外線スペクトルのピークであり、3150cm−1〜2840cm−1、1110cm−1〜800cm−1、2505cm−1〜2200cm−1、1920cm−1〜1600cm−1、および/または1170cm−1〜870cm−1からなる群から選択される波数範囲を有する全反射赤外スペクトルのピークである、請求項15に記載の電極。前記アノードが少なくとも99%のアルミニウムを含有する、請求項15または請求項16に記載の電極。

说明书全文

発明の分野および背景 本発明は、その幾つかの実施形態において、金属の化学作用に関し、より詳細には、非排他的にアルミニウムなどの自己不動態化金属の表面を活性化させる方法、金属酸化物を再活性化する方法、および例えば電気化学セルにおける、これらの方法の使用に関する。

アルミニウムなどの一部の金属、およびステンレス鋼などの金属合金は、室温の空気、または別の酸化環境に暴露すると、硬質で比較的不活性の表面を形成する傾向がある。これらの現象は、自己不動態化または自然不動態化として公知である。アルミニウムの場合、例えば約2〜3nm厚の非晶質酸化アルミニウムの表面層が自然に形成されて、特定の環境条件での腐食および他の化学的プロセスに対抗する効果的保護層をもたらす。アルミニウム合金は、典型的には5〜15nm厚のより厚い酸化層を形成するが、腐食をより受け易い傾向がある。

アルミニウムと同様に、自己不動態化メタロイドであるケイ素もまた、電気化学的には自然な反応性がなく、典型的には周囲条件で形成された酸化物の自然な不動態化層で被覆されている。フッ化素酸(HF)は、典型的にはケイ素表面活性化に用いられ、酸化ケイ素(シリカ、SiO2)溶解のために工業的に利用される薬剤でもある。しかし、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)は、フッ化水素酸への溶解度がかなり低く、シリカに比較して2〜3桁低いため[Kurt R. et al., J. Am. Ceram. Soc., 82 [12] 3561−66 (1999)]、フッ化水素酸はアルミニウム活性化の効果が低い薬剤とされている。

アノードとしてのアルミニウムおよびアルミニウム合金に基づくバッテリーシステムは、効率的で安価であり、かつ高性能の電源となる可能性を示す。アルミニウムに基づいたバッテリーシステムの主な利点としては、高いエネルギー量(8kWh/kg)、低い当量、高い自然存在比(低価格)、および安全性に加え、比較的非毒性で環境に安全な副産物が挙げられる。例えば、電気自動車の推進に関係して、アルミニウムは、単位重量あたりのガソリンのエネルギー量のおよそ1/2、および単位容量あたりの該エネルギーの3倍を含む。

非水性溶液を基にした電気化学セル内の燃料源(アノード)としてアルミニウムの使用を試みる人々が依然として直面する主な障害の1つが、酸化物または他の保護層により自己不動態化する傾向を抑制し、金属アノードを電気化学的に低反応性にし、それによりアノードとして使用不能になることである。アルミニウム(だけでなく同じく適用された他の任意アノードにも)基づく電源は、アルカリ水溶液中では、様々な問題を受ける。それらの1つとして、バッテリーのエネルギー容量を有意に低下させる腐食反応のため、そして不溶性生成物の形成による電解質そのものの変性のための、重度のアノード重量損失を挙げることができる。

アルミニウム空気(Al/空気)システムは、理論的にはエネルギー容量およびセル電位に関して、実行可能な金属アノード/空気(酸素)カソードバッテリーを表す。しかし今日まで、上述の理由、即ち腐食および電解質変性に加え、ピーク湿度条件(高い場合と低い場合の両方)での性能低下およびCO2中毒(アルカリ環境で)があり、そしてそれらの全てが可逆的電極電位の低下を誘発し、即ちセル電圧が理論値よりもかなり低くなることから、アルミニウムアノードを使用する市販のバッテリー製品は存在しない[Li, Q. et al., J. Power Sources, 2002, 110, p. 1−10]。

アルミニウム/酸素システムは、酸化亜鉛または特定の有機阻害剤、例えばアルキルジメチルベンジル−アンモニウム塩を電解質に添加すると、10M水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム溶液中のアマルガム化アルミニウムアノードの腐食が有意に減少することを見出した研究者により、1960年代初頭に初めて実証された[Zaromb, S., J. Electrochem. Soc., 1962, 109, p. 1125−1130; Bockstie, L. et al., J. Electrochem. Soc., 1963, 110, p. 267−271]。

今日までの主な開発努力は、2つのタイプの電解質、即ちアルカリ電解質および塩類電解質を含む空気/金属セルに集中していた。熱力学的項目において、アルミニウムアノードは、塩類電解質中では−1.66V、そしてアルカリ電解質中では−2.35Vの電位を示すはずであるが、実際のアルミニウム電極は、有意に低い電位で動作し、それは(a)アルミニウムが通常、酸化物/水酸化物被膜に覆われていて、内部抵抗により定常電圧の到達の遅延を起こすため;そして(b)アルミニウムが寄生腐食反応を受けて、金属使用および水素放出が100%未満になるためである。

アルミニウム電極でのヒドロキシルイオンの積極的消費により、電解質にアルミナート(アルミニウム塩)がより多く飽和され、最終的に過飽和を超えて、ヒドロキシルイオンの再生により沈殿する水酸化アルミニウムの結晶が形成する。アノードの電気化学的消費に加え、アルミニウムは、アルカリ電解質中で熱力学的に不安定であり、該電解質と反応して水素を発生する。この寄生腐食反応、または自己放電は、アノードのクーロン効率を低下させるため、容量の損失を最小限に抑えるためにはそれが抑制されなければならない。

溶融塩は、非水性媒体を構成し、それはアルミニウムが表面の酸化物被膜を形成しない代替的な電解質と見なされてきた。アルミニウムは、非水性媒体から電着され得るため、そのような電解質は、再充電可能なアルミニウムバッテリーを開発するのに適すると見なされた。1970年代から、アルミニウム二次バッテリーを開発するのに少なからぬ研究が実施され、最も初期の試みは、NaCl−(KCl)−AlCl3を電解質として用いることによるAl/Cl2バッテリーシステムの開発であった[Holleck, G. L. et al., J. Electrochem. Soc., 1972, 119, p. 1161−1166]。塩素貯蔵に関わる問題から、金属塩化物がカソード材料として提案されたが、溶融物への金属塩化物の高い溶解度が、そのようなバッテリーシステムの開発を抑制した[Weaving, J. S. et al., J. Power Sources, 1991, 36, p. 537−546]。硫黄およびその同族元素も、遷移金属およびそれらの硫化物と共に、コストおよび他の技術的態様および判断事項を考慮してもカソード候補として示唆され、FeS2およびFeSは、今日までAlを基にしたシステムで最も一般的に用いられるカソードである[Li, Q. et al., J. Power Sources, 2002, 110, p. 1−10]。総括すると、これらの溶融塩バッテリーシステムは、金属硫化物の溶解度により有意な容量損失が観察され、充電時のアルミニウムデンドライトの形成がバッテリー効率を損なうものの、高温で(少なくとも100℃超)動作し、高い放電容量を示す。

室温イオン液体(RTIL)は、比較的大きな分子の有機カチオン(例えば、イミダゾリウム、テトラアルキルアンモニウム、スルホニウム、ピペリジニウム、ピリジニウムおよびベタイン)と、相対的に小さな無機アニオン(例えば、PF6、BF4、AlCl4、(CF3SO2)2N、Et3OSO3)との共同で生成される広範囲の液体材料を含む溶媒分類である。イオンのみで構成されたこれらの材料は、高温溶融塩と比較される場合があるが、RTILの融点が室温近く(約25℃)であることが明白な差である。Hagiwara,R.ら[J. Fluor. Chem., 1999, 99(1)およびJ. Electrochem. Soc., 2002, 149, D1]は、フルオロアニオン−RTIL EMIm(HF)2.3Fなどのフルオロヒドロゲナート含有RTILの合成および特性、例えば高温での電気伝導度および熱安定性を報告した。

複数の研究者が、アルミニウムバッテリーのための電解質としてのクロロアルミン酸塩RTILの使用を模索した[Egan, D. et al., J. Power Sources, 2013, 236, p. 293−310]。これらの研究は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)とAlCl3との高発熱性の反応による面倒な調製により限定された。1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド([EMIm]TFSI)、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([BMP]TFSI)、[(トリヘキシル−テトラデシル)ホスホニウム]ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(P14,6,6,6TFSI)および1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート[BMIm]TFBなどの空気および水安定性イオン液体は、クロロアルミン酸塩イオン液体の代替物と見なされたが、市販のアルミニウム/イオン液体バッテリーシステムを提供することにおいては、依然として努力が功を奏していない。

イオン液体中、およびイオン液体含有電解質中の金属塩および金属酸化物の低い溶解度によって、これらの溶液の可能な電気化学的適用への重大な欠点が提示される。低い溶解度は、イオン液体のほとんどがテトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、またはビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドのような弱く配位したアニオンを含む、という事実の結果であると推定される。フッ素化アニオンを有するイオン液体は、塩素イオンまたはカルボン酸イオンのような配位アニオンを有するイオン液体よりも低い融点および粘度を有するが、その溶媒和能力は、非常に低い。イオン液体への金属塩の溶解度は、低蒸気圧でイオン液体を配位添加剤と混合することにより上昇し得る。一例が、イオン液体へのポリ(エチレングリコール)の添加である。他の例が、塩化コリンと尿素との混合物、または塩化コリンとカルボン酸との混合物などの「深共融溶媒」である。イオン液体への金属塩の溶解度を上昇させる更なるアプローチは、配位基が付加されたイオン液体、いわゆる「タスク特有の(task specific)」RTILの使用である。

後者のイオン液体は、典型的にはその融点および粘度を低下させるためにより従来型のイオン液体と混合される。そのようなイオン液体混合物の例が、ベタイニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド[Hbet][Tf2N]である。カルボキシル基を担うこのイオン液体は、金属酸化物の選択的可溶化能力を有する。とりわけそのような酸化物は、酸化ウラン(VI)、酸化亜鉛(II)、酸化カドミウム(II)、酸化水銀(II)、酸化ニッケル(II)、酸化銅(II)、酸化パラジウム(II)、酸化鉛(II)、および酸化銀(I)である。様々な酸化物がこの特有のRTILに可溶性であることが見出されたが、鉄、コバルト、アルミニウムおよび酸化ケイ素は、それらに不溶性、または非常に難溶性であることが見出された[Nockemann P. et al., J. Phys. Chem. B, 2006, 110, 20978−20992]。

様々な基板への金属堆積は、特に基板が自己不動態化金属である場合、そして堆積での金属イオンの供給源が不溶性酸化物、またはそうでなければ非反応性金属種である場合でも、問題が提起されるもう1つの分野である。幾つかの金属堆積工程は、依然としてシードの使用を必要とし、そのようなシーディングは、特に極度に繊細な構造特性への堆積では、均一性の低い堆積になる。例えば、超大規模集積(ULSI)におけるTaN/Ta拡散隔膜の銅電気メッキは、シーディングと、高度に保護された作業環境とを要する複雑な科学的エンジニアリング問題であり、そのことで堆積パターンのスケーリング、拡散隔膜層の製造および電気メッキそのものが困難な作業になる。

更なる背景技術としては、米国特許第5,082,812号、同第5,411,583号および同第5,587,142号、ならびにドイツ特許第DE19731349号が挙げられる。

発明の概要 アルミニウムなどの自己不動態化金属の不動態化層が回避または除去され、表面が化学的または電気化学的に活性にされる方法論が、依然として求められている。

本発明の幾つかの実施形態の一態様によれば、表面をフルオロアニオン含有組成物と接触させ、それにより活性化された金属表面を得ることを含む、金属または金属合金の表面を活性化させる方法が提供される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、接触は、少なくとも10秒間実施される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該活性化期間は、少なくとも1時間である。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該活性化された金属表面は、不動態化層を本質的に含まない。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該活性化された金属表面は、フルオロヒドロゲナート−金属種(HF種)を含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該活性化された金属表面は、3150cm−1〜2840cm−1、1110cm−1〜800cm−1、2505cm−1〜2200cm−1、1920cm−1〜1600cm−1、および/または1170cm−1〜870cm−1からなる群から選択される波数範囲を有する全反射赤外スペクトルにおいて少なくとも2つのピークを示す。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、50μA/cm2の最大腐食電流密度の下で、1時間にわたり金属または金属合金の表面積1cm2あたり1・10−4グラム未満を減少させながら実行される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該金属は、自己不動態化金属、遷移金属、貴金属、ポスト遷移金属、卑金属、貧金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属、ランタニド、アクチニド、およびそれらの合金からなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該金属または金属合金は、自己不動態化金属または自己不動態化金属合金を含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該自己不動態化金属は、アルミニウム、クロム、チタンおよびタンタルからなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該自己不動態化金属合金は、アルミニウムである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該自己不動態化金属合金は、合金鋼である。

本発明の幾つかの実施形態の一態様によれば、アノードと、カソードと、電解質と、を含み、前記アノードがアルミニウムを含み、前記電解質がフルオロアニオン含有組成物である、電気化学セル装置が提供される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該アノードは、図9のプロット8に表された全反射赤外スペクトルのピークの少なくとも2つを示す。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該アノードは、不動態化層を本質的に含まない。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該アノードは、フルオロヒドロゲナート−金属種(HF種)を含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該アノードは、3150cm−1〜2840cm−1、1110cm−1〜800cm−1、2505cm−1〜2200cm−1、1920cm−1〜1600cm−1、および/または1170cm−1〜870cm−1からなる群から選択される波数範囲を有する全反射赤外スペクトルの少なくとも2つのピークを示す。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該アノードは、少なくとも99%のアルミニウムを含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、電気接続によりアノードと動作可能に関連している。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該アノードは、フルオロヒドロゲナート−金属種(HF種)のためのインターカレーションアノードである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該アノードは、金属イオンのためのインターカレーションアノードである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、空気カソードである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、金属酸化物含有カソードである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該金属酸化物は、MnO2およびV2O5からなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、金属硫化物カソードである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、インターカレーションカソードである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、コンバージョンカソードである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、フッ素化カソードである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、金属フッ化物カソードである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、CoF2、CoF3、FeF2、FeF3、CuF2、MoF5、およびSnF4からなる群から選択される金属フッ化物である。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、塩素カソードである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、硫黄カソードである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該電気化学セル装置は、初期容量C0と、n回の放電/再充電サイクル後の総容量ΣCnと、を有する再充電可能な電気化学セルである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、ΣCnは、C0よりも大きい。

本発明の幾つかの実施形態の一態様によれば、第一の金属または第一の金属合金を第二の金属または第二の金属合金に融合する工程であって、該第一の金属もしくは第二の金属の少なくとも一方が自己不動態化金属であり、自己不動態化金属である第一の金属および/もしくは第二の金属の表面を、フルオロアニオン含有組成物と接触させ、それにより活性化された金属表面を得ること、該第一の金属もしくは第二の金属の少なくとも一方を溶融すること、ならびに/または場合により、溶加材を溶融して、該第一の金属と第二の金属との境界を充填すること、ならびに該第一の金属もしくは第二の金属を冷却し、または該溶加剤を冷却し、それにより該第一の金属を該第二の金属に融合すること、を含む、工程が提供される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該工程は、自己不動態化金属でない第一の金属または第二の金属の表面をフルオロアニオン含有組成物と接触させ、それにより活性化された金属表面を得ること、をさらに含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該工程は、溶加材をさらに含み、該工程は、該溶加材の表面をフルオロアニオン含有組成物と接触させ、それにより活性化された金属表面を得ることを含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該溶加材は、自己不動態化金属である。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該活性化された第一の金属、第二の金属および/または溶加材の表面は、不動態化層を本質的に含まない。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、本明細書に示された金属を融合する工程は、不動態化層の溶融温度よりも低い温度で実行される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、本明細書に示された金属を融合する工程は、周囲雰囲気で実行される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該処理された第一の金属、第二の金属および/または溶加材のいずれかの活性化された金属表面は、フルオロヒドロゲナート−金属種(HF種)を含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該処理された第一の金属、第二の金属および/または溶加材のいずれかの活性化された金属表面は、3150cm−1〜2840cm−1、1110cm−1〜800cm−1、2505cm−1〜2200cm−1、1920cm−1〜1600cm−1、および/または1170cm−1〜870cm−1からなる群から選択される波数範囲を有する全反射赤外スペクトルにおいて少なくとも2つのピークを示す。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該第一の金属または第二の金属の一方は、自己不動態化金属、遷移金属、貴金属、ポスト遷移金属、卑金属、貧金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属、ランタニド、アクチニド、およびそれらの合金からなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該自己不動態化金属は、アルミニウム、クロム、チタンおよびタンタルからなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該自己不動態化金属は、アルミニウムである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該第一の金属合金または第二の金属合金は、合金鋼である。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該工程は、溶接、ろう付、および/またははんだ付を含む。

本発明の幾つかの実施形態の一態様によれば、第一の金属を第二の金属の表面に堆積させる方法であって、該第二の金属をフルオロアニオン含有組成物と接触させ、それにより活性化された金属表面を得ること、および該第一の金属を該活性化された表面に堆積させること、を含む方法が提供される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、本明細書に示された金属堆積の方法は、該フルオロアニオン含有組成物から該第二の金属を分離すること、該第一の金属の供給源を含む電解質中に該第二の金属を入れること、該電解質中の第二の金属と該電解質と電気的に連通した電極との間にカソード電位またはカソード電流を印加すること、をさらに含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、本明細書に表された金属堆積の方法は、該第一の金属の供給源を、該フルオロアニオン含有組成物に添加することをさらに含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該供給源は、該第一の金属の塩、該第一の金属の酸化物、該第一の金属の硫化物、該第一の金属の窒化物、該第一の金属の酸化形態、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該方法は、該フルオロアニオン含有組成物と接触している該第二の金属と、該フルオロアニオン含有組成物と電気的に連通している電極と、の間にカソード電位またはカソード電流を印加することをさらに含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該第二の金属は、自己不動態化金属である。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該第一の金属は、銅であり、該第二の金属は、タンタルを含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該方法は、第二の金属を第一の金属でシーディングせずに実行される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン含有組成物は、少なくとも1種の[(HF)nF]種を含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該[(HF)nF]種のモル濃度は、0.01%〜50%のフルオロアニオン含有組成物範囲である。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該[(HF)nF]種は、HF2、H2F3、H3F4、H4F5、H5F6、H6F7、H7F8およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該[(HF)nF]種は、式[(HF)2.3F]により表されるオリゴフルオロヒドロゲナートアニオン集団である。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン含有組成物は、金属カチオン、無機カチオン、有機カチオン、多原子カチオン、有機金属カチオン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該金属カチオンは、K+、Na+、Ag+、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、La3+、Al3+およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該有機金属カチオンは、フェロセン、アルキルオクタメチルフェロセニウムおよびアルキルコバルトセニウムからなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該無機カチオンは、ヒドロニウム、アンモニウム、ホスホニウム、オキシカチオン、N−オキソアンモニウムおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該有機カチオンは、アルキルアンモニウム、グアニジニウム、t−ブチルカチオン、コリン、トロピリウム、アルキルホスホニウム、アルキル化オキシカチオン、アルキル化N−オキソアンモニウム、N,N−ジアルキル化イミダゾリウムカチオン、N,N−ジアルキル化ピロリジニウムカチオン、N,N−ジアルキル化ピペリジニウムカチオン、N−アルキル−ピリジニウムカチオン、1−アルキル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−1−アルキル−ピロリジニウム、1−メチル−1−アルキル−ピペリジニウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該N,N−ジアルキル化イミダゾリウムカチオンは、ジメチル−イミダゾリウム、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム、1−プロピル−3−メチル−イミダゾリウム、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム、1−ペンチル−3−メチル−イミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム、1−エチル−3−プロピル−イミダゾリウム、1−エチル−3−ブチル−イミダゾリウムおよびジエチル−イミダゾリウムからなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該N,N−ジアルキル化ピロリジニウムカチオンは、ジメチル−ピロリジニウム、1−エチル−1−メチル−ピロリジニウム、1−プロピル−1−メチル−ピロリジニウム、1−ブチル−1−メチル−ピロリジニウム、1,1−ジエチル−ピロリジニウムおよび1−エチル−1−プロピル−ピロリジニウムからなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該N,N−ジアルキル化ピペリジニウムカチオンは、ジメチル−ピペリジニウム、1−エチル−1−メチル−ピペリジニウム、1−プロピル−1−メチル−ピペリジニウム、1−ブチル−1−メチル−ピペリジニウム、1,1−ジエチル−ピペリジニウム、および1−エチル−1−プロピル−ピペリジニウムからなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該N−アルキル−ピリジニウムカチオンは、1−メチル−ピリジニウム、1−エチル−ピリジニウム、1−プロピル−ピリジニウム、1−ブチル−ピリジニウムおよび1−ペンチル−ピリジニウムからなる群から選択される。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン含有組成物は、室温イオン液体(フルオロアニオン−RTIL)を含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該RTILは、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムフルオロアニオンまたは1−ブチル−1−メチル−ピロリジニウムフルオロアニオンから選択される有機カチオンを含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該RTILは、EMIm(HF)2.3Fおよび/またはPyr14(HF)2.3Fである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン含有組成物は、有機溶媒、無機溶媒、極性溶媒、非極性溶媒、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、イオン性溶媒、非イオン性溶媒、溶融塩、イオン液体、ならびにそれらの任意の混和性および/または非混和性の組み合わせからなる群から選択される溶媒を含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン含有組成物は、炭酸アルキル、エステル、ラクトン、エーテル、ニトリル、アミド、スルホキシド、スルホン、アルコール、炭化水素、芳香族炭化水素、固体溶媒、ならびにそれらの任意の混和性および/または非混和性の組み合わせからなる群から選択される溶媒を含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン含有組成物は、プロピレンカルボナート(PC)、テトラグリム(TEGDME)およびジメチルスルフィド(DMS)からなる群から選択される溶媒を含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン含有組成物は、[EMIm][TFSI]、[EMIm][ソルファナート(Solfanate)]および[EMIm][トリフルオロイミド(Trifluroimide)]からなる群から選択されるイオン液体を含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン含有組成物は、フルオロアニオン塩をさらに含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン塩は、三フッ化二水素カリウムおよび/または重フッ化カリウムである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン含有組成物は、フルオロアニオン−RTILをさらに含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、フルオロアニオン−RTILは、EMIm(HF)2.3Fおよび/またはPyr14(HF)2.3Fである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン含有組成物は、金属塩、金属酸化物、増粘剤、ゲル化剤、ポリマー、モノマー、架橋剤、可塑剤、希釈剤、保湿剤、表面活性剤、レオロジー改質剤、触媒、促進剤、阻害剤、抑制剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される添加剤をさらに含む。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン含有組成物は、溶液、液体、ゲル、ペースト、懸濁液、エマルジョン、コロイド、半固体、固体およびそれらの任意の組み合わせの形態である。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該フルオロアニオン含有組成物は、液体および/またはポリマーおよび/またはバイオポリマーおよび/または膜および/または多孔質マトリックスおよび/またはゲルおよび/または固体を含む物質組成に埋入される。

