この発明は、海中や水中に設置し、筒状の魚進入路から網内に魚を餌で誘い込んで捕獲すると共に、捕獲した魚を網内から脱出することができないようにする折り畳み式の魚捕獲器に関する。

上記のような折り畳み式の魚捕獲器１の基本的な構造は、図６乃至図８に示すように、金属線材を用いて長円形に形成したベース枠２の上面側に、同じく金属線材を用い、前記ベース枠２の略半分のＵ字状に形成された第１乃至第３の骨子３乃至５を、ベース枠２の中棧６に起伏回動可能となるよう枢着して骨組みを組み立て、前記ベース枠２に底網体７を張設すると共に、ベース枠２と一端側に位置する第１骨子３の間及び各第１乃至第３の骨子３乃至５間の周囲に沿って網体８を、各骨子３乃至５を所定角度の配置にした状態でベース枠２の上部を覆うことができるように張設し、この網体８のベース枠２と第１骨子３の間及び、第２と第３の骨子４、５間に筒状の魚進入路９、９を設け、ベース枠２の他端側先端部に、このベース枠２上に倒した第３の骨子５をベース枠２に対して止めるための係止フック１０を取付けた構造になっている。

従来、上記した魚進入路９、９は、網体８の部分で大径側が開口し、小径端が網体８の内部で開口するよう、網体８から内側へ先端が小径となる円錐筒状の網で形成され、この魚進入路９、９の先端側がベース枠２の両側に固定した紐１１で引っ張り状態に保持された構造になっており、網体８の内部に対して外部からの魚の侵入を許容し、内側からの魚の脱出を阻止する所謂戻りや返しの機能を有している。

この折り畳み式の魚捕獲器１は、使用しないとき、第１乃至第３の骨子３乃至５をその間に網体８が収まるようにベース枠２上の片側に折り畳み、全体を薄い扁平状とすることにより、嵩張らないようになっている。

また、折り畳み式の魚捕獲器１を使用する場合は、第３の骨子５を引き起こすようにすると、網体８を介して第２と第１の骨子３、４が順に引き起され、第３の骨子５をベース枠２上の他方側に重ね、ベース枠２に取付けた係止フック１０を第３の骨子５に係止すれば、図８のように第３の骨子５がベース枠２に固定されることで網体８はベース枠２の上部を覆うような展張状態となり、魚進入路９、９が紐１１で略水平状態に保持され、網体８の内側に餌を入れた状態でこの魚捕獲器１を海中等に沈める。

上記魚捕獲器１には、魚進入路９、９から網体８の内側に魚が侵入し、捕獲した魚は魚捕獲器１を引き上げた後、係止フック１０を第３の骨子５から離脱させ、網体８を開くことによって取り出すことができる（特許文献１参照）。

実公昭５７−３２６９５号公報

ところで、上記のような折り畳み式の魚捕獲器の魚進入路は、小径端が網体の内部で開口するよう円錐筒状の網で形成されているため、魚進入路の奥に網体が見えるような状態になることで魚に対して閉塞感を与え、魚は魚進入路に対して危険感を持って進入をためらうことになり、これが原因で魚の捕獲効率が低くなっているという問題がある。

そこで、この発明の課題は、網体に対して魚進入路を貫通状とすることで魚に対して開放感を与え、魚進入路に対する魚の危険感や警戒心を払拭して進入にためらいをなくすことができ、これによって魚の捕獲効率を向上させることができる折り畳み式の魚捕獲器を提供することにある。

上記のような課題を解決するため、この発明は、金属線材を用いたベース枠の上面側で中央部の両側位置に、同じく金属線材を用いて形成された複数の骨子を、このベース枠上で起伏回動可能となるよう両端を枢着して骨組みを形成し、前記ベース枠に底網体を張設すると共に、ベース枠の中央部から一方側の周縁とこの一方側に最も近い位置にある骨子の周囲間及び、各骨子間の周囲に沿って網体を、ベース枠の中央部から他方側の周縁にこの他方側に最も近い位置にある骨子を重ねた状態で、残りの骨子が所定角度の配置になってベース枠の上部を覆うことができるように張設し、この網体の適所に魚進入路を網体の部分で開口するように設け、前記ベース枠の中央部から他方側の周縁とこれに重ねる骨子の一方に、ベース枠上に倒した骨子を止めるための係止フックを取付けた折り畳み式の魚捕獲器において、前記魚進入路を、両端が開口する折畳み可能な筒状網体を用い、ベース枠の上部を覆うように展張した網体の内部を骨子の起伏方向に沿って貫通するように設けて形成し、この魚進入路を形成する筒状網体の途中で下側の位置に魚進入口を設けた構成を採用したものである。