他に断りがなければ、本明細書で用いられる全ての技術的および/または科学的用語は、本発明の当業者に共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同一の方法および材料が、本発明の実施形態の実践またはテストで用いられ得るが、例示的方法および/または材料を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含む本特許明細書が管理する。加えて、該材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、必ずしも限定であることを意図するものではない。

本発明の幾つかの実施形態を、添付の図面を参照しながら実施例として本明細書に記載されたに過ぎない。ここに図面を詳細に参照するが、示された事項は例示であり、本発明の実施形態の例示的議論が目的であることを強調しておく。これに関連して、図面を伴う記載によって、本発明の実施形態を実践し得る方法が当業者に明白になる。

電解質としてのEMIm(HF)

2.3F RTIL中のチタン(Ti、正方形で表示されたプロット)、タンタル(Ta、円形で表示されたプロット)、およびステンレス鋼グレード304(ss304、三形で表示されたプロット)で作製された未処理の(即ち、天然酸化物層を有する)アノードを用いて、ゲルを基にした参照電極と比較した時間に対する開回路電位を示す比較プロットを表す。

5mV/秒のスキャン速度で、電流密度[A/cm

2]に対する電位の比較プロットを表しており、正方形で表示されたプロットは、EMIm(HF)

2.3F RTIL電解質への未処理の(即ち、天然酸化物層を有する)チタンアノードの浸漬の際に行った測定を表し、円形で表示されたプロットは、同じ電解質に30分間浸漬した後に行った測定を表す。

Al/EMIm(HF)

2.3F/空気バッテリー構成の5mV/秒のスキャン速度で、電流密度[A/cm

2]に対する電位を示し、アルミ箔(円形で表示されたプロット)および空気電極(正方形で表示されたプロット)の挙動を示す比較プロットを表す。

本発明の例示的実施形態によりAl/EMIm(HF)

2.3F/空気バッテリーで測定された時間に対する電位(セル放電)を示した比較プロットを表し、3つの放電電流密度、つまり正方形で表示された無酸素環境(グローブボックス)での0.5mA/cm

2、円形で表示された周囲空気での0.5mA/cm

2、および三角形で表示された周囲空気での1.5mA/cm

2、でのセル挙動を示す。

RTIL EMIm(HF)

2.3F電解質(円形で表示されたプロット)およびRTIL Pyr14(HF)

2.3F電解質(正方形で表示されたプロット)を含む本発明の例示的実施形態によりアルミニウム/空気バッテリーで測定され、0.25mA/cm

2の電流密度でのセル挙動を示す、時間に対する電位(セル放電)を示した比較プロットを表す。

Al/EMIm(HF)

2.3F/MnO

2バッテリー(正方形で表示されたプロット)およびAl/EMIm(HF)

2.3F/V

2O

5バッテリー(円形で表示されたプロット)で測定され、0.25mA/cm

2の電流密度でのセル挙動を示した、時間に対するカソードタイプの電位(セル放電)を示す比較プロットを表す。

作用電極としてのアルミ箔と、対電極としての空気電極とを含み、電解質としてEMIm(HF)

2.3Fを用いた三電極構成のセルで測定され、OCP条件でのアルミニウムの腐食電流を示し、OCP条件でのアノードの挙動を示す、ゲルを基にした参照電極と比較した時間に対する電位(ボルトによる左側の垂直軸)と、時間に対する腐食電流(μA/cm

2による右側の垂直軸)とを示す二重プロットを表す。

未処理EMIm(HF)

2.3F RTILの試料(プロット1)、非暴露アルミニウムの試料(プロット2)、非暴露のシリコンウエハの試料(プロット3)、EMIm(HF)

2.3F RTILに1時間暴露した後のアルミニウムの試料(プロット4)、およびEMIm(HF)

2.3F RTILに1時間暴露した後のシリコンウエハの試料(プロット5)の、全反射(ATR)赤外スキャンから得られた、波長に対する透過率を示す比較プロットを表す。

H

3F

4

種に関連するピーク61および65が、それぞれ約2990cm

−1および約960cm

−1の波数を有し、H

2F

3

種に関連するピーク62、63および64が、それぞれ約2355cm

−1、約1770cm

−1および約1020cm

−1の波数を有する、EMIm(HF)

2.3F RTILの試料(プロット6)、非暴露アルミニウムの試料(プロット7)、およびピーク81、82、84および85が、それぞれプロット6のピーク61、63、64および65に対応する、EMIm(HF)

2.3F RTILに1時間暴露した後のアルミニウムの試料(プロット8)、の全反射(ATR)赤外スキャンから得られた、波長に対する透過率を示す比較プロットを表す。

溶媒/希釈剤として働く、炭酸プロピレン(図10A)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(図10B)およびジメチルスルフィド(図10C)、[EMIm][TFSI](図10D)、[EMIm][トリフルオロイミド](図10E)および[EMIm][ソルファナート](図10F)と、それと混合されてフルオロアニオン種の供給源として働く30容量%の[EMIm][(HF)

2.3F]と、を含むフルオロアニオン含有組成物(電解質)に関して測定されたもの(三角形で表示されたプロット)、そして未処理の溶媒に関して測定されたもの(正方形で表示されたプロット)であるが、セルを放電する前の最初の24時間の間、アルミニウムをフルオロアニオン含有組成物と接触させている、放電電流密度0.1mA/cm

2でのセル挙動を示すアルミニウムを基にした三電極電気化学セルで実施された動電位実験で得られた、時間に対する電位を示す比較プロットを表す。

溶媒/希釈剤として働く、炭酸プロピレン(図10A)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(図10B)およびジメチルスルフィド(図10C)、[EMIm][TFSI](図10D)、[EMIm][トリフルオロイミド](図10E)および[EMIm][ソルファナート](図10F)と、それと混合されてフルオロアニオン種の供給源として働く30容量%の[EMIm][(HF)

2.3F]と、を含むフルオロアニオン含有組成物(電解質)に関して測定されたもの(三角形で表示されたプロット)、そして未処理の溶媒に関して測定されたもの(正方形で表示されたプロット)であるが、セルを放電する前の最初の24時間の間、アルミニウムをフルオロアニオン含有組成物と接触させている、放電電流密度0.1mA/cm

2でのセル挙動を示すアルミニウムを基にした三電極電気化学セルで実施された動電位実験で得られた、時間に対する電位を示す比較プロットを表す。

溶媒/希釈剤として働く、炭酸プロピレン(図10A)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(図10B)およびジメチルスルフィド(図10C)、[EMIm][TFSI](図10D)、[EMIm][トリフルオロイミド](図10E)および[EMIm][ソルファナート](図10F)と、それと混合されてフルオロアニオン種の供給源として働く30容量%の[EMIm][(HF)

2.3F]と、を含むフルオロアニオン含有組成物(電解質)に関して測定されたもの(三角形で表示されたプロット)、そして未処理の溶媒に関して測定されたもの(正方形で表示されたプロット)であるが、セルを放電する前の最初の24時間の間、アルミニウムをフルオロアニオン含有組成物と接触させている、放電電流密度0.1mA/cm

2でのセル挙動を示すアルミニウムを基にした三電極電気化学セルで実施された動電位実験で得られた、時間に対する電位を示す比較プロットを表す。

溶媒/希釈剤として働く、炭酸プロピレン(図10A)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(図10B)およびジメチルスルフィド(図10C)、[EMIm][TFSI](図10D)、[EMIm][トリフルオロイミド](図10E)および[EMIm][ソルファナート](図10F)と、それと混合されてフルオロアニオン種の供給源として働く30容量%の[EMIm][(HF)

2.3F]と、を含むフルオロアニオン含有組成物(電解質)に関して測定されたもの(三角形で表示されたプロット)、そして未処理の溶媒に関して測定されたもの(正方形で表示されたプロット)であるが、セルを放電する前の最初の24時間の間、アルミニウムをフルオロアニオン含有組成物と接触させている、放電電流密度0.1mA/cm

2でのセル挙動を示すアルミニウムを基にした三電極電気化学セルで実施された動電位実験で得られた、時間に対する電位を示す比較プロットを表す。

溶媒/希釈剤として働く、炭酸プロピレン(図10A)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(図10B)およびジメチルスルフィド(図10C)、[EMIm][TFSI](図10D)、[EMIm][トリフルオロイミド](図10E)および[EMIm][ソルファナート](図10F)と、それと混合されてフルオロアニオン種の供給源として働く30容量%の[EMIm][(HF)

2.3F]と、を含むフルオロアニオン含有組成物(電解質)に関して測定されたもの(三角形で表示されたプロット)、そして未処理の溶媒に関して測定されたもの(正方形で表示されたプロット)であるが、セルを放電する前の最初の24時間の間、アルミニウムをフルオロアニオン含有組成物と接触させている、放電電流密度0.1mA/cm

2でのセル挙動を示すアルミニウムを基にした三電極電気化学セルで実施された動電位実験で得られた、時間に対する電位を示す比較プロットを表す。

溶媒/希釈剤として働く、炭酸プロピレン(図10A)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(図10B)およびジメチルスルフィド(図10C)、[EMIm][TFSI](図10D)、[EMIm][トリフルオロイミド](図10E)および[EMIm][ソルファナート](図10F)と、それと混合されてフルオロアニオン種の供給源として働く30容量%の[EMIm][(HF)

2.3F]と、を含むフルオロアニオン含有組成物(電解質)に関して測定されたもの(三角形で表示されたプロット)、そして未処理の溶媒に関して測定されたもの(正方形で表示されたプロット)であるが、セルを放電する前の最初の24時間の間、アルミニウムをフルオロアニオン含有組成物と接触させている、放電電流密度0.1mA/cm

2でのセル挙動を示すアルミニウムを基にした三電極電気化学セルで実施された動電位実験で得られた、時間に対する電位を示す比較プロットを表す。

セルを放電前24時間の間、完全な構成で静置した、放電/充電サイクルあたり10mAhの一定電流でPyr

14(HF)

2.3F RTIL(円形により表示)、およびPyr

14(HF)

2.3F RTILに溶解された0.1Mアルミニウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(AlTFSI)塩(三角形により表示)を用いた、本発明の幾つかの実施形態による、アルミニウム/空気バッテリーの0.5mAcm

−2での放電/充電サイクルを示した電圧対時間を示す比較プロットを表す。

EMIm(HF)

2.3F RTILに溶解された0.1Mアルミニウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(AlTFSI)塩(上向き三角形により表示)、EMIm(HF)

2.3F RTILに溶解された0.1M AlF

3(下向き三角形により表示)およびEMIm(HF)

2.3F RTILに溶解された0.1M α−Al

2O

3(右向き三角形により表示)を用いた、本発明の幾つかの実施形態による、アルミニウム/空気バッテリーの0.5mAcm

−2での放電を示した電圧対時間を示す比較プロットを表す。

セルを測定前1時間の間、完全な構成で静置した、電解質としてテトラグリム(図13Aの下向き三角形)およびテトラグリム中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Aの上向き三角形)を含む、電解質として炭酸プロピレン(図13Bの下向き三角形)および炭酸プロピレン中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Bの上向き三角形)を含む、電解質としてDMS(図13Cの下向き三角形)およびDMS中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Cの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImTFSI RTIL(図13Dの下向き三角形)およびEMImTFSI中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Dの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImトリフルオロイミドRTIL(図13Eの下向き三角形)およびEMImトリフルオロイミドRTIL中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Eの上向き三角形)を含む、そして電解質として未処理EMImソルファナートRTIL(図13Fの下向き三角形)およびEMImソルファナートRTIL中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Fの上向き三角形)を含む、本発明の幾つかの実施形態によるAl/空気バッテリーで測定された5mV秒

−1の速度でスキャンした動電位測定の結果を示す比較の電圧対電流プロットを表す。

セルを測定前1時間の間、完全な構成で静置した、電解質としてテトラグリム(図13Aの下向き三角形)およびテトラグリム中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Aの上向き三角形)を含む、電解質として炭酸プロピレン(図13Bの下向き三角形)および炭酸プロピレン中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Bの上向き三角形)を含む、電解質としてDMS(図13Cの下向き三角形)およびDMS中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Cの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImTFSI RTIL(図13Dの下向き三角形)およびEMImTFSI中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Dの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImトリフルオロイミドRTIL(図13Eの下向き三角形)およびEMImトリフルオロイミドRTIL中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Eの上向き三角形)を含む、そして電解質として未処理EMImソルファナートRTIL(図13Fの下向き三角形)およびEMImソルファナートRTIL中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Fの上向き三角形)を含む、本発明の幾つかの実施形態によるAl/空気バッテリーで測定された5mV秒

−1の速度でスキャンした動電位測定の結果を示す比較の電圧対電流プロットを表す。

セルを測定前1時間の間、完全な構成で静置した、電解質としてテトラグリム(図13Aの下向き三角形)およびテトラグリム中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Aの上向き三角形)を含む、電解質として炭酸プロピレン(図13Bの下向き三角形)および炭酸プロピレン中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Bの上向き三角形)を含む、電解質としてDMS(図13Cの下向き三角形)およびDMS中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Cの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImTFSI RTIL(図13Dの下向き三角形)およびEMImTFSI中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Dの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImトリフルオロイミドRTIL(図13Eの下向き三角形)およびEMImトリフルオロイミドRTIL中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Eの上向き三角形)を含む、そして電解質として未処理EMImソルファナートRTIL(図13Fの下向き三角形)およびEMImソルファナートRTIL中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Fの上向き三角形)を含む、本発明の幾つかの実施形態によるAl/空気バッテリーで測定された5mV秒

−1の速度でスキャンした動電位測定の結果を示す比較の電圧対電流プロットを表す。

セルを測定前1時間の間、完全な構成で静置した、電解質としてテトラグリム(図13Aの下向き三角形)およびテトラグリム中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Aの上向き三角形)を含む、電解質として炭酸プロピレン(図13Bの下向き三角形)および炭酸プロピレン中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Bの上向き三角形)を含む、電解質としてDMS(図13Cの下向き三角形)およびDMS中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Cの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImTFSI RTIL(図13Dの下向き三角形)およびEMImTFSI中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Dの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImトリフルオロイミドRTIL(図13Eの下向き三角形)およびEMImトリフルオロイミドRTIL中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Eの上向き三角形)を含む、そして電解質として未処理EMImソルファナートRTIL(図13Fの下向き三角形)およびEMImソルファナートRTIL中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Fの上向き三角形)を含む、本発明の幾つかの実施形態によるAl/空気バッテリーで測定された5mV秒

−1の速度でスキャンした動電位測定の結果を示す比較の電圧対電流プロットを表す。

セルを測定前1時間の間、完全な構成で静置した、電解質としてテトラグリム(図13Aの下向き三角形)およびテトラグリム中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Aの上向き三角形)を含む、電解質として炭酸プロピレン(図13Bの下向き三角形)および炭酸プロピレン中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Bの上向き三角形)を含む、電解質としてDMS(図13Cの下向き三角形)およびDMS中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Cの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImTFSI RTIL(図13Dの下向き三角形)およびEMImTFSI中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Dの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImトリフルオロイミドRTIL(図13Eの下向き三角形)およびEMImトリフルオロイミドRTIL中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Eの上向き三角形)を含む、そして電解質として未処理EMImソルファナートRTIL(図13Fの下向き三角形)およびEMImソルファナートRTIL中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Fの上向き三角形)を含む、本発明の幾つかの実施形態によるAl/空気バッテリーで測定された5mV秒

−1の速度でスキャンした動電位測定の結果を示す比較の電圧対電流プロットを表す。

セルを測定前1時間の間、完全な構成で静置した、電解質としてテトラグリム(図13Aの下向き三角形)およびテトラグリム中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Aの上向き三角形)を含む、電解質として炭酸プロピレン(図13Bの下向き三角形)および炭酸プロピレン中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Bの上向き三角形)を含む、電解質としてDMS(図13Cの下向き三角形)およびDMS中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Cの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImTFSI RTIL(図13Dの下向き三角形)およびEMImTFSI中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Dの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImトリフルオロイミドRTIL(図13Eの下向き三角形)およびEMImトリフルオロイミドRTIL中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Eの上向き三角形)を含む、そして電解質として未処理EMImソルファナートRTIL(図13Fの下向き三角形)およびEMImソルファナートRTIL中の30容量%EMIm(HF)

2.3F(図13Fの上向き三角形)を含む、本発明の幾つかの実施形態によるAl/空気バッテリーで測定された5mV秒

−1の速度でスキャンした動電位測定の結果を示す比較の電圧対電流プロットを表す。

2M α−Al

2O

3を混合させたEMIm(HF)

2.3Fを用い、半固体(ペースト)状態の電解質を形成させ、放電を22℃で実施した、本発明の幾つかの実施形態によるAl−空気バッテリーの放電電流を示す電圧対時間プロットを表す。

アルミニウム溶加ワイヤと、不活性雰囲気のシールディングを用いず120Vおよび65Aで形成された溶接アークとを用いて溶接されたアルミニウムシートの写真を表しており、図15Aのシートおよび溶加ワイヤは活性化されておらず、図15Bのシートおよび溶加ワイヤはEMIm(HF)

2.3F RTILと30分間接触させることにより活性化されている。

アルミニウム溶加ワイヤと、不活性雰囲気のシールディングを用いず120Vおよび65Aで形成された溶接アークとを用いて溶接されたアルミニウムシートの写真を表しており、図15Aのシートおよび溶加ワイヤは活性化されておらず、図15Bのシートおよび溶加ワイヤはEMIm(HF)

2.3F RTILと30分間接触させることにより活性化されている。

ゲル参照電極に対して−1V〜最大1Vの電位範囲にわたり、両方のスキャン方向でEMIm(HF)

2.3Fに浸漬されたガラス状炭素電極について5mV/秒のスキャン速度で記録された、電気化学窓を示す比較でのサイクリックボルタモグラムのプロットを表しており、OCP〜−1Vで実施されたスキャンは、「カソードファースト」と称され(正方形で表示)、OCP〜1Vで実施されたスキャンは、「アノードファースト」と称されている(円形で表示)。

作用電極としてのガラス状炭素および本発明の幾つかの実施形態による例示的フルオロアニオン含有組成物であるEMIm(HF)

2.3Fを含み、そして50mM酸化銅(I)(Cu

2O、正方形で表示)または10mM酸化銅(II)(CuO、円形で表示)をさらに含む、電気化学セルについてのゲルを基にした参照電極に対して5mV/秒のスキャン速度で記録されたサイクリックボルタモグラムを示す比較プロットを表す。

作用電極としてのガラス状炭素および本発明の幾つかの実施形態による例示的フルオロアニオン含有組成物であるEMIm(HF)

2.3Fを含み、そして50mM酸化銅(I)(Cu

2O、正方形で表示)または10mM酸化銅(II)(CuO、円形で表示)をさらに含む、電気化学セルについてのゲル参照電極に対して5mV/秒のスキャン速度で記録されたサイクリックボルタモグラムを示す比較プロットを表し、溶解ピークの比較のために銅箔「アノードファースト」ブランチ(Cu

0、三角形で表示)を表すプロットをさらに示す。

発明の具体的実施形態の記載 本発明は、それらの幾つかの実施形態において、金属の化学作用に関し、より詳細には非排他的に、アルミニウムなどの自己不動態化金属の表面を活性化させる方法、金属酸化物を再活性させる方法、および例えば電気化学セルにおける、これらの方法の利用に関する。

本発明の原理および操作は、図面および付随の説明を参照することでより理解されよう。

本発明の少なくとも1つの実施形態をより詳細に説明する前に、本発明が必ずしも以下の説明に示された詳細、または実施例に例示された詳細に適用が限定されないことが、理解されなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実践もしくは実行することが可能である。

本発明者らは、RTIL電解質およびイオン液体含有電解質を、特にこれらの溶媒中で寄生的水素発生反応が起こりにくいアルミニウムなどの自己動態化金属を使用するシステムにおいて、古典的な水性電解質と比較して有利であると見なした。加えて該RTIL媒体は、可能なアルミニウム堆積のための熱力学的条件を提供し、それにより再充電可能なアルミニウムおよび他の不動態化金属に基づく電源を生成する。

RTILは、常用される有機溶液に比較して、環境に優しいと見なされている。それらがかなり高温であっても低蒸気圧であることが、発火および爆発の安全性、包装、輸送およびリサイクルの容易さなどの利点を提供する。数多くのアニオン−カチオンの組み合わせによって、それらの特性、および高い本質的イオン伝導性、不燃性、かなり大きな電気化学窓(場合により5Vにも及ぶ)による熱および化学的安定性にかなり多くの多様性がもたらされるため、RTILは電気化学的適用においてハイエンドの電解質の適切な候補となっている。

本発明者らは、アルミニウムを基にしたバッテリー、特にアルミニウム−空気バッテリーの商業的生産に関連する制約を考慮し、改善されたアルミニウムを基にしたバッテリーを探求しながら、意外にも、オリゴフルオロヒドロゲナートアニオン(フルオロアニオン)を含む幾つかの室温イオン液体(RTIL)(本明細書ではフルオロアニオン−RTILとも称される)の一部を形成するオリゴフルオロヒドロゲナートアニオンに暴露されると、おそらく不動態化層内で見出される酸化物および他の表面不動態化種が除去されることにより、アルミニウムが脱不動態化または活性化を受けることを明らかにした。

本明細書で先に議論された通り、シリカはフッ化水素酸(HF)に可溶性であるが、アルミナは可溶性でない。したがって、アルミナがシリカに比較して、オリゴフルオロヒドロゲナートアニオンの存在下で同様に低い可溶性/反応性を示すと予測されるであろうが、本発明者らは意外にも、アルミナがシリカと類似の割合でフルオロアニオン含有組成物に溶解する、またはそれと反応することを見出した。

本発明者らは、アルミニウムアノードの表面で電解質として用いられる例示的フルオロアニオン含有組成物の活性化効果をさらに検証しながら、金属をフルオロアニオン含有電解質に暴露する前および後に、アルミニウム試料を全反射(ATR)赤外分光分析に供して、フルオロアニオン含有電解質のスペクトル特性に対応する明白なスペクトル特性を見出した(実施例5、ならびに図8および9参照)。これらの明らかで測定可能なスペクトル特性は、フルオロアニオン含有組成物への暴露後のアルミニウム試料中で示され、本質的に同一条件下のケイ素試料では示されなかったため、それが処理表面の化学修飾のフィンガープリントとして認められた。任意の特定理論に束縛されるものではないが、これらのスペクトル特性がアノード表面の活性化アルミニウムと関連する「HF種」から生じるものと推測され、したがってアルミニウムアノードの表面が、不活性酸素種および他の不動態化種に加えて、または好ましくはそれらの代わりに、反応性HF種による末端基の化学種が修飾されたと推定された。

フルオロアニオン含有組成物との接触によるアルミニウム活性化の背後にあるメカニズムを明らかにすることが目的のさらなる研究が、本発明者らを、自己不動態化された金属が実際に不動態表面から反応性表面への表面の化学変換を受ける、という意外な発見に導いた。さらに意外なことに、活性化(処理)表面が、さもなければ未処理された金属を不動態化させる周囲条件下で、実質的に安定していることが見出された。

アルミニウムおよびケイ素は両者とも、周囲条件で形成された酸化物の不動態化層で自然に覆われ、両者の酸化物がフルオロアニオンの存在下で可溶化されるが、ケイ素はアルミニウムおよび他の自己不動態化金属と比較して、フルオロヒドロゲナートアニオンと異なって反応することが、さらに明らかとなった。ケイ素と他の自己不動態化金属との最も顕著な差異は、フルオロアニオン処理表面と、反応性HF種の形成に表され、反応性HF種は、アルミニウムおよび他の自己不動態化金属のフルオロアニオン処理表面では形成されるが、ケイ素の場合には形成することができない。

本発明者らは、本発明を実践に移しながら、アルミニウムおよび他の不動態金属が、フルオロヒドロゲナートアニオンで処理されると、例えば様々な金属で高接着性の堆積を有し得ること、不活性雰囲気を利用せずに溶接し得ること、および電気化学セル内の燃料として使用し得ることを実証することに成功した。

アルミニウムへのフルオロアニオン−RTILの意外な効果をさらに検証しながら、本発明者らは、チタンおよびタンタルなどの他の自己不動態化金属の表面、ならびにステンレス鋼などの自己不動態化合金の表面の活性化を試みて、これらの物質の処理が高反応性物質を与えることを見出した。

一般的化学における不動態化は、材料が「不動態性」になること、即ち、空気および水などの環境因子により影響を受け難くなることを指す。不動態化は、腐食をシールディングする外層の形成を含むが、それは本質的に合成または自然に塗布され得る。「天然酸化物層」とも称される不活性表面層は、典型的には、周囲条件への暴露の数年後に、白金のような貴金属では単層(1〜3Å)、ケイ素(メタロイド)では約15Å、そしてアルミニウム(ポスト遷移または貧金属)では約50Åの厚さになる酸化物、窒化物または硫化物である。

金属または金属合金に関連して本明細書で互換的に用いられる用語「自己不動態化」または「自然不動態化」は、周囲条件(例えば、適度なpHの空気、水および土壌)への暴露の際、さらなる腐食/酸化へのバリアとして働く、金属表面に公知の腐食生成物の薄層が自然に形成されることを指す。不動態化膜の化学組成物およびマイクロ構造は、下部の金属と異なっている。

本発明の実施形態の文脈において、用語「自己不動態化金属」は、少なくともアルミニウム、クロム、チタンおよびタンタルを包含する。

本発明の実施形態の文脈において、窒化物、炭化物およびそれらの合金を含む用語「拡散隔膜金属」は、アルミニウム、銅、金、クロム、ニッケル、ニクロム、タンタル、ハフニウム、ニオブ、ジルコニウム、バナジウム、タングステン、窒化タンタル、酸化インジウム、ケイ化銅、窒化タングステンおよび窒化チタンを包含する。

本発明の実施形態の文脈において、用語「遷移金属」は、亜鉛、モリブデン、カドミウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウムおよびコペルニシウムを包含する。

本発明の実施形態の文脈において、用語「貴金属」は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、レニウムおよび銅を包含する。

本発明の実施形態の文脈において、用語「ポスト遷移金属」は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、ビスマスおよびポロニウムを包含する。

本発明の実施形態の文脈において、用語「卑金属」は、鉄、ニッケル、鉛、亜鉛および銅を包含する。

本発明の実施形態の文脈において、用語「貧金属」は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スズ、鉛、ビスマス、ポロニウム、ウンウントリウム、フレロビウム、ウンウンペンチウムおよびリバモリウムを包含する。

本発明の実施形態の文脈において、用語「アルカリ土類金属」は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムを包含する。

本発明の実施形態の文脈において、用語「ランタニド」は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムを包含する。

本発明の実施形態の文脈において、用語「アクチニド」は、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラニウム、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、ベルケリウム、カリフォルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウムおよびローレンシウムを包含する。

本発明の実施形態により活性化され得る合金の1つが、合金鋼である。合金鋼は、マンガン、ニッケル、クロム、モリブデン、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウムおよびニオブなどのさらなる金属元素が特徴を修飾するために添加された鋼(鉄および炭素)である。

本発明の実施形態の文脈において、用語「アルカリ金属」は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムを包含する。

本発明の実施形態の文脈において、用語「メタロイド」は、ホウ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルル、セレン、ポロニウムおよびアスタチンを包含する。

本発明の実施形態の文脈において、用語「準金属(quasi−metal)」は、マイトネリウム、ダームスタチウム、レントゲニウム、ウンウントリウム、フレロビウム、ウンウンペンチウムおよびリバモリウムを包含する。

金属は、Mn(ここで整数nは、酸化数を表す)で表される複数の酸化状態をとることができる。したがって金属状態にある金属は、酸化数ゼロ(M0)を有する。還元された金属は、0より大きな酸化数、即ちM+、M+2、M+3などを有し、金属配位錯体、金属酸化物、および他の金属含有化合物においては、一般にカチオンとして見出される。

当該技術分野で公知の通り、金属の不動態化層は、機械的および/または化学的に除去されて、金属の未処理表面を露出し得るが、これらの工程は一般に、金属表面を、より反応性にするわけではなく、または防御条件下に保持しなければ将来および直後の再不動態化を防御するわけではない。本発明の実施形態の文脈において、フルオロアニオン含有組成物を用いた金属表面からの不動態化層の除去、およびフルオロアニオン含有組成物の結果としての不動態性から反応性への金属表面修飾は、活性化と見なされる。

本発明の幾つかの実施形態において、該フルオロアニオン含有組成物は、電解質である。幾つかの実施形態において、該フルオロアニオン含有組成物は、金属活性化(または脱不動態化)処理組成物である。幾つかの実施形態において、該フルオロアニオン含有組成物は、溶接、融合、ろう付、接合、はんだ付、連結組成物である。

本明細書で用いられる用語「電解質」は、静電荷種、例えばイオンを含む導電性組成物を記載するために本明細書で用いられる。幾つかの実施形態において、該電解質は、溶液、液体、ゲル、ペースト、懸濁液、エマルジョン、コロイド、半固体、固体または液体および/もしくはゲルおよび/もしくは固体を含む物質組成である。幾つかの実施形態において、該電解質は、水性溶液もしくは有機溶液、またはそれらの混合物を含む。本発明の実施形態の文脈において、電解質は、フルオロアニオン種を含む。

フルオロアニオン含有組成物: 本明細書に記載される実施形態のいずれか1つの全体を通して本明細書で互換的に用いられる用語「フルオロアニオン」、「オリゴフルオロヒドロゲナート」および「オリゴフッ化水素」は、フッ素および水素を含み、式[(HF)nF](n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など、即ちnは1〜7の範囲内である)により表されるアニオンの分類を指し、該オリゴフルオロヒドロゲナートアニオンは、それぞれHF2、H2F3、H3F4、H4F5、H5F6、H6F7、H7F8である。本明細書において、本発明全体を通して任意のイオン種の角括弧の使用が場合によることに留意されたい。

任意の特定の理論に束縛されるものではないが、様々なオリゴフルオロヒドロゲナートアニオンの存在および分布は、オリゴフルオロヒドロゲナート調製の出発原料および工程に依存すると推定される。さらに、本明細書で以下に記載される通り、様々なオリゴフルオロヒドロゲナートアニオンは、金属、金属イオン、金属酸化物および他の形態の金属系化合物との相互作用において異なった役割を果たすものと推定される。

例示的フルオロアニオンの組み合わせ、またはオリゴフルオロヒドロゲナートアニオンの集団が、式[(HF)2.3F](ここで非整数のn値2.3は、約30%の[H3F4]または[(HF)3F]種および約70%の[H2F4]または[(HF)2F]種の集団分布を表す)により表すことができる。

本発明の幾つかの実施形態による非水性環境でのオリゴフルオロヒドロゲナートアニオンが、HF(フッ化水素酸)の反応性プロファイルとは全く異なる反応性プロファイルを有することが見出されたことに留意されたい。特に水性HFは、中性種であり、幾つかの荷電オリゴフルオロヒドロゲナートアニオンは、水性HF溶液、特にHF2中に見出され得るが、これらは、不安定な中間体および過渡的な種であり、分解して中和化合物に戻る前に実質的濃度になることができない。極めて対照的なこととして、非水性環境でのオリゴフルオロヒドロゲナートアニオンは、概してアニオン性の高次オリゴフルオロヒドロゲナートである。中性であり、オリゴフルオロヒドロゲナートまたはフルオロアニオンとは全く異なる化学種であるHFは、金属および金属酸化物に対して異なる化学作用および反応性を示す。

本発明の幾つかの実施形態によれば、該フルオロアニオン含有組成物は、中性HF種を本質的に含まない、またはHFを本質的に含まない。

本発明の幾つの実施形態によれば、フルオロアニオン種を負電荷成分として含む組成物は、本明細書において「フルオロアニオン含有組成物」と称される。フルオロアニオン含有組成物は、溶液、液体、ゲル、ペースト、懸濁液、エマルジョン、コロイド、半固体、固体、または液体および/もしくはポリマー/バイオポリマー/膜および/もしくは多孔質マトリックスおよび/もしくはゲルおよび/もしくは固体を含む物質組成、ならびにそれらに埋入されたフルオロアニオン種の形態であり得る。本明細書で請求されたフルオロアニオン含有組成物が、適用例およびその使用に従って任意の粘度値および任意のせん断力値を示し得ることに留意されたい。

本発明の幾つかの実施形態によれば、フルオロアニオン含有組成物の正電荷成分は、非限定的例として、金属カチオン、無機カチオン、有機カチオン、多原子カチオン、有機金属カチオン、およびそれらの任意の組み合わせなどのカチオンの任意形態である。

本発明の実施形態による「金属カチオン」は、プロトンよりも少ない電子を有する金属の原子である。例示的金属カチオンとしては、K+、Na+、Ag+、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、La3+、Al3+などが挙げられるが、これらに限定されず、イオンに正味の正の静電荷を与える任意の金属カチオンおよび任意の酸化状態が、該用語の範囲内で企図される。金属カチオンは、無機カチオンとも称することができる。

本発明の幾つかの実施形態による「無機カチオン」は、典型的には炭素原子を含まない多原子カチオン(1原子よりも多い原子を有するカチオン)である。例示的無機カチオンとしては、アンモニウム(NH4+)、ホスホニウム(PH4+)およびヒドロニウム(H3O+)、オキシカチオンおよびN−オキソアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。

本発明の実施形態による「有機金属カチオン」は、1つまたは複数のリガンドとの錯体の中で配位された金属を含むカチオンであり、該錯体は、正味の正電荷を有する。例示的有機金属カチオンとしては、フェロセニウム、アルキルオクタメチルフェロセニウムカチオン、コバルトセニウム([Co(C5H5)2]+)およびメチルコバルトセニウムが挙げられる。

本発明の実施形態による「有機カチオン」は、炭素を含み、場合により酸素、窒素、硫黄および水素原子をさらに含み、典型的には正味の正電荷を有する多原子種を形成するカチオンである。有機カチオンは、典型的には多原子カチオンである。例示的有機カチオンとしては、第四級アミンおよびコリン(例示的な生体適合性カチオン)などのアルキルアンモニウム(NR3+(Rはアルキルである))、グアニジニウム(C(NH2)3+3)、t−ブチルカチオン(C(CH3)3+)、トロピリウム(C7H7+)、アルキルホスホニウム(PR4+(Rはアルキルである))、アルキル化オキシカチオン、アルキル化N−オキソアンモニウム、N,N−ジアルキル化イミダゾリウム(本明細書では1−アルキル−3−アルキル−イミダゾリウムとも称される)カチオン、N,N−ジアルキル化ピロリジニウム(本明細書では1−アルキル−1−アルキル−ピロリジニウムとも称される)カチオン、N,N−ジアルキル化ピペリジニウム(本明細書では1−アルキル−1−アルキル−ピペリジニウムとも称される)カチオンおよびN−アルキル−ピリジニウム(本明細書では1−アルキル−ピリジニウムとも称される)カチオンが挙げられるが、これらに限定されない。

幾つかの実施形態によれば、該フルオロアニオン含有組成物は、イオン液体である。幾つかの実施形態によれば、該イオン液体は、本明細書では「フルオロアニオン−RTIL」とも称される、室温イオン液体(RTIL)である。つまり、本明細書全体で用いられ、本明細書に記載された実施形態のいずれか1つでの用語「フルオロアニオン−RTIL」は、該アニオン種の少なくとも幾つかが例えば[(HF)2.3F]フルオロアニオン種などのオリゴフルオロヒドロゲナートアニオンを含む、室温イオン液体のファミリーを指す。典型的にはフルオロアニオン−RTILは、有機カチオンをさらに含む。

本発明の幾つかの実施形態によるフルオロアニオン含有組成物である1つの例示的フルオロアニオン−RTILは、[1−エチル−3−メチルイミダゾリウム]+カチオンおよび[(HF)2.3F]アニオンを含むEMIm(HF)2.3Fである。EMIm(HF)2.3Fは、EMImオリゴフッ化水素、EMI・(HF)2.3FまたはEMIm(HF)2.3Fとしても公知である。1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム(EMIm)カチオンを基にしたRTILが、典型的には低粘度および高伝導率を示すことに留意されたい。例示的なフルオロアニオン−RTIL EMIm(HF)2.3Fは、以下のスキーム1(ここでR=エチル)に示される通り1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンおよび[(HF)2.3F]アニオンからなる。フッ化水素との反応によるEMIm(HF)2.3F RTILの合成は、Hagiwara,R.ら[J. Electrochem. Soc. 149, 2002, D1]により報告された。本明細書で先に議論された通り、フルオロヒドロゲナートアニオン内の表記「2.3」は、非整数であることを意味するのではなく、どちらかと言えば(HF)2F種と[(HF)3F]種との混合物を表し、つまりEMIm(HF)2.3Fは、EMIm:(HF)2F:(HF)3Fと表すこともできる。

(ここで、R=メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなど)

本発明の幾つかの実施形態によるRTILの例示的有機カチオンは、非限定的にN,N−ジアルキル化イミダゾリウムカチオン、N,N−ジアルキル化ピロリジニウムカチオン、N,N−ジアルキル化ピペリジニウムカチオンおよびN−アルキル−ピリジニウムカチオンを基にすることができる。幾つかの実施形態によれば、フルオロアニオン種と、さらなるRTILアニオンと、本明細書で先に示された任意のRTILカチオンとの任意の組み合わせもまた、企図される。

例えば、1−アルキル−3−アルキル−イミダゾリウムカチオンは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどを含む群から選択され得る2つの同一または2つの異なるN−アルキル置換基を示し得る。1−アルキル−3−アルキル−イミダゾリウムカチオンを有する例示的フルオロアニオン−RTILとしては、ジメチル−イミダゾリウムフルオロアニオン([DMIm][(HF)2.3F])、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムフルオロアニオン([EMIm][(HF)2.3F])、 1−プロピル−3−メチル−イミダゾリウムフルオロアニオン([PrMIm][(HF)2.3F])、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムフルオロアニオン([BMIm][(HF)2.3F])、1−ペンチル−3−メチル−イミダゾリウムフルオロアニオン([PeMIm][(HF)2.3F])、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウムフルオロアニオン([HMIm][(HF)2.3F])、1−エチル−3−プロピル−イミダゾリウムフルオロアニオン([EPIm][(HF)2.3F])、1−エチル−3−ブチル−イミダゾリウムフルオロアニオン([EBIm][(HF)2.3F])、ジエチル−イミダゾリウムフルオロアニオン([DEIm][(HF)2.3F])、などが挙げられる。

N,N−ジアルキル−ピロリジニウムカチオンを有する例示的フルオロアニオン−RTILとしては、ジメチル−ピロリジニウムフルオロアニオン(DMPyr(HF)2.3FまたはPyr11(HF)2.3F)、1−エチル−1−メチル−ピロリジニウムフルオロアニオン(EMPyr(HF)2.3FまたはPyr12(HF)2.3F)、1−プロピル−1−メチル−ピロリジニウムフルオロアニオン(PMPyr(HF)2.3FまたはPyr13(HF)2.3F)、1−ブチル−1−メチル−ピロリジニウムフルオロアニオン(BMPyr(HF)2.3FまたはPyr14(HF)2.3F)、1,1−ジエチル−ピロリジニウムフルオロアニオン(DEPyr(HF)2.3FまたはPyr22(HF)2.3F)、1−エチル−1−プロピル−ピロリジニウムフルオロアニオン(EPPyr(HF)2.3FまたはPyr23(HF)2.3F)などが挙げられる。

N,N−ジアルキル−ピペリジニウムカチオンを有する例示的フルオロアニオン−RTILとしては、ジメチル−ピペリジニウムフルオロアニオン(DMPip(HF)2.3FまたはPip11(HF)2.3F)、1−エチル−1−メチル−ピペリジニウムフルオロアニオン(EMPip(HF)2.3FまたはPip12(HF)2.3F)、1−プロピル−1−メチル−ピペリジニウムフルオロアニオン(PMPip(HF)2.3FまたはPip13(HF)2.3F)、1−ブチル−1−メチル−ピペリジニウムフルオロアニオン(BMPip(HF)2.3FまたはPip14(HF)2.3F)、1,1−ジエチル−ピペリジニウムフルオロアニオン(DEPip(HF)2.3FまたはPip22(HF)2.3F)、1−エチル−1−プロピル−ピペリジニウムフルオロアニオン(EPPip(HF)2.3FまたはPip23(HF)2.3F)などが挙げられる。

N−アルキル−ピリジニウムカチオンを有する例示的フルオロアニオン−RTILとしては、1−メチル−ピリジニウムフルオロアニオン、1−エチル−ピリジニウムフルオロアニオン、1−プロピル−ピリジニウムフルオロアニオン、1−ブチル−ピリジニウムフルオロアニオン、1−ペンチル−ピリジニウムフルオロアニオンなどが挙げられる。

幾つかの実施形態によれば、該フルオロアニオン−RTILは、EMIm(HF)2.3FまたはPyr14(HF)2.3Fである。

本発明の幾つかの実施形態によれば、該フルオロアニオン含有組成物は、本発明の実施形態によるフルオロアニオン−RTILと、1種または複数の溶媒と、を含む。本発明の実施形態の文脈において、該溶媒は、極性、非極性、プロトン性、非プロトン性、イオン性および非イオン性溶媒、ならびにそれらの任意の混和性および/または非混和性の組み合わせなど、当該技術分野で公知の任意の有機または無機溶媒である。

例示的溶媒としては、炭酸アルキル(炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルなど)、エステルおよびラクトン(γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンなど)、エーテル(トリおよびテトラエチレングリコールジメチルエーテルなど)、ニトリル(アセトニトリルなど)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド(DMSOなど)、スルホン(エチルメチルスルホンなど)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、炭化水素(ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエンなど)、固体溶媒(ポリエチレンオキシドなど)、ならびにそれらの任意の混和性および/または非混和性の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。

例示的非極性溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテルおよびジクロロメタン(DCM)が挙げられるが、これらに限定されない。

例示的極性非プロトン性溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)およびジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられるが、これらに限定されない。

例示的極性プロトン性溶媒としては、ギ酸、n−ブタノール、イソプロパノール(IPA)、ニトロメタン、エタノール(EtOH)、メタノール(MeOH)、2,2,2−トリフルオロエタノール(TFEまたはトリフルオロエチルアルコールとしても公知)、酢酸(AcOH)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(本明細書ではテトラグリムおよびTEGDMEとも称される)および水が挙げられるが、これらに限定されない。

テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリムとも呼ばれる)は、優れた化学的安定性および熱安定性を有する極性非プロトン性溶媒である。高い沸点および安定性により、それは、分離工程および高温反応での理想的な候補物質になっている。TEGDMEは、リチウムイオンバッテリーの技術でも用いられ、有機吸収熱ポンプの作動ペアとしてトリフルオロエタノールと組み合わせられる。

幾つかの実施形態において、該フルオロアニオン含有組成物は、水を含む。

幾つかの実施形態において、該フルオロアニオン含有組成物は、実質的に水を含まない。幾つかの実施形態において、該フルオロアニオン含有組成物中の水分量は、該フルオロアニオン含有組成物の総質量の90質量(重量)%未満、または80質量%未満、70質量%未満、60質量%未満、50質量%未満、40質量%未満、30質量%未満、20質量%未満、10質量%未満、5質量%未満、1質量%未満、0.1質量%未満、または0.01質量%未満である。

幾つかの実施形態において、該フルオロアニオン含有組成物は、フルオロアニオン塩および溶媒を含むが、該フルオロアニオン塩は、溶媒に溶解されたフルオロアニオン種および1種または複数のカチオンを含む(これらの用語は本明細書に定義されている)。例示的フルオロアニオン塩としては、三フッ化二水素カリウムおよび重フッ化カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。

幾つかの実施形態において、該フルオロアニオン含有組成物は、ハロゲン化物(Cl、Br、Iなど)、有機および無機多原子アニオン(AlCl4、Al2Cl7、B(CN)4、C(CN)3、N(CN)2、NO3、BF4、PF6など)などの他のタイプのアニオン、ならびにビストリフルイミド(ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドおよび口語表現ではTFSIまたは[(CF3SO2)2N]としても公知)などの他のアニオンを含む。