上記魚進入路を形成する筒状網体は、その途中で魚進入口の両端の位置に保形リングを沿わせ、この筒状網体の上部長さ方向に、両端を筒状網体の両端開口部に結合した緊張紐を沿わせた構造とすることができる。
また、上記ベース枠には、吊り上げるための一本の手紐が取付けられ、この手紐は、両端をベース枠の中央部に設けた横棧の両端に結合し、両側の途中がベース枠の他方側の周縁における両側の位置に結束されている構造としてもよい。

ここで、ベース枠は長円形に形成され、骨子は第１乃至第４の骨子からなり、各骨子のベース枠に対する枢着は、各骨子の両端に屈曲形成した円弧状部を中棧に外嵌して取付けることによって行われ、また、係止フックは、金属線材を用い、一端側に屈曲形成した円弧状部をベース枠に回転可能に取付け、他端側に設けた屈曲部を第４の骨子に対して係脱させることができる構造になっている。

また、上記した魚進入路の両端は、ベース枠と第１の骨子の間及び、ベース枠と第４の骨子の間で緊張する網体の部分で大径に開口し、この開口部分から網体の内部空間に位置する部分が円筒状となって水平の緊張状態に配置され、魚の習性を利用して円筒部の下側の位置に魚進入口を設け、これによって、網体に対する外部からの魚の侵入を許容し、内側からの魚の脱出を阻止する所謂戻りや返しの機能を有している。

この発明によると、魚進入路を、両端が開口する折畳み可能な筒状網体を用い、ベース枠の上部を覆うように展張した網体の内部を骨子の起伏方向に沿って貫通するように設けて形成したので、網体に対して魚進入路は貫通状となり、魚進入路の先に閉塞するものがないので、魚に対して開放感を与え、魚進入路に対する魚の警戒心を払拭して進入にためらいをなくすことができ、安心して進入することによって魚の捕獲効率を向上させることができる

また、魚進入路を形成する筒状網体の途中で下側の位置に魚進入口を設けたので、魚の習性を利用して魚の進入を確保することができ、これによって、網体に対する外部からの魚の侵入を許容し、内側からの魚の脱出を阻止する所謂戻りや返しの機能を発揮することができる。

また、魚進入口の両端の位置に保形リングを沿わせ、この筒状網体の上部長さ方向に、両端を筒状網体の両端開口部に結合した緊張紐を沿わせたので、網体の展張時に筒状網体は円筒状に保形され、確実に魚進入口を確保することができる。

更に、ベース枠に取付けた、吊り上げるための手紐が、両端をベース枠の中央部に設けた横棧の両端に結合し、両側の途中が魚捕獲器の他方側の周縁における両側の位置に結束されているので、手紐による魚捕獲器の吊り上げ時にかかる負荷がベース枠の両側に分散され、ベース枠の変形発生を有効に防ぐことができるという利点がある。

以下、この発明の実施の形態を図示例に基づいて説明する。

図１乃至図５のように、折り畳み式の魚捕獲器２１は、亜鉛等のメッキや樹脂皮膜によって防錆処理を施した金属線材を用いて長円形に形成したベース枠２２の上面側に、同じく防錆処理を施した金属線材を用い、前記ベース枠２２の略半分のＵ字状に形成された第１乃至第４の骨子２３乃至２６を、ベース枠２２の中棧２７に起伏回動可能となるよう枢着して骨組みを組み立て、前記ベース枠２２に底網体２８を張設すると共に、ベース枠２２の中央部から一方側の周縁とこの一方側に最も近い位置にある第１の骨子２３の周囲間及び、各骨子２４、２５、２６間の周囲に沿って網体２９を、ベース枠２２の中央部から他方側の周縁にこの他方側に最も近い位置にある第４の骨子２６を重ねた状態で、残りの第１から第３の骨子２３、２４、２５が所定角度の配置になってベース枠２２の上部を覆うことができるように張設し、この網体２９のベース枠２２と第１骨子２３の間と、第３と第４の骨子２５、２６間に筒状の魚進入路３０を貫通状に設け、ベース枠２２の他方側の先端部に、ベース枠２２上に倒した第４の骨子２６をベース枠２２に対して止めるための係止フック３１を取付けた構造になっている。

上記の魚進入路３０は、両端が開口する折畳み可能な筒状網体３２を用い、ベース枠２２の上部を覆うように展張した網体２９の内部を各骨子２３〜２６の起伏方向に沿って貫通するように設けて形成し、この魚進入路３０を形成する筒状網体の途中で下部の位置に魚進入口３３が設けられている。

上記魚進入路３０を形成する筒状網体３２は、その両端が、ベース枠２２と第１の骨子２３の間及び、第３と第４の骨子２５、２６の間で緊張する網体２９の部分においてテーパ状の大径に開口し、この開口部分から網体２９の内部空間に位置する部分が円筒状となって水平の緊張状態に配置され、魚の習性を利用して円筒部の下部の位置に魚進入口３３を設け、これによって、網体２９に対する外部からの魚の侵入を許容し、内側からの魚の脱出を阻止する所謂戻りや返しの機能を有している。