幾つかの実施形態において、該フルオロアニオン含有組成物は、フルオロアニオン−RTIL、希釈剤としてのイオン液体中のフルオロアニオン−RTIL、溶媒としてのイオン液体中のフルオロアニオン塩、非イオン性溶媒中のフルオロアニオン塩、およびそれらの任意の組み合わせである。つまり、本発明の幾つかの実施形態によるフルオロアニオン含有組成物は、該組成物が本明細書に定義された通りフルオロアニオン種を含む限りは、フルオロアニオン−RTILおよび/またはイオン液体(フルオロアニオン以外のアニオンを含む)および/またはフルオロアニオン塩および/または溶媒を含む。

本発明の幾つかの実施形態によるフルオロアニオン含有組成物中のフルオロアニオン種のモル量は、0.01%〜50%(カチオンを考慮した最大モル量)の範囲内である。本発明の幾つかの実施形態によるフルオロアニオン含有組成物中のフルオロアニオン種のモル量は、少なくとも0.01%、0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、または少なくとも45%である。

例示的および非限定的フルオロアニオン含有組成物としては、 EMIm(HF)2.3FまたはPyr14(HF)2.3Fなどのフルオロアニオン−RTIL; RTILと混合されたEMIm(HF)2.3Fなどのフルオロアニオン−RTIL、例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート([EMIm][PF6]); 極性非プロトン性溶媒と混合されたEMIm(HF)2.3Fなどのフルオロアニオン−RTIL、例えばジメチルスルフィド(DMS)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルスルフォキシド(DMSO); RTILに溶解された三フッ化二水素カリウムおよび重フッ化カリウムなどのフルオロアニオン塩、例えば1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロボラート([BMIM][BF3])、もしくは硝酸コリン([Ch][NO3])などの生体適合性RTIL; ならびに上記物質の任意の組み合わせ、 が挙げられる。

本発明の幾つかの実施形態によれば、該フルオロアニオン含有組成物は、1種または複数の添加剤をさらに含み、それは、非限定的例として、増粘剤、ゲル化剤、ポリマー、モノマー、および架橋剤、可塑剤、希釈剤、保湿剤、表面活性剤、レオロジー改質剤、触媒および/または促進剤、阻害剤および/または抑制剤、金属塩、金属酸化物、ならびに該フルオロアニオン含有組成物の機械的、化学的および/または生物学的特性を修飾し得る様々な他の薬剤のうちの1種または複数を挙げることができる。

レオロジー改質剤、または機械的チキソトロープ剤(mechanical and thixotropic agents)とも称される増粘剤は、所望の特性を実質的に増進させずに該組成物の粘度を上昇させるため、そして該組成物およびそれを組み込むシステムで起こる化学的過程を減速または加速するために、フルオロアニオン含有組成物に添加される。増粘剤はまた、該組成物中の他の成分の懸濁を改善して、エマルジョンを安定化させるなど、組成物の機械的特性を安定化させるために用いられる。本発明の幾つかの実施形態の文脈で用いられ得る例示的増粘剤としては、カルボマー、例えばCarbopol(登録商標)941および他のCarbopol(登録商標)ポリマー、金属塩、金属酸化物、例えば白亜、アルミナ(Al2O3)、チタニアおよびマグネシア、無機粉末、例えば粘土、シリカ、ケイ酸塩およびタルク、有機ポリマー、例えばポリウレタン、ラテックス、スチレン/ブタジエン、ポリビニルアルコール、セルロース系ポリマーおよびガム(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、セルロース、ロカストビーンガムおよびアラビアガム)、糖類(カラギーナン、プルラン、コンニャクおよびアルギナート)、タンパク質(カゼイン、コラーゲン、およびアルブミン)、修飾ヒマシ油、有機シリコーン(シリコーン樹脂、ジメチコン)ポリエチレングリコール、アクリル系ポリマー、ポリヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)およびp−メトキシメタンフェタミン(PMMA)などが挙げられるが、これらに限定されない。

ゲル化剤は、該組成物をゼリー状にするため、その粘度を改変するため、または該組成物を液体として、もしくは弱凝集性内部構造を形成するコロイド混合物中のエマルジョンとして含むために、該フルオロアニオン含有組成物に添加される。本発明の幾つかの実施形態の文脈において、ゲル化剤は、液体媒体に溶解または分散されると、架橋および/または絡まりを受ける物質を含む。例示的ゲル化剤としては、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カルボマー、ポロキサマー、アルギン酸、および様々なアルギン酸塩、多糖類、寒天、カラギーナン、ロカストビーンガム、ペクチン、ならびにゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない。

架橋剤は、該組成物の一部を形成するポリマー鎖を架橋することによりその機械的性質を改変するために、該フルオロアニオン含有組成物に添加される。架橋剤の例としては、ジビニルベンゼンの誘導体、エチレングリコールジ(メタ)アクリラートの誘導体、メチレンビスアクリルアミドの誘導体、エチレングリコールジメタクリラート、ブタンジオールジアクリラート、ホルムアルデヒド系およびホルムアルデヒド不含架橋剤、ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジアリルフマラート、アリル(メタ)アクリラート、ビニル(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、メタクリロイルオキシエチル(メタ)アクリラート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタラート、ジアリルアジパート、トリアリルジイソシアナート、α−メチレン−N−ビニルピロリドン、4−ビニルベンジル(メタ)アクリラート、3−ビニルベンジル(メタ)アクリラート、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼンなどが挙げられるが、これらに限定されない。

可塑剤は、該フルオロアニオン含有組成物の可塑性または流動性を増大させるために、該組成物に添加される。例示的可塑剤としては、天然および合成ゴム、ヒドロキシル末端ポリブタジエン(HTPB)、エステル可塑剤、例えばジカルボン酸/トリカルボン酸エステル系可塑剤、フタラート、トリメリタート、アジパート、セバカート、マレアート、ベンゾアート、テレフタラート、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、エポキシド化植物油、アルキルスルホン酸フェニルエステル、スルホンアミド、有機ホスファート、ブタントリオールトリニトラート、ジニトロトルエン、トリメチロールエタントリニトラート、ジエチレングリコールジニトラート、トリエチレングリコールジニトラート、ビス(2,2−ジニトロプロピル)ホルマール、ビス(2,2−ジニトロプロピル)アセタール、2,2,2−トリニトロエチル−2−ニトロキシエチルエーテル、グリコール/ポリエーテル、ポリマー可塑剤、例えばポリブテン、生物学的適合性のある可塑剤、例えばアセチル化モノグリセリド、アルキルシトラートおよびニトログリセリンが挙げられるが、これらに限定されない。

希釈剤は、機械的性質を改変するため、そして特定の適用、例えばポンパビリティー、流動性、展延性、噴霧性などに関してより適したものにするためにも、該フルオロアニオン含有組成物に添加される。本発明の幾つかの実施形態による希釈剤としては、有機および無機溶媒、ならびに本明細書に記載された任意の他の溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。

表面活性剤、または界面活性剤は、機械的性質を改変するため、特定の適用、例えばポンパビリティー、流動性、展延性、噴霧性などに関してより適したものにするため、そして該フルオロアニオン含有組成物の表面張力および/または該組成物を含む系の他の成分および相との界面張力を低下させるため、固体、液体および/または蒸気の吸収能力を改変するために、該組成物に添加される。本発明の幾つかの実施形態の文脈において、表面活性剤としては、乳化剤、洗浄剤、発泡剤などが挙げられる。表面活性剤の非限定的例としては、頭部基にアニオン官能基を含むアニオン界面活性剤、例えば硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩およびカルボン酸塩(ステアリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、およびカルボン酸塩系フッ素系界面活性剤、例えばペルフルオロノナン酸塩、ペルフルオロオクタン酸塩(PFOAまたはPFO))、ドクサート、例えばスルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、ペルフルオロブタンスルホン酸塩、直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAB)、カチオン頭部基を含むカチオン界面活性剤、例えばオクテニジン二塩酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、セチルピリジニウムクロリド(CPC)、ベンザルコニウムクロリド(BAC)、ベンゼトニウムクロリド(BZT)、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、セトリモニウムブロミド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(DODAB)、双生イオン界面活性剤および両性界面活性剤、例えばスルホン酸塩およびスルタイン、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホナート(CHAPS)、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、ベタイン、コカミドプロピルベタイン、リン脂質、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、非イオン界面活性剤、例えば脂肪アルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、グルコシドアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル、グリセロールアルキルエステル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、コカミドMEA、コカミドDEA、ドデシルジメチルアミンオキシド、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロックコポリマー、ポリエトキシル化脂アミン(POEA)などが挙げられる。

本明細書では加湿剤とも称される保湿剤は、水分を保持するために該フルオロアニオン含有組成物に添加される。本発明の幾つかの実施形態の文脈において、保湿剤としては、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ヘキシレンおよびブチレングリコール、MP−ジオール、尿素、α−ヒドロキシ酸(AHA)、脂肪酸、セラミド、タンパク質、および閉塞剤(媒体の損失を物理的にシールディングする)、例えばワセリン、ラノリン、鉱物油、シリコーン、酸化亜鉛などが挙げられる。

触媒および/または促進剤は、該フルオロアニオン含有組成物中での、または該組成物と、アノードおよびカソードの両方の金属もしくは/および電極との界面での、化学的または電気化学的反応を加速するために、該組成物に添加される。本発明の幾つかの実施形態の文脈において、触媒は、触媒がその基質と同じ相に存在するかどうかに応じて、異種または同種であり得る。電気化学的酸素還元反応(ORR)および/または酸素発生反応(OER)を促進し得るカソード酸素還元/発生のための触媒としては、白金およびその合金(例えば、PtAuナノ粒子)、炭素質材料、例えばグラフェンナノシート、遷移金属酸化物(例えば、Mn系スピネルおよびペロブスカイト)、および無機−有機複合体(例えば、金属大環状分子誘導体)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の幾つかの実施形態による金属または/および酸化物反応(腐食反応など)のための促進剤の非限定的例としては、ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(例えば、PEG二酸600)およびHF2が挙げられる。

阻害剤および/または抑制剤は、該フルオロアニオン含有組成物中での、または該組成物と金属との界面での化学的または電気化学的反応を低減するために、該組成物に添加される。本発明の幾つかの実施形態の文脈において、特定の阻害剤および抑制剤は、環境/媒体に暴露された材料、または他の材料の腐食速度/反応速度を効果的に低下させ得る。腐食阻害剤としては、アノード阻害剤、カソード阻害剤、混合阻害剤、吸着剤、薄膜形成剤、非酸化不動態化剤、および酸化不動態化剤が挙げられるが、これらに限定されない。アノード阻害剤としては、オルトリン酸塩、安息香酸塩、クロム酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩およびモリブデン酸塩ヒドロキシエチルキノリン第四級アンモニウムフェノラート、ヒドロキシエチルキノリン第四級アンモニウムパラメチルフェノラートおよびヒドロキシエチルキノリン第四級アンモニウムp−ニトロフェノラート、ペルフルオロ界面活性剤のイオンタイプ(炭水化物鎖界面活性剤CTABを含む)、ジノニルフェノールホスファートエステル(DPE)、リン酸、酒石酸、コハク酸およびクエン酸、酸化亜鉛、PEG(300〜900)、GAFAC RA600およびPEG二酸600および他の修飾有機ポリマー、イミダゾール(IMZ)が挙げられるが、これらに限定されない。カソード阻害剤としては、ポリリン酸塩、タンニン、リグニンおよび亜鉛塩が挙げられるが、これらに限定されない。混合腐食阻害剤としては、ホスホン酸塩、ケイ酸塩、芳香族アゾール、アミンおよびアミド、アセチレン系アルコール、硫黄含有化合物、ヒドラジン、ならびに亜硫酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。

金属塩は、本明細書で以下に例示される通り、カソード/アノードでの堆積および電気化学的反応のための金属イオン供給源として、該フルオロアニオン含有組成物に添加される。一般に、本明細書に記載された様々なアニオンおよびカチオンに基づく、無機および有機塩の全てのタイプが、該フルオロアニオン含有組成物のイオン強度を改変するため、そしてその電気化学的および静電的特性に影響を及ぼすために、該組成物に添加される。

金属酸化物は、本明細書で以下に例示される通り、カソード/アノードでの金属堆積および電気化学的反応のための金属供給源として、該フルオロアニオン含有組成物に添加される。例示的金属酸化物および他の酸化物としては、四酸化アンチモン(Sb2O4)、酸化コバルト(II、III)(Co3O4)、酸化鉄(II、III)(Fe3O4)、酸化鉛(II、IV)(Pb3O4)、酸化マンガン(II、III)(Mn3O4)、酸化銀(I、III)(Ag2O2)、八酸化三ウラン(U3O8)、酸化銅(I)(Cu2O)、一酸化二炭素(C2O)、一酸化二塩素(Cl2O)、酸化リチウム(Li2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化ルビジウム(Rb2O)、酸化銀(Ag2O)、酸化タリウム(I)(Tl2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化アルミニウム(II)(AlO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化カルシウム(CaO)、一酸化炭素(CO)、酸化クロム(II)(CrO)、酸化コバルト(II)(CoO)、酸化銅(II)(CuO)、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉛(II)(PbO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化水銀(II)(HgO)、酸化ニッケル(II)(NiO)、酸化窒素(NO)、酸化パラジウム(II)(PdO)、酸化ストロンチウム(SrO)、一酸化硫黄(SO)、二酸化二硫黄(S2O2)、酸化スズ(II)(SnO)、酸化チタン(II)(TiO)、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、三酸化アンチモン(Sb2O3)、三酸化ヒ素(As2O3)、酸化ビスマス(III)(Bi2O3)、三酸化ホウ素(b2O3)、酸化クロム(III)(Cr2O3)、三酸化二窒素(N2O3)、酸化エルビウム(III)(Er2O3)、酸化ガドリウム(III)(Gd2O3)、酸化ガリウム(III)(Ga2O3)、酸化ホルミウム(III)(Ho2O3)、酸化インジウム(III)(In2O3)、酸化鉄(III)(Fe2O3)、酸化ランタン(La2O3)、酸化ルチニウム(III)(Lu2O3)、酸化ニッケル(III)(Ni2O3)、三酸化リン(P4O6)、酸化プロメチウム(III)(Pm2O3)、酸化ロジウム(III)(Rh2O3)、酸化サマリウム(III)(Sm2O3)、酸化スカンジウム(Sc2O3)、酸化テルビウム(III)(Tb2O3)、酸化タリウム(III)(Tl2O3)、酸化ツリウム(III)(Tm2O3)、酸化チタン(III)(Ti2O3)、酸化タングステン(III)(W2O3)、酸化バナジウム(III)(V2O3)、酸化イッテルビウム(III)(Yb2O3)、酸化イットリウム(III)(Y2O3)、二酸化炭素(CO2)、三酸化炭素(CO3)、酸化セリウム(IV)(CeO2)、二酸化塩素(ClO2)、酸化クロム(IV)(CrO2)、四酸化二窒素(N2O4)、二酸化ゲルマニウム(GeO2)、酸化ハフニウム(IV)(HfO2)、二酸化鉛(PbO2)、二酸化マンガン(MnO2)、二酸化窒素(NO2)、酸化プルトニウム(IV)(PuO2)、酸化ロジウム(IV)(RhO2)、酸化ルテニウム(IV)(RuO2)、二酸化セレン(SeO2)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化硫黄(SO2)、二酸化テルル(TeO2)、二酸化トリウム(ThO2)、二酸化スズ(SnO2)、二酸化チタン(TiO2)、酸化タングステン(IV)(WO2)、二酸化ウラン(UO2)、酸化バナジウム(IV)(VO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、五酸化アンチモン(Sb2O5)、五酸化ヒ素(As2O5)、五酸化二窒素(N2O5)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、五酸化リン(P2O5)、五酸化タンタル(Ta2O5)、酸化バナジウム(V)(V2O5)、三酸化クロム(CrO3)、三酸化モリブデン(MoO3)、三酸化レニウム(ReO3)、三酸化セレン(SeO3)、三酸化硫黄(SO3)、三酸化テルル(TeO3)、三酸化タングステン(WO3)、三酸化ウラン(UO3)、三酸化キセノン(XeO3)、七酸化二塩素(Cl2O7)、七酸化マンガン(Mn2O7)、酸化レニウム(VII)(Re2O7)、酸化テクネチウム(VII)(Tc2O7)、四酸化オスミウム(OsO4)、四酸化ルテニウム(RuO4)、四酸化キセノン(XeO4)、四酸化イリジウム(IrO4)および四酸化ハッシウム(HsO4)が挙げられるが、これらに限定されない。

金属表面を活性化させる方法: 本明細書で先に議論された通り、本発明者らは、不動態化金属をフルオロアニオン含有組成物と接触させることが、不動態化金属表面層の除去と、処理された金属の持続的活性化に関連づけられた検出可能なHF種を特徴とする実質的に安定した活性化された金属表面層の形成をもたらすことを見出した。

本発明の実施形態の一態様によれば、金属または金属合金の表面を活性化させる方法であって、該金属または金属合金の表面を、各実施形態のいずれか1つに記載された通りフルオロアニオン含有組成物と接触させ、それにより活性化された金属表面を得ることにより実行される、方法が提供される。

該フルオロアニオン含有組成物への該金属の接触期間または暴露期間は、所望の活性化レベル、酸化金属不動態化層を含む種の化学作用、金属不動態化層の結晶構造、金属不動態化層の厚さ、ならびに処理される金属試料の表面積に対するフルオロアニオン含有組成物の組成および体積に依存する。本発明の幾つかの実施形態によれば、金属表面活性化を実行するためのフルオロアニオン含有組成物への金属表面の接触時間または暴露時間は、10秒、30秒、1分間、5分間、10分間、30分間、もしくは60分間、または1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、24時間、48時間もしくは72時間と短時間であり、あるいは1〜60分間、もしくは0.5時間〜2時間、1〜4時間、2〜6時間、12〜24時間、または24〜72時間の範囲内である。他のより短い、またはより長い接触期間が企図されることに、留意されたい。

本発明の実施形態のいずれかの文脈において、該HF種は、金属、例えばアルミニウムに、化学的または物理的に関連し、用語「関連する」は、任意の特定の理論に束縛されるものではないが、共有結合、イオン−イオン(塩)結合、または他の静電的相互作用、金属リガンド錯体形成を含み得る化学的関連性を記載するために用いられる。物理的関連性は、表面力の関連性または物理的吸収として説明することができる。

任意の特定の理論に束縛されるものではないが、不動態化金属の活性化が、(i)金属表面に存在する不活性酸化物、硫化物、水酸化物および/または他の不活性種の不動態化層を除去または透過すること、ならびに(ii)暴露された金属表面での反応性「HF種」の層の形成により、金属表面での化学的末端基種を不活性種から反応性種へ修飾すること、を含む2つの独立した過程において起こることが、本発明者らによって仮定された。

任意の特定の理論に束縛されるものではないが、フルオロアニオン含有組成物中のフルオロアニオン種と不動態化金属との反応結果の1つが、媒体(フルオロアニオン含有組成物)中に溶解する金属−フルオロ系の種の形成であると推定される。これらのフルオロヒドロゲナート−金属種が、不動態化層を形成する酸化金属種と異なり、電気化学的に活性である、即ち、金属−フルオロ系の種が、アノード上で直接的もしくは間接的に還元され得ること、またはカソード上で直接的もしくは間接的に酸化され得ることが、さらに推定される。

任意の特定の理論に束縛されるものではないが、本明細書に示された金属活性化方法を実行する途中で、本発明の幾つかの実施形態によるフルオロアニオン含有組成物が、金属(例えば、金属酸化物、金属水酸化物など)の表面の不動態化層を含む種の一部を形成する様々なM+n状態の酸化金属元素と、そして金属(主にM0)の大部分の表面にある金属原子と相互作用し、それにより不動態化層から放出された酸化金属原子および金属表面の金属原子が、HF種に変換することを、本明細書では留意されたい。処理(活性化)された金属表面の一部を形成するHF種が、洗浄後、および周囲条件に暴露されながら時間が経過した後でも、特定の分光法で検出可能であり、それは本明細書では、本明細書で提供された方法のフィンガープリントと称される。不動態化層を溶解した結果、または金属酸化物種の任意の他の供給源を溶解した結果、生じたHF種は、電気化学的反応性があり、したがって電着および他の電気化学反応、インターカレーションなどでの金属供給源として使用され得る。

任意の特定の理論に束縛されるものではないが、H2F3種は、不動態化層(例えば、酸化物)と反応することに関連し、H3F4種は、暴露された金属表面を、HF種(この用語は本明細書で以下に定義される)を示すように転換することに関連すると推定される。HF2種が該金属の腐食に関連することも、さらに推定される。

本発明の実施形態の文脈において、用語「活性化」は、金属表面から不動態化層を除去し、それにより金属の新たに露出された表面に物理的、化学的および電気化学的反応を起こさせることを指す。幾つかの実施形態において、用語「活性化」は、例えば溶融、切断、剥離、研磨および/または他の研磨方法による、不動態化層の機械的除去とは異なり、金属の表面から不動態化層を化学的に除去することを指す。活性化が化学的手段と機械的手段との組み合わせにより得られ得ること、および用語「活性化」がこれらの組み合わせの包含を意味することに留意されたい。

本発明の実施形態の文脈において、表面の少なくとも一部をコーティングする不動態化層を有する金属物体を、本発明の実施形態のいずれか1つにより、フルオロアニオン含有組成物と接触させることの効果は、金属不動態化層を含む種(金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属チオール、金属窒化物、ならびに他の酸化された金属種および金属不動態化末端基をはじめとする全ての酸化金属種)と、脱不動態化または露出された金属表面を含む種、の両方を必要とする。

本発明の実施形態による金属の活性化の部分は、酸化金属層を含む種に及ぼすフルオロアニオン含有組成物の影響であり、本明細書では「溶解」、「分解」および「反応」と称され、酸化金属層を含む種への影響というのは、それらがもはや金属表面に付着していないこと、即ちその溶解として認められた影響を意味する。その影響は、酸化金属層を含む不動態化種の塊、凝集物およびオリゴマーを破壊および分解すること、即ちその分解として認められる影響をさらに含み得る。該影響は、フルオロアニオン種と溶解/分解された酸化金属種との化学的反応、即ち電気化学的反応性フルオロヒドロゲナート−金属種によって得られた影響をさらに含むことができ、それは本明細書において「HF種」の形成とも称される。

本発明の実施形態による金属の活性化の別の部分は、脱不動態化または露出された金属表面へのフルオロアニオン含有組成物の影響である。金属活性化のこの部分は、フルオロアニオン種と、その表面で新たに露出された金属との化学反応、即ち金属表面での電気化学的反応性フルオロヒドロゲナート−金属種またはHF種によって得られた影響を含む。

本発明の実施形態の文脈において、用語「活性化」は、処理された金属の表面から不動態化層を化学的に除去することを包含する。本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、活性化された金属表面は、不動態化層を本質的に含まず、即ち処理された金属(本明細書に記載されたフルオロアニオン含有組成物と接触した金属)の表面は、質量および/または被覆面積に関して、処理されていない金属の不動態化層を80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満または1%未満、含む。

本発明の実施形態の文脈において、用語「活性化」はまた、ことによると金属表面の様々な化学的および電気化学的反応を促進して自己不動態化過程を阻止するため、本質的に妨げることのない、フルオロアニオン含有組成物と金属との接触の結果、活性化金属または金属合金の表面で形成される、本明細書においてフルオロヒドロゲナート−金属種または「HF種」と称される特定の化学末端基種の形成を包含する。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、処理された金属試料の活性化表面は、フルオロアニオン含有組成物と接触すると、特殊な分光特性を示し、それは、本明細書で議論された通り、確立した分光法により得られたそれらのピーク波数によって同定され得る。波数は、様々な金属の処理された試料の間で類似する場合があり、または特定タイプの金属および金属合金の測定可能な量によって若干シフトする場合がある。

幾つかの実施形態によれば、処理された金属試料の活性化表面は、フルオロアニオン含有組成物と接触すると、本質的に本明細書に記載された通りATR−FTIR分光法による測定で、典型的には約3150〜2840cm−1(典型的には約2990cm−1)、約1110〜800cm−1(典型的には約960cm−1)、約2505〜2200cm−1(典型的には約2355cm−1)、約1920〜1600cm−1(典型的には約1770cm−1)、および/または約1170〜870cm−1(典型的には約1020cm−1)に幾つかの特徴的分光ピークを示す。物体の表面のATR−FTIR分析におけるこれらの分光ピークの幾つかの外観は、本明細書に記載されるHF種による表面の改変を実証しており、この分光パターンまたはその任意の一部は、本明細書に記載された方法のフィンガープリントと見なされる。

幾つかの実施形態において、処理された金属試料の活性化表面は、処理表面でのHF種の存在の特徴である本明細書で先に示された分光ピークの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは全てを示す。

幾つかの実施形態において、処理された金属試料の活性化表面は、本明細書で先に示された分光ピークのいずれかの少なくとも2つを示す。

幾つかの実施形態において、処理された金属試料の活性化表面は、本明細書で先に示された分光ピークのいずれかの少なくとも3つを示す。

幾つかの実施形態において、処理された金属試料の活性化表面は、本明細書で先に示された分光ピークのいずれかの少なくとも4つを示す。

本発明の実施形態によるフルオロアニオン含有組成物での金属表面の処理に起因するスペクトル特性の外観は、本明細書では「HF種のフィンガープリント」と称される。

それにより活性化された金属または金属合金の表面で検出され得る本明細書に記載された方法のこれらのフィンガープリント、即ち本明細書で議論された「HF種」のスペクトル特性は、本明細書で以下に議論されるフルオロアニオン含有組成物を電解質として使用する電気化学セル装置においてアルミニウムを基にしたアノードの文脈にも存在する。

幾つかの実施形態の文脈において、用語「活性化」はさらに、金属状態にある(0番目の酸化状態の金属)下部の素地金属または合金を本質的に排除することなく、例えば金属不動態化層を構成する化学種を化学的に除去することにより、金属の表面から不動態化層を非腐食的に化学的除去することを指す。つまり本発明の幾つかの実施形態の文脈において、文法的語形変化の全てにおける用語「非腐食的に」は、下部の金属または合金を排除することを最小限にしながら、または実質的に回避しながら不動態化層を除去する、金属の表面処理を指す。

非腐食的工程を評価する1つの方法が、線形分極抵抗(LPR)によるものである。LPRは、工程流れにおいて荷電された電極間で発生した電気化学的電位と電流との関連性をモニタリングすることにより腐食を測定して、腐食性を流体の電気抵抗に関連づけることにより腐食率の計算を可能にする電気化学的方法である。手短に述べると、2つまたは3つの電極プローブを工程システムに挿入するが、電極は互いに電気的に分離されている。自然な腐食過程に影響を及ぼさない小さな電位が、要素の間に印加されて、得られた電流が測定される。分極抵抗Rpは、印加された電位と得られた電流のレベルの比率である。測定された抵抗は、実際には、腐食電位に近い電位で測定された電流密度に対する過電位の直線プロットの勾配、またはそのプロットが直線でない場合には、腐食電位でのそのような曲線のタンジェントである。分極抵抗は、Rp[Ωcm2]=ΔE/Δi(ここでRpは、効果的な瞬時抵抗であり、ΔEは、電位の小さな変化であり、Δiは、電流密度の変化である)により与えられる。電極が、高速で腐食して金属イオンが溶液へと容易に通過する場合、電極間に印加された小さな電位が、高い電流、つまり低い分極抵抗を生じ、この影響が、高い腐食率に対応する。線形分極測定は、±20〜50mV範囲で開回路電位の周辺で小さな間隔で測定される。

腐食電流測定の提案された方法が、本発明の範囲の限定を意味するものではなく、本明細書で請求された方法の特徴の1つを評価するための例示的手段として提供されていることに留意されなければならない。さらに、腐食電流測定の提案された方法が、特に一定の表面積が腐食過程で推定され得るような一体となった物体またはほぼ平坦な表面に適用され得ることに留意されたい。さもなければ、表面の変化に関連する電流および実際の電気化学的腐食反応の電流のデコンボリューションが、修正されなければならず、即ち、腐食に対する表面積の力学的因子が、計算において関連づけられなければならない。これは、粉末試料中の腐食の評価を試みる場合により顕著になる。

測定された腐食電流から、金属の重量(質量)損失が、m=(i・t/F)(Mw/z)(ここで「m」は、表面積に対する質量損失(グラム/cm2)であり、「i」は、腐食電流密度(mA/cm2)であり、「t」は、腐食環境への暴露時間であり、「F」は、ファラデー定数(C/mol)であり、「Mw」は、物質のモル質量(グラム/mol)であり、「z」は、電気化学的腐食反応に関与するイオン価数である)により計算され得る。腐食評価の例示的実証については、以下に示す実施例の節の実施例4を参照されたい。

つまり本発明の幾つかの実施形態によれば、金属または金属合金の表面を活性化させる方法は、ほぼ分極抵抗での評価として、一体化された平坦な金属試料を用いて所与のRTIL溶液中の約50μA/cm2の最大腐食電流密度の下で1時間にわたり約1・10−4グラム/cm2、1・10−5グラム/cm2、または1・10−6グラム/cm2未満の質量損失を観察しながら実行される。

あるいは幾つかの実施形態によれば、該金属の非腐食活性化が、処理された表面積と0.1mmの深さ(厚さ)に基づく推定として、0.01質量(重量)%未満、0.1質量(重量)%未満、0.2質量(重量)%未満、0.5質量(重量)%未満、または1質量(重量)%未満の、金属状態にある下部金属または合金を排除しながら実行される。下部金属または合金の厚さは、参照として用いられ、任意の他の測定可能な深さでもあり得ることに留意されたい。

本明細書に記載された方法により与えられた活性化工程の非腐食性もまた、本明細書で以下に議論される通りフルオロアニオン含有組成物を電解質として用いる電気化学セル装置において、アルミニウムを基にしたアノードに関係する特徴である。

本明細書に示された金属活性化工程の影響は、最初の金属活性化後およびフルオロアニオン含有組成物からの処理された金属の除去後、または処理された金属からのフルオロアニオン含有組成物の除去後に長期間維持され、本明細書で「反応期間」または「活性化期間」と称される少なくとも特定の期間、処理された金属を化学的および電気化学的に活性な状態にしておく。用語「反応期間」または「活性化期間」は、処理された金属がフルオロアニオン含有組成物から分離された時点から、処理された金属が不動性に反して依然として化学的および/または電気化学的に活性である時点までの期間を指す。

フルオロアニオン含有組成物から処理された金属を分離するというのは、本発明の幾つかの実施形態によれば、処理された金属が、もはやフルオロアニオン含有組成物と接触していないことを意味する。幾つかの実施形態において、フルオロアニオン含有組成物から処理された金属を分離するというのは、フルオロアニオン含有組成物が処理された金属の表面から洗い流されたことを意味する。幾つかの実施形態において、フルオロアニオン含有組成物から処理された金属を分離するというのは、処理された金属が周囲条件に、または金属を不動態化にしたのと同じ条件に暴露されることを意味する。幾つかの実施形態において、処理された金属は、周囲湿度、周囲酸素レベルおよび周囲温度に暴露されると、反応期間に化学的および/または電気化学的に活性の状態を維持する。

本発明の幾つかの実施形態において、該活性化期間は、限定されていない。幾つかの実施形態において、該反応期間は、処置された金属を該フルオロアニオン含有組成物から分離してから、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも20時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年間、少なくとも2年間、または少なくとも3年間である。

本発明の実施形態の文脈において、用語「溶解」は、一緒にして「溶質」と称される物質(錯体、ポリマーなどを含む)の原子、イオンまたは分子が、「溶媒」と称される別の物質の複数の原子、イオンまたは分子に飲み込まれて、溶媒中の溶質の溶液を形成する、熱力学的に好適な化学的過程を指す。固体溶質の場合、非晶質、結晶、または他のバルク構造が崩壊して、イオン、原子および/または分子を分離させる。平衡時の溶解過程の最終結果は、溶質/溶媒/環境システムの熱力学的エネルギーに支配されるが、溶解過程自体は、速度論的過程に支配され、熱、撹拌および時間によって影響を受け得る。

金属表面を活性化する方法は、自己不動態化金属、拡散隔膜金属(窒化物、炭化物およびそれらの合金を含む)、遷移金属、貴金属、ポスト遷移金属、卑金属、貧金属、アルカリ土類金属、ランタニド、アクチニドおよびそれらの任意の合金など、様々な金属に適用され得る。

不動態金属を基にしたバッテリー 自己不動態化金属の活性化方法の実施形態は、電気化学セルおよびバッテリーのフライド(flied)である。本発明を実践に移しながら、本明細書で先に記載されたフルオロアニオン含有組成物が、電気化学セル内で効果の高いアノード材料になるように、アルミニウムなどの自己不動態化金属の自然な不動態表面を活性にさせ得る電気化学セル電解質としての使用に成功し得ることが見出された。以下の実施例の節で実証される通り、本発明者らは、効率的なアルミニウム/空気バッテリーを実証した。

本発明の幾つかの実施形態の一態様によれば、アノードとして用いられるアルミニウムなどの自己不動態化金属と、カソードと、電解質として用いられるフルオロアニオン含有組成物(フルオロアニオン含有電解質)と、を含む電気化学セル装置、例えばバッテリーが提供される。

電気化学セル装置の文脈において、該アノードは、本発明の幾つかの実施形態によれば、金属を活性化させる方法を用いて活性化された金属である。

アノード燃料の供給源として金属を用いる電気化学セル装置に関連して、本明細書で先に記載された金属活性化工程は、同時に、または連続で実施され得る。例えばアルミニウムなどの自己不動態化金属は、その使用前に天然酸化物不動態化層を有することができ、これは、周囲雰囲気または含有する液体によって特定の限定的レベルまで酸化されていることを意味し(限定的腐食)、本発明の幾つかの実施形態によりフルオロアニオン含有電解質に浸漬されると、酸化物層が本質的に除去されて、金属表面が電解質に暴露され(活性化された金属表面)、セルが作動すると、金属が消費されて酸化された可溶性または不溶性種とカソードに「移行」する電子とを生成するため、その金属は制御的に酸化される。

本発明の幾つかの実施形態によれば、該電気化学セルは、アノードおよびカソードを含み、アノードおよびカソードを本明細書で先に記載された電解質として用いられるフルオロアニオン含有組成物と接触させると、動作可能になるか、または動作可能であると認識される。接触は、フルオロアニオン含有電解質をセルのコンパートメントに導入することにより(それにより少なくともアノードが電解質と接触する)、または電極をフルオロアニオン含有電解質に浸漬することにより、得ることができる。

本発明の実施形態の文脈において、用語「電気化学セル装置」は、1つまたは複数の電気化学セルまたはボルタ電池からなり、化学エネルギーを貯蔵し、電極間の電位差により化学エネルギーを利用可能な電気エネルギー(例えば、電気)として提供する、一般的意味のバッテリーを指す。

電気化学セルのタイプとしては、ガルバニ電池、電解質電池、燃料電池、フロー電池およびボルタ電池が挙げられ、それぞれが、2つのハーフセルを含み、一方は化学燃料の酸化反応のためのもので(負電極またはアノード)、もう一方は酸化物の還元反応のためのものである(正電極またはカソード)。

バッテリーは、燃料および酸化剤の燃焼を行わずに電気を発生する。他の可能なバッテリー構成は、インターカレーション化学に基づく電気化学セル、例えばLiイオンバッテリー内に存在するような、還元反応に基づくカソードと、酸化反応に基づくアノードと、を含み得る。他の電気エネルギー発生方法により生じるものとは異なり、化学エネルギーは、2つのハーフセル間のレドックス電位差により誘導されて、電流および若干の熱に変換される。それゆえバッテリーは、正電荷のアノードと、負電荷のカソードと、電解質と称されるイオン伝導性材料と、電気回路の内外で得られた電流を伝導する伝導性負および正端子と、を有することを特徴とする。

本明細書で用いられる用語「燃料電池」は、燃料および酸化剤が供給される限り、連続で化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する電気化学セルの1つのタイプを指す。電気は、電解質の存在下で惹起された反応により、燃料(アノード側)と酸化剤(カソード側)の間で発生し、電池内に流れるが、電解質は電池内に保持されたままである。燃料電池は、必要な前述の流れを維持する限り、事実上連続で動作し得る。燃料電池は、従来の電気化学セルバッテリーとは異なり、外部供給源からの反応物質を消費し、反応物質が補充されなければならないため、熱力学的に開放されたシステムを構成するが、バッテリーは、例えば電気エネルギーを化学的に貯蔵し、つまり熱力学的に閉鎖されたシステムということになる。

本発明の幾つかの実施形態によれば、電気化学セルは、燃料が金属燃料である開放システムの燃料電池構成を有するか、またはアノードが金属性である(例えば、金属を含む)閉鎖システムのバッテリー構成を有する。幾つかの実施形態によれば、該電気化学セルは、閉鎖システムのバッテリー構成である。

本発明の幾つかの実施形態によれば、該電気化学セルは、インターカレーション構成を有し、アルミニウムなどの金属がアノードとして働き、カソード材料がその格子内、さもなければその構造内に金属カチオンを宿す能力を有する。そのような電気化学セルの放電の際に、金属カチオンが生成し、カソードの構造内でインターカレートされる。そのような電気化学セルを再充電すると、金属カチオンが、カソードの構造から放出され、アノードで金属原子(M0)として堆積される。本発明の幾つかの実施形態によれば、電気化学セルは、インターカレーション構成を有し、アノードおよびカソードが両者とも、インターカレーションが可能であり、フルオロアニオン含有電解質が、インターカレーション過程でのイオン供給源として働く。

本発明の幾つかの実施形態によれば、電気化学セルは、コンバージョン構成を有し、アルミニウムなどの金属がアノードとして働き、カソード材料が電気化学修飾により金属イオンを宿す能力を有する。放電過程の際に、金属カチオンが、アノードから放出されて、カソード材料を化学的に修飾し、この化学修飾が、電池の再充填の間に回復する。

本発明の幾つかの実施形態によれば、電気化学セルは、フロー電池構成を有し、電解質を循環させながら、レドックス電位が異なるRed/Ox組およびRed’/Ox’組が電池内で用いられる。アノードでは、より低いレドックス電位を有するRed’/Ox’組が反応し、Ox’がRed’に還元されるが、カソードでは、より高いでレドックス電位を有するRe/Ox組が反応して、RedがOxに酸化する。放電モードから再充電モードに移行することを意味する電池の極性の反転により、逆の(反対方向の)反応が起こる。電位差がOx/Red濃度とOx’/Red’濃度の差により維持される限り、電池は一定に動作することができる。

幾つかの実施形態において、本明細書に記載された電気化学セルは、アノードとカソードとを関連づける電気的接続をさらに含み、電極間で電流の流れを可能にする。

本発明の幾つかの実施形態によれば、アルミニウムアノードまたは他の自己不動態化金属の表面は、フルオロアニオン含有電解質と接触することにより修飾されて、もはやアルミニウムバッテリーの場合にはアルミナなどの不動態化種を、または他の金属不動態化種を本質的に示さなくなる。言い換えれば、組み立てられて、場合により電子的または電気化学的に使用される前は、本明細書に示された電気化学セル装置内のアノードの表面は、不動態化層を実質的に含まない。不動態化層を含まないアノード表面のこの状態は、バッテリー寿命を通して維持されるか、または少なくともアノード表面がフルオロアニオン含有電解質と接触する限り維持される。

幾つかの実施形態において、該電解質は、アノードおよびカソードと接触(例えば、直接的接触)している。幾つかの実施形態において、該電解質は、アノードとカソードの間に挿入されている。

幾つかの実施形態において、電気化学セル装置は、電解質と電極のいずれか一方との直接的接触を予防し得る、膜などのセパレータまたは別の機械的要素をさらに含む。幾つかの実施形態において、該セパレータは、アノードとカソードの間の直接的接触を予防して、電池が内部短絡を起こさないようにする。セパレータは、紙および別のセルロース系材料;テフロン;木綿、ナイロン、ポリエステルおよびガラスの織物および不織繊維;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ塩化ビニルに基づくポリマーフィルムおよび膜;ならびに天然由来物質、例えばゴム、石綿、木材などを基にしていてもよい。

幾つかの実施形態によれば、該フルオロアニオン含有組成物は、アルミニウム/空気バッテリー内のアルミニウムアノードを活性化させながら、電解質として用いられるフルオロアニオン−RTILである。

本発明の幾つかの実施形態によれば、本明細書に記載された電気化学セル装置内のアノードの表面が、HF種のフィンガープリントを示すことを特徴とし、即ちアノードが、本明細書で先に記載されたフルオロアニオン含有組成物で処理された金属のスペクトル特性に共通のスペクトル特性(ピーク)の少なくとも一部を示す。

具体的には幾つかの実施形態によれば、アルミニウムアノードは、フルオロアニオン含有電解質の2つの主要なアニオン種の少なくとも幾つかの類似した特性、即ちH2F3およびH3F4種のスペクトル特性を示す全反射(ATR)赤外スペクトルを示す。言い換えれば、フルオロアニオン含有電解質のスペクトルで観察されて、未処理のアノード金属のスペクトルには存在しないピークの幾つかは、フルオロアニオン含有電解質に暴露されると、それを洗浄して長期間貯蔵した後にフィンガープリントの分光測定をおこなっても、アノードの試料中で観察され得る(本明細書で先に記載された「活性化期間」参照)。

例示的実施形態において、自己不動態化金属アノードの試料の清浄な表面を、フルオロアニオン含有電解質と少なくとも1時間接触させ、その後、表面を有機溶媒、例えば非限定的にエタノールで洗浄して、分光光度法で分析する(以下の実施例の節の実施例5参照)。HF種に起因するピークの分光学的同定は、Hagiwara, R.ら[Journal of The Electrochemical Society, 149(1) D1−D6 (2002)、およびJ. Phys. Chem. B 2005, 109, 5445−5449;本明細書に完全に示されているとしても参照により組み入れられる]により提供されたような未処理フルオロアニオン−RTILの分光試験に基づく。

少なくとも以下の実施例の節の実施例5に記載された分光測定が用いられた場合には、H3F4種に起因する例示的ピークは、それぞれ約2990cm−1および約960cm−1の波数を有し(例えば、図9のプロット6のピーク61および65)、H2F3種に起因する例示的ピークは、それぞれ約2355cm−1、約1770cm−1および約1020cm−1の波数を有する(例えば、図9のプロット6のピーク62、63および64)。

例示的実施形態において、少なくとも、以下の実施例の節の実施例5に記載された分光測定が用いられた場合に、アルミニウムアノードおよびフルオロアニオン−RTIL電解質は、図8のプロット4および/または図9のプロット6に示された通り(本明細書で以下の実施例5参照)、全反射赤外スペクトルのピークを少なくとも2つ示す。

本発明の幾つかの実施形態により、電池を動作させることができ、前述のHF種のフィンガープリントを示す、フルオロアニオン含有電解質へのアノードの接触または暴露時間は、1、5、10、30もしくは60分、または1、2、3、4,5、6、12、18、24、48もしくは72時間と短く、あるいは5〜60分間、または0.5〜2時間、1〜4時間、2〜6時間、12〜24時間もしくは24〜72時間の範囲内である。他のより短いまたはより長い接触期間が企図されることに、留意されたい。

本発明の幾つかの実施形態において、該アノードがフルオロアニオン含有電解質に接触したら、アルミニウム含有アノードが、本質的には本明細書に記載された通りのATR−FTIR分光法による測定で、典型的には約3150〜2840cm−1(典型的には約2990cm−1)、約1110〜800cm−1(典型的には約960cm−1)、約2505〜2200cm−1(典型的には約2355cm−1)、約1920〜1600cm−1(典型的には約1770cm−1)および/または約1170〜870cm−1(典型的には約1020cm−1)に幾つかの特徴的分光ピークを示す。

幾つかの実施形態において、アルミニウム含有アノードは、フルオロアニオン含有電解質への暴露の際、表面にHF種が存在することの特徴である、本明細書で先に示された分光ピークの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは全てを示す。

幾つかの実施形態によれば、該HF種のフィンガープリントは、フルオロアニオン含有電解質への金属暴露から少なくとも24、48、72、96もしくは144時間、または1、2、4、8もしくは12週間の間、検出可能である。幾つかの実施形態によれば、該HF種のフィンガープリントは、フルオロアニオン含有電解質への金属暴露から少なくとも24時間の間、検出可能である。幾つかの実施形態において、該HF種のフィンガープリントは、自己不動態化金属アノードをフルオロアニオン含有電解質から分離してから少なくとも3年間、少なくとも2年間、少なくとも1年間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3週間、少なくとも2週間、少なくとも1週間、少なくとも5日間、少なくとも4日間、少なくとも3日間、少なくとも2日間、少なくとも1日間、少なくとも20時間、少なくとも10時間、少なくとも5時間、少なくとも3時間、または少なくとも1時間の間、検出可能である。