また、魚進入路３０を形成する筒状網体３２の途中で魚進入口３３の両端の位置に円形の保形リング３４を沿わせ、円筒形状を保つようになっていると共に、この筒状網体３２の上部長さ方向に、両端を筒状網体３２の両端開口部に結合した緊張紐３５を沿わせ、垂れ下がりの発生がないようにした構造になっている。

上記第１乃至第４の骨子２３乃至２６のベース枠２２に対する枢着は、各骨子２３乃至２６の両端に屈曲形成した円弧状部３６を中棧２７に外嵌して取付けることによって行われ、また、係止フック３１は、ステンレスのような金属線材を用い、一端側に屈曲形成した円弧状部をベース枠２２に回転可能に取付け、他端側に設けた屈曲部を第４の骨子２６に対して係脱させることができる構造になっている。

上記のような折り畳み式の魚捕獲器２１において、ベース枠２２に張設した底網体２８の上には、餌を挿入するための袋形成部材３７が網の張設によって設けられ、また、ベース枠２２には、吊り上げるための一本の手紐３８が取付けられ、この手紐３８は、両端をベース枠２２の中央部に設けた横棧２７の両端部に結合し、両側の途中がベース枠２２の他方側の周縁における両側の位置に結束されて取付けられ、手紐３８による魚捕獲器２１の吊り上げ時にかかる負荷がベース枠２２の両側に分散され、ベース枠２２の変形発生を有効に防ぐことができるようにしている。

この発明の魚捕獲器は、上記のような構成であり、図４のように、魚捕獲器２１を使用しないとき、第１乃至第４の骨子２３乃至２６をその間に網体２９と魚進入路３０の筒状網体３２が収まるようにベース枠２２上の片側に折り畳み、全体を薄い扁平状とすることにより、嵩張らないようになっている。

また、魚捕獲器２１を使用する場合は、第４の骨子２６を引き起こすようにすると、網体２９を介して第３と第２及び第１の骨子２５、２４、２３が順に引き起され、第４の骨子２６をベース枠２２上の他方側に重ね、ベース枠２２に取付けた係止フック３１を第４の骨子２６に係止すれば、図１のように第４の骨子２６がベース枠２２に固定されることで網体２９はベース枠２２の上部を覆うような展張状態となり、魚進入路３０が緊張することで円筒状となって略水平状態に保持され、この魚進入路３０は、網体２９のベース枠２２と第１骨子２３の間と、第３と第４の骨子２５、２６間に貫通状になり、網体２９の内側に餌を入れた状態でこの魚捕獲器２１を海中等に沈める。

上記魚捕獲器２１には、魚進入路３０が網体２９に対して貫通状になっているので、魚進入路３０の先に閉塞するものがなく、魚に対して開放感を与え、魚進入路３０に対する魚の危険感や警戒心を払拭して進入にためらいをなくすことができ、魚は安心して魚進入路３０に進入すると共に、この魚進入路３０に入った魚は筒状網体３２の途中で下部の位置に魚進入口３３から網体２９の内部に進入する。

このように、魚進入路３０の魚進入口３３は、下向きに進もうとする魚の習性を利用して魚の進入を確保することができ、逆に網体２０内の魚は、網体２９の周囲に向かう習性があるので、魚進入口３３から外部にでることがなく、これによって、網体２９に対する外部からの魚の侵入を許容し、内側からの魚の脱出を阻止する所謂戻りや返しの機能を発揮し、魚の捕獲効率を向上させることができる

なお、捕獲した魚は、手紐３８を介して魚捕獲器２１を引き上げた後、係止フック３１を第４の骨子２６から離脱させて網体２９を開くことによって取り出すことができる。

この発明の魚捕獲器２１は、魚進入路３０を網体２９に対して貫通するように設けたので、魚進入路３０への魚の入りがよく、魚進入路３０の下部の位置に魚進入口３３を設けることにより、魚の習性を利用して網体２９内への魚の進入を確保することができ、これによって、魚の捕獲効率を向上させることができる。

この発明に係る魚捕獲器の使用状態を示す一部切り欠き斜視図

この発明に係る魚捕獲器の使用状態を示す一部切り欠き平面図

この発明に係る魚捕獲器の使用状態を示す一部切り欠き底面図

この発明に係る魚捕獲器の折畳み状態を示す斜視図

この発明に係る魚捕獲器の使用状態を示す拡大した縦断正面図

従来の魚捕獲器を示す使用状態の斜視図

同上の要部を切り欠いた平面図

同上の要部を切り欠いた正面図

符号の説明

２１ 折り畳み式の魚捕獲器２２ ベース枠２３ 第１の骨子２４ 第２の骨子２５ 第３の骨子２６ 第４の骨子２７ 中棧２８ 底網体２９ 網体３０ 魚進入路３１ 係止フック３２ 筒状網体３３ 魚進入口３４ 保形リング３５ 緊張紐３６ 円弧状部３７ 袋形成部材３８ 手紐