フルオロアニオン含有電解質への暴露後に金属(例えば、アルミニウム)表面に関して実施されるような分光光度分析におけるピークの波数が、分析装置または作業パラメータの一部の結果として、上下にシフトし得ること、およびさらにフルオロアニオン含有電解質および金属アノードのタイプに依存し得ることを、本明細書では留意されたい。他の実験条件、例えば暴露時間、洗浄ステップおよび溶媒、ならびに試料を暴露から分光光度測定まで保持する条件が、処理された金属の表面のHF種に起因するピークの存在、波数および強度に影響を及ぼす場合がある。本発明の実施形態は、本明細書に記載された変化(例えば、処理された金属の表面のHF種に起因するピークの存在、波数および/または強度に関して)と同等で、これらのピーク(本明細書に記載された分光光度法およびシステムを用いた時)に関して本明細書で示された値と同等である、フルオロアニオン含有電解質への暴露後の金属表面の分光光度分析におけるどんな変化も包含することを意味する。

任意の特定の理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載されたスペクトル特性がアルミニウムおよび他の自己不動態化金属表面の活性化を示し、もはや不活性酸化物種を示さず、代わりに反応性HF種を示すことを、本明細書で留意されたい。興味深いこととして、この観察は、ケイ素などの他の物質では認められない。この観察は、少なくとも金属または合金の表面のフルオロアニオン含有電解質の幾つかのフィンガープリントの存在により、他の金属の試料において示されると予測され、即ち、HF種に特徴的で未処理金属で認められないスペクトル特性が、フルオロアニオン含有電解質で処理された金属において示されるであろう。

つまり本発明の幾つかの実施形態によれば、フルオロアニオン含有電解質への暴露後のアノード表面は、本明細書の各実施形態のいずれか1つに定義された通りHF種に起因し、本明細書に記載されたフルオロアニオン含有電解質への暴露前のアノードのATR−FTIRスペクトルには存在しない、少なくとも1つのピークまたは少なくとも2つのピークまたは少なくとも3つのピークを示すATR−FTIRスペクトルを特徴とする。

本発明の幾つかの実施形態によれば、アルミニウムなどのアノードの金属は、他の元素および物質でドープすることができ、または本質的に純粋であり得る。幾つかの実施形態において、該アルミニウムアノードは、少なくとも99%のアルミニウム(99%の純度)、少なくとも98%のアルミニウム、少なくとも97%のアルミニウム、少なくとも95%のアルミニウム、少なくとも93%のアルミニウム、少なくとも90%のアルミニウム、または少なくとも85%のアルミニウム(85%の純度)で作製される。85%未満(85%未満の純度)のアルミニウムを有するアルミニウムアノードも企図されることに留意されたい。

本発明の幾つかの実施形態によれば、本明細書に記載された電気化学セル装置は、自己不動態化金属を金属−空気バッテリー内の燃料として使用するため、周囲空気からの酸素が、カソードで酸化剤として消費される。そのような実施形態において、該カソードは、空気カソードである。

本発明の幾つかの実施形態によれば、本明細書に記載された電気化学セル装置は、アルミニウムをアルミニウム−空気バッテリー内の燃料として使用するため、周囲空気からの酸素が、カソードで酸化剤として消費される。そのような実施形態において、該カソードは、空気カソードである。

本明細書で用いられる用語「空気カソード」は、電気化学セル内の酸素還元のために設計された電極を指す。空気カソードは、酸素を、周囲雰囲気および/または加圧された大気および/または任意の外部酸素供給源から電解質中へ伝導し、そこで酸素分子が反応する。幾つかの実施形態において、該カソード反応は、例えばアノード材料のイオン(例えば、アルミニウムイオン)などの電解質中の種によって起こり、電流を発生する。空気カソードを含む電気化学セルは、典型的には空気バッテリーと称される。空気カソード材料は、典型的には多孔質および/もしくは繊維性の炭素、ならびに/またはニッケルメッシュなどの金属メッシュを集電体として含む。空気カソードの実践はまた、炭素系材料、ナノチューブおよび繊維を、反応性表面として、および/または集電体として使用し得る。類似の実践は、グラフェンおよび/または他の単層構造を、反応性表面および/または集電体として含み得る。加えて、金属系フォームの幾つかの適用を、炭素系材料の代わりに、酸素反応に可能な表面として利用することもできる。

幾つかの実施形態によれば、該空気カソードは、少なくとも1つの導電性材料を含むことができ、それは酸素の酸化還元反応部位として機能する。幾つかの実施形態によれば、該空気カソードは、導電性材料に加えて、触媒、結合剤などを含む空気カソード複合材料で構成された空気カソード層を含み得る。空気カソード層において、供給された酸素は、アノードから伝導された金属イオンおよび/またはフルオロアニオン含有電解質そのものと反応して、金属酸化物種または金属−酸素−フッ化物種を導電性材料の表面で生成する。幾つかの実施形態によれば、該空気カソード層は、一般に多孔質であり、活性材料である酸素の拡散性を確保する。

空気カソード層の厚さは、空気バッテリーなどの意図する用途に応じて変動し、幾つかの実施形態によれば、0.1μm〜500μm、または5μm〜300μmの範囲内であり得る。

幾つかの実施形態によれば、該導電性材料は、任意の導電性材料であり得、典型的例の1つが、炭素質材料であり、それは好ましくは電気化学セルの面積および空間に関して高い比表面積を有するものである。

幾つかの実施形態によれば、該炭素質材料は、好ましくは10m2/g以上、100m2/g以上、または600m2/g以上の比表面積を有する。高い比表面積を有する炭素質材料の例としては、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー)、グラファイトおよびグラフェンが挙げられる。

幾つかの実施形態によれば、空気カソード層における導電性材料の含量は、密度、比表面積に応じて変動し、0.1重量%〜99重量%、5重量%〜85重量%の範囲内である。

幾つかの実施形態によれば、該結合剤は、バッテリー内で用いられ得る物質、例えばフッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびスチレン−ブタジエンゴム(SBR)に加え、ゲルポリマー、例えばフッ化ポリビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP)、ポリアクリラート、ポリエチレンオキシドおよびポリメタクリラートが挙げられる。ゲルポリマーが、結合特性および液体貯留特性を有し、そのためそれらが導電性材料および触媒を固定することに加え、電解質の漏出を予防するのに効果的であることに留意されたい。幾つかの実施形態によれば、結合剤の含量は、5重量%〜50重量%、または10重量%〜30重量%の範囲内である。幾つかの実施形態において、該空気カソード内の導電性材料は、結合剤不含である。

幾つかの実施形態によれば、該触媒は、空気カソード内の酸素の酸化還元反応を促進し得る物質であり、導電性材料によって化学的および物理的に支援され得る。幾つかの実施形態によれば、該触媒は、例えばコバルトフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、スズフタロシアニンオキシド、チタンフタロシアニン、およびジリチウムフタロシアニンなどのフタロシアニン化合物;コバルトナフトシアニンなどのナフトシアニン化合物;鉄ポルフィリンなどの大環状化合物錯体;遷移金属と配位した大環状化合物錯体(鉄ポルフィリンなど);MnO2、CeO2、Co3O4、NiO、V2O5、Fe2O3、ZnO、CuO、LiMnO2、Li2MnO3、LiMn2O4、Li4Ti5O12、Li2TiO3、LiNi1/3Co1/3Mn2/3O2、LiNiO2、LiVO3、Li5FeO4、LiFeO2、LiCrO2、LiCoO2、LiCuO2、LiZnO2、Li2MoO4、LiNbO3、LiTaO3、Li2WO4、Li2ZrO3、NaMnO2、CaMnO3、CaFeO3、MgTiO3およびKMnO2などの無機酸化物;ならびにPt、Au、Ag、Pd、RuおよびIrなどの貴金属を含む。幾つかの実施形態によれば、空気カソード層内の触媒の含量は、0.01重量%〜90重量%の範囲内である。幾つかの実施形態において、該空気カソードは、触媒不含である。

該空気カソードは、空気カソード層に加えて、幾つかの実施形態によれば、空気カソード層からの電流を集めるための空気カソード集電体をさらに含み得る。幾つかの実施形態によれば、該空気カソード集電体は、それが所望の電子伝導性を有する限り、多孔質または高密であり得、幾つかの実施形態によれば、該カソード集電体は、多孔質である。多孔質集電体を空気カソード集電体として用いる実施形態において、該空気カソード集電体は、空気カソード層の内側に設けられていてもよく、該空気カソード層と空気カソード集電体は、重なり合っている(互いに隣り合っている)。幾つかの実施形態によれば、空気カソード集電体の材料は、例えば炭素質材料、窒化チタンおよび他のナノチューブ/ファイバー/構造をはじめとする高電子伝導性セラミック材料などの非金属性材料であり得る。幾つかの実施形態によれば、該集電体は、カーボン紙、または不織の炭素生地もしくは炭素布などの炭素質材料を含む。幾つかの実施形態によれば、該空気カソード集電体の厚さは、0.1μm〜1,000μm、または20μm〜400μmの範囲内である。幾つかの実施形態において、該空気電極は、独立式空気電極である。幾つかの実施形態において、該電気化学セル装置は、集電体を含まない装置である。

空気カソードを生成するための例示的で非限定的な方法は、導電性材料、結合剤および触媒が溶媒と混合されて空気カソード複合体材料のペーストを調製し、該ペーストが塗布および乾燥され、必要に応じて該ペーストの乾燥後に加圧または加熱が実施され得る、という工程を含み得る。加えて、空気カソード集電体の表面に空気カソード複合体材料のペーストを塗布すること、および塗布されたペーストを乾燥させることにより、空気カソード層および空気カソード集電体が重なり合った空気カソードが生成され得る。あるいは該空気カソードは、該空気カソード集電体と、空気カソード複合体材料のペーストを塗布および乾燥させることにより得られた空気カソード層とが重なり合い、その後、適宜、加圧または加熱される、という方法により得ることができる。

幾つかの実施形態において、該空気カソードは、金属メッシュ;または触媒で覆われた、もしくは触媒を含まない多孔質セラミック(金属酸化物)構造;または印字可能材料のカソード;または炭素繊維もしくはチューブの成長シードレスもしくはシードを基にしたカソードである。

幾つかの実施形態によれば、該空気カソード複合体材料のペーストの溶媒は、揮発性であり、非限定的に水、有機溶媒、例えばアセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)を含み得る。幾つかの実施形態によれば、該溶媒は、200℃以下の沸点を有する。

幾つかの実施形態において、該空気電極は、白金および/または他の高価な金属に基づく空気カソードである。

本発明の実施形態によれば、任意の市販されている空気カソードまたは任意の他の適切なカソードが、企図される。

幾つかの実施形態によれば、自己不動態化金属アノードに基づく本明細書に示された電気化学セル装置は、非限定的に酸化マンガン(MnO2)カソード、酸化バナジウム(バナジア、V2O5)カソードなどの酸化物に基づくカソード、ならびにCuO、P2O5、SnO2、PbO2、FeO、Fe2O3、CoO、Co2O3、NiOおよびAgOで構成された他の金属酸化物を基にしたカソードをはじめとする、任意の他のタイプのカソードと適合され得る。

幾つかの実施形態によれば、アルミニウムアノードに基づく本明細書に示された電気化学セル装置は、非限定的に酸化マンガン(MnO2)カソードおよび酸化バナジウム(バナジア、V2O5)カソードなどの酸化物に基づくカソードをはじめとする、任意の他のタイプのカソードと適合され得る。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、金属硫化物カソード、またはインターカレーションカソード、またはコンバージョンカソード、またはフッ素化カソード、または金属フッ化物カソード(CoF2、CoF3、FeF2、FeF3、CuF2、MoF5、およびSnF4など)、または塩素カソード、または硫黄カソードである。

本発明の任意の実施形態の幾つかによれば、該カソードは、前述のカソードの組み合わせである。

本明細書で請求された方法論は、様々な金属酸化物、金属硫化物、金属カンラン石(metal olivine)、金属硫酸塩、金属ハロゲン、ハロゲン、八面体クラスタ(シェブレル相)に基づく材料、金属炭酸塩およびさらにMXene(六角形カーバイドおよび窒化物であるMAX相から得られる二次元遷移金属カーバイドおよび窒化物)カソードに基づく材料などの異なるカソード材料を用いて、様々な電池構成で可能なアノードとしての自己不動態化金属の使用を可能にする。

本明細書で請求された方法論は、様々な金属酸化物、金属硫化物、金属カンラン石、金属硫酸塩、金属ハロゲン、ハロゲン、八面体クラスタ(シェブレル相)に基づく材料、金属炭酸塩およびさらにMXene(六角形カーバイドおよび窒化物であるMAX相から得られる二次元遷移金属カーバイドおよび窒化物)カソードに基づく材料などの異なるカソード材料を用いて、様々な電池構成で可能なアノードとしてのアルミニウムの使用を可能にする。

電気化学セルの電位が、ハーフセル構成とは異なりフルセル構成で測定され得る値であること、およびこの値がアノード、カソードおよび電解質をはじめとする電池全体の化学作用に依存することに留意されたい。例えば、熱力学的計算により推定される、アルミニウムと酸素との一般的水性反応の理論的電位は、目的生成物がAl2O3の場合には約2.7Vである。ゲルを基にしたFc/Fc+参照電極に対して測定され、以下の実施例の節に示される、アルミニウム/空気バッテリーの電気化学セルの電位は、少なくとも−1.0V、少なくとも−1.1V、少なくとも−1.15V、少なくとも−1.2V、少なくとも−1.3V、少なくとも−1.4V、少なくとも−1.5V、少なくとも−1.6V、または少なくとも−1.7Vのアルミニウムハーフセルの電位を特徴とする。

本発明の電気化学セル(例えば、電気化学セル装置)は、低いアノード腐食を示すことを特徴とする、即ち電気化学セル内のアノードは、電池の回路内の電子通過に関連しないが電池内の腐食から生じる副反応によって制御不能に使い果たされることはない。

本明細書で用いられる用語「腐食」は、物質、典型的には金属と、環境との反応により該物質を徐々に変性させて、その場所に酸化生成物を形成させることを指す。つまり腐食は、典型的には金属と酸素などの酸化剤との電気化学的酸化により、典型的には元の金属の酸化物(複数可)および/または塩(複数可)を生成することを指す。

電気化学セルおよびバッテリーに関連して、低い腐食電流は、電気化学システムの意図する放電電流に寄与しない最小限の燃料損失および最小限の制御不能な電子損失を有する安定して効率的な電池を示す。そのような腐食電流は、電気化学セルの放電電流に相関し、それゆえ制御された放電電流と腐食電流との比率として推定され、放電電流と腐食電流の比率が、効率的な電池ほど高くなると予測され、電池は様々な放電電流で様々な比率を示し得る。例えば、約10mA/cm2の制御された放電電流、0.1〜0.01mA/cm2以下(放電電流よりも2〜3桁未満低い)程度の腐食電流を示す電気化学セルは、低腐食と見なされる。

以下の実施例の節(実施例4)に実証される通り、本発明の幾つかの実施形態による例示的なアルミニウムを基にしたバッテリーは、バッテリーの放電電流よりも3桁低い腐食電流を示す。実施例の節において、本明細書に示されたアルミニウム/空気バッテリーは、少なくとも1:50、場合により100:1よりも大きな、場合により500:1よりも大きな、さらに場合により1000:1よりも大きな、放電電流対腐食電流の比を特徴とする。

電気化学セルの全体的品質を評価するためには、電池の全容量を調べるであろうが、それが放電と腐食の比率および最適な放電電流の両方を表すことに留意されたい。

本発明の幾つかの実施形態によれば、本発明の実施形態のいずれか1つに記載された通り、アルミニウムアノードなどの自己不動態化金属アノードと、カソードと、フルオロアニオン含有電解質と、を含む電気化学セルは、再充電可能な電気化学セルまたは再使用可能な蓄電池である。

本発明の幾つかの実施形態によれば、本発明の実施形態のいずれか1つに記載された通り、アルミニウムアノードと、カソードと、電解質としてのフルオロアニオン−RTIL、ならびに/または電解質中のフルオロアニオン塩および/もしくはフルオロアニオンに基づく種と、を含む電気化学セルは、再充電可能な電気化学セルまたは再使用可能な蓄電池である。

幾つかの実施形態において、本明細書に記載された電気化学セルは、電気化学的に再充電可能な電池または機械的に再充電可能な電池または燃料電池である。機械的に再充電可能な電池または燃料電池において、アノードは、アノードまたはその幾つかの部品(複数可)を交換することにより補充され得る。そのような実施形態において、該装置の他の構成要素は、電解質、カソードまたはその部品など、全体として、または部分的に交換可能または補充可能または再生可能であることが企図される。

幾つかの実施形態において、本明細書に提供された電気化学セル装置は、電気化学的に再充電可能であるか、または二次電池であり、アノード材料(例えば、アルミニウム)が、放電の際に酸化され(M0→M+n+ne)、電流が反転すると(バッテリーの再充電過程)、アノードの表面の金属(M0)堆積物として還元されて金属状態に戻る。幾つかの実施形態において、還元された金属は、電極材料中にインターカレートされる。言い換えれば、本明細書に提供された電気化学セル装置は、本明細書で以下にさらに詳細に記載される通り、少なくとも1回の充電/放電サイクルを受けることができる。

一般に電気化学装置の再充電可能性は、とりわけ、該装置の放電深度(DOD)により定義され得るが、DODは、典型的には電池の公称初期容量(アンペア時での)の割合として表され、100%のDODは、1回の放電/再充電サイクル後の電池の完全な放電を意味し、0%のDODは、放電がないことを意味する。

本発明の実施形態に関連して、本発明の実施形態のいずれか1つに記載された電気化学セル装置の初期容量は、0番目の容量(C0)と称され、それは本質的に新しく、新たに組み立てられ、充電されていて、即座に放電される電池である。したがって、本明細書では、1回の放電/再充電サイクル後の電池の容量は第一の容量(C1)と称され、2回の放電/再充電サイクル後の電池の容量は第二の容量(C2)と称される、などである。例えばn番目の放電/再充電サイクル後の総容量(ΣCn)(ここでnは、整数である)は、C0、C、C2、C3などから最大Cnまでの合計である。

つまり幾つかの実施形態によれば、本発明の実施形態のいずれか1つに記載された電気化学セルは、少なくとも約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%80%、90%、95%または約100%のDODでの少なくとも1回の放電/再充電サイクルを受ける能力を特徴とする。あるいは幾つかの実施形態によれば、本明細書で提供された装置は、1回の放電/再充電サイクル後の総容量、即ちC0+C1がC0よりも大きいこと(C0+C1>C0)を特徴とする。幾つかの実施形態によれば、ΣCnは、C0よりも大きい(ΣCn>C0)。

金属を融合する工程: 自己不動態化金属を活性化する方法の別の実施形態は、金属融合のフライドである。典型的な溶接およびはんだ付は、1種または複数の金属を溶融すること、および溶融された金属を互いに融合させること、を含む。自己不動態化金属の場合、これらの金属の溶接、ろう付またははんだ付の工程は、典型的には素地の金属よりも高い溶融温度と、これらの高温で周囲雰囲気に暴露された場合に再不動態化して典型的には燃焼する金属の傾向と、を特徴とする表面の不動態化層のために、実行がより困難である。本発明者らは、本発明を実践に移しながら、本明細書に記載された通り、融合する金属をフルオロアニオン含有組成物と接触させることで、自己不動態化金属で作製された2つの物体を融合する場合であっても、優れた溶接が得られることを見出した。

本発明(resent invention)の幾つかの実施形態の一態様によれば、第一の金属または第一の金属合金を第二の金属または第二の金属合金に融合する工程であって、該第一の金属または該第二の金属の少なくとも一方が自己不動態化金属である、工程が提供される。本発明の実施形態による工程は、自己不動態化金属である、第一の金属の表面、または第二の金属の表面、または第一の金属および第二の金属の両方の表面、または第一の金属もしくは第二の金属の一方の表面を、本明細書で先に記載されたフルオロアニオン含有組成物と接触させ、それにより活性化された金属表面を得ることにより実行される。該工程は、第一の金属および第二の金属の一方もしくは両方を溶融する、または溶加材を溶融して、第一の金属と第二の金属の境界を充填すること、ならびに第一の金属および第二の金属を冷却すること、をさらに含む。

金属の融合に関連して、第一の金属、第二の金属または溶加材のいずれか1つは、独立して、本発明の幾つかの実施形態により金属を活性化させる方法を利用して活性化される金属である。

本発明の実施形態の文脈において、用語「融合する」は、2種以上の金属物体を互いに溶接、ろう付、はんだ付、または他の溶融接合もしくは溶融連結するなど、当該技術分野で公知の工程の任意の1つを指す。

本発明の実施形態の文脈において、用語「溶接」は、合体を誘発することにより金属物体を接合する工程を指す。これは多くの場合、金属物体を溶融すること、および溶加剤材料を添加して溶融された材料のプール(溶接プール)を形成し、それを冷却して、時として熱と共に用いられる圧力により、または単独で接合部になり、溶接物を生成することにより実行される。これは、金属物体を溶融せずに金属物体の間で低融点材料を溶融してそれらの間に接着を形成することを含むはんだ付およびろう付とは異なる。含まれる金属を効率的に溶融するために、高い適用温度が要求される。全ての金属および合金、特に酸化物層によって保護されたものでは、必要とされる温度がより高く、それはより大きな印加電圧および電流によって表される。さらに、自己不動態化金属の場合、溶融されると、溶融された溶接プールは、保護環境、例えばアルゴン、CO2およびヘリウムが加えられていない場合に、周囲酸素と急速に反応する傾向がある。溶接方法の幾つかには、「手棒溶接」としても公知のシールドアーク溶接(SMAW);TIG(タングステン、不活性ガス)としても公知で、溶接領域をアルゴンまたはヘリウムなどの不活性シールドガスにより大気混入から防御しながら非消費性タングステン電極を用いて溶接物を生成する、ガスタングステンアーク溶接(GTAW);一般にはMIG(金属、不活性ガス)と呼ばれ、ワイヤを調整可能な速度で供給して溶接パドルの上にアルゴンを基にしたシールドガスまたはアルゴンと二酸化炭素(CO2)との混合物を流して大気混入を防御する、ワイヤ供給ガンを使用する、ガスメタルアーク溶接(GMAW);フラックスが充填された特別な管状ワイヤを使用すること、およびそれが溶加剤に応じシールドガスを用いて、または用いずに使用され得ること以外はMIG溶接とほぼ同一である、フラックスコアードアーク溶接(FCAW);自動供給される消費可能な電極および顆粒可融性フラックスのブランケットを使用し、溶融された溶接物およびアークゾーンがフラックスブランケットの下に「沈められている」ことにより大気混入から防御される、サブマージアーク溶接(SAW);ならびに垂直または垂直に近い位置にある1インチ(25mm)〜12インチ(300mm)のより厚い材料のための高生産性のワンパス溶接工程であるエレクトロスラグ溶接(ESW)が挙げられる。

本発明の実施形態の文脈において、用語「ろう付」は、溶加材を融点よりも高く加熱して、毛細管作用により2種以上の密接に取り付けられた金属の間で分散させる、金属接合工程を指す。該溶加材は、適切な雰囲気、通常は不活性ガスのフラックスにより防御されながら溶融温度よりわずかに高くなっており、該金属物体の上を一緒になって流れることができ(ぬれとして公知)、その後、冷却されて金属物体を互いに接合する。ろう付は、溶加材を溶融するのに用いられる温度がろう付の方が高いこと以外では、はんだ付と類似している。

本発明の実施形態の文脈において、用語「はんだ付」は、隣接する金属よりも低い融点を有する溶加材(はんだ)を溶融して接合部に流すことにより2種以上の金属物体を互いに接合する工程を指す。はんだ付が金属物体の溶融を含まないという点で、はんだ付は溶接と異なる。ろう付において、溶加材は高温で溶融するが、金属物体は溶融しない。

一般に、金属物体の表面を本明細書に記載されたフルオロアニオン含有組成物と接触させることにより実行される、融合領域での不動態化層の除去および/または金属表面の修飾が、融合工程を、より低い印加電圧および電流により得られるより低い温度で起こさせることに留意されたい。加えて、上述のHF種を有する修飾された金属表面は、さらなる表面不動態化および溶融プールの酸化を防ぎ、つまり防御性のある不活性ガスが必要とならない。

ろう付およびはんだ付の場合、金属物体の表面を先に記載されたフルオロアニオン含有組成物と接触させることで、溶加材とはんだ付/ろう付された金属物体の間により良好な接着がもたらされよう。

本発明の実施形態の幾つかの実施形態によれば、幾つかの金属物体の表面を先に記載されたフルオロアニオン含有組成物と接触させることで、アルミニウムおよび銅など、目下、融合が不可能であると見なされている金属の融合が可能になろう。

幾つかの実施形態において、該工程は、溶加材の使用をさらに含み、該工程は、溶加材の表面をフルオロアニオン含有組成物と接触させ、それにより活性化された溶加材表面を得ることをさらに含む。幾つかの実施形態において、該溶加材は、自己不動態化金属である。

幾つかの実施形態によれば、該工程は、該金属のいずれか1つの不動態化層の溶融温度よりも低い温度で実行される。

幾つかの実施形態によれば、該工程は、周囲雰囲気で実行され、即ち該工程は、融合工程を不活性雰囲気で実施する必要がない。

金属の堆積: 本明細書で先に示された、金属表面活性化、電気化学セル装置および金属融合工程における使用以外では、本明細書に示された金属表面を活性化させる方法は、様々な工業適用および研究適用、例えば金属の化学的および物理的蒸着、塗装およびアノード酸化をはじめとする様々なコーティング工程に加え、マイクロエレクトロニクス分野における様々な適用に効果的に利用され得る。例えばダマシン工程などのTaを基にした拡散隔膜の最上部での銅の電気化学的堆積が、銅堆積ステップの前に、タンタル表面活性化のための前処理としてフルオロアニオン含有組成物中で効果的に実行され得る。本明細書に示された実施形態の幾つかによる金属活性化方法の利用は、シーディングの利用を不要とし、基板上のより繊細な構造特性をより効率的および簡便な手法によって堆積金属でコーティングさせる可能性もある。

金属堆積に関連して、基板の金属は、本発明の幾つかの実施形態によれば、金属を活性化させる方法を利用して活性化される金属である。加えて、堆積のための金属供給源として用いられる金属酸化物は、本発明の幾つかの実施形態によれば、金属不動態化種の一部でもあり、除去されてフルオロアニオン含有組成物により修飾される。

金属堆積の態様は、アルミニウムなどの不動態金属で作製されたアノードを含み、再充電過程が電解質中の酸化された金属種を還元して金属状態に戻し、アノードに堆積させる必要がある、二次バッテリーの態様にも関連する。

さらに、アノード材料が金属酸化物に酸化される実施形態において、バッテリーの再充電の過程はまた、金属酸化物を電気化学的に反応性にして、これらの酸化物をアノードに堆積させ得る金属種の供給源として使用することを可能とする能力を必要とする。以下の実施例の節に実証される通り、フルオロアニオン含有組成物の使用は、不動態金属表面を活性化させてそこに堆積させること、および金属酸化物を金属堆積のための電気化学的反応性のある金属供給源に変換すること、の両方を可能にする。本明細書に記載されたフルオロアニオン含有組成物のこの二重の機能は、アルミニウムおよび他の自己不動態化金属を基にした完全に機能的な再充電可能なバッテリー、および他の金属を用いた他のタイプのバッテリーの改善を導く突破口となる。

本発明の幾つかの実施形態の態様によれば、第一の金属を第二の金属の表面に堆積させる方法であって、第二の金属の表面を本明細書に記載されたフルオロアニオン含有組成物と接触させ、それにより活性化された金属表面を与え、第一の金属を該活性化表面に堆積させることを含む、方法が提供される。

本発明の幾つかの実施形態によれば、本明細書に示された金属堆積の方法は、任意の導電性または半導電性表面、例えば非限定的にガラス状炭素、半導体(例えば、ケイ素)、導電性ポリマー、ならびにカーボンフラーレンおよびナノチューブでの金属の電着に適用され得る。

幾つかの実施形態において、該方法は、フルオロアニオン含有組成物から第二の金属を分離すること、それを、第一の金属の供給源を含む電解質に入れること、および第二の金属と電解質に入れられた電極の間にカソード電位またはカソード電流を印加すること、をさらに含む。

幾つかの実施形態において、該方法は、不変のコンテナで実施される(シングルポット電着(single−pot electropositon))、即ち、第二の金属は、フルオロアニオン含有組成物中に保持され、該方法は、第一の金属の供給源を該フルオロアニオン含有組成物中に添加することをさらに含む。シングルポット電着は、洗浄、乾燥などの操作ステップが省略されることなど、複数の理由で有利である。

幾つかの実施形態において、第一の金属の供給源は、第一の金属の塩、第一の金属の酸化物、第一の金属の硫化物、第一の金属の窒化物、第一の金属の酸化形態、およびそれらの任意の組み合わせである。

第一の金属の供給源がフルオロアニオン含有組成物に添加される幾つかの実施形態において、該方法は、該フルオロアニオン含有組成物中に浸漬された第二の金属と、同じフルオロアニオン含有組成物と電気的に連通している電極と、の間に電位を印加することをさらに含む。

幾つかの実施形態において、該方法は、該フルオロアニオン含有組成物中に浸漬された第二の表面と、同じフルオロアニオン含有組成物と電気的に連通している電極と、の間に電位を印加することをさらに含む。

幾つかの実施形態において、該第二の金属は、本明細書で先に記載された自己不動態化金属である。

幾つかの実施形態において、該第二の金属は、本明細書で先に記載された拡散隔膜金属である。

幾つかの実施形態において、該第一の金属は、銅であり、該第二の金属は、タンタルを含む。幾つかの実施形態において、該第二の金属への該第一の金属の堆積は、第二の金属をシーディングさせずに実行される。

本明細書で先に議論された通り、金属基板上に金属の酸化形態を堆積させる方法の1つの例示的利用は、フルオロアニオン含有電解質を有するAl/空気バッテリーなどの再充電可能なバッテリーにおいてであり、その場合アルミニウムアノードは放電の際に消費されるが、酸化アルミニウムが、空気カソード上に形成され、酸化アルミニウムが再充電の際にカソードでリサイクルされ、アノードに堆積するアルミニウムイオンの供給源として働き、次の放電のために補充される。フルオロアニオン含有電解質の寄与は、放電と再充電の両方で行われ、アノードとカソードの両方で行われる。

本出願から完成した特許の寿命の間に、多くの関連の方法、使用および組成物が開発されると思われるが、用語、方法、使用、組成物、バッテリーおよび装置の範囲は、そのような新しい技術の全てを先験的に包含するものとする。

本明細書全体で用いられる通り、そして本明細書に記載された実施形態のいずれか1つに関して、用語「約」は、±10%を指す。

用語「含む」、「含むこと」、「包含する」、「包含すること」、「有する」およびそれらの組み合わせは、「含むが、それに限定されないこと」を意味する。

用語「からなる」は、「含み、かつそれに限定されること」を意味する。

用語「本質的に〜からなる」は、該組成物、方法または構造が追加の成分、ステップおよび/または部分を含み得るが、追加の成分、ステップおよび/または部分が請求された組成物、方法または構造の基本的特徴および新規な特徴を実質的に改変しない場合に限ることを意味する。

本明細書で用いられる表現である、特定の物質を「実質的に含まない」は、この物質を全体として含まない組成物、または0.1重量%以下の該物質を含む組成物を指す。

単語「例示的な」は、「実施例、例または例示として働くこと」を意味するために本明細書で用いられる。「例示的な」と記載された任意の実施形態は、必ずしも、他の実施形態よりも好ましい、または有利であると解釈すべきでなく、そして/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。

単語「場合により」または「あるいは」は、「幾つかの実施形態で提供されるが、他の実施形態では提供されないこと」を意味するために本明細書で用いられる。本発明の任意の特定の実施形態は、そのような特性が矛盾しない限りは、複数の「場合による」特性を包含し得る。

本明細書で用いられる単数形の「a」、「an」および「the」は、他に明白な断りがなければ、複数の対象物を含む。例えば用語「化合物」または「少なくとも1つの化合物」は、その混合物をはじめとする複数の化合物を包含し得る。

本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態が、範囲の形式で表され得る。範囲の形式での記載が、単に簡便性のためのものであり、本発明の範囲の確固たる限定と解釈すべきでないことが、理解されなければならない。したがって範囲の記載は、具体的に開示された全ての可能な部分的範囲、およびその範囲内の個々の数値を有すると見なされなければならない。例えば1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの具体的に開示された部分的範囲、ならびにその範囲内の個々の数字、例えば1、2、3、4、5、および6を有すると見なされなければならない。これは、範囲の大きさにかかわらず適用される。

数字範囲が、本明細書で示されていれば必ず、それは示された範囲内の任意の引用された数字(分数または整数)を含むことを意味する。第一の指示された数字と第二の指示された数字の間の「範囲/範囲内である」、および第一の指示された数字から第二の指示された数字までの「範囲/範囲内である」という表現は、本明細書では互換的に用いられ、第一の指示された数字および第二の指示された数字と、その間の分数および整数の全てと、を含むことを意味する。

本明細書で用いられる用語「方法」は、非限定的に、化学、薬理学、生物学、生化学および医療の技術分野の実施者に既知の手法、手段、技術および手順、またはそれらから容易に開発された手法、手段、技術および手順をはじめとする所与の課題を完遂するための手法、手段、技術および手順を指す。

明瞭にするために別の実施形態の文脈に記載された本発明の特定の特性が、単一の実施形態の組み合わせで提供され得ることも、認識されよう。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で記載された本発明の様々な特性もまた、別個に、または任意の適切な部分的組み合わせで、または適切ならば本発明の任意の他の記載された実施形態において、提供され得る。実施形態がそれらの要素を用いなければ操作不能になるという場合を除き、様々な実施形態の文脈において記載された特定の特性が、それらの実施形態の本質的特性と見なされるべきではない。

本明細書で先に表現され、以下の特許請求の範囲の区分に請求された本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的裏づけが見出される。

実施例 ここに、以下の実施例を参照するが、それらは先の説明と一緒に、非限定的様式で本発明の幾つかの実施形態を例示している。

実施例1 不動態金属の活性化 自己不動態化金属表面を活性化させる本明細書で請求された方法の能力を実証するために、開回路電位(OCP)実験を、約2〜5nm厚の天然酸化物不動態化層を有する異なる金属および合金に関して、電気化学セルで実施した。

自己不動態化金属と、作用電極として働くその天然酸化物と、を有する二電極電気化学セル構成を用いた。ゲルを基にした電極は、参照電極として用いた[Shvartsev, B. et al., Phys. Chem. Chem. Phys., 2013, 15(41), p. 17837−45]。実験は、ねじ戻された接触ステンレス鋼プレートで支持された自己不動態化金属試料のためのポリプロピレンホールダーを含む電気化学セル内で実施した。暴露表面は、0.95cm2であった。

それぞれ約2〜3nmの天然酸化物層を示す、自己不動態化金属チタンの試料(Alfa Aesar、99%の純度、0.5mm厚)、および自己不動態化金属タンタルの試料(Alfa Aesar、99.95%の純度、0.25mm厚)を、例示的自己不動態化金属として用いた。自己不動態化金属試料をアセトンおよびエタノールで洗浄した後、表面活性化実験を室温で実施した。

電池を組み立てた後、例示的フルオロアニオン含有組成物、即ちEMIm(HF)2.3F RTIL 0.6mlを添加した。開回路電位(OCP)測定を、EG&G Princeton Applied Research potentiostat/galvanostat 273で実施した。幾つかの実験において、該測定を、電解質添加と同時に開始した。

図1は、電解質としてのEMIm(HF)2.3F RTIL中のチタン(Ti、正方形で表示されたプロット)、タンタル(Ta、円形で表示されたプロット)およびステンレス鋼グレード304(ss304、三角形で表示されたプロット)で作製された未処理アノードを利用した、ゲルを基にした参照電極と比較した時間に対する開回路電位測定の結果を表し、それらの金属の全てが、天然酸化物層を示した。

図1に認められる通り、OCPは、全ての金属電極に関して相対的に高い値で開始し、金属表面の酸化物不動態化層の存在を示す酸化物エッチング曲線を表した。数十秒後に、OCP値が急速に減少し、酸化物層を含まない露出した金属電極表面の存在が示された。最初の電位と最後の電位の差が、例示的フルオロアニオン含有組成物EMIm(HF)2.3F RTIL電解質中の金属または合金の平衡に依存することに留意されたい。

どんな電流または電位も印加せずに、例示的フルオロアニオン含有組成物EMIm(HF)2.3F RTILに浸漬することにより、金属表面が活性化状態になることを実証するために、動電位実験をチタン電極で実施した。金属表面活性化が実行されたことを確認するために、測定は電極を電解質に浸漬した直後、および同じ電解質溶液に浸漬した30分後、の2つのタイムポイントで実施した。

図2は、例示的フルオロアニオン含有組成物EMIm(HF)2.3F RTIL電解質中で未処理チタンアノードについて測定された動電位実験の結果を表し、5mV/秒のスキャン速度で電流密度[mA/cm2]に対する電位[V]のプロットを示し、正方形で表示されたプロットは、電解質に電極を浸漬した時に実施された測定を表し、円形で表示されたプロットは、同じ電解質に浸漬して30分後に実施された測定を表す。

図2に認められる通り、不動態化チタンアノードの浸漬の際、プロットは、その表面の天然酸化物層による不動態アノードの挙動を示す低いアノード電流を示している。図2にさらに認められる通り、電流を印加する前の30分間に例示的フルオロアニオン含有組成物EMIm(HF)2.3F RTIL電解質に浸漬した類似のチタンアノードは、相対的に高いアノード電流を示した。フルオロアニオン−RTIL処理アノードにより示されたより高いアノード電流が活性Ti溶解に好適な表面条件の結果であると結論づけられた。

実施例2 アルミニウム−空気バッテリー アノード燃料源としてのアルミニウムの使用は、不動態化酸化物層を形成するというアルミニウムの傾向により妨げられてきた。以下の実施例は、アルミニウム−空気バッテリー中でアルミニウムアノードを活性化させる上での本明細書に記載された方法論の使用を実証している。

例示的フルオロアニオン含有組成物1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムオリゴフルオロヒドロゲナートEMIm(HF)2.3Fおよび1−ブチル−1−メチルピロリジニウムオリゴヒドロゲナートPyr14(HF)2.3F(Boulder Ionics、米国)RTILを金属活性化に、電気化学セルの電解質として用いた。

アノードおよびカソードの挙動の試験のために、アノード分極測定における作用電極として働く0.25mm厚アルミ箔(99.997%の純度、Alfa Aesar)と、カソード分極実験のための多孔質炭素を基にした空気電極(Electric Fuel, Inc.)と、を含む三電極構成を使用した。

多孔質炭素を基にした空気電極は、表面積533m2/g、平均孔径5.43nmおよび炭素負荷量(carbon loading)19mg/cm2、および77重量%の活性化炭素粉末に分散された6.6重量%のMnO2触媒、および結合剤としての16.4重量%のPTFEを示した。

プラチナ電極を、対電極として用い、ゲルを基にしたFc/Fc+参照電極を、それとして使用した。

ハーフセル実験: ハーフセル実験を、ポリプロピレンに基づくホールダーをニッケル金属(98%の純度、Spectrum)集電体と共に含む電気化学セルで実施した。暴露された電極表面は、1.13cm2であった。

実験前に、アルミニウム電極をエタノールおよびアセトンで洗浄し、その後、乾燥させた。前処理は、空気電極では実施しなかった。

セルが組み立てられた後、RTIL 1mlを添加した。実験の前に、用いられる空気カソードのタイプに応じて、セルを数時間静置した。

動電位実験を、VersaSTAT(Princeton Applied Researchのポテンシオスタット/ガルバノスタット)で実施した。

提案されたAl/EMIm(HF)2.3F/空気バッテリーでの最初の実験は、ハーフセル構成で実施した。これらの測定によって、そのような構成で与えられ得るセル電位および効果的電流密度が得られ、動電位測定結果が図3に表される。

図3は、アルミニウム/空気バッテリー構成において5mV/秒のスキャン速度で実施されたOCP暴露動電位実験の24時間後に測定された、電流に対する電位のプロットを表し、アルミ箔(円形で表示されたプロット)および空気電極(正方形で表示されたプロット)からの測定値を示す。

図3に認められる通り、アルミニウム/空気燃料電池は、2.15Vの開回路電位を示した。加えて、アルミニウムおよび空気電極の両者の電流密度は、1〜15mA/cm2の範囲内であり、0.5V未満のかなり低い分極では、より高かった。

これらの結果から、本明細書で請求された金属活性化方法によってアルミニウム/空気燃料電池構成が効率的なアルミニウムを基にしたバッテリーになることを明確に実証している。

フルセル(バッテリー)実験: バッテリー放電実験を、Arbin BT2000バッテリーテストシステムを用いた二電極モード(参照電極なし)において、同じセル構造と、同じ活性材料、アルミニウムおよび空気電極とを用いて実施し、結果を図4に表す。

図4は、本発明の実施形態によるAl/EMIm(HF)2.3F/空気バッテリーで測定された、時間に対する電位(セル放電)の比較プロットを表し、3つの放電電流密度:正方形で表示された無酸素環境(グローブボックス)での0.5mA/cm2、円形で表示された周囲空気での0.5mA/cm2、および三角形で表示された周囲空気での1.5mA/cm2、でのセル挙動を示す。

図4で認められる通り、該バッテリーは、1.5mA/cm2以上もの高い電流密度を支持する能力を示したが、無酸素環境でのバッテリー放電は、加えられた電流密度を支持することができなかった。

さらなるフルセル放電実験を、Pyr14+カチオンおよび(HF)2.3Fアニオンを基にした別の例示的RTILで実施した。該実験は、0.25mA/cm2の放電電流密度で実施した。

図5は、RTIL EMIm(HF)2.3F電解質(円形で表示されたプロット)およびRTIL Pyr14(HF)2.3F電解質(正方形で表示されたプロット)を含む本発明の実施形態によりアルミニウム/空気バッテリーで測定され、0.25mA/cm2の電流密度でのセル挙動を示す、時間に対する電位(セル放電)の比較プロットを表す。

図5で認められる通り、結果から、本発明の実施形態によれば、Pyr14(HF)2.3Fがアルミニウム/空気バッテリー内で効果的な金属(アルミニウム)活性化剤および効果的な電解質として働くことが示される。放電時の電位のイニシャルドロップは、EMIm(HF)2.3Fを用いた電池の場合よりも高いが、Pyr14(HF)2.3Fを用いた電池の総容量は、より大きい(EMIm(HF)2.3Fの53mAhに比較して、Pyr14(HF)2.3Fでは67mAh)。Pyr14(HF)2.3Fの伝導性は、推定的にEMIm(HF)2.3Fよりも低く、それによって2つの比較された電池の放電における差が説明され得ることに留意されたい。

実施例3 アルミニウム−金属酸化物バッテリー 他のバッテリー設定でアノードとして使用するためのアルミニウムを活性化する本明細書で請求された方法の能力を検証するために、2つのさらなるカソード、つまり酸化マグネシウム(MnO2)の一方と酸化バナジウム(バナジア、V2O5)の他方を、アノードとしてのアルミニウムおよび電解質としてのEMIm(HF)2.3Fを用いてテストした。

上述の電極を基にした電池システムを、アルミニウム/空気バッテリーに関して記載された手順に従って0.25mA/cm2の電流密度で放電した。

図6は、Al/EMIm(HF)2.3F/MnO2バッテリー(正方形で表示されたプロット)およびAl/EMIm(HF)2.3F/V2O5バッテリー(円形で表示されたプロット)で測定され、0.25mA/cm2の電流密度でのセル挙動を示した、時間に対する電位(セル放電)の比較プロットを表す。

図6で認められる通り、アルミニウムを基にしたアノードおよびバナジアを基にしたカソードを含む電池は、13.4mAhの電池放電容量を示し、これは0.331mAhの電池放電容量を示したMnO2を基にしたカソードを用いた同等の電池構成に比較して2桁高い。

これらの結果から、本明細書に請求された方法論を使用することによって、本明細書に記載されたような異なるカソード材料を用いた様々な電池構成で可能なアノードとしてアルミニウムが使用されることが明確に実証される。

実施例4 アルミニウム腐食測定 不動態金属に及ぼすRTILの低腐食性効果を実証するために、アルミニウムをバッテリー電池構成のアノードとして用いた。該実験は、VersaSTAT(Princeton Applied Researchのポテンシオスタット/ガルバノスタット)を用いた線形分極技術の利用により実施した。経時的な腐食電流を測定するための実験は、本明細書で先に記載された通り、電解質としてのEMIm(HF)2.3Fを用いた三電極構成において、同じ電池構造、ならびに同じ活性材料、アルミニウムアノードおよび空気カソードで実施した。

図7は、作用電極としてのアルミ箔と、空気対電極とを含み、電解質としてEMIm(HF)2.3Fを用いた三電極構成での電池で測定された、ゲルを基にした参照電極と比較した時間に対する電位(ボルトによる左側の垂直軸)、および時間に対する腐食電流(μA/cm2による右側の垂直軸)の二重プロットを表しており、電池の電位の相対的安定性およびOCP構成でのアルミニウムの腐食電流の緩やかな放出を示す。

図7で認められる通り、EMIm(HF)2.3Fにおけるアルミニウムの腐食は、数十マイクロアンペア(μA)の範囲内であり、発表されたアルカリ環境でのアルミニウムの腐食速度よりも3桁低い[Doche, M.L. et al., Corros. Sci. 41 (1999), p. 805;およびEgan, D.R. et al., Journal of Power Sources 236 (2013)]。さらに、アルミニウムの安定した電位が、図7で明確に観察され、アルミニウム/電解質相互作用と、その後の、ゲルを基にしたFc/Fc+参照電極(先に記載)に対する測定での約−1.15Vのほぼ平坦な電位曲線により、60mVの相対的に小さな初期ドリフトである。

結果から、アルミニウムの初期活性化後、電位は相対的に安定していることが明確に実証され、該システムがアルミニウム表面を化学的および電気化学的に活性に維持することに関して安定していることが示される。

RTIL溶液で測定された腐食電流密度は、1時間暴露で多くても50μA/cm2と計算され、16.8・10−6グラム/cm2の重量損失であることに留意されたい。測定された電流密度が約10mA/cm2であり類似の計算および暴露時間が適用された、アルカリ性の金属活性化溶液を用いた過去の試験と比較すると[Doche, M.L. et al., Corros. Sci. 41 (1999), p. 805]、本明細書で請求された方法で得られた結果は、33.6・10−4グラム/cm2の重量損失である。この結果は、重量損失に関する腐食の減少が少なくとも二桁であることを実証している。

実施例5 活性化された表面の分析 全反射(ATR)赤外分光分析を、本発明の実施形態によるアルミニウムの活性化表面について実施した。この分析は、単一結晶p型シリコンウエハ試料についても比較として実施した。全反射フーリエ変換赤外(ATR−FTIR)スペクトルを、DTGS検出器を備えたNicolet分光計の利用により得た。45°の入射角でダイヤモンド結晶を備えた反射ATRアクセサリーを用いた。

簡潔に述べると、アルミニウムおよびケイ素の試料を、EMIm(HF)2.3F RTILへの1時間暴露前および後に分析した。固体表面を研磨で機械的に洗浄した後、試料の暴露を、該表面にEMIm(HF)2.3F 100μlを塗布することにより実行した。その後、フルオロアニオン−RTILに暴露された金属表面をエタノールで洗浄し、分光光度法で分析した。

RTILもまた、Hagiwara,R.ら[Journal of the Electrochemical Society, 149(1) D1−D6 (2002)]の試験に基づいて、対照について分析した。Hagiwaraらに記載された通り、未処理のEMIm(HF)2.3F RTILは、IRスペクトルで、約490、1100、1800、および2400cm−1に広いピークを示すH2F3部分、ならびに約900および2900cm−1にピークを示すH3F4部分など、「HF種」に関係する十分に認識されたスペクトルピークを示す。EMI+部分は、約1000、1800、2000および2600cm−1に広いピークを示している。

図8は、未処理EMIm(HF)2.3F RTILの試料(プロット1)、EMIm(HF)2.3F RTIL非暴露アルミニウムの試料(プロット2)、EMIm(HF)2.3F RTIL非暴露のシリコンウエハの試料(プロット3)、EMIm(HF)2.3F RTILに1時間暴露した後のアルミニウムの試料(プロット4)、およびEMIm(HF)2.3F RTILに1時間暴露した後のシリコンウエハの試料(プロット5)の、全反射(ATR)赤外スキャンから得られた、波長に対する透過率の比較プロットを表す。

図8で認められる通り、未処理のEMIm(HF)2.3F RTILは、予測されたスペクトルを示したが、処理されたアルミニウム試料は、処理されていないアルミニウム試料では認められず、つまりRTILへの暴露により生じる表面結合された「HF種」に起因する、明白なピークを示した。それらのピークから、アルミニウムとRTILとの相互作用(化学的および/または物理的)が示唆される。ATRスキャンの前に表面をエタノールで洗浄することが、ピーク強度および位置に関してスペクトルに影響を及ぼさなかったことに留意されたい。シリコンウエハで実行された比較測定では、処理されたシリコンウエハ試料、および処理されていないシリコンウエハ試料の両方が、類似のスペクトルを示し、「HF種」に起因するピークに関して有意な変化を有さなかった。

図9は、H3F4種に関連するピーク61および65が、それぞれ2990cm−1および960cm−1の波数を有し、H2F3種に関連するピーク62、63および64が、それぞれ2355cm−1、1770cm−1および1020cm−1の波数を有する、EMIm(HF)2.3F RTILの試料(プロット6)、非暴露アルミニウムの試料(プロット7)、およびピーク81、82、84および85が、それぞれプロット6のピーク61、63、64および65に対応する、EMIm(HF)2.3F RTILに1時間暴露した後のアルミニウムの試料(プロット8)、の全反射(ATR)赤外スキャンから得られた、波長に対する透過率の比較プロットを表す。

図9で認められる通り、RTIL処理のアルミニウム試料は、RTILのHF種で想起されるピークを示し、波数に従って追跡および同定することができる。

先に表された実験結果は予想外であり、ケイ素がアルミニウムと類似の様式でRTILにより影響を受けないことを示している。

実施例6 希釈されたRTIL中の金属活性化 不動態化金属に及ぼす、溶媒で希釈されたフルオロアニオン−RTILを含む様々なフルオロアニオン含有組成物からのフルオロアニオン種の影響を実証するために、三電極構成を有するアルミニウムを基にした電気化学セルを、アノード分極測定では作用電極として働く0.25mm厚アルミ箔(99.997%の純度、Alfa Aesar)およびカソード分極実験では多孔質炭素を基にした空気電極(Electric Fuel, Inc.)と共に使用した。多孔質炭素を基にした空気電極は、表面積533m2/g、および平均孔径5.43nmおよび炭素負荷量(carbon loading)19mg/cm2、77重量%の活性化炭素粉末に分散された6.6重量%のMnO2触媒、および結合剤としての16.4重量%のPTFEを示した。プラチナ電極を、対電極として用い、ゲルを基にしたFc/Fc+参照電極を、それとして使用した。

6種の例示的フルオロアニオン含有組成物を、先に記載された電池内で電解質として用い、それぞれが[EMIm][(HF)2.3F]RTILをフルオロアニオン種の供給源として用いて、炭酸プロピレン(PC)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDMEまたはテトラグリム)およびジメチルスルフィド(DMS)、[EMIm][TFSI]、[EMIm][トリフルオロイミド]ならびに[EMIm][ソルファナート]をはじめとする様々な溶媒およびイオン液体に30容量%として混合した。

図10A〜Fは、溶媒/希釈剤として働く、炭酸プロピレン(図10A)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(図10B)およびジメチルスルフィド(図10C)、[EMIm][TFSI](図10D)、[EMIm][トリフルオロイミド](図10E)および[EMIm][ソルファナート](図10F)と、それと混合されてフルオロアニオン種の供給源として働く30容量%の[EMIm][(HF)2.3F]と、を含むフルオロアニオン含有組成物(電解質)に関して測定されたもの(三角形で表示されたプロット)、そして未処理の溶媒に関して測定されたもの(正方形で表示されたプロット)であるが、セルを放電する前の最初の24時間の間、アルミニウムをフルオロアニオン含有組成物と接触させている、放電電流密度0.1mA/cm2でのセル挙動を示すアルミニウムを基にした三電極電気化学セルで実施された動電位実験で得られた、時間に対する電位の比較プロットを表す。

図10A〜Fで認められる通り、オリゴフルオロヒドロゲナートアニオンを有さない未処理溶媒およびイオン液体を電解質として用いた場合、傾斜する不安定なOCPが、最初の24時間において記録されており、不十分な酸化物溶解およびアノード表面の脱活性化と、その結果0.1mAm−2の電流印加で放電され得ない動作不能な電池が得られることが示された。逆に、30容量%のEMIm(HF)2.3Fが溶媒に添加され、電池が同じ条件下で試験された場合には、約2.1Vの安定したOCPが記録され(未処理のEMIm(HF)2.3FのOCPと類似)、電池は50時間もの長期間放電された。

実施例7 フルオロアニオン含有電解質中の添加剤 フルセル放電実験を、アルミニウム塩が溶解されたPyr14+カチオンおよび(HF)2.3Fアニオンを基にした例示的RTILで、本発明の実施形態により本明細書で先に表されたAl/空気バッテリーを用いて実施した。実験は、0.5mA/cm2の放電電流密度で実施した。

図11は、セルを放電前24時間の間、完全な構成で静置した、放電/充電サイクルあたり10mAhの一定電流でPyr14(HF)2.3F RTIL(円形により表示)と、Pyr14(HF)2.3F RTILに溶解された0.1Mアルミニウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(AlTFSI)塩(三角形により表示)を用いた、本発明の幾つかの実施形態による、アルミニウム/空気バッテリーの0.5mAcm−2での放電/充電サイクルを示した電圧対時間の比較プロットを表す。

図11で認められる通り、4〜6回の放電/充電サイクルが、フルオロアニオン−RTIL電解質、およびさらなる金属イオンがそれに溶解されたフルオロアニオン−RTIL電解質を用いたAl−空気バッテリー内で得られた。

本発明の幾つかの実施形態によるAl/空気バッテリーが金属酸化物および金属イオン(塩)などの電解質に様々な酸化金属供給源を添加することで動作可能になることを実証するために、さらなるフルセル実験を実施した。電解質に様々な酸化金属供給源を添加した動機は、拡散制御工程、ならびに電極での金属堆積および溶解工程を支援し得る金属イオンが高濃度の電解質を有することである。

図12は、EMIm(HF)2.3F RTILに溶解された0.1Mアルミニウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(AlTFSI)塩(上向き三角形により表示)、EMIm(HF)2.3F RTILに溶解された0.1M AlF3(下向き三角形により表示)およびEMIm(HF)2.3F RTILに溶解された0.1M α−Al2O3(右向き三角形により表示)を用いた、本発明の幾つかの実施形態による、アルミニウム/空気バッテリーの0.5mAcm−2での放電を示した電圧対時間の比較プロットを表す。

図12で認められる通り、異なる酸化Al添加剤は、Al−空気バッテリーの性能および挙動を改変した。例えば、AlTFSIは、最も長い放電時間(250時間を超える)を示し、1.4Vで放電プラトーを示した。AlF3およびα−Al2O3は両者とも、1.45Vで放電プラトーを示し、約225時間のより短い放電時間であった。結果から、本発明の幾つかの実施形態によるAl−空気バッテリーの性能が、必要となる適用ごとに添加剤に対して調整され得ることが示される。

イオン液体中のリチウムの場合にはリチウムイオンが多い程、特定量の添加剤の後電解質の伝導性が低くなるため、酸化金属供給源の添加がバッテリーの性能を低下させないという事実は予想外である。

図13A〜Fは、セルを測定前1時間の間、完全な構成で静置した、電解質としてテトラグリム(図13Aの下向き三角形)およびテトラグリム中の30容量%EMIm(HF)2.3F(図13Aの上向き三角形)を含む、電解質として炭酸プロピレン(図13Bの下向き三角形)および炭酸プロピレン中の30容量%EMIm(HF)2.3F(図13Bの上向き三角形)を含む、電解質としてDMS(図13Cの下向き三角形)およびDMS中の30容量%EMIm(HF)2.3F(図13Cの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImTFSI RTIL(図13Dの下向き三角形)およびEMImTFSI中の30容量%EMIm(HF)2.3F(図13Dの上向き三角形)を含む、電解質として未処理EMImトリフルオロイミドRTIL(図13Eの下向き三角形)およびEMImトリフルオロイミドRTIL中の30容量%EMIm(HF)2.3F(図13Eの上向き三角形)を含む、そして電解質として未処理EMImソルファナートRTIL(図13Fの下向き三角形)およびEMImソルファナートRTIL中の30容量%EMIm(HF)2.3F(図13Fの上向き三角形)を含む、本発明の幾つかの実施形態によるAl/空気バッテリーで測定された5mV秒−1の速度でスキャンした動電位測定の結果を示す比較の電圧対電流プロットを表す。

図13A〜Fで認められる通り、テトラグリム(図13A)、炭酸プロピレン(図13B)またはDMS(図13C)などの未処理溶媒、ならびにEMImTFSI(図13D)、EMImトリフルオロイミド(図13E)およびEMImソルファナート(図13F)などの未処理RTILが、Al/空気バッテリーの電解質として用いられた場合、30容量%EMIm(HF)2.3Fを添加した場合に得られた結果と比較して、より低い電流およびより高い電位が得られ、後者は、それぞれ1桁、2桁または3桁を超える密度を示した。さらに、測定されたより低い電位(EMIm(HF)2.3Fを用いない場合約−1.6〜−1.4、EMIm(HF)2.3Fを用いると約−1.9〜−1.6)は、該電解質中のフルオロアニオン種の存在下での金属表面活性化が明瞭に示される。

実施例8 半固相電解質 半固体のゲルまたは固体フルオロアニオン含有組成物を電解質として用いる概念を実証するために、本発明の幾つかの実施形態による本明細書で先に表されたAl−空気バッテリーを、α−Al2O3の粉末を混合することにより半固体に変化したEMIm(HF)2.3F RTILを基にした電解質を含んで構成させた。

約3ミクロンの平均粒子径を特徴とするα−Al2O3を、Alfa Aesarから得て、そのままの状態で使用した。

図14は、2M α−Al2O3を混合させたEMIm(HF)2.3Fを用い、半固体(ペースト)状態の電解質を形成させ、放電を22℃で実施した、本発明の幾つかの実施形態によるAl−空気バッテリーの放電電流を示す電圧対時間プロットを表す。

図14で認められる通り、高濃度のα−Al2O3粉末(2Mまで)をEMIm(HF)2.3F RTILに添加すると、十分な性能がある半固体(ペースト)状態の電解質が得られた。システムにおける電位のイニシャルドロップは、該電解質のより低い伝導性による高い本質的抵抗性を示したが、該バッテリーの放電は、20μAでの動作で60時間安定しており、50μAでかなり低いプラトーが測定された(1.4V)。

実施例9 自己不動態化金属の溶接 当該技術分野で公知の通り、不動態化層は、自然に形成されて急速に再形成され、典型的には素地の金属よりも高い溶融温度を示すため、アルミニウムなどの自己不動態化金属の溶接は、困難な課題である。したがって自己不動態化金属の溶接は、典型的には溶融アークにより高い電圧および電流を利用し、そして溶接接合部を自然な酸化的周囲環境からシールディングするために不活性ガスを使用することが求められる。

本明細書に表された実験は、溶接される金属を燃焼させずに不活性雰囲気(例えばアルゴン)の使用を不要にしながら、低い溶接温度(不動態化酸化物層を溶融するのに必要となる温度未満)でアルミニウムを溶接することにおける、本発明の幾つかの実施形態によるフルオロアニオン含有組成物の使用を実証している。

2枚の0.5cm厚5005アルミニウムシートを、EMIm(HF)2.3F RTILに30分間浸漬した。

同様に、5005アルミニウム溶加棒/ワイヤを、EMIm(HF)2.3F RTILで30分間処理した。

2枚の処理されたシートおよび処理された溶加ワイヤを、フルオロアニオン含有組成物から分離して、拭き取って乾燥させ、周囲条件に2時間保持し、その後、120Vおよび65Aで溶融アークを生成するように構成されたFronius溶接機を用いて互いに溶接した。アルミニウムを溶接するための機械の典型的設定が、120Vおよび95Aであることに留意されたい。

図15A〜Bは、アルミニウム溶加ワイヤと、不活性雰囲気のシールディングを用いず120Vおよび65Aで形成された溶接アークと、を用いて溶接されたアルミニウムシートの写真を表しており、図15Aのシートおよび溶加剤は、活性化されておらず、図15Bのシートおよび溶加剤は、EMIm(HF)2.3F RTILと30分間接触させることにより活性化されている。

図15A〜Bで認められる通り、燃焼された金属とシートは、未処理のアルミニウムおよび未処理の溶加ワイヤを用いると融合しなかったが、処理されたシートは、処理された溶加ワイヤを通して融合された。

実施例10 金属酸化物からの金属の電着 金属/空気バッテリーの放電の間にカソードに堆積されるような金属酸化物が、再充電の際にカソードで還元され得、二次(再充電可能な)バッテリーにより必要とされるなら、アノードで金属に酸化される金属イオンの供給源として働き得ることを示すために、本発明者らは、銅堆積物の基板としてガラス状炭素を、そして銅原子の供給源として酸化銅を用いた。ガラス状炭素は、その電気化学的特性が他の金属基板に比較して堆積された金属の高度に正確な検出を可能にするため、金属の堆積を実証する金属基板のモデルとして広く使用されている。つまり本発明の実施形態に関連して、ガラス状炭素基板は、非限定的に再充電可能なバッテリー内の金属アノードなど、任意の金属基板と見なされる。

本発明の任意の実施形態の幾つかによる例示的フルオロアニオン含有組成物として用いられるEMIm(HF)2.3F(Boulder Ionics, Inc.)を、さらなる精製を行わずに用いた。

銅箔(厚さ0.25mm、99.88%の純度、Sigma−Aldrich)およびガラス状炭素(GC)プレート(厚さ3mm、ALS Co.,日本)を、作用電極として用いた。

GC電極を、0.05μmAl2O3研磨懸濁液(Buehler)を用いて各実験の前に研磨した。銅を10%H2SO4溶液中で10秒間浸漬させることにより洗浄した。調製物を洗浄および研磨した後、表面は全て、窒素ガス流れの下で乾燥させた。

酸化銅(I)粉末(99%、alfa Aesar)および酸化銅(II)粉末(>99%、Sigma−Aldrich)を、堆積実験での銅カチオンの供給源として用いた。

電気化学的測定を、EG&G potentiostat/galvanostat 273A(Princeton Applied Research)を用いて実施した。

三電極構成を、作用電極材料としてCuまたはGCを用いたサイクリックボルタンメトリー測定に用い、Ptワイヤを対電極として用い、同じゲルを基にした電極を参照電極として用いた。生成実験は、5mV/秒のスキャン速度で実施した。

図16は、ゲル参照電極に対して−1V〜最大1Vの電位範囲にわたり、両方のスキャン方向でEMIm(HF)2.3Fに浸漬されたガラス状炭素電極について5mV/秒のスキャン速度で記録された電気化学窓を測定する比較でのサイクリックボルタモグラムのプロットを表しており、OCP〜−1Vで実施されたスキャンは、「カソードファースト」と称され(正方形で表示)、OCP〜1Vで実施されたスキャンは、「アノードファースト」と称されている(円形で表示)。

図16で認められる通り、還元または酸化ピークの証拠は、電気化学窓内で観察されなかった。

図17は、作用電極としてのガラス状炭素および本発明の幾つかの実施形態による例示的フルオロアニオン含有組成物であるEMIm(HF)2.3Fを含み、そして50mM酸化銅(I)(Cu2O、正方形で表示)または10mM酸化銅(II)(CuO、円形で表示)をさらに含む、電気化学セルについてのゲルを基にした参照電極に対して5mV/秒のスキャン速度で記録されたサイクリックボルタモグラムの比較プロットを表す。

図17で認められる通り、明瞭なカソード還元ピークが、0.5mA・cm−2以上の電流で、CuO2を含むEMIm(HF)2.3Fでは−0.4Vで、そしてCuOを含むEMIm(HF)2.3Fでは−0.75Vで可視である。還元ピークは、電極表面の金属銅(Cu0)堆積を示す。図17でさらに認められる通り、類似のアノードピークが、両方の銅酸化物で0.05Vで得られる。アノードピーク高およびその下の面積における差は、GCの表面の金属銅堆積の割合(量)の差を表す。

図17で観察された銅の堆積を検証するために、サイクリックボルタモグラムの「アノードファースト」スキャンを、銅(Cu0)箔を用いて実施した。

図18は、作用電極としてのガラス状炭素および本発明の幾つかの実施形態による例示的フルオロアニオン含有組成物であるEMIm(HF)2.3Fを含み、そして50mM酸化銅(I)(Cu2O、正方形で表示)または10mM酸化銅(II)(CuO、円形で表示)をさらに含む、電気化学セルについてのゲルを基にした参照電極に対して5mV/秒のスキャン速度で記録されたサイクリックボルタモグラムの比較プロットを表し、溶解ピークの比較のために銅箔「アノードファースト」ブランチ(Cu0、三角形で表示)を表すプロットをさらに示す。

図18で認められる通り、Cuピークの位置は、CuOまたはCuO2から過去に堆積された銅金属の測定されたアノードピークとほぼ同一であり、CuOおよびCuO2のカソード方向のサイクルが実際に銅を堆積させたことが示される。

本明細書で先に表された実験は、金属酸化物を電気化学的に反応して伝導性基板に電気化学的に堆積し得る種に変換するための、本発明の幾つかの実施形態による本明細書で提供される方法の適用性を明確に示している。

この実験は、カソードに堆積された酸化物が堆積可能な金属イオンとして戻り、再充電過程でアノードを補充することができる、本発明の幾つかの実施形態により、電解質としてのフルオロアニオン含有組成物を基にした再充電可能な電気化学セル装置(バッテリー)の有効な性能も示す。

本発明をその特定の実施形態と併せて記載したが、多くの代替、改良および変更が当業者に明らかになることは自明である。したがって、それは、添付の特許請求の範囲の主旨および広い範囲に含まれる全てのそのような代替、改良および変更を包含することを意図する。

本明細書で述べた全ての発行物、特許および特許出願が、各個別の発行物、特許または特許出願が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み入れられることを示されているのと同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。加えて、本出願の任意の参照の引用または同定は、そのような参照が本発明の先行技術として利用可能であるという承認と見なすべきではない。節の見出しが用いられる程度までは、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。

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